ホワイト・ヘルメットを認めないロックスターのロジャー・ウォーターズが人権保護団体のアムネスティとべリング・キャットから受けた侮辱。
<記事原文 寺島先生推薦>How rock star Roger Waters was hung out to dry by Amnesty and Bellingcat for his views on Syrian ‘chemical attack’
RT 論説面
キット・クラレーバーク
2020年10月14日
By Kit Klarenberg, an investigative journalist exploring the role of intelligence services in shaping politics and perceptions. Follow Kit on Twitter @KitKlarenberg
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年11月28日
入手された電話音声(ニュースサイトのグレイゾーンが最初に明らかにした)によると、人権団体のアムネスティは、音楽バンドのピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズの人権に関する活動を無視するよう圧力をかけられたとのことである。ロジャー・ウォーターはシリアのドゥーマでの「化学兵器による攻撃」に疑念を示していた。その化学兵器攻撃が西側諸国によるシリア爆撃の理由にされていたのだ。
今年(2020年)8月、環境に関する圧力団体のアマゾン・ウォッチが放映したのは、スティーブン・ドンジガー弁護士を中心としたオンラインでのパネルディスカッションだった。ドンジガー弁護士は活動家であり、米国のエネルギー関連企業の大手シェブロン社を相手に、アマゾン川流域で環境破壊を広げたことについて訴訟を起こした人物である。その結果、ドンジガー氏は、生活と自由のために生涯をかけて戦わざるを得なくなっている。
2011年2月、シェブロン社はエクアドルの裁判所において、環境破壊の責任があるという判決を受けた。それは同社の子会社であるテキサコ社が1964年から1992年までに行っていた原油生産のために引き起こされたという判決だった。その法廷闘争を起こし、導いて来たのがドンジガー氏だった。
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しかしシェブロン社は示談金を一銭も払っていない。というのも、この画期的な判決が2014年の3月に、証拠不十分として米国連邦裁判所で覆されたからだ。判決にあたり、ルイス・A・カプラン裁判長が大きな根拠にしたのは、裁判でドンジガー弁護士が嘘の証言をしたという事実を、エクアドルの元判事が裁判後に認めたことだった。 それ以来、ドンジガー弁護士は、法廷侮辱罪の罪に問われ、自宅で軟禁状態におかれ、もう1年以上も裁判を待っている。
そのドンジガー弁護士自身が参加していた8月のある夜のアマゾン・ウォッチのネット会議には、彼以外にも著名な活動家たちが多数参加していた。具体的には、非営利団体のグローバル・ウィットの創始者であるサイモン・テイラー氏やロックバンドのピンク・フロイドの創設者の一人であるロジャー・ウォーターズ氏たちだ。
この会議は、前もって数多くの人権活動家たちや非営利団体に向けて広報されていた。その中でも特に有名な団体は、アムネスティ・インターナショナルである。
しかし、アムネスティによる広報活動がSNS上での批判の洪水を招くことになった。それはシリアの政権転覆を目指している数多くの著名な活動家たちからの声だった。そのためアムネスティの米国支所は、公式ツイッターでこの会議を広報するツイートをしていたのに、なんの断りもなしになぜかそのツイートを削除する、という事態が発生した。
Today, we commemorate a true humanitarian, James LeMesurier, who dedicated so much to saving lives in #Syria, even when everyone else turned their backs on us. His commitment and his painful departure will always motivate us to continue with the work and values that we shared. pic.twitter.com/qfKBaP8wQE
— The White Helmets (@SyriaCivilDef) November 11, 2020
ある批判者からのツイートを受けて、アムネスティ英国支所クリスティアン・ベネディクト所長は、このネット会議のことを広報するのは「全く良いことではない」とツイートし、そのネット会議を広報するツイートは「削除された」ことを確認した、ともツイートした。
