ジョージア国民よ。よそ者が先導するカラー革命からそろそろ「脱出」せよ
<記事原文 寺島先生推薦>
CIA, NED: Georgia and Colour Revolutions: “Oink, Oink, Squeal like a Pig!”
CIA、NED: ジョージアとカラー革命: 「ブー、ブー、豚のように鳴きやがれ!」
筆者: ヘンリー・カメンス (Henry Kamens)
出典:New Eastern Outlook
2023年4月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年5月5日
この記事の題材となっているのは、1972年の米国映画“Deliverance”(邦題は『脱出』)。ダム建設によって消えてしまう前に川下りをしようと、ジョージア州の奥深い渓谷へ遊びに来た4人のよそ者の男たち。だが、地元民との軋轢の中で 、殺人事件が発生する。「Oink, Oink, Squeal like a Pig!(ブー、ブー、豚のように泣きやがれ)」というセリフは、その4人のうちの一人が強姦された際に、加害者の地元の荒くれ2人組に掛けられたことばである。ジョージア州と同名の元ソ連領「ジョージア」が、外国人勢力により、「カラー革命的反政府デモ」を引き起こされている状況をこの映画になぞらえている。(訳者)
ようやく春がやってきた。ヨーロッパはとても穏やかな冬だった。 しかし、この3月に、非常に予測不可能なことがある。もちろん天候の話ではない。
モルドバとジョージアで懸命に活動していた国家民主主義基金(NED)とCIAは、間もなくトルコにもやってくるだろう。自然の成り行きに任せて、地震により政治が影響を受けても、現政権が転覆しなければ、の話だが。それにしても、NATOがトルコの協力なしで、攻撃的な行いを成し遂げられると考えていることを、私はいまだに理解できない。
以下のようなくだらない迷信をお聞きになったことがあるだろうか?「昔々、火消しをする消防士たちがいたので、火事を起こそうとする人はいませんでした。本は全て焼かれる『華氏451*』の世界で、誰も本を出そうとしなかったのと同じように」。NATOについても同じことが言える。そもそもNATOは最初は防衛組織だったはずだからだ。
*『華氏451』は、フランソワ・トリュフォーの監督による、1966年のイギリスの長編SF映画である。その映画の世界では、漫画以外の本の出版は禁止されていて、見つかった場合、直ぐに焼かれる。 原作はレイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度』で、(本の素材である)紙が燃え始める温度(華氏451度≒摂氏233度)を意味する。
CIAとNEDがトルコに行くという話は、誰かが広めた噂に過ぎない、というのが私の印象だ。同じような噂がさらに増えているからだ。例えば、イスラエルの政権交代を目指すNGOや団体に、お馴染みの容疑者らが資金を提供しているという。
世界は狂ってしまったのだろうか。それとも、私が目を覚まして事態を理解したのだろうか。私は今日、ロシア製の園芸用玉ねぎ一式と大きな肥料袋を買った。厳しい冬になるかもしれないので、決意をして将来の計画を立てている。タマネギのおかげで、世界で起こっていることが何層にも重なっていることに気づかされた。むけばむくほど、たくさんのことが分かる。
ジョージアの灯が消えた夜
あらゆる状況の中で最も皮肉なのは、ジョージアで起きている、政府を変えようとする明らかな努力だ。これは自国製のデモではなく、外部からの侵略的なものである。予想されていなかったわけではなく、予見されていたことでさえあり、さらにそれ以上のことが起こっている。
2014年のウクライナの再来をジョージアで発生させないような努力がなされていることだろう。しかし、その努力は裏目に出ている。ウクライナは、NATO、EU、ジョージア、モルドバをトランプのカードを積み重ねた家のように崩壊させるかもしれない。西側諸国、特に米国は、ウクライナに過剰な費用をかけてきて、今もかけ続けている。しかし、それは心の底からの善意からではない。一部の識者や多くのアメリカ人が、そろそろ手を引くべきだと考えているのも不思議ではない!そう、アフガニスタン撤退の二の舞になったとしても、だ。
