<記事原文 寺島先生推薦>
Democracy Forever! President Lula’s Inaugural Address to Parliament and the National CongressDemocracy Forever!
出典:INTERNATIONALIST 360°
2023年1月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年1月28日
ブラジル国民から大統領のたすきをかけられた後、国会議事堂で行われた演説の全文 まず、皆さん一人ひとりに心からのご挨拶をしたいと思います。私の人生の中で最も困難な時期の一つであったにもかかわらず、「ルーラの自由行動」に代表されるブラジル国民から毎日受けた愛情や力を思い出し、それに報いたいのです。
今日、私の人生で最も幸せな日のひとつであるこの日に、私があなたがたに贈る挨拶は、これ以上ないほど簡潔でありながら、同時にとても意味深いものです。
こんにちは、ブラジル国民のみなさん!
みなさん、どうもありがとう! みなさんは選挙戦の前、選挙戦の最中、そして選挙後に政治的暴力に直面しました。みなさんはSNSを通し、さらには街頭に立ち、晴れた日も雨の日も貴重な一票を獲得するために活動してくれました。
みなさんは勇気をもって私たちのシャツを身に着けてくれました。同時にブラジル国旗も振ってくれました。暴力的で反民主的な少数派が私たちの肌の色を検閲し、すべてのブラジル人のものである緑と黄色のブラジル国旗を自分たちだけのものにしようとした状況の中でのことでした。
飛行機で、バスで、車で、トラックの荷台で、近くから、遠くから、この国の津々浦々から来てくれたみなさん。バイクで、自転車で、そして徒歩で、この民主主義の祭典のために、まさに希望の宣伝隊をしてくれたみなさん。
しかし、他の候補者を選んだ方々にも申し上げたい。私は、2億1500万人のブラジル人のために政治を行いますが、それは私に投票した人のためだけではありません。
私は、すべての人々のために政治を行います。分裂と不寛容の過去という後方鏡(バックミラー)を通してではなく、私たちの明るい共通の未来を見つめて政治を行います。
永久に戦争状態にある国、あるいは心が通い合わない生活を送る家族、そんなものがいいと思う人などいません。ヘイトスピーチや多くの嘘の流布によって壊された友人や家族との絆を取り戻すときが来たのです。
ブラジル国民は、民主的な体制で生きることを拒む、急進化した少数派の暴力を拒絶しています。
憎しみ、虚偽のニュース、銃や爆弾はもうたくさんです。ブラジル国民は、働き、学び、家族の世話をし、幸せになれる平和を望んでいます。
選挙の論争は終わりました。10月30日の勝利後の声明で、国を統合する必要性について述べたことを繰り返します。
「ブラジルの基盤は2つではありません。私たちは一つの国、一つの国民、偉大な国家なのです。」
私たちは皆、ブラジル人であり、決してあきらめないという同じ美徳を共有しています。
たとえ、花びらを一枚一枚抜かれても、植え替えをすれば春が来ることを私たちは知っているのです。そして、春はもうそこまで来ています。
今日ブラジルは喜びに満ち溢れています。希望を持って腕を組み合っています。
親愛なる友人のみなさん
私は最近、2003年に初めて大統領に就任したときの演説を読み返しました。それを読んでみると、ブラジルがどれほど後退したかがほんとうによくわかりました。
2003年1月1日、まさにこの広場で、親愛なる副大統領のジョゼ・アレンカルと私は、ブラジル国民の尊厳と自尊心を回復させるという公約を掲げ、それを実行しました。最も必要とする人々の生活環境を改善するために投資すること、そしてそれを実行したのです。健康と教育に細心の注意を払うこと、そしてそれを実行したのです。
2003年に私たちが取り組むと誓った主な公約は、不平等と極度の貧困との闘い、この国のすべての人に毎日朝昼晩の食事をとる権利を保障することでした。そして私たちはこの公約を果たし、飢餓と悲惨な状態を終わらせ、不平等状態を大幅に減らしました。
残念ながら、20年後の今日、私たちは、埋めたと思っていた過去に戻りつつあります。私たちが行ったことの多くは、無責任かつ犯罪的な方法で元に戻されたのです。
不平等と極度の貧困が再び増加しています。飢餓が復活したのです。それは運命の力でもなく、自然の営みでもなく、神の意志でもありません。
飢餓の復活は、ブラジル国民に対して行われた、最も深刻な犯罪です。
飢餓は不平等の娘であり、ブラジルの発展を遅らせる大きな悪の母です。不平等があると、この大陸的な大きさを持つ私たちの国は、お互いがお互いを認めない自分だけの世界に分割され、ちっぽけな国になってしまいます。
