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農民の抗議運動とインドに対する略奪

農民の抗議運動とインドに対する略奪

<記事原文 寺島先生推薦>
The Farmers’ Protests and the Looting of India

アサド・イスミ(Asad Ismi)著

Global Research
6月1日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年6月19日


 ここ数週間のことだが、インドの農民の抗議運動が世界的に人々の注目を集めている。歌手のリアーナや、気候活動家のグレタ・サンバーグや、女優のスーザン・サランドンなどから支持の声が上がっている。抗議運動の前線で戦う女性農民たちが、タイム誌の3月上旬号の表紙を飾った。その1ヶ月前には、カナダのトロント・スター紙に、地域労働団体がインドの農民たちを支持する全面広告を載せた。西側からの関心が得られたのはつい最近のことだが、インドの農民運動は半年以上続いており、タイム誌の報道によれば、「現在世界で進行中の抗議運動で最大規模のもので、人類史上においても最大のものだ」とのことだ。

 インドの労働総人口5億100万人のうちの約41%が、農業従事者だ。その大部分が、パンジャブ州や、ハリヤーナー州や、ウッタル・プラデーシュ州出身者だ。彼ら農民たちが要求しているのは、3件の法律の撤回だ。これらの法律は、ヒンドゥー至上主義者であり、新自由主義者であり、ネオファシストであるナレンドラ・モディ首相政権と、首相が所属するインド人民党(BJP)が2020年9月に決めた法律だ。これらの法律は、インドの農業部門を企業の支配下に置くことに道を開くものであり、農民にとっては、農作物に設定されていた公的最低価格(MSP)や、穀物の買い取りのために政府が管理していた市場(mandis)がなくなってしまうことになる。さらにこれらの法律は、農作物生産市場委員会(APMC)と、政府による農作物の買い入れ制度を弱化させるものだ。農民たちを保護するこれらの政策は、何十年もの間、インドの農民たちを、自由競争による完全な搾取から守ってくれていたというのに。

 これらの新法のもと、農民たちは農作物を直接企業に売ることになった。インドでは独立資本が市場を支配することがよくあるので、農家は農作物を安値で買いたたかれる。この新しい法体制のもとでは、インドの85%をしめる小規模農家や、零細農家たちが、自分たちの土地を企業に手渡すことになる可能性がある。これら3法は、農民たちに何の相談もなく、また議会上の正当な手続きを無視した形で制定されたものであり、アグリビジネスの利益のために作られた法律だ。これらの法律は、農民たちが企業を訴えることも禁じており、完全にアグリビジネスに恩恵を与えるための法律だ。
 
 農家であるスークデブ・シン・コクリさんはBBCの取材にこう答えている。

 「こんな法律は、小規模農家や零細農家たちに対する死亡宣告です。これらの法律の目的は、農業や市場を大企業に手渡すことにより、農民たちを破滅させることです。大企業は私たちの土地を奪い取りたいのです。でもそんなことはさせません」

 これらの抗議運動に対する政府の対応はずっと高圧的だ。政府は抗議運動が起こっている地域のインターネットを遮断し、ツイッター社にインド人民党政権を批判するようなアカウントは削除するよう何度も圧力をかけ続けている。2月にツイッター社はインド政府に協力して、抗議運動に関わっている500人のアカウントを削除し、後にいくつかのアカウントを復元させた。そのアカウントの中には、非常に人気のあるアカウントのKisan Ekta Morchaや、Tractor2Twitrも含まれていた。実際、抗議運動家たちは、政府から直接、あるいは政府に支援された勢力から暴力を受けている。例えば、催涙ガスや、放水銃や、警察によるバリケードや、国家が行っていると思われる農民に対する攻撃などだ。これまでのところ、12月の寒波による死者数や、自殺者と合わせて、抗議運動に対する国家の認める暴力により248人が死亡している。

 ここ30年間、これらの新法が制定される以前から、インドの農民たちは、公的支援が次々と切り捨てられる中で激しい苦難を味わってきた。1992年にインド政府は、新自由主義政策をとる方向に定まった。それ以来、33万人の農民が自死している。モディ政権による新しい法律は、いま農民たちを崖っぷちにまで追いつめている。

 「農民たちの意気が上がっていることは、インド社会を大きく変える可能性がある」と、プラブハット・パトナイク氏は私に語った。

 パトナイク氏は、ニューデリーのジャワハルラール・ネルー大学の名誉教授であり、インドにおける経済学の代表的な研究者だ。パトナイク教授によれば、この農民運動は「英国支配からのかつての反植民地独立闘争を思い起こさせる」もので、その独立闘争の目的は、「平等で民主的な社会」を建築することであり、その社会が実現されれば民衆の「生活水準」が改善されると考えられていた、とのことだった。パトナイク教授が強調したのは、「この考え方だけでもインドを国家として生き残らせることができる」という点だ。さらに農民運動は、「インドの国家としてのいのちを再生させるための闘いだ」とも述べている。

 サトヤ・サガー氏もパトナイク教授の意見に同意し、私にこう語っている。「この農民運動は、(モディ首相やインド人民党が率いている)上級カーストに所属するヒンドゥー至上主義者たちが作り出したファシストとの闘争であり、英国の植民地主義からの解放を求めたインド人の闘争と同じ、歴史的な闘争である」と。サガー氏はインドの著名な左派の記者であり、「カウンター・カレント」というオンライン誌の共同編集者である。