@Farouq_Habib @RaedAlSaleh3 @RonanLTynan @Syria_Irl @grannies4equal @1962Wren @valeriemhughes @KreaseChan @amnesty_de @AmnestyUK @EA_WorldView @ScottLucas_EA @Josiensor @bellingcat @BenteScheller @Elizrael @Charles_Lister @OzKaterji @malachybrowne @im_PULSE
— Ronan L Tynan (@RonanLTynan) August 5, 2020
グレイゾーンとRTは、ある電話音声を入手した。その電話は9月25日のウォーターズ氏とアムネスティ・インターナショナル米国支所の2名の幹部の間で行われたものだ。その2名とは、芸術家部門担当部マット・ボーゲル部長と開発部タマラ・ドマウト部長だ。彼らの電話は、この話題に大きな光を当てる内容になっている。
この電話での会話の冒頭で、ウォーターズ氏が語ったのは、彼が「アムネスティからこのパネルディスカッションについてツイッターを使って前もって広報することを知らされていた」だけではなく、「アムネスティが出したパネルディスカッションの広報ツイートを自分のアカウントでリツイートした。つまり、現時点で37万5000人いるフォロワーにアムネスティが出した情報が伝わった」 ということだった。
しかし、ある関係者がウォーターズ氏に伝えたところによると、そのパネルディスカッション開始直前に、そのサイトに行こうとしたが場所が分からなかった、ということだった。パネルディスカッションが終了してから、ウォーターズ氏はアムネスティのツイートが削除された原因を探し始めたという。
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「ちょっとした捜索」の後、ウォーターズ氏が突き止めたのは、アムネスティがツイートを削除したのは、数多くの人々からの圧力に耐えきれなくなったからだという事実だ。その人たちの中で特筆すべき人物をあげると、ウォーターズ氏の「旧敵」であるエリオット・ヒギンズ氏だ。彼はウェブサイトのべリング・キャット(このサイトには賛否両論がある)の創設者である。そしてエリオット氏が圧力をかけたのは、「シリア民間防衛隊」すなわちホワイト・ヘルメットに対するウォーターズ氏の見方についてだった。 回答を求めて、ウォーターズ氏はアムネスティと連絡を取ろうとしたが、何度も邪険に扱われたらしく、やっとのことでボーゲル氏とドラウト氏と電話で話せることができたようである。
ウォーターズ氏に応えて、ドラウト氏が確認したのは、ツイートを削除した理由は、ホワイト・ヘルメットに対する「様々な意見」を考慮したためだとした。「我々は、ホワイト・ヘルメットは人権活動におけるチャンピオンであり、自国民たちの保護と自由の為に闘ってきた組織だと考えています。あの広報ツイートをあげた時に、あげるべき内容なのかをきちんと吟味できていませんでした。するとすぐにホワイト・ヘルメットのメンバーから連絡が来ました。彼らが聞いてきたのは“なぜウォーターズを広報するのか“ということでした。あなたがホワイト・ヘルメットについて何を語っているか知っているからです。他のシリアの人権活動家からも連絡が入りました」。トラウト氏は、ウォーターズ氏が話を遮るまで話し続けていた。ウォーターズ氏がその後尋ねたのは、ウォーターズ氏のホワイト・ヘルメットに対する見方と、「北エクアドルの熱帯雨林に住む人たちが抱える苦境」との間にどんな関連があるのか?ということだった。
「我々が行ったパネルディスカッションの広報に口出しをしてきた人々の主張は、あなたがホワイト・ヘルメットに対する見方を広く伝えている点についてです。私はこの件の対応では後手後手に回ってしまいました。あのツイートを削除するべきではありませんでした。そんなやり方はしたくありません。この件に関してもっと開放的な論議をし、真摯に対応しておくべきでした」。トラウト氏はそう釈明した。
ウォーターズ氏が世界中の新聞の見出しになったのは、2018年4月のことだった。ウォーターズ氏がバルセロナでのコンサート中に曲の演奏を中断し、シリアのドゥーマでの化学兵器による攻撃について語り始めたことが見出しになったのだ。その攻撃はコンサートの6日前に起こったとされていた。
ウォーターズ氏は、ホワイト・ヘルメットのことを「聖戦士とテロリストの喧伝を広めるニセ組織」だと名指しした。さらにウォーターズ氏は、西側諸国の世論は操作されており、「我々はシリアに侵攻して爆撃を開始するよう自国政府に圧力をかけるように仕組まれている」と主張した。 ほんの数時間後にウォーターズ氏の予見は現実のものになった。フランスと英国と米国がシリアの複数の政府施設に対して軍による攻撃を加えた。