一方では、すべてを手に入れることができるごく一部の人々の世界があります。片や、何もかもが不足している多数の人々の世界。そして、年々貧しくなっている中間層の人々の世界です。
団結すれば、私たちは強いのです。分断された状態では、私たちの国はいつも、絶対に手の届かない未来の国のままでしょう。国民は永久に負債を抱えて生きることになります。
もし私たちが未来を今日築きたいのなら、もしすべての人が十分に発展した国で暮らしたいのなら、こんな不平等状態は許されるはずがありません。
ブラジルは偉大な国です。国の本当の偉大さは、その国の人々の幸福の中にあります。そして、こんな不平等の中では、誰も本当の意味で幸せにはなれません。
友人のみなさん、
私が「統治する」と言ったのは、「大切にする」という意味です。統治する以上に大事なことです。私はこの国とブラジル国民を大きな愛情を持って大切にします。
ここ数年、ブラジルは再び世界で最も不平等な国のひとつとなりました。街角でこれほどまでに人々が見捨てられ、落胆した様子をしているのを私たちが目にするのはずっとなかったことです。
子供の食べ物を探しにゴミを掘り起こす母親たち。
寒さと雨と恐怖と向き合いながら野外で寝泊まりする家族。
学校に通い、子供としての権利を十分に発揮すべきときに、お菓子を売ったり、お金を無心する子供たち。
信号待ちで「助けてください」と書かれた段ボールの看板を掲げている失業者たち。
飢えをしのぐための骨を求め、肉屋の門前に並ぶ行列。そして片や、輸入車や自家用ジェット機を購入するための行列も。
このような社会の深い溝は、真に公正で民主的な社会の構築や、近代的で豊かな経済の実現を阻むものです。
こういった理由で、副大統領のジェラルド・アルクミンと私は、本日、皆さんとすべてのブラジル国民の前で、あらゆる形態の不平等と日夜闘う任務に取り掛かります。
所得、性別、人種における不平等。雇用市場、政治的代表権、国家公務員の経歴における不平等。健康、教育、その他の公共サービスを受けることにおける不平等。
最高の私立学校に通う子供と、学校も未来もなくバス停で靴磨きをする子供との間の不平等。贈られたばかりのおもちゃに喜ぶ子供と、クリスマスイブに飢えで泣く子供との間にある不平等。
食べ物を捨てる人と残飯しか食べない人の間の不平等。
受け入れがたいのは、この国の5%の富裕層が他の95%の所得と同じだということです。
ブラジルの億万長者6人が、国内の最貧困層1億人の資産に匹敵する財産を持っています。
最低賃金労働者が、超富裕層が1ヶ月で収入と同じ金額を受け取るには19年かかるということ。
そして、高級車の窓を開けたとき、陸橋の下に身を寄せ、何一つ持たない兄弟姉妹たちが目に入らないとしても、そんなことは意味がありません。現実は、身近などんな街角にもあるのです。
友よ。
私たちが偏見や差別、人種差別の中で生き続けることは容認できません。ブラジルは多くの肌の色を持つ国であり、すべての人が同じ権利と機会を持つべきです。
誰一人、二流市民にはさせません。誰一人も国家からの支援に差がつけられることをなくします。誰一人として肌の色の違いで直面する困難に差が出ることをなくします。
そのため、私たちは人種平等省を再興し、奴隷制の過去の悲劇的な遺産を葬り去ろうとしているのです。
先住民族は、自分たちの土地に線が引かれる違法で略奪的な経済活動の脅威から解放される必要があります。また、彼らの文化を守り、尊厳に敬意を払い、その持続可能性を保証する必要があります。
彼らは開発の障害ではなく、河川や森林の守護者であり、国家としての偉大さの根幹を成す存在なのです。だからこそ私たちは、500年にわたる不平等と戦うために、先住民族省を設立するのです。
私たちは、女性へ憎しみに満ちた抑圧をそのままにしておくことはできません。女性たちは街頭や家庭で日々暴力にさらされています。
同じ仕事をしているのに、女性が男性より低い給料をもらい続けているのは受け入れがたいことです。政治、経済、あらゆる戦略的分野において、女性にこの国の意思決定機関でより多くの活躍の場を確保する必要があります。
女性はなりたいものになり、いたい場所にいなければなりません。そのために、私たちは女性省を復活させるのです。
私たちが選挙に勝利したのは、不平等とそれが引きずるものと戦うためでした。そして、それが私たちの政府の偉大な証となるのです。
この根本的な戦いから、変貌した国が生まれるでしょう。偉大で、繁栄し、強く、公正な国。万人の、万人による、万人のための国。誰一人置き去りにしない、寛大で連帯感のある国です。
親愛なる同志たち、親愛なる仲間たち