多くのアメリカ人は、ジョージアを映画『脱出*』の舞台となった場所だと思っている。彼らが知っているのは、「ブー、ブーと、豚のように鳴きやがれ」というセリフだけだ(このセリフがこの映画からの引用だと知っていればの話だが)。しかし、今、自国に掛けられたそのような鳴き声を全て受け止めようとしているのだ。
首都トビリシでは、民主的に選出された議会が成立させようとした外国人工作員登録法が話題になっている。NEDやCIAなどから資金提供を受けているNGOの勢力が、その法案を認めなかった。
そこで政府は、EUと米国からの制裁の脅威にさらされながら、少なくとも今のところはこの法案を撤回した。政府の要員たちは、自分たちが次に狙われていることを理解しており、2014年のマイダンでの大虐殺のようなことが起こるのではないかと心配している。
今は静かだが、アメリカやその仲間たちが現政権を交代させる計画が残っているので、まだ終わったわけではない。ウクライナでの状況はロシアにとって良い方向に進んでいるため、その代替地としてジョージアが必要であり、それが失敗した場合はモルドバが必要なのではないかと私は考えている。
元米海兵隊員で、ロシア情報や国際トーク番組に頻繁に出演しているスコット・リッター氏は、ジョージアに関するアメリカの現実について書いている:
ほとんどのアメリカ人にとって、ジョージアは食べ物、ワイン、そして楽しいダンスがある国に過ぎない。これが、あなた方ジョージア人が未来を賭けている米国社会の現実です。アメリカ人は、あなたのことを好きでもないのです。
• 私たち米国民は、あなた方の食べ物やワインを必要な時だけ楽しみ、あなた方の文化を単なる好奇心からしか見ていません。
• 歴史が示すように、私たちはあなたたちのために死ぬつもりはありません。あなた方は、私たちの地政学的な目標や目的のためにのみ存在するのです。
• あなた方は、米国がロシアの周辺に設置しようとしている「不安定化地域」の一部に過ぎないのです。
• ちょっと考えてみてください。ジョージアに対するアメリカの目的は、地域の不安定さを生み出すことなのです。
• その代償を払うのは、アメリカ人ではないでしょう(彼らはすでにジョージアとジョージア人を自分のものだと思っているのだから)。
最後に、ジョージアとジョージア人に対して警鐘を鳴らそう。残念ながら、多くのジョージア人は気づきたがっていないのだ。自分たちがさらに悪い侵略者を招き入れて、その侵略者を支えようとしていることを。スコット・リッター氏が指摘したように、これらの侵略者な、ジョージア人のことを人間としてまったく気にかけておらず、ただ自分たちの大きな目的を果たすためにどう利用できるかしか考えていないのに。
一方、アメリカに戻ると
この計画の唯一の問題は、西側諸国、特にアメリカ人の多くが、増税、インフレ、懐に入るお金の減少に満足していないのに、なぜアメリカがロシアとの代理戦争に巻き込まれ、自分たちには関係ない、地図で探すのも難しいような中間国、つまりウクライナを利用しているのかが分からないことだ。
アメリカの好みは、シリアのように、そもそも関与する理由のない戦争に全財産を投じることで、貧しい人々を貧しくし、アメリカ国民をより貧しくさせることだ。そのせいで世界は統制を取れなくなっている。支配者たちは、自分たちのためだけに動き、自分たちが助けるべきはずの人たちのことなど気にも留めていない。
現地の状況を目の当たりにし、多くの関係者を知っている私たちNEO(New Eastern Outlook)や他の代替報道機関がジョージアの報道機関を巻き込んで、記事や関連インタビューを出すことで、この先何が起こるかをジョージア政府に警告してきたことを私は嬉しく思う。
特に、ミヘイル・サアカシュヴィリ前大統領が、金融犯罪や人権侵害に関わる多くの罪状を持っているせいで司法から逃亡しているにもかかわらず、なぜジョージアに戻ってくるという大きな危険を冒したのが明らかになったことは重要だった。
