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ウクライナから出荷される穀物は誰のものか? アメリカの遺伝子組み換えアグリビジネス大手がウクライナの農地を掌握へ


<記事原文>
Whose Grain Is Being Shipped from Ukraine? America’s GMO Agribusiness Giants to Take Control of Ukraine Farmland

投稿元:グローバルリサーチ

投稿日: 2022年8月21日

著者:F・ウィリアム・エングダール

<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>

9月8日


 アフリカやその他の地域の飢餓危機を緩和するために、ウクライナの穀物を安全に輸送することを求めるここ数週間の大きな人道的騒動は、何段階にも渡って欺瞞的である。

 問題なのは、穀物が栽培されている土地を誰が所有しているのか、そしてその穀物が実際に違法な遺伝子組み換えの特許取得済みトウモロコシやその他の穀物であるかどうかということである。腐敗したゼレンスキー政権は、世界で最も生産性の高い「黒土」の農地を密かに支配してきた西側大手GMOアグリビジネス企業と静かに取引してきた。

2014年のCIAによるクーデター

 2014年2月、アメリカ政府が支援するクーデターにより、ウクライナの選出されたヤヌコービッチ大統領は命からがらロシアに逃亡することを余儀なくされた。2013年12月、ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領は、数カ月にわたる議論の末、ウクライナの国債を150億ドルで買い取り、ロシアの輸入ガスの費用を33%引き下げるという約束で、ロシアの「ユーラシア経済連合」に加盟すると発表していた

 ロシアからの提案への対案は、EUへの準加盟というケチくさいものであった。そしてその対案は、ウクライナの貴重な農地を民営化し、遺伝子組み換え作物の栽培を許可し、厳しい年金削減と社会的緊縮を課すという非情なIMFと世界銀行の一連の融資をウクライナが受け入れることと結びついていた。IMFから170億ドルの融資を受ける見返りに、ウクライナは個人所得税を66%も引き上げ、天然ガス代も50%増しにしなければならない。また労働者は年金を受け取るために10年長く働かなければならない。その目的は、ウクライナを外国からの投資に開放することだった。グローバル企業の利益のために、IMFが経済をレイプするのはいつものことだ。

 米国とIMFは、米国が選んだ首相アルセニー・ヤツェニュク(ヤヌコビッチに対してCIAが支援した「マイダン抗議行動」のリーダー)のクーデター後の政府に対する要求の主要条項は、ウクライナの豊かな農地を外国のアグリビジネス大手、とりわけモンサントやデュポンなどの遺伝子組み換え大手に最終的に開放することであった。ヤツェニュク内閣のうち、財務相と経済相を含む主要な3人は外国人であり、アメリカ国務省のビクトリア・ヌーランドと当時のジョー・バイデン副大統領によってキエフに指示されたものである。ワシントンが課したIMFの融資条件は、ウクライナが遺伝子組み換え作物の禁止を撤回し、モンサントのような民間企業が遺伝子組み換え種子を植え、モンサントのラウンドアップを畑に散布できるようにすることであった。

 1991年にウクライナがソビエト連邦からの独立を宣言して以来、ウクライナの貴重な「黒い大地」の土地管理を維持することは、国政において最も議論を呼んだ問題の一つであった。最近の世論調査では、ウクライナ人の79%が外国の乗っ取りから土地を守ることを望んでいる。ウクライナはロシア南部と同様、貴重な黒土(チェルノゼム)を有している。黒土は腐植質に富み、生産性が高く、人工肥料をほとんど必要としない土壌である。

2001年モラトリアム

 2001年のウクライナの法律は、大企業や外国人投資家への農地の個人売買をモラトリアム(一時停止)にするものであった。このモラトリアムは、腐敗したウクライナのオリガルヒによる買い占めや、豊かな農地の外国アグリビジネスへの貸し出しを食い止めるためのものであったが、その頃までには、モンサント社や他の西側アグリビジネスがウクライナに大きく進出していた。

 1991年にウクライナがソ連から離脱したとき、ソ連の集団農場で働いていた農民たちは、それぞれ小さな区画を与えられた。飢えた外国のアグリビジネスへの売却を防ぐために、2001年にモラトリアムが決議された。700万人のウクライナ人農民が小区画を所有し、その総面積は7900万エーカーに及ぶ。残りの2,500万エーカーは国有地である。そして遺伝子組み換え作物の栽培は違法である。

