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流出した文書は暴露する――ウクライナはロシアを不安定化し、NATOをモスクワとの全面戦争に引き込むことを企んだ

<記事原文 寺島先生推薦>

Leaked Documents Expose Ukrainian Attempts to Destabilize Russia and Draw NATO into a Full-Scale War with Moscow

筆者:オルガ・スハレフスカヤ(Olga Sukharevskaya)

出典:Internationalist 360°

2022年9月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月26日




キエフの特務機関が巧妙に練り上げた策略の数々は、ウクライナの長年にわたる攻撃的な戦略を暴露する

 最良の防御は最良の攻撃である。国際関係における最も古い原則の1つである。

 そして、ウクライナの文書(現在、メディアの要請があれば閲覧できる)が示すとおり、モスクワには、ウクライナに攻勢をかけたときから、明らかに自衛すべき重大なものがあった。過去8年間、キエフ政権の軍隊と特殊部隊は、数々の作戦を準備してロシアの国際関係や国内平和そのものを損ねることを目的としてきたからだ。

 今年6月、「ベレギニ」と名乗るハッカー・テレグラム・チャンネルが、ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOの情報・心理作戦部の行動計画を公開した。それによると、このSSOの任務は、外国の住民との連携、スパイネットワークの構築、特殊部隊や軍事組織への潜入によるスパイ活動、ウクライナ政府(他国を含む)に脅威を与える人物の暗殺、さらにはクーデターや政権転覆の準備などである。

Фундук, Заслон, Болотная площадь...
ベレギニ 2022年06月09日
(ロシア語による漏洩文章)












 
 このウクライナ軍特殊作戦部隊SSO計画は2017年に作成されたものである。これはウクライナのスパイが作成した多くの類似した秘密文書の一つで、公開されたのはそのひとつだけだった。しかし、こうした計画の存在と、ウクライナの実際の政治的・軍事的措置とは驚くほど一致する。このことは、遅くとも、ウクライナで欧米の支援を受けたクーデターが起きた2014年には、キエフ政権がすでに反ロシア活動を活発におこなっていたことを示唆している。


不安を煽動する者たち

 2017年からのウクライナ計画を調べると、まず目を引くのは、ロシア社会の分裂を狙ったさまざまな作戦である。

 「ザスロン(障壁)」作戦では、ドンバスの兵士や民兵の家族、そしてロシア軍関係者に影響・衝撃を与える計画が描かれている。この作戦の主な目的は、ロシアとドンバス2カ国(暗号名「イースタン=東側」)の軍隊を封鎖し、脱走と辞職を促すことである。

 ウクライナにたいする敵対行為(つまり紛争)が発生した場合、「ボロトナヤ広場」作戦への移行が計画されていた。これは、ロシアの軍事的・政治的指導者にたいする国民の不信感を煽り、「東側」大統領とその側近の政策にたいする反対意見を煽って、大規模な抗議行動を起こさせる、というものである。

 この計画の真偽は、ウクライナの実際の行動で確認することができる。クリミアがロシアに再統一された後でさえも、クリミアにはキエフ政権に味方するロシア人が見受けられた。

 特筆すべきは、2018年にケメロヴォのショッピングセンター「ウィンターチェリー」で起きた火災で300人が死亡したとする偽ニュースで、これがウクライナ発だったことである。これに劣らず参考になるのがウクライナの特殊部隊の話である。その部隊員は、「年金大量虐殺(失われた年金)」に抗議するようロシア人に呼びかけたものの、自分のウクライナのIPアドレスを変更し忘れたのだった。


目的:士気を低下させる

 ロシア国内のウクライナ同調者の数は、今年に入って増えたとは考えにくい。社会学的研究によれば、市民のロシア政府への支持は高まる一方だ。夏の初めには、ロシア人の72%が軍事作戦を支持し、プーチン大統領の支持率も上昇し、82%で安定している。

 しかし、ウクライナが対露攻撃への支持を集めることに失敗したとしても、それはウクライナが何もやらなかったということではない。例えば、ウクライナの特殊作戦部隊の司令部は、2022年1月から「スムタ(大動乱)」プロジェクトを実施している。このプロジェクト文書には、ロシアのメディアやソーシャルネットワークに掲載された情報を載せた詳細な報告書が含まれている。その情報はロシアの不安定化、国民の不満の誘発、当局の信用失墜を目的としたものだった。
訳注:スムタ(大動乱・動乱時代) は、ロシアの歴史で、1598年のリューリク朝フョードル1世の死去から1613年のロマノフ朝創設までの時代を指す。1601年から1603年にかけて、ロシアは、当時の人口の3分の1に相当する200万人が死ぬというロシア大飢饉に見舞われた。また、1610年から1613年にかけてはツァーリ不在の空位時期に陥った。