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2019年5月、ウォーターズは再度激しい攻撃を受ける対象になった。それは、ウォーターズ氏が自身の公式フェイスブックにおいて、漏洩文書により自分の嫌疑が晴れた旨の投稿をした時だった。その文書とは、化学兵器禁止機関(OPCW)の事実解明チームが出した専門的な報告であった。そのチームは攻撃があったとされた数日後にドゥーマを訪れていた。同チームの出した結論は「高い可能性がある」というものだった。その可能性とは、ドゥーマの2箇所で見つかった化学兵器の欠片とされた円筒については、ホワイト・ヘルメットによれば、シリア軍のヘリコプターが投下したものだということだったのだが、「手作業で置かれたものであり、飛行機から落とされたのではない」という可能性だ。
西側メディアやSNS上で化学兵器の欠片とされた円筒の写真が広く伝えられ、シリアが化学兵器を使用したという主張が広まることになった。その写真や、ドゥーマで病院に運び込まれる住民たちの映像や口から泡を吹いているように見える子どもたちの映像や、団地に死体が並べられている映像。これらすべてはホワイト・ヘルメットが捏造し広めたものだ。 それは「シリア政府がシリア市民を化学兵器の使用対象にしている」というありえない事実の証拠として提出されたものだ。そしてその証拠がフランス政府、英国政府、米国政府がシリアに軍事侵攻する根拠とされたのだ。
化学兵器禁止機関の事実解明チームが出した「化学兵器の欠片とされた円筒は空から来たものではない」という指摘は、理由が不明のままドゥーマに関する同機関の最終報告書には全く記されなかった。その報告書が出されたのは、ウォーターズ氏がフェイスブックに投稿する2ヶ月前のことだった。
シリアで進行中の危機に関するホワイト・ヘルメットの役割については、ほとんど公表されてこなかったのに、ウォーターズ氏はネット上で洪水のような激しい攻撃をホワイト・ヘルメットを支持する西側諸国の支持者から受けた。
電話の話に戻ろう。憤怒したウォーターズ氏は、既に削除されたエリオット・ヒギンズ氏のツイートについて話し始めた。そのツイートは、アムネスティ・インターナショナルに対して、「ロジャー・ウォーターズが人権問題について語る語り手として適切な人物である理由を説明すべきだ」ということを問いただす内容だった。 ウォーターズ氏はこう語った。「ヒギンズの疑問に対して建設的な反応をせず、アムネスティは、彼から受けた批判の圧力に屈するだけだったじゃないか!」
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ウォーターズ氏は続けた。「僕が人権問題を語る人物として適切である理由は、だと?僕はこれまでの人生でずっと人権について強く訴えかけてきたよ。ホワイト・ヘルメットが何か本当に邪悪なことに加担していることは明白な事実だ。それなのにアムネスティは今まで決して認めてこなかった。“ホワイト・ヘルメットがドゥーマで作った動画は嘘八百だ“ということをね」
「現地の医師が言っているのは、その日彼らが知る範囲では、死者は誰もいなかったということだけではなく、病院にいた患者が言っていたのはホコリを吸い込んだことであり、ガス攻撃を受けたことではなかった、ということだ。君たちは未だにあの動画を信じているのか?真実を伝えたものだと思っているのか?」
ドラウト氏はこう答えた。「あなたが自説を擁護したいお気持ちは理解できます。しかしこのような話し合いは建設的だとは思えません。私がお答えできるのは、あなたが問い合わせている“ツイートをなぜ削除したか“ということについて、“ツイートを削除した理由は、ツイートした直後に我々が受けた反論のためであり、その反論の内容がホワイト・ヘルメットについての我々の理解と一致していたからであり、我々に刺さる内容だったから“ということだけです。アムネスティとしては、あのパネルディスカッションにおいて、あなたが人権問題について語る権利や専門知識や資格がないとは考えていませんでした」。
ウォーターズ氏はそれに対してこう答えた。「なぜあなたは僕が適切な人物であるという説明を批判者にしなかったのか?それに“あのツイートを削除するつもりはないです。このパネルディスカッションはとても重要なものですから“となぜ告げなかったのか?」
「僕が若い頃は、あなた方アムネスティは曲がりなりにも、人権をきちんと考えている団体だったと思っていたよ。今日の私との対話であなた方が見せた姿は以前とは違うことが分かった。だって僕の簡単な質問にさえ答えられないのだから。ホワイト・ヘルメットがドゥーマで作成した動画についての、ね」。ウォーターズ氏はこう語った。
これに答えて、ボーゲル氏が急いで割って入り、アムネスティがドンジガー氏が提起している「非常に重大な問題」を支持していることを確認した後、ボーゲル氏の個人としての意見を表明した。すなわち、このパネルディスカッションは「とても重要で行う価値のあるものである」と。