 モラトリアムにもかかわらず、モンサント社、デュポン社、カーギル社など欧米の遺伝子組み換え作物業者は、密かに、そして違法に、ウクライナの黒い大地に彼らの特許取得済み遺伝子組み換え種子を撒きはじめた。小地主たちはウクライナの大物オリガルヒに土地を貸し、オリガルヒはモンサント社などと秘密協定を結び、遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆を植え始めた。今は削除された米国農務省の報告書によると、2016年末までにウクライナの大豆の約80%、トウモロコシの10%が遺伝子組み換え種子から違法に栽培されていた。ゼレンスキーの2021年法では、この遺伝子組み換えへの門戸開放が大幅に拡大された。

コメディアンの登場

 2019年5月、悪名高いウクライナの腐敗したオリガルヒ(新興財閥)、イゴール・コロモイスキーの子飼いのウクライナ人テレビコメディアン、ヴォロディミル・ゼレンスキーが、「政府の腐敗に対する悲劇の民衆反乱で大統領に選ばれた」とされている。しかし、ゼレンスキーの2019年の最初の行動のひとつは、2001年の土地モラトリアムを覆そうとすることだった。農民と市民は、ゼレンスキーが提案した変更を阻止するために、2020年を通じて大規模な抗議活動を展開した。

 最終的に、コロナ・ロックダウン規制を利用して市民抗議活動を禁止し、2021年5月、ゼレンスキーは、農地市場の「鍵 」となる、土地を規制緩和する法案第2194号に署名した。彼は正しかった。農民の反対を静めるための卑劣な行動として、ゼレンスキーは新法により、最初の数年間はウクライナ国民だけが貴重な農地を売買することができると主張した。しかし、モンサント社(現在はバイエル社の傘下)やデュポン社(現在はコルテバ社)などの外資系企業や、ウクライナに3年以上進出している企業も目的の土地を購入できるという大きな抜け穴には触れなかったのだ。

 2021年の法律では、悪名高い腐敗した市町村政府にも所有権が与えられ、彼らは土地の使用目的を変更することができるようになった。2024年1月以降は、企業だけでなくウクライナ国民も最大1万ヘクタールの土地を購入できるようになる。そして2021年4月の土地市場法の改正、「土地関係の分野における管理システムの改善と規制緩和に関するウクライナの土地法令とその他の立法行為の改正」は、外国のアグリビジネスが豊かなウクライナの黒土を支配するための巨大な抜け穴をもう一つ開いたのである。この改正は、土地の用途を農地から商業地に変更することで、外国人への土地売却の禁止を回避する。そうすれば、外国人を含む誰にでも売ることができ、農地として再利用することができる。ゼレンスキーはこの法案に署名し、土地所有権の変更について国民投票を実施するという選挙公約を反故にした。

 ウクライナの優良農地を手に入れようとするアメリカの遺伝子組み換えアグリビジネスの利害に疑問があるのなら、アメリカ・ウクライナビジネス評議会の現在の理事会を見ればわかるだろう。その中には、世界最大の民間穀物・アグリビジネス企業であるカーギル社も含まれている。特許を取得した遺伝子組み換え種子と致死性の農薬であるラウンドアップを所有するモンサント/バイエル社も含まれている。デュポン社とダウ・ケミカルズ社の巨大な遺伝子組み換え作物の融合企業であるコルテバ社も含まれる。穀物カルテルの巨人であるバンジ(Bunge)社とルイス・ドレフュス社(Louis Dreyfus)も含まれる。大手農機具メーカー、ジョン・ディア社も含まれる

 ゼレンスキーが選挙公約を破った背景には、こうした強力なアグリビジネス企業がいたとされる。

 バイエル/モンサント、コーテバ、カーギルの3社は、ウクライナの黒土の優良農地1670万ヘクタールをすでに支配しており、IMFと世界銀行から事実上の賄賂を受け取り、ゼレンスキー政権は屈服して売り渡したのである。その結果は、つい最近までヨーロッパの穀倉地帯だったところが、将来、非常に悪化してしまうだろう。「ウクライナは今、遺伝子組み換えカルテル企業によってこじ開けられ、2016年に遺伝子組み換え作物を禁止したロシアだけが、遺伝子組み換えのない世界の主要穀物供給国として残されている。EUは、遺伝子組み換え作物のための長く確立された重要な承認プロセスを覆し、遺伝子組み換えの乗っ取り防止の水門を開く新しい法律に取り組んでいる」と伝えられている。

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F. エングドール:プリンストン大学で政治学の学位を取得し、石油と地政学に関するベストセラー作家である。

グローバリゼーション研究センターの研究員。

特集画像はNEOより
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