 ウクライナに対する敵対行為(すなわち、ロシアの特別軍事作戦Z)の勃発後、「ステップ(大草原)の風」作戦が発動された。ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOの文書にあるように、その任務は敵の戦意を喪失させること、そしてロシア軍とDPRおよびLPR(ドネツク&ルガンスク人民共和国)戦闘員との間に緊張を作り出すことである。ロシア国立研究大学経済高等学院のオレグ・マトヴェイチェフ教授によれば、「実際、ウクライナの学生が(ロシア語インターネットで)管理しているアカウントは約8万件あるが、彼らは地元の人間、すなわちペンザ、クルガン、チタ、ハバロフスクの『普通の住民』のふりをしていた」。

 また、ロシア兵の親族は電話詐欺に脅かされている。愛する息子がウクライナで死んだという電話があったり、「捕虜になったから解放してくれ」と金銭を要求するのである。オンブズマン(行政監察官)のタチアナ・モスカルコワが報告したように、ロシア兵の親族は、捕虜になったロシア兵が虐待される様子を映したビデオも受け取っている。また、ウクライナの特殊部隊は、テレグラム・チャンネルをいくつか作り、ロシア軍の犠牲者や捕虜に関するデータ(検証不能)を公開している。ただ、そのオンブズマンはまた、当官には家族からは捕虜に関する訴えが100件以上も寄せられており、そのうち約半数が実際に確認されているとも言っている。


弾道ミサイルという「優(やさ)しい雫(しずく)」作戦

 「優(やさ)しい雫(しずく)」作戦は特筆に価する。ウクライナ支配下にない地域の住民を対象としたものである。その任務は「ロシア占領地の住民のあいだに親ウクライナ感情を形成し、『東側』すなわち占領当局ロシアへの抗議運動を奨励すること」である。

 しかし、この計画の実行に成功した例はない。その最大の理由は、ドンバス地域のウクライナへの再統合にたいする、キエフ政権とドンバス共和国の考え方やアプローチの違いにある。2021年3月、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「クリミア自治共和国とセヴァストポリ市というロシアによる一時占領地域の、脱占領と再統合に関する戦略」を承認する法令に署名した。158段落からなるこの文書には、キエフ当局がウクライナから去った地域の住民をどのように扱おうとしているのか、というヒントが書かれている。

 この文書は、「ロシアによる占領行政に加担した、あるいは協力した」人物を、政府や公務員のいかなる地位にもつけない、と提案している。この提案では2014年の住民投票委員会のメンバーから、ドンバス地区政府の学校や病院に勤務する教師や医師までの、非常に広範囲の人々が対象になっている。また、「脱占領」には次のようなことまで含まれている。クリミアのロシアへの返還を問う住民投票以前にウクライナ警察がおこなった刑事事件の時効を延長すること、ウクライナ治安局の権限内の刑事事件を追及することも、である。

 この法律用語を素人語に訳すと、こうなる。この作戦は、2014年2月にクリミアで活動したすべての職員、クリミアのロシアへの統合を支持する大規模集会への参加者、内戦中にDPRやLPRを支援した住民などに対して意図的な迫害を実行することである。

 この文書によると、クリミアやドンバスの住民にウクライナの大学で学ぶ機会を与える一方で、キエフ政権はクリミア半島で取得した学歴証明書を一切認めない。このような条件によって、クリミアやドンバスの住民がウクライナに戻りたくなるかというと、それは純粋にそうなってほしいという効果を狙ったものに過ぎない。

 ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOがクリミアやドンバス住民の親ウクライナ感情を醸成する計画を今後も実施するつもりかどうかは不明だが、ロシアの特別軍事作戦Zの開始後、ウクライナ側がこれらの地域の都市への攻撃を急激に増やしたことは確かである。この「優(やさ)しい雫(しずく)」は今のところ、MLRS多連装ロケット弾とトーチカU(自走式戦術)弾道ミサイルという形でしかこの地域には降り注いでいない。