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「ということは、今回の件は、ただただ僕を排除しようとしただけなんだな!?エリオット・ヒギンズのようなとんでもない人物が言ったことを真に受けて。そういうことになるね」。ウォーターズ氏はこう主張した。
「僕のことに関してだけ例外扱いか?僕を排除するために、僕のことを批判するツイートを取り上げて。そのツイートは、ただ僕に嫌悪感を持っている奴が送り付けてきただけのものなのに。ただ僕が、奴らがシリアの政権を転覆させたがっていることや、実際は起こらなかったドゥーマの化学兵器使用に関して同意していないからという理由だけで、あなた方アムネスティ・インターナショナルは私を排除しようとし、私がエクアドルの人たちのために活動することを遮ろうというのか。活動家として出来ることが私にはあるのに。なんてことだ!あなた方アムネスティというのはとんでもない団体だ。言い過ぎかもしれないが」。
その後、ドラウト氏が会話に戻り、ツイートを削除したことを平謝りし、ウォーターズ氏を排除しようという意図は「さらさらなかった」と告げた。ただアムネスティは、ホワイト・ヘルメットについてのウォーターズ氏の考えには同意しなかったが。
ドラウト氏に礼を述べてから、ウォーターズ氏が依頼したのは、「どのようにそしてなぜあのパネルディスカッションを広報するツイートか削除されたかを」公表することだった。さらに、削除が行われたのは「アムネスティ・インターナショナルが守っている聖域の全く外で行われた」ことを公表することだった。 そう告げてから、ウォーターズ氏はステファン・ドンジガー氏とエクアドル市民たちにお詫びをした。しかし、電話口で、依頼されたことを近々実行するということは、代表者2人の口からは出てこなかった。そして10月12日の時点で、ツイートを消したことに対する釈明や謝罪はアムネスティからは出されていないままだ。
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2018年4月のコンサートでの表明のせいで、ウォーターズ氏は明らかに世間から批判を受け検閲される対象となったのだが、その表明以降、多数の文書が漏洩している。その多数の文書は、ウォーターズ氏が当初から持っていた疑念が非常に的を得たものであったことを強力に支持するものになっている。さらに化学兵器禁止機関(OPCW)の結論では、ドゥーマで化学兵器による攻撃があったことは「十分な証拠があり」、「毒性のある化学物質は塩素分子であったようだ」という内容だったのだが、これは研究者たちが収拾した極めて大多数の証拠品が示すものとは真逆の内容だということも分かってきている。
化学兵器禁止機関(OPCW)が外に出ることを抑えていた内部資料も、今は多数、一般に知られるものになっている。これらの内部資料については、主流メディアの記者たちは無視しているが、この内部資料が伝えていることは、驚くべき内容だ。
例えば、これらの内部資料によれば、2018年の7月に化学兵器禁止機関(OPCW)の長は秘密裡に、1名の緊急隊員を除き、調査団のスタッフを総入れ替えしていたことが分かる。この調査団というのは、実際にドゥーマを訪問した調査団だ。その調査を終わらせる責任を引き継いだのは、全く別のチームで、そのチームはシリアではなくトルコに行っていた。そしてその新しいチームが、証言者たちからの聞き取り調査やホワイト・ヘルメットが提供した現地の土を引き継いだ。さらに新しいチームのスタッフは、今まで調査に関わってこなかった新しいスタッフだった。
これらの証拠から導き出された結論は、当初シリアで集められた証拠から導き出された結論と全く違う内容だった。そしてそういった不一致は、流出した下書き段階の文書で繰り返し散見されていた。そのような不一致については、公にされた文書では全く触れられていなかった。
下書きからは、他にも重要な事実が見つかった。それは、化学兵器禁止機関(OPCW)の調査員たちは、初期の段階から、何らかの化学兵器による攻撃があったとは全く考えていなかった、ということだ。一例をあげれば、神経ガスが使われたという形跡は全くなかった。この神経ガスについては、ホワイト・ヘルメットもシリア米国医療協会も医療救援組織連合も米・英・仏政府もみな「この攻撃に使われた」と主張していたにもかかわらず、その神経ガスは全く見つからなかったのだ。しかしこの神経ガスが使用されたという話は、2018年6月までにはできあがっていた。
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そして、化学兵器禁止機関(OPCW)の要請を受け、4名の化学兵器の専門家がこの攻撃の証拠品の再検証を行った。彼らは、ドゥーマで攻撃を受けたとされる被害者たちの症状を観察したのち結論を出した。その被害者たちの様子はホワイト・ヘルメットが提供した映像にも映されていたものだった。再検証の結論は、「化学物質が放出されたとは考えにくい」というものだった。さらに「このような症状を引き起こす原因になると思われる他の化学物質は検出できなかった」 とのことだった。