 2019年の国政選挙で2番目に多い票を獲得したモディ首相と、インド人民党による支配の特徴は、インドの少数派に対するあからさまな差別意識と、暴力的な攻撃にある。差別がもっとも明らかになっているのは、2億人いるインドのイスラム教徒に対する差別だ。インドのイスラム教徒は全人口の14%にあたる。これらのイスラム教徒への差別を進める一方で、インド人民党はヒンドゥー教徒が支配する文化を推進している。ヒンドゥー教徒はインドの総人口の84%を占めている。特に上位カーストに所属する人々は、企業によるインド経済支配を確実にしようとする計画を進めている。モディ首相は、新自由主義を広めるために、ネオファシズムの考えを利用している。

 パトナイク教授は最近のインタビューでこう主張している。

 「世界中で新自由主義を追い求めれば、その行き着く先はネオファシズムになる。新自由主義は、すべての国において、収入と富の配分の不平等を広げており、(インドのような)国々の労働者階級に属する多くの民衆たちを貧困に落とし入れている」と。このような大衆からの搾取を強めるために、「企業や金融界の富裕層たちがネオファシストたちと手を組んで、「ほかの人々」を中傷することによって、生活改善についての話をごまかそうとしているのだ。その際、少数派宗教や少数派民族が運悪く利用されるということがよくあるのだ」

 サガー氏が語ったのは、農民政策に関して、モディ政権が、ある特定の企業の利益のためにどれだけ奉仕しているかについて、だった。以下はサガー氏の発言だ。

 「モディ首相は、大企業が作り出した影武者にすぎない。新しい農業関連法で主に利を得ると考えられているのは、ムケシュ・アンバニだ。彼はインドで(それにアジアでも)最も裕福な豪商だ。(さらに彼はモディ首相に一番多く資金提供している)」

 さらにサガー氏は、アンバニは210億ドルの投資を「フェイスブック社や、グーグル社や、サウジ・アラビアとアブダビ首長国の政府資金から得ている。こんな投資を受けることができた主要な理由は、アンバニが現インド政権と近い関係にあることが知られていて、アンバニの事業に投資すれば、利益が得られると考えられているからだ」と語っている。

 サガー氏の指摘によれば、

「フェイスブック社はアンバニが所有しているIT関連会社「ジオ・プラットフォーム」社の最大の投資元だ。ジオ・プラットフォーム社は、インドで最大のモバイルネットワークであるジオ社と、インドで急成長を遂げているe-groceries(ネット上で食料品を売買すること)業界を支配しようともくろんでいるジオ・マート社の両社が所有している会社だ。アンバニが所有するエンパイア社が、フェイスブック社のメッセージサービスであるWhatsAppと提携する計画がある。WhatsAppはインド国内に4億人以上の利用者がおり、ジオ・マート社の消費者基盤を広げる狙いもある」とのことだ。

 「ジオ・マート社のようなe-groceries会社が、食料品の販売網や、販売経路や、小売を取り仕切るようになれば、巨大アグリビジネスが、穀物の選択から、種子や、肥料や、農薬の選択まですべてを取り仕切ることになりそうだ。デジタルマネーを扱う業者(その中にはフェイスブック社のWhatsAppも入っている) が、支払いに使うデジタルマネーを提供することで、最終的には企業の重役や、投資家たちが気ままに利を得るために、農民を永久に安月給のサラリーマン状態にしてしまうことになるだろう。農業に関する3新法の意味は、そのようなベンチャー企業の成長を手助けすることなのだ。そしてこのような法律体系がなければ、インドに資金投資しようという外国の投資家は出てこないだろう」

 サガー氏は、アマゾン社や、フェイスブック社や、グーグル社や、ウォルマート社を、英国の東インド会社になぞらえている。大英帝国とともに、200年間インドを植民地支配し、インドを搾取し、インドに貧困の苦しみを味わわせたあの東インド会社だ。

 企業によるインドの植民地支配が続けられているが、それは、インド人民党が、「分割して統治せよ」という戦略で、国内の少数派民族や少数派宗教を悪者にすることが上手くいっている状態が続いている場合に限られる。しかしこのようなやり方が、農民の抗議運動により大きく揺るがされている。というのも、抗議運動では、農民たちも、労働者たちも、ヒンドゥー教徒たちも、イスラム教徒たちも、ダリッツ(“不可触民“という名でも知られているヒンドゥー教カーストの最低位に属する人々)たちも、アディバシ族(インドの先住民族)たちも、皆が団結しているからだ。イスラム教徒と、ダリッツと、アディバシ族の人口を合わせれば、インド総人口13億人の半数に近い数字になる。

 パトナイク教授の説明によれば、上記の人々の団結により、農民の抗議運動は、インド人民党に反対する国民的な政治運動に発展しつつある、とのことだ。「農民たちの運動は、労働問題など他の闘争中の問題と共通しており、お互い連携して戦うことができる。労働者たちも、パンデミックに伴う都市封鎖措置期間に通された抑圧的な法律に反対していたのだから」とのことだ。