私は、すべてのブラジル人を大切にします。特にそれを最も必要としている人たちを大切にすることを再度約束します。この国の飢餓はもう一度終わらせるのです。貧しい人々を骨と皮の状態から、きちんと予算の恩恵に浴する状態に戻すのです。
私たちは、計り知れない遺産を持っています。それはブラジル人一人ひとりの記憶の中に今も生きています。この国に革命をもたらした公共政策の受益者であろうとなかろうと関係ありません。
私たちは過去に生きることに興味はありません。ですから、懐旧(ノスタルジー)とは距離を置きます。私たちの遺産が、常に、私たちがこの国のために築き上げる未来を映し出す鏡となります。
歴代政権下で、ブラジルは記録的な経済成長と、歴史上最大の社会的包摂を両立させました。世界第6位の経済大国となり、同時に3600万人のブラジル人が極度の貧困から脱け出しました。
私たちは、署名入りの労働カードとすべての権利が保証された2,000万人以上の雇用を創出しました。私たちは、最低賃金を常にインフレ率以上に再調整しました。
私たちは、ブラジルを商品や原材料だけでなく、知性や知識の輸出国にするために、幼稚園から大学までの教育への投資において記録を更新しました。
私たちは、高等教育の学生数を2倍以上に増やし、この国の貧しい若者たちにも大学の門戸を開きました。白人の若者も、黒人の若者も、先住民の若者も、大学の学位は手の届かない夢だったのが、医者になったのです。
私たちは、不平等を大きな争点の1つと戦いました。健康になる権利です。なぜなら、生命に対する権利は、銀行にあるお金の量を人質とすることはできないからです。
私たちは、薬を必要とする人々に薬を提供する「大衆薬局」と、大都市の郊外や遠隔地に住む約6,000万人のブラジル人に医療を提供する「もっと多くの医師を!」を創設しました。
私たちは、すべてのブラジル人の口腔内を大事にするために、「笑顔のブラジル」を創設しました。
私たちは、SUS(「スス」、健康保険制度)という我が国唯一の健康制度を強化しました。そして、この機会に、パンデミック時のSUSの専門家たちの偉大な仕事ぶりに特別な感謝を捧げたいと思います。彼らは、致死的なウイルスと無責任で非人道的な政府に同時に勇敢に立ち向かいました。
私たちの食卓に届く食料の70%を担っている家族農業と中小農家に、私たちは政府として投資しました。そして、毎年、いろいろな投資先を確保し、記録的な収穫を得る農業経営を無視することなく、これを実行しました。
気候変動を抑制するための具体的な対策を講じ、アマゾンの森林伐採を80%以上減らしました。
ブラジルは、不平等や飢餓との闘いにおいて世界の基準としての地位を固め、その積極的で誇り高い外交政策によって国際的に尊敬されるようになりました。
私たちは、国の財政に責任を持ちながら、これをすべてやり遂げることができました。私たちは、公金に対して無責任なことは決してしていません。
毎年財政を黒字化し、対外債務を解消し、約3700億ドルの外貨準備を積み上げ、国内債務をほぼ半分に減らしました。
私たちの政府では、これまでも、これからも、(無駄な)支出は一切ありません。私たちは、これまでも、そしてこれからも、最も貴重な財産であるブラジル国民に投資していきます。
残念ながら、13年間で築いたものの多くは、その半分以下の時間で破壊されてしまいました。まず、2016年のディルマ大統領に対する政権転覆工作(クーデター)によって。そして、国土破壊を進めた政府の4年間の遺産を歴史が許すことは絶対にないでしょう:
① 70万人のブラジル人がCovidで死亡しました。
② 1億2500万人の人々が、中程度から極度の食料不足で苦しんでいます。
③ 3300万人の人々が飢えようとしています。
これはほんの一部の数字に過ぎません。実際は単なる数字、統計、指標では収まりません。みんな人間なのです。悪政の犠牲となった男性、女性、そして子どもたちです。その悪政も2022年10月30日という歴史的な日に、ついに国民によって倒されました。
2カ月にわたって前政権の中枢を探った移行内閣の専門部会は、悲劇の実像を明らかにしました。
この数年間、ブラジル国民が被ったのは、ゆっくりと進行する大量虐殺の積み重ねでした。
その例として、移行内閣が作成した、まさに混沌(カオス)のような状態を記録した100ページに及ぶこの報告書から少し引用してみます。報告書にはこう書かれています:
「ブラジルは女性殺人の記録を更新し、人種平等政策は深刻な挫折を味わい、若者政策が廃止され、先住民の権利がこれほどまでに侵害されたことは、最近の歴史上なかった。
2023年度から使用される教科書はまだ出版されておらず、Farmácia Popular(大衆薬局)では薬が不足し、COVID-19の新型に対応するワクチンの在庫もない。