彼は現在、これらの様々な犯罪行為のうちのほんの一部の罪状を理由に、獄中にいる。彼は間違いなくもっと多くの罪に問われているはずなのに、うまく立ち回り、役に立つ愚か者として、時限爆弾の短い導火線としての役割を果たしたのだ。
サアカシュヴィリの身に起こったことは、彼が10年間アメリカの傀儡政権の執行者として住民を恐怖に陥れたことから考えれば、この国の他の人々がこの先の状況をどう予想するかが見えるだろう。つまり、サアカシュヴィリがアメリカにとっての親友であることから考えられることは、アメリカ国務省は、必要であればジョージアを「マイダン2014」の舞台にできるよう、強く働きかけているということだ。その兆候は幾つかの報道から伺える。
海外からの影響力を高めるための完璧な嵐が吹き荒れる中で
ロシアに責任を転嫁しようとするのは、すでに秘密がばれてしまっていることを考えると皮肉なものだ。米国大使館の報道声明は、ジョージア国会がクレムリンに触発されたいわゆる「外国からの影響」に関する法案を急遽推進した、というものだった。もちろんこの声明は、何十億ドルも費やして、ロシアがいかなる国にも干渉できないようにし、ロシアの干渉を許さない諸法律を考案してきたまさにその米国が出したのである。国が資金を出し続けるのは、ジョージアなどの国々が、米国の言うことを真に受けている指導者を選び、ロシアの影響力を排除したいと言い出すまでだ。その時、米国がそれまで見世物のように費やしてきた資金が効力を発揮するのだ。
ジョージアで展開されていることは、台本通りに進んでいるかのようだ。その台本は、NED(全米民主主義基金)が政権交代劇を起こすべく書いたものだ。2014年のキエフや、アメリカの作戦の蜘蛛の巣にかかった他の多くの場所で起こったことと同じ筋書きだ。ただし、多くのジョージア人、特に50代以上の人たち、そして少数ではあるが若い世代の人たちも、「ロシア人と一緒にいたほうがいい」 と思い始めている。
豚は豚
欧米の多くの真の利害関係者は、銀行の崩壊や体制全体を崩壊させるかもしれない政治的対立などで頭がいっぱいで、外国の紛争地帯で何が起こっているのかの最新情報にまで気が回っていない。ほとんどのアメリカ人(ニクソンが表現したサイレントマジョリティー<声なき多数>)は、ジョージアとはフロリダのすぐ北にあるジョージア州のことだと思っており、ジョージアという言葉から、映画『脱出』で、強姦される役を演じていたネッド・ビーティが、地元の荒くれ2人組に豚のように鳴くことを要求された不適切な瞬間を思い浮かべられる人はもっと少数だろう。
アメリカ人がジョージアとジョージアの文化について持っている範囲で「知識」は、ジョージア料理とダンス、そして(ソ連の指導者だった)ジョー・スターリンおじさんがジョージア出身だったという事実にくらいの表面的な理解に限られている。アメリカ人の大半は、ジョージアが存在することすら知らない。
ビートルズの歌で、ジョージアの名前を出したものがあった。なお当時ジョージアは、ロシアの支配下にあった 。ビートルズは、「Back in the USSR」という楽曲で、ジョージアを含むいくつかのソビエト連邦の共和国の名前を歌っていたのだ。この曲以外、ジョージアは、アメリカの大衆文化で全く言及されたことはない。
私は、旧ソビエト連邦諸国や中東、アジアで起こっていることの多くを身近に感じているので、この地域の歴史の真実に気づかずにはいられない。この地域の歴史とは、記録を見ればわかる通り、戦争や、戦争の脅威や、或る帝国が別の帝国に侵略されることの繰り替し成り立っている。そしてその戦いの勝敗は、どちらの帝国が優れているかではなく、どちらの国の政治的思考様式が長持ちするか、で決せられてきた。
米軍出身の部内者である私は、どう考えても、ジョージアを中南米のバナナ共和国状態にまで貶めようとする外敵の側にいるはずだ。しかし、私はジョージアの側にいる。なぜなら、この「外国の影響力」が良性であれば、何の影響もないはずであり、ジョージアでの行動に対して責任を負いたくないのは、西側諸国だけだからだ。
熟考すべきいくつか問い
• なぜジョージアの一般的なデモ参加者や若者は、とにかく外国人工作員法に反対するのだろうか?
• なぜ、ジョージア人は、自分たちが入手しているニュースの情報源や資金源を知りたくないのだろうか?
