住民投票以外に私たちの未来を想像できない。ドンバス住民、ロシアへの加盟に投票した理由を説明
<記事原文 寺島先生推薦>
‘I can’t imagine our future differently’: Donbass residents explain why they voted to join Russia
In this dispatch, RT’s correspondent in Donetsk outlines the local reaction to the referendums on reunification
(別の未来は想像できない:ドンバスの住民がロシア編入に賛成票を投じた理由を説明
この速報記事においては、ドネツクのRT特派員が、編入の是非を問う国民投票に対するドンバスの人々の反応を伝える)
出典:RT
2022年9月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年10月8日
投票所で、ルガンスク人民共和国のロシアへの編入の是非を問う住民投票に投票中の若い女性© Sputnik / Evgeny Biyatov
先週、ロシアに再編入する是非を問う住民投票が、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国、および解放されたザポリージャ地方、ヘルソン地方 、ニコラエフ(ニコラエフはヘルソン市に併合された地域) で行われた。
その結果によると、編入への賛成票は、全ての4地域で圧倒的多数を占めた。ドンバスのRT特派員のウラジスラフ・ウゴリヌイは、この8年間、現場の人々の感情を目にしてきた。 以下は、住民投票がどのように行われたか、当該地域の人々にとってこの住民投票はどんな意味があったのか、なぜその投票結果ががそれとは違う結果にはならなかったのかについての、ウゴリヌイの記述だ。
関連記事:Vladislav Ugolny: Ukraine is targeting civilians for retribution in the east while its Western backers turn a blind eye
「編入に反対しない」理由のすべて
ウクライナ国内に在住しているロシア人で、歴史的に見れば故郷であるロシアと結びつこうとしてきた闘いの歴史に精通している人なら、今回の国民投票の結果は全く驚くことではない。しかし、この地域の全ての人が投票に参加できたわけではなかったことを、冒頭で指摘しておくことは価値のあることだ。
2020年、一人の戦士が、戦友に、自分がドネツク人民共和国軍に入ったのは、その地域の水準よりもいい給料が貰えるからだけだ、と語っていた。その時その戦士は、塹壕を掘る任務や、警護の任務につく準備をしている、と言っていた。しかし、軍事作戦が再び激しくなった時には、ユージヌィに向かう、と語っていた。そこはロシアへのバスが出ている駅があるところだ。結局その6ヶ月後に激しい戦闘が再開し、ドンバスで2度目の住民投票が行われることになった。しかしこの戦士は投票には参加しなかった。なぜだろう?言っていた通りに、逃げたのだろうか? 違う。この戦士は2021年に亡くなったのだ。もし彼が生きていたなら、何でも話してくれただろう。戦士というのは話すのが好きだから。戦友がウクライナによる砲撃に晒され、ケガをした戦友たちを救出しなければならなくなったとき、この戦士は志願した。その救助活動のあいだに、彼は亡くなった。戦いが激しくなったことも、新しい住民投票も目にすることなく。
投票所で、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国と、ウクライナ領であるザポリージャ地域とヘルソン地域のロシアへの編入の是非を問う住民投票に一票を投じる男性© Sputnik / Ramil Sitdikov
このように、ドンバスでここ8年間起こってきたことで不幸にさいなまれてきた人々はたくさんいる。 ドンバスの人々は地政学上の人質として、真綿で首を絞められるようにゆっくりと苦しみを味合わわされてきた。-そして、自分たちの土地とアイデンティティのために命を落とす覚悟ができている。ドンバスの人々と、ドンバスの人々の忍耐力のおかげで、ロシアによる軍事攻撃は可能になった。そして今回の住民投票が実施されたのも、ドンバスの人々とその忍耐力のたまものだ。