学校給食の購入資金が不足し、大学では学期を修了できない恐れがあり、民間防衛や事故・災害防止のための資金もない。この停電のツケを払っているのは、ブラジル国民だ。」
親愛なる友よ、
この数年間、私たちは間違いなく、歴史上最悪の時代のひとつを生きてきました。影と不安と多くの苦しみの時代。しかし、この悪夢は、国の再民主化以来最も重要な選挙において、主権者の投票によって終わりを告げました。
ブラジル国民が民主主義とその制度に責任をもっていることを証明した選挙です。
この民主主義へ向かう途轍もない勝利のおかげでは、私たちは前向きになれます。そして私たちの間の違いを忘れさせてくれます。そんな違いなど私たちを永遠に結びつけるものに比べれば取るに足らないほどちっぽけなものです。すなわちそれはブラジルへの愛であり、私たち国民への壊れることのない信頼です。
今こそ、希望と連帯、そして隣人への愛の炎を再び燃え上がらせるときです。
今こそ、ブラジルとブラジル国民を再び大切にする時です。雇用を創出し、最低賃金をインフレ率以上に再調整し、食料の価格を引き下げる時です。
大学にさらに多くのワクチン枠を創り、健康、教育、科学、そして文化に多額の投資をしてください。
今は消えてしまった前政府の怠慢によって放棄されたインフラ工事とMinha Casa Minha Vida(「私たちの家、私たちの生活」)*を再開してください。
*2009年3月にルーラ政権によって創設されたブラジルの連邦住宅プログラム。所得が1,800レアルまでの家庭には自分の家またはアパートの取得を補助し、所得が9,000レアルまでの家庭には物件の入手条件の敷居を下げる。 2018年、カイシャ・エコノミカ・フェデラル紙は、この事業によって1,470万人が物件を購入したと報告している(ブラジル人口の7%)。(ウィキペディア) 今こそ、投資を呼び込み、ブラジルを再工業化する時です。気候変動と再び戦い、バイオマス(生物の総量)、特にアマゾンの荒廃をきっぱりと止めましょう。
国際的な孤立状況を打破し、世界のすべての国との関係を回復します。
不毛な恨みを抱いている場合ではありません。今こそ、ブラジルは前を向き、再び微笑む時なのです。
このページをめくり、私たちの歴史に新しい決定的な章を共に刻もうではありませんか。
私たちの共通の課題は、すべてのブラジル人のために、公平で、包括的で、持続可能で、創造的で、民主的で、そして主権を持った国家を作ることです。
私は選挙期間中、ずっと言い続けてきました。ブラジルにはやり方がある。そして、移行内閣が明らかにした破壊を前にしても、私はもう一度、確信を持って言います:
ブラジルは良い国です。それは私たち、私たち全員にかかっています。
私は任期の4年間、350年以上にわたる奴隷制の後進性を克服する努力を、ブラジルのために、毎日尽くしてゆきます。この数年間に失われた時間と機会を回復させます。世界におけるブラジルの地位を回復させます。そして、ブラジル人一人ひとりが再び夢を見る権利を持ち、その夢を実現する機会を得られるようにします。
ブラジルを再建し、変革するために、みんなで力を合わせる必要があります。
この国を不平等にしているすべてのものに対して全力で戦ってこそ、この国を本当に立て直し、変革することができるのです。
この課題は、一人の大統領や一国の政府だけが担うべきものではありません。社会全体を巻き込んだ不平等に対する広範な戦線を形成することが急務であり、必要なのです:
労働者、企業家、芸術家、知識人、知事、市長、議員、組合、社会運動、階級団体、公務員、リベラルな(個人の自由を重んじる)専門家、宗教指導者、そして一般市民から成る広範な戦線です。
団結と再建の時です。
だからこそ私は、より公正で強固な、そして民主的なブラジルを望むすべてのブラジル人に、不平等に対する大きな集団的努力に参加するよう呼びかけるのです。
最後に、皆さん一人ひとりにお願いします。今日の喜びが、明日の、そしてこれから来るすべての日の戦いの原材料となりますように。今日の希望が、すべての人に分け与えられるパン種となりますように。
そして、民主主義を妨害し破壊しようとする過激派によるいかなる攻撃に対しても、平和と秩序のもとに、常に対応できるようになりますように。
ブラジルのための戦いにおいて、私たちは敵が最も恐れる武器、すなわち嘘を克服した真実、恐怖を克服した希望、そして憎悪を克服した愛を用いるでしょう。
ブラジル万歳。そして、ブラジル国民よ、万歳。
ルーラ大統領の国民会議に向けた就任演説(2023年1月1日)