親西欧であることはかっこよくて、ジョージアの若者は、もっと自立すべきだと主張すればするほど、すべての友人にも自立してほしいと思ってしまう。フランクリン研究所*のようなNGOは、まさに若者たちをこのような方向性に導いてきた。私は、ジョージアから渡米し、高校教育の一環として、米国や外国の市民社会の訓練に参加している15歳の学生を知っている。彼女は、これらのNGOがいかにジョージアからの留学生たちを洗脳しようとしているかを私に話してくれた。ヨーロピアン・スクール**などのIB(国際バカロレア)に対応した教育課程を持つ学校など、超名門校を含む多くの私立学校でも同じことが言える。基本的に、より良い生活を望むなら、アメリカの望むことをしなければならない。しかし、自分の存在理由はアメリカの目的のためでしかないので、アメリカが望む行為をとっても報われることはないのだが。
*フランクリン研究所は科学博物館であり、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある科学教育と研究の中心地。アメリカの科学者で政治家のベンジャミン・フランクリンにちなんで名付けられた。
**ヨーロピアン・スクールとは、欧州各地に点在する、多言語および多文化の教育方法を強調する一種のインターナショナルスクール
平和部隊*は、もはやケネディ時代の理想主義的な取り組みとは全く異なるものになってしまったが、ジョージアにも存在する。またジョージアにはウクライナ民族主義者の第5列(内通者)も存在する。これらの内通者は、ウクライナで傭兵として活躍しているジョージア軍団の支援を受けており、NED、CIA、USAID(米国国際開発局)、クラウド・ファンディングから資金を得ている。
*平和部隊は、アメリカ合衆国連邦政府が運営するボランティア計画。ボランティアを開発途上国へと派遣し、現地の支援を行うことを目的とする。日本の青年海外協力隊の米国版である。
サーカシヴィリの背後にいる人々が、非暴力的な方法を使うわけはない。実際、これら背後にいる人々は冷血な殺人者であり、サーカシヴィリが知っていることや、何を言うべきかを全て教えた人々なのだ。 地獄への道は、善意で舗装されているということわざがあるが、善意のもとで描かれた状況を乗り越えることは決してない。ジョージアの場合、それは血で汚されることになるだろう。
ならず者のための学校
ベテランズ・トゥデイ*誌のジョージア支局長であり、新設されたインテル・ドロップ誌に寄稿したジェフリー・シルバーマンは、同国の公立学校、いくつかの私立大学、公立大学で働いた経験があるそうだ。彼は、米国での修士課程での外交の授業において、どのように国を乗っ取るかを教えられたと述べている。その方法とは、まず、教育や地域の持続可能な経済と文化を破壊し、歴史を書き換え、次に宗教とその指導者を西洋化させることだったという。
* Veterans Today は、アメリカの反ユダヤ主義と陰謀論の Web サイト。
シルバーマンは20年間、ジョージアの学生が学問的にも道徳的にも徐々に劣化していくのを見てきたといい、「2000年にいた生徒と今の新入生の違いを見れば、年々質が下がっていることが分かります。これは偶然ではありません」と述べた。
ジョージアは、1941年の有名な映画「カサブランカ」のように、怪しい取引、汚い事業、裏切り行為が行われる場所になり、企業はアメリカの代理戦争の前線基地として事業体を設立する。ここは、多くの目的が果たせる非常に野蛮な場所になりつつあり、まさにグレートゲーム*に再投資されているような状況だ。
* グレート・ゲームとは、中央アジアの覇権を巡るイギリス帝国とロシア帝国の敵対関係・戦略的抗争を指す、中央アジアをめぐる情報戦をチェスになぞらえてつけられた名称。
2014年、マイダンの狙撃手を雇ったのが誰なのか、そのほとんどがジョージア出身だったことを忘れてはならない。今こそ、西側諸国がウクライナでの報道機関を使った戦争を前例のない規模にまで拡大している様をしっかりと監視すべき時だ。その中で、真実と人類の生存は犠牲にされている。制御不能に陥っていることの予兆は、いたるところで見つけることができる。
ソーシャルメディア・プラットフォームや一部の新聞においてさえも、この脚本は同じだ。そう、「自由を支援せよ」のいう掛け声の嵐だ。しかしいったい、誰の自由を支援せよというのか?そして誰を犠牲にしようというのか?ジョージアが注意しなければいけないのは、軍国主義化した人々、特にウクライナで戦っていたウクライナ人やジョージア人、その他の外国人ボランティアがジョージアに入ったり自由に移動したりすることを許さないようすることだ。彼らの多くは、NED-CIAが画策したジョージアの政権交代のための訓練を受けているため、彼らを拘留し、審査し、厳重な監視下に置く必要がある。
ジョージアの逃亡者、犯罪者、幻滅した人、その他の緊張感を求める人たちは、現在進行中のクーデターに参加することで失うものは何もなく、全てを得ることができると、少なくとも彼らはそう思っている!しかし、彼らの明るい明日とは、侵略が行われる度に約束されてきたのに、住民がまだ待ち望んでいて、はやく実現してほしいと米国を非難しているような明日でしかないのだ。
次のクーデターは、ジョージアの祝日である4月9日に計画されている。FARA法*に反対する人々が最近行った暴力的な抗議行動に対するジョージア警察の対応が「非民主的」だと文句を言ったEU派の子供や大人と思われる人たちは、フランスで今何が起きているのか、ジョージアで次に何が起きるのかをよく見ておく必要がある。
*外国人工作員登録法(foreign agent registration law)
筆者ヘンリー・カメンス(Henry Kamens)は、コラムニスト、中央アジア・コーカサス専門家、オンラインマガジン“New Eastern Outlook” 専属。
CIA, NED: Georgia and Colour Revolutions: “Oink, Oink, Squeal like a Pig!”
