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数十の米銀がSVBの破綻劇を繰り返す危険性 (研究論文による警鐘)

<記事原文 寺島先生推薦>

Dozens of US banks at risk of repeating SVB collapse – study

出典:RT

2023年3月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月30日


Pgiam / Getty Images


他の多くの金融機関も金利の急速な引き上げにより、前例のない規模の損失から逃れられずにいる

 200近い米国の銀行が、破綻と倒産に追い込まれたシリコン・バレー銀行(SVB)のようになる危険があるという報告書が、オンライン上の研究発表機関である「社会科学研究ネットワーク」に今週(3月第3週)掲載された。米国の大手金融業者であるSVBは、科学技術分野や新規事業立ち上げ分野への投資に力を入れてきた銀行だったが、先週、大規模な預金流出が生じたことを受け、規制当局により閉鎖された。

 この報告書においては、著名な米国の大学の経済学者4人が、最近の金利の高騰により米国の銀行が保持している資産がどれほどの市場価値の損失を出すかの推論が行われている。

 2022年3月7日から2023年3月6日の間に、フェデラル・ファンド・レート(米国の市中銀行が連邦準備銀行に預けている資金の金利)は、0.08%から4.57%にまで急騰した。そしてこの急騰に対応して量的引き締め*策が取られた。その結果、 賃借対照表**に記載されている銀行の資産同様、銀行の長期資産の価値も同時期に大きく下落している」とその報告書にはある。
* 中央銀行が保有する資産を圧縮することで、市場に出回る金の量を減らしていくこと
** 一定時点の財政状況が記載されているもの


 金利が高くなれば、高い利率での貸付が可能となるため、銀行にとって利益が出るが、米国の銀行の多くは余剰金の大部分を米国債の買い付けに当てている。この買い付けは金利がほぼゼロの時になされたものだ。いまやこれらの国債の価値は、利率の高騰のせいで大きく下落している。投資家たちは高い利率のある新たに発行された国債を買えば済むようになったからだ。銀行が所有する資産の価値は下落しているのに、その実感が伴っていないということは、有価証券の価値が下がっているのに、その損失はまだ「書類上」でしかないということになる。

 問題が生じるのは、取り付け騒ぎ*が起こり、銀行が自行所有の有価証券を売らざるを得なくなった時だ。これは深刻な損失になるが、預金者に預金を返すためには、そうせざるを得ない。極端な場合、そのせいで銀行は支払不能状態になることもある。あるいはSVBの場合と同じように、銀行に対する信頼が失われて、取り付け騒ぎが発生する可能性もある。
* 預金者が殺到して預金を銀行から引き出すこと

 この報告書の執筆者たちは、米国の金融業者が、無保険預金として所有している資本額を調査している:その割合が高いほど、取り付け騒ぎが起こる見通しは高くなる。例えば、SVBにおいては、預金者の92.5%が無保険預金であり、たった2日間の預金流出により破綻に追い込まれた。この報告書の執筆者たちの見積もりでは、無保険預金の半分が引き出されれば、全ての預金者に預金支払いを行えなくなる銀行が米国に186行あるという。




関連記事:米国の銀行危機が西側の金融体制の崩壊に繋がる過程


 「私たちの推論から示唆されることは、これらの銀行には、取り付け騒ぎが生じる危険が確実に存在しているということだ。それを防ぐには、政府が介入や資本注入を行わないといけないだろう。(中略)。結局のところ、これらの推論から示唆されるのは、銀行の所有資産の価値の大幅な下落により、米国の銀行体制の脆弱化が加速され、無保険預金に対する取り付け騒ぎの発生が危惧されるという点だ」とこれらの経済学者は結論づけ、危険な状態にある銀行の数は、ずっと「深刻な数」になる可能性があるとした。そしてそれは、「取り付け騒ぎによる銀行の持ち株の投げ売りが小規模でおさまったとしても同じだ」という。

 SVBの破綻は、米国の銀行業界全体に波紋を投げかけ、シグニチャー銀行という別の銀行の閉鎖にも繋がった。他の多くの金融機関においても、株価が下落し、ウォール街の六大銀行は、時価総額で1650億ドルほどの損失を出している。これは各行の複合資産の13%程度になる。今週(3月第3週)はじめの格付け会社であるムーディーズは、米国の銀行体制の評価を「安定した状態」から「良くない状態」に下げたが、その理由は「運営状況が急速に悪化しているため」としていた。
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CIAの別働隊がジョージアで色彩革命の脅威をつくりだしている

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA Front Threatens Color Revolution in Georgia

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:Internationalist 360

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月31日

グルジア 1
世界中でカラー革命を煽る大富豪ジョージ・ソロス(左)、USAID長官サマンサ・パワー(右)


 2023年3月の第2週、ジョージア(旧名グルジア)の首都トビリシで、数千人が街頭に繰り出した。そして「海外からの収入が20%を超えるNGO」に「外国代理人」としての登録を義務付ける法律案に激しい憤りをぶつけた。

 彼らは警察と激しく衝突し、あらゆる場所に反ロシアの落書きをし、反乱的で好戦的なスローガンを唱え、EU、ジョージア、ウクライナの国旗をあたり構わず目立つように掲げた。EUと米国の当局者は、これらの広く報道された光景にぴったりするような、敵意あるコメントが絶え間なく流した。

 悪名高い戦争タカ派でUSAID(米国国際開発庁)長官のサマンサ・パワーは、ジョージアの国会議員に「外国代理人」法の提案を「取り下げ」よう呼びかけた。そして、この新法は「欧州-大西洋地域に関わるジョージアの将来像とジョージア人が経済的社会的その他の願望を実現する能力・技量を深刻に脅(おびや)かすものである」という、不可解な宣言をした。

 ジョージアの提案する外国代理人法は、欧州=大西洋に関わるジョージアの将来像と、ジョージア人が経済的社会的その他の願望を実現する能力・技量を深刻に脅(おびや)かすものである。私はジョージア議会に対し、これらの法案の取り下げを要請する。―サマンサ・パワー (@PowerUSAID) 2023年3月2日

 米国務省のネッド・プライス報道官は、外国代理人法に賛成したジョージアの議員に対し、威嚇的にこう警告した。「トビリシが期待している欧州=大西洋地域との将来関係が危うくなった場合」、その責任をおまえたちが負うことになるぞ、と脅迫したのである、さらに、この法律は「ジョージア人が自分たちのために描いた将来像、そして私たち米国が仲間として、その実現を援助し続けることを決意している将来像」と「一致しない」と断言した。

 ワシントンが外国代理人法に猛反対するのは驚くべきことではない。ジョージアのメディアや人権団体を含めた数千の団体は、過去30年間にわたって、全米民主化基金(NED)と米国国際開発庁(USAID)から資金提供を受けてきた。ちなみに、サマンサ・パワーは現在、USAID長官である。この隠しようもない事実、だが今まできちんと知られてこなかった事実を、これ以上に暴露するような改革は、今後、難しい問題を引き起こすだろう、その法案は、これら数千の団体の自立性と、これらの団体がこれまで追求してきて邪悪な目的について、答えることが難しい問題を提起するからだ。

 これらの数千の団体が米国からの資金提供の実態を隠蔽しなければならないことは、これらのNGOが公然とトビリシでの抗議活動の最前線に立っていることによって、十分に証明された。この法案が成立すれば、NEDから資金提供を受けているNGOの多くが、その海外資金を公開しなければならなくなるわけだから、ソーシャルメディアを使って不服の声を上げたのも当然だ。

 トビリシの国会議事堂前に集まった数千人が議事堂を襲撃する直前に、幸いにも、ジョージア政府は外国代理人法を撤回した。NEDとの関係を法律で公然と認めなければならなくなることを、抗議者たちが全面的に拒否した理由は何だろうか。

 NED(全米民主化基金)は1983年に設立されたのは、アメリカの諜報機関CIAが数々の恥ずべきスキャンダルに巻き込まれ、世間を騒がせた後のことである。このNEDの設立には、当時の中央情報局(CIA)長官であったウィリアム・ケーシーが中心的な役割を果たした。ケーシーは、「敵国政府を不安定化させ崩壊させるための武器となるような、海外の反政府グループやメディア、その他の反政府活動家に資金を提供する公的な仕組み」を構築しようと考えたのである。裏工作によって「敵国政府を不安定化させ崩壊させる」ことは、これまでCIAの専売特許であったものだが、もはやそれができなくなったからだ。それでそのことを可能にするような公的仕組みをつくろうとしたわけである。

 かくしてつくりあげられたNED(全米民主化基金)は、非常に狡猾な組織でありながら、ほとんどその実態は明らかになっていない。だから、この組織のおかげで、帝国アメリカは、いつでも外国政府を屈服させ、その政府が内外の問題でワシントンの承認する道から少しでも外れることがあれば、必要に応じて、その政府を完全に転覆させることができる。グルジアの2003年の「バラ革命」は、その見事な実例を提供している。


CIAは「落書き」アーティストにまで金をばらまく

 NEDは発足後すぐに東欧の共産主義撲滅に乗り出し、ポーランドの「連帯」のような活動家組織とその運動を支援した。しかし、ユーゴスラビアは今世紀に入るまで、NEDの干渉をかたくなに拒み続けた。2000年12月のワシントンポスト紙の非常に正確で詳細な調査報道は、次のような事実を詳細に描き出した。すなわち、それより2カ月前の10月に、ユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチ大統領をついに追放した自然発生的「草の根」反乱は、実はCIAの前線部隊であるNEDやUSAIDが密かに資金と指示を出していたのである。

 ミロシェビッチ大統領を貶(おとし)めるために、チューインガムや炭酸飲料を販売していた米国の広告業のプロたちが、キャッチーなスローガンや人目を引くPRその他の今までにない宣伝方法を考案していた。また事前かつ現地で大規模な世論調査が水面下で実施され、そのため無数の市場調査用の消費者グループが結成された。それは売り込み戦略を路上で検証し完全に成功させるためだった。一方、国会議員候補者や活動家たちは、ジャーナリストの質問に答え、ミロシェビッチ支持者の主張に効果的に反論するために、あらかじめ「指示されたとおりに」行動する術を密かに指導された。

 学生活動家集団オトポール(Otpor、セルビア語で「抵抗」の意)にも、広範な訓練と支援が提供された。彼らは破壊的ではあるが非暴力的な手段によって政府権力を弱体化させる様々な方法を学んだ。たとえば、ストライキの組織化、シンボルを巧く使って大衆に宣伝する方法、「恐怖克服」の方法、その他。

 USAIDは、学生活動家が国中に反ミロシェビッチの落書きをするために5000本のスプレー缶を提供した。またオトポールは、ワシントンからの資金で、「世論調査、ビラまき、有料広告など、幅広い高度な広報技術」も採用した。その宣伝文言はすべて米国が資金提供した世論調査に基づいていた。だから「どんなときでも国民に何を言うべきかわかっていた」と、このグループの活動家の一人は自慢げに語った。

 「私たちの方法は、企業の販売戦略を政治に活用することだった。つまり政治運動もマーケティング部門を持たなければならないということだった。コカ・コーラをモデルにしたんだ」と、2005年にオトポールの指導者が明かした。


グルジア 2
2001年3月30日、セルビアのベオグラード。獄に捕らわれたスロボダン・ミロシェビッチ大統領のポスター。「彼を収容するのはいつになるか?」という、「人民運動オトポール」の宣伝文句が付けられている。Darko Vojinovic|AP


 CIA、NED、USAIDなどの米国政府機関によって、わずか1年の間に、公然かつ隠然と、合計数千万ドルが反ミロシェビッチのために投入された。当時、ユーゴスラビアの人口は約1000万人で、実質的に国民1人に数ドルの資金が割り当てられたことになる。

 ユーゴスラビアの平均月給が30ドル以下であったことを考えると、この資金は実に巨大な意味をもち、政権交代の足がかりとなる人員を簡単に集めることができたのである。同じことをユーゴにしたと考えると、人口比で勘定すれば、ベオグラード(セルビア政府)が米国の大統領選挙に影響を与えるために何十億ドルも費やすようなものだ。もちろん、そんなことはアメリカで合法であったり容認されたりするわけではないが。

 オトポールの成功は目覚ましく、大手メディアでの知名度も上がり、オトポールはビデオゲーム「もっと強い部隊、A Force More Powerful」の開発を始めた。プレイヤーは「実際の紛争で成功した方法を用いて、独裁者・軍事的占領者・腐敗した支配者に対抗する方法」を学ぶことになる。「最近の歴史から着想を得た」「12通りの別々の筋書き」を通してである。このビデオゲームは「非暴力抵抗運動や反対運動の活動家や指導者が使う」ことを意図しており、メディアや一般市民が変革の技術をより広く学ぶことを期待したものだった。

 オトポールによる変革の手順・見取り図は、2006年3月に発表され、その後数年以上も、繰り返し世界中に輸出された。NEDが提供したのである。この国際貿易の最初の輸出先はがジョージアだったというわけである。


政権転覆集団「クマラ(グルジア語でウンザリの意)」なんか、もうウンザリ・・・

 シュワルナゼは1970年代初頭から共産党第1書記としてグルジアを統治していた。その後、ソ連のベテラン政治局員となり、ミハイル・ゴルバチョフ政権では外務大臣・重要な改革派として冷戦終結に大きな役割を果たした。特に、アフガニスタン戦争の終結、ドイツの再統一、ヨーロッパからの赤軍の撤退、アメリカとの核兵器条約の交渉などである。

 ソ連崩壊後の1992年にシュワルナゼがグルジア大統領に就任した背景には、「ロシア支援のアブハジアと南オセチアの離脱運動」と「独立したばかりのグルジア共和国の装備不足の軍隊」が激しく対立する流血の内戦があった。この混乱を立て直すため、1992年3月、シェワルナゼは、グルジア国家評議会議長に選ばれた。最初は親露派であったが、1995年8月新憲法が採択され、11月大統領に選出されてからは反露派となり、彼の統治下でモスクワとトビリシの関係は概して良好ではなかった。

 一方、欧米諸国との関係は極めて良好であった。彼が指揮・監督した大規模な民営化は、アメリカやヨーロッパのオリガルヒを潤し、1997年の民法改正は外国資本の何千ものNGOの創設に道を開いた。トビリシは瞬く間に、米国の資金援助と軍事援助の最大の受益者のひとつとなった。シュワルナゼが大統領になってから10年目(2002)の終わりには、シュワルナゼはNATOと戦略的相互関係を結び、EUへの加盟を希望していることを明らかにした。

 2000年、オープンソサエティ財団の支部設立のためにトビリシを訪れたジョージ・ソロスは、シュワルナゼの個人的な賓客として歓迎された。ソロスは、当時のグルジア司法大臣ミヘイル・サアカシュヴィリにも会っている。サアカシュヴィリは国務省の奨学金で留学した米国のエリート大学を卒業した人物だ(そのエリート大学にはコロンビア大学も含まれている)。

 それから間もなく、若きサアカシュヴィリは鮮やかな転身を図って司法大臣を辞め、オープンソサエティ財団の支援を受けて政党「国民運動」を設立した。TV局ルスタビ2(Rustavi-2)を含む野党メディアへの、従来からあるソロスの資金提供も同様に強化された。そして、これらのメディアはシュワルナゼに対する批判的な発信をおこなった。それは、シュワルナゼ大統領をとりわけ醜く描いた風刺漫画や国家汚職に関する集中的な調査という形をとったのである。このようすを、トロント・グローブ・アンド・メール紙は、2003年2月、ソロスがグルジア政府を「打倒するための煉瓦を積み始めた」と、報じている。

 NEDとオープンソサエティ財団の支援を受けたグルジアの活動家ギガ・ボケリアは、2003年、「自由協会、リバティ・インスティチュート」を創設したNGOオトポールと会うためにセルビアに遣された。その結果、オトポールの代表者は、グルジアの首都トビリシに飛び、そこでシュワルナゼを平和的に打倒する方法を数千人に教えた。

その教えを受けて、彼らは、自分たちの「革命」集団を結成した(カッコ付きの「革命」集団で、実は政権転覆工作集団)。クマラとして知られるこの団体は、オトポールがミロシェビッチ大統領を追い落とした名声と宣伝戦略を大いに利用した(Kmara、グルジア語で「もういい、ウンザリ」の意)。NEDとオープンソサエティ財団の大規模資金が即座に流れ込んだ。

 この資金注入により、クマラは2003年11月のグルジアの大統領選挙に向けて、さまざまな宣伝物と戦略を開発することができた。投票前の10日間、TV局ルスタビ2はミロシェビッチ打倒のための米国のドキュメンタリー映画『独裁者打倒(Bringing Down a Dictator)』を繰り返し放送した。
訳注:Bringing Down a Dictator 2002年。セルビアの指導者スロボダン・ミロシェビッチの非暴力的敗北についての56分のドキュメンタリー。学生主導のオトポールの貢献に焦点を当てている。

グルジア 追加 1

 「最も重要だったのは映画だった」と、この国民運動の代表者は後に語っている。「映画を観せられたデモ隊は皆、ベオグラード(セルビアの首都)での政権転覆戦術を暗記していた。だから皆、何をすべきか知っていた。これはセルビアの政権転覆を丸写ししただけで、その音量を大きくしただけだった」

 選挙は、公式発表では親シュワルナゼ派の政党連合が勝利した。しかし、NEDの依頼でおこなわれた出口調査では、「公式結果は不正であり、野党勝利が明らかである」との情報が、すぐに、しかも投票が終わる前に流され始めた。トビリシの国会議事堂には、全国から集まった大勢の反政府活動家たちが、カッコ付き「革命」集団クマラが費用を負担したバスで押し寄せた。