 さらにパトナイク教授が付け加えたのは、ジャート族(農業カーストに所属する人々)の農民たちと、ダリッツ・カーストの農業従事者たちが連帯している事実だった。この両カーストとも、「社会階級とカースト制度の歪み」に苦しんできたのだが、農業関連新3法にともに反対している。「この現象は、インド国内の地政学における根本的な変化を表している」とパトナイク教授は強調し、「未来に繋がる重要な1歩になるだろう」と述べた。

 サガー氏もパトナイク教授と同意見であり、「インドの民主主義に関わるすべての機関を威嚇し、崩壊させ、買収しようというインド人民党の企みは、農民運動により大きく阻害されていて、この農民運動が、インドの他の民衆運動を刺激して、ともに闘う土壌ができてきた」と語った。

 農民たちの後からとぼとぼついてきているのが、インドの野党勢力だ。その中で一番目立っているのが、インド国民会議党だ。しかしインド国民会議党は、前回の選挙でインド人民党が大勝したため、国政においてほとんど力を発揮できない状況におかれている。サガー氏は、インド国民会議党のことを、「最も勇ましい騎士たちが乗って鞭を当てているのに、敵を追いかけようともしない死に馬のようだ」と揶揄している。 しかし、このような弱体化した政党ではあっても、 インド国民会議党は最近行われたパンジャブ州での市会議員選挙で圧勝した。その主な理由は、農民運動が後押ししたからだ。このことはインド国民会議党が勢力を巻き返すという希望を呼ぶものだった。パトナイク教授は、農民たちの抗議運動の高まりが、既存の政党に刺激を与えるのではないかと楽観視している。

 モディ首相のインド人民党がもつ政治的権力は、見た目ほど安泰ではない。インド人民党が国政選挙で実際手にした得票率は37%程度なのだが、インドが採用している英国式の小選挙区制においては、与党となるのに十分な得票率だった。逆に言えば、62%のインド国民は、インド人民党を支持していないといことになる。しかし様々な政党が票を分け合ってしまってこうなっているのだ。 3月2日に農民抗議運動家たちが、インドの10組の中央労働組合と合同で発表した内容によれば、5つの州で実施される選挙において、反インド人民党キャンペーンを張るとのことだ。 「農民たちがインド人民党の議席数を減らす役割を果たすことは間違いない」とパトナイク教授は語った。

 ハリヤーナー州の農民であるラマザン・チョーダリーさんは、ヒンドゥー紙の取材に対して、こう語っている。

 民衆が破ろうと決意しているのは、「インド人民党による、インドの社会構造の分断政策です。私たちは、連中が“ジャート族VS反ジャート族“、“シーク派VSヒンドゥー教徒“のような分断を仕掛けてくることを、手をこまねいて待っているわけではありません。この抗議運動は、インド国民を国内至る所で団結させるものなのです」
*

This article was originally published on Canadian Centre for Policy Alternatives (page 16).

Asad Ismi covers international affairs for the Monitor.


 

インドの惨状と中国人権問題の武器化。資本主義インドの「民主主義」は、数十万人の貧しい農民を自殺に追い込む

<記事原文 寺島先生推薦>
India and the Weaponization of Human Rights

India’s Capitalist “Democracy” Condemns Hundreds of Thousands of Impoverished Farmers to Suicide


カーラ・ステラ( Carla Stea)著

Global Research 2021年2月21日

初版は2020年9月

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年4月23日


 共産主義中国の「独裁政権」は7億人の中国市民を貧困から救い出した:しかし、西側権威筋から褒められているのはインドで、中国は悪魔化され、制裁を受けている。

 「何よりも優先されるべき人権は生存権である。」王毅(中華人民共和国外務大臣、国家顧問)

 12年前、国連経済社会局の事務次長補佐であるジョモ・シュリー・クワメ・スンダラムは、記者会見で2008年の「アジア・太平洋の経済社会調査」を発表し、その124ページで次のような驚くべき事実を明らかにした。

 「農民は限られた資産で自分たちの土地を耕作し、種子やその他の営農に必要な物資を購入するために借入金に依存している。彼らの農業収入の低下は債務につながる可能性がある。インドでは、例えば農村地域の苦悩は、2001年から2005年の間の農民の自殺者数が86,922人という多さに表れている(インド政府、2007年)。

 しかしながら、2014年まで、この恐ろしい事実についての報道や公式の調査はほとんどなかった。ジョナサン・ケネディの記事「『見捨てられた』インド農民たちの自殺の蔓延に関する新しい証拠」で、彼は次のように述べている。

 「2010年には、187,000人のインド人が自殺した。それは全世界の自殺の5分の1にあたる。最新の統計調査によると、自殺が最も多い地域と、自由市場経済へ移行した(それは比較的最近起こったことであるが)ことに伴い価格変動の激しい作物を栽培していたために被害を受けた貧しい農民地域との間に、強い因果関係がある」

 「しばしば忘れられがちなことであるが、インドの人口のほぼ70%にあたる8億3300万人以上が依然として農村部に住んでいる。これらの農村住民の大部分は、過去20年間の経済成長の恩恵を受けていない。実際、自由化は農業部門に危機をもたらし、多くの小規模換金作物農家を借金に追い込み、多くの場合自殺に追いやっている」

