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「ウクライナは反撃に失敗した」 元ペンタゴン顧問ダグラス・マクレガー大佐は、ロシア軍が間もなくウクライナ南部の港湾都市オデッサを占領する可能性があると見ている

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine failed to mount counteroffensive – ex-Pentagon adviser
Colonel Douglas Macgregor thinks that Russian forces could soon go on to seize the port city of Odessa in Southern Ukraine

出典:RT

2022年8月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月28日



写真 ウクライナのハルキフにいるウクライナ特殊作戦チームのメンバー。© Getty Images / Metin Aktas

 ウクライナ軍は約束した反撃をやり遂げることができず、ロシア軍がウクライナの黒海沿岸一帯を占領する可能性が高くなったと、トランプ政権で国防長官顧問を務めたダグラス・マクレガー大佐が発言した。

 先週火曜日(8月9日)、元米国判事でコラムニストのアンドリュー・ナポリターノが主催するライブストリームに出演したマクレガー大佐は、ロシア軍がこれまでにウクライナで約8万人の人員を失ったという一部の米メディアの報道を「全くナンセンスだ」と切り捨てた。湾岸戦争の経験もある彼によれば、「より正確な数字は、ロシア側の死者が1万3千から1万5千人で、ウクライナ側の死者は6万から8万人」であるとのことである。

 7月下旬、この報道についてクレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシア側の死傷者とされる数字は「偽物」だと述べた。また、最近は既存のメディアでさえも、誤解を招くような報道をしていると嘆いている。


関連記事:クレムリン、軍事的犠牲者の主張についてコメント

 ロシア国防省が最後に死傷者数の最新情報を提供したのは3月下旬で、その時の公式死者数は1351人に達し、負傷者は3825人に上っていた。

 国防総省の元職員マクレガー氏は、前線の現状についてコメントを求められた際、ロシア軍人の大半は8月の攻撃再開に向けて休息を与えられ、「再整備、再編成」されていると述べた。その兆候はすでに「特にウクライナ南部」に現れているという。そして、ロシア軍が重要な港湾都市オデッサを占領し、ウクライナは「内陸国」になると予言した。

 「ウクライナは反撃の糸口をつかめずにいる。だから、ウクライナがこれを止められるという根拠はあまりない」と元ペンタゴン顧問マクレガー氏は主張した。さらに、ウクライナ東部のハリコフ以南でのロシア軍の活動は、後に大規模な攻勢をかけるための予備的な「成形作戦“shaping operations"」のように見えるという。そして、「まず南部での作戦があり、その後ハリコフでの作戦がある」と結論づけ、「ウクライナ軍はどちらも阻止できないだろう」と改めて指摘した。

 さらにマクレガー氏は、これらの攻勢は「8月末から9月初めには終わるだろう」と予想している。

 先月、多くのウクライナ高官が示唆したところによると、同国軍は8月中には南部で反撃を開始し、ヘルソン市を奪還するということだ。しかし、モスクワによれば、最近進攻して領土を奪っているのは、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の軍とともにロシア軍であるとのことである。

 土曜日(8月13日)、ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官はこう発表した。ドネツク人民共和国の戦略的村であるペスキを「同盟軍が完全に解放した」と。
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黒人層の支援でコロンビアに左翼政権が成立

<記事原文 寺島先生推薦>
How Black Colombia Helped to Bring the Left to Power

出典: INTERNATIONALIST 360°

2022年7月12日

著者:カルロス・クルツ・モスケラ (Carlos Cruz Mosquera)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月31日


ブエナヴェントゥラの若き黒人活動家たち

 主要なメディアは象徴となる政治家個人に焦点を当てるが、今日のコロンビアの歴史的瞬間は、グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)と彼の連合による奮闘だけに収斂されるものではない。原則的な取組によって有権者を獲得するための見事な選挙運動であったことは言うまでもないが、勝利の決定的な要因は、昨年の全国的なストライキであった。

 人種差別されてきた労働者階級の若者たちが勇敢に立ち上がったおかげで、国の動きは止まり、すべての急進派と進歩派は、変化を求める熱烈な叫びで一つにまとめあげられた。デモの結果は、いたるところで目にすることができる。多くの人が命を落としたこの運動がなければ、今日のような歴史的瞬間に私たちはいなかったであろうことは、ほとんど疑いの余地がないはずである。

 コロンビアの最近の選挙結果を理解するためには、より主流の説明ではやや不明瞭になっている人種と階級の力学を理解する必要がある。それは、私たちがしばしばトップダウンの視点で提示されるからである。下層大衆は、結局のところ、たんに歴史の臣下にすぎず、決して歴史を作り上げる側にはいない、そう彼らは我々に信じ込ませているのである。

 昨年の運動は、ある政府の法案に対する一部の人たちの反応として始まったが、徐々に広範で、より急進的な要求を持つものへと発展していった。人種差別されてきたコロンビアの労働者階級が直面している耐え難い物質的・社会的条件により蜂起が発生し、その過程で、左翼・進歩的運動の背中が押され、より過激な諸要求、そしてその時は不可能と思われていたもの、つまり左翼政権を受け入れさせたのである。

 歴史的に、コロンビアの紛争の根源に関する研究はかなり限定されたものだった。学者たちはしばしば、10年間(1948年から1958年)という硬直した時間軸に注目し、これをラ・ヴィオレンシア(La Violencia)と名づけて、現在の紛争はそこから始まったとみなしてきた。さらに、この紛争は自由党と保守党の間の確執から発生したという説もよく聞かれる。このような狭い見方は、この国の状況を独特なものとして形成する役割を担ってきた。あたかもこの紛争が本質的にコロンビア特有のものであり、私たちコロンビア国民の体液にある何かによって引き起こされたかのように思わされてきたのだ。

 実際は、暴力と紛争を生じさせた状況の要因は、資本主義の発展、国家の形成、そして重要なことだが、植民地支配の遺産にたどることができる。このような広い文脈の中で、コロンビア社会を悩ませている貧困、社会不安、暴力の状況は、決して特殊なものではない。程度の多少はあれ、このような紛争は資本主義世界システムに統合されたどこの国でも経験されることだ。

 コロンビアの紛争の激化は、19世紀中頃コロンビアの市場が世界システムに統合されたところまでたどることができる。また、異なる社会階級の間の社会的関係は、植民地時代から継承された力関係にまでたどれる。このことは、他の場所でもよく理解されており、今日でも世界中の社会的関係に影響を及ぼしている。

 別の言い方をすれば、今日、最悪の貧困と暴力に苦しんでいるコロンビアの黒人と、他の場所で、同様の状況に直面している人種的差別にさらされたコミュニティは、同じ世界史的流れの中にいることになる。

 近年、欧米諸国では、社会における多くの植民地主義の遺産に反対する運動が盛り上がっている。当局が黒人を標的にし、さらには殺害する方法を暴露した「ブラック・ライブズ・マター」運動から、植民地主義の遺産の銅像やその他のシンボルを取り壊し、この遺産がもたらす社会的・経済的結果に対処するよう求める声まで、さまざまな動きがある。植民地主義の遺産を解体するこの運動は、欧米諸国をはじめ世界各地で展開されている。

 昨年4月下旬、コロンビアの労働者階級の若者たちは、パンデミックの真っ只中、3ヶ月の全国ストライキに突入した。彼らもまた、コロンブスをはじめとする植民地主義者の銅像をいくつも倒した。コロンビアは、不条理にも、クリストファー・コロンブスにちなんで名づけられた。この事実は、名前とシンボルだけでなく、コロンビアの各コミュニティの社会的、経済的、政治的現実の中で、植民地支配の遺産が現在に至るまで残存していることを象徴するものだ。黒人活動家レナード・レンテリア(Leonard Renteria)と他の活動家たちは、全国ストの間、通りを封鎖した。


全国ストの間、通りを封鎖する黒人活動家レナード・レンテリアと他の活動家たち

 「開発」によって土地を追われ、恐怖にさらされた黒人コミュニティ、特に黒人女性は、国の主要都市であるボゴタ、メデジン、カリへの逃亡を余儀なくされている。そして、都市に住む黒人女性は、労働市場や社会一般で最も差別される層へと動かしがたく押し込められている。

 以上のような背景から、カリ市が昨年の全国的な抗議行動の震源地であり、抗議者に対する国家の暴力と弾圧が死や失踪につながる可能性が高かったという統計があることは驚くにはあたらない。(コロンビアの報道機関である)CODHESとProceso de Comunidades Negras(PCN)が発表した記事では、抗議デモの間、暴力のほとんどはカリ市、特にその黒人居住区で起こったことが示されている。

 コロンビア当局が、抗議行動を暴力的に弾圧するというのは今に始まったことではない。昨年の抗議活動のデータは、黒人や人種差別された人々が参加したことが、暴力や弾圧の激しさを増した要因であったことを浮き彫りにしている。

 抗議行動とその周辺に形成された運動を押しつぶそうと躍起になっていたのは、国家と伝統的な保守エリートだけではなかったことを指摘しておかなければならない。リベラル派や、より左寄りの進歩的な公職にある人々でさえも我関せずの態度だった。ストライキを組織した組合のリーダーは、彼らの見解では、手に負えなくなりつつあるとして、人々に抗議を放棄するよう呼びかけを始めた。彼らの見方からすれば、抗議行動はあまりにも無秩序で破壊的、暴力的であり、適切な指導者も組織も存在しなかったのだ。

 中には、犯罪組織が長期のストライキを主導したと言い出す者もいた。抗議していた若い、ほとんどが黒人の、貧しい混血のコミュニティは、自分らのストライキが何週間も維持できているのは、運動がよく組織されているからだと反論し、繰り返し自分たちの政治的要求を訴えた。

 抗議運動が無秩序だとか、諸要求に真面目さが欠けていたということではない。これらの要求が急進的すぎて、権力者や反権力をかかげる人々の耳には届かなかったということだ。

 抗議行動で前面に出たイデオロギーの違いは、この国で観察される大規模な物質的・社会的格差によって部分的に説明することができる。街頭に出た黒人、先住民、貧困層のコミュニティは、既存の政治・経済構造の抜本的な変革から失うものは少ない。中流階級のリベラルな進歩主義者、特に公の地位に就いている人々は、制度をあれこれいじくったり、公的な交渉をすることしか念頭にない。だから急進的な抗議や要求に二の足を踏んでしまうのだ。

 支持は得られなかったものの、昨年抗議した人々が、2世紀にわたって続いてきたエリート支配からの脱却を国に迫ったと主張するのは、あながち的外れなことではないだろう。現在、次期副大統領であるフランシア・マルケス(Francia Marquez)は、抗議行動に参加し、人種差別を受けた若者の要求を最も明確に表現したリーダーの一人であった。伝統的に選挙政治に関心のない人々の支持を集めた彼女の政治的能力は決定的なものである。



フランシア・マルケスの支持者たち。写真イヴァン・ヴァレンシア

 どれも偶然と見るべきではない。マルケスは、最も抑圧されたコミュニティの条件の中を生きてきた。だから彼女はこの国の根本的な変革への緊急性を体現しているのだ。実際、この国の多数派である黒人や先住民の地域、つまり忘れられ、無視されてきた地域でのかつてないほどの投票率が、この国初の左派政権の勝利を確かなものにしたのである。

 人種差別と階級差別が組み合わさって、多くの、おそらくは大半のコロンビア人が経験する「これでは生きてゆけない」という物質的・社会的状況を作り出している。こうした条件とそれを経験する人々が、この国の急進的な変革の先頭に立っていることは間違いない。彼女を取り巻く腰が引けたプロの政治家たちとは異なり、マルケスという存在は変革への動きと、その流れに乗ろうと躍起になっている新自由主義の日和見主義者との間に一線を画しているのだ。

 結局のところ、進歩的なこの新政権が、自分たちを政権の座に就けくれた大衆に報いることができる最も確実な方法は、この国を覆い続けている歴史的な人種と階級の分裂に早急に対処することである。そこまではゆかないにしても、若者たちの力を奮い立たせ今日の歴史的な政権交代をもたらしたのと同じ「これでは生きて行けない」という状況が、次の選挙で、実際、表に出てくることになるだろう。あるいは、もっと早い時期になるかもしれない。

La lucha es larga, comencemos ya!
戦いは長い、今こそ始めよ!
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「米国は、ロシア・中国との戦争の "瀬戸際" にある」 キッシンジャー氏

<記事原文 寺島先生推薦>

US ‘on brink’ of war with Russia and China – Kissinger
(先見性のあるリーダーシップの欠如が原因であると、ベテラン政治家は言う。)

出典:RT Worldニュース

2022年8月13日

<記事飜訳、寺島メソッド飜訳グループ>

2022年8月28日


写真:人工知能に関する国家安全保障委員会(NSCAI)の会議で発言するヘンリー・キッシンジャー氏
(2019年11月5日、ワシントンDC) © AFP / Alex Wong


 ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、ワシントンは伝統的な外交を拒否し、偉大な指導者が不在な中で、ウクライナと台湾をめぐる戦争の崖っぷちに世界を追い込んでいると語った。
 
 キッシンジャーは以前、ロシアとの紛争を終わらせるためにキエフに自国の領有地の一部を放棄するよう提案し、物議を醸したことがある。

 「我々は、ロシアや中国と戦争をする瀬戸際に立たされているが、この戦争の原因となる問題を作り出した非は一部我々の方にもある。しかも我々は、この戦争をどのように終わらせるかとか、これがどうなっていくかという考えも持てていないのだから」と、キッシンジャーは8月13日(土)に発表されたインタビューで述べた。

 現在99歳のキッシンジャー氏は、第二次世界大戦後の著名な指導者たちを紹介した最近の本の中で、ウクライナ紛争における西側諸国の役割について詳しく述べている。彼は、ロシアが2月にウクライナに軍隊を派遣したのは、自国の安全保障のためであり、ウクライナがNATOに加盟すれば、NATOの兵器がモスクワから300マイル(480km)以内に移動することになるからだと述べた。また、逆にウクライナ全体がロシアの影響下に置かれることは、「ロシア支配に対するヨーロッパの歴史的な恐怖を鎮める」ことにはほとんどならないだろうとも述べた。

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モスクワ、米国との関係を「正常化」するための条件を挙げる

 キエフとワシントンの外交官は、これらの懸念のバランスをとるべきだったと彼は書き、現在のウクライナの紛争を「戦略的対話が持てなかった結果」だと表現した。この本が出版された1ヶ月後、キッシンジャーはウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に対し、西側はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の安全保障上の要求を真剣に受け止めるべきだったと主張し、ウクライナをNATO同盟に受け入れるべきではないと明言している。

 ロシアはウクライナで軍事行動を起こす前に、米国とNATOに安全保障上の懸念事項を文書で提示したが、米・NATO双方に拒否された。

 1960年代後半から1970年代初頭にかけて、米軍がベトナム共産主義者と戦争をしながらも、ベトナム共産主義者と幅広い交渉を行っていたキッシンジャーは、現代のアメリカの指導者は外交を「敵対者との個人的関係」と捉えがちであり、ウォールストリートジャーナル紙の取材で語った言葉を借りれば「交渉を心理学的なせめぎあいというよりは一方的な布教のように捉えていて、相手の考えを理解しようとするのではなく、相手を改心させたり非難しようとする傾向がある」、と述べている。

 その代わりにキッシンジャーは、米国は、自国とロシア、中国との間の「均衡」を追求するべきだと主張した。

 この言葉は、「価値観が時に対立する正当性を認めた上での、一種の力の均衡」を意味する、とキッシンジャーは説明する。「もし、最終的な努力の結果が、自分の価値観を押し付けることであると考えるなら、均衡はあり得ないと思う」。

さらに読む:

西側はモスクワの利益を考慮すべき----キッシンジャー氏

 キッシンジャーは、 ニクソン大統領の下で、1970年代に米国の対中外交を指揮した。これは北京をモスクワから引き離し、世界のパワーバランスを東側共産主義からシフトさせることを狙った動きだった。

 ジョー・バイデン大統領の下、米国は中国とロシアが貿易と外交の関係を深めていくのを見守ってきた。米国の台湾政策では、バイデン大統領は、キッシンジャー政権時代の台湾独立に関する「重層的な意味合い」を公にり、ナンシー・ペロシ下院議長は今月初めに台北を訪問して北京を激怒させて、米国と中国の関係をさらに悪化させ、台湾海峡での軍事行動の活発化を促した。

 キッシンジャーによれば、アメリカはもはやロシアと中国のどちらかの味方になリ、もう片方と対抗するという立場はとれない、という。彼は「できることは、緊張を加速させないことと、選択肢を作ることであり、そのためには、何らかの狙いを持たなければならない」と述べた。

 キッシンジャーは、イデオロギーよりも国家の現実的な利益を優先させる国際関係論「現実政治学派」の著名な提唱者である。しかし、その冷静な外交観は、賞賛されてきたが敵を作ることもあった。

 この夏、ウラジーミル・ゼレンスキー大統領は、キッシンジャーが提言する、キエフがクリミアの領有権を放棄し、ドネツク、ルガンスク両人民共和国に自治権を与えるという「現状復帰」を受け入れ、第三次世界大戦を防ぐためにロシアとの和平協定を求めるべきであるとの提言を非難した。キッシンジャーは後に、自身の発言は、即時停戦の交渉のためにウクライナは自国の主張を一時的に棚上げすればよいという意味だったと明言したが、それでもキエフからウクライナの敵であるというレッテルを貼られ、「ロシア・ファシストのプロパガンダと脅しの話を広めている 」と非難されることになったのである。
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「バイデン氏はロシアの政権交代を望んでいる」 元下院女性議員トゥルシー・ギャバード

<記事原文 寺島先生推薦>
Biden wants regime change in Russia – ex-congresswoman

出典:RT  Worldニュース

2022年8月13日

<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年8月28日

米国大統領は、NATOを拡大し、国防企業を豊かにするためにウクライナ紛争を利用していると、トゥルシー・ギャバードは述べた。



ファイル写真:: ホワイトハウスのイーストルームで講演するジョー・バイデン氏(2022年8月9日、ワシントンDC) © AP / Susan Walsh

 ジョー・バイデン米大統領は、ウクライナ紛争を利用して「ロシアの政権交代」を画策し、軍産複合体を養っていると、元米国下院議員で2020年大統領候補のトゥルシー・ギャバードは、8月12日(金)、Foxニュースの視聴者に語った。さらにその一方、アメリカのヨーロッパ同盟国は、バイデンの 「新世界秩序」構築の代償を払っているとも語った。

 8月12日(金)にフォックスの司会者タッカー・カールソンの代役を務めたハワイ出身の元下院議員の彼女は、バイデン政権の反ロシア制裁を厳しく非難し、制裁は、ロシアが記録的なエネルギー利益を得る一方で、アメリカとヨーロッパを傷つけるだけだと述べた。

 「ヨーロッパは今、大規模なエネルギー危機の中にあります」と彼女は述べ、フランスでの記録的な電力料金の値上がり、ドイツでの公共照明の削減と暖房不足、イギリスとスペインでの家庭と企業のエネルギー使用の制限の例を挙げた。

 そして、「なぜ、このようなことが起こっているのでしょうか?」と自問した後、彼女は続けた。「ジョー・バイデンによる制裁のためです。制裁は、現代版の包囲網にほかならないからです。これは、ジョー・バイデンが作り出した供給問題であり、ロシアが今、利益を得ているだけにしかなっでいないのです」と述べた。

Tulsi Gabbard on Russia sanctions, filling in for Tucker:

"It's never been about morality. It's not about the people of Ukraine or protecting democracy. This is about regime change in Russia and exploiting this war to strengthen NATO and feed the military industrial complex." 🔥 pic.twitter.com/3IbYEOnymQ

— Scott Morefield (@SKMorefield) August 13, 2022

 2月にモスクワがウクライナで軍事作戦を開始したことを受け、米国とEUはロシアに対して複数回の経済制裁を発動している。米国はロシアの石油とガスの輸入を停止し、EUはロシアのエネルギー輸出から段階的に撤退を始めている。しかし、欧州の数カ国がモスクワの要求するルーブル建てのガス代支払いを拒否し、EUの制裁でガスパイプラインのメンテナンスが滞っているため、ガスの約40%をロシアに依存するEUはエネルギーコストの高騰とインフレに直面している。

 一方、ロシアは今年、ガスで得られる利益が倍増すると予想されている。

 米国がウクライナに一気に数百億ドル相当の兵器を投入していることから、ギャバードは同国の紛争は 「決して道徳の問題ではない」と主張した。

 「ウクライナの人々のためでも、『民主主義を守る』ためでもありません。ロシアの政権交代と、NATOを強化し軍産複合体を養うためにこの戦争を利用しているだけなのです。」

 「ジョー・バイデンにとっては、新しい世界秩序をもたらすためでさえあります」、と彼女は断言した。「『我々が主導しなければならない』とバイデンは言い、核の破滅の瀬戸際に我々を追いやることになろうとも、まさにその道を実行しようとしているのです。」

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欧米のエリートが言い続ける「ルールに基づく国際秩序」とは何か?