 外にはスピーカーと映画スクリーンが設置され、TV局ルスタビ2がNEDによる反対世論の調査(出口調査)を最も顕著に伝える道具となり、若い活動家たちによる抗議活動の様子も映し出された。クマラが率いる全国的なデモは数週間にわたっておこなわれ、2003年11月23日には、活動家たちがバラの花を振り回して国会を襲撃し、運動は最高潮に達した。翌日、シュワルナゼは辞任した。

グルジア 3
ジョージ・ソロス(GEORGIA SOROS)の模擬葬儀:サアカシュヴィリのお面をかぶったジョージアのデモ隊が、ジョージ・ソロスの人形の入ったUSドルが貼られた棺を運ぶ(2005年12月14日、トビリシ)。ジョージ・アブダラゼ|AP
(訳註:ソロス資金のおかげで大統領になったサアカシュヴィリは、独裁者となり、エリートの腐敗と貧困問題は依然として解決されなかった。)



「ひどく期待はずれ」な革命

 2004年1月、サアカシュヴィリは大統領に就任した。その後10年間、彼はグルジア経済をさらに「自由化」し、残存する国営産業の民営化を加速させ、広範な反腐敗活動を主導し、国防費をGDPの9.2%という驚異的な水準にまで高めた。

 米国政府関係者やTI(Transparency International国際透明性機構)、世界銀行などの団体は、サアカシュヴィリがグルジアを最もビジネスのしやすい国のひとつにし、2003年から2013年にかけて70%の経済成長を遂げ、その間に一人当たりの所得は約3倍になったと評価した。しかし、帝国アメリカの機関誌「フォーリン・ポリシー」でさえ、「バラ革命」の結果は「ひどく期待はずれ」だったと認めている。遠大な変革は「実際には実現せず」、「エリートの腐敗は依然として続いている」からである。

 サアカシュヴィリが大統領を退任するまでにグルジアの貧困はわずかに減少しただけで、人口のおよそ4分の1は依然として絶対貧困率以下で暮らしていた。さらに言えば、グルジアは権威主義そのもので、民主主義のかけらもなかった。実際、サアカシュヴィリの支配は、多くの点で、シュワルナゼにはなかったような独裁主義であった。

 例えば、サアカシュヴィリは「超大統領」機構に代わって、さらに権限を集中した「超々大統領」機構を導入し、主要な分野で彼に一方的な権力を付与した。この権限を使って、自分の政策に反対する政党を追放しようとするなど、独裁的な策略が目白押しであった。

グルジア 5
バラク・オバマ、ミハイル・サアカシュヴィリ、デイヴィッド・キャメロン。
2012年5月21日、シカゴで開催されたNATOサミットで、サアカシュヴィリ(右)、英国のキャメロン首相と話すオバマ大統領。パブロ・マルティネス・モンシヴァイス|AP


 さらに深刻なのは、ザルブ・ジュバニア首相のような不審死への関与も疑われていることだ。サアカシュヴィリはグルジアの治安部隊に指示して、オリガルヒのバドリ・パタルカツィシヴィリなどのライバルを暗殺させたことで知られ、サアカシュヴィリの命令で刑務所は拷問とレイプの政治的温床となった。サアカシュヴィリの在任中、同国の受刑者数は4倍の2万5千人に達し、国民一人当たりの受刑者数はヨーロッパのどの国よりも多くなった。

 2012年10月の大統領選挙では、サアカシュヴィリの死に物狂いの不正工作(NEDの必死の支援があった)にもかかわらず、彼は政権を失った。それ以来、政党「グルジアの夢、ジョージアンドリーム」率いる連合がこの国を統治している。国内の反対派および海外のキエフ支持者は、ジョージアのこの政党が親クレムリンであると非難している。NED出資の「恥の連合、Shame Network」は最近の反政府運動の先陣を切った。

 しかし、実際には、「ジョージアンドリーム」党は、EUおよびNATOへの加盟を推進しながら西側との関係を強化、そしてモスクワとの共存を維持するという微妙なバランスを常に取ってきた。ロシアのウクライナ進攻の後、これを維持するのはますます難しくなり、トビリシに対して、はるかに大きく豊かで強力な隣国、すなわちジョージアにとって最大の貿易相手国の一つ、ロシアに制裁を課し、キエフに武器を送るようにという欧米の圧力が常に高まっている。

 2022年12月、イラクリ・ガリバシビリ首相は、同年2月24日以来、キエフからロシアにたいする「第二戦線」を開くよう繰り返し要請されたがそれを拒否したことは、温かくは迎え入れられなかった、と述懐している。

 トビリシ(ジョージア政府)が全面衝突を避けたいのは当然で、それは特に2008年8月のロシア=グルジア戦争における悲惨な敗走のためである。この戦争は、サアカシュヴィリが米国の後押しでアブハジアと南オセチアの民間人陣地を攻撃し始めたことに始まる。わずか5日間であったにもかかわらず、20万人もの人々が避難し、数百人が死亡した。

 政権党「ジョージアンドリーム」が特に外国代理人法を導入しようとしたのは、ロシアにたいする「第二戦線」を開いてロシアに制裁を加えることを従順に受け入れる政府のつくろうとするNEDの画策を阻止するためではなかったか考えられる。


あえてクーデターと呼ぶ?

 控えめに言っても、NEDとUSAIDの指紋は、2014年2月のウクライナのマイダン・クーデターの至るところに付着していた。カッコ付きの「革命」(すなわち政権転覆・クーデター)のあらゆる段階で、両団体が資金提供した個人や組織が主役を演じていた。

 オレフ・リバチュク(Oleh Rybachuk)は、マイダン・クーデターに至るまで、何年も、USAIDが資金提供したいくつかの反対派集団を引き回してきた人物だが、洗脳して騒動を起こしてきたことをあからさまに語っている。その2年前のマイダン・クーデターについても、キエフの10年前の「オレンジ革命」についても、「もう一度やりたい、是非やりたい」と言っているのだ。その資金を提供した大富豪ジョージ・ソロスも、2014年5月、自身のオープンソサエティ財団がマイダン関連の事件で「重要な役割を果たした」とCNNに語っている。

 しかし、現在のところ、メディアは、マイダン・クーデターを煽動したことに対して米国が果たした役割を無視するか、あるいは、それはロシアの「偽情報」だとか陰謀論だとして、この命題を否定している。ウクライナ紛争が始まって以来、欧米のジャーナリストたちが躍起になって否定しようとしているのは、この騒動が(普遍的に受け入れられるものではないにせよ)圧倒的人気を博した「民衆反乱」以外の何ものでもなかったいう意見である。ミロシェビッチやシュワルナゼらの打倒にワシントンが果たした役割を自慢するような主流メディアは、明らかに以上のような事実を抹殺している。

 このような動かしようのない事実の抹殺は、世界中でNEDやUSAIDに対する敵意が高まり、政府がこれらNEDやUSAIDの活動を制限したり全面的に禁止したりしようとする動きが広まっているからだろう。特にワシントンが特に敵意を抱いている政府が、そのような動きに出るのは当然だろう。だからこそ、NEDやUSAIDの存在理由と活動方法のおぞましい実態を、欧米のジャーナリストが語らなくなっただけでなく、激しく否定すらするようになった。

 だから結局、大手メディアは、敵国と目されている国の指導者の言うことは真実であると認めることができなくなったのである。その代表例が、2015年7月の英紙ガーディアンの報道である。ガーディアン紙は、モスクワが外国代理人法に基づいてNEDを禁止し国外追放した件では、驚くべきことに、NEDの活動を説明するために自分で事実関係を調べるのではなく、NEDのウェブサイトから引用した短い文章を丸写しただけだった。その一方、2004年11月、その同じガーディアン紙は、その年のウクライナの「オレンジ革命」はNEDとUSAIDによる完全な画策だったということを、とくとくと自慢げに説明していたのである。

 したがって今や、強い政治的圧力をかけて海外での騒乱に外国が介入しているという主張は、大手メディアでは、ほとんど常に反撃の対象となっている。つまりデモ参加者には「行為主体性」があり、彼らの訴えは「正当な不満」だとアピールし反撃する。要するに、彼らは外国勢力によって指示されたとおりに行動しているわけではなく、抗議の内容も正当な不満であり外国勢力による入れ知恵ではないというわけである。しかし、最近トビリシで起きた扇動的な出来事では、このような訴えはまったく空虚に響く。米国政府高官の非難や声明と軌を一にして、外国代理人法の比較的些細な規制改正にこれほど大きな関心が組織的に沸き起こったことは想像を絶することだ。

 しかし、今のところ政権交代の流れは再び明確になっており、今回の抗議行動は単なる警告射撃に過ぎないように思われる。政府がこれほど簡単に屈服したのは、NEDが支援する現地の人的資産(NGO)によって革命が勃発する切迫した危険性を認識したからにほかならない。しかし、アメリカ帝国をなだめることができたとはいえ、脅威がなくなったわけではない。NEDがトビリシで活動する限り、この脅威は日常的な存続の危機であり続けるだろう。

写真|イラスト:MintPress News

キット・クラレンバーグは、政治や認識の形成における情報機関の役割を探る調査ジャーナリストであり、MintPresss Newsへの寄稿者でもある。これまでにThe Cradle、Declassified UK、Grayzoneに寄稿している。Twitter @KitKlarenbergでフォローしてください。
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「厳密に」調査されたマイダンでの大虐殺暴露記事が世界有数の学術誌から抑圧を受けた。

<記事原文 寺島先生推薦>

‘Rigorous’ Maidan Massacre Exposé Suppressed by Leading Academic Journal

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:INTERNATIONALIST 360°
 
2023年3月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月30日




 査読を受けた論文が、当初は、とある著名な学術誌に掲載を約束され、賞賛を受けていたのに、突然説明なしに掲載が取り消された。この論文の筆者は、ウクライナ関連問題における世界有数の学者であり、驚くべき数の証拠を積み上げ、マイダンの抗議活動者たちが殺害されたのは、親クーデター派の狙撃手たちの手による、という結論を出していた。

 反政府活動家の狙撃手たちと警官たちにより引き起こされた2014年2月下旬のキエフのマイダン広場でのこの大虐殺は、選挙で選ばれたウクライナ政府が米国の手により転覆された決定的瞬間だった。70名の抗議活動者たちが亡くなったことにより、世界中からの怒りが雪崩のように引き起こされ、 ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を事実上の退陣に追い込んだ。しかしこんにちでも、これらの殺害事件の真相は明らかになっていない

 オタワ大学政治学者であるウクライナ系カナダ人イワン・カチャノーフスキー氏の話を聞こう。カチャノーフスキー氏が長年驚くべき数の証拠を積み上げて示してきたのは、この狙撃手たちはヤヌコビッチ政権とは関係がなく、親マイダン派の工作員たちが、抗議活動者たちの占拠していた建物から発射した事実だった。

 カチャノーフスキー氏による画期的な指摘は、大手報道機関からは意図的に無視され、2015年9月2021年8月に同氏により提示されたこの虐殺に対する綿密な調査報告は、2016年と2020年にそれぞれ出版され、学者や専門家から100回以上引用されてきた。この報告書やほかの研究論文が発表された結果、同氏はウクライナ関連において世界で最も引用された政治学者の一人となっている。

 2022年の後半、カチャノーフスキー氏はマイダンの大虐殺に関する新しい調査報告を著名な社会科学誌に提出した。十分な査読を受けた後に少しだけ手が入れられたこの論文は、当初掲載が許され、この学術誌の編集者から多大なる賞賛を受け、この編集者が自身のSNS上でこの論文に対する長いコメントを残していた位であった。その記述によれば、この論文は、「多くの点において他に例を見」ず、この論文の結論を支持する「強固な」証拠が示されているとされていた。査読を行った人々の主張も、この編集者の判断と一致していた。



 ところが、この論文は掲載されなかった。このことをカチャノーフスキー氏は「政治的決定」であると考えている。同氏は裁判を起こしたが、敗訴した。



 カチャノーフスキー氏の訴えを好意的に支持した人々の中には、著名な米国の科学者のジェフリー・サックス氏もいた。「この論文は、非常に重要で、綿密に調査されており、真実を伝えるものです。徹底的な調査のもとで書かれています。非常に重要な話題についての論文です」という言葉をサックス氏はカチャノーフスキー氏に書き送っていた。「貴殿の論文は、非常に優れており、その理由で掲載されるべきです。学術誌は重要で素晴らしい論文を掲載することによってのみ恩恵を享受できるものです。そのような論文により、学術的理解が深まり、近代史に関する非常に重要な議論を広げることができるからです」。


学術界は共謀して沈黙している

 カチャノーフスキー氏は、問題の学術誌の名前を挙げることはせず、社会科学界で「最重要」的立場にある学術誌であるとしていた。同氏の考えでは、この学術誌が同氏の論文の掲載を拒んだことは、「異常」ではあるが、「学術論文の発表や学界におけるずっと大きな問題」を表す象徴的な事例であるとも語っていた。

 「私の論文を受諾した編集者が、私の論文が掲載されない事実を知ったのは、私がこの件に関して行ったツイートを見てのことだった。こんなことはまことに異例で、政治的だ。学会においてウクライナに関する事柄に対しての政治的な検閲がますます増えてきて、「自主検閲」を行っている兆候も見られる」とカチャノーフスキー氏は、ニュースサイトの「グレー・ゾーン」に語っている。「多くの学者が恐れているのは、証拠をもとにした研究を行っても、その研究結果が西側の固執している主張と相容れないことが起こる場合のことだ。具体的には、マイダンやロシア・ウクライナ戦争などの問題に関する研究のことだ。これらの問題は2014年のクーデター以降にウクライナやキエフで起こっている紛争に関連したものだ」

 同氏によると、逆に「露骨かつ無批判に西側の主張をオウム返し」したがる研究については、その研究の主張が、「事実に基づかない」作り話だとしても賞賛され、そのような論文が掲載される際は何の障害も受けないとのことだ。 カチャノーフスキー氏は、ウクライナの件に関して学会で起こっている検閲について発言するのにぴったりの人物である。同氏の論文を受け入れた学術誌はほかに3誌あった。これらの学術誌も「専門家」の査読を得ることに成功していたのだが、最終的には掲載が拒否された。

 その一例をあげると、2023年1月、別の学術誌がカチャノーフスキー氏による論文の掲載を拒否したが、それは「同様の政治的な理由」のためだった。この論文は、ドンバスの内戦に参戦した極右勢力と、2014年にオデッサで大虐殺を起こした極右勢力について調べたものだった。この大虐殺は、超国家主義者たちが、連邦派で親露派の活動家たちを同市の労働者会館に押し込み、その建物に火を放ち、何十人もの死亡者とそれよりずっと多数の負傷者を出した事件だ。この極悪犯罪の罪を問われて法廷にかけられたものは誰もいない。

 カチャノーフスキー氏の主張によると、この学術誌の編集者は、いくつもの言い訳を重ねて、同氏の査読済みの論文を掲載しなかった理由を並び立てたという。同氏によると、その学術誌の発行日が近づいたころ、この編集者は、この論文がカチャノーフスキー氏の筆によるマイダンでの大虐殺に関する全貌をまとめた以前の論文と酷似しているという間違った主張を行っていたという。しかし論文の盗作を検査するアワリジナル(Ouriginal)というサイトの点検によれば、カチャノーフスキー氏が提出した論文は、同氏が以前書いた論文との類似性はないことが確証された。その編集者がさらに不満をもらしていたのは、カチャノーフスキー氏はドンバスでの8年間の紛争を「内戦」だと分類していた点だった。この紛争は当初ウクライナの極右勢力により引き起こされたものだった。

 この論文は数ヶ月前に別の学術誌からも掲載を拒否されていたが、その理由も同様に、カチャノーフスキー氏がドンバスでの戦争を「ロシア軍が介入した内戦」であるとしていたからだった。ドンバスの戦争を内戦と捉えないことが、この紛争に関する「学術論文の大多数」で共通の認識である、と同氏はグレー・ゾーンに答えている。

 これらの極右勢力がオデッサの大虐殺に中心的に関わっていたことは、大量の動画映像により確実視されており、ほぼ議論の余地はない。どうしてこの動かしがたい事実が、学術誌において議論の余地が広く残っているとされているのかの理由は不明なままだが、カチャノーフスキー氏のマイダンの大虐殺に関する調査論文が抑圧されている根拠から考えれば、自明の事実だ。

「論文が掲載されなかったことには政治的理由がある。大手報道機関が追随するのは自国政府であって、事実ではない。西側の記者たちはマイダンの大虐殺のことを大きく歪曲して伝えている」とカチャノーフスキー氏は語っている。「いくつかの例外はあるが、記者たちはマイダンを支持していた狙撃手たちや狙撃手たちが発言している動画を報じようとはしなかったし、これらの狙撃手たちを目撃した負傷したマイダンの抗議活動者たちや何千もの目撃者の証言も報じようとはしなかった。」


米国当局者たちと犠牲者総数について話し合った極右勢力

 カチャノーフスキー氏が収集した情報源が明らかにしている証拠から見れば、同氏の結論は十分支持できる。カチャノーフスキー氏はこの大虐殺は、「成功した偽旗工作であり、組織し、実行したのはマイダンの指導者勢力と狙撃手たちの秘密集団であり、目的は政権を転覆させ、ウクライナで権力を握るためだった」と記述していた。