CIA、NED: ジョージアとカラー革命: 「ブー、ブー、豚のように鳴きやがれ!」
筆者: ヘンリー・カメンス (Henry Kamens)
出典:New Eastern Outlook
2023年4月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年5月5日
この記事の題材となっているのは、1972年の米国映画“Deliverance”(邦題は『脱出』)。ダム建設によって消えてしまう前に川下りをしようと、ジョージア州の奥深い渓谷へ遊びに来た4人のよそ者の男たち。だが、地元民との軋轢の中で 、殺人事件が発生する。「Oink, Oink, Squeal like a Pig!(ブー、ブー、豚のように泣きやがれ)」というセリフは、その4人のうちの一人が強姦された際に、加害者の地元の荒くれ2人組に掛けられたことばである。ジョージア州と同名の元ソ連領「ジョージア」が、外国人勢力により、「カラー革命的反政府デモ」を引き起こされている状況をこの映画になぞらえている。(訳者)
ようやく春がやってきた。ヨーロッパはとても穏やかな冬だった。 しかし、この3月に、非常に予測不可能なことがある。もちろん天候の話ではない。
モルドバとジョージアで懸命に活動していた国家民主主義基金(NED)とCIAは、間もなくトルコにもやってくるだろう。自然の成り行きに任せて、地震により政治が影響を受けても、現政権が転覆しなければ、の話だが。それにしても、NATOがトルコの協力なしで、攻撃的な行いを成し遂げられると考えていることを、私はいまだに理解できない。
以下のようなくだらない迷信をお聞きになったことがあるだろうか?「昔々、火消しをする消防士たちがいたので、火事を起こそうとする人はいませんでした。本は全て焼かれる『華氏451*』の世界で、誰も本を出そうとしなかったのと同じように」。NATOについても同じことが言える。そもそもNATOは最初は防衛組織だったはずだからだ。
*『華氏451』は、フランソワ・トリュフォーの監督による、1966年のイギリスの長編SF映画である。その映画の世界では、漫画以外の本の出版は禁止されていて、見つかった場合、直ぐに焼かれる。 原作はレイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度』で、(本の素材である)紙が燃え始める温度(華氏451度≒摂氏233度)を意味する。
CIAとNEDがトルコに行くという話は、誰かが広めた噂に過ぎない、というのが私の印象だ。同じような噂がさらに増えているからだ。例えば、イスラエルの政権交代を目指すNGOや団体に、お馴染みの容疑者らが資金を提供しているという。
世界は狂ってしまったのだろうか。それとも、私が目を覚まして事態を理解したのだろうか。私は今日、ロシア製の園芸用玉ねぎ一式と大きな肥料袋を買った。厳しい冬になるかもしれないので、決意をして将来の計画を立てている。タマネギのおかげで、世界で起こっていることが何層にも重なっていることに気づかされた。むけばむくほど、たくさんのことが分かる。
ジョージアの灯が消えた夜
あらゆる状況の中で最も皮肉なのは、ジョージアで起きている、政府を変えようとする明らかな努力だ。これは自国製のデモではなく、外部からの侵略的なものである。予想されていなかったわけではなく、予見されていたことでさえあり、さらにそれ以上のことが起こっている。
2014年のウクライナの再来をジョージアで発生させないような努力がなされていることだろう。しかし、その努力は裏目に出ている。ウクライナは、NATO、EU、ジョージア、モルドバをトランプのカードを積み重ねた家のように崩壊させるかもしれない。西側諸国、特に米国は、ウクライナに過剰な費用をかけてきて、今もかけ続けている。しかし、それは心の底からの善意からではない。一部の識者や多くのアメリカ人が、そろそろ手を引くべきだと考えているのも不思議ではない!そう、アフガニスタン撤退の二の舞になったとしても、だ。