 バイデンは、ロシアのプーチン大統領について「権力の座に留まることはできない」と公言したが、この発言は後にホワイトハウスが撤回せざるを得なくなった。3月にも米国最高指導者であるバイデンは記者団に対してこう発言した。「新世界秩序がこの先、生まれることになるでしょう。そしてその世界は我々が先導しなければなりません」と。この発言に呼応する形で、バイデン氏の顧問であるブライアン・ディース氏も、高いエネルギーコストは 「この先の自由主義的世界秩序」を形成するための代償であると述べている。

 ギャバードは長年、米国の海外紛争への関与や資金提供に反対してきた。2013年から2021年までの4期の任期中、彼女はアメリカのライバル超大国との対話と、イスラムテロに対する強硬政策を組み合わせる政策を提唱してきた。2020年の選挙に向けて民主党の予備選挙候補に立候補したが、一部のメディアや仲間の民主党議員から、ロシアの「操り人形」であると根拠なく非難された。

 2021年に議員を辞めてからも、ギャバードは陸軍予備員として活躍する一方、Fox Newsにゲストとして定期的に出演している。
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ウクライナ、自国が欧州に核テロを仕掛けていることを暗に認める

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev Tacitly Admitted to Waging Nuclear Terrorism Against Europe

筆者:アンドリュー・コルブコ (Andrew Korybko)

出典:INTERNATIONALIST 360°  

2022年8月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月27日



 「ウクライナ政府のザポリージャ原発への核テロは欧州全体にとっての驚異となる」という記事を先週書かせてもらったのだが、それでもまだ西側は、攻撃を行ったのはロシアの方だ、と主張している。それは大手メディア(MSM)から間違った情報を流され、「ユーラシアの巨大国家であるロシアが、自国が統制下におさめている原発を自分で攻撃している」という信じられない言説を刷り込まされているからだ。

 しかし紛うことのない真実が、他でもないゼレンスキーと、大統領府顧問であるポダリャク(Podalyak) の口からこぼれ出たのだ。 ゼレンスキーは厚かましくもこう語っていた。「原発に向かって攻撃したり、原発を盾にして攻撃する全てのロシア兵が理解しなければならないことは、自分たちが我が国の諜報機関や特殊部隊、軍隊にとっての特別な標的となることだ」と。ポダリャクが明言したのは、ウクライナ政府は原発を「解放する」ためには、「どんな武器でも使う」ということだった。


 両者のこれらの表明により、ロシアがウクライナ政府に対して抱いていた警戒心がやはり正しかったという事実が暗にではあるが明らかになった。 ロシアの主張は、ウクライナ政府がヨーロッパに対して核テロを行っているというものだった。その主張に全く疑問の余地のないことが、ウクライナ政府で最上位にいる2名からの公式の発言でいまや明白になったのだ。両者はザポリージャ原発(ZNPP)からロシア軍を追い出すために軍事力を行使する旨を明言したのだから。

 両者からのこのような脅しが西側諸国の支配者層からなんの咎めも受けていない事実から推測すると、西側諸国は彼らの代理国であるウクライナが原発事故というダモクレスの剣を同盟諸国の頭上に吊るそうとしていることを消極的にではあるが受け入れているということになろう。この状況は驚愕と言うしかない。なにしろ、原発事故が起こってしまえばヨーロッパ大陸全体に被害が広がる可能性があるからだ。 とりわけ、EUやNATO加盟諸国と隣接している黒海周辺地域が受ける被害は甚大となるだろう。


 こんな状況を受け入れるという衝撃的な立場に立っていることに対する唯一の考えられる説明は、「ウクライナでの紛争の最新局面において、ロシアがゆっくりではあるが確実に前進している状況に西側諸国が絶望的になり、特定の思考形態にとらわれた支配者層が自国民や将来の自国民の命を犠牲にして、最後の賭けに出ようとしている」というものだろう。

 一方で西側諸国の国民たちは、明らかにこんな賭けに賛成していないが、悲しいかな民衆の力は弱く、事の成り行きを決める力はない。たとえ大規模な平和的反対運動を起こしたとしても、理論上、民衆ができる最大の行為は官僚に圧力をかけてウクライナ政府を批判させることなので情勢に変化は見られないだろう。そんなことを期待するのは非現実的で、なんの変化ももたらさないということだ。この差し迫った核による大惨事を避けられる唯一のものは、その崩壊しつつある国の後援者米国だけである。


 ところが、皮肉的な言い方をすれば、米国政府はこのような危機をそう深刻なことだとは考えていないかもしれない。なぜなら、この「希望の兆し」は、たとえ最悪の事態が生じたとしても、米国の経済的ライバルである大西洋の向こう側の国々が、この先永遠に米国と競争できなくなる「兆し」でもあるからだ。

 とはいえ、米国の支配者層の中のどれくらいの割合の勢力がこのような見方をしているかは不明だし、その勢力がそのような原発事故によりヨーロッパが壊滅状態になるという事態を防ぐために米国が決して介入しないように押さえ込める影響力を持っているかどうかも不明だ。

 しかし、少なくとも軍や諜報機関や外交機関内で恒久的に勢力を維持している人々(つまり「ディープステート」)の中には、このような事態が起こることを嫌がっていない勢力があることは間違いない。そうでなければ、彼らはウクライナ政府を止めているはずだ。また、ウクライナ政府は、ロシアの統制下から「解放する」という口実で、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)を爆撃するという意味の大口を叩くことまでしているのだから。


 この状況から学べることは、ウクライナ紛争自体からわかることよりもずっと多い。つまり米国支配者層内の過激派勢力がいちかばちかの最後の賭けにでて、損失を考えずに彼らの思想上の目論見を是が非でも前に進めようとしている事実がよくわかる事象なのだ。これはすべてが「レッドライン」を超えるという意味ではなく、そうしようとしている人がいなくてもそうなるということは常に起こることだ。

 より視野を広げれば、今月(8月)初旬、ペロシ下院議長が挑発的な台湾訪問をしてから米国の「アジア基軸」政策が急遽再開されて、間接的に核を使うという瀬戸際政策をしているウクライナと同じやり方を、中国に対してアジアでも使う可能性が出てきたということだ。


 東アジアを舞台にした新冷戦は、東欧での新冷戦とはかなり状況が異なるが、同じような戦略方針が採られていることは変わらない。すなわち、アジアでの米国の代理勢力が、ウクライナ政府が採った絶望的状況において最大級の掛け金を使うというやり方を踏襲するであろうことはもはや否定できなくなっているのだ。その手法は中国が熱戦において勝利を収めるような状況が生じたときに使われるだろう(ウクライナにおけるロシアのように、緩慢ではあるが確実な勝利を収めているときでさえもその可能性はある)。

 この作戦は、ある意味、ニクソンがとったいわゆる「狂人理論」とも言える。ニクソンは、考えられないようなことをする狂人のように振る舞えば、当時の米国のライバル諸国が怖じ気づくだろうと考えていたのだ。ただ当時との決定的な違いは、特定の思考にとらわれた現在の米国支配者層は、そのように「振る舞っている」わけではなく「実際に狂人である」可能性があるところだ。
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ウクライナが英雄としているステファン・バンデラら国粋主義者がボーランド人のジェノサイドを行ったことを認めるよう、ボーランドはウクライナに要求

<記事原文 寺島先生推薦>

Poland wants Ukraine to admit genocide

A deputy culture minister says the 1943 Volhyn massacres fit the definition of genocide and Kiev will have to recognize that

(ポーランドはウクライナにジェノサイドがあったという歴史認識を切望

 ポーランドの文化大臣代理は、1943年のヴォルィーニ虐殺事件はジェノサイドにあたり、そのことをウクライナ政府が認めなければならないと発言)

ジェノサイドとは、ある特定の集団の全体や1部を破壊する目的で行われる集団殺人のこと

出典:RT

2022年8月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月26日


ワルシャワで行われたジェノサイド追悼記念日の式典に参列し、第二次世界大戦時にヴォルィーニや東ガリシア地方で虐殺された被害者たちを追悼しているポーランド軍 ©  Sputnik / Alexey Vitvitsky

 第二次世界大戦時にウクライナの国粋主義者たちが行ったポーランド人に対する大量殺害はジェノサイドの定義に合致し、遅かれ早かれウクライナ政府はこの事実を認識しなければならない、とポーランドのヤロスワフ・ゼリン文化・国家遺産大臣代理は8月16日(火)に語った。

 「ウクライナがそう認識しなければいけないのは、これが事実だからです。歴史的事実でしかないからです。政治的な決定のもと、民族浄化が実行されたのです。何世紀もその地に住んでいた国内の少数民族を殲滅しようとした行為だったのです」とゼリン大臣代理はポーランド通信社(PAP)のテレビインタビューで語った。

 「この行為はジェノサイドです。ジェノサイドの定義のどの要因にもあてはまります。従って議論の余地はありません。歴史的事実なのです。遅かれ早かれ、ウクライナ国民はこの事実を認識しなければならないでしょう」と同大臣代理は付け加えた。

 ポーランドの歴史家たちによると、10万人から13万人のポーランド人が、ステファン・バンデラ率いるウクライナ蜂起軍(UPA)により殺害されたとのことだ。2016年ワルシャワのポーランド国会は、UPAがヴォルィーニや東ガリシア地方のポーランド人在住の150の町を攻撃した日として、7月11日をジェノサイド追悼日とする決議を出している。いっぽうウクライナ国会は、非生産的であるとしてこの決議を非難している。

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 ポーランドは共同作業部会を立ち上げる提案を出し、ウクライナ文化省にその部会の構成員一覧表を送付した、とゼリン大臣代理はPAP(ポーランド通信社)に語っている。この作業部会は集団墓地の探索を開始し、遺体を掘り起こし、適切に埋葬し直し、記念碑を建立して、亡くなった方々を追悼する作業に着手することになる、としている。

 「我々はウクライナ側の共同部会構成員の報告を待っているところです」と同大臣代理は述べている。

 ゼリン大臣代理によると、問題のひとつは、ウクライナ政府がUPAをソ連と戦った愛国者であるとして賛美する立場をとっていて、ポーランド人に対するジェノサイドなどのUPAが行った他の行為については無視していることである、とのことだ。その結果ウクライナのヴォルィーニ虐殺事件のことは「完全に目に入っていない」状況が生まれている、と同大臣代理は語っている。

 ポーランドの使命は共通の歴史認識を打ち立てることだ、と同大臣代理は述べ、さらに付け加えて、ウクライナが「遅かれ早かれ直視しなければならないことは、歴史の一場面において、UPAという軍事組織や国粋主義者たちによる政治的な運動がこのジェノサイドの裏に存在したことは容認できない事象であり、激しい非難を受ける対象である、という事実です」と述べている。
 
 バンデラやUPAが現在のウクライナにおける国民的英雄であるという公式見解は、 2010年に米国が支援していたヴィークトル・ユシチェンコ大統領政権などが出している。
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「戒厳令が解除されるまで、従軍歴のない男子国民は国外渡航禁止」とゼレンスキーが発表 

  <記事原文 寺島先生推薦>

Zelensky reveals when men will be allowed to leave Ukraine

Kiev will not allow male citizens without combat experience to leave the country until martial law is lifted

(ゼレンスキーはウクライナ男子国民が国外渡航できるのはいつかになるかを発表。
ウクライナ政府は戦闘体験のない男子国民は戒厳令が解除されるまでは出国を認めない意向だ。)

出典:RT

2022年8月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月25日



© STR / NurPhoto via Getty Images
 

 ウクライナのウォロデミル・ゼレンスキー大統領は、戒厳令が解除されるまで、従軍歴のない男子の国外渡航を認めない意向を明らかにした。この表明は、18歳から60歳までの男子の海外渡航許可を求める署名運動に対して、8月15日(月)に大統領の公式ウェブサイト上で回答されたものだった。この署名活動には2万7千人以上の署名が集められているが、署名起案者の記載によると、ウクライナ男子国民の多くは従軍できるほど健康ではなく、他の分野で貢献できるとのことだった。さらにこの署名起案者の主張では、ウクライナ男子国民が海外での就労を許されれば、難民たちの支援ができ、ウクライナへの送金も可能になり、それで軍の支援もできるし、また、軍はすでに十分有能な人員を確保している、とのことだった。

 「戦闘は身体的に戦闘が可能な人々により行われるべきだ。我が国には、ITや福祉や創造的分野や技術などの多くの専門家たちがいて、これらの人々は情報戦において前線で戦うことができるし、国外で働く方が国に貢献できる。そして、外国で我が国の難民たちを援助したり、外国で稼いだ金で軍を支援することもできる」と、この署名の趣旨説明には記載されていた。

 署名起案者の主張では、ウクライナ政府が国民の特定の層に海外渡航禁止措置を課すのは、「ウクライナが少しずつ脱しようとしているソ連時代のやり方」と酷似しているとし、エストニアの例を挙げていた。エストニアで海外渡航が禁止されている対象は、刑事訴訟の容疑者に限られているとのことだ。

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Zelensky fires security chiefs amid crackdown

 「従って、我々がウクライナのウォロデミル・ゼレンスキー大統領に要請するのは、18歳から60歳の男子で、従軍歴がなく、健康状態に制限のある国民の国外渡航を認めてほしいということだ」という文言が結論として記載されていた。

 ウクライナの法律に従えば、2万5千筆以上の署名を集めた署名活動については、 大統領が返答しなければならないとされている。 ゼレンスキーは返答で、憲法第64条を引いた。その条項には、ウクライナ国民に渡航の自由の制限を課すことは、非常事態や、戒厳令の発令時において可能だとある。

 同大統領の説明によると、憲法に則れば、「戒厳令」発令時には、「憲法上の個人や国民の権利や自由は制限されることが可能だ」とのことだった。

 さらにゼレンスキーは以下のように記述していた。「このような制約が解除されるのは、戒厳令の法的制約が失した後のことになると考えられる」と。

 ウクライナ国会であるヴェルホーヴナ・ラーダは、ゼレンスキーが2022年2月24日に発した戒厳令を承認した。それはロシア政府がウクライナ政府に対する軍事作戦を開始したことを受けてのことだった。同国会はそれ以来数回戒厳令期間を延長しているが、直近では戒厳令期間を90日延長し、11月21日までとしている。
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ザポリージャ原発にウクライナの「汚染爆弾」が命中すれば、周辺9カ国が放射能汚染されると元ソ連調査官が警告

  <記事原文 寺島先生推薦>

‘Dirty bomb’ in Ukraine would affect nine countries – nuclear expert

A former top USSR nuclear inspector warns it’s hard to predict where else the wind would blow the particles

(ウクライナの「汚染爆弾」のために9ヶ国が被害を受けることになるだろう-核専門家が警告

元ソ連核調査官が、爆撃された場合放射能粒子が風でどこに飛ばされるかは予測不能であると警告)

出典:RT

2022年8月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月23日



ウクライナ・ニーコポリから見た4月27日のザポリージャ原発の様子2022 © AFP / Ed Jones/AFP

 ロシアの支配下にある南ウクライナのザポリージャ原子力発電所が、多連装ロケットシステムにより攻撃されれば、合計9カ国が汚染被害を受けることになるだろう、と元ソ連核調査当局主任がRTの取材に答えた。

 ロシア軍がヨーロッパ最大規模の大きさをもつザポリージャ原発を支配下におさめたのは、ウクライナでの特殊作戦が開始されてすぐのことだった。それ以来ロシアは、ウクライナがミサイルやドローン砲を使った同原発の攻撃を行っているとして繰り返しウクライナ政府を非難している。いっぽうウクライナ当局は、ロシアが国際社会からのウクライナへの信頼を失墜させることを狙って自ら原発を攻撃している、と主張している。

 8月16日(火)に発表されたインタビュー記事でウラジミール・クズネツォフ(Vladimir Kuznetsov)氏は、一斉爆撃により原発が攻撃され、多くのミサイルが使用済み核燃料を保管している貯蔵庫に着弾すれば、複数の貯蔵庫が損害をうける危険が生じる、と警告していた。そうなってしまえば放射能が「周囲に放出され、工業地域内だけではなく、近郊を流れるドニエプル川まで汚染されることになる」と専門家であるクズネツォフ氏は述べていた。

 さらにクズネツォフ氏は、そのような攻撃があれば火事が生じることが十分考えられるため、「燃やされてできた放射能汚染物質が、風にのってどこに飛ばされるかは神のみぞ知る、だ」とも指摘していた。


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 元主任調査官の同氏は、そのような攻撃により20~30箇所の貯蔵庫が破壊されることになれば、「その放射能はおよそ9カ国に被害を与えることになるだろう。具体的には、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、スロバキア、チェコ共和国、ポーランド、バルト三国、そしてウクライナ西部にも確実に被害が広がるだろう」と推測していた。

 ロシア軍がザポリージャ原子力発電所を支配下に抑えたのは3月初旬で、ロシア軍が隣国ウクライナに対する軍事作戦を開始した2週間以内のことだった。
 
 ここ数週間、ロシア軍は、ウクライナが故意に同原発施設を標的とした爆撃を数回行ったことを非難し、このような攻撃が何の抑制も受けないまま継続されれば、1986年のチェルノブイリ事故に匹敵する、あるいはそれよりもひどい深刻な原発事故が起こる可能性を警告している。

 いっぽうウクライナ政府はこのようなロシアの主張を否定し、ロシア軍が原発を自ら攻撃することによりウクライナ軍にその罪をなすりつけようとしている、と主張している。米国やEUもその見方を受け入れている。国連はこの攻撃を「自殺行為である」とし、国際原子力機関(IAEA)の代表団を同原発に派遣して「技術的な支援」を行い、状況のさらなる悪化を防ぐ援助を行うとのことだ。

 8月16日(火)、地方行政職員のウラジミール・ロゴフ(Vladimir Rogov)氏がロシアメディアに語ったところによると、ウクライナ軍は原発の冷却装置や核廃棄物貯蔵庫に複数のロケットを直接発射したとのことだ。貯蔵施設は屋外にあるため、一発でも爆弾が着弾すれば数10~数100キログラム規模の核廃棄物が放出され、当該地域を汚染することになる、と同氏は説明している。

 「簡単に言えば、そのような攻撃は汚染爆弾のようなものです」とロゴフ氏は語っている。
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ウクライナはザポリージャ原子力発電所の核廃棄物貯蔵庫や冷却施設まで攻撃

<記事原文 寺島先生推薦>
 
Ukraine bombs nuclear waste storage site – official
Rockets also targeted the cooling systems of the Zaporozhye nuclear power plant

(ウクライナは核廃棄物貯蔵施設を爆撃--ロシア政府からの公式発表
 さらにロケットはザポリージャ原子力発電所の冷却装置も標的にしていた。)
 
出典:RT

2022年8月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月24日
 

上空から見たウクライナ・ザポロージャ州・エネルホザール市のカホフカ貯水池岸のステップ地帯に位置するザポリージャ原子力発電所© Sputnik / Konstantin Mihalchevskiy
 
 
 ウクライナ軍が、エネルホザール市のザポリージャ原子力発電所施設内の冷却装置と核廃棄物貯蔵施設を標的にして複数のロケットを発射した、と当該地方政府行政局のウラジミール・ロゴフ(Vladimir Rogov)氏が8月16日(火)にロシアメディアに語った。同氏が警告していたのは、爆撃が成功すれば、放射能が放出され、「汚染爆弾」と同じ結果がもたらされる可能性がある、ということだった。

 使用済み核燃料が入った樽から「たった10メートルしか離れていない場所に一発の誘導ミサイルが着弾しました」とロゴフ氏は「ソロビエフ・ライブ(番組名)」で語った。さらに、「他のいくつかのミサイルも(使用済み核燃料が入った)樽から50~200メートル離れたところに着弾しました」とも語っていた。

 貯蔵施設は屋外にあるため、一発でも爆弾が着弾すれば数10~数100キログラムの核廃棄物が放出され、当該地域を汚染することになる、と同氏は説明した。「簡単に言えば、そのような攻撃は汚染爆弾のようなものです」とロゴフ氏は語った。

 原子炉自体は戦略的核兵器を使用しない限りは破壊できないのだが、冷却装置や廃棄物貯蔵所は原子炉よりもずっと脆弱で、これらの装置に損害を与えれば簡単に災害を引き起こすことができる、と同氏は語った。そして、ウクライナ軍は既に「数十発」の大口径ミサイルを冷却装置にむけて発射しており、そのような冷却施設の無能化に成功すれば、1986年のチェルノブイリの大惨事の時よりも大きなメルトダウンが生じる可能性がある、と付け加えた。

READ MORE: EU ‘blatantly lying’ about threat to Zaporozhye nuclear plant – Moscow

 ロシア軍が、ヨーロッパ最大の規模を誇るザポリージャ原子力発電所を支配下に収めたのは、ウクライナでの軍事作戦開始直後のことだった。ロシアとウクライナはこの原発の攻撃をおこなったのは相手側であるとして、非難合戦を繰り広げ、当該地域での戦闘は核災害の原因になることを警告し合っている。ロシアは、ウクライナがミサイルやドローンにより原発を攻撃し、「核テロ」を行っているとしてウクライナを非難している。いっぽうウクライナは、ロシアが自ら原発を攻撃することにより、国際社会からのウクライナへの信頼をなくそうとしている、と主張している。

 ロシアは国連とIAEA(国際原子力機関)に現場検証を行うよう要請しているが、両者は、調査官を派遣する経路がウクライナ側からしかないが、ウクライナが調査官を安全に通過させられるという保証はできないと主張している、ということだ。

 8月15日(月)、ロゴフ氏は、IAEA代表の現地入りを妨げているのは、国連がウクライナ政府側に立っているからだ、と非難した。ロゴフ氏によると、調査団が現地入りしたならば、原発を攻撃しているのはロシアではなくウクライナの方であるという結論を出さざるをえなくなるだろうとのことだった。

 「その証拠は明白です。文書にすべて書かれていますし、それだけではありません。米国の誘導ミサイルを供給されているのが誰なのかはよく知られている事実だからです。あきらかにそれはロシアではありません。ゼレンスキー政権の方なのですから」と同氏は語っている。
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米国国家安全保障機関が私企業を巻き込んで採った真の左翼勢力を作らせないための3つの手口とは。

<記事原文 寺島先生推薦>

National Security State Censoring of Anti-Imperialist Voices the Latest Phase of Their Long-Term Strategy to Divide and Control the Left

(米国家安全保障機関による反帝国主義者への検閲----左翼を分断し統制する長期戦略の最新局面)

筆者:スタンフィールド・スミス (Stansfield Smith)

出典:INTERNATIONALIST 360° 

2022年6月22日



<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月21日

初めに

 米国の支配者層は多くの手口を駆使して、反戦・反帝国主義左翼を妨害し、組織化することを妨げてきた。本論では以下の三つの観点から論じたい。①ニュースメディアを企業支配することにより、国内や国外の標的に向けた偽情報や偽ニュースを自由に流すこと。②政府や私的団体財団の資金を用い、聞き分けの良い左翼に金を渡し、勢力を拡大させることにより、反帝国主義勢力の対抗勢力にすること。③ソーシャル・メディアとインターネットを統制下に置くことで、支配者層は反帝国主義や反戦の声に検閲をかけること。


ここから記事本論

 2016年以来、フェイスブックの投稿やツイッターやペイパルのアカウントなどウェブサイト上の検閲は驚くほど激しさを増している。 標的にされているのは、政府や巨大な企業メディアが垂れ流す公式説明に異論を唱える声である。つまり、米国による外国への干渉や、外国の政権を転覆させようとする企てや、新型コロナや、ロシアによるウクライナへの進攻など、どんな内容の異論でも検閲の標的にされる。

 ウクライナでの戦争に関しては、米国政府や企業諸メディアの持つ強力な喧伝力がロシアに直接向けられ、きわめて激しい規模に達している。

 第二次世界大戦直後、マッカーシズム(この流れはジョー・マッカーシー(Joe McCarthy)に由来する)の台頭とともに米帝国が冷戦を開始した際、CIAのモッキンバード作戦の統制下でニュースの操作や抑圧がしばしば行なわれた。 企業メディアは、CIAの命を受け、米国支配者層の利益の代弁機関となった。CIAは密かに隠れ蓑団体や個人に幅広く資金を提供し米国支配者層が敵とみなす勢力の対抗勢力にしようとしてきた。この動きにより、実在する社会主義に対抗する左翼勢力が援助され、その目的は左翼勢力内に分断を持ち込み、共産主義を弱体化し、非共産主義左翼を打ち立てることだった。