 トランプが北朝鮮の社会主義指導者である金正恩に約束した資本主義の楽園とはこんなもの。

 2014年2月22日、エレン・バリーは、ニューヨークタイムズ紙で「農民が自殺した後、債務はインドの家族に降りかかる。貧しい未亡人は「娼婦」と呼ばれるようになる」と見出しを付けた。2014年6月、APは、次のような見出しの記事をのせた。「レイプされ、殺害された少女たちは、インドの貧困層への恐ろしい危険性を明らかにしている」:ユニセフによると、「インドの人口のほぼ50%にあたる約5億9,400万人が野外で排便しており、ウッタルプラデーシュ州のバダーユーン地区のような貧しい田舎では特にその状況は著しい、先週の火曜日に、用便をしにいった2人の10代の少女が誘拐され、集団レイプされ、リンチされたことは、彼らの日々の試練が新たな恐ろしい段階に入ったことを明示することになった」とのことだ。

 そしてついには、6年後、その絶望の原因を都合よくCovid-19のせいにして、ニューヨークタイムズは故意に事実を混乱させ、次のように書いた。

 「ロックダウンはインドの農民に死の種をまく」

 「インドは世界で自殺率の最も高い国の一つだ。国家犯罪記録局の統計によると、2019年には、全国で合計10,281人の農民と農業従事者が自殺した。自分の命を奪うことはインドでは依然として犯罪であり、専門家が何年間も述べてきたことだが、ほとんどの人が報道されて汚名を着せられることを恐れているため、実際の数ははるかに多い」

 貧しいインド人が被っている恐怖に対する世界の関心は希薄で、それは国連の専門機関においてさえしばしば無視されてきた。このことは、西側メディアや国連安全保障理事会内で中国が告発されている表面的な人権侵害への圧倒的な注目度に比べると極めて対照的である。

 インドのモディ現首相は、イギリスからのインド独立の偉大な指導者であるマハトマ・ガンジーの暗殺に関与した政党の出身である。モディが1947年までインドを奴隷にしていた西洋の手にインドを戻すことを決意していることは明らかだ。モディはインドの前の主人を喜ばせるのに、非常に従順な下僕だ。植民地時代のインドに対する英国の大量虐殺政策の簡潔な説明は、スーザン・バトラーの傑作「ルーズベルトとスターリン、パートナーシップの肖像」(327ページ、Knopf版)に記載されている。

 「インドに対するイギリスの支配は、ロシアに対するスターリンの支配と同じくらい残酷であった」。1941年11月、チャーチルはベンガルで焦土戦術をとり、それは拒否政策(Denial Policy)として知られるようになった。兵士たちは見つけた全ての米を押収するように命じられた。彼らはサイロと倉庫を押収し、作物の種を奪った。兵士はまた、全ての産業用、娯楽用輸送機関、ベンガルの漁師のボートを含む全てのボート、仕事に出かける自転車を含む全ての自転車を押収した。米の貯蔵はなくなり、食料を探す輸送機関を拒否され、ますます多くのベンガル人が餓死し始めた。(訳注: チャーチルは、インドの穀物の需要を満たすことを却下し、戦争を支援するためにインドから大量の穀物を輸出するよう主張していた)

 1942年10月16日、サイクロンと津波がベンガルを襲い、畑、家屋、そして人々が生活し続ける力を台無しにした。この災害に直面しても、英国の政策として「コメの拒否」が続いた。その結果、ベンガルの人口の13パーセントが飢餓で亡くなった。インド人は海外旅行を許可されておらず、国際電話や電信も利用できず、彼らの指導者たちは刑務所にいたため、ベンガルの人々は彼らの窮状を世界に知らせる方法はなかった。

 津波の後、FDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト:第32代アメリカ合衆国大統領)は、それまでの責任者ジョンソンを、米国で最も有能な外交官のウィリアム・フィリップスと交替させ、彼の個人的代理とした。FDRはフィリップスに「可能な限り早い時期に、すべての隷属する人々に自由を与える」という哲学を推し進めるよう指示した。1942年後半、フィリップが到着するまでに、マハトマ・ガンジーとジャワハルラール・ネルーに率いられた多数のインド人は、イギリスの高圧ぶりに完全に怒り反抗していた。その太守(訳注 植民地などを王の名において統治する役職のこと)は1万人のインド人を殺害し、9万人を刑務所に入れて報復した。外部との連絡を絶たれていたネルーとガンジーを含む2万5000人のインド国民会議のメンバーは、刑務所に拘留されたままだった。彼らと面会したいというフィリップの要求は拒否された。チャーチルは、彼が軽蔑していたネルーが断食をしていることを伝えられたが、「我々は彼が断食して死に至ることに異存はない。彼は完全に邪悪な勢力であり、あらゆる点で我々に敵対している」と述べた。