 これらの重要な証拠の中には、マイダンの抗議活動者が占拠していた建物に巣くっている狙撃手たちを映した14本の動画もある。うち10本は、狙撃手たちがホテル・ウクライナに居座っていた極右勢力とはっきりとつながっていることを示すものであり、狙撃手たちが標的にしていたのは階下にいた抗議者たちの群れであり、射撃していた対象は政府の警官たちだった。

 現在、同様の内容の複数の動画が明らかにしている事実は、政府の治安維持部隊が発砲した銃弾についてのことだ。この治安維持部隊が当初、大虐殺を起こしたとして起訴されていたのだが、この弾丸は抗議者たちを殺害したものではなかったことがわかったのだ。警官が発砲したのは警告のためであり、狙ったのは街頭や木や地面など人がいない対象物であり、目的は暴徒化していた群衆を静めるためだった。警官たちは壁や窓にも発砲していたが、それは、マイダン派の占拠していたホテル・ウクライナにいた狙撃手たちの部屋の壁や窓に向けてであり、そこに居座っていた狙撃手たちを狙ったものだった。

マイダンの大虐殺に関する裁判の最終判断が出るのは今年の秋だと見られている。目撃者は何百人もおり、その中には発砲が行われていた時に負傷した51名の抗議活動者たちも含まれているが、彼らの証言によれば、この発砲はマイダン派が占拠していた建物や地域から発せられたものだという。その建物の中に狙撃手たちがいたことを目撃したと語っている人々もいる。この説は 政府の射撃学専門家による調査からも支持されている。何より、マイダンの射撃団に入っていたことを自認している14名は、大虐殺においてマイダンの射撃手たちと指導者たちを巻き込んでいたことを証言している

 これが偽旗工作であったことを示す証拠が多数挙げられているにも関わらず、カチャノーフスキー氏はこの裁判を信頼しておらず、真実につながる判決を出すとは考えていないし、この判決が、訴訟の手続きに伴い蓄積された大罪の有罪証拠に基づいて行われるとも考えていない。  

 「検察はそのような狙撃者が存在したことを否定しており、狙撃者たちの捜査を行わなかった。ウクライナの法廷は、権力から自立しているとは言いがたく、裁判所の判断が、注目度が高かったり、深く政治と関わる件に関しては特に、大統領からの指示に従うことが多い。このような状況は、裁判官や陪審員たちにとっては困難な状況だ。極右勢力からの警官たちを無罪放免にしないようにとの圧力もある」。

 判決が真実を問わないものになると思われる他の理由もある。ひとつは、この事件の裏にある真実が暴かれれば、この虐殺に米国当局者たちが直接関わっていたことを示唆することになる可能性があることだ。もっと広く、マイダンのクーデター自体への米国の関与も明らかになってしまうという危惧だ。西側の大手報道機関は、ワシントン当局が、この動乱に全く関与していなかったという事実を心の底から信じている。そうではないことを示す確固たる証拠は山ほどあるのに、だ。

 極右のスボバダ党で指導者的立場にあり、長期に渡り党首もつとめているオレグ・チャニボク氏と副党首のルスラン・コシュリンスキー氏の主張では、マイダンでの狙撃手たちによる虐殺事件には米国が緊密に繋がっていたという。チャニボク氏の証言では、最初4人の抗議活動者が殺害されたあとで彼が驚いたのは、世界からの抗議の声が少なすぎたことだという。

 「なぜ反応がないのか?これでは足りないということか」と当時嘆いていた、とチャニボク氏は語っている。

 続いてコシュリンスキー氏が語った内容は、いったい何人の死者が出ればワシントン当局とその下僕たちがヤヌコビッチ大統領の退陣を求める声を大きく上げてくれるかについてだった:

 「米国側は最初の死者数について話していた―5人、20人....100人? いつになれば現政権を非難の的にできるだろうか? 最終的には、100人がいいということになった。圧力をかけてくることもなかったし、制裁をかけてくることもなかった。米国はただ、大虐殺が起こるのを待っていた。ウクライナ国内で大虐殺が生じれば、政権を責めることができる。そうなれば、一線を踏み越えたことになるからだ。政権が大虐殺を防ぎきれなかったということになるからだ。」


キット・クラレンバーグは、綿密に調査を行う記者であり、政治や世論を形成するという諜報機関の役割を詳しく取材している。
関連記事

ウクライナにおける人身/臓器の売買についての調査報告(第3部)

<記事原文 寺島先生推薦>
“When You See It, You Won’t Forgive”: Part III of an Investigative Report on Human Trafficking in Ukraine
「それを見れば、だれも許さないだろう」:ウクライナにおける人身売買についての調査報告(第3部)
筆者:デボラ・L・アームストロング(Deborah・ L・Armstrong)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2023年2月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年3月29日



写真:New Eastern Outlook

 年が明けて間もない2023年1月14日、ウクライナの首都キエフで行われた大規模な抗議活動の動画がSNSで拡散され始めた。抗議者の大半は女性だが、中には男性の姿も確認できる。女性たちは、ウクライナ軍第24師団の未亡人や妻たちであることが確認されている。

 キエフにおける抗議者たちが、愛する者の遺体返却を求めている

 抗議者たちは、埋葬するために兵士の遺骨を返せ!と要求している。主に英語で書かれたプラカードを持っている。いくつかのプラカードには、民族主義的なウクライナのシンボルであるガリシア獅子(第2次世界大戦中のSSのシンボル)も描かれている。デモ隊は「スラバ・ウクライナ!スラバ・ゲロヤム!」 と叫ぶ。これは、「ウクライナに栄光あれ!英雄に栄光あれ!」という意味だ。

 ウクライナ国旗の色をした黄色と青の煙が放出され、唱和するデモ隊の上を漂い、10万人のユダヤ人、ポーランド人、そしてロシア人を虐殺した大量殺人者ステパン・バンデラの指示の下、第2次世界大戦でナチスと協力したウクライナ反乱軍OUN-Bの旗を象徴する赤と黒の煙と混ざり合っている。



愛する者の遺品返却を求めるキエフの女性たち。写真:Ruptly/zpnews.ru

 他の動画では、女性たちが行方不明の夫、息子、父親、兄弟の写真を掲げている。なぜ、この人たちはみんな行方不明なのだろう? 戦死したのか、ロシア軍の捕虜にされたのか。彼女たちは、ロシアに愛する人の遺体を返すよう要求しているのだろうか? もしそうなら、なぜ彼女たちのプラカードは英語なのだろう? なぜロシアについては何も言われないのだろうか...?

 それとも、デモ隊は、すべて愛国心という前提条件で注意深い枠組みを作りながらも、(実際は)自分たちのウクライナ政府に対して、声明を出しているのだろうか?

 ウクライナにおける人身売買に関する私の調査報告書第1部第2部をお読みいただいた方は、必ずしも同意していないウクライナ兵や民間人からの臓器摘出を目撃した、あるいは参加したと主張する人々の証言をすでにお読みになっているはずだ。

 戦場での臓器狩りが、少なくとも1990年代後半から行われていたことは、2009年の欧州評議会(PACE)のディック・マーティ副議長による「コソボにおける人々に対する非人道的な扱いと違法な臓器売買」報告書で、すでにお読みいただいた通りだ。そして、戦場での臓器狩りは少なくとも1990年代後半から行われていたことは、ロシア内務大臣顧問のウラジミール・オフチンスキー博士によれば、コソボで移植プログラムの先頭に立った同じ人たちが、現在ウクライナで移植作業を指揮していると言われていることも、お読みいただいた通りだ。

 ウクライナでこのような事業がより円滑に行われるためには、何が必要なのだろうか。第1部の証言者によると、ドナーの体から臓器を取り出して搬送するまでの時間は最短で7分、外科医は、実質的にはベルトコンベアのように遺体を処理しなければならないので、スピードが重視されるとのことだ。

 おそらく、ウクライナの法律を改正すれば、この手順をより効率化し、本人がすでに亡くなっている場合の同意の必要性など、お役所仕事の一部を切り捨てることができるだろう。ロシアがウクライナ国境を越え、2022年2月24日に特別軍事作戦(SMO)を開始するわずか2カ月前の2021年12月16日、まさにそのようなことが起こっていた。



ヴェルホーヴナ・ラーダ(ウクライナ国会)写真: Spzh.news

 ヴェルホーヴナ・ラーダ(ウクライナ国会)の305人の議員が投票し、法案No.5831を可決、ゼレンスキー大統領が署名し、翌日から施行された。同法案の全文(ウクライナ語)「人体解剖学的材料の移植を規制するウクライナの特定の立法行為の改正について」、同法案の要約は、ウクライナ国会のウェブサイトから閲覧できる。

 2021年の法律では、書面による同意がない場合でも、故人から臓器を摘出することができ、故人の場合は同意が義務づけられなくなった。さらに、書面による同意には、認証や公証人の署名が不要となった。ドナーは権限を与えられた移植コーディネーターに同意を与えることができ、同意は電子的な形式で行うことができる。

 故人の同意がない場合、移植コーディネーター(取次人)は、故人の配偶者、または両親、兄弟、子供などの近親者から同意を得ることになっている。家族が見つからない場合、コーディネーターは故人を埋葬した人から同意を得ることができる。故人となった軍人の場合、部隊長が兵士の臓器摘出に同意することができる。

 この法律は、また、内縁の配偶者は、故人の臓器摘出を妨げることができないことを明確にし、内縁の配偶者や代理家族などに同意を与えるための、親族に属さないひとに権威を与える人物の権利を奪っている。

 ウクライナの国民健康・医療・健康保険委員会の委員長であるミハイロ・ラドゥツキーによると、死後の臓器提供の同意は、 Diia事業として知られるアプリを介して電子的に行うこともできるようになった。

 ラドゥツキーは2021年にTelegram*で、この法律が「ドナーと受容者の適正を照合するアルゴリズムを改善し、臓器摘出の意思決定ができる人の範囲を拡大し、試験的移植事業から医療保証事業による2023年からの資金提供への移行を確立する」と書いた。さらに、2019年にはウクライナで78件の臓器移植が行われ、2021年末までに250件の手術が計画されていると指摘した。
* ロシア人技術者が2013年に開発し、現在はTelegram Messenger LLPが運営しているインスタントメッセージアプリケーションである。 スマートフォンのモバイルアプリケーションとして無料で利用できる。(ウィキペディア)



国民保健・医療・健康保険委員会委員長のミハイロ・ラドゥツキー。写真:ヴェルホーヴナ・ラーダ


 つまり、この法律は、条文を読めばわかるように、故人の同意なしに、簡単に臓器を摘出することができる。戦闘が激しく混乱し、近親者の所在が不明な戦場において、それがどのように機能するかは、想像に難くない。特に、ある情報筋によれば、戦場では遺体は150ドルから200ドルで売られ、たった1つの遺体から採取された臓器の総額は1000万ドルに達することもあるそうだ。

 さらに、ロシアのメディアやロシアのブログなどで、ウクライナ東部の人々が臓器をすべて摘出されて大量に埋葬されたとの報道が多数なされている。このような話は西側では嘲笑され、「ロシアの偽情報」として退けられるが、びっくりするほど多くの報道がある。

 セルゲイ・ペレホドというブロガーは、国籍は不明だが(おそらくロシア人かウクライナ人)、2014年だけで起こった悲惨な発見のリストをまとめている。以下は、彼が指摘した残虐行為の一部である:

 1. 9月24日、ドネツク人民共和国(DPR)の民兵は、ロウアー・クリンカとコムナールの集落で墓を発見し、そのうちの2つの墓には撃たれた男女の遺体が、3つ目には内臓のない40人の遺体があったことにショックを受けた。実際、アメリカ資本の『モスクワ・タイムズ』でさえ、このことを報道したほどである。

 2. 5月5日、ウクライナでは「兵士の臓器が大量に摘出されている 」という噂が飛び交った。公式発表では、死者5名、負傷者12名と発表されたが、救急車の出入りが激しく、犠牲者はその2~3倍は、いたのではないかと思われるほどだった。実際、少なくとも48人が労働組合ビルに追い込まれ、生きたまま焼かれたり、撃たれたり、殴り殺されたりしたオデッサ大虐殺は、そのわずか3日前の5月2日に起きており、この連載の第1部に登場する目撃者の一人は、この大虐殺後に多くの臓器を採取した、と言っている。

 3. 5月20日、カラチュンの丘付近で夜間偵察活動中の民兵が、「腹が引き裂かれた」ウクライナ国家警備隊兵士180人の遺体を発見した。少し離れたトロイツク墓地付近では、さらに300体の遺体が発見され、埋葬されず、臓器が取り除かれていた。地元の人々は、赤十字の車や専門的な機器を持った外国人医師を見たと報告している。ウクライナのメディアはその日、カラチュンの丘で激しい戦闘があったことを報じたが、ロシアのメディア以外ではほとんど確認できない。

 4. 6月28日、対テロ作戦地域(ATO)の情報筋は、ルガンスク地方のルビズネ近郊で内臓のない人々の墓を発見したと報じた。情報筋は、ウクライナ東部で「特殊集団」が活動しており、人間の臓器の売買に従事していると指摘した。

 その最後の日に発見された集団墓地についての裏付けとなる記事は見つからなかった。しかし、2021年、ドンバス在住のラッセル・ベントレーは、ルガンスクのその同じ地域で200体の遺体が掘り起こされたときに立ち会い、彼らは2014年の夏、戦闘が激しくなったときに殺害されてそこに埋められたと書いている。




2021年、ドネツク郊外で発見された集団墓地の現場にいるDPRの民兵隊員。[出典:RT.com]


 ラッセル・ベントレーを信じるべき? そのブロガーの言葉を信じるべきか? どんなブロガーでも信じるべきなのだろうか? 主流メディアが日常的にだまし誤導をし、本当のニュースから私たちの注意をそらす今日、おそらく誰も信じることはできないだろう。

チップ・ボックの漫画: Yahoo news

 いずれにせよ、ウクライナの集団墓地には、内臓を切り取られた兵士や民間人の遺体があるという恐ろしい話が、インターネット上に溢れている。そして、これらの話の1つでも、何か真実に基づいているのであれば、深く調べる価値がある。

 2022年12月、Telegramに、そしてRumble(無料動画サイト)に、ロシア語を話す正体不明の男性が、ウクライナのハリコフ州の都市イジュームで目撃した残虐行為を説明する動画が登場した。彼は20代後半から30代前半に見え、尋ねる人によっては、ロシア空挺部隊、あるいはスペツナズと思われる空色のベレー帽を被っている。ベレー帽にはソ連の赤い星が付いていることから、彼はロシアの正規軍ではなく、ドンバス離脱人民共和国の民兵の一人ではないかと思われる:
彼のことはココ(英語字幕付き)で見られる。

ロシア軍がウクライナ人の子どもの臓器狩り作戦を暴く
ウクライナで起こっている恐怖の実録。子どもからアドレノクロム*や臓器を摘出することは・・・

* アドレナリンの酸化によって生成される分子式C₉H₉NO₃の化合物。誘導体のカルバゾクロムは止血薬として用いられる。化学名は類似しているがクロムとは無関係である。 (ウィキペディア)

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イジュームで子どもの臓器狩りが行われていると語るロシア語話者の男性


 「その集団は、わかったのですが、イジューム周辺に子供たちを集めていたんです」と、ロシア側が発見したことに言及して彼は語っている。「2歳から6、7歳の小さな子供たちを、あの...特別な場所に連れてきました」。ここで兵士は、本当に恐ろしいことを思い出したときのように、少し間を置いた。彼は深くため息をついてから、こう続けた。「子供たちは1階で服を脱がされました。そして2階で...」

 彼は再び言葉を止め、その目には呪われたような表情を浮かべる。「2回目は...切り刻まれました」と、彼は静かに言う。映像は一旦中断され、おそらく男性が回復するための時間が設けられたのだろう。映像は再開され、彼はカメラに映らないときに聞かれたかもしれない別の質問に答える。「廃棄物のように、穴に入れられたり、どこかへ持ち出されて埋められたりするんだ。あいつらは、まるで子豚やウサギのような家畜を屠殺するかのように、彼ら(子どもたち)のことを話していたんだ。まるでどこかの農場のように、「おー、運んできたぞ」という感じだったんです。わかりますか?」

 この兵士はかなり震えているようだ。彼は続けて言う。「話には聞いていたが、信じられなかった。この目で見るまでは、理解できないだろう。しかし、それを見たら、だれだって許せなくなりますよ」。

 臓器が摘出された遺体が発見されたという報道の多くはロシア側から発信されているように見えるが、ウクライナでの臓器狩りについては、2000年代から世界中で多くの記事が発表されている。ロシアのSMO(特別軍事作戦)が始まるまでは、このような記事は簡単に見つけることができた。そして突然、西側の主流メディアは、このような記事を「ロシアの偽情報 」と呼ぶようになった。




ミハイル・ジス博士。写真: Ynetnews.com


 例えば、2003年、米国国立医学図書館は、臓器売買ネットワークが「エストニア、ブルガリア、トルコ、グルジア、ロシア、ルーマニア、モルドバ、そしてウクライナなどの貧しいヨーロッパ諸国を標的にしており、人々は圧力をかけられてわずか2500ドルで自分の腎臓を売らされている 」と述べた欧州評議会の議会からの報告書を引用した

 2010年、エルサレム・ポスト紙は、ウクライナと他の旧ソ連諸国での臓器売買のために12人のイスラエル人が逮捕されたと報じた。彼らは、主に肝臓をイスラエル人や他の国の国民に、体の一部につき1万ドルで売っていたとして告発された。移植は主にキエフ、アゼルバイジャン、そしてエクアドルで行われていた。