 CIAと協働していた左翼の重要な人物といえば、女性運動の中心的な指導者グロリア・スタイネム(Gloria Steinem)、マルクス主義の知識人とされているハーバート・マルクーゼ(Herbert Marcuse)、全米自動車労働組合委員長(1946-1970)のウォルター・ロイター(Walter Reuther)、国際婦人服労働組合委員長(1932-1966)のディビッド・ドビンスキー(David Dubinsky)である。CIAは社会党党首でマーティン・ルーサー・キングの側近だったバイヤード・ラスティン(Bayard Rustin)やノルマン・トーマス(Norman Thomas)やマイケル・ハリントン(Michael Harrington)と協働していた。2人は後に「第3陣営(米国派でもソ連派でもない派閥)」である米国民主社会主義者党(DSA)の創始者となった。 米国民主社会党(SDUSA)の創始者であり、後にCIAの代行機関である全米民主主義基金(NED)創設長(任期:1983-2021)を務めたカール・ガーシュマン(Carl Gershman)も同じだった。

米国民主社会主義者党(DSA)も、米国民主社会党(SDUSA)も、米国にかつて存在したアメリカ社会党の後継団体。詳しくはこちらを参照。


 「文化自由会議(CCF)」を通じて、CIAは左翼の批評家たちの著書出版に資金を提供していた。その一例はレシェク・コワコフスキ(Leszek Kolakowski)とミロヴァン・ジラス(Milovan Djilas)の共著『新しい階級』だ。 CIAは、フランクフルト学派の「西側マルクス主義」も支援したが、テオドール・アドルノ(Theodore Adorno)やフランクフルト大学社会研究研究所の元所長マックス・ホルクハイマー(Max Horkheimer)もその中に含まれており、彼らはロックフェラー財団からも助成金を受け取っていた。

 多くの企業財団の中でも、ロックフェラーやフォードオープン・ソサエティタイズ財団などの企業財団が、CIAの資金を進歩的勢力に注ぎ込んでいた。『文化冷戦』(pp.134-5)の記載によると、1963年から66年の間、164の財団からの補助金が世界各国の活動に流れ込んでいたが、うち半分近くがCIAの資金が絡んだものだった。フォード財団は今でも、米国内の進歩的な勢力に資金を提供している財団のひとつだ。例えばオープン・ソサエティ財団もフォード財団も、「Black Lives Matter」運動に多額の資金を提供している。

 CIAは、米国諸企業の利益を妨げると考えられる民主的な政権を転覆させる冷酷な組織として捉えられている。それは真実なのだが、「監視する」というCIAの「より優しい」手口も存在する。 具体的には聞き分けの良い左翼に資金を与え、拡大させるのだ。この聞き分けの良い左翼が、政治的な主導権獲得を目指す民主党内の勢力につながる。この第3勢力を担う左翼が反帝国主義や反共産主義の代替勢力になるのだが、それでも急進派の青年層や活動家や知識階級の人々には彼らを引きつけるに足る進歩的なものに見えるようだ。 CIAのこのような狡猾な戦略のおかげで、左翼に属する人々の中に混乱と不和と断絶が生み出されてきた。

 このような米国政府やCIAによる秘密工作を詳述している著書が、『マイティ・ワーリッツァー ( Mighty Wurlitzer) *:CIAが米国を操る方法』 や、フィンクス(Finks)著『CIAが世界最高の作家たちをどう騙したか』や、『文化冷戦』や労働総同盟・産業別組合(AFL-CIO)編『発展途上国の労働者たちに対する秘密戦争----団結か妨害か?』である。
*訳注:マイティ・ワーリッツァー(Mighty Wurlitzer)は電子オルガンの名称。著書『マイティ・ワーリッツァー』の題名は、著者でありCIA職員フランク・ウィズナーが、様々な偽装団体を楽器のように用いて喧伝を世間に音楽のように広めるCIAの影響力を説明するために使用した比喩である。

 1977年、カール・バーンスタイン(Carl Bernstein)はCIAと巨大企業諸メディアとの相互の繋がりについて明らかにした。400人以上の記者が、各メディアの上司も承知の上でCIAと協働していた。CIAと協力して喧伝(けんでん)行為を行っていたのは、CBS、ABC、NBC、タイム誌、ニューズウィーク誌、ニューヨーク・タイムズ紙、AP通信、ロイター通信、UPI通信、マイアミ・ヘラルド紙、サタデー・イブニング・ポスト誌、ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙である。ニューヨーク・タイムズ紙は今でも記事の承認を得るよう米国政府に事前に記事を送っている。いっぽうCNNなどは、国家安全保障機関に関わる人物を「専門家」として重宝している。

 ロイター通信や、BBCや、情報サイトのベリングキャット(bellingcat.com)も同様に、英国政府が密かに資金提供している偽情報計画に関わり、「ロシアの弱体化」に手を貸している。この企みには英国外務省の「偽情報と偽メディア開発対策部」も協力している。

 CIAは独・仏・英・豪・ニュージーランドの記者たちに報酬を払い、偽ニュースを広めさせている。ドイツの有力紙のひとつフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙の元編集者ウド・ウルフコテ(Udo Ulfkotte)は、CIAがドイツの御用メディアを抑えている様を『CIAからの報酬に埋もれて』という著書で明らかにしている。ウルフコテによると、CIAはウルフコテに偽記事を新聞に載せさせたとのことだ。一例をあげると、2011年にリビアのガダフィー大統領が毒ガス工場を建設したとする記事だ。

 CIAは今は無くなって久しい全米学生協会(NSA)や、労働組合の指導者層にも密接に関わっていた。労働総同盟・産業別組合(AFL-CIO)の米国自由労働開発所は、USAID(米国国際開発庁)や国務省やNED(全米経済開発局)から資金を得て、外国の闘争的な労働組合を弱体化させ、殺人的なクーデターの促進を助けている。例えばチリのアジェンデ大統領反対運動(1973)や、ブラジルのクーデター(1964)を幇助し、さらには米国の支配者層による支配を保護してきた。このような状況 は今でも続いており、AFL-CIO団結センターはNEDから年3000万ドルを受け取っている。

 CIAはプレガー・プレス社などの出版社を設立し、さらにジョン・ワイリー出版社や、スクリブナー、バランタイン・ブック社や、パトナム社を使って書籍を出版している。CIAは「パルチザン・レビュー」誌など、政治誌や文学誌をいくつか創設している。CIAが出したこのような出版物は1000冊以上にのぼり、主にリベラル・左翼向けに出版され、その狙いは第3陣営の左翼を前進させ、かつて世界を席巻していた強力な共産主義を弱体化させることだった。

 この使命は何年も前に達成されており、今日、国家安全保障国家の活動は反帝国主義左翼を弱体化させ、「まだマシな方の悪党」民主党に左翼勢力を結集させることになっている。


米国政府とメディアによる近年の思想統制措置

 CIAは企業メディアを使って国家安全保障国家に対して脅威になると思われる勢力を弱体化させてきたが、それが激化したのはオバマが2017年にNDAA(国防受権法)に署名してからだ。 この法律により、国家安全保障機関に対する公的な規制が取り払われ、米国民に対して直接偽ニュースを提供できるようになった。NDAAの「偽情報及び喧伝対策法」は、ロシアゲート事件の初段階から施行され、 中央政府が喧伝を撒き散らす機関を設立することになった。このNDAAは、「ロシア政府が積極的な措置を用いて、(ロシア連邦の役割は隠蔽され、公に認識されない形で)人々や政府に密かに影響を与えようとしていることに対抗するための法律である。ロシア連邦は、代理勢力や秘密放送やメディア操作や偽情報や偽造物などを使い、工作員に資金を渡し、感化や扇動や攻撃的な諜報や暗殺やテロ行為を行わせている。当委員会の任務は、不正や感化・汚職・人権侵害・テロ・暗殺工作が、ロシア連邦やその代理による保安機関や政治指導者層により実行されたことについて明らかにするものとする」としている。

 グレン・フォード(Glen Ford)は以下のように捉えている。「(上に)記述されている行為は、暗殺とテロを除いて政治的意味合いにおいて隠語として使われ、これらの行為は「米国の民主主義の弱体化」に従事しているとされた標的に対して使われることが可能であり、この先使われることになるだろう。例えばニュースメディアのブラック・アジェンダ・レポートなどの左翼メディアはワシントン・ポスト紙(PropOrNot上の記事)により「偽ニュース」を発信するメディアと中傷されている。」

 この「偽情報及び喧伝法(NDAA)」により「グローバル・エンゲージメント・センター(Global Engagement Center)」という当たり障りのない名前の組織が、国務省・国防総省・USAID(米国国際開発庁)・放送理事会(「米国世界メディア協会」に改名された) ・国家情報長官及びその他の諜報機関により立ち上げられた。このセンターは米帝国の利益に資する偽ニュースの制作を監督している。主にロシアや中国を焦点的に対象としている(ウイグル虐殺ロシアゲートなど)が、ニカラグアやベネズエラやキューバやイランや北朝鮮やシリアなども対象とされている。米国による政権転覆工作や偽情報工作を暴露する確証的な記事は即刻検閲を受け、親露や親中的喧伝であると決めつけられることは、しばしばある。

 このグローバル・エンゲージメント・センターは、記者たちやNGOや政策研究所やメディアに資金を提供することで、非企業メディアが出す記事を外国政府のために偽情報を拡散していると中傷させている。この件により、米国によるシリアやウクライナでの政権転覆に敵対する勢力を「親プーチン派、親アサド派、親中共派、親スターリン派、反米三色同盟派*」などと中傷している黒幕が明らかになる可能性がある。
*訳注:三色同盟とは、共産主義(赤)、イスラム教(緑)、ナチズムまたはファシズム(茶色)の三者が呉越同舟的に連携し、反米または反西洋的な価値観を持つことを批判的に捉えることばとしてよく使用されることば

 国家安全保障機関が反露喧伝に急激に力を注ぐようになったのは、ロシアがシリアを支援し、米国とサウジアラビアが起こしたアサド政権に対する戦争を妨害してからのことだ。その喧伝行為はヒステリーの域に達し、ロシアゲートがでっち上げられ、2016年のトランプ大統領選挙運動の妨害に利用された。シーモア・ハーシュ(Seymour Hersh)が明らかにしたところによると、 2016年にロシアがDNC(民主党全国委員会)のコンピューターをハッキングしたことが広く報じられたが、それは CIAによる偽情報であるとのことだ。 ハーシュがFBIからの情報をもとに明言したのは、 ヒラリーからのEメールは セス・リッチ(Seth Rich:DNC職員)が入手したもので、リッチはそれをウィキリークスに売ることを申し出たという事実と、 ロシアがハッキングしたという偽話をでっち上げたのは、CIAのジョン・ブレナン(John Brennan)長官だったという事実だった。しかし、クリントン・ネオコン・安全保障国家機関がでっち上げたロシアゲートという偽ニュースの暴露は、親露工作員の手によりでっち上げられた偽情報であるとしてもみ消された。

 グローバル・エンゲージメント・センターの活動内容の一例として上げられるものに、反帝国主義者はロシアの工作員であると報じたニュースサイトのデイリー・ビーストの記事がある。この記事の標的は、リー・キャンプ(Lee Camp)やマックス・ブルーメンタール(Max Blumenthal)やベン・ノートン(Ben Norton)らだ。彼らが、「喧伝を流すことにより金や追随者を掻き集め、真実やウクライナや新疆やシリアで虐げられた人々を犠牲にしている」と見られているのは、彼らの記事が正確であり、米国が流している喧伝とは食い違う内容だからだ。

 他の記事から読み解けることは、政府機関であるこの偽情報対策センターが、左翼第3陣営を使うやり方で、キューバに対して以前使われたマングース作戦の伝統を踏襲している点だ。ガーディアン紙掲載のジョージ・モンビオット(George Monbiot)の記事がそれをよく表している。その内容は、「ロシアによる喧伝行為に立ち向かっていかなければならない。そのような声が私たちが尊敬している人々からあげられたとしてもだ。「反帝国主義」左翼のごく一部の人々が、ウラジミール・プーチンが繰り出す偽情報を再利用してきたのは、厳然たる真実だ」、というものだった。

 ルイス・プロイェクト(Louis Proyect)はシリアの政権転覆戦争に加わり、シリアに対する米国の戦争の反対運動者たちを、「反米三色同盟者」派だとして非難している。プロイェクトは英国外務省が資金援助しているニュースサイトのベリングキャットからの情報をもとに記事を書くことが多く、こう記している。「ベリングキャットというサイトがおそらくシリアでの化学兵器攻撃について事実に基づく情報を得られる唯一のサイトだろう」と。プロイェクトは「シリア革命」における「社会主義者」だとしてアナンド・ゴパル( Anand Gopal)を擁護しているが、ゴパルはニュー・アメリカ財団の国際安全保障プログラムに所属しており、このプログラムには国務省や企業財団が資金を出し、元国務省役員のアン・マリン・スローター(Anne-Marie Slaughter)が運営している。

 情報源としてアナンド・ゴパルを繰り返し採用しているデモクラシー・ナウも諸財団から得ており、 かつて優れた反戦記事を送り出していたこの団体が自己検閲を行い、聞き分けの良い左翼に生まれ変わってしまっているようだ。

 政府や企業からの「まだマシな悪党」左翼へのこの支援金が生み出しているほかの状況については、 NACLA(National American Congress on Latin America)誌のニカラグア政府を中傷する記事もその一例にあげてもいいだろう。NACLAの編集長はロックフェラー・ブラザーズ財団のトーマス・クルーズ (Thomas Kruse) だ。 2018年、NACLA誌とニューヨークDSA(民主社会党)とヘイマーケット・ブックスは反サンディニスタの青年たちを特集したが、彼らの旅費は右翼系団体のフリーダム・ハウスが出していた。

 各種財団から何万ドルもの資金を得ているイン・ディーズ・タイムズ(In These Times)誌も社会主義国キューバを中傷する同じような記事を出している。その記事の主張によると、キューバは「西半球で最も非民主的な国家」だそうだ。 ボルソナール政権下のブラジルでもなく、親民主主義の反政府運動家たちを失明させた警察のあるチリでもなく、暗殺部隊を支援するコロンビア政府でもホンジュラスの元クーデター政権でもなく、憎まれたハイチの支配者たちでもなく、キューバを中傷している。

 第3陣営左翼向けの本をたくさん出しているヘイマーケットブックス(Haymarket Books)は、民主党と繋がる政策研究所や非政府組織から、「経済研究及び社会変革センター」 を通して資金援助を受けている。ニュースサイトのグレーゾーンの記事によると、DSA(米国民主社会主義者党)やジャコビン(Jacobin)・マガジンやヘイマーケット社が資金を出した社会主義者大会で、NEDや国務省から資金援助を受けた他国の政権転覆に取り組む活動家たちが主賓として招かれていたという。

 ジャコビン誌の編集者であるバスカー・サンクラ(Bhaskar Sunkara)は、民主党内で改革志向のDSAの元副党首だ。2017年ジャコビン財団は、10万ドルの補助金をアネンバーグ財団から受け取っていた。このアネンバーグとは、出版社を所有している億万長者でニクソン政権下で米国の英国大使をつとめたウォルター・アネンバーグ(Walter Annenberg)だ。ニューヨーク左翼フォーラムやドイツ政府が資金を出しているローザ・ルクセンブルク財団も同じような待遇を受けている。

 ボブ・フェルドマン(Bob Feldman)が明らかにした企業から資金を得ている団体には、「政策研究所」や、ネイション誌や、イン・ジーズ・タイムズ(In These Times)誌や、NACLA誌や、中東情報研究計画所(MERIP)や、団体「報道における公正と正確 (FAIR」や、団体「プログレッシブ」や、マザー・ジョーンズ誌や、ニュースサイトのオルターネット(AlterNet)や、「公的な正確さを求める」会などがある。

 全米商工会議所は、諸財団が2013年から2016年の間に、労働者センターに1億6千万ドルを授与していることを突き止め、結論として労働社センターによる運動は、「運動者センターを前進させ、支援した進歩的な財団が作り上げたものだ」としている。

 これらは米国の支配者層が反帝国主義左翼に反対する勢力に資金援助をしている実例の一角に過ぎず、このような手口は、左翼勢力を支配者層による支配に対して真の脅威にはならない勢力に抑え込むための効果的な手段のひとつだ。

 このような状況の本質的な特徴は、民主党を「まだマシな悪党である味方」という見方をしていることだ。

 アレクサンダー・コックバーン(Alexander Cockburn)は、2010年にこのような資金援助の問題を指摘している。

 「“ 非政府”財団が持つ金銭的な影響力は大きいが、この財団とは富裕層が設立する非課税団体であり、政治色を付けることにより自身の富を分配する働きがある。米国の“進歩的勢力”の多くはこのような資金を得ることで生きながらえており、その資金により人件費や事務所維持費などの年間支出を賄っているため、当初掲げていた過激で異端的な方向性を突然引っ込めることになる。言い換えれば、進歩的勢力のほとんどは、企業が支配する世界から作られてきたものであり、学術界と同様に企業からの資金に依存しているということだ。」

 2016年大統領選での予想外のトランプ勝利の直後、 ワシントン・ポスト紙は反ロシア・マッカーシズムを打ち出す手段として、プロップ・オア・ノット(PropOrNot)というサイトを立ち上げだ。プロップ・オア・ノットは、プーチンの支配下にあるメディアを列挙したが、これは赤狩り時代の魔女狩りの再来を狙ったものだった。赤狩り時代の1947年から1952年の間には、660万人が捜査を受けていた。プロップ・オア・ノットがブラックリスト入りさせたのは、ウェブ上の代替メディアの中で最も反戦色の強いメディアのいくつかだった。具体的には、アンチウォー(Anti-War)・comや、ブラック・アジェンダ・レポート(Black Agenda Report)、トゥルースディグ(Truthdig)、ネイキッド・キャピタリズム(Naked Capitalism)、 コンソーシアムニュース(Consortium News)、トゥルース・アウト(Truthout)、ルー・ロックウェル(Lew Rockwell).com、グローバル・リサーチ、アンズ(Unz).com、ゼロ・ヘッジ(Zero Hedge)などだ。

 プロップ・オア・ノットは、200のウェブサイトを「ロシアの喧伝を行うメディア」だと断罪した。しかしその根拠は示されていなかった。プロップ・オア・ノットは自分たちや資金源の正体を明かしていない。アラン・マックロード(Alan Mcleod)が最近以下のことを明らかにした。「プロップ・オア・ノットの中身を探って見たところ分かったのだが、このサイトを管理しているのはインタープリーターという雑誌で、この雑誌は[マイケル・]ワイスが編集長だ。彼はNATOの政策研究所であるアトランティック・カウンシルの上級研究員だ」。アトランティック・カウンシルとは米国政府や中東の独裁者たちや武器製造業者のレイセオン社やノースロップ・グラマン社やロッキード・マーティン社やゴールドマン・サックスなどのウォール街の銀行やBP社やシェブロン社などの石油化学の巨大企業が資金援助している。結論としてマックロードは、こう述べている。「つまり巨大な[外]国のプロパガンダだと強く主張する行為自体、自国の喧伝行為を行っているということになるのだ」と結論づけた。

 プロップ・オア・ノットが出現した直後、米国政府から多額の資金援助を受けているドイツのマーシャル財団が、ハミルトン68なるものを立ち上げた。 これは「ツイッター上でのロシアによる偽情報を追跡するための新たな手段」のことだ。 これは、「ロシアの影響力増進や偽情報を広める目的を促進することに加担している」と思しきアカウントを特定するためのものだ。サイトのロン・ポール・リバティ・レポートのダニエル・マックアダムス(Daniel McAdams)はこう記している。「マーシャル財団は米国や他国の資金を使って、ロシアやシリアやウクライナなどについて、ネオコンによる外交政策筋からの公的説明と相容れない主張をしているニュースメディアや個人を消そうと躍起になっている」と。

 今年(2022年)、米国国土安全保障省はロシアの偽ニュースに対抗するためと称し、検閲や偽情報に関する新しい機関を立ち上げた。それが「偽情報管理局(Disinformation Governance Board)」だ。偽情報及び喧伝行為対策法やプロップ・オア・ノットが示している通り、米国安全保障国家の説明に異論を唱えるものは、ロシアによる偽情報であると決めつけられることがしばしば起こっている。 グレン・グリーンウォルド(Glenn Greenwald)は以下のように前もって警告を発していた。「米国国土安全保障省に権力を与え、何が「偽情報」で何がそうでないか決させる目的は、政府の捉え方に権威ある専門的な後ろ盾や正式な認定を与えることであり、逆に政府の主張への異論は間違っていて、欺瞞であることを公的に宣告することだ」と警告している。

 国家安全保障国家である米国は、ロシアゲートのことで嘘をつき、国家安全保障機関が四六時中、米国民に対して諜報行為を行っていることに関しても嘘をつき、イラクの大量破壊兵器についても嘘をつき、何が真実で何が嘘かについて自ら決めてしまう体制作りを計画していて、その行為を巨大企業メディアや代替メディアに押し付けている。

 このように、CIAの秘密のマングース作戦が、左翼内に実在する社会主義に対する敵対勢力を前進させようと力を注いでいる。その敵対勢力が、米国政府がマッカーシズム的工作や、米帝国や米帝国が起こす戦争に反対しているメディアや運動を阻止したり、中傷する方向に 向けられている。


どんなソーシャルメディア会社が、どの反戦メディアを標的にしているか?