 チャーチルは、戦いはヒンズー教徒とイスラム教徒間の悪感情によって引き起こされたと主張したが、それは真実ではない。実際、過去に行われたように、英国の政策は、2つのグループ間の敵意を育むことだった。「私は、統一されたインドという展望には全く魅力を感じない、それは我々を出口へ導くだろうから」と彼は認めた。(私が話したパレスチナ人とイスラエル人の大部分は、彼らの進行する悲惨な紛争の原因は「分割して統治せよ」という英国のマキアヴェリ主義政策にあると考えている。)「フィリップはFDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)への報告の中で率直に語っている。『ベンガル地方の農村には食べ物がなく、村人たちは都市に流入して飢餓で死亡している。カルカッタの路上では飢餓者が非常に増えたと伝えられ、そのコミュニテイーの著名なヨーロッパのメンバーたちは、死体を取り除くために、市当局に対して適切な手段を求める公開書簡を出した』。チャーチルの個人秘書だったジョン・コルヴィルは、彼の日記にこう書き残している: 『チャーチル首相の考えでは、ヒンズー教徒とは、破滅すべき運命にあるのに、繁殖による人口増により守られているだけの邪悪な民族であり、空軍元帥のバート・ハリスが彼らを全滅させるために、余った爆撃機を送ることを望んでいた』。現代の推定では、少なくとも100万人、おそらく300万人もの人々が亡くなっている」

 元国連事務次長のサシ・タルール博士によると

 「チャーチルの手はヒトラーの手と同じくらい多くの血にまみれている」

 おそらくインドは今、インドの元奴隷所有者である西洋帝国主義の命令に従っているからであろうが、貧しい農民の恐ろしい数の自殺、女性の零落状態(貧しい少女の無数のレイプと殺害)は、国連の権力の回廊ではほとんど注目されておらず、女性の権利を支持する一般的で効果のない決議に組み込まれているだけだ。

 インドの代わりに西側メディアから厳しい鞭を打たれているのが中国だ。西側メディアは、何百万人もの貧しいインド人に対する恐ろしい人権侵害を大目に見て、中国ウイグル人の状況や香港での「無実の抗議者」について、絶え間のない吐き気をもよおす空涙を流している。

 シリア国連大使のバッシャール・ジャアファリが明らかにした大規模な証拠によると、サウジアラビアは、毎年、5000人のウイグル人に中国の新疆ウイグル自治区からサウジアラビアへのメッカ巡礼の旅費を提供している。その巡礼の間に、イスラム急進主義と聖戦を教え込まれる。これらのウイグル人は、聖戦の専門技術習得が完了するまで、他の巡礼者よりも1か月長くとどまる。その後、分離主義運動を助長し、テロ行為を行う目的で中国に戻される。中国政府はそのテロ行為を阻止し、国民をまもろうとしている。これら「影なき狙撃者」を中国社会に再統合しようとする再教育キャンプの手段は、表面上「非民主的」である。それが中国における表面的な「人権侵害」の懸念として、西側の現在の標的となっている。傲慢な西側諸国は、刑罰を受けることのない自国内のひどい人権侵害から注意をそらそうという魂胆なのだ。 (ジョージ・フロイドの公道での絞殺は、この進行中の残虐行為のほんの一例であり、残虐行為は、大規模に刑罰を受けることなく発生している)。
訳注「影なき狙撃者」とは、リチャード・コンドンによる1959年のスパイ小説。朝鮮戦争で捕虜となり、洗脳を受けて米国に帰国した政治一家の息子が、共産党の暗殺者として暗躍するという、冷戦をモチーフにしたストーリー。

 中国は56の民族からなる巨大な国だ。ほぼ確実でおそらく議論の余地がない事実は、敵対する外国勢力が中国の崩壊を扇動することで利を得ようとしているという事実だ。というのも、今中国は、英雄ヘラクレスとも呼べるような社会主義経済大国になっているからだ。この中国を、かつてソビエト連邦を構成していた15カ国が追い込まれたように、弱体化し、困窮させようとしているのだ。

 ウイグルの聖戦士は確実に使命を果たしている。早くも2013年には、北京の中心部でテロリストによる爆撃があり、その後、中国の他の場所でも暴力的過激主義者の行動が発生した。 5000年の文明の恩恵を受け中国人は洗練されているので、自国でのこの新たなテロの惨劇の根底にある敵対的な地政学的政策を認識しており、この政策の恐ろしい蔓延によって彼らの領土の混乱が一層拡大することを防ぐために行動を起こした。新疆ウイグル自治区の再教育キャンプは防御策であり、「世界最大の民主主義」ともてはやされる資本主義インドの自由市場経済政策とは違って、自殺の蔓延を引き起こしていない。

 2020年9月22日の国連総会でのトランプ米大統領の演説は、米国が主張する「偉大さ」への世界最大の挑戦者である中国に対して、明白な敵意をむき出しにした耳障りな宣言であった。 7億人を貧困から救った中国に対する人権侵害捏造の絶え間ない攻撃は、非常に際立って偽善的であるため、その偽善性は一般の観察者にとっても明らかだ。(一方、米国では、核兵器への1兆ドルの投資で数百万人を貧困に追いやっている。そして、非常に多くの人々が飢え、ホームレスとなり、Covid‐19の拡散を封じ込め、制御する医療機器や資源が不足している)。この露骨な誤魔化しが理解できない(または断固として認めない)状態が、まさに今この瞬間にも続いているのである。これは、まさに、米国や西ヨーロッパの大衆への圧倒的な教化・洗脳の証しである。