私は、この国民議会に出席するのは3回目です。ブラジル国民の皆様からいただいた信任に感謝します。私は、ジェラルド・アルクミン副大統領と、ブラジルのために共に働いてくれる閣僚たちとともに、共和国憲法への忠誠を誓う気持ちを新たにしています。
私たちが今日ここにいるのは、ブラジル社会の政治的良心と、この歴史的な選挙戦を通じて私たちが形成した民主主義的戦線のおかげです。
今回の選挙では、民主主義が偉大な勝利者でした。かつてないほど大規模な官民を動員した動きに打ち克ちました。それは投票の自由に対する最も暴力的な脅威でした。有権者を操作し困惑させるために企てられた最もひどい嘘と憎悪に満ちた運動でした。
国家の資源が、権威主義的な権力事業のためにこれほど流用されたことはありませんでした。公共の機械がこれほどまでに共和制の支配から脱線させられたことはありませんでした。有権者が経済力と産業規模で流布される嘘によって、これほどまでにがんじがらめになったことはありませんでした。
あらゆる(困難な)状況にもかかわらず、投票箱の判断が全国に広まったのは、投票の捕捉と集計の効率性において国際的に認められている選挙制度のおかげでした。司法、特に上級選挙裁判所の勇気ある態度は、投票箱の真実がその反対者の暴力に打ち勝つための基本的なものでした。
下院議員のみなさま、
私は、1988年の憲法制定議会に参加したこの下院本会議に戻り、国民の利益と国家主権のために、社会的、個人的、集団的権利の最も幅広い枠組み憲法に記すために、民主的にここで戦った闘争を、感動をもって思い起こします。
20年前、私が初めて大統領に選ばれた時、副大統領のジョゼ・アレンカル氏とともに、就任演説を「変革」という言葉で始めました。私たちが意図した変革は、憲法上の教訓を具体化することでした。まず、飢餓のない、尊厳ある生活を営む権利、雇用、健康、教育が確保できるようにすることです。
私はその時、「ブラジルのすべての男女が1日3食を食べられるようになれば、私の人生の使命は達成される」と言いました。
今日、この約束を繰り返さなければならないのは、克服していた惨状が進み、飢餓が復活している中にあって、近年、この国に押し付けられている荒廃の最も深刻な事態と言ってもいいからなのです。
今日、私たちがブラジルに伝えるメッセージは、希望と再建です。1988年以来、この国が築き上げてきた権利、主権、および開発という偉大な建造物は、近年、組織的に取り壊されてしまいました。私たちは、この権利と国家の価値という建物を再建するために、あらゆる努力を傾けるつもりです。
紳士、淑女のみなさま、
2002年、私たちは、希望が恐怖に勝ったと言いました。それは労働者階級の代表が国の運命を司るという前例のない選挙に直面し、恐怖を克服したという意味でした。8年間の政権運営で、私たちは恐怖が杞憂であることを明らかにしました。そうでなければ、私たちは再びここにいることはないでしょう。
労働者階級の代表が、持続可能な方法で、すべての人、特に最も貧しい人々の利益のために経済成長を促進するために、社会と対話することが可能であることが示されたのです。予算や政府の決定に労働者や最貧困層を含め、最も幅広い社会参加によって、この国を統治することが可能であることが示されたのです。
今回の選挙戦を通じて、市民権、基本的権利、健康、教育を促進する公共政策が破壊された結果、苦しんでいる人々の目に希望が輝いているのを見ました。私は、寛大な祖国、息子や娘に機会を与える祖国、積極的な連帯が盲目的な個人主義よりも強い祖国の夢を見たのです。
政府移行局から受けた診断結果は、ひどいものでした。医療資源は枯渇しています。教育、文化、科学、技術は解体されました。環境保護は台無しにされました。学校給食、予防接種、公安、森林保護、社会扶助のための資源は何も残されていません。
彼らは、経済、公的資金、企業や起業家、外国貿易への支援の運営を混乱させました。国有企業や公的銀行を荒廃させ、国有財産を手放しました。国の資源は、超過利潤を求める人間や公企業の民間株主の強欲を満たすために収奪されました。
私は、この恐ろしい廃墟の上で、ブラジルの人々とともに、国を再建し、再びすべての人の、すべての人のためのブラジルを作るという決意を固めたのです。
紳士淑女のみなさま、
私は、このような財政難に直面し、ただ生きていくために国家を必要とする膨大な層の人々を支援できるような提案を国民議会に提出しました。
下院と上院が、ブラジル国民の緊急な困窮事態に敏感に反応したことに感謝します。権力の調和を歪める事態に直面した連邦最高裁判所と連邦会計検査院の極めて責任ある態度を心に銘記します。
私がそうしたのは、飢えている人に我慢を求めるのは、公平でも正しくもないからです。
