ウクライナと西側支援国は欧州最大の原発への「自殺的」攻撃について説明責任がある。 ブリンケン米国務長官はロシアを「核テロリスト」に仕立てたかった。しかし手の内がばれてしまった。
<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine and its Western backers should be held accountable for the ‘suicidal’ attack on Europe’s largest nuclear powerplant
The US secretary of state hoped to make Russia look like a ‘nuclear terrorist’. Instead, he implicated himself
出典:RT 2022年8月10日
著者:スコット・リッター(Scott Ritter)
Scott Ritter is a former US Marine Corps intelligence officer and author of 'Disarmament in the Time of Perestroika: Arms Control and the End of the Soviet Union.' He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector.
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年9月5日
ウクライナ南部ケルソン州のドニエプル川にある水力発電所「カホフカ水力発電所」の入り口を警備するロシア軍(2022年5月20日撮影)。© APフォト、ファイル
国連事務総長のアントニオ・グテーレス(António Guterres)が、地球の裏側で第二次世界大戦中の広島への原爆攻撃の生存者に演説しているときでさえ、ウクライナの軍隊は、ザポリージャ(Zaporozhye)発電所に砲撃ロケットを発射して、ヨーロッパに現代の核大惨事を引き起こそうと躍起になっているようであった。
今週の襲撃は、安全装置を破損し、欧州大陸最大のこの施設の電源を中断させた。グテーレスは、これを 「自殺行為」と評した。
キエフは、この攻撃はロシアによるものだと即座に非難し、モスクワが「核テロ」を行っていると糾弾した。そして国際社会に対して「国際平和維持活動」の代表団を派遣し、「この地域を完全に非軍事化する」よう要求した。
ザポリージャの核施設は、3月にロシア軍が占領して以来、ロシアの物理的支配下にある。それ以来、ロシアの原子力専門家の監督のもと、ウクライナの技術者により運営されている。この施設には6基の原子炉があり、軍事作戦が始まる前はウクライナの電力の約5分の1を発電していた。このうち3基はロシア軍支配後に停止し、1基も8月5日の砲撃で停止を余儀なくされた。残る2基も安全対策として出力を半分に減らさざるを得なかった。
Read more
Russia summons UN Security Council over nuclear emergency
国際原子力機関(IAEA)のウクライナ大使、エフヘニー・ツィンバリウク(Yevhenii Tsymbaliuk)は、ロシア軍が原発を砲撃してウクライナ南部の停電を引き起こそうとしていると言明した。ウクライナ国営原子力機関「エネルゴアトム(Energoatom)」は、ロシア軍がザポリージャ原発の至る所に爆薬を仕掛けることで、この施設を占領せんとするウクライナの反撃で爆発させようとしているとして糾弾している。また、ウクライナ軍は、ロシアが原子炉付近の建物に弾薬を含む軍事機器を設置しているとロシアを糾弾している。
ウクライナの言い分の唯一の問題は、簡単に言えば、どれも真実ではないことだ。8月5日のザポリージャ核施設に対する攻撃は、その衝撃特性から明らかにウクライナの支配地域から発射された砲撃ロケットによって行われたことが分かる。さらに、原発の周辺に設置されたロシアの防空レーダーと対砲弾レーダーが、飛んできたロケットの弾道を検知しており、攻撃の出所を示す動かぬ証拠を掴んでいるはずだ。米国とNATOの情報収集部隊も、ウクライナの上空とその周辺で活動していたはずである。そして、このような証拠を公開することによってプロパガンダ戦での勝利が見込まれるのだから、米国であればキューバ・ミサイル危機の際のU-2画像や、ソ連の戦闘機パイロットがKAL007便を撃墜した音声テープを公開した手口の再現を試みたであろうことは間違いないだろう。
しかしもちろんロシアなら、そんなことはあり得ない。ロシアがザポリージャの施設を積極的に防衛している現実を考えると、安っぽい広報のためにレーダー能力に関する重要な情報を提供することはあり得ない。ロシアは長い間、安っぽいプロパガンダ戦には消極的で、実際の戦場で実力を誇示する方を好んできた。
米国とウクライナはそうではない。ロシアの言い分にけちをつけ、プーチン大統領の「真意を知る」ためと称して、たとえそれが真実でない情報であっても、共同で情報を発信してきた実績があるのだ。
Read More
ウクライナのザポリージャ核施設に対する攻撃は、典型的なジョージ・オーウェル風手法が使われた。攻撃の4日前に米国によって予測されていたのだ。8月1日の国連での記者会見で、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、ロシアが核施設を基地としてウクライナに砲撃を行ったと糾弾した。原子力発電所の近くからロケット砲を発射する行為は「無責任の極み」と断じ、ロケット砲が原子力発電所に着弾する可能性を示唆した。さらに、ロシアは原発を「核の盾」として利用し、原子炉への攻撃を恐れてウクライナの攻撃を防いでいるのだとも述べた。