 2011年、ウクライナ・ウィーク紙は、ウクライナで闇臓器売買が盛んであるとの記事を掲載した。記事では、キエフの「闇移植医」グループが2010年に26人の遺体から解剖中に眼球を取り出し、臓器は移植のためにキエフの病院に移されたことを詳述している。記事はまた、2007年にイスラエル人のミハイル・ジスがドネツクで逮捕されたことにも触れている。イスラエルでの医師免許が取り消されたため、闇取引のお金を稼ぐためにウクライナに移住していた。そこでモルドバ人とウクライナ人が1万ドルで臓器を売ることに合意し、ジスは手術をするたびに13万5千ドルを受け取り、そのお金はアメリカの銀行口座に振り込まれたとされている。

 また、2011年、ブルームバーグは、イスラエル人や東欧人が運営する犯罪組織が、身寄りのない人々に腎臓などの臓器を売るよう強制していたことが、5大陸の調査員によって、大規模で絡み合ったネットワークとして明らかになったことを報じた

 WHOは2012年、①人間の臓器が1時間に1個の割合で、闇市場で売られていること、②健康で若い臓器を必要とする富裕層が、中国、インド、パキスタンの犯罪組織から入手した腎臓に15万ドル以上を支払っていること、そして③この犯罪組織は、たった3、500ドルでも、喉から手が出るほどお金を必要としている人から、臓器を採取していると警告した

 また、2012年には、オーストラリアの新聞が、ウクライナで「骨やその他の人体組織が、薄汚れた白いミニバスの中でクーラーに詰め込まれている」という悲惨な発見を報じた。当局が押収した文書によると、遺体は、フロリダに本社を置く米国の医療製品会社「RTI Biologics」の子会社が所有するドイツの工場に向かう途中であったことが明らかになった。




「肋骨2本、アキレス腱2本、肘2本、鼓膜2本、歯2本、などなど...」 ウクライナの家宅捜索で遺体の一部が発見されたOleksandr Frolovの写真を手にする親族。写真 シドニー・モーニング・ヘラルド紙


 2016年、ワシントンDCのシンクタンクであるアトランティック・カウンシルは、「ウクライナは人身売買との戦いにもっと力を入れるべき」と題した記事を掲載し、ウクライナ出身の16万人以上の男性、女性、子供が 「労働、セックス、強制物乞い、そして臓器摘出のために搾取されている」と述べている。

 この記事は、ウクライナの問題の多くが「ロシアの侵略」であるとしながらも、米国国務省と欧州評議会の人身売買対策専門家グループ(GRETA)によると、「国家レベルでの連携が不十分」であったと、ウクライナ当局を批判している。

 2014年に発表されたGRETAの報告書では、「政府省庁間の連携が悪い」とし、ウクライナの人身売買に関する統治評議会が5年間開催されていなかった、と述べられている。




「人体は売り物ではない」と書かれたウクライナの看板(2016年、キエフにて)には、人身売買の被害者が電話できるホットラインが記載されている。写真: アトランティック・カウンシル


 また、ジュネーブ安全保障セクター・ガバナンスセンター(DCAF)が2015年に発表したもう一つ調査では、ウクライナは臓器狩りを含む人身売買の「発地、通過そして到達国」であると結論付けている。報告書の全文はこちらのリンクから読める。

 ロシアのSMOが始まった後、西側のニュースはウクライナでの違法な臓器狩りの報道はほぼしなくなった。しかし、2022年3月、BBCは、数千人のウクライナの子どもたちが行方不明になっており、人身売買業者の手に落ちた恐れがあると報じた

 2022年2月、ドイツの国防大臣クリスティーネ・ランブレヒトは、ウクライナが移動式火葬場を完備した野戦病院を受け取ることになると述べた。ウクライナに武器を送ることに反対していたランブレヒトは、「ウクライナ戦争への、ベルリンの対応をめぐる監視の目が厳しくなる中で」今年1月に辞任した。

 野戦病院と火葬場のニュースは、ウクライナ軍に深刻な動揺をもたらしたと報道されたが、やがて西側の主要メディアは、火葬場はロシアが運営し、ロシア軍の犠牲者数を隠すために使われたと主張する記事で、もちきりになった。

 ただでさえ希少で、しばしば虚偽と見分けるのが難しい真実は、新聞の束の中の針に喩えられるようになった。



ジョエル・ペットの漫画/The Week


ブラック移植とグレー移植

 ドナーやその家族の同意なしに行われる違法な臓器移植は、「ブラック移植」と呼ばれている。しかし、同時に「グレー移植」もある。これは、ドナーの生活が絶望的かつあるいは貧困であることが多く、強引に臓器を売らされるものだ。

 腎臓や肝臓の一部は数千ドルで売れるが、その健康リスクは甚大だ。手術そのものに関する直接的なリスクに加え、高血圧、痛み、神経損傷、ヘルニア、腸閉塞、そして慢性疾患の可能性の増加といった長期的な健康リスクもある。また、障害保険や生命保険に加入しにくくなるなど、さまざまなリスクがある。

 2022年10月、アジアニュースネットワークは、外国人ドナーとの移植を仲介する東京のNPO法人を通じて、経済的に苦しいウクライナ人が腎臓を売買される臓器提供者として確認されたという記事を掲載した。

 この記事は、ウクライナ語のウェブサイトで、腎臓を売りたい人にお金を提供する書き込みが出現していることが触れられている。このような投稿は、2020年のCovid19以降、4倍の頻度で出現するようになったと記事は述べている。投稿には、売買したい臓器の年齢、血液型、種類、そして価格が記載されている。「完璧に健康な20歳!」などと、臓器の 「質」も記載されている。また、電話番号や住所などの連絡先も記載されている。

 この記事によると、これらの投稿は、ロシアのSMOが始まった後も、途切れることなく表示され続けたという。神経科医を名乗る人物のある投稿には、「経済的苦境に陥っているのなら、あなたの腎臓を買います」と書かれていた。彼は、アメリカやインドだけでなく、「日本にも拠点がある」とも付け加えていた。

 「家が買える!」と謳った投稿もあった。記事によると、あるウクライナ人女性は、58歳の日本人女性に提供された腎臓の対価として15,000ドルを受け取ったという。ひとりのトルコ国籍の人物は臓器の売買に関与したとして、ウクライナ当局に逮捕された。

 一方、正式なルートで移植を申請した法遵守主義のウクライナ市民は、待ち続けなければならない。


腎臓移植を待っている透析中のウクライナ女性。写真 :アジアニュース


 臓器提供を直接迫ることはほとんどの国で違法だが、臓器提供の動機付けをすることについては、世界中で関心が高まっている。2月には、マサチューセッツ州の議員が、刑務所の受刑者が刑期を短縮するために臓器や骨髄を提供することを認める法案を提出した。

 このような法律の倫理性にはまだ疑問が残るが、法案の民主党提案者であるジュディス・ガルシア州下院議員は記者団に対し、「黒人や茶色人種社会に対する不当な収監や 過剰取り締まりの悪循環」を解消するのに役立つかもしれない、と述べた。

 ガルシアは、黒人とヒスパニック系は特有の健康状態により臓器移植の必要性が高いが、差別的な投獄率により黒人の待機期間が長くなり、適合する(臓器の)数が制限されると説いた。

 この法案には、すでに多くの批判がある。ワシントンDCに拠点を置く刑事司法改革擁護団体『強制最小化に反対する家族たち』のケビン・リング会長は、この法案について、「ディストピア小説に出てくるような内容だ」と述べている。彼は記者団に対し、「臓器提供の促進は良いことだ。過剰な懲役刑の軽減も良いことだ。ただ、この2つを結びつけるのは倒錯的だ」と述べた。

 法案で提案された制度は、臓器や骨髄の提供と引き換えに、囚人に60日から1年までの減刑を与えるというもので、各囚人の減刑幅を決定する委員会が置かれることになっている。

 現在、米国では受刑者の臓器提供を禁止する法律はないが、受刑者の感染症のリスクが高いことから、移植学会では1990年代から受刑者の臓器提供を控えてきた。

 連邦刑務所の囚人は臓器を提供することはできるが、家族にだけだ。


結論

 この3回にわたる詳細な報告を終えて、女性や子どもの性的搾取や奴隷貿易など、世界各地で違法化されているにもかかわらず一部で続いている人身売買については、まだその表面すら触れていないことを実感している。ウクライナは、商業的な性的搾取や奴隷の供給源、通過国、そして目的地として、すでによく知られている国である。

 これらのテーマは、それ自体が詳細な調査報告に値するものだ。後日、さらに問題を掘り下げるつもりである。

 ウクライナの人身売買に関する調査シリーズの第3部は、これで終わる。第1部はこちら、第2部はこちらでお読みください。


デボラ・アームストロングは現在、ロシアに力点を置いた地政学について執筆している。以前は米国の地方テレビニュースに携わり、2つの地方エミー賞を受賞した。1990年代前半には、ソビエト連邦の末期に滞在し、レニングラード・テレビでテレビコンサルタントとして働いた。
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BKL(モスクワの最新地下鉄)に見る多極性構造:「ニューコイン」列車に乗りながら

<記事原文 寺島先生推薦>

Moveable Multipolarity in Moscow: Ridin’ the ‘Newcoin’ Train

筆者:ペペ・エスコバー(Pepe Escobar)

出典:Strategic Culture

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月29日

新しいコイン


新しい通貨は、単なる決済単位ではなく、この先、資本や準備金を蓄える「外部通貨」になることができるはずだ。

 旧繊維街のテクスティルシュチキから、至高主義・構成主義のギャラリーであるソコルニキ(マレーヴィチ*が住んでいる!)まで、そして豪華な鉄骨アーチのリジスカヤから130メートルのエスカレーターのあるマリーナ・ロッシャまで、モスクワ全体を71キロ、31駅で一周するビッグサークルライン(キリル文字ではBKL)(訳注:今年3月に開通したモスクワの地下鉄)の楽しさよ。
* カジミール・セヴェリーノヴィチ・マレーヴィチ。ウクライナ・ソ連の芸術家。特に画家として知られ、戦前に抽象絵画を手掛けた最初の人物である。 (ウィキペディア)

 BKLはまるで多極性世界の首都(モスクワ)の、生きて、呼吸して、走っている比喩のようだ。アート、建築、歴史、都市デザイン、ハイテク交通、そしてもちろん、中国新シルクロードの友人たちの言葉を借りれば、「人と人との交流」がぎゅっと詰まっている。

 ちなみに習近平主席は、21日にモスクワに来るプーチン大統領とBKLに乗る予定になっている。

 だから、何十年もの経験を持つ、世界の金融市場のトップに立つ経験豊かな投資家が、世界の金融システムに関する重要な洞察を共有することに同意したとき、私がBKLに乗ることを提案し、彼がすぐにそれを受け入れたのも不思議なことではない。彼の名前はS.Tzu氏としておこう。以下は、私たちがBKLに乗りながら行った会話を最小限に編集したものである。

 時間をお取りいただきありがとうございます。しかも、こんな素晴らしい場面設定です。現在の市場の乱高下を考えると、(市場動向を見つめる)画面から離れるのは大変なことでしょう。

 S. Tzu: そうですね、現在、市場は非常に厳しい状況です。この数ヶ月は2007-8年のことを想起させますが、金融市場基金と サブプライムローンではなく、最近はパイプラインと国債市場が吹き飛んでいます。私たちは面白い時代に生きています。

 あなたのお近づきにならせてもらった理由は、ゾルタン・ポザールが提唱した「ブレトン・ウッズ*3」の考え方について、あなたの見解を伺いたいと思ったからです。あなたは間違いなく、その最先端を走っていますね。
* ブレトン・ウッズ体制とは、第二次大戦後に米国を中心に作られた、為替相場安定の枠組み。金・ドル本位制による固定為替制度を取っていた。またブレトン・ウッズ2とは、1973年に固定為替制が廃止され、変動相場制に移行されたことを指す。

 S. Tzu: ずばり本題に入っていただきました。新しいグローバルな金融秩序の出現を目の当たりにする機会は非常に少ないのですが、私たちはそのような機会を目にする一つの時代を生きているのです。1970年代以降でいうと、今から14年以上前に登場したのビットコインが、これから数年後に私たちが目にするものに近い衝撃を持っていたのかもしれません。ビットコインが登場した時期が偶然ではなかったように、現在の世界金融システムの地殻変動の条件は、何十年も前から醸成されていたのです。「この戦争が終わった後、『通貨』は二度と同じものにはならないないだろう...」というゾルタンの洞察の通り、今は金融秩序が変わる時期として完璧な時期のです。


「外部通貨」を理解する

 ビットコインの話が出ましたね。当時は、これの何が画期的だったのでしょうか?

 S. Tzu: 暗号の側面はちょっと置くとして、ビットコインの最初の成功が見込まれたこととその理由は、ビットコインが中央銀行の責任ではない「(ゾルタン氏の優れた用語を借りれば)外部」貨幣を作ろうとしたことがあったからでした。この新しい単位の大きな特徴のひとつは、採掘可能なコインを2100万枚に制限したことで、現行の体制の問題点を見抜くことができる人たちの心に響きました。今でこそそれほどでもないですが、近代的な通貨単位が中央銀行の後ろ盾なしに存在し、デジタル形式の事実上の「外部」貨幣となりうるという発想は、2008年当時としては画期的だったからです。言うまでもなく、ユーロ国債危機、量的緩和*、そして最近の世界的な悪性インフレは、多くの人が何十年も感じてきた不協和音を増幅させただけでした。現在の「(再びポツァール氏の上品な用語を用いれば)内部貨幣」体制の信頼性は、現在行われている中央銀行の準備金凍結や破壊的な経済制裁に至るずっと前に、破壊されてしまっていたのです。残念ながら、信頼に基づくシステムの信頼性を破壊するのに、中央銀行の保管口座にある外貨準備を凍結して没収することほど有効な方法はありません。ビットコイン誕生の背景にある認知的不協和が検証されたのです。「内部通貨」体制は2022年に完全に兵器化されました。その意味合いは深いです。
* 中央銀行が市場に供給する資金を増やすことで金融市場の安定や景気回復を図る措置のこと。

 さて、いよいよ核心に入ってきています。ご存知のように、ゾルタン・ポツァールは次の段階で新しい「ブレトン・ウッズ3」体制が出現すると主張しています。それは一体どういう意味なのでしょうか。

 S. Tzu: ポツァール氏が、現在の欧米の「内部通貨」体制を別のものに変えることを指しているのか、それとも現在の金融体制の外側に、代替案として「ブレトン・ウッズ3」の出現を示唆しているのか、私にもよくわかりません。ただ、政治的な意思の欠如や、以前から蓄積され、近年急激に増大した過剰な政府債務がありますから、現段階で欧米で「外部通貨」制度をまた繰り返しても成功することはあり得ないと私は確信しています。

 現在の欧米の金融秩序が次の進化段階に移行する前に、これらの未払い債務の一部を実質的に削減する必要があります。歴史を振り返れば、その移行はデフォルト(債務不履行)かインフレ、あるいはその2つの組み合わせによって起こるのが普通です。可能性が高いと思われるのは、欧米諸国政府が金融抑圧政策に依存して、船を浮かせ(国を沈没・破綻させないように、の意)、債務問題に取り組もうとすることです。私は、「内部通貨」体制の管理を強化するための多くの取り組みが行われると予想していますが、それはおそらくますます不評を買うでしょう。例えば、CDBC*の導入もその一つでしょう。この点で、これからが大変な時代になることは間違いないでしょう。同時に、現在の「内部通貨」による世界金融秩序に対抗する、何らかの「外部通貨」体制が出現することも、現段階では避けられないと思われます。
* 中央銀行デジタル通貨あるいは中央銀行発行デジタル通貨は、中央銀行が発行したデジタル通貨の一種で、デジタル不換紙幣。現在のCBDCの概念はビットコインに直接触発された通貨管理に由来するが、CBDCは国家の中央銀行が中央集権的に発行する、という点で仮想通貨や暗号通貨とは異なる。(ウィキペディア)

 それは、どうしてですか?