 米国政府と結託した企業メディアによる攻撃はますますあからさまになっている。ペイパルはシオニストの「名誉毀損防止同盟」と手を組み、「金融業界を通じて、危険に晒されている全ての集団を守り、過激派やヘイト集団と戦う。政治家や警察とも連携する」としている。

 ツイッター社は多くの政治的なアカウントを削除したが、同社は合衆国大統領のアカウントを停止できる力を有しているようだ。2020年、ツイッター社は17万件のアカウントを削除したが、その理由は、「中国共産党にとって都合のいい地政学的な言説を拡散していた」からだそうだ。さらに2021年には、同社は何百件ものアカウントを削除したが、その理由は、「NATO同盟への信頼を弱め、NATO同盟の安定性を揺るがせた」とのことだった。同社は多くのFBI職員を雇い、この検閲の仕事を任せた。ツイッター社の中東部の重役は、英国軍第77旅団の「陽動作戦」担当のゴードン・マックミラン(Gordon MacMillan)がつとめているが、この第77旅団とはツイッターやインスタグラムやフェイスブックなどのソーシャルメディアを利用して「情報戦」を仕掛けていた組織だ。

 グーグルやユーチューブの重役は政府の諜報員たちと連携し、反帝国主義の声を検閲している。グーグルの「フクロウ作戦」は、「偽ニュース」を抹殺するために設置されたものだが、その作戦が駆使しているのは、「手順に従って更新を行い、より権威的[政府にとって都合のいい]中身 」に変え、「攻撃的[反帝国主義的]な内容は見えにくくする」という手口だ。その結果、以下のようなメディアサイトにたどり着く術が失われているのだ。それは、ミント・プレス・ニュース(Mint Press News)やオルターネット(Alternet)、グローバル・リサーチ(Global Research)、 コンソーシアム・ニュース(Consortium News)、リベラル左翼のコモン・ドリームズ(Common Dreams )、トゥルース・アウト( (Truthout)である。

 ウィキペディアが自サイトの記事に検閲をかけていることをベン・ノートンが指摘している。「CIAFBIニューヨーク市警バチカン、石油業界の巨人BP・・これらはほんの数例をあげただけだが、全てウィキペディアの記事の編集に直接関わっていることが分かっている。」

 上記の団体と比べれば小物だが、ニュースガードは国務省や国防総省と「提携」して支配者層筋とは食い違う主張をしているウェブサイトに札(タグ)つけをしている。

 フェイスブック社はプロップ・オア・ノット所有の政策研究所アトランティック・カウンシルに依拠し、米国政府筋とは逆の主張している記事と対抗している。後にフェイスブックが発表したのは、同社はさらに「偽ニュース」との戦いを強めるため、米国政府が資金を出している2つの喧伝組織との連携を始めることだった。それは全米民主国際研究所 (NDI)と国際共和研究所(IRI)だ。NDIの議長は元国務長官マドレーヌ・オルブライト(Madeleine Albright)で、ジョン・マケイン(John McCain)上院議員が長年IRIの議長をつとめていた。

 『マイテイ・ウーリッツァー』や『文化冷戦』やバーンスタイン(Bernstein)の『CIAとメディア』という著書で巨大紙媒体メディアの姿が描かれていたのと同じように、いま私たちが目撃しているのは、ソーシャルメディア業界の企業が国家安全保障機関と結託している姿だ。


企業メディアやソーシャルメディアが国家安全保障機関と結託して検閲をかけている対象は誰だろう?

 検閲を受けた書籍一覧表と同じく、国家安全保障機関は、私たちが見たり読んだりすべきものは誰なのかの標的一覧を提示してくれている。それは、グレーゾーン(The Grayzone)、テレスール(TeleSur)、ベネズエラ・アナリシス(Venezuelan Analysis)、リー・キャンプ(Lee Camp)、バイ・エニィ・ミーンズ(By Any Means), ケイレブ・モウピン(Caleb Maupin)、シリア連帯運動、 コンソーシアム・ニュース(Consortium News)、アビィ・マーティン(Abby Martin)、クリス・ベッジス(Chris Hedges)、ミントプレスニュース(Mint Press News)、CGTNなどの中国メディア、ジョージ・ギャロウェイ(George Galloway)、、ペペ・エスコバー(Pepe Escobar)、スコット・リッター(Scott Ritter)、ASB軍事ニュース、RT米国版、ストラテジック・カルチャー・ファンデーション(Strategic Culture Foundation)、ワン・ワールド・プレス、サウスフロント(SouthFront)、 ゴンザーロ・リラ(Gonzalo Lira)、オリエンタル・レビュー(Oriental Review)、レボリューショナリー・ブラック・ネットワーク(Revolutionary Black Network)、スプートニク・ニュース、ロン・ポールのリバティ・レポートだ。ユーチューブは私たちがオリバー・ストーンの「ウクライナ・オン・ファイア」を見ることに対して警告を発している。ロシアメディアと協力している記者はいまや「ロシア政府と提携している」という注意書きを付けられている。

 FBIはアメリカ・ヘラルド・トリビューン(American Herald Tribune)とイランのプレスTVを直接禁止した。RTとスプートニクはヨーロッパでは禁止されている。プロップ・オア・ノットは、200のメディアサイトをあげ、国家安全保障国家が私たちに読んだり、聞いたり、知ったり、考えてもらいたくないと思っているサイトが何なのかを明らかにしている。

 最初の冷戦開始以来、CIAと国家安全保障機関との連携工作により、敵対勢力は無力化され、疎外され、内部分裂させられてきた。そしてその工作にはしばしば民主党はまだマシな悪党であると考える左翼による協力を受けてきた。この戦略には、左翼団体や左翼の非政府組織へ莫大な資金投資をすることにより左翼を手懐けるという工作も含まれている。

 従って、米国の左翼の弱さを責めるのは間違いだということだ。CIAや諸財団は 米帝国の支配者層に反対する勢力に対して密かに操作を加えてきた。そのひとつに、民主党内の穏健派左翼を強化することにより、労働者階級や反米帝国からの攻撃を弱体化させてきたことがある。 これまでのことを振り返れば、この国家安全保障機関による使命実行は、かなりの成功を収めてきたといっていいだろう。

 労働者階級の左翼を打ち立てることの難しさの原因の多くは、米国支配者層が長年かけてそのような動きが生まれることを妨害してきたことがある。そのような妨害行為は、マーティン・ルーサー・キングやマルコムX、ブラックパーサーたちのように、活動家たちを投獄したり、殺害したりすることだけではない。巨大メディア企業を使って偽情報をニュースとして売り出させ、 聞き分けの良い左翼に資金を提供し、今のソーシャルメディアやインターネット上で反帝国主義の声に対する検閲を課すことも行われている。反戦左翼や労働者階級左翼を打ち立てるために私たちがすべきことは、支配者層の妨害工作により作り出されたこの迷路を乗り越え、真実を直視し、正しい方向に舵取りすることだ。
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NATOの放火魔、イェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)は、自分が火付け役となったウクライナの火事の代償を西側諸国の国民に払わせようとしている。

 <記事原文 寺島先生推薦>
NATO’s arsonist-in-chief Jens Stoltenberg wants the Western public to pay for a Ukrainian fire he helped to ignite
 
(EU加盟国は不平を言わず、ロシア・ウクライナ紛争の代償を払うべきと、すべてを始めたEUのリーダーが発言)
 
筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)

出典:RT

2022年7月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月20日



Scott Ritter is a former US Marine Corps intelligence officer and author of 'Disarmament in the Time of Perestroika: Arms Control and the End of the Soviet Union.' He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector. 
 
@RealScottRitter@ScottRitter


Jens Stoltenberg © Thierry Monasse / Getty Images
 

 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は最近、欧州議会の議員たちに対して、ロシアとの紛争が続くウクライナの機能と戦闘能力を維持するために必要な「代償を払う」必要性を説いた。彼が認めなかったのは、この紛争を引き起こすのに彼自身が果たした大きな役割である。
 
 ノルウェー人であるイェンス・ストルテンベルグ事務総長は重要な役割を担っている。それは近隣の消防署を大きな相互援助協定によりまとめあげる消防団長の役割と多くの点で似ている。ある地区で火災が発生すると、自動的に近隣の地区の消防団が出動するようにするのだ。NATO憲章の第5条がそれである。
 
 NATOへの加盟と同様に、消防地区への加盟も会員制の官僚制度であるため、関係者全員が具体的な約束をしなければならない手続きが必要とされる。例えば第5条にあるような相互扶助協定は、関係者が加盟者でなければ発動されない。
 
 ここで、ある消防団長が、問題点が多い消防地区の加盟を推進していたところ、その地区を加盟させるための手続きの途中で、大火災が発生した場合を考えてみよう。その消防団長は加盟地区に働きかけ、非加盟地区に設備や資源(人手は除く)を提供して消火活動を行うようにする。ただしその火は大きい。消防団長は、さらに多くの資源を要求する。
 

Read More: NATO boss lets the cat out of the bag: US-led bloc has ‘been preparing since 2014’ to use Ukraine for proxy conflict with Russia
 

 そして今度は、その消防団長が放火犯で、最初に火をつけるのを手伝ったことが判明したとする。

 現在のNATOが直面しているシナリオのほぼすべてがそれだ。米国主導のNATOは、14年間にわたって根本的に欠陥のある政策に対処してきた結果、いま悪戦苦闘しているわけだ。その政策とは、最終的にウクライナにNATO加盟を約束するものだったが、そのことにロシアが断固として反対していることを承知していた上でのことだったのだ。NATOはその後、NATO加盟諸国が、2014年2月にウクライナでクーデターが起こり、正規に選出された大統領がワシントンによって選ばれた政治家の集団に取って代わる手助けをする様子を見守ることになった。
 
 この問題のクーデターは、ナチスドイツの系譜に連なるウクライナの過激な右翼民族主義者の関与があってこそ実現したものであり、第二次世界大戦後の1945年から現在まで続くCIAの秘密裏のバックアップがあった。このネオナチの関与については、「消防団長が放火魔の仲間を派遣して、表向きは非加盟地区を加盟地区に加入させる準備と見せかけ、実際はその仲間に消防団員候補地区近隣一帯を焼き払わせる」、そんなたとえ話をすることも可能だ。
 
 イェンス・ストルテンベルグは8年間、ミンスク協定を通じてクーデター後のウクライナの平和を追求するふりをしながら、ウクライナ、フランス、ドイツとひそかに共謀して協定の締結を阻止するシステムを監視していた。その目的は、ウクライナが、分離したドンバス地域やおそらくクリミアにも大規模な打撃を与えられるNATO標準の軍隊を築く時間を確保するためだった。
 
 ストルテンベルグは、ウクライナを燃え上がらせるマッチに火をつけるのを手伝った。それは今や打って変わって、欧州議会のメンバーとの会合で、NATOの事務総長であるストルテンベルグが「文句を言うのをやめて、ウクライナへの支援を強化せよ」と欧州議会の議員たちをたしなめたのだ。
 
 この筆頭放火魔は、ヨーロッパの保険業者たちに、もみ手をしながら、自分が火付けをしたことの支払いをするように、との御託を並べているのだ。
 
 彼の偽善には吐き気がする。「欧州連合として、NATOとして、我々が払う代償は、通貨や貨幣で測れるものだ。彼ら(ウクライナ人)が支払う代償は、毎日失われる人命で測られる。我々は文句を言うのをやめ、支援に乗り出すべきだ。以上。」と彼は宣言した。
 

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 ストルテンベルグとNATOは、ウクライナを襲った炎に責任があるという事実を語らなかった。キエフがドンバスへの攻撃を準備している中、ロシアが独自の特別軍事作戦を開始するという決断だけが、NATOとウクライナの計画が実現するのを妨げた。
 
 しかし、この放火魔は自分が火をつけたことを認めることができない。その代わりに、ストルテンベルグはウクライナ紛争の責任をロシアに転嫁しただけでなく、自分が起こした火事がNATO全体に脅威を与えているとまで言ってのけた。「ウクライナに救いの手を差し出すことは我々の利益になる。ウクライナがこの戦争に負ければ、それは我々にとって危険であることを理解しなければならないからだ」とストルテンベルグは欧州議会議員たちに宣言した。
 
 ロシアが軍事作戦を開始したとき、ウクライナを襲った惨事の責任はほとんど自分にあるという事実を無視して、ストルテンベルグは偽善の丘に旗をしっかりと立て、こう宣言した。「ウクライナの人々を支援するという道徳的な側面に関心がないのであれば、自国の安全保障上の利益に関心を持つべきだ。支援に金を払い、人道支援に金を払い、経済制裁がもたらすいろいろな結果に金を出すのだ。そうしなければ、後でもっと高い代償を払うことになるからだ」
 
 ストルテンベルグの本音は 「私のミス、あなたのミス、私たちのミスの代償を払え」ということだ。
 
 しかし、間違いを認めることは放火魔の道徳心には編み込まれていない。


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「サル痘も米軍関連生物研究施設由来か?」。ロシアが警告

<記事原文 寺島先生推薦>

Military Points to Presence of US-Funded Biolabs in Nigeria Amid Global Monkeypox Scare
(世界がサル痘に怯えるなかで、ナイジェリアに米国支援の生物研究所があることを軍が指摘)

筆者:イリャ・ツカノフ (Ilya Tsukanov)

出典:INTERNATIONALIST 360° 

2022年5月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月15日



 ロシア軍は2ヶ月かけた調査により、ウクライナで行われていた米国の軍事生物研究の規模と到達点の詳細を明らかにした。それにより、国防総省がウクライナを恐ろしい生物薬品研究の実験場にしてきたことや、これらの活動の裏で軍や私企業、政府の利益が絡み合っていることが明らかになった。

 ロシア軍放射線・化学・生物学防護部隊のイーゴリ・キリロフ中将は5月27日(金)、新たな記者会見を開き、ウクライナにおける米軍の生物研究活動についての新しい情報を発表した。加えてキリロフは、ロシア軍がサル痘について掴んでいる情報の詳細についても明らかにした。サル痘は天然痘の親類に当たる病気で、ここ数週間、世界中で健康上の不安を掻き立てる原因となっている。 キリロフによると、国防総省は既に2003年に天然痘の強制予防接種を課しており、外交官や医療従事者もこの流行病の予防接種を受けるよう求められていたとのことだ。

 「このことから推測されることは、米国は天然痘の病原体を戦闘用の優先病原体と見なしていることを示しており、いま行われている予防接種措置の目的は、自国軍部隊を保護することではないかという疑念です」とキリロフ中将は語っている。



2003年の国防総省天然痘ワクチン接種計画覚書からの抜粋
© Photo : Russian Ministry of Defence

 2003年の米国の「軍の天然痘への備えとワクチン接種導入計画」の全編はこちらで閲覧可能。

 「国防総省がこの感染症に懸念を示していることは偶然であるとは到底言えません。天然痘の原因となる物質が復活してしまうことがあれば、世界規模で全人類に壊滅的状況を招くことになるでしょう」とキリロフ中将は語り、さらに語気を強め、天然痘の致死率は新型コロナの10倍であると述べた。

 キリロフ中将は、ウクライナ国内で入手した文書から引用し、米国の専門家たちがウクライナの研究所の研究員たちに対して、天然痘が流行するという緊急事態への対応方法についての訓練を施していたことを明らかにした。ウクライナ語で書かれたこの訓練に関する文書はこちらで閲覧可能。

 天然痘は世界規模での取組みのおかげで1970年代に撲滅され、その後、抗天然痘ワクチンが世界のほとんどの国で実施され、再発が抑えられてきた。しかし最近になって世界各国の医療行政当局はサル痘に対する懸念を表明し始めている。それは今月(2022年5月)初めにサル痘の症例が広がって以来のことだ。


ナイジェリアの米国生物研究所

 キリロフ中将が着目した点は、世界保健機関(WHO)が最近出した判断によると、現在流行しているサル痘ウイルスの原因物質はナイジェリアに由来するという点であり、ナイジェリアも「米国が生物研究の基盤を提供しているもう一つの国」であることを指摘した。

 「入手した情報から得た内容によると、アフリカの一国家であるナイジェリアには、米国が統率する生物研究施設が少なくとも4ヶ所存在するとのことです」とキリロフ中将は語った。さらにキリロフ中将は2021年のミュンヘン安全保障会議核脅威イニシアティブが行った演習について触れ、この演習が生物技術を使った、危険度の高いサル痘の菌株による流行の予行演習だったことについて、「奇妙な偶然であり、専門家による検証が必要です」と語った。

 さらにキリロフ中将が強調したのは、米国が生物研究における安全性の必要条件を逸脱していることが繰り返し指摘され、また天然痘を含む病原体の生体物質の保管が不注意なまま放置されている証拠があることに対して、世界保健機関は諸都市に置かれた米国が資金提供している研究施設の調査を行うべきだという点だった。具体的には、ナイジェリアの首都アブジャやザリア、ラゴスに置かれた研究施設についてである。さらにその調査結果を世界に公表すべきだとも語った。

 RCB(ロシア軍放射線・化学・生物学防護部隊) 隊長であるキリロフ中将がさらに懸念を表明したのは、米国内に保管されている天然痘ウイルスの標本の安全性についてだった。「米国内においては、適切な管理下に置かれておらず、生物研究上の安全性基準も満たしていないため、これらの病原体がテロ目的で使用されることに繋がる可能性があります。2014年から2021年の間に、ウイルスの保管に関する説明がなされていないのに、このウイルスが保管されていた瓶が発見される事象が米国食品医薬品局(FDA)の研究所や、メリーランド州にある陸軍感染症医学研究所(USAMRIID)や、ペンシルバニア州にあるワクチン研究センターの研究所で繰り返し起こっています」とキリロフ中将は述べた。

 さらにキリロフ中将は語気を強め、これらの研究施設での研究は、1996年に世界保健機関が出した決議に違反する行為であると述べた。この決議においては、天然痘を発症させる原因となる物質の保管を禁じていて、保管が許されるのは、アトランタ市にある米国疾病予防管理センター(CDC)のみだとされていた。


天然痘ウイルスの保管箇所については、米露それぞれ一箇所のみの許可を求めることを決議した1996年の第49世界保健機関総会決議
© Photo : Russian Ministry of Defence



国防総省が資金提供したウクライナの研究所に関する新たな詳細情報

 5月27日(金)の発表において、キリロフ中将は新たな文書も提示した。それはウクライナ国内で国防総省が組織した10ヶ所近い軍事生物研究施設の計画についてであり、その中には恐ろしい物質や 「経済的に重要な」感染症についての研究も含まれており、2008年から2019年の間で、8010万ドル規模の資金が投入されていた。

 キリロフ中将が着目したのは、2007年の覚書についてだったが、この覚書は国防総省がUP-2という計画の準備に関して用意したものだった。この計画はウクライナ国内で危険な病原体についての研究のための計画であり、キリロフ中将のことばを借りると、その「主目的」は、「ウクライナ人特有の病原体の分子構造の情報収集と菌株の標本の伝達」だったとのことだ。


UP-2概念計画(複数の病原体の研究計画)を承認したDTRA(国防脅威削減局)の文書。この計画は2005年の「ウクライナでの協力的脅威削減生物兵器拡散阻止計画」に合わせて計画されるものとされていた。
© Photo : Russian Ministry of Defence


 UP-2計画に関する「共同計画同意書」の全文6頁はこちらで閲覧可能。

 UP-1計画についても同様の覚書が準備されていた。この計画では、炭疽菌により広められるリケッチアなどの病気の研究が計画されていたとキリロフ中将は語り、この文書によれば、全ての危険な病原体はキエフにある中央関連研究施設に運搬され、その後米国に運搬されることが求められていたことを指摘した。

 UP-1計画に関する「共同計画の同意書」についてはこちらで閲覧可能。



UP-1計画承認が記載された2008年2月19日付国防総省の覚書
© Photo : Russian Ministry of Defence


 さらにRCB防衛隊はUP-4についての文書も公開した。この計画は危険な感染症を渡り鳥を使って拡散する方法の研究についてであり、既にロシア国防省は詳細に報告済みだ。2019年10月から2020年1月にかけての「UP-4計画の一選択肢、第2年四半期報告」によると、野生の鳥から合計991種が研究者たちにより収集されたとのことだ。


国防脅威削減局のUP-4計画に関する報告書からの抜粋
© Photo : Russian Ministry of Defence


 国防総省の提携先であるブラック&ビーチ社がメタビオータ社の協力のもと準備した50頁以上あるDTRA(国防脅威削減局)からの報告書のうちの9頁はこちらで閲覧可能。

 さらに5月27日(金)にRCB防衛隊が公表した文章には 2019年にブラック&ビーチ社が まとめたDTRAのウクライナでの研究活動の詳細をまとめた報告書も含まれていた。 そこには、ウクライナ国内や外国の多くの組織との協力のもとで行われていた19ヶ所ほどの別々の研究施設における研究活動が含まれていた。協力していたのは、ウクライナ保健省、USDA(米国農務省)、CDC(米国疾病予防管理センター)、米国のいくつかの大学、それと西側の巨大製薬諸会社だった。
 重要な詳細情報が満載の63頁からなる文書のうちの10数頁はこちらで閲覧及びダウンロード可能。



国防総省の提携先であるブラック&ビーチ社が、ウクライナでの主な研究活動について出した2019年の文書の一頁


ウクライナの保安機関が、米国と協力する危険性を警告していた

 5月27日(金)に明らかにされた文書の中には、ウクライナ保安庁(SBU)からの書簡も含まれていた。その書簡には、SBUがウクライナで米国が関わった生物研究活動により感染症学上の脅威が生じる懸念について記されていた。この書簡はSBUヘルソン州支局総長代理のA.A.レメショフ(A.A. Lemeshov)大佐が記したもので、対テロリストセンターのセンター長代理G.I.クズネツォフ(G.I. Kuznetsov)大佐と、分析部部長S.I.シャナイダ(S.I. Shanaida)大佐宛に2017年2月28日宛に出されたものであり、内容はウクライナの研究所の安全性と生物物質を使ったテロの脅威に焦点を当てるものだった。

 レメショフ大佐が歯に衣着せぬ言い方で警告したのは、以下の通りだった。「最近、我が国が置かれている疫学及び伝染病的状況はますます由々しき状況になっている。それは米国国防脅威削減局がブラック&ビーチ社の特別組織を通じて行っている取組みが原因となっている。これらの取組みはウクライナ国内の微生物研究所の病原体研究を管理下におこうというもので 、特に力を入れているのは、危険な感染症の病原体についてであり、これらは新型の生物兵器の製造や、既存の生物兵器の改良に使われる可能性がある」。

 同大佐が強調していたのは、「ウクライナの生物研究の安全性を維持し、ウクライナ国内で病原体の標本を貯蔵しようとする計画を妨げることが必要です。そしてそのような行為が行われているのは、“地域特有の菌株を研究し、ウクライナ国民から集めた標本にはどのくらい毒に対する耐性があるかを見極めるため ”という口実が使われています。推奨されるべき行為は、ブラック&ビーチ社の共同生物研究活動計画についての取組を追跡調査することです。」

 ウクライナ語で書かれた原版の文書はこちらで閲覧可能。そのロシア語版はこちらで閲覧可能。



ロシア国防省所有のウクライナ保安局の役員が、ウクライナ国内の米国軍事生物研究活動はウクライナの国家安全にとって脅威であると明白に記した文書。
© Photo : Russian Ministry of Defence


 キリロフ中将率いるRCB防衛隊は数ヶ月の準備を経て、ウクライナでの米軍の生物研究活動についてメディアに対して記者会見を行い、入手した文書などの証拠をもとに、国防総省や米国政府の関係者や私企業が、ウクライナの提携先と協力してウクライナ領内で危険な研究に従事していたことを明らかにした。今月(5月)初旬、ロシアのコンスタンティン・コサチェフ(Konstantin Kosachev)上院議員が述べたのは、ロシア政府には国連においてこの件に関する公式調査の開始を求める意図があるとのことだ。具体的には、米国がウクライナで生物兵器禁止条約違反となる行為を行っているかの調査だ。