満州(中国北西部)の丘で

 ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOは、外交分野でもいくつかの特殊作戦を実施している。その1つが「カスピ海」作戦である。その目的は、ロシア連邦と特定の「子鹿(ご機嫌取り)=カスピ海地域の国々と思われる」の間に不和の種をまき、それを深めることである。この作戦は、「『子鹿』が『東側(=ドンバス地域、クリミア、ロシア)』との交流を拒否する行動」につながれば成功であるとされている。


カスピ海~満州の俯瞰図

 一般に、ロシアとその仲間との関係を混乱させようとするウクライナの画策と、いかなる国同士の対話においても生じる自然な困難とのあいだの、線引きがどこにあるのかを評価することは難しい。とはいえ注目に値するのは、今年1月にカザフスタンで起きた暴動で、少なくともデモ参加者の行動の一部がウクライナと連携していたことである。カザフスタンの反対派がウクライナに亡命していたことが判明したのである。

 「満州の丘」作戦は、ウクライナの東側の諸国とロシアとの外交関係を悪化させることを目的としている。このウクライナ特務機関の計画は、東側の隣国(カザフスタン、ウズベクスタン、キルギスタンなどの「スタン」諸国)が潜在的な脅威であるとモスクワに信じ込ませ、それによってこの地域にロシアが軍駐留の度合いを高めるよう挑発するためのものであった。

 2021年7月に採択された「ウクライナ外交活動戦略」の内容を分析すると、キエフ政権の積極的・攻撃的な性格を見て取ることができる。キエフの外交行動は防御的な性格ではないのである。例えば、「ロシアの侵略にたいして長年にわたって対抗してきたことで得た経験」をNATO諸国やバルト海・黒海地域に提供することである。あるいは、近隣諸国におけるロシアのカッコつき「偽情報」対策、「ベラルーシの人々」への支援、ロシア自体のカッコつき「民主化」、そして「幅広い国際的な連合に基づいてロシア連邦への圧力と抑止力」を強化するためである。ちなみにこれは、ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOの「理性の声」という計画にも盛り込まれている。

 二国間関係では、ウクライナは貿易・産業協力・文化交流の発展に力を注ぐべきであるが、そこにおいてさえ、ウクライナ外務省は「ロシア連邦の侵略に対抗するために、アフリカや中東の国々からの支援を確保すること」を任務としているのである。


エピローグ

 ウクライナにたいする敵対行為(ロシアの特別軍事作戦Z)の勃発以来、キエフ政権はロシアの行動を、カッコつき「国際社会」にたいして「巨大なロシア軍に勝てない小国にたいする大国の攻撃」であると示そうとしてきた。「なぜなら、ウクライナにはロシア連邦にも他国にも侵略的意図はなかったのだから」と。
 しかし、この発言は「ウクライナの軍事安全保障戦略」によって反論されている。例えば、この文書では次のように宣言しているのである。「キエフはロシア連邦との戦争に突入するかもしれない。ロシアがベラルーシ共和国を政治的影響圏にとどめようとする場合には」と。

 また、ウクライナのNATO加盟という目標も明確に示されている。もちろん、ウクライナは主権国家として、どのような国際機関にも加盟する権利がある。しかし、問題はキエフ政権が次のように考えていることである。
 ウクライナがNATO加盟を果たす目標は、米国主導のブロックを対ロシア戦争に突入させることである、と。
 このことは、ウクライナ大統領顧問のアレクセイ・アレストヴィッチが、「防衛者ヨーロッパ 2021」演習の目的を説明する中で次のように述べていることからも、確認できるだろう。「バルト海から黒海までの海域で、我々が軍事訓練は――遠回しの言い方をしてはいけない――ロシアとの武力衝突、ロシアとの戦争をどう実行するか、その方法を練り上げているのである」と。

 とはいえ、2017年当時、ウクライナ軍特殊作戦部隊SSOは「理性の声」計画を作った。その中に含まれていた守るべき課題は、「事態の平和的解決を交渉する用意があると認める声明」を西側諸国から出させることであった。実際、西側諸国はこのアイデアを拒否することはなかった。
 しかし、ともかく敵対関係(ウクライナ紛争)が勃発後は、和平交渉を拒否し、ロシアとの戦争を好んだのはキエフ政権であった。ウクライナのゼレンスキー大統領はパリ和平交渉の場でもこの政策路線を繰り返し、ロシアと交渉する条件はまだ「成熟していない」と強調し、「もっと強い立場」に立ちたいと望んだのだった。


オルガ・スカレフスカヤは、元ウクライナの外交官である。
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