ブリンケンがウクライナ政府の言い分を、恥知らずにもオウム返ししているのは、彼の強力な発言を裏付ける証拠が全くないため、ますますばかばしいものになっている。通常、国務長官のような人物がこのような重要な問題について公の場で発言する場合、その主張を裏付ける何らかの情報、例えば、ザポリージャ原発付近にロシア軍がいることを示す上空からの画像などが公開されるものである。しかし、ブリンケンはアメリカ外交のトップとしての機能を停止し、ウクライナの宣伝マンとしてしか機能していなかったので、そのようなデータは提供されなかった。
ロシア側は、ザポリージャの核施設周辺には、警備のための少人数の部隊を除いて、ロシア軍はいなかったと明言している(結局のところ、ここは稼働中の原子力発電所なのだ)。ここでも、ロシアは原発周辺の部隊配置の俯瞰画像を明らかに提供できるのに、作戦上のセキュリティがそれを許さないのである。結局のところ、犯罪の証拠を提供するのは告発者の仕事であり、告発された側のものではない。
Read More
Russia accuses Ukraine of ‘nuclear terrorism’
8月1日のブリンケンの発言は、ザポリージャ核施設に対してウクライナ軍が砲撃を行うことについての広報活動の発端となった。この活動の目的は2つあると思われる。第1にロシアに悪い印象を与えること、第2にウクライナが軍事力によって達成できなかったこと、すなわちザポリージャからのロシア軍の退去を可能にすることである。西側諸国が国際的な介入の要請を発しているという事実から分かることは、言い分を支える基本的な事実が真実でないことを関係者が知っているにもかかわらず、親ウクライナ側の言い分を推進するための協調的な取り組みが行われているということだ。これに対抗してロシアは、IAEAの監視団を独自に招き、この状況について議論するために国連安保理の招集を求めた。
これは、単に情報戦のひとつが失敗したというだけではすまない、はるかに深刻な状況である。ザポリージャの原子力施設は、砲弾の直撃にも耐えうる構造になっているが、電力供給の途絶や安全装置の損傷は、チェルノブイリ原発事故のような暴走を引き起こす可能性がある。ロシア国防省は、ウクライナの発電所への攻撃により電力サージ(過度状況)が発生し、緊急停止したと指摘した。さらに、発電所を運営するウクライナの企業トップは、発電所をウクライナのエネルギーシステムにつなぐ電力線が1本を除いてすべて破壊されたと指摘し、停電は「こうした原子力施設にとって非常に危険になる」可能性があると言明している。
グテーレス事務総長が、ザポリージャ核施設に対する攻撃を 「自殺的」と呼んだのは正しい。しかし、この残虐行為に関与した「核テロリスト」は、モスクワではなく、むしろワシントンとキエフの出身である。ロシアの軍事作戦が一段落し、ザポリージャ核施設攻撃のような犯罪を犯した者の責任が問われるとき、トニー・ブリンケンの名前は、この世に正義があるならば、このリストのトップに挙げられるはずである。
- 関連記事
-
- ウクライナから出荷される穀物は誰のものか? アメリカの遺伝子組み換えアグリビジネス大手がウクライナの農地を掌握へ (2022/09/08)
- ウクライナ、ロシア語についての新たな禁止令を発令 (2022/09/07)
- ロシア兵たちがウクライナで毒性の強い化学薬品を浴びて入院 (2022/09/06)
- ロシア爆発事件で殺害されたダリヤ・ドゥギナの父アレクサンドル・ドゥーギンとは誰か? (2022/09/06)
- ウクライナ戦争退役軍人が語る:キエフは米国支援物資を略奪している、兵士たちを無駄に死なせている、民間人を危険に晒している、そしてこの戦争には負ける (2022/09/05)
- 「ウ軍はジュネーブ条約で禁止の対人地雷を使用」 エバ・バートレットによるドネツクからの報告 (2022/09/04)
- ウクライナ軍がIAEA(国際原子力機関)の査察員の予定移動経路付近を砲撃 (2022/09/04)
- ウクライナと西側支援国は欧州最大の原発への「自殺的」攻撃について説明責任がある。 ブリンケン米国務長官はロシアを「核テロリスト」に仕立てたかった。しかし手の内がばれてしまった。 (2022/09/03)
- 新たに輸出された穀物はアフリカに向かっていない:ニューヨーク・タイムズが暴露したキエフの最新の嘘 (2022/09/02)
- マリウポリで生き延びた住民から、迫り来る戦闘を迎えるウクライナの人々への実践的アドバイス:「ウ軍は味方ではなく敵」「助けてくれるのは露軍」 (2022/09/02)
- 「こいつらはケダモノだ、人間じゃない」 ゼレンスキーは、刑務所にいた児童レイプ犯・拷問犯を解放し、枯渇した軍隊を補強する (2022/09/01)
- 「ウクライナは反撃に失敗した」 元ペンタゴン顧問ダグラス・マクレガー大佐は、ロシア軍が間もなくウクライナ南部の港湾都市オデッサを占領する可能性があると見ている (2022/08/31)
- 「米国は、ロシア・中国との戦争の "瀬戸際" にある」 キッシンジャー氏 (2022/08/30)
- 「バイデン氏はロシアの政権交代を望んでいる」 元下院女性議員トゥルシー・ギャバード (2022/08/30)
- ウクライナ、自国が欧州に核テロを仕掛けていることを暗に認める (2022/08/27)