ドンバスのすべての人々が、そのとき起こっていたことに嫌悪感をもつことについては、たくさんの理由があった。けがをした人はこれまでずっと何度も無視され、けがに対する補償金も支払われることはなかった。さらにこれは、記憶を操作する行為に当たるのだが、ドネツク人民共和国の統治下にないスラヴャンスク市とコンスタンチノフカ市で、ウクライナ人に殺害された子どもたちの名前が、「天使の路地(ウクライナ人に殺害された子どもたちを追悼するための記念碑)」から削除された。これらの名前を外すことで、まるでドネツク人民共和国当局がその領地や、キエフ政権の支配下にとどまっている人々の思い出を放棄している、と思わせているのだ。
関連記事:Leaked documents expose Ukrainian attempts to destabilize Russia and draw NATO into a full-scale war with Moscow
独立して間もない頃、ルガンスク人民共和国は常に政治的な危機に置かれていた。それは、不人気だったイゴール・プロトニツキ政権が勝利したあとのことだ。プロトニツキ政権が退陣した後、彼よりもずっと人気のある レオニード・パセチニクが選ばれた。
「編入に賛成」するすべての理由
再編入を求める声の基盤にあるのは、ロシアが法の支配の元で運営されているしっかりとした国である、という事実だ。ロシアは、国家機関も成熟し、文明社会も確立している国だ。地政学上の対立の前線で生活しているので、ドンバスにいるロシア人たちはいつか戦争がなくなってほしい、と夢見ていた。
ドンバスの人々の望みは、ドンバスが、近隣のロストフ市のように、普通で平和なロシア領の一地方になることだった。さらに人々の望みは、武器を捨て、炭鉱や工場に戻り、砲撃に常にさらされることなく、子どもたちに教育を施すことだった。あるいは、道の落ち葉を掃くことだ。 道路にへばりついた血を落とすことではない。ロシアに編入すれば、それが勝利と同意になるのだ。結局のところ、これが戦闘の始まった理由なのだから。
しかし人々の夢はかなわず、住民投票が戦争のさなかに実施されなければならなくなった。しかもその投票は、キエフが投票所を爆撃する危険にさらされていた。つまり投票行為自体が勝利と栄光の瞬間とはならなかったのだ。しかしこの住民投票をこれ以上遅らせるわけにはいかなかった。というのも、モスクワによる軍事作戦の目的であると宣言されたものの一つに、ドンバスに平和をもたらすこと、というものがあったからだ。
ドネツク人民共和国のドネツク市で、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ウクライナ領のヘルソン地方とザポリージャ地方でのロシア編入の是非を問う住民投票で投票中の女性。Sputnik / RIA Novosti
ドンバスとヘルソン地方とザポリージャ地方を、ウクライナ国家による大虐殺の危険から守る唯一の方法は、ロシア連邦に編入することしかなかった。今月(9月)はじめ町や村がキエフに抑えられたあとにハルキウ地方で行われた掃討作戦や、難民たちを輸送したことは、ウクライナにとって明らかに最後の一撃にすぎないだろう。
これらの地域の人々の中に住民投票に批判的な人々がいる理由は、投票所が砲撃される危険があることだった。現在ドネツク人民共和国軍の一部隊に属している、私の友人の一人は、住民投票に参加することを拒絶した。この友人は、自分を正当化するためにこう語っていた。「自分はずっと前にすでに自分の立場を表明していて、今は手に銃を持つことで自分の立場を守っている」と。
関連記事: Ukraine has taken in at least $100 million in crypto donations this year, but what have officials in Kiev done with the money?