 西側の人種差別と不平等に対して欲求不満と怒りをつのらせる抗議者は、ますます侮辱され、虐待され、または殺害されている。その一方で、香港の反共産主義の抗議者がもてはやされている。オーウェルの小説に描かれているこの洗脳の仕方(訳注 オーウェルの特に作品『1984』の組織化され人間性を失った世界)は悲劇的であり、マサチューセッツ州ケンブリッジの優秀な精神科医が最近私に言ったこと、つまり「人類は自分の面倒をみる方法を知らない。その結果として生き残ることはできない」という結論の例証である。

 国連の一般討論会の冒頭で、アントニオ・グテーレス事務総長は次のように強調した。「私たちはとても危険な方向に向かっている。私たちの世界は、2大経済圏が地球を大きく割く未来、つまりそれぞれが独自の貿易や金融ルール、インターネットや人工知能を持つような未来をもつ余裕はない。このような分裂は、必然的に地政学的戦略および軍事的分裂に変わる危険性がある。これは何としても避けなければならない」。

Carla Steaは、グローバリゼーション研究センター(CRG)のリサーチアソシエイトであり、ニューヨークの国連本部にあるグローバルリサーチの特派員。

世界規模での農業改革:インド・モディ政権「農耕改革」の背後にあるWEF(世界経済フォーラム)の目論み


<記事原文 寺島先生推薦>

The Reshaping of Global Agriculture: The WEF Agenda Behind India’s Modi Government’s “Farm Reform”


F・ウィリアム・エングダール

2021年2月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2021年3月13日

 2021年9月、国連は食料システム・サミットを開催する。その目的は、マルサス主義的な国連アジェンダ2030「持続可能な農業」で掲げられた諸目標の文脈に沿って、世界の農業と食料生産を改革することにある。インドのナレンダ・モディ政府が最近制定した大規模な変化を伴う農業法案は、この世界的改革と同じ流れの中にあり、いい点はひとつもない。

 モディ政権のインドでは、昨年9月に3つの新しい農業法案が急遽議会を通過して以来、農民たちは大規模な抗議行動を行っている。このモディ改革は、世界経済フォーラム(WEF)とそれが打ち出した「農業のための新しいビジョン」が組織的に入念に取り組んだことが動因となっている。これはクラウス・シュワブの「グレート・リセット」の流れの中にあり、国連アジェンダ2030の企業版ということになる。

モディ・ショック療法


 2020年9月には、正式な投票ではなく、慌ただしい発声投票で、そして報道によれば、インドの農民組合や関連組織との事前協議もなく、ナレンダ・モディ首相の政府は、インドの農業を根本から規制緩和する3つの新しい法律を可決した。それが発火点となって、何ヶ月にも及ぶ全国的な農民の抗議と全国的なストライキとなった。インド全土に広まったこの抗議運動は3つの法案の撤回を要求している。

 事実上、この3つ法律は、大企業による土地購入を可能にし、商品の備蓄に関する諸規制を撤廃することで、政府が農民に支払う費用を抑制するための法律である。また、大規模な多国籍企業は、農家の農産物が通常保証価格で売られている地方市場や地域の州市場を通さず、企業が農家と直接取引を行うことができるようになる。こういったことの結果はただ、インドの基盤の弱い食物(供給)連鎖の中で、推定数千万人の末端の、つまり小規模農家や小規模中間業者を破滅させることになるだけだ。

 モディ政権が成立させたこの法律は、IMFと世界銀行が、1990年代初頭から要求してきたことの具体化だ。つまり、インドの農業と農耕をロックフェラー財団が数十年前アメリカで開拓した企業型アグリビジネスモデルに変えようとするものだ。歴代インド政府は、インド最大の人口を占める農民層をわざわざ攻撃するようなことはこれまで一度もしなかった。農民たちの多くは今後の筋書きをはっきり持っているわけではないし、(外部からの)支援もほとんどない。モディの主張は、現在のシステムを変えることで、インドの農家は2022年までに所得を「倍増」できるというもので、それは何の証明もない怪しげな主張である。企業は初めてインド国内の農地を購入することが許され、それによって大企業、食品加工会社、輸出業者は農業部門に投資できるようになる。それに対して小規模農家は手の打ちようがない。この急進的な動きの背後にいるのは誰か?ここで私たちの視野に入ってくるのが、WEFとゲイツ財団がやろうとしている急激な農業のグローバル化だ。

WEFと企業優先主義者たち


 (モディ政権が成立させた)3つの法律は、世界経済フォーラム(WEF)とその一部門である「農業のための新しいビジョン(NVA)」がこの数年間率先してやってきたことの直接の結果である。WEFとNVAは12年以上にわたり、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアで企業型モデルを推進してきた。インドは、1960年代、ロックフェラー財団の「緑の革命」が失敗に終わって以来、企業による農業の乗っ取りに対する抵抗が激しい国だ。WEFのグレート・リセット――というよりは「持続可能な農業」のための国連アジェンダ2030として知られる――のためには、インドの伝統的な農耕と食料(供給)システムは破壊される必要がある。インドの零細家族型農家は、大規模なアグリビジネス・コングロマリット企業への身売りを余儀なくされ、零細農家のための地域レベルまたは州レベルの保護施策も当然撤廃ということになる。「持続可能」とは言いながら、それは小規模農家のためではなく、巨大なアグリビジネスグループにとって「持続可能」ということだ。