 S. Tzu: 世界経済は、貿易、準備、投資のすべての必要性を、現在の兵器化した状態の「内部通貨」体制にもはや頼ることはできません。制裁と外貨準備の凍結が他国の政権を交代させるための新たな手段であるならば、世界中のすべての政府は、貿易と外貨準備のために別の国の通貨を使うという選択肢を考えているはずです。しかし、現在の欠陥だらけの国際金融秩序に代わるものは何なのか、それは明らかではありません。歴史を振り返ると、金本位制に還元できない「外部通貨」方式で成功した例はあまりありません。そして、金だけ、あるいは金と完全に交換可能な通貨だけでは、現代の通貨体制の基盤としてはあまりにも制約がありすぎるという多くの理由があります。

 同時に、最近増えている現地通貨での貿易も、現地通貨が 「内部通貨」である以上、残念ながらその可能性は限られています。多くの国が、輸出の対価として他国の地域通貨(あるいは自国の通貨)を受け入れたくないという理由は明白です。その点では、マイケル・ハドソンに全面的に同意します。「内部通貨」はその国の中央銀行の負債であるため、その国の信用度が低ければ低いほど、投資可能な資本が必要となり、他国がその負債を保有することに抵抗が出てきます。IMFが要求する典型的な「構造改革」のセットが、例えば、借り手である政府の信用力の向上を目的としている理由のひとつはそこにあります。「外部通貨」 は、IMF と現在の「内部通貨」 金融体制の人質になっていると感じている国や政府によってこそ、ひどく必要とされているのです。


「ニューコイン」の導入

 多くの専門家が「新通貨」の研究をしているようです。例えば、セルゲイ・グラジエフ。

 S. Tzu: そうですね、最近の出版物でそのような示唆がありました。私はこれらの議論には関与していませんが、確かにこの代替体制がどのように機能するかを私も考えてきました。ポツァール氏の「内部通貨」と「外部通貨」という概念は、この議論において非常に重要な部分です。しかし、これらの用語の二元性は誤解を招きます。新しい貨幣単位(便宜上「ニューコイン」と呼ぶことにします)が解決すべき問題に対して、どちらの選択肢も完全に適切とは言えないからです。

 説明させてください。現在の米ドル「内部通貨」体制の武器化と同時に制裁の激化により、世界は事実上「グローバル・サウス」と「グローバル・ノース」(「東」と「西」よりも少し正確な用語です)に分裂しているのです。ここで重要なのは、ポツァール氏がすぐに気づいたことですが、サプライチェーン(供給網)や商品もある程度武器化されつつあることです。友好国への外部委託の動きは今後も続きます。つまり、ニューコインの最優先事項は、北の通貨に頼らず、南半球内の貿易を促進することなのです。

 もしそれだけが目的であれば、人民元や元を貿易に使う、ユーロやECU(ユーロの前身貨幣)、あるいは中央アフリカのCFAフランのような新しい共有通貨を作る、IMFのSDRのような参加地域通貨のバスケット*に基づく新しい通貨を作る、金にペッグ**する新しい通貨を作る、あるいは既存の地域通貨に金をペッグするなど、比較的単純な解決策が選択できたはずです。しかし、残念ながら、これらの方策がそれぞれ新たな問題を引き起こしている例は、歴史上いくらでもあります。
* 固定相場制の一つで、複数の貿易相手国の為替相場を一定水準に固定する制度
**金などを基準とした固定相場制のこと


 もちろん、新しい通貨単位には、これら二つの可能性では対応しきれない別の目的が並行して存在します。例えば、すべての参加国は、新しい通貨が自国の主権を希薄にするのではなく、強化することを望んでいるはずです。次に、ユーロや以前の金本位制の課題は、「固定」為替レート、特に最初の「固定」が通貨圏の一部の国にとって最適でなかった場合の、より広い問題を示すことにありました。特に、最初の「固定」が通貨圏の一部の国にとって最適でなかった場合、問題は時間の経過とともに蓄積され、しばしば激しい切り下げによってレートが「再固定」されるまで続きます。参加国が通貨政策において主権を維持するためには、グローバル・サウス内部の相対的競争力を長期的に調整する柔軟性が必要です。また、商品のような変動しやすいものの価格決定単位になるのであれば、新しい通貨は「安定的」でなければならないでしょう。

 最も重要なことは、新しい通貨は、単なる決済単位ではなく、将来的には資本と準備のための「外部通貨」貯蔵庫となる力をもたなければなりません。実際、私が新しい通貨単位が出現すると確信しているのは、妥協した「内部通貨」金融体制の外に、準備や投資のための実行可能な代替手段がない現状があるためです。

 それで、こういったすべての問題を考慮して、どんな解決策を提案されますか?

 S. Tzu:最初に明々白々なことを申し上げます。この問題を技術的に解決することは、ニューコイン圏への参加を希望する国々の間で政治的な合意形成に至るよりずっと簡単です。しかし、現在の必要性は急を要しているので、必要な政治的妥協点は、すぐに見つかると私は考えています。

 ですので、まずは、ニューコインの技術的な設計図の一つを紹介させてください。まず、ニューコインは部分的に(少なくとも価値の40%を)金に裏打ちされるべきであると申し上げましょう。その理由は後でお分かりいただけるかと思います。ニューコインの残りの60%は、参加国の通貨バスケットで構成されることになります。金がこの仕組みにおける「外部通貨」としての軸となり、通貨バスケットの要素が参加国の主権と通貨の柔軟性を維持することを可能にするということです。そしてニューコインのために、中央銀行を設立する必要があるのは明らかです。というのもこの中央銀行から新しい貨幣が発行されることになるからです。この中央銀行は、通貨スワップ*の取引先となるとともに、この体制の決済機関の役目を果たし、規制をかけることもできます。どの国も、いくつかの条件を満たせば、自由にニューコインに参加することができます。
* 異なる通貨間の金利を交換する取引のこと

 まず、ニューコインに参加しようとする国は、国内の保管場所に抵当権等が設定されていない金があることを証明し、対応する額のニューコインを受け取るのと引き換えに一定額の金を有していることを誓約する必要があります(この際に前述の40%の比率が適応されます)。この最初の取引は、ニューコインを裏打ちする「金プール」へ金を売却することにより、経済的等価性が保たれることになります。つまり、そのプールに裏打ちされたニューコインの比例額との交換になるということです。この取引の法的形式は実際にはあまり重要ではなく、発行されるニューコインが常に少なくとも40%の金で裏打ちされていることを保証するために必要なだけです。全部の参加国が十分な所有量が常に存在すると確認できるのであれば、各国の金所有量を公にする必要すらないのです。年に一度共同監査が行われ、監視体制が整備されれば十分でしょう。

 第二に、ニューコインに参加しようとする国は、自国通貨による金価格の算定方法を確立する必要があります。おそらく、参加する貴金属取引所の1つが、それぞれの自国通貨で金の現物取引を開始することになるでしょう。これにより、各国の自国通貨の公正な相場が確立されることになります。「外部通貨」の仕組みが使えるので、長期的な調整が可能になるからです。ニューコイン参加前の各国の通貨における金価格は、新たに発行されるニューコインのバスケットにおいて高くなります。各国は主権を維持し、自国通貨をどれだけ放出するかは自由ですが、その放出量は、最終的にはニューコインの価値に占める自国通貨の割合で調整されることになります。同時に、ある国が中央銀行からニューコインを追加で入手できるのは、追加の金塊の誓約との引き替えに限られます。その結果、ニューコインの各参加国の金換算の価値は透明で公正なものとなり、ニューコインの価値も透明化されることになります。

 最後に、中央銀行によるニューコインの放出や売却は、ニューコイン圏の外部にいる人が金と交換する場合にのみ許可されます。つまり、外部の人間が大量のニューコインを入手する方法は、現物の金と引き換えに受け取るか、提供した商品やサービスの対価として受け取るかの2つだけです。同時に、中央銀行は金と引き換えにニューコインを購入する義務を負わず、「*取り付け騒ぎ」のリスクも取り除かれることになります。
* 銀行が信頼を失い預金者が銀行から預金を引き出そうと殺到することにより生じる混乱

 間違っていたら訂正してください。この提案では、ニューコイン圏内のすべての取引と、すべての外部取引の基準を金相場に固定するようです。この場合、ニューコインの安定性はどうなのでしょうか? 結局のところ、金は過去において(価格が)不安定でしたので。

 S. Tzu: 例えば、金のドル価格が大幅に下落した場合、どのような影響があるのか、ということだと思います。この場合、ニューコインとドルの間に直接的な相互関係はなく、グローバル・サウスの中央銀行がニューコインと引き換えに金を買うだけで、売るわけではないので、裁定取引*は極めて困難であることがすぐにわかるでしょう。その結果、ニューコイン(または金)で表される通貨バスケットの変動率は極めて低くなります。そして、これこそが、この新しい通貨単位の「外部通貨」の軸が貿易と投資に与える意図したプラスの影響なのです。明らかに、いくつかの主要な輸出商品は、グローバル・サウスによって金とニューコインのみで価格が決定され、ニューコインに対する「銀行の取り付け」や投機的な攻撃はさらに起こりにくくなります。
* 市場間、現物・先物の価格差で利益を得る取引(英辞郎)


 時間の経過とともに、グローバル・ノースで金が過小評価されれば、輸出やニューコインと引き換えに、金は徐々に、あるいは急速に、グローバル・サウスに引き寄せられるでしょう。これは「外部貨幣」体制にとって悪い結果ではなく、準備通貨としてのニューコインの幅広い受容を加速させるでしょう。重要なのは、ニューコイン圏外では現物の金準備が有限であるため、不均衡は必然的に是正されるであろう、ということです。というのもグローバル・サウスが主要商品の純輸出国であるという状況はこの先も変わらないでしょうから。

 今おっしゃったことには、貴重な情報が詰まっています。近い将来、全体を再検討して、あなたの考えに対する読者からの反応を議論すべきかもしれませんね。さて、マリナロシャ駅に到着したところで、そろそろ降りましょう!

 S. Tzu: これからもよろしくお願いします。またの機会を楽しみにしています!
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ジョージアの「外国の工作員排除」法案廃案事件から、世界が冷戦時代に回帰している様が見える

<記事原文 寺島先生推薦>

Fyodor Lukyanov: Why is everyone looking for ‘foreign agents?'
The latest fashion is a sign that the pendulum is swinging back to the Cold War-era of separate blocs

フョードル・ルキャノフ:なぜ皆が「外国の工作員」を探しているのか?
最新の潮流が示しているのは、世界各国が、いくつかの集団に分かれていた冷戦時代への揺れ戻りつつあることだ。

筆者:フョードル・ルキャノフ(Fyodor Lukyanov)
「世界情勢におけるロシア」誌の編集長。外交及び防衛政策委員会幹部会議長。ヴァルダイ国際討論クラブの研究部長。

出典:RT

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月29日



ジョージア政府及び外国の工作員に関するロシアの法律の採択に反対する抗議活動でプラカードを手にした抗議者たち。ブリュッセルの欧州議会近辺にて。2023年3月8日© Valeria Mongelli / AFP


 ジョージアが今月(3月)上旬に新聞の見出しを飾ったのは、ジョージア政府が「外国の工作員」に関する法案を通過させようとしたことについてだった。この法案(実際には、法案は2つ存在していた)は、最終的には却下され、この件に関する政府の取り組みは当座のところ取りやめられることになった。この事象が普通でないのは、ジョージア政府が親露でも反西側でも全くないのに、突然に世界の報道機関からこれほどまで激しく蔑まれたことだ。

 もちろん、今の世の中は、何でも白黒を付けたがる世の中だ。とはいえ、この事例は、より広い文脈から見た方がより興味深い。

 「外国の工作員」という考え方は、第二次世界大戦前夜の米国で、敵国からのプロパガンダ(自分たちにとって都合のよい情報を広く流す行為)に対抗するために導入されたものだ。この古い考え方が、21世紀のいま復活している。最近まで、この「外国の工作員」という考え方は、ロシアと西側の論争で使われてきた。西側は、ロシア政府を非難し、この考え方を、公共の場から異論を唱える人々を排除するために利用しているとしていた。ロシア政府の主張は、市民には、外国からの資金が国内でどう使われているのかを知る権利があるというものだったが、西側からは、そのような主張は自由を制限することを正当化する口実に過ぎないと片付けられている。西側の主張では、「文明社会」は「政府から独立した組織から」資金提供を受ける権利があるというものだ。

 この点において、今あちこちでますます頻繁に見受けられるようになった根本的な矛盾が存在する。その矛盾とは、NGOが国境を越えて資金提供を行うということが、良いことだとされるだけではなく、当たり前で必要なことであるという考え方だ。そしてこの考え方が、リベラル(自由)なグローバリゼーション(世界の一体化)の時代の産物であり特徴になっているのだ。 論理的に考えれば、この視点は、リベラルなグローバリゼーションという概念からすれば、自然とそこに帰結するものなのだ。その目的が、貿易面や経済面、さらには理想だが政治面における障壁を取り除き、世界単一の規制当局を創設することにあるとすれば、非政府組織が各国政府と結びつくことは全く許されないこととなるだろうし、世界規模の諸組織と可能な限り繋がらなければならなくなるだろう。



関連記事:マイダンとの共鳴:ジョージアには西側が資金提供している巨大なNGO勢力と暴力的な反政府運動がある。繋がりはあるのだろうか?


 各国のNGOが世界規模の組織と繋がるべきだという考え方は、市民社会に関する古典的な定義とは矛盾する。その本質とは、まさにボトムアップ(下意上達)だからだ。つまり、各国の国内から動きが起こるべきだという考え方だ。しかし西側の考えによれば、トップダウン(上意下達)のやり方が是とされている。もちろん、そうするのが都合がいいときに限られているが。

 5年前、米国は対外政策の中核に、大国間の敵対関係の復活を明記した。その政策は、それまでの冷戦終結後の時期に取られていた政策と一線を画すものであった。冷戦終結後には、この流れが今の西側の対外政策の本質になったのであるとすれば、全ての手段はその方向で講じられていて、以前唱えられていた、「金に国籍はない」や「情報は障壁なく伝えられるべきだ」といった方針は、新たな政策においては、もはや想定外となったのだ。

 この20年間、社会・政治面においても、情報活動においても、各国家の間にはかなりの程度まで開かれた関係が確かに築かれてきた。その理由のひとつは、冷戦後に各国の大使館職員の数がどんどんと増やされたことにある。市民社会とのやり取りも含めて大使館の仕事範囲が拡大されていたからだ。しかし2018年を境に、外交官の数が大幅に減らされたのだ。そのことは、諸国間の関係が崩れたことと関係があるのだが、客観的根拠もある。それは大使館の仕事が昔に戻りつつあることだ。つまり、仕事範囲が狭まったために、そんなに多くの職員が必要なくなったのだ。

 同じような現象が報道活動においても当てはまる。冷戦終結後は、報道活動は比較的自由に行うことが許されていた。しかし、この分野における風潮が変わり、情報活動業界において西側が有する情報源が世界を牛耳っている現状に疑問を唱える声が、西側以外のところからあがってきたのだ。

 西欧や米国では、ロシアのニュース報道機関(中国の報道機関に対しても一定程度)に対して制限措置をとっている理由の説明として、ロシアと中国の報道機関は、国家が資金を出しているという事実をあげている事実をあげている。いっぽう西側の報道機関は、国所有の報道機関もあるが、多くが民間企業であるという説明だ。



関連記事:西側は「地獄からの制裁」によりロシア経済は崩壊すると考えていた。その目論見が外れた理由とは?


 西側によるこの言い分(すべてに当てはまるわけでは全くないが)が正しいとしても、近代の西側諸国の社会・政治構造においても、国家と非国家組織が密接に絡み合っていることは事実だ。したがって、今の西側の構造においては、公的には政府から独立しているとされている組織が国家の意を受けた活動に従事することもありえるのだ。逆もありえるが、そうなることは極めて稀だ。

 そうかもしれないが、これまでの経済や政治におけるグローバリゼーションの形から逸脱すれば、社会に近づこうとする古いやり方はもはや維持できないことになる。 そしてこのような古い形は、もはや、ロシアと西側のあいだの問題の原因になっていない。というのも、当初ロシアは可能な限り自国を外に向け、西側社会と統合しようという期待を持っていたが、その後そのような目的を考え直し、そのような方向性から手を引いたという歴史があるからだ。そのような外に開こうという方向性は、1990年代から2000年代にかけて急速にロシアに根を下ろしてはいたのだが。

 中国を例に取れば、経済面に関しては世界の国々との結合を深めてはいるが、社会・政治面を、外国勢力に差し出すことは決してなかった。しかし「誰が誰に、どこから資金を出しているのか」という縛りが急速に強められていることが、世界のどの国においても共通の懸念になっている。そしてそれは、その国の政体がどうであるかは関係ない。

 異論を唱える人が全て外国の工作員であると決めつけてしまう今の新たな状況は危険だろうか? 間違いなくその答えは、「そう」だ。どの国の政府も同じ本能に駆り立てられている。残念なことに、この新たな現状は、「開かれている」というこれまでの時代を受けた避けられない到着点なのだ。いまや振り子はゆり戻され、冷戦期のような真逆の方向に逆戻りしている。
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ドイツ:「巨大ストライキ」で交通停止―生活費上昇で大幅な賃上げ要求

<記事原文 寺島先生推薦>

‘Mega strike’ hits Germany
Hundreds of thousands of public transport workers walked off the job on Monday, bringing the country to a halt

月曜日、数十万人の公共交通機関の労働者が職場を離れ、国内の動きは停止した。

2023年3月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月28日

独、巨大ストライキ
ドイツ・フランクフルト・アム・マインの主要駅で公共交通機関のストライキ中、携帯電話をチェックする通勤客(2023年3月27日撮影) © AFP / Andre Pain


 月曜日(3月27日)、40万人以上の公共交通機関の職員が24時間ストライキに参加したため、ドイツ全土で空港、バス停、鉄道駅が停止した。労働者たちは、昨年からドイツで急騰しているインフレを補うための賃上げを要求している。

 ストライキは午前0時に始まり、火曜日(28日)の午前0時に終了する予定である。ドイツの主要8空港が影響を受け、ドイツ空港協会は、約38万人の旅行者が足止めを食らったと推定している。ミュンヘン空港は日曜日から完全に閉鎖され、すべてのフライトがキャンセルされ、ターミナルは閑散としていた。


 ドイツ鉄道は月曜日(27日)に、長距離路線はすべて運休し、地域路線は月曜日の夕方までに一部の地域で再開されただけだと発表した。路面電車、バス、地下鉄も全国で影響を受けた。

 貨物列車も停止し、ドイツ最大の港であり、ヨーロッパで3番目に交通量の多いハンブルグを発着する船舶の輸送も停止した。

 このストライキは、いくつかの主要な労働組合が出した賃上げ要求の結果である。約250万人の従業員を代表する公共サービス労組のヴェルディ(Verdi)は500ユーロ(75000円)を下回らない10.5%の賃上げを要求している。ドイツ鉄道とその他のバス会社の従業員約23万人を代表するEVGは、650ユーロ(92000円)を下回らない12%の賃上げを要求している。