この友人がさらに問うていたのは、なぜ両共和国をロシアに編入することが、ロシア政府の宣言だけで成し遂げられないのか、ということだった。彼の問いはこうだ。「なぜだろう。どんな答がでるか、明白なのに、なぜその答えをみんなに聞こうとするのだろう?」
いうまでもないが、この戦士は別に民主主義の大ファンであるわけではない。
しかし彼の考え方は少数派だ。テロ攻撃を受ける危険はあっても、ドンバスの住民たちは投票所に群れをなしている。答えがはじめから分かりきっている問題だからこそ、人々は、投票所で自分の立場を宣言していた。
記者たちが住民たちから聞かされた話は、どの選択を選ぶについてではなく、このような機会を手にするまでどれだけ待たされたか、という話だった。
住民投票の手続きは、通常の法律の規定を念頭に準備されたが、投票者たち自身は、「無記名投票」という概念は放棄していた。投票者たちは、みんなに見えるように「賛成」のほうにチェックをいれていた。
「ドンバスの人々が住民投票を求めたのは、自分たちの選択を再度主張するためではありません。そんな主張は、2014年にすでに行われていたことで、それ以来何も変わっていないのですから。そうではなく、この機会を利用して、国際社会にこの枠組みを何らかの形で受け入れてもらう目的なのです」ドネツク国立大学の政治学部の一人の院生が、投票後にこう語っていた。この女性は、脚のけがのせいで投票所にいけなかったが、戸別投票により賛成票を投じた。
「近くで爆発の音を聞きながら、雨の中、私は家の裏庭の移動投票箱の前に立ったとき、うれしく思いました。というのも私にとっては、この投票は長い沈黙のあとの第一歩だったのですから」
ドンバスの国境地帯にあるエナキエヴエ市の住民であるドミトリーさんは、こう語っていた。「もちろん、私はこの住民投票をずっと待っていて、賛成に票を投じました。それ以外の未来は想像できません。戦争の現実を目にしなくて済むように、2015年から何度も、私は故郷を離れ、ウクライナに住む機会を与えられてきました」
「ご存じの通り、私はその誘いには乗りませんでした。住民投票に参加することが、私ができる最大の貢献ではありませんでしたが、私は投票ができてうれしかったです。疑いなくそう思えたのは、投票の約40分後に、HIMARS(高機動ロケット砲システム)ミサイル が投票所に発射され、近所に榴散弾が着弾したからです」
ドンバスでの住民投票はこのように行われたのだ。ザポリージャ地方やヘルソン地方においては、この住民投票は他地域ほどはお祭り騒ぎではなかった。それはウクライナの国家安全業務による監視があり、さらに妨害される危険も大きかったからだ。しかも他の地域のように8年間待たされたという状況もなかったからだ。しかしそんな中でも、人々はハルキウで起こった悲劇の再現を望んではいなかった。
行われた住民投票は、婚約8年後の結婚のようなものだ。なぜもっと早く実施されなかったかの推測にはいろいろあるかもしれないが、出る答えは明白だ。
By Vladislav Ugolny, a Russian journalist based in Donetsk
‘I can’t imagine our future differently’: Donbass residents explain why they voted to join Russia
In this dispatch, RT’s correspondent in Donetsk outlines the local reaction to the referendums on reunification
(別の未来は想像できない:ドンバスの住民がロシア編入に賛成票を投じた理由を説明
この速報記事においては、ドネツクのRT特派員が、編入の是非を問う国民投票に対するドンバスの人々の反応を伝える)
出典:RT
2022年9月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年10月8日
投票所で、ルガンスク人民共和国のロシアへの編入の是非を問う住民投票に投票中の若い女性© Sputnik / Evgeny Biyatov
先週、ロシアに再編入する是非を問う住民投票が、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国、および解放されたザポリージャ地方、ヘルソン地方 、ニコラエフ(ニコラエフはヘルソン市に併合された地域) で行われた。
その結果によると、編入への賛成票は、全ての4地域で圧倒的多数を占めた。ドンバスのRT特派員のウラジスラフ・ウゴリヌイは、この8年間、現場の人々の感情を目にしてきた。 以下は、住民投票がどのように行われたか、当該地域の人々にとってこの住民投票はどんな意味があったのか、なぜその投票結果ががそれとは違う結果にはならなかったのかについての、ウゴリヌイの記述だ。
関連記事:Vladislav Ugolny: Ukraine is targeting civilians for retribution in the east while its Western backers turn a blind eye
「編入に反対しない」理由のすべて
ウクライナ国内に在住しているロシア人で、歴史的に見れば故郷であるロシアと結びつこうとしてきた闘いの歴史に精通している人なら、今回の国民投票の結果は全く驚くことではない。しかし、この地域の全ての人が投票に参加できたわけではなかったことを、冒頭で指摘しておくことは価値のあることだ。