 この目論みを推進するために、WEF は「NVA インド・ビジネス・カウンセル」と呼ばれる企業と政府の利害関係者による強力なグループを設立した。WEF のホームページには、「NVA インド・ビジネス・カウンセルは、インドにおける持続可能な農業成長を推進するための民間セクターの協力と投資を推進する非公式のハイレベルなリーダーシップ・グループとしての役割を果たしています」と書かれている。「持続可能な」という言い方で彼らが何を言っているかは、その会員名簿を見れば分かる。

 2017年のWEF傘下NVAインド・ビジネス・カウンセルの構成メンバーは次の通り。

①農業用農薬の世界最大の供給元であり、現在はモンサント社のGMO種子を扱うバイエル・クロップサイエンス、
②米国穀物会社のカーギル・インド、
③GMO種子・農薬メーカーのダウ・アグロサイエンス、
④GMO・農薬メーカーのデュポン、
⑤穀物カルテル大手のルイ・ドレフュス・カンパニー、
⑥ウォルマート・インド、
⑦インド・マハヒンドラ&マヒンドラ(世界最大のトラクター製造企業)、
⑧ネスレ・インド、
⑨ペプシコ・インド、
⑩ラボバンク・インターナショナル、
⑪インド銀行
⑫世界最大の再保険会社スイス・リー・サービス、
⑬化学メーカーのインディア・プライベート・リミテッド、
⑭そしてインド第二の富豪であり、モディのBJP党の主要な出資者でもあるゴータム・アダニのアダニ・グループ

 インドの農民組織はひとつもこのリストには載っていないことに注目してほしい。

 モディの一番の支援者であるゴータム・アダニがWEF NVAインド・ビジネス・カウンセルに参加しているほか、ムケシュ・アンバーニはクラウス・シュワブの世界経済フォーラムの理事会にも参加している。アンバーニはインド最大のコングロマリットであるリライアンス・インダストリーズの会長兼社長であり、約740億ドルの資産を持つアジアで2番目の富豪である。アンバーニは、リライアンス社が巨額の利益を得ることになることから、この過激な農業改革を強力に支持している。

 12月にパンジャブ州の農民は、モディ首相の胸像を燃やした。同時にリライアンス・インダストリーズのムケシュ・アンバーニ会長、アダニ・グループのゴータム・アダニ会長の胸像も燃やした。それはこの二人がモディ新法の背後にいることを非難してのことだった

 これらの巨大企業のことを少しでも知っている人にとっては、インドの推定6億5千万人の農民の利益や福祉が優先されていないことは明らかである。注目すべきは、現在アメリカ在住インド人であるIMFのチーフエコノミスト、ギータ・ゴピナートがこの法律を支持し、最近制定されたこのインドの農業法が農家の所得を増加させる「可能性」を持っていると述べていることだ。

 11月26日、農民を支援する約2億5千万人の全国ゼネストが始まった。1,400万人以上のトラック運転手を代表する運輸労組が農民組合の支援に乗り出した。これはBJPモディ政権にたいしてはこれまでで最大の挑戦である。政府が引き下がろうとしないという状況があるので、闘いは厳しいものになるだろう。

 「アジェンダ 2030」――クラウス・シュワブが好む言い方を使えば、世界の食料・農業産業を変革するための「グレート・リセット」――を成功させるためには、世界最大の人口を持つインドを、グローバル・アグリビジネス企業の管理する網の中に引き入れることが最優先事項である。モディの規制緩和のタイミングは、明らかに、国連2021年食料システム・サミットが念頭にある。

AGRAと国連食料システム・サミット


(アグリビジネスの)この目論みがインドの農民に語られるのは、来る9月の国連食料システムサミットにおいてだ。2019年に国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、国連2030年の持続可能な開発目標と整合性のある「食料システムアプローチ」の利益を最大化することを目的に、2021年に国連が食糧食料サミットを開催すると発表した。同氏は、2021年の食料システム・サミットの特使にルワンダのアグネス・カリバタを指名した。サミットの基調声明では、GPS、ビッグデータとロボット工学、さらにはGMOなどの「精密農業」を解決策として前面に押し出している。

 戦争で荒廃したルワンダで農相を務めたカリバタは、アフリカにおける緑の革命のための同盟(AGRA)の会長でもある。AGRAは、ゲイツ財団とロックフェラー財団によって、遺伝子組み換え特許を取得した種子と関連する化学農薬をアフリカの農業に導入するために設立された。ゲイツがAGRAの責任者に据えたキーパーソンであるロバート・ホルシュは、モンサント社の幹部として25年間働いていた。

 ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、WEFの「献金パートナー」でもある。

 15年近く、ゲイツやロックフェラーなどの大口寄付者から約10億ドルの資金援助を受けてきたAGRAは、農民たちの暮らしを引き上げることなどしてきていない。農民たちは政府の強制力で、営利目的の企業から種子を買わされている。こういった企業はモンサントや他の遺伝子組み換え企業と結びついていることが多い。肥料についても同様だ。

