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キエフ政権に疑問を呈する者を対象としたウクライナの公開「暗殺リスト」を、西側メディアは無視。「ミロトウォレッツ」は、独立系メディアやロシアのメディアではトレンドの話題だが、国際的な主流報道機関ではそうではない

<記事原文 寺島先生推薦>
Western media continues to ignore Ukraine's public 'kill list' aimed at those who question the Kiev regime
The Mirotvorets list is an issue trending in independent and Russian media, but not in the mainstream international press

出典:RT

2022年9月10日


筆者:エヴァ・バートレット:カナダの独立系ジャーナリスト。中東の紛争地帯、特にシリアとパレスチナに長年取材に訪れ、そこに4年近く住んでいる。

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月11日



 今週、多くの国際的なジャーナリストとロシアのジャーナリストがモスクワに集まり、さらにオンラインでも参加し、いまや悪名高くなったウクライナのミロトウォレッツという「暗殺リスト」について議論した。議論に参加したジャーナリストの多くは、自らがそのリストに含まれている人たちだ。

   訳注:「ミロトウォレッツ」とはウクライナ語で「平和実現者」という意味がある

 真面目に受け取らない人もいるが、8月20日に起きたダリヤ・ドゥギナの恐ろしい自動車爆弾殺人事件と、その後、その事件がミロトウォレッツの登録に「清算」と記されたことで、リストの背後にいる人々が、実際にリストに載せられた人の死を望んでいることがかなり明白になった。

 同じことが、ロシアのフォトジャーナリストのアンドレイ・ステーニンや、イタリア人のアンドレア・ロッチェルリなど、暗殺リストに載せられ、その後、殺された多くの人たちにも起こった。



暗殺リストに載せられて感じたこと

 パネルを招集した「不正と闘う財団」のミラ・テラダ代表は、サイトに入力された数千人の名前のうち341人がジャーナリストで、衝撃的なことに327人が未成年者であると指摘した。

 「未成年者の個人情報を公開することは犯罪です。小児性愛者や人身売買をやっている人たちのメニューのようなものです」

 テラダ代表は、キエフ政権やリストの背後にいる人々を怒らせた子どもたち、ジャーナリスト、活動家、政治家、そして一般のウクライナ人を心配しているが、彼女自身がデータベースに追加されたことで、自分も警戒しなければならなくなってきたという。

  7月21日におこなわれた「ミロトウォレッツ」に登録された子どもたちについての記者会見から1時間半後、ミラ・テラダ代表は自分自身が登録されていることに気がついた。「このことが私の人生を変えました。24時間365日、警戒しなければならないのです」と彼女は言った。

 クリステル・ネアン記者はフランス人で、この6年半、ドンバスで取材してきたのだが、パネルが始まる前に、このサイトの情報の一部は一般には公開されておらず、パスワードでロックされていると話してくれた。

 ネアン記者は何年も前から死の脅迫を受けていると言ったが、それが自分にどのような影響を与えたかを話してくれた。「車を使うたびに、車の下に爆弾が仕掛けられていないかチェックします。一緒に住んでいる人や好きな人との写真は公開しません。常に用心していなければならないのです」

 「私はテロリストでも犯罪者でもない、ただの特派員です。このリストは閉鎖されなければならないし、関係者はすべて責任を負わなければなりません」

 ドイツ人のトーマス・レーパー記者は、西側メディアが見て見ぬふりをしたがることを正しく指摘した。「彼らはこれを報道することはできるのに、何も言わないのです」

 また、ドイツ政府が沈黙していることを指摘した。記者会見で質問されたとしてもである。

 「国家には国民を守る義務があるが、ドイツ人がこの暗殺リストに載っていること、ドイツ人が1人殺されたことを非難するドイツ政府の発言を聞いたことがありません」

 実際、ドイツ人ジャーナリストを保護するどころか、政府は彼らを迫害している。たとえばアリーナ・リップ記者がそうである。ドンバスからの彼女の報道を理由にドイツ政府が刑事告発に踏み切った後、彼女と母親の銀行口座は閉鎖されてしまったのである。


関連記事:死の「ピースメーカー」。このウクライナのウェブサイトは、超法規的処刑の脅威を与える - この中には米国人も含まれている

 ロシア人のヴェロニカ・ネイデノヴァ記者は、クリミア出身でドイツ在住だが、彼女も1月にこの暗殺リストに追加された。ルガンスク人民共和国出身の13歳のファイナ・サヴェンコヴァを含む子どもたちが暗殺リストに含まれていることを提起したからだった。

 「私の記事が掲載されたその日に、私は暗殺リストに加えられたのです。しかし、こんなことで私を止めることはできません。私はその後も多くの記事を書いています」

 彼女はさらなる非常に現実的な脅威を強調した。つまり、ウクライナからドイツにやってきた難民のうち、誰が単なる難民で、誰がウクライナの民族主義的な過激思想を持っているのかを知ることができないからである。ミロトウォレッツに住所を載せられているネイデノヴァ記者にとって、これは非常に現実的な恐怖である。

 オランダ人のソーニャ・ヴァン・デン・エンデ記者も同様に、帰国を恐れている。「私は今、オランダで『国家の敵』のレッテルを貼られています。戻ることができないのです。帰国するのはとても危険なのです」

 ヤヌス・プトコネン記者は、2015年からドンバスに住んでいるフィンランド人だが、この暗殺リスクがいかに世界的に広がっているかを指摘した。

 「ミロトウォレッツの暗殺リストが止められないために、世界中の人々が、ウクライナ・ナチズムという国家テロの犠牲になる危険にさらされています。これはISISのテロに匹敵するものです」