独ストライキ その2

関連記事:ドイツは今や、米国産LNG中毒に(ドイツ国会議員)


 月曜日(27日)ナンシー・フェーザー内務大臣は、ロイター通信に対し、政府と労働組合の間で今週中に合意が成立する可能性が高いと述べた。

 公共サービス労組ヴェルディの代表であるフランク・ヴェルネケ氏はドイツのメディアに対し、およそ40万人の労働者がストライキに参加したと語った。ドイツの新聞は、この職場離脱を「メガ・ストライキ」と表現し、このような混乱は過去数十年で最大であるとしている。

 ヴェルネケ氏はドイツのBild紙に、賃上げの確保は生活費の上昇に対応するのに苦労している何千人もの従業員にとって「生存に関わる問題」であると語った。

 かつてヨーロッパの経済大国であったドイツは、工業生産高が縮小し、インフレ率は1990年代半ばから昨年ロシアがウクライナで軍事行動を開始するまでの0~2%の安定した割合から上昇し、2月には8.7%に達した。

 ドイツはウクライナ紛争以前、ロシアのガスと石油の輸入に大きく依存していたが、EUの制裁発動と米国が画策したとされるノルド・ストリーム・ガスパイプラインの破壊により、その輸入はすべて停止された。ドイツ政府は1月、今年の景気後退を辛うじて回避すると発表したが、格付け会社のフィッチは今月初め、ドイツ経済は2023年後半までに景気後退に突入すると予測した。
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ウクライナは米国にクラスター弾の供給を要請(ロイター通信の報道)

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine asks US for cluster munitions – Reuters

出典:RT

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月28日



アルチョモフスク(ハバムト)市近郊でドローンを飛ばしているウクライナ兵。2023年3月5日Aris Messinis / AFP


 報道によると、キエフ当局はMK-20クラスター弾を求めているという。この武器は100カ国以上で禁じられている武器だ。

 ロイター通信の3月6日(月)の報道によると、「ウクライナは自国からの要求を一段と強め、問題の多いクラスター弾の提供を求めており、この武器を使ったドローンによるロシア軍を標的にした攻撃を行いたいと考えている」と複数の米国会議員が語ったという。

 このクラスター弾が100カ国以上の国々で禁止されているのは、一般市民に大きな危険を与える可能性があるためである。ただし、ロシアやウクライナ、米国では禁止されていない。

 米国のジャスコン・クロー、アダム・スミス両下院議員は、下院軍事委員会の委員であるが、この両議員によると、キエフ当局は、ジョー・バイデン大統領政権にこれらのクラスター弾の輸送を承認するよう米国議会に要請したという。

 米国はこのような武器の輸出を法律で禁じており、今のところ大統領府からこの動きを支持する意図は表明されていない。

 ウクライナが特に求めているのは、MK-20クラスター弾であるが、この爆弾はドローンから投下でき、既にキエフ当局が要請している155ミリクラスター砲弾に続くものである、と両議員はロイター通信に答えている。両議員によると、この要請が出されたのは先月(2月)のミュンヘン安全保障会議の場であったという。

クラスター爆弾

関連記事:NATO加盟国の一つが、禁止されているクラスター弾をウクライナに供給しようとしている。(メディア報道より)

 
 MK-20クラスター弾は、戦闘機から投下され、240発以上の子弾を空中から発射できるものだ。スミス議員によると、ウクライナ軍は、これらの武器は、従来使用してきた武器よりも、「装甲を貫通させる性能」を強く持っていると考えているという

 クラスター弾に問題があると考えられている理由は、多数の子弾を広範囲にまき散らす力があり、それは何らかの力が加わらないと爆発しないままじっとしているからだ。この武器は、2008年の「クラスター弾に関する条約(CCM)」において禁止されたのだが、この条約には100カ国以上が署名している。ただし、世界規模で採択されている条約ではない。

 ウクライナがロシアと戦うためのクラスター弾を米国に要求してきたのは、少なくとも昨年秋からのことであると「外交政策誌」は報じている。しかしワシントン当局はこの要求には乗り気ではなく、安全保障委員会のジョン・カービー報道官は12月、「我が国の政策からすれば、このような種類の爆弾の使用には懸念がある」と語っていた。

 キエフ当局がソ連時代のクラスター武器を住宅街で使用してきたという事例は多数報じられているが、それはモスクワ当局がウクライナに軍を侵攻させた前も後も行われてきたという。もっとも注目を浴びた攻撃は昨年3月のもので、当時クラスター弾を搭載したトチカUミサイルにより、ドネツクで20人以上がなくなり、それ以外にも数十人もの負傷者が出ている。キエフ当局は、この攻撃に対する責任を否定している。人権団体である「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の昨年5月の声明によると、この事例は確認できなかったということだ。
関連記事

英国の劣化ウラン弾の計画は欧州全域に脅威をもたらす

<記事原文 寺島先生推薦>

UK’s depleted uranium plan threatens all of Europe – Moscow

ウクライナでの紛争が、「欧州人が最後の一人になるまで」の戦いに変質する可能性につながると、ロシア国家院議長が警告

出典:RT

2023年3月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月28日


ヴャチェスラフ・ヴォロージン露国家院議長© Sputnik/Vladimir Fedorenko


 劣化ウラン弾をキエフ当局に供給するという英国政府の決定は、危険な潮流のひとつであり、ウクライナでの紛争を欧州全土に拡大させる危険を招きかねない、とロシアのヴャチェスラフ・ヴォロージン国家院議長が警告した。

 「“ウクライナ国民が最後の一人になるまで”という戦争が、“欧州人が最後の一人になるまで”という戦争に変わってしまうかもしれない」と同国家院議長は、ソーシャル・メディア上に投稿した。

 多くのロシア政府当局者が警告した内容は、キエフ当局を支援している西側諸国は、地政学的な利益のために全てのウクライナ国民を犠牲にする覚悟はあるのかという点だった。

 ヴォロージン国家院議長の主張によると、キエフ当局が劣化ウラン弾を手にすれば、戦場が放射能で汚染され、この先何世代もの人々に危険な健康状態を生じさせる可能性があるとのことだ。そしてこの劣化ウラン弾を足掛かりとして、もっと危険な武器が投入される可能性についても触れた。次の段階は、「キエフ政権が汚い爆弾(放射性物質散布装置)を使用する、あるいは戦略的核兵器を配備することになる可能性がある」とヴォロージン国家院議長は付け加えた。



関連記事:プーチンはウクライナに劣化ウラン弾を供給しようとする英国に警告


 ウラジミール・プーチン大統領は今週、英国によるこの決定に懸念を表明し、ロシアは「断固としてこの決定に対応し、西側諸国連合が核物質を持つ武器の使用を既に始めていると解釈する」と警告を発した。

 ロシア軍の昨年10月の主張では、ウクライナ国内のふたつの施設において、いわゆる「汚い爆弾」の製造方法が伝達されたとのことだった。その爆弾の材料として使用されたのは、キエフ当局がソ連領だった時期からずっと使える状態にあった物質だった。以前ロシア国防省は、ウクライナ国内で核燃料や核廃棄物を保管している箇所の一覧を表示していた。

 汚い爆弾は、従来の爆発物を放射性物質で包んだ構造になっており、爆発すれば、深刻な放射能汚染を引き起こす爆弾だ。キエフ当局はこの爆弾に関する疑惑を否認し、国連の核に関する査察機関である国際原子力機関(IAEA)を招聘し、ウクライナ国内のいくつかの原子力施設の調査を依頼した。その中には、ドニプロペトロフシク州の東部鉱物濃縮工場とウクライナの首都にある核研究施設が含まれていた。

関連記事:ウクライナは核保有国?ロシアが脅威であるとされる「懸念」の中で、世界は真の危機を見落としている。

 ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長 の11月の報告によると、この査察により、この2箇所及び3つ目の箇所であるドニエプル市内のロケット建設工場において、未申告の行為が行われた証拠は見いだせなかったとのことだ。

 英国政府の月曜日(3月19日)の発表によると、英国はウクライナに、劣化ウラン弾を含む徹甲弾を送る方針だという。これは既に約束しているチャレンジャー2主力戦車の供給に付随するものだ。
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マクロン大統領の年金改悪に反対する100万人以上のデモで、警察がデモ隊と衝突

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Violent protests grip France — RT World News

フランスで暴力的なデモが発生

出典 RT 

2023年3月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月27日


© Twitter

 フランス当局は木曜日(3月23日)、エマニュエル・マクロン大統領の年金改革に反対する全国的な抗議デモを抑えるのに悪戦苦闘した。100万人を超えるデモ隊が全国で街頭に繰り出し、一部の治安筋はパリの政府に対する「暴動」と表現した。

 数万人の労働者がストライキを行い、デモ隊は公共交通機関、学校、石油精製所を封鎖した。デモ隊を追い払うために、警察は催涙ガス、高圧放水銃、閃光弾、警棒などを使った。ソーシャルメディアでは動画が出回り、重装備の警官が非武装のデモ参加者を棍棒で殴っている様子を映し出していた。


 他の映像では、パリの路上でバリケードが燃えている様子が映し出された。ヌーヴェル・アキテーヌの州都ボルドーでは、市庁舎の入り口が燃やされる事態も生じた。

 少なくとも消防士の一部隊が寝返って、デモ隊に合流した。複数の目撃者は、この状況を 「制御不能」と表現している。

 「パリは戦争状態だ、投稿する暇はない、気をつけろ」と、ある独立系メディアはツイートしている。


 150人近い警察官と国家公務員が負傷し、ラルド・ダルマナン内相は23日夜、この状況を「絶対に容認できない」とし、犯人の厳しい処罰を要求したと発表した。

 またダルマニン内相が記者団に語ったところによると、パリでの「略奪と放火」に関する尋問のため172人が拘束され、フランスの首都で190件の火災が発生し、そのうち50件は現地時間午後10時の時点でまだ燃えているとのことだ。 

 内相は、暴力の中でも特にひどいのは「極左」と「ブラックブロック」(黒装束をまとった過激派アナキスト主体の連合体、もしくは抗議の戦術)の無政府主義者であると非難した。

 警察は100万人以上の抗議者が街頭にいたと推定している。

 国民の不満の爆発の引き金は、マクロン大統領が来年から定年を62歳から64歳に引き上げると発表したことだった。マクロン大統領は、国民年金制度の破綻を防ぐために、この変更が必要であると主張している。


 エリゼ宮(フランス大統領官邸)は、1月以来、物議を醸すこの提案を検討しようとしていた議員に相談することなく、この変更を行った。これに対し、デモ隊はマクロン大統領に辞任を要求した。

 水曜日(3月22日)にテレビに出演したマクロン大統領は、自分の唯一の過ちは、この決定の利点を「人々に納得させることができなかった」ことだと述べ、たとえそれが「不評を買う」ことになったとしても、自分は引き下がらないと主張した。


 憲法で保護された抗議する権利はあるが、不満分子が暴力を行使するならば、「それはもはや民主主義ではない」とマクロン大統領は述べた。

 マクロン大統領はコロナウイルス対策としての過酷な封鎖や命令により激しく批判されたが、2022年には容易に再選を果たし、最終的には17ポイント差でマリーヌ・ルペンを破って当選した。なお決選投票では、1969年以来最低の投票率を記録した。
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ジュディ・ミコビッツ博士「1980年以降、すべてのウイルスは、研究所で作られた生物兵器です。」

<記事原文 寺島先生推薦>

Dr. Judy Mikovits: Since 1980, all viruses are bioweapons that have been created in laboratories

出典:COLDWELLIAN® TIMES DIE INFORMATIONS REVOLUTION™

2023年3月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月26日

ジュディ


 英国におけるCovid死亡の90%以上は、Covidのワクチン注射を受けた人たちである。これは驚くべきことではない、とジュディ・ミコビッツ博士は言う。なぜなら、HIV以降のすべてのウイルスは、機能獲得技術を使って作られているからである。言い換えれば、HIV以降のすべてのウイルスは、実験室で科学者によって開発されてきたものなのだ。

 ジュディ・ミコビッツ博士は、研究者でありウイルス学者でもある。同世代の中で最も優れた科学者の一人と呼ばれている。1991年に発表した博士論文は、HIV/AIDSの治療に革命をもたらした。「プランデミック(Plandmic)」という題で有名な記録映画は、最も視聴回数が多く(10億回以上)、最も検閲された記録映画の1つである。ミコビッツ博士は、物議をかもす科学的発見をしたために、令状なしに逮捕され、罪状なしで収監された。彼女の物語については、こちらこちらで詳しく読むことができる。彼女は以下のような多くの本の著者である: マスクの真実」、「腐敗の疫病」、「インターフェロンの事例」、「疫病を終わらせる」、「マスクの事例」など多くの著書がある。ミコビッツ博士の講演やプレゼンテーションは、彼女のウェブサイト(こちら)または彼女のRumbleチャンネル(こちら)で見ることができる。

 「Covid19を含む多くのウイルスは、自然界に存在するものではありません。それらは人用に作られた生物兵器です。「HIV以降の全てのウイルスは、予防接種によって機能を獲得した感染症なのです」と、ミコビッツ博士はシチュー・ピーターズに語った。

 「HIVは90年代初頭にB型肝炎の予防接種で広まりました。その予防接種が機能獲得型HIVの(由来する)ところで、ゲイに関連した免疫不全に関連したLAV(リンパ節腫脹関連ウイルス)由来ではなかったのです。エイズは決してゲイに関連した免疫不全ではありませんでした。つまり、自然なエイズウイルスは存在しないのです。」

 追加資料:エイズとAZT*醜聞。エイズの流行は、コロナウイルスAZT、レムデシビルを私たちに与えたのと同じ人たちと、製薬会社の不思議な薬のための尖兵トニー・ファウチによって作られた! 必見の動画です!
*アジドチミジン(azidothymidine, AZT)。商品名はレトロビル(Retrovir)。世界初の抗HIV薬として1987年3月に生まれた。

 「ウイルスなんて存在しない」と主張する人がいるが、ミコビッツ博士はこう語っている。「ウイルスは存在しますが、それは作成された小さな生物兵器で、1980年以降、常に注射によって感染が行われています…これはトニー・ファウチによる40年にわたって行われている生物兵器事業です。フォート・デトリックで、ロシア、中国、日本との全面的な協力のもとで行われてきました」。

 では、なぜミコビッツ博士がそのことを知っているのか? その訳は、彼女は研究所の人々にウイルス培養の方法を教えていたからだ。ミコビッツ博士は、1980年6月10日から2001年5月11日まで、フォート・デトリック(メリーランド州フレデリックにあるアメリカ陸軍未来司令部の施設)で、抗ウイルス薬メカニズム研究室の入門レベルから最高レベルまでの責任者を勤めていた。「SARS-CoV-2の亜種が作られたことをしっかりと覚えています。ただ当時は、そのゲームについては知りませんでした。でも今なら、私たちはそのゲームが何だったのかが分かります」と彼女は言った。

 SARS-CoV-2ウイルスは、2004年に作成されて以来、すべてのポリオ*ワクチンで人々に注射されている。ドイツ、アメリカ、中国との共同開発で作られたものである。2020年以前は、このウイルスによる症状はふつうの風邪とされていた、とミコビッツ博士は説明する。「このウイルスによる症状はインフルエンザの予防接種を受けるたびに悪化してきました...2020年のWolfe論文から、2017年から2019年の間にインフルエンザの予防接種を受けた人は皆、Covidと診断される可能性が36%高いことが明らかになっています」と彼女は言った。「インフルエンザ予防接種(2017/8)がこの(Covid大流行を)牽引したのです」。*脊髄性小児麻痺

 SARS-CoV-2はコロナウイルスではない、とミコビッツ博士は言う。「そのウイルスは、一部分はエイズ、一部分はシンシチンと蛇毒、そして一部分はSARSで構成されています。それは2004年に兵器化として作られたものなのです」。

 フォート・デトリックで作られたSARS-CoV-2生物兵器は、薬瓶で中国に輸送された。ウクライナ、中国、シアトル、ノースカロライナなどにあるすべてのBL-4(生物学的安全性レベル4)の研究所がCovidの配備に参加した。

 「英国のウェルカム・トラスト、フランシス・コリンズ、ジョナサン・ストウ、ジョン・コフィンは、この件に全面的に関与しました。彼らは私たちの2009年発表の科学論文(慢性疲労症候群[CFS]とレトロウイルスXMRVを関連付けたもの)を審査しました。彼らはそれを隠蔽する計画を立てていました。ウェルカム・トラストと英国は、最初からグルだったのです。ME*/CFSと診断された人々を殺すために...私たちは汚染された血液を供給されていました。汚染物質や動物ウイルスを使用した、ひどく汚染されたワクチンの供給を受けていたのです。1986年に製造者が果たすべきとされてきた全ての責任が免除された後は、一回の安全性調査も経ずに野放しでウイルスが注射されてきました」。ミコビッツ博士は、これらの犯罪を犯している数十人の中に、イアン・リプキンとトニー・ファウチの名前も挙げている。
*筋痛性脳脊髄炎

補足資料:ヘビからスパイクタンパク質、注射まで、考慮すべきいくつかのこと

 「私たちがすべきことは、もう二度とワウチンを打たないこと、誰ひとりにも、です。...そうすれば、彼らがあなたに危害を与えることはありません」。


スチュウ・ピーターズ・ショー:英国では予防接種を何回も打った人は死んでいる:新しい研究は、英国でイギリス人は絶滅すると警告している。2023 年 3 月 6 日(25 分)
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フランス全土で 「年金改悪は止めろ!」 と巨大なデモと集会

<記事原文 寺島先生推薦>

France paralyzed by pension reform protestsThousands take to the streets over the government’s plans to raise the retirement age from 62 to 64.