 その結果は借金であり、破産してしまうことも多い。農家はそれらの企業から買った種子の再利用は禁じられ、再利用できた伝統的な種子は放棄しなければならなくなっている。AGRAが重視している「市場志向」とは、カーギルをはじめとする穀物カルテルの巨大企業が支配する世界的な輸出市場のことである。1990年代には、ワシントンとアグリビジネスからの圧力の下で、世界銀行はアフリカをはじめとする発展途上国の政府に農業補助金の廃止を要求した。それも、アメリカやEUの農業は多額の補助金を受けている間のことである。補助金を受けたお陰で値段の安いEUやOECDの輸入品は、地元の農家を倒産に追い込む。それが狙いなのだ。

  AGRAに関する2020年の報告書「False Promises(うその約束)」の結論は、「鍵となる主要生産物の収量増加率はAGRA以前も、AGRA設立後の期間も全く同じように低かった」となっている。飢餓を半減させるどころか、AGRAが立ち上げられて以来、焦点となっている13カ国の状況は悪化している。飢餓に陥る人々の数は、AGRA設立後の期間に30%増加した・・・AGRA重点13カ国の1億3千万人に影響を与えている。」 ゲイツが主導するAGRAは、アフリカの食料生産をこれまで以上にグローバル化し、資金投入をケチることを目的とするグローバルな多国籍企業の意思への依存度を高めた。農民たちは借金に追いやられ、遺伝子組み換えトウモロコシや大豆のような特定の「換金作物」を輸出用に栽培するよう迫られる。

 ゲイツ財団「農業発展戦略2008-2011」にその戦略の概要が描かれている:

 「剰余作物を生産する力のある小規模農家は、市場志向の農業システムを作り出すことができる。・・・貧困からの脱出のため・・・成功の見通しとしては、市場志向の農家が儲かる農業をすること・・・そのためには、ある程度の土地の流動性と、直接農業生産のために雇用する人間の総数を今より少なくすることが必要になるだろう。」 (太字強調は筆者)

 2008年、ラジーヴ・シャーはゲイツ財団の農業開発担当ディレクターに就任し、ロックフェラー財団と共にAGRAの設立を主導した。現在のシャーは、ロックフェラー財団会長であり、AGRAにおいてはゲイツの共同運営者となっている。同財団は、1970年代に特許を取得した遺伝子組み換え(GMO)種子の作成に資金提供、世界銀行と共同で*CGIAR種子銀行に資金提供、1960年代に失敗したインドの緑の革命にも資金を提供していた。ラジーヴ・シャーはまたWEFの課題提供者の役職にも就いている。世界は小さい。

*CGIAR
国際農業研究協議グループ(CGIAR (Consultative Group on International Agricultural Research)とは、開発途上国の農林水産業の生産性向上、技術発展、貧困削減、環境保全を目的に1971年に設立された国際組織。

 
 AGRAの会長が2021年9月に開催される国連食料システム・サミット(「食料システム」という言い方に注意)を指揮するという事実は、国連、ゲイツ財団とロックフェラー財団、世界経済フォーラム(WEF)、そしてそれらがグローバル巨大企業と隔たりなくつながっていることを暴きだしている。

 14億の人口(恐らく半数は農民)を持つインドは、グローバルなアグリビジネスがその食料生産を支配することができていない最後の砦だ。

 OECDでは数十年前からアグリビジネス産業によるグローバル化が進んでおり、食の質と栄養の悪化がそれを裏付けている。中国は門戸を開き、こめ*シンジェンタ社を買収し、世界で遺伝子組み換え作物を積極的に押し進める役割を果たしている。また、中国は(農薬)グリホサートを世界で一番多く生産する国になっている。
*Syngenta
シンジェンタは、スイスに本拠地を置く多国籍企業。農薬や種子を主力商品とするアグリビジネスを展開している。農薬業界で世界最大手。種苗業界では、モンサント、デュポンに次ぐ世界第3位。2012年度の売上は約142.02億ドルであり、世界90ヵ国以上に27000人を越える従業員を抱えている。2016年に中国のケムチャイナにより買収された(ウィキペディア)


 最近起きたアフリカ豚熱の発生源とされるスミスフィールド農場のような工業型豚肉農場の存在で、中国国内の小規模農家は消滅の道を辿っている。

 国連2021年食糧システム・サミットにおけるゲイツ・ロックフェラーAGRAの中心的役割、世界の「食料システム」リセットにおけるWEFの大きな役割、そしてここ数ヶ月間のモディ政権への圧力は、アフリカで行われたのと同じように、企業の目論みをインドでも実行しようとするものであり、それは偶然なんかでは全くない。それは、世界を壊滅的な凶作とそれ以上の災厄に向かわせるものである。

*

F. William Engdahl is strategic risk consultant and lecturer, he holds a degree in politics from Princeton University and is a best-selling author on oil and geopolitics, exclusively for the online magazine “New Eastern Outlook” where this article was originally published. 

He is a Research Associate of the Centre for Research on Globalization.

Featured image is from New Eastern Outlook

 

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