 今月(2022年5月)初めに行われた、根拠となる文書が豊富にある記者会見において、キリロフ中将が明らかにしていたのは、米軍が恐ろしい病原体の研究を行っていることに加えて、 ウクライナが西側の製薬諸会社の人体実験のモルモットとして行動していた点だった。具体的には、ファイザー社、バテル社、ギリアド社、ダイナポートワクチン社、 アッビィ社、イーライリリー&カンパニー社、メルク社、 モデルナ社などだ。これらの諸会社が、安全性の理由で自国では実験できない薬品の実験をウクライナで行っているのだ。
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真実を追求することがロシアの喧伝行為というのであれば、喜んでその汚名を受けよう---スコット・リッター

  <記事原文 寺島拓篤推薦>

If telling the truth puts me on Ukraine’s ‘Russian propagandist’ blacklist, I’ll wear that tag proudly.
When it comes to fact-based analysis, I’ll take so-called ‘Russian propaganda’ over ‘Ukrainian truth’ every day

(真実を語っていることを理由にして、私に「ロシアの喧伝家だ」という濡れ衣を着せたいのであれば、誇りを持って甘んじよう。
真実に基づく分析が欲しいのであれば、私は「ウクライナの真実」に関して日々流されているいわゆる「ロシアの喧伝」を真に受ける所存だ。)

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)
 
出典:RT

2022年7月29日



スコット・リッター氏は、元米海兵隊諜報員であり、『ペレストロイカ期の軍縮:軍事管理とソ連の終焉』という著書の著者。リッター氏はソ連では中距離核戦力全廃条約(INF)の締結に向けた検査官を務め、湾岸戦争時はシュワルツコフ将軍の配下にあり、1991年から1998年までは国連の武器捜査官を務めていた。

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月25日

 

Scott Ritter © AFP PHOTO / Ramzi HAIDAR

 1998年、私はキエフに飛んだ。私の任務は国連の特別委員会と共に、ウクライナ政府を捜査することだった。それは、ウクライナ国民の一人が弾道ミサイルの部品や製造技術をイラクに不正に売りさばいた件について、ウクライナ当局が幇助していないかについての捜査だった。そのような行為は国連の安全保障理事会が経済制裁を課す対象になるものだったからだ。ウクライナ滞在中、私はウクライナ国家安全保障防衛評議会の高官たちと数回会合を持ったが、その中には同評議会の顧問であったウラジミール・ホルブリン(Vladimir Horbulin)もいた。私はウクライナ側と円満に別れの挨拶を交わし、ウクライナ側は我々への協力(最終的には協力してくれない結果に終わったのだが)を同意した。ウクライナ側が期待していたのは、ウクライナが良い態度を示したことを私が米国当局に伝えることであり、NATOに加盟したいというウクライナの要求が良い方向に向かうことだった。(なお当時の私は、ウクライナ側の希望通りのことを行った)。

 あれから25年、そのウクライナ国家安全保障防衛評議会は「偽情報対応センター」という組織を通じて、「ロシアの喧伝を拡散している」と思われる人々のブラックリストを公表している。

 私の名前がそのリストに載った。罪状は、「ウクライナをNATOの基地のように書いていること」、「ブチャの虐殺に関する公式説明に異を唱えていること」、「現在進行中のウクライナとロシアの間の紛争を“NATOとロシア間の代理戦争である”と考えていること」の3点だ。

 この3点、さらにそれ以外の点についても、私には罪があるとのことだ。

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Hungary spreading ‘Russian propaganda’ – Ukraine

 私はロシアの喧伝家などでは全くないのに。

 偽情報対策センターは2021年に設立されたが、これはウクライナのウォロデミル・ゼレンスキー大統領の命だった。センター長は、ポリナ・ルセンコ(Polina Lysenko)という2015年に法律の学位をとった弁護士であり、腐敗対策局や司法庁(なお司法庁にいた際、米国連邦捜査局から表彰された)にもいた経歴がある。さらに今の役職に就くまで、国営鉄道の情報・広報省の長官も勤めていた。

 ルセンコが偽情報対策センターの活動内容をG7諸国やフィンランド、イスラエル、NATOの大使官たちに明らかにしたのは、自分が今の役職に就いた直後のことだった。ルセンコの上司であるオレクシー・ダニロフ(Aleksey Danilov)ウクライナ国家安全保障防衛評議会議長が強調したのは、「戦略的友好諸国と協働して敵国による情報工作に対抗し、偽情報と戦うことの重要性」についてだった。いっぽう、アンドリー・イェルマーク(Andrey Yermak)大統領府長官が望んでいると語ったのは、「同センターがウクライナ国内だけではなく、外国の偽情報にも対抗できるようになる」ことだった。イェルマークによると、このセンターは「フル稼働している」とのことだった。

 この組織の目的と役割の概要を明らかにしたポリーナ・ルセンコが強調したのは「真実こそが主要な武器 になる」という点だった。

 そうであるなら同センター長は手始めに、イェルマークが語った内容についての真偽を調査すべきだった。このセンターが「フル稼働している」と宣言した2ヶ月後、ウクライナのメディアの報道によると、このセンターは「敷地も資金も職員も」不足しており、ルセンコが唯一の職員で、しかも数ヶ月月給が未払いだ」とのことだった。このセンターは52名の職員がいて、月給2千ドルほどであるとされていたのだ。財務省がこのセンターの資金調達をすることになっていたが、2021年6月中旬の時点では財務省が関わっていなかったのだ。ルセンコは「たった一人、国家安全保障防衛評議会の1階にある小さな事務所で働いていた」とのことだった。報酬がもらえない中で真実を語るのは難しいようだ。

 その1年後、資金と職員の問題は解決したようだ(その大きな要因は、米国の納税者の血税のおかげで、ウクライナ政府が人件費を賄えたからだ)が、仕事の質には問題があった。一例を挙げると、ルセンコと新生なった偽情報対策センターが私を偽情報拡散者だと決めつけた件だ。「ウクライナをNATOの基地と表現する」ことがロシアアの喧伝にあたるというなら、私はベン・ワトソンに与(くみ)するべきだった。ワトソンは親ロシア派として悪名高い(もちろん激しい皮肉だ)ネット雑誌であるディフェンス・ワンの編集者だが、2017年10月に、以下のような一目瞭然な題名の記事を出している。「ウクライナで、ウクライナ東部での戦いのために米国はウクライナ西部の軍に訓練を施している」。この記事が詳述していたのは、米国とNATOの軍人たちの多国間訓練組織(ウクライナ西部にあるウクライナのヤヴオリフ軍事訓練所) のことだ。まさにこれこそウクライナ国内に置かれたNATO基地ではないか。そこでは55日間ごとに、ウクライナ軍内の大隊がNATO準拠の軍事訓練を施されていたが、その唯一の目的は、東ウクライナに配置され、ロシアが支援するドンバスの分離主義者たちと戦うことだった。

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Journalist branded enemy of state by Ukraine

 ルセンコさん。答えが丸見えですよ。あなたのお国が自国内に恒久的に駐留するNATO軍の部隊を配置しているということは、ウクライナにはNATOの基地が存在するということなのだから。

 ルセンコの偽情報対策センターの職員である一流の(これももちろん強烈な皮肉だが)分析家たちは、同じような感じで私の捉え方を喧伝行為として評価したのだから。私は、3月末から4月初めに起こったブチャでの民間人虐殺はウクライナ側が起こしたと主張していた。 この件に関しては、ルセンコには良いお仲間がいたようだ。私のツイッターのアカウントが削除された根拠は、このセンターが行った分析と同じ内容だったからだ。ブチャで行われた残虐行為から4ヶ月ほど経ったが、私の捉え方は変わっていない。その事実は動かしがたい。私はいつでも、ポリナ・ルセンコやルセンコが率いているセンターの全ての職員からこの論争を受けて立つ準備ができているし、この件に関してウクライナのテレビ局の生放送に出演する準備もできている。ルセンコが望みさえすれば、いつでも大丈夫だ。この件に関して私は誰とでも、どこででも討論するつもりだ。それくらい私は自分の初めの分析が間違っていないと自負している。結局のところ、真実こそが私の主要な武器なのだ。

 勇敢な真実探究家としてルセンコが私に対し先日突きつけた言いがかりのせいで、私は現在進行中のウクライナ・ロシア間の紛争は「NATOとロシア間の代理戦争である」と称する喧伝家にされてしまった。この件もルセンコが率いるセンターの専門性が問われる事例になるだろう。モスクワ生まれの自国嫌悪者のロシア人であるマックス・ブート(Max Boot)は6月22日付けのワシントン・ポスト紙に意見記事を出し、ウクライナでの紛争は「我々の戦争でもある」と書いていた。この意見は私がマックス・ブートと同意できる数少ない意見のひとつだ。ただしブートの意見はロイド・オースティン(Lloyd Austin)米国防総省長官が米国の政策として表明した内容を繰り返しただけのものだった。同長官はウクライナでの紛争で焦点が置かれるべきなのは、ウクライナを支援することでロシアを弱体化させることだ、と語っていた。この観点は、「代理戦争」の定義として教科書に載っている様なものだ。

 ポリナ・ルセンコさん。もっとちゃんと仕事をして欲しい。少なくとも、私に対する安っぽい指摘を見直そうとして欲しい。ルセンコは私の分析を非難する理由として、私がロシア・トゥデイ (RT) に分析記事を載せていたことを強調していた。(本記事もその一例になるのだろう)。確かにその点から言えば、私がロシア政府から報酬をもらっているといえる。ただしそうだとしたら、あなたが対処しなければならない問題は、私はロシアではない多くの報道機関からも記事を出しているという点だ。私が問いたいのは、「ロシアの喧伝(けんでん)家が米国や英国の出版社から記事を出すことに何の意味があるのか?」という点だ。

 さらにもちろん、喧伝を制御しているロシア側の編集者側も紛らわしい問題を抱えている。 以下のやり取りをお読みいただければそれがよくお分かりになるだろう。

 私: ストルテンブルク(NATO事務局長)の「対価の支払い」という発言について掘り下げようと思っているのですが、どうですか?

 喧伝を制御しているロシア側の編集者:あなたはその発言をどう捉えているのですか?

 私:私はストルテンブルクが「対価」という言葉が当てはまる範囲を正確に捉えているとは思っていません。

 ロシア側の編集者: この演説は、ストルテンブルクが「不平を言うのをやめろ」といった時の演説と同じですよね?

 私:ええ。

 ロシア側の編集者:じゃあいいです。とりあげましょう。

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Russia blacklists British media and military figures

 ロシア側の喧伝制御隊の戦略的意図がどこにあるか、上のやり取りでよく分かったことだろう。私は自分がそんなものに騙されたとは思っていない。

 皮肉めいた話は置いておこう。ルセンコ率いるセンターがいわゆる「ロシアの喧伝家たち」ブラックリストなるものを発行しているが、こんな行為は、言論の自由という概念を信じているいかなる人にとっても侮辱行為だといっていい。私はそのリストに私と共に載せられた多くの人々と同列に扱われることに誇りを持ちたい。それは、レイ・マクガバン(Ray McGovern)、トゥルシ・ギャバード(Tulsi Gabbard)、ダグラス・マクレガー(Douglas MacGregor)、ジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)らだ。 私が確信しているのは、ここに名前が挙げられている人々は全て、ウクライナでの紛争について彼らがそのような立場を取っている理由は、真実を追求することに基づいていると語るであろうという点だ。そう、本当の真実だ。ポリナ・ルセンコとルセンコが率いる米国が資金提供したセンターが決めつけた支離滅裂な真実ではない。ここに記載された人々は誰一人自分がロシアの喧伝家とは思っていない。米国が信奉する言論の自由の実践家だと思っているはずだ。そしてここに名前が記載された多くの人々は、合衆国憲法を守り、合衆国憲法に守られていることを誓った人々だ。(その中には私自身も含まれている)。

 最後に私のことを言わせてほしい。もし時の試練に耐える真実に基づいた分析に執着することが、「ロシアの喧伝」の新しい定義になるというのであれば、私のことを「ロシアの喧伝家」の一人に入れればいい。米国政府やウクライナ国内の代理人たちが拡散しているオーウェル的言論の自由よりもきっとずっとマシだ。(以前私がウクライナでやったこととは大違いだが・・)
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自国民に制裁を科す前に、英国には問われるべき戦争責任がある

<記事原文 寺島先生推薦>

Brits Sanction Brit
(英国が英国民に制裁措置を課す。)

筆者:デクラン・ヘイズ(Declan Hayes)

出典:Strategic Culture

2022年7月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月20日

 MI5が行ったのは、フィリップを利用した裏口を作ることで、アスリンや彼の仲間である殺し屋たちの命を救う方法を模索することではなく、フィリップを生け贄に差し出すことだった。

 英国政府が発した最新の制裁措置の中には、グラハム・フィリップ(Graham Philllips)という英国民が、多くのシリア国民とともに含まれていた。 これらのシリア国民は、(ロシアの支援のため)ウクライナに入国していた戦士たちである。シリア国民が戦闘地域に行かなければならなくなった主な理由は、英国がムスリム同胞団という代理人の活動のせいで、シリア国土が破壊されたことだ。このことについては、法廷において法の裁きを受ける責任を負うべき問題だ。欧州諸国の人々が食糧不足に陥り、冬季に燃料不足になったとしても、覚えておくべきことは、これは自分たちの政府がシリア国民たちにこの10年間してきたことと同じだという事実だ。 だから英国政権が、ウクライナのファシストたちと干戈(かんか)を交えたことを理由にさらにシリア国民たちに罰を加えたとしても、誰も驚かされはしないだろう。

 さらにグラハム・フィリップが、悪者リストに入れられたとしても何の驚きもない。我々は以前フィリップと面会している。それはドイツがアリーナ・リップ(Alina Lipp:ドイツの記者)を起訴しようとしていた件について取材した時のことだ。そのフィリップのユーチューブチャンネルには現在約25万人が登録しているという事実を考慮に入れたとしても、BBCなどMI5の手中にあるメディアが持つ影響力と比べたら、なんともない。

 ただしMI5がこの件を大したことではないと捉えているにせよ、ゼレンスキーを煽っている連中の多くにとってはこのことは明らかにいらつかせることなのだ。連中は互いに煽りあってずっとフィリップのことを報じ続け、フィリップのパトレオン(動画製作者を支援するプラットフォーム)などのアカウントを封鎖した。フィリップの活動を冷静に判断するのではなく、Twitter社が網を張って素早く対応したことからも、連中の意図は明らかだ。

 フィリップが色々なプラットフォームで上げている投稿については、フィリップの記事を最後に書いて以来、私は追っていなかった。 その理由は単純なもので、私にとってはほとんど得られる情報がなく、あったとしてもリップやその他の記者たちがあげた動画しかないからだ。しかしフィリップが作った以下の動画の4分30秒のところの、彼が地獄と向き合おうとしている少女と彼女の飼い犬に面会する場面は「いい」。その場面の前後の老女たちと話している場面も同じだ。 さらにエイデン・アスリン(Aiden Aslin)がジョン・マーク・ドゥーガン(John Mark Dougan)に向けてロシア国歌を歌っている場面も「いい」。ただしアスリンが心配しなければならないことは、アスリン以前の英国出身傭兵たちと同様に、射撃を浴び刑場の露と消える運命にあることだ。

 これらの動画や記事はすべて醜い側面があり、フィリップの投稿に対するSNS上のコメントも同じように醜いものだという事実はあるが、だからといって英国政府は、少なくとも理論上は、今回見せたような意地悪な対応を取るべきではない。ただしそういう取り方をしてしまえば、英国政府とその代弁メデイアの悪性を軽く見てしまうことになるだろう。フィリップが財産や銀行口座を押収されるほどの悪事を働いたというのであれば、リズ・トラス(Liz Truss)やボリス・ジョンソンやアンドルー王子が犯した罪にはどのような処罰が適切なのかと考えてしまう。

 フィリップに対する起訴の主な罪状は、拘留中であったアスリンにインタビューし、ブチャでの虐殺についてゼレンスキーやボジョ(ボリスジョンソンのこと)が主張していることに同意せず、ボジョが議員権限を使ってフィリップの汚名を着せようとしたことだ。以前に報じたとおり、アスリンを取り上げた動画だけではなくフィリップが製作した動画のいくつかは悪趣味なものであることが明白であるとはいえ、ブチャの件に関しては問わざるを得ない重要な疑問が存在する。その疑問は英国の特殊空挺部隊(SAS)やSASを支配している政界の大物たちが、今まで世界各地で起こしてきたいくつもの戦争での戦争責任に関して答えないといけない疑問と同じだ。具体的には、シリア、イラク、アイルランド、ケニヤ、オマーン、キプロスでの戦争だ。これらの地で、SASやその支配者たちは囚人の姿を映像に収めただけではなく、囚人に対して去勢措置を加え、(正当な手続きを経ずに)処刑を行っていたのだ。

 MI5が行ったのは、フィリップを利用した裏口を作ることで、アスリンや彼の仲間である殺し屋たちの命を救う方法を模索することではなく、フィリップを生け贄に差し出すことだった。アスリンの家族や友人たちが捕らわれたフィリップを籠から出す助けとなる術を模索しているのだとしたら、最善策はMI5に頼ることであろうに、今回フィリップに取った態度から考えれば、MI5 はアスリンに死んでもらう方がよいと考えているようだ。

 そしておそらくフィリップについても同じことだろう。賢く、誠実なやり方を選ぶとすれば、ガーディアン紙やBBC内にいるMI5の手の記者たちを派遣して、フィリップや先述の少女にインタビューするいう方法を取るべきだ。さらには映像に登場したロシア語を話していたおばあちゃんたちにインタビューし、彼女らの言い分や、彼女らがヒトラーと戦って戦死した人々を褒め称えるよう洗脳された他のおばあちゃんたちのことをどう思っているかについて耳を傾けるべきだ。そうすることが良心的なやり方なのだろうが、これはMI5や操り人形のゼレンスキーのやり方ではない。連中はジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)や、トゥルシ・ギャバード(Tulsi Gabbard)や、ジェフリー・サックス(Jeffrey Sachs)や、レイ・マクガヴァン(Ray McGovern)やスコット・リッター(Scott Ritter)を抹殺した。英国政府は、腐敗した犯罪者であるゼレンスキーの真似をしたり、アリーナ・リップやグラハム・フィリップスを罰したりすることで、自分たちの信念は高い道徳心に基づくものであるというふりをしようとしている。しかし、英国政府がシリアやイラク、アイルランド、ケニヤ、オマーン、キプロスで犯してきた自身の戦争犯罪を明らかにしない限り、そんな道徳心を示すことはできない。
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中国対策として米豪は太平洋諸島諸国への働きかけを強めているが、今更うまくいくはずがない

<記事原文 寺島先生推薦>
The US wants to use China's neighbors against it – will the plan succeed?
Western powers have never treated the island countries seriously – but now they want a foothold against Beijing

(米国は中国の近隣諸国を利用したがっているが、その計画は上手くいくのだろうか?
西側諸国がこれらの島国諸国と真剣に向き合ってきたことはこれまで全くなかったのに、今になって中国への足掛かりに利用したがっている)

筆者:ティマー・フォメンコ(Timur Fomenko)。政治専門家

出典:RT

2022年7月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月10日



米国のカマラ・ハリス(Kamala Harris)上院議員 © Getty Images / Ethan Miller

 先週(7月第4週)、米国のカマラ・ハリス副大統領は「太平洋諸島フォーラム」に動画で挨拶を伝えた。このフォーラムは南太平洋に位置する群島諸国家からなる多国間の協議会で、通例「ポリネシア」や「メラネシア」という括りに所属するとされる諸国が構成員だ。この挨拶の中で、ハリス副大統領は米国が島嶼(とうしょ)諸国との協力関係を強めることを誓約し、「悪役たち」には注意を払うよう警告し、さらにはトンガとサモアに米国大使館を再設置することを約束した。しかしこの件こそこれまで米国がこの地域のことを真剣に捉えてこなかった一例と言える。今になってやっと米国政府は中国に対する足掛かりとしてこの地域の重要性に気づいたのだ。 注目すべきは、島国であるキリバスはこのフォーラムに出席しなかったことだ。このことについては、後に中国政府が非難の対象となった。 というのはその中国が、フォーラムに参加していた同じ諸国の会合を中国主催で開催したからだ。

訳注:2022年、キリバスは中国が主催する中国・太平洋島嶼国外相会議に出席する一方、 オーストラリアなどが参加する太平洋諸島フォーラムからの脱退を表明(ウイキペディア)

 まだよく分かっておられない方々のために付け加えると、影響力や政治的支配力を争う超大国同士の真剣な戦いが、南太平洋を戦場に開始されたということだ。そして中国が侵略者や拡大主義者であると悪く言われている一方で、米国と豪州はこの地域を自分たちの戦力的「裏庭」と表向きは捉えている。 第二次世界大戦の勝利により太平洋を軍事支配することに成功した米国政府や豪州政府は、これらの島嶼諸国は自分たちの覇権力を前提とすれば、何の縛りもなしに支配出来ると理解している。 米国の外交政策の狙いが中国を阻止することだということは公表されており、今や中国は米国にとって地政学上最大の敵になっている。米国は太平洋上の「第一」及び「第二」列島線において中国と軍事的均衡を取ろうとしている。米国がこの地域での優先性を失ってしまえば、アジア全体に対して力を誇示できる能力も失ってしまうことになる。

訳注:第一列島線及び第二列島線については以下の地図を参照
https://images.app.goo.gl/oYGybh2sNYp98Vb67


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Pelosi’s Taiwan visit could be breaking point for US-China relations


 今年初旬、中国が米国と豪州を驚愕させたのは、中国が太平洋地域で電撃的な外交政策をとったことだった。具体的には中国はソロモン諸島と画期的な安全保障条約を結び、他の諸国とも多くの同意を結んだことだった。 それ以来の米豪政府の反応は、大手メディアを通じて躍起になって警鐘を鳴らし、中国がこれらの島嶼諸国に軍事基地や海軍基地の設置を目論んでいるとがなりたてる、というものだった。この動きに引っ張られる形で、すぐに警告的な物言いがソロモン諸島に対して公式に投げかけられた。それ以降、米豪は島嶼諸国に対して攻撃的な外交姿勢を押し出し、さらなる反中国を明確に示す多国間同盟が組織された。それが「ブルー・パシフィックにおけるパートナー」だ。 この同盟には英国と日本も参加している。