いかなる国家も、国民の不幸を踏み台にして、立ち上がることはなく、また立ち上がることもできません。
国民の権利と利益、民主主義の強化、そして国家主権の回復は我々の政府の柱となるでしょう。
この取り組みは、ボルサ・ファミリア計画の刷新、強化、公平性を保証し、それを最も必要とする人々に奉仕することから始まります。私たちの最初の行動は、3,300万人を飢餓から救い、今日終わりつつある国家破壊の計画の最も重い負担を負っている1億人以上のブラジル人を貧困から救い出すことが目的です。
紳士淑女のみなさま、
今回の選挙過程は、異なる世界観の対比によっても特徴づけられました。私たちは、国の運命を民主的に定義するための連帯と政治的・社会的参加を中心に据えていました。彼らの中心行動は、個人主義、政治の否定、個人の自由と称する名目で行われる国家の破壊でした。
私たちが常に守ってきた自由は、尊厳を持って生きる自由、表現、デモ、そして組織の完全な権利を持って生きる自由です。
彼らが説く自由とは、弱者を抑圧し、相手を虐殺し、文明の法より強い者の法を押し付けるものです。その名は、野蛮です。
私は、(政治への関わりという)旅を始めた当初から、自分の出自にしっかりとこだわりつつ、自分が形成された政治陣営よりも広い戦線の候補者にならなければならないことを理解していました。この戦線は、この国への権威主義の復活を防ぐために確立されました。
今日から、情報公開法が再び施行され、「透明の表玄関(Transparency Portal)」がその役割を再開し、公共の利益を守るために共和制的管理が行使されます。私たちは、国家を個人的・思想的な意図に従わせようとした人々に復讐するつもりはありませんが、法の支配を保証します。過ちを犯した者は、正当な法的手続きの下で、被告としての十分な権利を持って、その過ちに答えることになります。ファシズムに扇動された敵に直面して、私たちが受けた負託は、憲法が民主主義に付与する権限を用いて守られるでしょう。
憎しみには、愛で応えましょう。嘘には、真実で応えましょう。テロと暴力には、法とその最も厳しい結果で対応しましょう。
再民主化の風の下で、私たちは言いました:独裁はもういらない!と。今日、私たちが克服した恐ろしい試練の後、私たちはこう言わなければなりません:民主主義よ、永遠に!と。
これら言葉を確かなものにするためには、我が国の民主主義を確固たる基盤の上に再構築する必要があります。民主主義は、憲法に書かれた権利をすべての人に保証する限りにおいて、国民によって守られるものです。
紳士淑女のみなさま、
本日、私は、行政機関の構造を再編し、政府が再び合理的、共和的、民主的に機能するようにするための措置に署名します。国の発展における国家機関、公的銀行、国有企業の役割を救いあげます。環境的・社会的に持続可能な経済成長の方向へ、官民の投資を計画します。
27州の知事との対話を通じて、無責任に中断された建設計画を再開するための優先順位を定めます。Minha Casa, Minha Vida (公共住宅事業)を再開し、ブラジルが必要とする速さで雇用を創出するための新しいPACを構築します。国内消費市場の活性化と拡大、貿易、輸出、サービス、農業、工業の発展のために、国内外を問わず、投資への融資と協力を求めていきます。
この新しい循環(サイクル)では、BNDES(ブラジル国立経済社会開発銀行)を中心とする公的銀行と、成長と技術革新を誘発するペトロブラス*のような企業が基本的な役割を果たすことになるでしょう。同時に、雇用と所得の最大の担い手である中小企業、起業家精神、協同組合主義、創造経済を後押ししていきます。
*ブラジルの国営石油会社 経済の歯車は再び回り始め、その中心的な役割を果たすのが国民の消費活動です。
私たちは、最低賃金の恒久的評価方針に戻ります。そして、いいですか、INSS(国立社会保障院)に行列を作らなければならないあの恥ずべき状態に、もう一度終止符を打つことを確約します。私たちは、政府、組合中央、企業の三者構成で、新しい労働法について対話を行うつもりです。社会的保護とともに雇用の自由を保証することは、この時代における大きな課題です。
紳士淑女のみなさま、
ブラジルという国は、その潜在的生産力を放棄するには大きすぎます。燃料、肥料、石油プラットホーム(利用環境施設)、マイクロプロセッサー(極小電子部品)、航空機、そして人工衛星などを輸入するのは意味がありません。産業化とサービスの提供を競争力のある水準で再開するための技術力、資本、そして市場は十分にあります。
ブラジルは世界経済の最前線に立つことができますし、そうあるべきです。