フランスは年金改革に対する抗議で麻痺状態。定年退職年齢を62歳から64歳に引き上げるという政府の計画に、多数の人々が街頭に繰り出す。

出典:RT

2023年3月7日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月26日


フランス北東部ランスで、フランス大統領の年金改革に反対するデモに参加する人たち(2023年3月7日) © François NASCIMBENI / AFP


 年金改革に反対する全国的なストライキと集会により、フランスでは、交通機関が大きく乱れ、石油精製所や大学が麻痺しています。これは、労働組合が国を「停止」させるよう呼びかけたからでした。

 定年を62歳から64歳に引き上げるという政府の計画に反対する抗議行動の最新波が6日目を迎える中、労働組合は火曜日(3月7日)に「200万人以上」が集会に参加すると発表しました。ちなみに、これまでで最大のデモが行われた1月31日には、公式発表によると約127万人が参加しました。



 デモ行進は全国各地で早朝から始まり、群衆はレンヌ第二大学やリヨン第二大学など主要な高等教育機関を封鎖したと、ソーシャルメディア上の映像や地元メディアの報道は伝えています。



 フランス西部の都市、ラ・ロッシュ・シュル・ヨンのバス発着所前には、デモ隊がバリケードを築きました。また、パリ近郊のサン・ドニ・プレイエルでは、学生たちがバス発着場を封鎖しましたが、治安部隊に押し戻されました。

 学生団体「挙げられた拳」Le Poing Leveによると、少なくとも100人がフランス西部のレンヌとロリアンを結ぶRN24高速道路を封鎖しました。同団体は、警察が集会を解散させるために催涙ガスを使用したと主張しました。



 労働組合組織である労働総同盟CGT-Chimieは、「すべての製油所」の出口で燃料の輸送が阻止されたと述べました。石油メジャー「トータル・エナジー」(フランスのパリ近郊ラ・デファンス に本社を置く多国籍企業)の経営陣は「フランス通信社」AFPに、影響を受けたことを正式に発表しましたが、同社のスタンドでは「燃料不足はない」と述べました。

関連記事:フランスの抗議デモで火災と衝突が発生(動画あり)

 また、労働組合は公共交通機関でのストライキをすると警告しています。月曜日(3月6日)、フランス国鉄SNCFとパリ交通公団RATPは、フランス国内の列車の移動が「非常に深刻な混乱」に陥ることを公式に発表し、地下鉄の運行も同様となるだろうということでした。

 一方、フランス民間航空総局は、航空会社に対し、パリのシャルル・ド・ゴール空港とオルリー空港でそれぞれ20%と30%の定期便の減便を要請しました。

 年金改革に対する不安は、数週間前から急激に高まっています。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、今後25年間に予想される年金制度の赤字のためにこの構想が「不可欠」であると述べていますが、「エラベ」Elabeの世論調査によると、60%近くがこの改革に反対しており、国民の間でひどく人気がないことが判明しています。
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逮捕しようとしている対象はプーチンか? それとも一斉に反旗を翻している西側の民衆か?

<記事原文 寺島先生推薦>

Arresting Putin – Or Arresting All-Out Western Public Revolt?

筆者:フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)

出典:Strategic Culture

2023年3月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月25日

プーチン逮捕


 もし真の正義の道理が立てられるのであれば、バイデンこそが法廷に立たされ、米国による不法な戦争を起こしたという罪状で、罪を問われるのが筋だろう。

 喧伝を垂れ流す西側の報道機関(「ニュース・メディア」という名でも知られているが)は、ヘイグにある国際司法裁判所(ICC)が、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に逮捕状を出したという記事を突然大々的に取り上げ始めた。この大騒ぎ(つまりは画策された動きだと言えるのだが)の意図は、馬鹿馬鹿しい法的手段を使って、ことが重大かつ重要であるという印象付けをすることにある。というのも、実際のところは彼らの言う逮捕状などには意味がなく、政治上の茶番劇でしかないという匂いがプンプンしているからだ。

 プーチンとともに、ロシアの子どもの権利委員会のマリア・リボバ-ベロバ代表も「戦争犯罪」を問われる罪人として指名手配された。同代表の罪状は、2022年2月からのロシアによる特殊作戦実行中に、子どもたちをロシアに強制送還した疑いであるとされている。

 ICCのこの動きは、軌道を外れてしまった気候観測気球騒動と同じくらい軽薄なものだ。この逮捕状劇も、人々の目を現実から逸らさせようという傲慢な目くらましに過ぎない。ロシアが、子どもたちを含む何千もの人々を、もとのウクライナ領で今はロシア連邦の一部になっている地域から避難させたのには正当な理由があった。それはその地域が、NATOの支援するキエフのナチ政権から狙われる危険な地域だったからだ。ウクライナの軍隊は、ウクライナ領内のドンバスなどの地域に無差別砲撃をずっとかけてきたのだ。

 戦争犯罪の罪でしょっぴかれるべき人がいるとしたら、ウクライナのヴォロディーミル・ゼレンスキー大統領であり、その配下にあるナチに陶酔した司令官たちだろう。さらにはその資金提供者である、米国や欧州各国やNATOの指導者たちだろう。

 キエフ政権はこの9年間ずっとドンバスを砲撃し続けてきたが、それはCIAが手掛けたクーデターにより、今のファシスト軍事政権が権力を握ってからのことだ。NATOは、アゾフ大隊やナチスの武装親衛隊を彷彿とさせる民兵隊に訓練を施した。これらの隊員たちが、現在米国が提供したHIMARS(高機動ロケット砲システム)を発射している。そして彼らを援助しているのが、米・英・仏・独・加・波(ポーランド)からの傭兵たちだ。ロシアが昨年ウクライナに侵攻した理由は、大虐殺を終わらせるためだった。そしてこの大虐殺には、米国当局や欧州各国当局、さらには西側報道機関が加担してきた。しかしこの件に関して、いわゆる「報道機関の砦」と目されてきたニューヨーク・タイムズやBBCは沈黙している。

 この罪状が、ICCやその背後にいる西側勢力が考え抜いた、ロシアに対する最善の罪状だというのだろうか? 子どもたちの誘拐? 西側が主張していた、ロシアが住宅街や一般市民たちを砲撃していたという非難はどうなったのだろう? 西側の報道機関が大々的に報じていたこれらの主張が正しかったのであれば、なぜこれらの件を起訴の罪状に加えなかったのだろうか? そうしなかったのは、証拠が無さすぎたからだ。実際に住宅街や一般市民たちを盾に使っていたキエフ当局こそ、罪があるのだ。そのため、子どもたちを誘拐した容疑という、感情に訴える力のある言い掛かりが使われたのだ。こんなドン引きさせられるような論法を駆使しているだけでも、この件がでっち上げであるという証拠になろう。

 これだけでも既に西側の主張やICCの動きの軽薄さは十分伝わるが、さらにそれに輪をかけた事実も存在する。

 それは、ICCはロシアに対して司法権を行使できる組織ではないという事実だ。したがって、逮捕状などなんの意味もなさない。逮捕状が出たからといって、全く深刻に受け取るものではないということだ。この件は、モスクワ当局に轟々たる非難を浴びせるための政治的茶番に過ぎない。

 またこの裁判所は、米国に対しても司法権を行使できない。ということは、ICCは以下のように措置することも可能なのだ。つまり、「もし真の正義の道理が立てられるのであれば、バイデンこそが法廷に立たされ、米国による不法な戦争を起こしたという罪状で、罪を問われるべきだろう。具体的には、イラク、アフガニスタン、リビア、シリア、イエメンなどの国々で米国が起こした戦争のことだ」と。

 最近犯した罪を挙げれば、バイデンとその犯罪仲間であるNATO諸国は、ノルド・ストリーム・ガス・パイプラインを爆破させた罪で法廷に立たされるべきだ。

 あるいはイスラエル政権に資金と武器を提供し、パレスチナに対する新たな戦争犯罪を実行させた罪もある。

 あるいは発信者であるジュリアン・アサンジを迫害し、虐待した罪もある。彼が迫害された理由は、米・英の戦争犯罪についての真実を暴こうとしたからだった。

 恐るべき偽善と二重基準も、さらなる証拠となる。そんな証拠が必要となれば、の話だが。ICCがロシアに対して発した最新の画策は、安物の政治ショーで、その目的は、米国とその西側の腰巾着の国々が欲しがっている権威を高めることにある。

 米・英の指導者たちがロシアに対するICCの起訴を賞賛した今週というのは、米国が主導したイラクでの戦争が始まって20年になる週だった。この戦争により、100万人もの一般市民が殺害され、全くの嘘に基づいて一つの国が破壊された。この嘘というのは、当時上院議員だったバイデンが広めるのに手を貸した嘘だった。これらの罪の主たる実行者というのは、ジョージ・W・ブッシュとトニー・ブレアなのだが、彼らのことがICCの法律家たちの口から漏れたことすらない。なぜそうなのだろうか? その理由は、ICCがカンガルー裁判所(正当な法の基準を無視した、一部の勢力の言うことだけを飲む裁判所のこと)にすぎず、西側帝国主義から政敵を追い込むための政治上の駆け引きに使われる裁判所だからだ。

 今のほかのニュースを挙げると…

 ジョー・バイデンとその一族が、中国の複数の業者から何百万ドルにも上る金銭を不法に受け取ってきたというこれまでの疑惑をさらに裏付ける報道がどんどん出されている。バイデンと彼のヤクまみれの息子であるハンター(亡兄の未亡人と不倫をしていた)が、汚職に手を染め、手段を選ばずにいかがわしい行為を行っていたのだ。具体的には「父親の」政治的地位を担保として利用していたのだ。CIAが手引きした2014年のクーデター後に、同じ詐欺の手口が、バイデンのウクライナとの間の非公式の事業でも使われていた。

 さらに、先週起こった事件だが、シリコンバレー銀行を始め米国のいくつかの銀行が負債を抱えて破綻したことを受けて、米国の銀行制度においてさらなる歴史的な崩壊が起こりつつある。金融業界全体を襲うであろう来たるべき金融崩壊を食い止めるために、バイデン政権は再度何千億ドルもの税金を使って、ウォール街を救済する方針だ。

 別のニュースは、米国内や欧州の何百万もの労働者たちが、街に繰り出し、腐敗した資本主義政権に対して、前例のない規模のストライキや抗議活動に打って出ていることだ。フランスでは、この革命のような風潮が頂点に達していて、特権階級出身のエマニュエル・マクロン大統領(例えれば、ルイ16世のような人物だ)は、法律により公共支出の削減を断行したが、その際意図的に議会審議(まあ、そんな議会審議などはまやかしに過ぎないが)をせずにその法案を通した。しかし、欧州や米国のあちこちで、民衆は、いわゆる自国政府に対してますます我慢ならず、敬意を持てなくなっている。というのも、各国政府は何千億ドルものお金をウクライナでの狂気のような代理戦争につぎ込んでいるからだ。しかもその敵は核保有国のロシアなのだから。しかもまさにその西側の特権階級出身の支配者たちは、苦しんでいる市民たちにさらなる緊縮財政を求めているのだから。このような状況が、不平等や欠乏や野宿生活や飢餓や貧困が社会を押し潰している中で進行しているのだから。

 さらに私たちの耳に聞こえてくるのは、西側の報道機関が今週嬉々として報じているニュースだ。それは、米国が主導するNATO枢軸諸国が、キエフ政権に対して戦闘機を送ろうと動いていることについてだ。この動きは、既にレオパルドやエイブラムス、ルクレーク、チャレンジャーといった戦車をウクライナに供給しようという動きに続くものだ。こんないかれた行動をとれば、ロシアとの全面戦争になってしまうだろう。西側の指導者層とその反響室たる報道機関によるこの動きが、あまりにも現実離れしているので、革命を起こすような民衆の怒りが引き起こされているのだ。そう、まるでマリー・アントワネットや、彼女の迷言「パンがないならケーキを食わせろ」が、フランス革命を引き起こしたように。

 西側が起訴状を出したがっているのは、民衆が日々募らせている怒りや嫌悪感についてなのだ。その民衆の怒りの対象は、腐敗した西側がやってきた大騒ぎが崩壊したことに対してだ。言い換えれば西側の資本主義のもとでの民主主義、さらに言い換えれば億万長者と戦争亡者による独裁体制に対するものなのだ。

 バイデン、マクロン、フォン・デア・ライエン、ストルテンベルグ、トルドー、ショルツや仲間たち(貴殿の国の道化師のような指導者の名をご記入あれ)が、プーチンを逮捕することを本気で考えているわけがない。各国の指導者たちが本気で考えているのは、ますます激しさを増している市民による反対運動を抑圧することだ。というのも、これらの市民が反対しているのは、西側資本主義の道化師たちが見せているチンケな出し物に対して、だからだ。
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「嘘の帝国」の反撃:ノルド・ストリーム破壊に対する尋常でない隠蔽工作

<記事原文 寺島先生推薦>

The Empire of Lies Strikes Back… Extraordinary Cover-Up of Nord Stream Terrorism

出典:Strategic Culture

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月25日

嘘の帝国


欧米の報道機関は、ジャーナリズムの頂点に立ち、公共の利益と民主主義の擁護者であると威張り散らしている。彼らは、ワシントン(嘘の帝国)のプロパガンダ省に過ぎないのである。

 ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする欧米のニュースメディアは、今週、的外れで、露骨な話題そらしの主張を展開したが、結局は、ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」を爆破した米国の罪について、さらに注目を集めることにしかならなかった。
 ジョー・バイデン米大統領の政権が、この犯罪行為でさらに起訴に値することになっただけではない。今週行われた不条理な隠蔽工作は、西側メディアがジャーナリズムを装ったプロパガンダの省に過ぎないことも暴露した。

 4週間前、米国の著名な独立系ジャーナリスト、シーモア・ハーシュは、バイデン大統領とホワイトハウスの上級スタッフが、ロシアとバルト海とドイツを経由して欧州連合を結ぶ天然ガスパイプライン(ノルド・ストリーム)の爆破を指示した経緯を明らかにする超大型調査報告書を発表した。伝説的なハーシュは、1968年にベトナムで米軍が犯したミライの大虐殺から、アメリカ占領下のイラクにおけるアブグレイブ刑務所での拷問、ダマスカスの政権交代を目指すワシントンの代理戦争に参戦するために、リビアからシリアに武器と傭兵を流すためのラットライン(秘密の経路)の運用まで、非の打ち所のない画期的な記事を残してきた。

 ノルド・ストリームの破壊工作に関する彼の重要な報告書において、ハーシュはワシントンの内部情報源に頼った。彼は、米国が昨年夏、BALTOPS 22として知られるNATOの戦争演習を隠れ蓑に、米海軍のダイバーチームを用いて秘密裏に作戦を実行したという主張を発表した。2022年6月に行われた演習では、海底に爆発物が仕掛けられ、その後ノルウェー軍機の助けを借りて9月26日に爆発させたという。

 ハーシュ報告書に説得力があるのは、単に作戦の詳細が信用できるというだけでなく、多くの独立系観測筋が、妨害工作を行う動機と手段を持つ人物について、強力な状況証拠からすでに結論付けていたことを裏付けている点である。なお、米国が犯人とされる背景については、本誌Strategic Cultureの最近の論説を参照されたい。

 さて、ここで不思議なことがある。ハーシュの報告書は世界中に衝撃を与えたが、欧米の政府や主要メディアは彼の報告書を無視することを選んだ。奇妙な異世界にでもいるかのように、彼らはハーシュの衝撃的な暴露を存在しないことにしたのだ。

 ハーシュの世界的なスクープに対する評判、そして彼の最新報告書が、大規模な民間インフラ事業(ノルド・ストリーム)がどのように破壊されたかについて、確固たる信憑性を持った説明を明らかにしたこと、さらにこの報告書の含意が、米国とその大統領とその上級スタッフがテロ行為を命令したという罪状であることを考えると、おそらく、まあ、推測でしかないが、欧米のメディアにすれば、この件は絶対何らかの形で報道しなければならないと思うだろう。とんでもない。何の異論もなしに、黙殺したのだ。ある意味、これは非常にショッキングであり、茶番である。

 この奇妙な沈黙は、今週ニューヨーク・タイムズ紙が、ノルド・ストリームの爆破に関する、代わりの説明を主張する記事を発表するまで、1ヶ月間維持された。その後、まるで合図があったかのように、他の西側メディアも同じような記事を、手を変え、品を変え、次々と報道した。

 お笑い草だが、ニューヨーク・タイムズ紙は、この報道を「ノルド・ストリームに対する攻撃の犯人について、知られている最初の重要な手がかり」であると言い張ったのである。これは、ハーシュの、人の心をつかんだ記事を1ヶ月間無視し、世間の目に触れないように、効果的に検閲した後のことである。

 今週の「報道」(と呼んでいいのなら)は、この破壊工作は「親ウクライナ派」によって行われ、ウクライナ人またはロシア人が関与していたかもしれないという内容であった。この主張の情報源は、「新たな情報機関」と称する匿名の米国当局者である。また、ウクライナ人が所有する個人所有のヨットが使用され、攻撃が起こる数ヶ月前、この差し迫った攻撃についてCIAがドイツ情報機関に通報していたとも主張されている。