 しかし米豪によるこれらの努力の効果はそう見込めないだろう。その一番の理由は、米豪が好むか否かに関わらず、これらの島嶼諸国はある特定の勢力から政治的支配を受けることを望んでいないことだ。これらの諸国は、長期間特定の勢力の「裏庭」に甘んじても得にはならないことを分かっているからだ。これまで長年ずっと、自分たちの国々の利益についてまともに受け止めてくれなかった国々であれば尚更だ。2つ目の理由は、米国や米国の同盟諸国が、これらの国々が中国に対して持っている感情を変化させる術を全く有していないことだ。それは、中国はこれらの国々に対して非常に有益な発展をとげるための友好国になると表明しており、これらの諸国に発展への大きな機会を提供しているからだ。中国がソロモン諸島との安全保障条約をまとめあげた際、中国は、ソロモン諸島からの中国への輸出品の98%に関税をかけないことも発表した。中国市場は世界最大市場であり、ソロモン諸島の人口は68万6878を超える程度(この人口は中国国内の小都市よりも少ない)なのだから、このような取り決めは中国にとっては全く苦にならない措置だ。

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China issues another warning to US

 この状況からさらに以下のような状況が生まれる。中国は直接に太平洋島嶼諸国の利益を各国の経済状況の好転という観点から訴えかけ、生活基盤の整備や輸出市場の提供を行っている。いっぽう米豪や他の同盟諸国はそんなことはしていない。実のところ、米国や豪州などの国々がこれらの島嶼諸国を再度取り込もうとしている唯一の目的は、中国への対抗のためだけであり、 自分たちの目論見の実現のためだけだ。それをよく表している言葉が、ハリス副大統領が使った「悪役たち」という言葉なのだ。しかし太平洋島嶼諸国が中国を悪役とみていると思われる証拠はほとんどない。中国政府が誓約しているのは、これらの国々の主権を尊重することであり、この立場こそが、ソロモン諸島との安全保障条約が、 米豪にとっては無念の極みであろうが、ソロモン諸島にとっては利のある同意になった理由だ。 というのもソロモン諸島は中国とのこの合意が、これまで豪州やコモンウェルス諸国への依存から脱することの出来る好機と見ているからだ。 メディアは「太平洋で強硬な姿勢を見せている」という逆の姿を描いているが、中国はこれらの国々から歓迎されているし、さらに明らかなことは、米豪側こそ、これらの島嶼諸国にどちらにつくか無理やり選ばせておきながら、自分たちの外交努力をなぜ彼らが無視しているのかを不審に思っているのだ。

 結論だが、太平洋島嶼諸国が求めているのは力の均衡であって、特定の覇権への従属ではないということだ。何とも皮肉な話だが、米国や米国の友好諸国は、ウクライナのような同盟諸国や友好諸国には、自国の主権をもとにした自決権を認めているのに、中国との友好をあえて選んだソロモン諸島のような小さな島国にはそんな権利はないと考えているように思える。 しかし実のところ、これらの島嶼諸国が分かっているのは、自国の発展の強化が可能になるのは、多国間での友好関係を築くことだという事実だ。豪州の裏庭国家として甘んじて自身の存在を受け入れることではない。というのも豪州には、中国が差し出してくれる規模の経済発展の機会を与えてくれる力はないからだ。
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コソボでも台湾でも、米国は代理を使って内側から敵国を貶(おとし)めるいつもの手口

<記事原文 寺島先生推薦>

From Kosovo to Taiwan, Washington’s tried and trusted recipe for chaos rears its ugly head again
The latest stand-offs follow a well-worn blueprint from Pristina to Taipei and beyond


(コソボから台湾まで。米国政府が混乱を引き起こすためこれまで何度も試し、信頼してきた戦法が再び頭をもたげている。今の膠着状態を打破しようと、使い古された戦法を、コソボの首都プリシュティナから台湾、さらにそれ以外の地域でも使おうとしている。)

筆者:レィチェル・マースデン(Rachel Marsden)

出典:RT

Rachel Marsden is a columnist, political strategist, and host of independently produced 
rachelmarsden.com

2022年8月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月7日



コソボのヴィヨサ・オスマニ・サドリウ(Vjosa Osmani Sadriu)大統領・アルビン・クルティ(Albin Kurti)首相とワシントンの国務省で面会する米国アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官。2022年7月26日(火)© Olivier Douliery / Pool Photo via AP

 米国のアントニー・ブリンケン国務長官がコソボの首脳陣と公式会談を行った直後に、先週末コソボで或る事件が起きたのだが、これがただの偶然でないことは明らかだ。この公式会談が行われたのは、プリシュティナ当局が、セルビアの中央政府が発行した自動車のプレートや文書を、コソボ領内のセルビア人が利用することを拒否する準備を始めたのと同じ時期だった。(なおその直後、7月31日(月)の夜に開始される予定だったこの措置の執行は延期された)。
 
 さらに腑に落ちないことは、全ての国々から国家であると承認されているわけではないコソボのヴィヨサ・オスマニ「大統領」が、ロシアに対して行った以下のようなバカげた発言だ。同大統領によると、「我々はこの先もずっと、米国や欧州の同盟諸国に対して揺るがない支持を維持し、ロシアやその地域のロシアの代理勢力が有している計画を阻止しなければなりません」とのことだった。さらにブリンケン米国務長官も、コソボ当局に「ウクライナに対する強固な支持」を行うよう求めていたのもおかしな話だ。というのもウクライナはコソボがセルビアから独立したことを公式に承認していないからだ。言うまでもないが、コソボにはNATOの大軍事基地の一つが置かれていて、NATOは、必要が生じればコソボへ「介入する」ことを公式表明している。なんと都合の良いことか。

 おそらく以下のことも全く偶然の出来事としてすまされるのだろうが、セルビアはたまたまロシアに対する支持を打ち切ることを拒絶しており、イランとの貿易を増加させ、ロシアの同盟国であるベラルーシとの軍事協力も強めている状況がある。さらにセルビアのアレクサンダル・ブリン国務大臣がつい先週(7月最終週)語ったところによると、セルビアは、ウクライナに対してロシアが行った行為に対する制裁措置には加わらず、NATOのロシアとの戦いにおいてNATOの「歩兵」になる気はないとのことだった。あるいはNATOが1990年代後半に、当時の米国ビル・クリントン大統領の「道義的」な指揮のもと、「人道的」立場から、セルビアからコソボ地方を分離独立させ、それ以降コソボをセルビア(さらにはセルビアの友好国であるロシアに対しても)に対する圧力調整弁に使ってきたことも全くの偶然ということになるのだろう。しかしこれらのことが偶然の結果でないとしたら、政権転覆を求めてきた西側の手口こそがこの状況に至った納得のいく説明になるということだ。この手口に含まれるのは、代理国や代理兵士たち(あるいはその両方)をでっちあげて、それらを西側が当該地域の「政権」の被害者とされている人々に売りつけるというやり方だ。その「政権」とは、西側が地政学上標的としている敵諸国の政権のことだ。

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: In Kosovo as in Ukraine, the same Western ‘invisible hand’ foments conflict

 同じ手口が今アジアでも繰り出されている。ナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)民主党下院議長がアジア訪問中に台湾を訪れようというそぶりを見せているのだ。台湾を中国からの独立国であると認めているのはたった13カ国しかない。しかも米国は1979年以降台湾を独立国であるとはずっと認めてこなかった。ただしそれ以来、1979年制定の台湾関係法が、中国内部で米国の軍事力を持つという意味においてのトロイの木馬となってきた。この法律が求めているのは、米国政府が「大統領や議会の決定のもと、自衛を可能にする程度の防衛物資や防衛業務を台湾が確保できるようにする」ことである。このことが、西側諸国の支配者層や軍産複合体がここ何十年もの間、台湾にこだわってきた理由の説明になる。

 西側諸国の支配者層や軍産複合体の連中が台湾にこだわるのは、武器を買ってもらおうという魂胆からだけではない。連中が分かっているのは、 米国政府が条約上の義務を果たそうとする際は常に、(そうする際には米国は必ず数十億ドルの規模の金を動かすのだが)、 中国を自国内でイラつかせるという手法だ。ハワイ州に対して、米国当局という非対等の勢力から「侵略されるかもしれない 」という脅威から守るためという口実で中国政府がハワイ州に軍事用武器を売るのと同じことなのだ。そしてもちろん、以下のこともおそらく全くの偶然として片付けられるのだろう。それは米国政府のナンバースリーに当たる役職にある人物が、中国政府が明確に示している期待に反して台湾を訪問しようとしていることだ。中国との緊張が高まっている最中のことであり、ロシア・ウクライナ間の紛争時に、中国が大金槌を握りしめ西側が支配してきた従前の世界秩序にロシアとともに一撃を加えようとしている最中のことだ。 さらには台湾を使って中国を国内から弱体化させる動きが開始されれば、米国政府の競争力向上には役に立つということも、ただの偶然なのだろうか?

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Spain comments on Kosovo’s legal status

 代理を使った同じような手口が見えるのが、米国政府がウクライナで、ネオナチのアゾフ大隊をロシアとの紛争が起こる前から支援していたことだ。あるいはCIAと国防総省がシリアの反政府勢力を支援した長年の努力にも関わらず、シリアのバシャール・アサド大統領を失脚させることに失敗した事例からも同じような手口が見て取れる。さらにアフガニスタンでムジャヒディンに訓練を施し、武器を与えるというCIA主導の対ソ連戦略からもだ。さらにはCIAが500人の(コントラという名で知られている)ニカラグアの反乱勢力を雇い、ニカラグアの左派であったサンディニスタ政権を転覆させた事例からも、だ。あるいは米国の様々な政府機関が数年間にわたりイランの政権を転覆しようとしてきた作戦からもだ。その手口は、イランの反体制派であるモジャーヘディーネ・ハルグ(MEK)という組織を拡大し、支援するというやり方だった。

 米国政府は、様々な「市民社会運動」団体に資金を提供し、USAID(米国国際開発庁)などの組織を使い、米国政府にとって地政学上最重要地域にある政権の転覆工作を行ってきたのだが、これらの工作の手口も全く同じ手口の一部にすぎない。ロシア政府は2015年にこのことに対する注意を喚起し、国家安全保障上脅威とみなされたことが行われた場合は、法により禁止するとしていた。

 戦争の瀬戸際にある地域(台湾やコソボなど)や、既に戦争に巻き込まれている地域(ウクライナなど)が明らかになった時点で、米国のしっぽを掴もうとしても手遅れになることが常だ。それ以外でやってみる価値のある行為は、米国の代理勢力の動きから目を離さないことだ。おなじみのあの気味の悪い振動を感じ取る努力を怠らないということだ。その振動を見れば、これまで西側諸国が起こしてきた敵国に対する政権転覆工作と同じような特徴を見いだせるかもしれないからだ。
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アメリカの超タカ派ジョン・ボルトンが、ロシアのウクライナ攻撃はアメリカのイラク侵攻とは異なる理由を説明する。

<記事原文 寺島先生推薦>
Pre-emptive use of force perfectly fine to thwart threats to US and its allies, John Bolton tells RT

米国と同盟国への脅威を阻止するための先制的な武力行使は全く問題ない、とジョン・ボルトンがRTに語った。

出典:RT

2022年3月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月5日



 ドナルド・トランプ米大統領の前国家安全保障顧問であるジョン・ボルトン(John Bolton)は、RTのオクサナ・ボイコ(Oksana Boyko)に対し、ホワイトハウスが長年にわたって行ってきた多くの軍事作戦とは異なり、ウクライナにおけるロシアの行動が不当であると考える理由を語った。

 ボルトンは、自分の意に染まなかった戦争はひとつもなかった、というジョークを何度も口にする。ボルトンは、イラク、リビア、シリア、イラン、北朝鮮、ベネズエラなどに対する軍事行動をさまざまな場面で提唱してきた。ジョージ・W・ブッシュ政権では、サダム・フセインが大量破壊兵器を保有しているという主張のもと、2003年イラク侵攻の立役者だった。

 「確かに、自衛のための行動は正当な武力行使であり、誰もそのことに疑問は持たない。そして、米国やその友人、同盟国に対する真の脅威に対して、罪のない民間人の被害を防ぐために先制的に武力を行使することも正当化されると思う」とインタビューの中で彼は述べた。

 (動画は原文サイトからご覧下さい。訳者)

 彼は同じロジックをロシアのウクライナ攻撃に当てはめようとはしなかった。モスクワの言い分では、それはNATOのウクライナへの密かな拡張を阻止することだったし、ドネツクとルガンスクの分離独立地域に対して武力を行使するキエフの計画の出鼻をくじくことだった。ロシアの発言は、不当な侵略行為と征服の試みの「口実」である、とボルトンは主張した。

 「プーチン大統領が考えているのは、2005年に彼が言ったソビエト連邦の崩壊を逆転させるという言葉を実現することだと思う」と述べた。

 ボルトンがどの発言に言及したかは明らかではない。2005年、ロシアのウラジーミル・プーチンは、共産主義の超大国の崩壊を、何百万人もの国民に経済的荒廃と人的不幸をもたらしたという意味で、「20世紀最大の地政学的惨事」と呼んだのは有名な話である。プーチンは何度か「ソ連邦を復活させる方法はない」と発言している。


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 イラクとウクライナでの敵対行為を比較したとき、ボルトンはロシアが民間人に与えた死者数が少ないことを認めようとしなかった。それどころか、「ウクライナでの民間人の犠牲者数は(イラク戦争のときより)実質的にずっと多い」と述べた。

 どちらの紛争でも、民間人の犠牲者数は依然として不明確である。イラク戦争時の死亡者データベースは、2003年の作戦で最も死者の多かった最初の4週間で、米国主導の連合軍によって直接殺害された民間人の数を、少なくとも6842人と推定している。国連は、2月24日から3月15日までのウクライナにおける民間人の死者数を726人と報告したが、この死者数がどの戦争遂行者に起因するものであるかは不明である。

 ボルトンは、ロシア軍がウクライナで不必要な犠牲者を出さないよう100%の武力行使は控えていると言ったとき、それは真実を語っている可能性があるという考えを否定した。

 ロシアの「戦争のスタイルは、世界の他の国々にとって衝撃的だ」とボルトンは言った。「これは非常に残忍な戦争形態であり、控えめに言ってもロシアの目的は望めない」と述べた。ウクライナが主張していることだが、ロシアの攻撃ペースとその犠牲者数の多さは、「軍と情報機関の無能さ」の証拠であると彼は語った。

 この元政府高官は、ウクライナの極右グループとの問題や、世界中の同じような考えを持つ過激派を奨励し援助している彼らの役割に関するTIME誌の報道を、全面的に拒否した。

 ボルトンはこの報道について、「もし私が(TIMEの記事を)本当だと思ったら、それは問題だろう」と述べた。「この情報を持っていて、それを検証できるのであれば、それを提示して、人々が自分自身で判断できるようにする必要があると思う」と述べた。しかし、たとえそれが真実であったとしても、「ロシアのウクライナ侵攻とは何の関係もない」とも付け加えた。

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 一方、米国がシリアで軍事作戦を行ったのは、「イランが支援し、シリア政府が支援するテロリストが、欧米全体を脅かすイスラム国家を作ろうとしていたからだ」とその正当性を主張した。

 テロ組織「イスラム国」(IS、旧ISIS)は、イラクで台頭した後、シリア領の大部分を占拠し、この地域の大きな脅威となり、イスラム過激派を世界的に惹きつける存在となった。シリア政府にとっても、敵対するジハードグループと同様に大きな脅威となった。

 米国は、ISの復活を防ぐことを目的にシリアに軍事駐留を続けているが、もっと大きな対シリア政策は、ダマスカスが支配下にある地域の再建と、そうでない地域の再統合を阻止することが目的である。シリア北東部は、米国の支援を受けたクルド人主体の民兵が支配している。

 RTでのジョン・ボルトンのインタビューの全編をご覧いただきたい。

 (動画は原文サイトからご覧下さい。訳者)
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プーシキンを「抹消」しようとするくらい、ウクライナのロシア語・ロシア文化撲滅の動きは茶番の域に達している 

<記事原文 寺島先生推薦>
With attempts to 'cancel' Pushkin, Ukraine's drive to eradicate Russian language and culture has reached the level of farce
(プーシキンを「抹消」しようとするほど、ウクライナのロシア語・ロシア文化撲滅の動きは茶番の域に達している。)

著者:アレクサンダー・ネポゴディン 
    (オデッサ生まれの政治ジャーナリストで、ロシアと旧ソ連の専門家)
 
出典:RT

2022年7月3日

<記事飜訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月4日


キエフ市街で行われた聖火行進に参加する様々な極右民族主義運動や政党のメンバーと、その支持者たち © Sergii Kharchenko / NurPhoto via Getty Images


 軍事作戦は、同国のロシア人に対する態度に影響を与えた。モスクワはどう対応するのか?

 ウクライナ国民を「自国民」と「よそ者」に分ける試みは、1991年の独立直後からほぼ始まっており、程度の差こそあれ、今日まで続いている。

 しかし、欧米の支援を受けた2014年のマイダン・クーデターによって、選挙で選ばれた政府が倒され、国が分裂して以来、こうした試みは明らかに反ロシア
を志向していて、まさにそれが全面的な規模を達してきたのである。

 ここ数年、ロシア語問題は特別な役割を果たしてきた。メディアや教育、政府機関に至るまで、さまざまな場面でロシア語の使用が禁止されたのである。そして今、ウクライナ当局はロシアの文化人や政治家の記念碑を取り壊し、彼らの名前を冠した通りや広場を改名し始めた。

 軍事攻勢を続けるロシアは、このような状況にどのような影響を及ぼすことができるのだろうか。

ロシア語を否定する

 ウクライナ化は、1991年の独立直後から、若干の危惧を抱かれつつも進められてきた。教育機関やメディアをウクライナ語に誘導するための長期的なプログラムが登場したのは90年代に入ってからである。

 第2代大統領レオニード・クチマは、彼の代表的な著書『ウクライナはロシアではない』の中で、「ウクライナ化は正義の回復である」と書いている。

 しかし当時はまだ、ロシア人やロシア語を話す人々が政治運動を起こし、文化センターを運営し、公共圏で自分の母国語を使うことができた。この均衡状態は、2014年の出来事の後に遂に崩れ去り、モスクワにつながるすべてのものに対する闘いが、新しい国家としての発展の象徴となった。

 それ以降、ロシア人は自分たちのアイデンティティを完全に捨ててウクライナ人になり、自分の母国で暮らしているのに外国語を学ぶか、それとも十全な権利を持たない民族集団のままでいるかという選択を迫られることになった。これは、ロシア語の自由な普及と使用を保証するウクライナ憲法第10条の規定があるにもかかわらず、である。

<さらに読む>
アレクサンドル・ネポゴディン---- 現在ロシアに支配されているウクライナの地域は、今後どうなっていくのだろうか。

 2020年から2022年にかけて、ウクライナ化の政策を実行するために、多くの法律がさまざまな分野で採択された。

 「国家公用語としてのウクライナ語の機能確保に関する法律」で は、映画産業、情報産業、サービス業、行政をすべてウクライナ語に移行させることが規定された。

 ・「中等教育全般の完全実施に関する法律」では、2020年9月1日付で国内のロシア語学校をすべて廃止した。

 ・「民族に関する法律」では、ロシア人に文化、経済、教育、言語に関する広範な権利を付与する可能性が排除された。

 • ウクライナ語の機能を発展させるための政府のプログラムでは、2030年までに公共生活のすべての領域で国語[ウクライナ語]を公用語とすることを求めている。

 一方で、近年の統計によると、ウクライナはこの点でほとんど進歩がなく、一貫してバイリンガル国家にとどまっていることが明らかになっている。グーグルのデータでは、ウクライナ政府が発表している統計と異なり、ウクライナのユーザーのほとんどがロシア語を使用していることが明らかになった。さらに、キエフ国際社会学研究所(KIIS)が2020年末に実施した調査では、ウクライナ人の約5割がロシア語を維持すべき歴史的資産と考えていることが明らかになっている。同時に、約60%の住民が将来的にウクライナ語が国の主要言語になると考えていて、ロシア語が再び国家の公式言語としての地位を獲得すると予測したのは32%である。

 この件に関してはかなり安定した状態が続いていたのだが、ロシアが「特別軍事作戦」を開始した2月24日以降に状況が激変した。言語嗜好の変化を示す統計は今のところないが、それまでロシアに同調したり政治に無関心だったロシア語圏の人々の相当部分が、ウクライナへの忠誠心を見直したことは否定しがたい。だからこそ、現在の脱ロシア化政策は、肯定的とは言わないまでも、少なくとも紛争に直面したときの国づくりのきっかけになるという理解で、国内の大半の地域で受け止められている。

 つまり、ロシア語を話すウクライナ人の間でも、ウクライナ化こそが正しい道であり、一種の「原点回帰」であるという意見が浸透してきたのである。このプロセスは、2014年の出来事以降、徐々に強まっている。当時も、ウクライナ化に反対する市民の抗議行動はすべて、公然と「親ロシア」の政治勢力が組織したもので、政府や国家に敵対する行為と見なされていた。

 プロパガンダも部分的に寄与していた。国民は、かつてウクライナではウクライナ語が人為的にロシア語に取って代わられたのであり、これまでウクライナ語が存在しなかった地域でもウクライナ語を「返還」すべきであると納得させられたのである。

 クリミアやドンバスがキエフから離脱した後、ロシア語話者の比率が高い地域は国内でもかなり少なくなり、当局が彼らの意見を無視することはさらに容易となった。また、現在では国民のほとんどがウクライナ語をよく理解し、使う必要があれば問題なく使える。そのため、禁止措置に対する明らかな反対意見もない。

 一方、脱ロシア化政策も勢いを増している。例えば、近い将来、外国人作家の本をロシア語で出版することはもちろん、ロシア人が書いた本も違法となる。古典をロシア語で出版することだけが合法的に可能になるのだ。「ロシア語で書かれたロシアの書籍は、ウクライナでは重大な制限を受けながらも出版することができる。ロシアの古典をロシア語で出版することには何の制限もないが、外国の大衆文学をロシア語に翻訳して輸入、出版、流通させることは不可能になる。ロシアとベラルーシからの印刷物の輸入を禁止する法律を採択した後、国会「教育・科学・イノベーション委員会」のユリア・グリシナ議員は、「そのような本は、原語からウクライナ語に翻訳する必要があります」と述べた。