2020年、一人の戦士が、戦友に、自分がドネツク人民共和国軍に入ったのは、その地域の水準よりもいい給料が貰えるからだけだ、と語っていた。その時その戦士は、塹壕を掘る任務や、警護の任務につく準備をしている、と言っていた。しかし、軍事作戦が再び激しくなった時には、ユージヌィに向かう、と語っていた。そこはロシアへのバスが出ている駅があるところだ。結局その6ヶ月後に激しい戦闘が再開し、ドンバスで2度目の住民投票が行われることになった。しかしこの戦士は投票には参加しなかった。なぜだろう?言っていた通りに、逃げたのだろうか? 違う。この戦士は2021年に亡くなったのだ。もし彼が生きていたなら、何でも話してくれただろう。戦士というのは話すのが好きだから。戦友がウクライナによる砲撃に晒され、ケガをした戦友たちを救出しなければならなくなったとき、この戦士は志願した。その救助活動のあいだに、彼は亡くなった。戦いが激しくなったことも、新しい住民投票も目にすることなく。
投票所で、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国と、ウクライナ領であるザポリージャ地域とヘルソン地域のロシアへの編入の是非を問う住民投票に一票を投じる男性© Sputnik / Ramil Sitdikov
このように、ドンバスでここ8年間起こってきたことで不幸にさいなまれてきた人々はたくさんいる。 ドンバスの人々は地政学上の人質として、真綿で首を絞められるようにゆっくりと苦しみを味合わわされてきた。-そして、自分たちの土地とアイデンティティのために命を落とす覚悟ができている。ドンバスの人々と、ドンバスの人々の忍耐力のおかげで、ロシアによる軍事攻撃は可能になった。そして今回の住民投票が実施されたのも、ドンバスの人々とその忍耐力のたまものだ。
ドンバスのすべての人々が、そのとき起こっていたことに嫌悪感をもつことについては、たくさんの理由があった。けがをした人はこれまでずっと何度も無視され、けがに対する補償金も支払われることはなかった。さらにこれは、記憶を操作する行為に当たるのだが、ドネツク人民共和国の統治下にないスラヴャンスク市とコンスタンチノフカ市で、ウクライナ人に殺害された子どもたちの名前が、「天使の路地(ウクライナ人に殺害された子どもたちを追悼するための記念碑)」から削除された。これらの名前を外すことで、まるでドネツク人民共和国当局がその領地や、キエフ政権の支配下にとどまっている人々の思い出を放棄している、と思わせているのだ。
関連記事:Leaked documents expose Ukrainian attempts to destabilize Russia and draw NATO into a full-scale war with Moscow
独立して間もない頃、ルガンスク人民共和国は常に政治的な危機に置かれていた。それは、不人気だったイゴール・プロトニツキ政権が勝利したあとのことだ。プロトニツキ政権が退陣した後、彼よりもずっと人気のある レオニード・パセチニクが選ばれた。
「編入に賛成」するすべての理由
再編入を求める声の基盤にあるのは、ロシアが法の支配の元で運営されているしっかりとした国である、という事実だ。ロシアは、国家機関も成熟し、文明社会も確立している国だ。地政学上の対立の前線で生活しているので、ドンバスにいるロシア人たちはいつか戦争がなくなってほしい、と夢見ていた。
ドンバスの人々の望みは、ドンバスが、近隣のロストフ市のように、普通で平和なロシア領の一地方になることだった。さらに人々の望みは、武器を捨て、炭鉱や工場に戻り、砲撃に常にさらされることなく、子どもたちに教育を施すことだった。あるいは、道の落ち葉を掃くことだ。 道路にへばりついた血を落とすことではない。ロシアに編入すれば、それが勝利と同意になるのだ。結局のところ、これが戦闘の始まった理由なのだから。
しかし人々の夢はかなわず、住民投票が戦争のさなかに実施されなければならなくなった。しかもその投票は、キエフが投票所を爆撃する危険にさらされていた。つまり投票行為自体が勝利と栄光の瞬間とはならなかったのだ。しかしこの住民投票をこれ以上遅らせるわけにはいかなかった。というのも、モスクワによる軍事作戦の目的であると宣言されたものの一つに、ドンバスに平和をもたらすこと、というものがあったからだ。
ドネツク人民共和国のドネツク市で、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ウクライナ領のヘルソン地方とザポリージャ地方でのロシア編入の是非を問う住民投票で投票中の女性。Sputnik / RIA Novosti
ドンバスとヘルソン地方とザポリージャ地方を、ウクライナ国家による大虐殺の危険から守る唯一の方法は、ロシア連邦に編入することしかなかった。今月(9月)はじめ町や村がキエフに抑えられたあとにハルキウ地方で行われた掃討作戦や、難民たちを輸送したことは、ウクライナにとって明らかに最後の一撃にすぎないだろう。
これらの地域の人々の中に住民投票に批判的な人々がいる理由は、投票所が砲撃される危険があることだった。現在ドネツク人民共和国軍の一部隊に属している、私の友人の一人は、住民投票に参加することを拒絶した。この友人は、自分を正当化するためにこう語っていた。「自分はずっと前にすでに自分の立場を表明していて、今は手に銃を持つことで自分の立場を守っている」と。
関連記事: Ukraine has taken in at least $100 million in crypto donations this year, but what have officials in Kiev done with the money?