多くのアメリカ人は、ジョージアを映画『脱出*』の舞台となった場所だと思っている。彼らが知っているのは、「ブー、ブーと、豚のように鳴きやがれ」というセリフだけだ(このセリフがこの映画からの引用だと知っていればの話だが)。しかし、今、自国に掛けられたそのような鳴き声を全て受け止めようとしているのだ。
首都トビリシでは、民主的に選出された議会が成立させようとした外国人工作員登録法が話題になっている。NEDやCIAなどから資金提供を受けているNGOの勢力が、その法案を認めなかった。
そこで政府は、EUと米国からの制裁の脅威にさらされながら、少なくとも今のところはこの法案を撤回した。政府の要員たちは、自分たちが次に狙われていることを理解しており、2014年のマイダンでの大虐殺のようなことが起こるのではないかと心配している。
今は静かだが、アメリカやその仲間たちが現政権を交代させる計画が残っているので、まだ終わったわけではない。ウクライナでの状況はロシアにとって良い方向に進んでいるため、その代替地としてジョージアが必要であり、それが失敗した場合はモルドバが必要なのではないかと私は考えている。
元米海兵隊員で、ロシア情報や国際トーク番組に頻繁に出演しているスコット・リッター氏は、ジョージアに関するアメリカの現実について書いている:
ほとんどのアメリカ人にとって、ジョージアは食べ物、ワイン、そして楽しいダンスがある国に過ぎない。これが、あなた方ジョージア人が未来を賭けている米国社会の現実です。アメリカ人は、あなたのことを好きでもないのです。
• 私たち米国民は、あなた方の食べ物やワインを必要な時だけ楽しみ、あなた方の文化を単なる好奇心からしか見ていません。
• 歴史が示すように、私たちはあなたたちのために死ぬつもりはありません。あなた方は、私たちの地政学的な目標や目的のためにのみ存在するのです。
• あなた方は、米国がロシアの周辺に設置しようとしている「不安定化地域」の一部に過ぎないのです。
• ちょっと考えてみてください。ジョージアに対するアメリカの目的は、地域の不安定さを生み出すことなのです。
• その代償を払うのは、アメリカ人ではないでしょう(彼らはすでにジョージアとジョージア人を自分のものだと思っているのだから)。
最後に、ジョージアとジョージア人に対して警鐘を鳴らそう。残念ながら、多くのジョージア人は気づきたがっていないのだ。自分たちがさらに悪い侵略者を招き入れて、その侵略者を支えようとしていることを。スコット・リッター氏が指摘したように、これらの侵略者な、ジョージア人のことを人間としてまったく気にかけておらず、ただ自分たちの大きな目的を果たすためにどう利用できるかしか考えていないのに。
一方、アメリカに戻ると
この計画の唯一の問題は、西側諸国、特にアメリカ人の多くが、増税、インフレ、懐に入るお金の減少に満足していないのに、なぜアメリカがロシアとの代理戦争に巻き込まれ、自分たちには関係ない、地図で探すのも難しいような中間国、つまりウクライナを利用しているのかが分からないことだ。
アメリカの好みは、シリアのように、そもそも関与する理由のない戦争に全財産を投じることで、貧しい人々を貧しくし、アメリカ国民をより貧しくさせることだ。そのせいで世界は統制を取れなくなっている。支配者たちは、自分たちのためだけに動き、自分たちが助けるべきはずの人たちのことなど気にも留めていない。
現地の状況を目の当たりにし、多くの関係者を知っている私たちNEO(New Eastern Outlook)や他の代替報道機関がジョージアの報道機関を巻き込んで、記事や関連インタビューを出すことで、この先何が起こるかをジョージア政府に警告してきたことを私は嬉しく思う。
特に、ミヘイル・サアカシュヴィリ前大統領が、金融犯罪や人権侵害に関わる多くの罪状を持っているせいで司法から逃亡しているにもかかわらず、なぜジョージアに戻ってくるという大きな危険を冒したのが明らかになったことは重要だった。
彼は現在、これらの様々な犯罪行為のうちのほんの一部の罪状を理由に、獄中にいる。彼は間違いなくもっと多くの罪に問われているはずなのに、うまく立ち回り、役に立つ愚か者として、時限爆弾の短い導火線としての役割を果たしたのだ。