 また、ウクライナの学校では、ロシア文学の古典的作品、例えば、レオ・トルストイの小説『戦争と平和』などは今後学習されなくなる。しかし、ウクライナのアンドレイ・ビトレンコ教育科学第一副大臣は、ウクライナの学校で禁止されるロシア人作家の作品リストはまだ作成されていないと述べている。にもかかわらず、ウクライナ書籍研究所のアレクサンドラ・コヴァル所長は、市民にとって有害と思われる数百万冊の書籍をウクライナの図書館から撤去しなければならないと急いでいた。

 「もちろん、もっと早くやりたいのですが、少なくともソ連時代に出版された思想的に有害な文学や、反ウクライナの内容を持つロシア文学が年内に撤去されればいいのですが」とコヴァルさんは言う。ウクライナのアレクサンドル・トカチェンコ文化大臣も、押収された書籍はすべて「リサイクルに回してもよい」と考えているようだ。

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アレクサンドル・ネポゴディン 現代ウクライナは反ロシアの基盤の上に築かれたが、国民の大部分はそれに従うことを拒否した。

 ロシア語の印刷物の禁止に加え、9月1日からは、オデッサ、ニコラエフ、ハリコフといったロシア語が主流のウクライナ南東部でも、学校でのロシア語の使用が禁止される。また、西部では、自治体がさらに踏み込んでいる。例えば、フメルニツキー州やイワノフランクフスク州では、ロシア語の文化作品の公共利用をいかなる形でも禁止するモラトリアム(一時停止措置)がとられているのだ。当初の考えでは、この一時停止は「特別軍事作戦」が終了するまで続くことになっていた。例えば、イワノフランクフスクでは、ロシア語で歌った地元の音楽家が路上で殴られたという。

存在しない遺産

 2020年末、ウクライナは異例の成果を報告した。それは、世界プロレタリアートの指導者ウラジーミル・レーニンに捧げられた国内最後の2つの記念碑が発見され、取り壊されたのである。ウクライナの「レノサイド[レーニン像破壊]」は、ユーロマイダンに端を発した2013年から2014年にかけての政治危機の中で始まった。2013年12月、キエフのレーニン記念碑を解体することで幕を開けた。その記念碑の無許可の破壊の結果、刑事的にも民事的にも何の罪も問われることはなかった。これがきっかけとなり、国内の他の地域でもモニュメント解体の波が押し寄せた。

 2015年、ヴェルホーヴナ・ラーダ[最高議会]は、脱共産化とソビエト記念碑の撤去に関する一連の法律を採択した。ウクライナSSR(ウクライナ・ソビエト社会主義共和国)の国歌を含むソ連のシンボルも禁止され、ウクライナ共産党(KPU)は閉鎖された。ソ連にまつわる地名も対象となり、街や通りの名称が一斉に変更され始めた。これは歴史的な名前を復活させるということではなく、ロシア帝国時代の地名も「植民地的遺物」として廃止された。キーロヴォグラドをクロピヴニツキーに改名したように、地元住民が積極的に反対しても、住民の意見は考慮されなかった。ソビエト連邦以前は、18世紀に建設されたこの都市はエリサヴェトグラードと呼ばれ、市民の大多数がこのバージョンの名称に投票した。

 ウクライナの脱共産化運動が始まって以来、2,500のソビエト記念碑が解体され、987の集落と52,000の通りが改名された。同時に、民族主義者たちは当初から、ソ連の過去を抹消することは、非伝統化よりも脱ロシア化を目指した大きなプロジェクトの一環であること、つまり、ウクライナとロシアの文化のつながりに関連するものを破壊することであると強調してきた。「脱植民地化とは、帝国の復活に利用できる遺産を取り除くことだ」と、ウクライナ国家記念遺産研究所の元所長ウラジミール・ヴィアトロヴィッチ氏は言う

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なぜロシアと西側諸国は、ソ連崩壊後に統一ヨーロッパを作ることに失敗したのか

 今、「脱植民地化」の次の段階が進行中だ。ウクライナ当局は、ソ連の人物の記念碑の取り壊しから、詩人アレクサンドル・プーシキンのようなロシアの文化的象徴に捧げた記念碑の取り壊しへと移行している。この構想は、以前は脱ソビエト化であったとすれば、今はロシアの歴史的遺産をすべて一掃しようというものである。そしてこれは、まずロシアの文化や歴史に直接関係する都市に適用される。例えば、ハリコフでは、アレクサンドル・ネフスキー公の記念碑が取り壊され、キエフでは、アンドレフスキー坂の自宅博物館に建てられた作家ミハイル・ブルガーコフの記念碑を撤去する必要性について議論が続いている。

 オデッサでは、市の創設者であるロシア皇后エカテリーナ大帝とアレクサンドル・スヴォーロフ将軍の記念碑の撤去を求める声も上がっている。マクシム・マルチェンコがオデッサ州行政長官に宛てた書簡には、「ロシアの侵略は、ウクライナ人に両国の歴史と関係を根本から考え直し、見直すことを迫っている・・・・」と記されていた。

 そして、「ソ連の植民地主義的な物語と同様に、新たに語られるようになった帝国主義の物語が、今日、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻を正当化するために用いられており、これらの物語が、帝国ロシアおよびソ連共産主義体制のあらゆるレベルでウクライナ領土の植民地化に意図的に結び付けられていることから、脱ロシア化を求める幅広い国民の要求が高まっているのである」、と。

 オデッサの人たちは、現在の状況を、記念碑の取り壊しやソ連時代の地名の改名にまつわる以下の逸話に似ていると冗談めかして言う。

 オデッサの海上ターミナルに、セルゲイ・エセーニンという蒸気船に乗り込もうと急いでいる母子がいた。

 「母さん、セルゲイ・エセーニンって誰?」と息子が尋ねる。

 「私を困らせないで!」お母さんは応える。

 そこに通りかかった港湾労働者が割って入る。

 「どうしてママを困らせるの?この船の名前は今はセルゲイ・エセーニンだったが、昔はラザル・カガノヴィッチ*だったなんて、どうしてママが知っているんだい?」
    
 (RT: セルゲイ・エセーニンは1926年に亡くなったロシアの詩人、カガノヴィッチは50年代後半に失脚したスターリンの仲間で、彼の名前を冠したものはすべてその後改名された)。

 (訳注)*カガノヴィッチ=1893 年 – 1991 年 7 月 25 日) は、ソ連の政治家で行政官であり、ヨシフ・スターリンの主要な協力者の 1 人だった。彼は、スターリンが権力の座につくのを助け、スターリン政権に対する脅威と見なされたものを厳しく扱い、処刑したことで知られている。1924 年には中央委員会の正会員となり、ウクライナ共産党の一等書記官となった。1925 年に中央委員会書記、1930 年に政治局員。


 キエフでも脱ロシアが本格化し、地下鉄の駅や通りの新しい名称がすでに決定している。例えば、オボロンスキー地区のトゥーラ広場は「UPA*の英雄通り」(ナチスと共謀したウクライナ反乱軍、ロシアでは禁止されている)と改名され、ポルタヴァ近郊で亡くなったソ連のワシリー・トゥピコフ将軍にちなんだ通りは、20世紀前半にウクライナ民族主義運動で活躍したアンドレイ・メルニクの名前を冠することになった。また、ナチス占領下のリヴネで発行され、反ユダヤ主義的な内容を含んでいたヴォリン新聞の編集者である作家ウラス・サムチュクに敬意を表してバクーニン通り(有名なアナキストの理論家)の名前を付けたいとも考えているようだ。
訳注:UPA=Ukurainian Insurgent Army(ウクラインスカ ポフスタンシカ アルミアの頭文字)

 ウクライナ当局は、脱ロシア化への本気度を示すため、ソ連・ロシアの文化遺産をより効果的に根絶するための「脱ロシア化・脱コミュニケーション・脱植民地化」に関する専門家会議を設置した。同時に、ウクライナ文化省は、モニュメントを取り除くための取り組みは「文明的」であると主張している。「何百もの<プーシキン通り>をヨーロッパのどの国でも見ることはなくなるでしょう。その名前は適切な場所にのみ設置されるべきです」とウクライナのアレクサンドル・トカチェンコ文化大臣は述べ、どの名称と記念碑を撤去し、どの名称を残すかを決めるのに専門家が協力することを明らかにした。

残すべきか、撤去すべきか?

 オデッサではロシアに関連する通りの名前が変更され、キエフでは地下鉄の駅名が変更され、他の都市ではプーシキンやマキシム・ゴーリキー(ソ連の作家 - RT)、その他のソ連の人物の記念碑が公共スペースから撤去されつつある。

 政治家の多くは適切な措置を着実に講じるよう主張しているが、政治家の中には、ロシアの文化や言語はこの国の固有の住民の大部分と関係があるため、ロシア文化を根絶することに懐疑的な人もいる。

<さらに読む>

ロシア恐怖症: 西側諸国のロシア人は、ウクライナ紛争の責任は自分たちにあると考えられていることに不満を漏らす

 オデッサ市長のゲンナジー・トルハノフ氏は、プーシキン通りの改名に反対し、「オデッサはウクライナの異文化の都である」 と説明し、ロシア人に対する憎悪が高まっていることを懸念している。さらにトルハノフ氏は、オデッサがロシアの女帝エカテリーナ2世によって築かれた街であることを指摘した。「ブルガーコフ、プーシキン、トルストイは国籍を超えた存在だ」と、学校でのロシア文学の禁止に反対するゲトマンツェフ氏(大統領派政党「国民の奉仕者」)も同様の意見を述べた。

 また、もっと高いレベルでも困惑の言葉が聞かれる。例えば、ウクライナ大統領の悪名高い顧問であるアレクセイ・アレストヴィッチは、ロシア語を支持する発言をし、ウクライナの活動家を攻撃している。彼は自身のテレグラムチャンネルで、ウクライナの活動家が影響を及ぼすすべての地域が悪化し始めていると書いていた。ウクライナの文化が心を打つものであるのは、「ウクライナの活動家による活動が許されるまで」だ、とアレストービッチ(Arestovich)は書いている。同時に、彼は 「ロシア語の問題はウクライナの将来にとって重要なことだ」 と考えている。

 彼の意見では、もし「民族主義」と「ユーロ楽観主義」のプロジェクトが国を支配すれば、ウクライナは領土の一部を永遠に失い、欧州連合に加盟し、西側の「家族」に溶解することになるだろうという。「国境内にとどまり、プーチンのロシアを崩壊に導き、歴史を取り戻し、強い国家になりたいのであれば、別の計画が必要である。この場合、ロシア語が必要となる。というのもロシア語はロシア文化とそれに付随する一連の思想を意味するからだ」とアレストビッチは確信している。

 しかし、アレストビッチ、ゲトマンツェフ、トルハノフの3人は、ウクライナにおけるロシア恐怖症の拡大を止めることはほとんどできないだろう。 それよりも重要なのは、ウクライナがEUに加盟するために満たすべき条件である。ウクライナ大統領府のアンドレイ・イェルマク長官は、「ベニス委員会*の勧告に従って現在準備中の、少数民族の権利に関する法的枠組みの改革」がその一つであると述べている。
訳注:*ベニス委員会=ニス委員会(「法による民主主義のための欧州委員会」)は、欧州評議会による民主化 支援活動の一環として、とりわけ憲法起草など法技術面での支援を実施するため、1990年 に設置された。約50か国から集まった、裁判官、学者、国会議員など法律の専門家が、委員として活動している。旧ソ連・東欧地域の諸国の憲法改革に対する支援活動は、 その顕著な事例である。

 「中等教育全般に関する法律」により、2020年9月1日をもってウクライナのロシア語学校はすべて廃止された。以降、5年生からウクライナ語で授業を行い、国語は別教科として導入されている。 当時、ベニス委員会は、この法律の第7条は、少数民族が母国語で教育を受ける権利を侵害するものであると指摘した。その後、ウクライナは先住民に関する法律を採択し、クリミア・タタール人、カライート人、クリミア人が自分たちの言葉で勉強できるようにし、EU言語についてもより広い機会が明記されたが、ロシア語で勉強できることは省かれた。

 しかし、これらの譲歩では、欧州委員会の加盟条件を満たすことができなかった。ロシアの「特別作戦」開始後に始まった脱ロシア化のペースを考えると、ウクライナがそれを満たすかどうかは大きな問題である。一方、ウクライナがこの条件を無視することは容易ではない。かねてからウクライナの言語政策やハンガリー人少数民族の権利侵害を批判してきたハンガリー(EU加盟国)は、必ずやその履行を主張するはずである。そして、ブダペストからの投票がなければ、キエフはEUに加盟できない。

そして、ロシアはどうだろう?

 「オデッサ州では、ロシア語とロシア文学の教科書が廃止され、すべてのロシア人作家が教育課程から抹殺された。ニコラエフでは、学校でのロシア語の使用が禁止されている・・・ウクライナの住民は、ロシア語の教科書を慌てて捨ててはいけない。9月1日まで棚に置いておけば、後で探さなくて済む」と、ヴォロディン国家議会議長がウクライナの脱ロシア化政策についてコメントしている。

<さらに読む>

欧米の難民に対する選別的な扱いは、他の地域からの難民に比べウクライナ人が温かく迎えられていることに見ることができる。

 「特別作戦」の最初の数週間から、ロシア当局者、特にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、この戦いを行う上でのロシアの目標の一つは、ウクライナ憲法に基づくロシア語の権利を回復し、反ロシア的な法律を廃止することだと宣言し続けていた。

 2014年以降、ロシアは隣国に対する政治的影響力をほとんど失い、ウクライナ国民が国内で自己組織化を図ろうとすると、分離主義と見なされ、深刻な事態を招くことになった。この状況を考えると、ロシアには政治行動のための幅広い戦略を策定し、ウクライナにおける文化的・人道的影響力を構築することしか手段がなかったのである。つまり、かつての「友愛国家」の完全な脱ロシア化は、硬直的かつ不可逆的な反ロシアの姿勢を持つウクライナの政治国家の出現を不可避とするからである。

 このような急進主義をもたらしたのはロシアの政策だけでなく、ウクライナの政治過程全体の論理が、当初から内外の敵に対抗する民族意識に基づいて構築されてきたからである。その内外の敵には、「ヤヌコビッチ政権」(ユーロメイダンによって打倒された前大統領 - RT)、南東部の「キルティングジャケット」(ソ連の衣服で、ウクライナの親ロシア派住民に使われる名称 -- RT)、国の共産主義の遺産、「侵略国」などが含まれている。

 状況は変わった。ロシア軍が東部で次々と勝利を記録し、南部の大部分はモスクワの支配下にあるため、キエフ軍は軋みを増している。このことは、「マイダン」後の秩序をより壊れやすいものにし、ゼレンスキー政権の終焉を早めるかもしれない。また、モスクワが軍の存在する地域で文化的、人道的プロジェクトを実施することも可能になる。

 欧米の支援を受けた指導者は、国内最大の野党を禁止し、反対派を投獄している。しかし、最近の状況の経緯は、ウクライナの状況が非常に早く変化する方向性を示している。
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ヴォロディミール・ゼレンスキー(ウクライナ大統領)、その悪しき素顔

<記事原文 寺島先生推薦>

Volodymyr Zelensky: The Dark Side of the Ukrainian President

(ヴォロディミール・ゼレンスキー:ウクライナ大統領の暗い側面)

筆者:ガイ・メタン(Guy Mettan)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年6月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年8月2日

 スイスの国会議員でTribune de Genèveの前編集長であるガイ・メタンは、ウクライナの大統領を演じる曲芸師の肖像を描く。彼は、この大衆エンターテイナーがいかにしてバンデリスト(ステパン・バンデラの信奉者)の味方となり、彼らのために独裁政権を樹立した経緯を明らかにしている。

 「Héros de la liberté(自由のヒーロー)」、「Hero of Our Time(現代の英雄)」、「Der Unbeugsame(不屈の人)」、「The Unlikely Ukrainian Hero Who Defied Putin and United the World(プーチンに食ってかかり、世界を統一した希代のウクライナ人ヒーロー)」、「Zelensky, Ukraine in blood(ゼレンスキー、血みどろのウクライナ)」:欧米のメディアや指導者たちはもはやどんな最上級の言葉でウクライナ大統領を賞賛していいかわからないほど、「軍事的指導者」「民主主義の救世主」に奇跡的に変身したこの芸人の「驚くべき復活力」に魅了されているのである。

 この3ヶ月間、ウクライナの国家元首(ゼレンスキー)は、ずっとトップニュースで報じられてきた。カンヌ映画祭の開幕を飾り、各国の議会で演説をした。自分より10倍も力のある同じ国家元首に祝意を述べたり、訓戒をたれたりした。こんな幸福感や戦術感覚は彼以前のどんな映画俳優も政治指導者も知らないものだった。

 この『Mr.ビーン』*まがい人物の魔力にどうしても魅了されてしまうのは、彼が、にやにや笑いと極端な羽目外し(例えば、店の中を裸で歩いたり、自分の性器を使ってピアニストのふるまいをするなど)で大衆の気持ちを鷲掴みにした後、そのおふざけと耳障りなダジャレはやめて、灰緑色のTシャツと1週間の無精髭、そして一から十まで真面目な言葉を使いながら、ロシアという邪悪な熊に包囲されている軍隊に活力を与えようとしたからだ。
『Mr.ビーン』*・・・(ミスタービーン、Mr. Bean)は、イギリスのテムズテレビ(ITV系)にて1990年から1995年まで放送されたコメディ・TVシリーズ。(ウイキペディア)

 2月24日以降、ヴォロディミール・ゼレンスキーは、疑いなく、国際政治における類まれな才能を持つアーティストであることを証明した。彼のコメディアンとしてのキャリアを追ってきた人々は、彼の天性の即興のセンス、模倣の能力、演技における大胆さを知っていたので、そんなことは驚きでもなんでもなかった。2018年12月31日から2019年4月21日までの数週間で、ゼレンスキーという政治家を作り出そうとする勢力と、金に糸目を付けないオリガルヒの寄付を動員して、ポロシェンコ元大統領のような手強い相手を選挙運動で打ち負かしたやり方は、すでに彼の才能が彼個人の範囲にはとどまっていなかったことを証明していた。しかし、当時はまだ小手先だったのだ。しかし今や、ゼレンスキーの才能な全開している。


二枚舌の天才

 しかし、よくあることだが、表舞台が舞台裏と同じということはほとんどない。スポットライトは、見せるよりも隠すことの方が多い。そしてここでお見せする絵は「素晴らしい!」というのではまったくない:彼の国家元首としての実績も、民主主義の擁護者としてのふるまいも、「申し分ない!」というのとは正反対だ。

 ゼレンスキーの二枚舌の才能は、大統領に選出されたらすぐ発揮されるような類のものだ。そう、彼は、汚職に終止符を打ち、ウクライナを進歩と文明の道に導き、とりわけロシア語圏のドンバスとの和平を約束し、73.2%の得票率で当選したしている。しかし、当選するやいなや、その公約をことごとく裏切り、2022年1月には支持率が23%にまで落ち込み、主要な対立候補2人に追い越されるまでになった。

 2019年5月から、オリガルヒのスポンサーを満足させるために、新大統領に選出されたゼレンスキーは、土地売却の猶予期間が国のGDPに数十億ドルの損失を与えた可能性があったという口実で、4000万ヘクタールの優良農地を対象とした大規模な土地民営化計画乗り出そうとしている。2014年2月の親米クーデター以降に始まった「脱共産化」「脱ロシア化」プログラムをきっかけに、国有資産の民営化、財政緊縮、労働法の規制緩和、労働組合の解体という大作戦を開始し、ゼレンスキーが候補者だった時に言った、ウクライナ経済の「進歩」「西欧化」「正常化」がどういうものかを理解していなかった大多数のウクライナ国民を怒らせているのである。2020年の一人当たりの所得が、ロシアの10,126ドルに対して3,726ドル、1991年にはウクライナの平均所得がロシアのそれを上回っていた国だから、この対比は喜べる代物ではない。そして、ウクライナ人が、この嫌になるほど繰り返された新自由主義的改革に拍手を送らなかったことも理解できる。

 文明化への進展に関しては、別の法令の形をとることになる。つまり、それによって2021年5月19日に、ウクライナ語の支配を保証し、公共生活、行政、学校、企業のすべての領域からロシア語を禁止することが実効性をもつ。民族主義者は大満足だろうが、南東部のロシア語を話す人々にとっては寝耳に水だ。


濡れ手に粟のスポンサー

 汚職に関する記録は、こんなものではない。2015年、ガーディアン紙は、ウクライナはヨーロッパで最も腐敗した国であると評価した。2021年、ベルリンに本拠を置く西側のNGO、トランスペアレンシー・インターナショナルは、ウクライナの汚職度を世界122位とし、軽蔑すべきロシア(136位)に迫った。ロシアという野蛮人を前にして、模範的美徳を任ずる国としては、胸を張れる数値ではない。汚職はいたるところにある。省庁、行政、公共企業、議会、警察、そしてキエフポスト紙によれば、汚職防止司法高等裁判所でさえも汚職がある。また、裁判官がポルシェで移動しているのを見るのも珍しくない、と同紙は報じている。

 ゼレンスキーの主なスポンサーであるイホル・コロモイスキー(Ihor Kolomoïsky)は、ジュネーブに住み、港を見下ろす豪華なオフィスを構えているが、蔓延する汚職から利益を得ているこういったオリガルヒたちとは桁を異にしている:2021年3月5日、おそらくアンソニー・ブリンケンとしては他に選択の余地がなかったのだろう、「重大な汚職への関与」を理由に国務省が彼の資産を凍結し米国からの追放を発表したのである。たしかにコロモイスキーは、国営のプリヴァトバンクから55億ドルを横領した罪に問われていた。偶然にも、この善良なコロモイスキーは、ジョー・バイデンの息子ハンターを月5万ドルというささやかな報酬で雇い、現在デラウェア州検察の捜査を受けている石油保有会社ブリズマの主要株主でもあった。賢明な予防策:コロモイスキーはイスラエルでペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)となり、一部の証言によればグルジアで難民となっており、証言台に立つことはなさそうである。

 このコロモイスキーこそ、ウクライナ躍進の立役者であり、ゼレンスキーの俳優としての全キャリアを作った人物で、2021年10月にマスコミによって明らかにされた「パンドラ文書」事件にも関与している人物である。「パンドラ文書」は、2012年以来、この罰当たりなオリガルヒが所有するテレビチャンネル1+1が、そのスターであるゼレンスキーに4000万ドルもの大金を支払っていたことを明らかにした。そしてゼレンスキーは、大統領に選ばれる直前、彼直近のクルィヴィーイ・リー市*(Kryvyi Rih)守備隊の助けを借りて、妻の名義で開設した外国口座にかなりの金額を慎重に移し、ロンドンに無申告のアパートを3つ、総額750万ドルで取得したことも明らかにしている。この守備隊とは2人のシェファ(Shefir)兄弟。一人はゼレンスキーのゴーストライターであり、もう一人は国家保安局の局長、そして共同制作会社Kvartal 95のプロデューサー兼オーナーだ。
クルィヴィーイ・リー市*・・・ウクライナのドニプロペトローウシク州クルィヴィーイ・リーフ地区にある都市。サクサハーニ川、インフレーツィ川の河岸に位置する。(ウイキペディア)