この友人がさらに問うていたのは、なぜ両共和国をロシアに編入することが、ロシア政府の宣言だけで成し遂げられないのか、ということだった。彼の問いはこうだ。「なぜだろう。どんな答がでるか、明白なのに、なぜその答えをみんなに聞こうとするのだろう?」
いうまでもないが、この戦士は別に民主主義の大ファンであるわけではない。
しかし彼の考え方は少数派だ。テロ攻撃を受ける危険はあっても、ドンバスの住民たちは投票所に群れをなしている。答えがはじめから分かりきっている問題だからこそ、人々は、投票所で自分の立場を宣言していた。
記者たちが住民たちから聞かされた話は、どの選択を選ぶについてではなく、このような機会を手にするまでどれだけ待たされたか、という話だった。
住民投票の手続きは、通常の法律の規定を念頭に準備されたが、投票者たち自身は、「無記名投票」という概念は放棄していた。投票者たちは、みんなに見えるように「賛成」のほうにチェックをいれていた。
「ドンバスの人々が住民投票を求めたのは、自分たちの選択を再度主張するためではありません。そんな主張は、2014年にすでに行われていたことで、それ以来何も変わっていないのですから。そうではなく、この機会を利用して、国際社会にこの枠組みを何らかの形で受け入れてもらう目的なのです」ドネツク国立大学の政治学部の一人の院生が、投票後にこう語っていた。この女性は、脚のけがのせいで投票所にいけなかったが、戸別投票により賛成票を投じた。
「近くで爆発の音を聞きながら、雨の中、私は家の裏庭の移動投票箱の前に立ったとき、うれしく思いました。というのも私にとっては、この投票は長い沈黙のあとの第一歩だったのですから」
ドンバスの国境地帯にあるエナキエヴエ市の住民であるドミトリーさんは、こう語っていた。「もちろん、私はこの住民投票をずっと待っていて、賛成に票を投じました。それ以外の未来は想像できません。戦争の現実を目にしなくて済むように、2015年から何度も、私は故郷を離れ、ウクライナに住む機会を与えられてきました」
「ご存じの通り、私はその誘いには乗りませんでした。住民投票に参加することが、私ができる最大の貢献ではありませんでしたが、私は投票ができてうれしかったです。疑いなくそう思えたのは、投票の約40分後に、HIMARS(高機動ロケット砲システム)ミサイル が投票所に発射され、近所に榴散弾が着弾したからです」
ドンバスでの住民投票はこのように行われたのだ。ザポリージャ地方やヘルソン地方においては、この住民投票は他地域ほどはお祭り騒ぎではなかった。それはウクライナの国家安全業務による監視があり、さらに妨害される危険も大きかったからだ。しかも他の地域のように8年間待たされたという状況もなかったからだ。しかしそんな中でも、人々はハルキウで起こった悲劇の再現を望んではいなかった。
行われた住民投票は、婚約8年後の結婚のようなものだ。なぜもっと早く実施されなかったかの推測にはいろいろあるかもしれないが、出る答えは明白だ。
By Vladislav Ugolny, a Russian journalist based in Donetsk
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