 しかし、何よりも、それはウクライナ国内のウクライナ人を脅かしている、と英国人のジョニー・ミラー記者は強調した。

 「もしあなたがジャーナリスト、ブロガー、政治家、ウクライナの市民で、ウクライナの過激派を批判すれば、あるいはウクライナ政府の政策を批判すれば、ほとんどの場合、あなたはその暗殺リストに載ることになるのです。そして、深刻な死の恐怖にさらされることになるのです」

 ミラー記者は、ウクライナ西部を取材した経験もあるので、もう一つの重要なポイントを指摘した。

 「ウクライナには、ロシアとの平和的な交渉を進めようとする人がたくさんいます。しかし、ウクライナ社会で誰かが立ち上がってこの路線を推し進めようとすれば、彼らはその暗殺リストに入れられる可能性が高いのです。ミロトウォレッツは、まさに今のウクライナの過激派の象徴なのです」


関連記事:ウクライナ国営サイトがゴルバチョフの「清算」を祝う

 私(バートレット)自身が2019年から暗殺リストに載せられている、と地元の人が教えてくれた。クリミアに行って、DPRドネツク人民共和国から報道した後のことだ。ドネツクは市民がウクライナの砲撃によって恐怖にさらされ、家々が「通りごとに」破壊されている地域で、そこから報道した後のことだ。


加担するメディア

 諸般の事情で、私は2020年2月以降、母国カナダには行っておらず、現時点では、戻ったらどんな運命が待っているのかわからない。

 オタワ政権は、ドンバスの市民に対する戦争も含めて、キエフ政権を無条件に支持しており、2月にロシアの軍事作戦が始まる何年も前から、ウクライナに資金と武器を送って教唆してきた。

 また、カナダは2014年以来、ネオナチ・アゾフの戦闘員など、ウクライナ軍の訓練に10億ドル近くを費やしてきた。


 しかし、それに加えて、カナダ政府はミロトウォレッツについては熟知している。国営のカナダ放送(CBC)は7月、ミロトウォレッツから得たと思われる私の情報を使って、私に対する中傷記事を掲載したが、暗殺リストそのものについては触れてはいない。


 CBCが暗殺リストの私に関する項目を知っていたことを、どうして私が知っていると思うのかというと、CBCのプロデューサーが私にインタビューのメールを送ってきて(私は承諾しなかった)、私が4月にモスクワで開かれたウクライナの戦争犯罪に関するパネルに参加したことに言及したからだ。ただし、実際に参加したのは4月ではなく、3月11日だった。が、私が参加したのが4月だとする唯一の情報源は、ご存知の通りミロトウォレッツだけだったのだ。

 もちろん、CBCはミロトウォレッツを非難したり、閉鎖するよう求めたりすることはなかった(それについては、カナダの独立系メディアが以前に私にインタビューをしたし、そのメディアはその後CBCにも問い合わせをしたのだが)。その代わりに、CBCはドンバスにおけるウクライナの戦争犯罪に関する私の複数の報道を取り上げて、私をロシアの宣伝屋として中傷する手段として利用しようとしたのだった。

 そして今、CBCは私の名前をカナダ人に知らしめたのである。他の方法では私のことを知らなかったかもしれないカナダのウクライナ民族主義者たちや、ウクライナに戦いに行き、過激化し洗脳され、私のようなジャーナリストに対してアゾフ式の犯罪を犯しかねないカナダ人に。なぜなら私は反対側から報道してきたからなのだ。

 ジャーナリストは自分たちが標的にされることを恐れる理由はすでに十分にある。その一例が、8月4日にキエフ軍がおこなった、私を含む複数のジャーナリストが滞在していたドネツクのホテルへの爆破事件だ。ホテルとジャーナリストが標的だったという決定的な証拠はないが、上記のようなことを考えると、その可能性があることは間違いないだろう。


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テロリストのデータベース

 パネルディスカッションの後、ネアン記者と再び話をした。ネアン記者は、何年も前からミロトウォレッツのことを国際機関に訴えてきたという。

 「OSCE(欧州安全保障協力機構)やアムネスティなどにも手紙を出しました。しかし、子どもたちがこの暗殺リストに載っていることが分かっても、誰も反応してくれませんでした」。彼女が受け取ったのは、「受け取りました」との確認メールだけだった。

 パネルディスカッション後の質疑応答で、会場のアメリカ人男性から、ロシアも自前の「ヒットフォース(攻撃部隊)」を持って、ウクライナ側に同じようなことをすればいい、という提案があった。

 これに対し、ジョニー・ミラー氏はこう指摘した。

 「この暗殺リストについて、ここ英国の人々に話すと、最初に返ってくる言葉のひとつがこれです。

 『ロシアにも同じようなリストがあるはずだ』と。だから私は彼らに説明しなければならないのです。いいえ、ロシアはジャーナリストや子どもの、名前と自宅の住所を記した暗殺リストをインターネット上で公開して暗殺を促進してはいません。それが文明的な政府と過激派や野蛮な政府との違いなのです、と」

 ミラ・テラダ代表によると、彼女の財団は、集めた文書と証拠をロシアの連邦保安局に転送し、同局にミロトウォレッツをテロ組織として認定するよう求めている。


 アメリカ海兵隊員で国連兵器査察官だったスコット・リッター氏も同様に、ミロトウォレッツを「テロの道具」であり、「ジャーナリストの要求に従って、アメリカ政府は撤去するべきだ」と述べている。

 皮肉なものだ。キエフ政権による現実のテロリズム下で暮らす民間人の苦しみに、私たちが人々の目を向けさせ強調するためにおこなっている活動を理由に、私たちはテロリストとしてリストアップされているのである。
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