 この「人民の奉仕者」(これは彼が出演した連続テレビ番組と政党の名前である)の非プロレタリア的な快適さへの嗜好は、ソーシャルネットワークに一時掲載され、確認されたが、反共謀事実確認者たちによって直ちに削除された。そこにはカルパチアの質素なスキーリゾートで冬の休暇を過ごすはずの彼が一泊数万ドルの南国の宮殿でくつろぐ姿を捉えた写真が掲載されていた。

 節税技術や、物議を醸すオリガルヒとの頻繁な付き合いは、無条件に汚職撲滅を訴えていた大統領の公約に沿うものではない。また、憲法裁判所の厄介な存在だったオレクサンドル・トゥピツキー(Oleksandr Tupytskyi)長官を排除しようとしたり、前任者のオレクシャイ・ゴンチャルク(Oleksyi Goncharuk)がスキャンダルで退任した後に、デニス・シュミナル(Denys Chmynal)という無名の男を首相に任命したことも同じだ。しかしシュミナルにはウクライナで最も金持ちであるリナト・アフメドフ(Rinat Akhmetov)の工場の一つ(アゾフ大隊の英雄的自由戦士の最後の避難所となった有名なアゾフスタル工場)の運営者であるという長所があった。ロシア軍が降伏後に公開した無数のビデオに見られるように、この自由戦士とはSS帝国師団のヴォルフスアンゲル*、アドルフ・ヒトラーの言葉、卍を賛美するタトゥーを腕、首、背中、胸に入れた者たちだ。
ヴォルフスアンゲル*・・・Wolfsangel: は、2つの金属部品と接続チェーンで構成される、歴史的なオオカミ狩りの罠に触発されたドイツの紋章。 初期には、魔法の力が宿っていると信じられていたが、15世紀にドイツの王子とその傭兵の抑圧に対する農民の反乱の紋章として採用された後、自由と独立の象徴になった。(ウイキペディア)


アゾフ大隊の捕虜

 華やかなヴォロディミルがウクライナの民族主義右派の最も極端な代表と和解したことは、ゼレンスキー博士*の異常なふるまいの最たるものではなかった。西側メディアは、大統領が突然ユダヤ人であることを再発見し、これをスキャンダラスなことと判断し、この共謀を直ちに最大限の悪意を持って否定したのである。ユダヤ人の大統領が、ごく少数のアウトサイダーとして紹介されているネオナチに共感するわけがない。プーチンの「非ナチ化」作戦を信用してはならない......。
ゼレンスキー博士*・・・7月3日のEnglish ISLAM Timesに掲載された同じ記事のタイトルは「Dr.Volodymyr & Mr.Zelensky」となっている。彼は博士号を取得していない。

 そして事実は揺るがず、決して些細なものではない

 ゼレンスキー個人がネオナチ思想やウクライナの民族主義的極右と親密であったことはないことは確かである。彼のユダヤ人の先祖は、たとえ比較的遠いところにあり、2022年2月以前に主張したことはなかったとしても、彼の側に反ユダヤ主義が存在しないことは明らかである。したがって、このゼレンスキーとネオナチ・極右との和解は彼への親近感を裏切るものではなく、ありふれた存在理由の問題であり、プラグマティズム(実用主義)と、身体的にも政治的にも生き残ろうとする本能、というだれでも理解できるこの二つの混合物である。

 ゼレンスキーと極右の関係の本質を理解するには、2019年10月まで遡る必要がある。そして、これらの極右組織は、たとえ有権者の2%の重さしかないとしても、それでも100万人近くの非常に意欲的でよく組織された人々を代表し、多数のグループや運動に広がっており、その中でもアゾフ連隊(コロモイスキーが早くも2014年に共同設立し資金を提供、やはり彼だ!)が最もよく知られているにすぎないことを理解する必要がある。これに、Aïdar、Dnipro、Safari、Svoboda、Pravy Sektor、C14、National Corpsなどの組織を加えれば、完璧だ。

 アメリカのネオナチ、デイヴィッド・レーン(David Lane)のフレーズ(We must secure the existence of our people and a future for white children「私たちは民族の存在と白人の子供たちの未来を確保しなければならない」)の語数から名付けられたC14は、海外ではあまり知られていないが、ウクライナでは人種差別的暴力で最も恐れられている団体の一つである。これらのグループはすべて、2014年から2021年までウクライナの治安組織を無批判に支配したリーダー、アルセン・アヴァコフ(Arsen Avakov)元内相の主導で、多かれ少なかれウクライナ軍と国家警備隊に併合されたのだ。ゼレンスキーが2019年秋以降「退役軍人」と呼んでいるのは彼らである。

 当選から数カ月後、この若い大統領は選挙公約を実現し、前任者が署名したミンスク合意を履行しようとドンバスに赴いた。2014年以来、1万人の死者を出してドネツク市とルガンスク市を砲撃してきた極右勢力は、この「平和主義者」大統領を疑っているため、最大限の慎重さをもって彼を迎えている。彼らは「降伏しない」というスローガンのもと、容赦ない平和反対キャンペーンを繰り広げている。あるビデオでは、青ざめたゼレンスキーが彼らに懇願している。「私はこの国の大統領だ。私はこの国の大統領だ。私は41歳だ。私はこの国の大統領だ。私はあなたのところに来て、銃を取り出してください、と言っているのです。」この動画はソーシャルネットワークで公開され、ゼレンスキーはたちまちヘイトキャンペーンのターゲットとなった。平和とミンスク協定の履行を願う彼の思いは、これで終わりを告げることになるのだろう。

 この事件の直後、過激派勢力の小幅な撤退が行われ、その後、本格的に爆撃が再開された。


民族主義者十字軍

 問題は、ゼレンスキーが彼らの脅迫に屈しただけでなく、彼らの民族主義的十字軍に加わっていることだ。2019年11月に遠征に失敗した後、彼はC14のリーダーであるイェベン・タラス(Yehven Taras)を含む複数の極右指導者を迎え、首相は殺人の疑いがあるネオナチのアンドリイ・メドベスコ(Andryi Medvedko)の側に立っている。また、戦時中にナチスドイツに協力し(戦後はCIAに協力)、ユダヤ人ホロコーストに参加した民族主義者ステパン・バンデラ(Stepan Bandera)への支援を宣言していることから、彼をナチスと非難するスペインのファンに対して、サッカー選手ゾルズィヤ(Zolzulya)を支持する。

 民族主義的急進派との協力関係は確立している。昨年11月、ゼレンスキーは超国家主義団体Pravy Sektorのドミトロ・ヤロシュ(Dmytro Yarosh)をウクライナ軍最高司令官特別顧問に任命し、2022年2月からは後方でテロを繰り広げている義勇軍の長に就任させた。同時に、拷問を好むことから「絞殺者」の異名を持つオレクサンデル・ポクラド(Oleksander Poklad)をSBUの防諜部門長に任命した。戦争開始の2ヶ月前の12月には、Pravy Sektorのもう一人の指導者であるドミトロ・コツイバイロ(Dmytro Kotsuybaylo)司令官に「ウクライナの英雄」の称号が与えられ、戦争開始の1週間後には、ゼレンスキーはオデッサ地方知事を、超民族主義団体アイダー大隊の隊長マクシム・マーチェンコ(Maksym Marchenko)に交代させている。ベルナルド=アンリ・レヴィ(Bernard-Henri Lévy)が必ず一緒に行進するのはまさにこの団体だ。

 極右に地位を与えてなだめたいのか?超愛国主義の共有か?それとも、新自由主義、大西洋主義、親欧米の右派と、ロシア人を粉砕し、国民党のリーダーであるアンドレイ・ビレツキー(Andryi Biletsky)元代議士の言葉を借りれば「世界の白人種を率いて、セム族(セム人)に導かれた劣等民族(人種)に対する最後の十字軍」を夢みる民族主義の極右との、単純な利害の一致なのだろうか。ゼレンスキーにこの質問をしたジャーナリストはいないので、よく分からない。

 しかし、疑う余地のないのは、ウクライナ政権の権威主義的、犯罪的な傾向がますます強まっていることである。そのため、その狂信者たちは、自分たちの偶像をノーベル平和賞に推薦する前に、もう一度よく考える必要がある。メディアが見て見ぬふりをしている間に、ロシアのエージェント(工作員)、あるいは敵と共謀していると疑われる地方や国の選出議員に対する脅迫、誘拐、処刑作戦行動が実際に行われているのだ。

 「ウクライナの裏切り者が一人減った! 彼は死体で発見された。人民裁判所で裁かれたのだ!」 内務大臣顧問のアントン・ジェラシェンコ(Anton Gerashenko,)は、テレグラムのアカウントで、小さな町クレムニナの市長で元代議士のヴォロディミル・ストロック(Volodymyr Strok)の殺害をこのように発表した。彼はロシア軍に協力した疑いがあり、誘拐され拷問された後、処刑された。3月7日、ゴストメル市長は、ロシア軍と人道的回廊を交渉しようとしたため、殺害された。3月24日、クピャンスク市長はゼレンスキーに、SBU工作員に誘拐された娘の解放を要請した。同時に、ウクライナの交渉担当者の一人が、国家主義的なメディアによって反逆罪で告発され、遺体で発見された。ロシアに占領されたことのない地域も含め、これまでに11人もの市長が行方不明になっているという。


禁止された反対党派

 しかし、弾圧はそれだけにとどまらない。批判的なメディアはすべて閉鎖され、野党はすべて解党された。

 2021年2月、ゼレンスキーは、親ロシア派と目される、オリガルヒのヴィクトル・メドヴェチュクが所有しているとされる3つの野党チャンネル、NewsOne、Zik、112 Ukraineを閉鎖した。米国務省は報道の自由に対するこの攻撃を歓迎し、「米国はロシアの悪質な影響に対抗するウクライナの努力を支持すると述べている...」と述べている 。2022年1月、開戦の1ヶ月前にNashは閉鎖された。戦争が始まると、政権は左翼のジャーナリスト、ブロガー、コメンテーター狩りに走った。4月初めには、2つの右派チャンネルも影響を受けた。Channel 5とPryamiyだ。もちろん、大統領令によって、すべてのチャンネルが政府寄りの単一の論調で放送することを義務づけられている。最近では、この国で最も人気のある批判的なブロガー、ウクライナのナヴァルニー(Navalny)ことアナトーリー・シャリー(Anatoliy Shariy)まで魔女狩りの対象になっており、彼は5月4日、ウクライナ政治警察の要請でスペイン当局に逮捕された。少なくとも独裁者プーチンに匹敵する報道機関への攻撃だが、欧米のメディアで報道されることは皆無だ...。

 この粛清は、政党に対してはさらに厳しいものであった。ゼレンスキーの主な反対者たちは壊滅させられた。2021年春、プーチンに近いとされる中心的な反対者メドベチュクの自宅が荒らされ、本人は自宅軟禁となった。4月12日、このオリガルヒ代議士は、非公開の場所に強制的に留め置かれ、明らかに薬物を投与され、訪問者たちは必ずテレビに映され、アゾフスタル守備隊の解放との交換を提示された。これはジュネーブ条約をすべて無視した行動だ。彼の弁護士たちは脅迫され、彼を弁護することをあきらめ、当局に近い人物の肩入れをしなければならなかった。

 昨年12月、反逆罪で訴えられたのは、世論調査で上昇していたペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)だった。2021年12月20日15時7分、SBU(ウクライナ保安庁)の公式サイトに、国家反逆罪とテロ活動支援の罪で容疑者として掲載されたのである。前大統領ポロシェンコは、「ウクライナのエネルギーをロシアとロシアに支配された疑似共和国の指導者たちに依存させた」と非難された。

 3月3日、リズヴィツィア左翼の活動家がSBUに襲撃され、十数人が投獄された。そして3月19日、ウクライナの左翼全体が弾圧にさらされた。政令により、11の左翼政党が禁止された:生活の党、左翼反対派、ウクライナ進歩社会党、ウクライナ社会党、左翼連合、社会党、シャリイ党、われら、国家、野党ブロック・ボロディミル・サルド。

 他の活動家、ブロガー、人権擁護者は、ジャーナリストのヤン・タクシュール(Yan Taksyur)、活動家のエレナ・ブレジナヤ(Elena Brezhnaya)、MMAボクサーのマキシム・リンドフスキー(Maxim Ryndovskiy)や、2014年5月2日のオデッサ労働組合会館でのポグロムで父親が黒焦げになって死亡した弁護士のエレナ・ヴィアチェスラヴォヴァ(Elena Viacheslavova)を逮捕し拷問している。

 このリストを完成させるには、キエフの通りで民族主義者たちに裸にされ、公衆の面前で鞭打たれた男女、処刑される前に殴られ足を撃たれたロシア人捕虜、殺される前に目に穴を開けられた兵士、キエフ近くの村でロシア人捕虜を処刑した(彼らの指導は決して捕虜は作らないと自慢していた)グルジア軍団のメンバーを挙げればよいだろう。ウクライナ24チャンネルでは、軍の医療サービス責任者が「ロシア人男性は人間以下でゴキブリよりたちが悪いから、全員去勢しろ」という命令を出したと語っている。最後に、ウクライナはクリアビュー社の顔認識技術を多用して死んだロシア人を特定し、その写真をロシアのソーシャルネットワークに流し嘲笑の対象にしている...。


アカデミー賞受賞俳優

 ウクライナの運命を司る民主主義と人権の擁護者の軍隊が行った残虐行為の引用や映像は非常に多いので、例を挙げるときりがない。しかし、このような野蛮な振る舞いはロシア人だけのせいだと思い込んでいる世論に対してこんなことを言っても、退屈でありかえって逆効果だろう。

 このため、どのNGOも何の警戒感も持たず、欧州評議会も沈黙し、国際刑事裁判所も調査せず、報道の自由団体も沈黙している。4月初めにブチャを訪れたご親切なヴォロディミルが語ったことに、彼らはよく耳を傾けていないのだ:

「もし我々が文明的な解決策を見いだせなければ、我々の国民を知っての通り、彼らは非文明的な解決策を見出すだろう。」

 ウクライナの問題は、その大統領が、自ら望んでか意に反してかはわからないが、世界中の群衆から崇拝される快感に浸るために、国内では過激派に、国外ではNATO軍に権力を譲り渡したことにある。ロシア軍の侵攻から10日後の3月5日、フランスのジャーナリストにこう言ったのは彼ではなかったか。「今日、私の人生は美しい。私は自分が必要とされていると信じています。私は自分が必要とされていると信じている。これこそ私の人生の最も重要な意味だと感じている。自分がただ呼吸し、歩き、何かを食べているのではないと感じられること。それが生きていることなのです!」

 繰り返そう:ゼレンスキーは優れた俳優だ。1932年の『ジキルとハイド』役をやった俳優のように、この10年のアカデミー賞最優秀男役賞を受賞するにふさわしい。しかし、2019年に防げたはずの戦争から国を立て直すという任務に直面したとき、現実への復帰は難しいかもしれない。

Sources
«The Comedian-Turned-President is Seriously in Over His Head», Olga Rudenko, New York Times, February 21, 2022 (Opinion Guest from Kyyiv Post).
«How Zelensky made Peace With Neo-Nazis», and «Zelensky’s Hardline Internal Purge», Alex Rubinstein and Max Blumenthal, Consortium News, March 4 and April 20, 2022.
«Olga Baysha Interview about Ukraine’s President», Natylie Baldwin, The Grayzone, April 28, 2022.
«President of Ukraine Zelensky has visited disengaging area in Zolote today», @Liveupmap, 26 October 2019 (Watch on Twitter).
«Qu’est-ce que le régiment Azov?», Adrien Nonjon, The Conversation, 24 mai 2022.
«Public Designation of Oligarch and Former Ukrainian Public Official Ihor Kolomoyskyy Due to Involvement in Significant Corruption», Press statement, Anthony J. Blinken, US Department of State, March 5, 2021.
«Petro Poroshenko notified of suspicion of treason and aiding terrorism», Security Service of Ukraine, 20 December 2021.
«Un maire ukrainien prorusse enlevé et abattu», Michel Pralong, Le Matin, 3 mars 2022
Source
Swiss Standpoint
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グレン・ディーセン: ドイツの経済危機は、自傷行為の興味深い研究対象

<記事原文 寺島先生推薦>
Glenn Diesen: Germany's developing economic crisis is a fascinating study in self harm

著者:グレン・ディーセン(Glenn Diesen)

出典:RT

2022年7月9日

<記事飜訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年7月31日



 ロシアを制裁することによって、ドイツは自身のビジネスモデルを破壊してしまった。今、ドイツは経済的破局の可能性に直面している。

 ドイツは30年ぶりに初めて月次貿易赤字を計上したばかりで、ドイツ労働組合連盟のトップは、エネルギー不足と価格の高騰の結果、国内の主要産業が永久に崩壊する可能性があると警告している。ドイツが欧州連合の経済の原動力であった黄金時代はすでに終焉を迎えている。

 30年間、ドイツの産業の競争力は安価なロシアのエネルギーの輸入によって強化され、ヨーロッパ最大の国[ロシア]もまたドイツの技術や製造品の重要な輸出市場となった。それまでの数世紀、ドイツの生産力とロシアの巨大な資源が、ヨーロッパ大陸の主要な勢力軸を作るというのが、ヨーロッパ政治の重要なテーマであった。

 ドイツとロシアの関係はその後、常にジレンマを抱えていた。2つの巨人のパートナーシップは、英米などのライバル国への挑戦となる一方、ドイツとロシアの対立は、かつてイギリスの地理学者ジェームズ・フェアグリーヴが「クラッシュゾーン(衝撃吸収帯)」と呼んだ中・東欧を変えてしまった。

 現在のウクライナにおけるNATOとロシアの代理戦争は、19世紀から20世紀にかけてのこのジレンマが今もなお当てはまることを示している。しかし21世紀は、世界がもはやヨーロッパ中心ではなくなっているという点で大きく異なっている。

 モスクワが目指した独ロ協力は、包括的な大欧州を構築することであったが、現在は大ユーラシアを構築するための露中協力に取って代わられている。エネルギーや天然資源の輸出は東方へ向けられ、重要な技術や工業製品は東方から輸入されるようになっている。


自傷行為というケーススタディ

 ドイツの経済危機は、自傷行為の興味深いケーススタディである。1990年代初頭、モスクワがドイツの再統一を支援した後、ボン(当時ベルリン)が「主権平等」と「不可分の安全保障」に基づく汎欧州安全保障構造に関するモスクワとの合意を放棄したため、相互の信頼関係は失われた。それどころか、ドイツはNATOの拡張主義を支持し、欧州大陸最大の国家を排除した汎欧州システムを構築した。

 その結果、ドイツ・NATOとロシアの間で、中・東欧への影響力をめぐる数世紀にわたる歴史的な対立が復活し、新しいヨーロッパの分水嶺がどこに引かれるかが争われることになった。ベルリンが2004年のオレンジ革命と2014年のキエフ・マイダンを支援して親西欧・反ロシア政権を樹立した後、ウクライナはロシアのエネルギーの中継地として当てにならなくなった。

 しかし、ドイツは、ロシアの輸送ルートを多様化するいくつかの構想に反対して、自国のエネルギー安全保障を損なった。ベルリンはロシアのエネルギー依存を減らすと繰り返し脅したが、その結果は、ロシアが東方で輸出市場を探す動機付けとなった。

 2015年2月のミンスク合意2は、その前年に欧米が支援したウクライナのクーデターに伴う紛争を解決するための妥協案であった。ベルリンは和平協定を交渉したが、その後7年間、協定を妨害したり「再交渉」したりしようとするアメリカの試みに付き合わされることになった。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長が最近になって公に認めたように、この軍事ブロックは、この期間をロシアとの紛争に備える時間として使うことになったのである。

 2022年2月に、モスクワがドンバスの独立を認め、ウクライナを攻撃することで対応すると、ドイツはパイプライン「ノルド・ストリーム2」をキャンセルし、ガスプロムの自国領土内の子会社を掌握し、ロシアのエネルギーに対する制裁を発表した。何年も前から、ロシアはドイツへのエネルギー供給を削減するという、恐れていた「エネルギー兵器」を使うのではないかという憶測があった。しかし、結局はドイツが経済的苦痛を自分自身に与えたので、その必要はなかったのである。


多極化時代におけるエスカレーション・コントロール

 エスカレーション・コントロールとは、緊張を高めて敵対国にコストをかけ、必要な譲歩を得たところで緊張を緩める能力である。一極集中の時代には、西側諸国は敵対国が降伏せざるを得なくなるまで圧力を強めることができたので、エスカレーションを支配することができた。NATOの拡大主義、戦略的ミサイル防衛、非対称的な経済的相互依存は、ロシアに対してこの力を強化した。

 現在の世界秩序において、ロシアを制裁することは、中国やインドのような国家に膨大な市場シェアを明け渡すことを意味し、モスクワを強制的に服従させることにはならない。ドイツが安価なロシア製燃料に代わる高価なエネルギーの確保に躍起になっている間に、モスクワは大欧州から大ユーラシアへと移行しつつあり、今や中国やインドに生産物を安値で売りつけている。

 その結果、ドイツの産業は、アジアの産業に対して競争力を失うことになる。

 ロシアがエネルギー輸出を多様化できる一方で、西側諸国がエネルギー輸入を多様化する能力は、一極集中時代の他の政策によって損なわれてきた。ベネズエラとイランに対する西側の制裁は、必要な時に西側を支援する能力と意欲を失わせてきた。同様に、リビアへの侵攻とそれに続くナイジェリアなどの国の不安定化により、アフリカ諸国による穴埋め能力も低下している。

 一方、米国はシリアの石油を没収している。米国がシリアの領土の不法占拠をやめれば、シリアのエネルギー輸出ははるかに増えるはずだが。


失敗の二の舞

 欧米諸国は、持続不可能な債務、インフレの暴走、競争力の低下、さらにはエネルギー危機によって、経済危機に直面している。エスカレーションはロシアよりもドイツを傷つけるので、論理的に考えれば、ドイツは、一極集中時代の初期に結ばれた汎欧州安全保障協定を破棄するという決定を再検討することによって、エスカレーションを防ぐことができるだろう。
しかし、ベルリンの指導者たちは、イデオロギー的な熱情にかられて、失敗した政策を二転三転させ、理性はどこかに消えてしまった。
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