サアカシュヴィリの身に起こったことは、彼が10年間アメリカの傀儡政権の執行者として住民を恐怖に陥れたことから考えれば、この国の他の人々がこの先の状況をどう予想するかが見えるだろう。つまり、サアカシュヴィリがアメリカにとっての親友であることから考えられることは、アメリカ国務省は、必要であればジョージアを「マイダン2014」の舞台にできるよう、強く働きかけているということだ。その兆候は幾つかの報道から伺える。
海外からの影響力を高めるための完璧な嵐が吹き荒れる中で
ロシアに責任を転嫁しようとするのは、すでに秘密がばれてしまっていることを考えると皮肉なものだ。米国大使館の報道声明は、ジョージア国会がクレムリンに触発されたいわゆる「外国からの影響」に関する法案を急遽推進した、というものだった。もちろんこの声明は、何十億ドルも費やして、ロシアがいかなる国にも干渉できないようにし、ロシアの干渉を許さない諸法律を考案してきたまさにその米国が出したのである。国が資金を出し続けるのは、ジョージアなどの国々が、米国の言うことを真に受けている指導者を選び、ロシアの影響力を排除したいと言い出すまでだ。その時、米国がそれまで見世物のように費やしてきた資金が効力を発揮するのだ。
ジョージアで展開されていることは、台本通りに進んでいるかのようだ。その台本は、NED(全米民主主義基金)が政権交代劇を起こすべく書いたものだ。2014年のキエフや、アメリカの作戦の蜘蛛の巣にかかった他の多くの場所で起こったことと同じ筋書きだ。ただし、多くのジョージア人、特に50代以上の人たち、そして少数ではあるが若い世代の人たちも、「ロシア人と一緒にいたほうがいい」 と思い始めている。
豚は豚
欧米の多くの真の利害関係者は、銀行の崩壊や体制全体を崩壊させるかもしれない政治的対立などで頭がいっぱいで、外国の紛争地帯で何が起こっているのかの最新情報にまで気が回っていない。ほとんどのアメリカ人(ニクソンが表現したサイレントマジョリティー<声なき多数>)は、ジョージアとはフロリダのすぐ北にあるジョージア州のことだと思っており、ジョージアという言葉から、映画『脱出』で、強姦される役を演じていたネッド・ビーティが、地元の荒くれ2人組に豚のように鳴くことを要求された不適切な瞬間を思い浮かべられる人はもっと少数だろう。
アメリカ人がジョージアとジョージアの文化について持っている範囲で「知識」は、ジョージア料理とダンス、そして(ソ連の指導者だった)ジョー・スターリンおじさんがジョージア出身だったという事実にくらいの表面的な理解に限られている。アメリカ人の大半は、ジョージアが存在することすら知らない。
ビートルズの歌で、ジョージアの名前を出したものがあった。なお当時ジョージアは、ロシアの支配下にあった 。ビートルズは、「Back in the USSR」という楽曲で、ジョージアを含むいくつかのソビエト連邦の共和国の名前を歌っていたのだ。この曲以外、ジョージアは、アメリカの大衆文化で全く言及されたことはない。
私は、旧ソビエト連邦諸国や中東、アジアで起こっていることの多くを身近に感じているので、この地域の歴史の真実に気づかずにはいられない。この地域の歴史とは、記録を見ればわかる通り、戦争や、戦争の脅威や、或る帝国が別の帝国に侵略されることの繰り替し成り立っている。そしてその戦いの勝敗は、どちらの帝国が優れているかではなく、どちらの国の政治的思考様式が長持ちするか、で決せられてきた。
米軍出身の部内者である私は、どう考えても、ジョージアを中南米のバナナ共和国状態にまで貶めようとする外敵の側にいるはずだ。しかし、私はジョージアの側にいる。なぜなら、この「外国の影響力」が良性であれば、何の影響もないはずであり、ジョージアでの行動に対して責任を負いたくないのは、西側諸国だけだからだ。
熟考すべきいくつか問い
• なぜジョージアの一般的なデモ参加者や若者は、とにかく外国人工作員法に反対するのだろうか?
• なぜ、ジョージア人は、自分たちが入手しているニュースの情報源や資金源を知りたくないのだろうか?