化学兵器禁止機関が公表した結論に疑問を呈するものは他にも存在する。ドゥーマで同機関が収拾した証拠品によると、見つかった化学混合物の量はあまりにも少なく、10億分率程度の量だった。この事実は先述の下書き原稿には記載されてあったのだが、このことも、公表された文書には記載がなかった。
2020年1月の国連安保理事会で、元化学兵器禁止機関の調査団長のイアン・ヘンダーソン氏が発言している。ヘンダーソン氏は、11年間同機関に勤務したベテラン調査員であり、ドゥーマの真相解明チームの一員だった。ヘンダーソン氏は、化学兵器による攻撃があったとされた事案についての調査結論について、こう証言した。すなわち、真相解明チームが出した結論は、化学兵器による攻撃は明らかになかったというものであり、この事件はシリア政府に反対する勢力が、シリア侵攻の理由づけのためにでっち上げたものである可能性を示唆する内容であった。
ロジャー・ウォーターズ氏の言い方を借りれば、「ホワイト・ヘルメットは西側諸国が作りあげた喧伝普及組織であり、西側各国の政府がシリア市民たちに爆弾の雨を降らせることを推進している組織だ」という事実をさらに確実なものにする文書が出てきた。それは、ハッカー集団であるアノニマスが公表した外務・英連邦省(FCO)の内部資料だ。
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中でも特筆すべきは、その文書により、膨大な資金や年数をかけてある作戦を遂行しようとしていた事が明らかになったことだ。その作戦とは、
シリアや西側諸国の市民たちに向けての喧伝行為を行おうというものだ。それはバッシャー・アサド政権やISのような過激派に対して、一貫性のある確実で穏やかな反対意識を植え付けるための喧伝行為だ。そして最終的には英国政府が進めるシリア政権転覆政策への支持を醸成しようという魂胆だ。
この計画を支えるため、ARK・インターナショナルという会社が存在する。この会社は「紛争の解決と安定への助言」を行うことを目的としており、外務・英連邦省(FCO)のベテラン外交官であったアリスター・ハリス氏により創設されたものだ。この会社が開発し運用してきたのが、ホワイト・ヘルメットのことを「世界に向けて発信する計画をたて、世界からの認知度を向上させる」ということだ。
「ARKはシリア民間防衛隊(ホワイト・ヘルメット)の代理人としてツイッターアカウントとフェイスブックのページを始め、いまでも運用している。そして画像を投稿し、英語による活動記録を更新している。昼となく夜となく、だ。 この活動のおかげで世界中のウェブサイトや専門家たちから高い知名度を得るようになった。そして、ニューヨークに拠点を置く団体であるシリア・キャンペーンという運動団体が、ツイッターを通じてホワイト・ヘルメットと連絡を取るようになり、ARKと連携ができている。この団体がホワイト・ヘルメットを前面に出すことにより、シリアのニュースを世界に流すことを決めた」。以上が流出した内部資料に書かれていたことである。
興味深いことに、ARKはさらに150人のシリアの「活動家たち」に特別な訓練を行い、装備を提供していた。その訓練の中身は、「カメラの操作法や照明の仕方や音声について、それに聞き取り調査の仕方や動画の撮影法」などであり、撮影後の動画編集技術も含まれていた。具体的には「動画や音声の編集法、ソフトの使い方、ナレーションの入れ方、脚本の書き方」や「視覚効果の入れ方、2次元・3次元アニメの作り方、ソフト」などだ。
受講生たちは、実際のプロパガンダ理論についてさえ指導されていた。具体的には、「標的となる人々の絞り込み、多数の多様なタイプの喧伝技術、メディアやメディアの分析法や監視法」「行動特性の把握や理解」「キャンペーン計画の作り方」「行動と行動を変えさせる方法」「 どのような伝え方をすればそのような喧伝を広めることができるか」などであった。
受講生たちが作成したものはその後、ARKと「深い関係を築いている」各メディアの関係者たちに提供された。メディアとは具体的には、アルジャジーラやBBCやCNNやガーディアンやニューヨーク・タイムズやロイターなどだ。ARKの受講生が「現地の声を伝える現地在住の記者」として直接そういったメディアに雇われる場合もあった。
その資料には、ARKの受講生たちが、西側諸国の視聴者に向けて化学兵器による攻撃をでっち上げるやり方を教えてもらったかどうかについては書かれていない。しかし受講生たちが学んだ技術を使えば化学兵器による攻撃など容易にでっち上げることができ、濫用されることになるだろう。だからこそ、彼らが本当にその事に関与していたかどうかをより詳しく調査することは、本当にやる価値のある事だといえる。
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