技術革新を支援し、官民の協力を促し、科学技術を強化し、適切な費用での資金調達を保証する産業政策によって、デジタル移行を明確にし、ブラジルの産業を21世紀に導くことは、国家の責任であると言えるでしょう。
未来は知識産業に投資する人たちのものであり、科学技術革新省、民間・国立銀行、研究推進機関とともに、生産部門、研究所、大学との対話で計画された国家戦略の目標となるでしょう。
他のいかなる国も、ブラジルが持っているバイオエコノミー(生物経済)の創造性と生物多様性に基づく環境大国となるための条件を持っていません。私たちは、持続可能な農業と鉱業、より強力な家族農業、より環境に優しい産業へのエネルギーと生態系の移行を開始します。
私たちの目標は、アマゾンの森林破壊をゼロにし、劣化した牧草地の再利用を促進するとともに、電気生成部門で温室効果ガスの排出をゼロにすることです。ブラジルは、戦略的農業の先進性を維持・拡大するために、森林伐採をする必要はないのです。
私たちは、土地での繁栄を奨励します。創造し、植え、収穫する自由と機会は、これからも私たちの目標であり続けます。私たちが認めることができないのは、それが無法地帯になるということです。私たちは、力を持たない人々に対する暴力、森林伐採、環境破壊を許さないでしょう。それらはすでにこの国に多くの害を与えてきています。
これが、先住民族省を設立した理由のひとつですが、それだけではありません。太古の昔からここにいる人たちほど、私たちの森を知り尽くし、森を守ることができる人はいないのです。区画整理された土地は、それぞれ環境保護のための新しい領域です。このようなブラジル人に対し、私たちは敬意を払わなければならないし、歴史的な負債を負っています。
先住民族に対して行われたすべての不正を撤回しましょう。
紳士淑女のみなさん、
国家は、それがどんなに強い印象を私たちに与えようと、統計だけでは計れません。人間と同じように、国家はその国民の魂によって真に表現されるものです。ブラジルの魂は、私たち国民の比類なき多様性と、その文化的表現にあります。
私たちは文化省を再創設し、近年啓蒙主義によって妨害されていた文化財を大事にしようとする機運と文化財に近づく権利に関する政策をもっと力を入れて再開させたいと思っています。
民主的な文化政策は、批判を恐れたり、自分のお気に入りだけを選んだりすることはできません。すべての花を咲かせ、創造性の果実を収穫し、検閲や差別なしに、誰もがそれを楽しむことができるようにしましょう。
アフリカの祖先の汗と血で築かれた国で、黒人と褐色肌の人々が貧しく抑圧された多数派であり続けることは容認できません。私たちは、人種平等推進省を創設し、健康、教育、文化における黒人と褐色肌の人々のための政策の再開に加え、大学や公務員における定員割り当て制の政策を拡大しています。
同じ仕事をしても、女性の賃金が男性より低いのは容認できません。男性中心の政治の世界で、女性が認められないことも、容認できません。女性が街頭や職場で平気で嫌がらせをされることも、容認できません。女性が家庭の内と外で暴力の犠牲になっていることも、容認できません。私たちはまた、ここ何世紀も続く不平等と偏見の牙城を取り壊すために、女性省を再創設しています。
一人の人間だけが悪者にされる国には、真の正義は存在しないでしょう。人権省は、すべての市民が、公的・私的サービスの確保、偏見からの保護、公権力からの保護において、その権利を尊重されるように保証し、行動する責任を負うことになります。市民権とは、民主主義の別名です。
法務・公安省は、平和が最も必要とされる場所において、連合体の権限と組織を調和させ、平和を促進するための行動を起こします。すなわち、それは貧しい地域社会においてであり、組織犯罪や民兵、暴力の被害を受けやすい家族の内部においてです。暴力がどこから来るのかは問いません。
私たちは、ブラジルの家庭に多くの不安と害をもたらした、武器と弾薬の入手を拡大する政令を撤回します。ブラジルは武器を増やしたいのではなく、国民のために平和と安全を望んでいるのです。
神の庇護のもと、私は、ブラジルでは、信仰はすべての家庭、さまざまな寺院、教会、礼拝に存在することができることを再確認し、この任務を開始します。この国では、誰もが自由に宗教性を発揮することができるのです。
紳士淑女のみなさま、
もう終わろうとしていますが、Covid-19の大流行は歴史上最も大きな悲劇のひとつでした。ブラジルほど、人口比で死亡者数が多い国は他にありません。ブラジルは、単一保健制度の能力により、健康上の緊急事態に最もよく対処できる国の一つです。
この逆説は、否定論者政府の犯罪的な態度、反啓蒙主義、生命への無頓着さによってのみ説明できます。この大量虐殺の責任は明らかにされなければならないし、罰せられないで済ますことはできません。