親西欧であることはかっこよくて、ジョージアの若者は、もっと自立すべきだと主張すればするほど、すべての友人にも自立してほしいと思ってしまう。フランクリン研究所*のようなNGOは、まさに若者たちをこのような方向性に導いてきた。私は、ジョージアから渡米し、高校教育の一環として、米国や外国の市民社会の訓練に参加している15歳の学生を知っている。彼女は、これらのNGOがいかにジョージアからの留学生たちを洗脳しようとしているかを私に話してくれた。ヨーロピアン・スクール**などのIB(国際バカロレア)に対応した教育課程を持つ学校など、超名門校を含む多くの私立学校でも同じことが言える。基本的に、より良い生活を望むなら、アメリカの望むことをしなければならない。しかし、自分の存在理由はアメリカの目的のためでしかないので、アメリカが望む行為をとっても報われることはないのだが。
*フランクリン研究所は科学博物館であり、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある科学教育と研究の中心地。アメリカの科学者で政治家のベンジャミン・フランクリンにちなんで名付けられた。
**ヨーロピアン・スクールとは、欧州各地に点在する、多言語および多文化の教育方法を強調する一種のインターナショナルスクール
平和部隊*は、もはやケネディ時代の理想主義的な取り組みとは全く異なるものになってしまったが、ジョージアにも存在する。またジョージアにはウクライナ民族主義者の第5列(内通者)も存在する。これらの内通者は、ウクライナで傭兵として活躍しているジョージア軍団の支援を受けており、NED、CIA、USAID(米国国際開発局)、クラウド・ファンディングから資金を得ている。
*平和部隊は、アメリカ合衆国連邦政府が運営するボランティア計画。ボランティアを開発途上国へと派遣し、現地の支援を行うことを目的とする。日本の青年海外協力隊の米国版である。
サーカシヴィリの背後にいる人々が、非暴力的な方法を使うわけはない。実際、これら背後にいる人々は冷血な殺人者であり、サーカシヴィリが知っていることや、何を言うべきかを全て教えた人々なのだ。 地獄への道は、善意で舗装されているということわざがあるが、善意のもとで描かれた状況を乗り越えることは決してない。ジョージアの場合、それは血で汚されることになるだろう。
ならず者のための学校
ベテランズ・トゥデイ*誌のジョージア支局長であり、新設されたインテル・ドロップ誌に寄稿したジェフリー・シルバーマンは、同国の公立学校、いくつかの私立大学、公立大学で働いた経験があるそうだ。彼は、米国での修士課程での外交の授業において、どのように国を乗っ取るかを教えられたと述べている。その方法とは、まず、教育や地域の持続可能な経済と文化を破壊し、歴史を書き換え、次に宗教とその指導者を西洋化させることだったという。
* Veterans Today は、アメリカの反ユダヤ主義と陰謀論の Web サイト。
シルバーマンは20年間、ジョージアの学生が学問的にも道徳的にも徐々に劣化していくのを見てきたといい、「2000年にいた生徒と今の新入生の違いを見れば、年々質が下がっていることが分かります。これは偶然ではありません」と述べた。
ジョージアは、1941年の有名な映画「カサブランカ」のように、怪しい取引、汚い事業、裏切り行為が行われる場所になり、企業はアメリカの代理戦争の前線基地として事業体を設立する。ここは、多くの目的が果たせる非常に野蛮な場所になりつつあり、まさにグレートゲーム*に再投資されているような状況だ。
* グレート・ゲームとは、中央アジアの覇権を巡るイギリス帝国とロシア帝国の敵対関係・戦略的抗争を指す、中央アジアをめぐる情報戦をチェスになぞらえてつけられた名称。
2014年、マイダンの狙撃手を雇ったのが誰なのか、そのほとんどがジョージア出身だったことを忘れてはならない。今こそ、西側諸国がウクライナでの報道機関を使った戦争を前例のない規模にまで拡大している様をしっかりと監視すべき時だ。その中で、真実と人類の生存は犠牲にされている。制御不能に陥っていることの予兆は、いたるところで見つけることができる。
ソーシャルメディア・プラットフォームや一部の新聞においてさえも、この脚本は同じだ。そう、「自由を支援せよ」のいう掛け声の嵐だ。しかしいったい、誰の自由を支援せよというのか?そして誰を犠牲にしようというのか?ジョージアが注意しなければいけないのは、軍国主義化した人々、特にウクライナで戦っていたウクライナ人やジョージア人、その他の外国人ボランティアがジョージアに入ったり自由に移動したりすることを許さないようすることだ。彼らの多くは、NED-CIAが画策したジョージアの政権交代のための訓練を受けているため、彼らを拘留し、審査し、厳重な監視下に置く必要がある。
ジョージアの逃亡者、犯罪者、幻滅した人、その他の緊張感を求める人たちは、現在進行中のクーデターに参加することで失うものは何もなく、全てを得ることができると、少なくとも彼らはそう思っている!しかし、彼らの明るい明日とは、侵略が行われる度に約束されてきたのに、住民がまだ待ち望んでいて、はやく実現してほしいと米国を非難しているような明日でしかないのだ。
次のクーデターは、ジョージアの祝日である4月9日に計画されている。FARA法*に反対する人々が最近行った暴力的な抗議行動に対するジョージア警察の対応が「非民主的」だと文句を言ったEU派の子供や大人と思われる人たちは、フランスで今何が起きているのか、ジョージアで次に何が起きるのかをよく見ておく必要がある。
*外国人工作員登録法(foreign agent registration law)
筆者ヘンリー・カメンス(Henry Kamens)は、コラムニスト、中央アジア・コーカサス専門家、オンラインマガジン“New Eastern Outlook” 専属。