今、私たちにできることは、パンデミックの犠牲となった約70万人の親族、両親、孤児、兄弟、姉妹に連帯することです。
SUS(健康保険機構)は、1988年の憲法で作られた機関の中で、おそらく最も民主的な機関です。そのため、それ以来最も迫害され、また、支出上限と呼ばれる馬鹿げた制度によって最も損害を受けてきました。この制度は撤回されなければなりません。
私たちは、基本的な医療を保証するために保健医療予算を回復させ、大衆薬局、専門医療の確保を促進するつもりです。教育予算を再建し、大学の増設、技術教育、インターネット利用の普遍化、保育所の拡大、全日制の公教育への投資を行います。これこそ、真に国の発展につながる投資です。
私たちが提案し、投票によって承認された形は、責任、信頼性、予測可能性への取り組みを必要とし、私たちはそれをあきらめることはないでしょう。予算、財政、金融の現実主義、安定性の追求、インフレの抑制、契約の尊重をもって、私たちはこの国を統治してきました。
他のやり方はありえません。それをさらにもっとよいものにしなければならないでしょう。
紳士淑女のみなさま、
今回の選挙では、世界の目がブラジルに注がれていました。ブラジルが再び気候危機との闘いにおける主導者となり、民主的な手順を踏みながら、所得分配を伴う経済成長を促進し、飢餓と貧困と闘うことができる、社会的・環境的に責任ある国の模範となることを、世界は期待しています。
メルコスール*をはじめとする南米統合の再開、ウナスール**の再活性化など、この地域における主権的な協調の事例を通じて、私たちが主人公たらんとする姿勢は具体化されるでしょう。その上で、米国、欧州共同体、中国、東欧諸国などの主要国との誇りある活発な対話が可能となるでしょう。BRICSの強化です。アフリカ諸国との協力です。そして我が国が追いやられている孤立を打破することが可能になるのです。
*1991年のアスンシオン条約と1994年のウロ・プレト議定書により設立された、南アメリカの貿易圏である。 日本語では、南米南部共同市場または南米共同市場と訳される。日本の外務省やJETRO、JICAなどは、前者を用いることが多い。 アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイが正加盟している。(ウィキペディア)
**南米諸国連合(UNASUR: スペイン語: Unión de Naciones Suramericanas)は、2007年に結成された「同一通貨、同一パスポート、一つの議会」を目指す南アメリカの政府間機構。南米国家共同体ともいう。事務局はエクアドルのキト、南米議会はボリビアのコチャバンバ、南米銀行(英語版)はベネズエラのカラカスに所在。2010年代に入ると組織を牽引してきた各国のリーダーが相次いで退陣。国際会議の開催が行われなくなった上に複数の加盟国が脱退したため、組織として停滞傾向にある。(ウィキペディア) ブラジルは自国の支配者、運命の支配者にならなければなりません。主権国家に戻らねばならないのです。私たちは、アマゾンの大部分と広大なバイオマス(生物総量)、大規模な帯水層、鉱床、石油、クリーンなエネルギー源に対して責任を負っています。主権と責任によって、私たちはこの偉大なものを人類と共有することができるのです。連帯です。絶対に従属ではありません。
ブラジルの選挙から導き出された意義として、ついに、(ブラジルという)民主主義の模範とも言える国が直面してきた様々な脅威が目に見えてきました。地球上のいたるところで、権威主義的な過激派の波が、透明な統制の及ばない技術的手段によって憎悪と嘘を広めながら、その形を明確にしています。
私たちは表現の自由を完全に守り、信頼できる情報を入手できる民主的な事例を作り、憎しみと嘘の毒を接種する手段の責任を追及することが急務であると認識しています。これは、戦争、気候危機、飢餓、地球上の不平等を克服するのと同様に、文明の課題です。
私は、ブラジルと世界のために、政治がその最高の意味において、そしてそのあらゆる限界にもかかわらず、異なる利害の間の対話と合意の平和的構築のための最良の方法であるという確信を再確認するものです。政治を否定し、政治の価値を下げ、犯罪化することは、専制政治への道につながります。
私の最も重要な使命は、今現在、私が受けた信頼を守り、未来や困難を克服する能力への信頼を決して失わない、苦しんでいる人々の希望に応えることです。国民の力と神のご加護のもと、私たちはこの国を再建していきます。
民主主義、万歳!
ブラジル国民、万歳!
ご清聴ありがとうございました。
翻訳:Internationalist 360°