 報道された情報は、検証不可能なほど曖昧で、率直に言って、信用に値するものですらない。バルト海の海底で行われた高度な技術を要する軍事作戦が、無名の準軍事組織によって実行されたと、私たちは信じ込まされている。ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする欧米のメディアは、自分たちの体面からすれば突拍子もないような記事を掲載した。これではゴシップ誌になってしまう。

 しかも、この報告書は、ハーシュ報告書をきちんと内容を確認することもなく、ハーシュ報告書に対してする反論として作成されていることが、その作成方法から明らかである。このように、米国は犯罪行為への関与を否定しているのは、あるものをないと、何とか言いくるめているからだ。この二重思考は、それ自体が「嘘の帝国」の罪深さを示している。

 西側のプロパガンダの売り手にとって問題なのは、あり得ないということに加えて、キエフ政権のアリバイを提供しなければならないというさらなる重荷である。米国とそのNATO同盟国は、明らかな犯人であるワシントンから目をそらす必要があるが、NATOが支援するキエフ軍事政権に対する欧米国民の反感を煽りかねないため、キエフ政権を巻き込むことも許されない。このため、ニューヨーク・タイムズ紙は、ノルド・ストリーム爆破事件をウクライナの武装勢力になすりつけつつ、この大胆不敵な武装勢力がウラジーミル・ゼレンスキー大統領とその一味に知られることなく爆破を成し遂げたと主張しながら、複雑なバランスを取っているようだ。これでは、二重に馬鹿げた話になってしまう。

 このような欧米メディアのごまかしには、タイミング(それを起こす時期の設定)という重要な要素もある。先週、ドイツのオラフ・ショルツ首相は3月3日、ホワイトハウスでジョー・バイデンに接待され、不自然なほどプライベートな会談を行った。密室での二人の会話は公開されなかった。両首脳は、その話し合いについて、記者団に口を閉ざした。ショルツがバイデンに政治的な援護を求めたのは、ウクライナとロシアをめぐるアメリカの政策が経済的にもたらす影響について、ドイツ国民の間で怒りが高まっていたからだと推測される。ドイツの産業と輸出主導の経済は、ロシアの伝統的な天然ガス供給の喪失によって壊滅的な打撃を受けている。ショルツと彼の政府は、ドイツ経済に対するアメリカの破壊行為と思われる行為に付き合うことで、裏切り行為をしていると見られている。ハーシュ報告書に何の回答もしないことは、ベルリン政府に大きな圧力となっている。それゆえ今週は、ノルド・ストリームを爆破したとされる人物について、西側メディアの総力を挙げたキャンペーンで国民の関心を逸らそうとする試みが見られた。その目的は、ワシントンとその手先であるベルリンを免責することである。

 もう一つのタイミング(時期設定)の問題は、先週3月2日にロシアのブリャンスク地方でテロを実行したウクライナとロシアのファシスト司令部が突然現れたことである。大人2人が死亡し、少年1人が重傷を負ったこの事件は、理由のない残虐行為であり、国際的な見出しを飾った。しかし、その大胆な襲撃は、国際的な活動の中で一匹狼として行動するように見える親ウクライナの過激派の存在を世間に知らしめることになった。ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする欧米メディアが、ノルド・ストリーム破壊工作の犯人としたのは、まさにこのような人物像である。ここで次の疑問が当然出てくる:ブリャンスクのテロは、ノルド・ストリームに関するメディアの情報操作を促進するために、西側の軍事情報機関によって行われたのではないだろうか?

 本題に入ろう。西側メディアの情報操作キャンペーンは下品なジョークである。米国とそのNATO同盟国は、欧州の企業や政府に対する国際テロ行為を行い、少なくとも200億ドルの建設費がかかる1,200キロのノルド・ストリーム・パイプラインの主要所有者であるロシアに対する戦争行為を行ったという明白な事実から目をそらすことはできない。その犯罪行為が、アメリカの大統領とそのホワイトハウス側近によって命じられた可能性は高い。地政学的な動機は明々白々であり、バイデンとその側近がこの忌まわしい出来事の前後に、天に唾するような告白をしたことも同様である。

 西側メディアによる今週の隠蔽工作は、米国とそのNATOの犯罪協力者をさらに罪に陥れるものでしかない。さらに、西側メディアは、戦争犯罪の宣伝に加担していることが、これまで以上に露呈している。ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする欧米の報道機関は、ジャーナリズムの頂点に立ち、公共の利益と民主主義の擁護者であると偉そうに主張している。しかし、彼らはワシントン(嘘の帝国)の宣伝部に他ならない。
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COVID-19の研究所漏洩説は、なぜ再び見出しを飾るようになったのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Why is the Covid-19 lab leak theory back in the headlines?
The US is reviving the pandemic blame game as a countermeasure to China’s public opinion offensive

米国が世界的流行の罪のなすりつけ合戦を復活させたのは、中国の世論が攻撃的になったことへの対策のためだった。

筆者:ティムル・フォメンコ(政治分析家)

出典:RT

2023年3月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月23日


のぞき窓から見える医療従事者の姿。防護服を身につけ、外国人が宿泊しているホテルの廊下を消毒中。医療隔離措置期間中の中国上海。2021年8月12日。© AP Photo/Andy Wong


 世界の大多数の人々にとっては、Covidは終結している。私たちは次の段階に進むことに成功した。もうCovidのせいで心配したり、生活を犠牲にしたり、最も厳しい制限措置に苦しまなくてもよくなったのだ。もちろん未だに少数の地域ではそのような生活が続けられているが、世界のほとんどの人々にとっては完全に過去の出来事になった。

 しかし、世界的流行が終わった後でも、去らずにしつこく残っている懸案がある。それは政治的な罪のなすりつけ合戦だ。ここ数日、米国政府は再び「研究所漏洩説」という陰謀論を広め、Covid-19ウイルスは武漢疫学研究所からの漏洩が起源であると主張し始めた。
 
 これらの主張が再び出現しているのは偶然であるように見えるが、この工作は行政府のあちこちで画策されているものだ。まず、米国エネルギー省が、この件に関する報告書を発表し、その後米国の中国大使であるニコラス・バーンズが中国当局に対して、Covidの起源に対して「もっとも真摯な態度」を取るよう求め、それに続いてクリストファー・レイFBI長官も声明を出した。

 問題なのは、なぜこんなことをしているのか、だ。そしてなぜ今なのか、だ。その答えは、以前と同じことなのだが、米国がこの陰謀論を武器として、中国の世論の勢いを削ごうとしていることだ。その具体的な目的は、中国が最近強調しているいくつかの問題点から、人々の目をそらそうというものだ。その中の一つが、先月(2023年2月)の貨物列車の脱線事故により米国のオハイオ州を襲った有毒物質流出事故とその事故に対するバイデン政権の不手際な対応についてだ。もうひとつは、中国によるウクライナ和平計画だ。




関連記事:ホワイトハウスはCovidの「研究所漏洩説」から距離を取った。


 この3年間、米国はCovid-19の世界的流行を利用して、中国を攻撃する世論を多くの地域で醸成するための武器としていた。その目的は、あからさまに世界的流行とその後の混乱の責任を中国政府に押しつけることであり、さらに中国の流行対策を否定的なものであると決めつける目的もあった。具体的には以下のような言説だ。中国が隠蔽を行ったとしてその罪を咎め、中国はこのウイルスの世界規模での流行の責任があると主張し、中国のロックダウン措置を残忍で非人道的措置であると決めつけ、研究所漏洩説を広めたのだ。この研究所漏洩説については、信頼の置ける生物医療専門家たちからは全く真剣に取り上げられないような説である。

 2023年までには、Covid-19の世界的流行による混乱や対策はついに終わりを迎えたようで、中国は「ゼロ・コロナ」措置を取りやめ、通常の日常生活への回帰に舵を切った。しかし米国の言い分ではそうではないようで、この研究所漏洩説を再度武器として使い始めた。そしてこの漏洩説は、大手メディアがすぐに広め、裏支えした。皮肉にも、この同じ報道機関が、オハイオ州での環境に対する大惨事についてはほとんど報じていないし、ノルド・ストリームが米国の本格的な関与のもとで破壊されたという信頼のおける報告についても同様だ。

 言うまでもないが、この2件の事象が起こったことと併せて、研究室漏洩説が再度出現したということは、ただの偶然ではない。先日の「スパイ気球」事件により、憶測や激しい反中感情が広められたことを受けて、中国の国営報道機関や専門家たちは、米国への激しい反撃を開始した。具体的にはオハイオ州の大惨事を歯に衣着せず非難し、その惨事を利用して自国世論の攻撃対象としたのだ。そのことに加えて、中国当局は、独自の和平計画を提案することで、ウクライナの戦争の方向性に影響を与えようともしている。そしてこの方向性は、米国当局がウクライナで成し遂げようとしている目的を支持しないものであり、ウクライナに妥協を求める内容であるため、その後米国当局からは、却下されている。



関連記事:FBIが主張したCovid起源説に対する中国当局の反応


 中国のこの対応に対して、米国はどう出るのか? 米国は研究室漏洩説を再燃させ、中国側の主張から目を逸らさせる作戦に出たのだ。市民に対して証拠は何も示さないまま 米国当局者たちからの人騒がせな表明は報道機関により間違いなく詳しく報じられ、その結果、国民の中国に対する憤怒の念が掻き立てられている。その後米国は、反中「ネタ」を次のものにどんどん更新していくのだ。こんな世論操作工作が止むことなく続けられるからこそ、米国当局と中国当局は、両国関係を通常化したり安定化したりできなくなっているのだ。そのせいで悪循環が生じ、両国関係が危険な状態になってしまうのだ。

 結論だが、この研究室漏洩説の再来が画策されたのは、米国が世界中で流布される言説や世論を操作している手口についての決定的な証拠となっている。しかし、この画策の筋書きにおいて、米国が研究室漏洩説を利用している目的には、何か具体的な政策上の目論見がある訳ではない。例えば中国に制裁を課せるような合意形成を狙っている訳ではない。そうではなくて、米国がこのような画策を弄している目的は、オハイオ州での毒物流出事件に対する中国の集中砲火に対する仕返しとして、自国民の意識を逸らすことなのだ。この手法が上手くいくかどうかについては、議論の余地があろう。というのも、世界の人々はCovidに関する罪のなすりつけ合戦にはウンザリしているからだ。しっかりとした証拠が何も示されないままでは、この研究室漏洩説が以前ほど効果的な言い掛かりには決してならないだろうからだ。
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Covidワクチン接種後に血栓と脚の切断に苦しんでいる若者たちは騙されている。そして報道機関は彼らを使って私たちを騙している。

<記事原文 寺島先生推薦>

Young People Who Suffered Blood Clots and Amputations After COVID-19 Vaccination Are Being Lied to, and Media Uses Them to Lie to Us


筆者:ウィリアム・マキス博士(Dr. William Makis)

出典:Global Research

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月23日




 数ヶ月も間を置かずに、大手報道機関が胸が痛くなる悲劇を大々的に報じている記事がある。それは、フロリダ出身の20歳のモデルのクレア・ブリッジズさんの話だ。彼女は両脚を失ったのだ。そしてその理由は「Covid-19」のせいであるということになっている。

 2023年3月5日付のCNN記事にはこうある。「クレアさんは3度心停止を経験し、両脚を切断して、心不全になった。それでもクレアさんは医師たちに対して、自分は’地球で一番幸運である’と語っている。」(こちらをクリック)

 「2022年1月、当時ブリッジズさんは、アパート住まいの20歳のモデルであり、フロリダ州セント・ピーターズバーグ市でバーテンダーのアルバイトをしていた。ブリッジズさんは菜食主義者で、‘すこぶる健康’だったと母親は語っている。」

 「その月にブリッジズさんはCovid-19に感染したとき、誰も彼女が入院するとは思っていなかった。彼女は2度ワクチンを接種していたし、追加接種も済ませていたからだ。

 しかし、ブリッジズさんは生まれつき一般性の遺伝性心不全という併存疾患を持っていた。そのせいか別の不明の理由のせいかは不明だが、ブリッジズさんのCovid-19の症状は重かった。

 「激しい疲労感、冷や汗ーそのような症状が日に日に進行して、どんなものでも飲んだり食べたりしようとするのがどんどん辛くなっていきました」とブリッジズさんは回顧している。「それからある日、私が意識の無いことに気づいた母か私を急いで病院に連れていってくれたのです。その夜、私の心臓は3度止まりました。」
 
 「心筋炎、横紋筋融解症、軽度の肺炎、チアノーゼ(皮膚・粘膜の青紫色変化)、アシドーシス(体内に酸が過剰に存在している状態)と診断されたクレアには機能しなくなった腎臓のための透析が施された! しかしブリッジズさんの身体に生じた損傷のため、下肢に血行不良が生じ、両足の切断処置が行われた。」(こちらをクリック)


CNNによる喧伝行為の向こう側にあるもの

 重要なのは、CNNが流している喧伝やとんでも話の厚い壁を切り裂くことだ。

 今ここにある事実は、完全に健康な20歳の若い女性が、打つ必要のないワクチンを3度接種したために、おそらく体内の免疫系が大きく損傷を受け、心筋炎と血栓やその他の内部器官の障害が引き起こされ、インフルエンザやそれ以外の呼吸器系疾患に罹患した際に、 既にワクチンで弱められていた身体がボロボロにされて、ワクチン後に生じた心筋炎のせいで3度の心停止が起こり、血栓を発症して、その試練の結果、両脚を切断せざるを得なくなったという事実だ。

 言い換えれば、この話は初めから終わりまでCovid-19のワクチンにより生じた障害についての話なのだ。

 ワクチン未接種の20歳の若者のうち、Covid-19に感染したせいで脚を切断した人が何人いるだろうか? Covid-19の予防接種に入院を防ぐ効果があり、3度接種したクレアさんにその効果が出なかったとすれば、何千人もの未接種の20歳の若者が、Covid-19に感染して脚を切断しなければならなくなっているはずだ。そんな若者たちは、Covid-19のワクチンにより「守られていない」からだ。

 そんな事例は一件も起こっていない。もしあったとすれば、報道機関が我々に必死に伝えようとしていたはずだからだ。Covid-19が20歳のクレアさんをこんな目にあわせたわけではない。犯人はCovid-19のワクチンだ。CNNの報道では、クレアさんがどの会社のワクチンを3度接種したのかは明らかにされていない。アストロゼネカ社とジョンソン&ジョンソン社製のワクチンは、血栓を引き起こすとして市場から排除されている。ファイザー社とモデルナ社製のワクチンは、血栓の副反応事例を何千件も出している。そのような事例は、VAERS(全米ワクチン有害事象報告システム)やEudravigilance(EUの薬物副作用データ報告システム)やソーシャル・メディア上のあちこちで目にするものだ。




















Covid-19のワクチンは全て血栓を引き起こす

 Covid-19のワクチン接種が開始されて以来、何千件もの血栓関連の副反応がVAERSやEudravigilanceや英国のイエロー・カード(副反応報告システム)に報告されていた。以下は2021年5月14日の時点でのイスラエルのジョシュ・ゲツコフ教授による報告だ。






製薬業界の代理人たちはこのことを否定している





ロイター通信によるデタラメな「真偽審査」

 クレア・ブリッジズさんの事例が、ロイター通信による「真偽審査」を受けたという事実は、警告に値するものだ。私はロイター通信とは幅広くやり取りをしてきた経験がある。具体的には、ロイター通信の記者の数人と話をした後に、その記者たちに私の書いた記事に対して、いくつかの完全に間違った真偽審査を行った記事を意図的に出されたことがあったのだ。私が書いたその記事は、Covid-19のmRNAワクチンの危険性を明らかにする内容だった。




私見

 クレアさんが乗り越えてきた体験は完全な悪夢だった。十分考えられる可能性は、クレアさんがCovid-19ワクチンの犠牲者であって、Covid-19の犠牲者ではなかったということだ。 クレアさんのような事例は何千件もある。アストロゼネカ社とジョンソン&ジョンソン社製のワクチンは、血栓を引き起こすとされ市場から排除されたが、ファイザー社やモデルナ社製のワクチンも血栓を引き起こしており、その規模はアストロゼネカ社やジョンソン&ジョンソン社製のワクチンが引き起こす血栓とほぼ同程度だ。

 今に至るまで、ファイザー社もモデルナ社もCovid-19mRNAワクチンが血栓を引き起こす原因になるという事実を否定しており、ワクチンによる被害者たちも医師たちにより無視されてきた。

 どの大手報道機関も、血栓の原因となっているのはCovid-19であり、Covid-19ワクチンではないと報じているため、ワクチンの副反応障害を受けた人々はひどい目にあわされ、残りの人々も堂々と欺かれている。CNNがこんな報じ方をしているのだから、このことは全く驚くに値しない。

 大手報道機関がCovid-19のことを報じるとき、報じられている内容は、ほぼ常に真実とは真逆のものである。クレアさんの件についてこんなにも詳細に報じている事実からわかることは、報道機関は私たちの目を醜い真実から必死に逸らそうとしているということだ。

 上記の動画を再度見ていただきたい。ただし今回は、Covid-19ワクチンの被害についての動画であるという前提で見ていただきたい。感じ方が全く違うものになるだろう。というのも、これらの製薬業者が最初から承知している事実があるからだ。それは自社製品がこれらの障害を引き起こす原因になるという事実だ。製薬業者はそんなことはおかまいなしだし、ワクチンを推奨してきた医師や政治家たちも同じだ。
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議論の的になっている複数の実験と、コロナウイルスのパンデミックを引き起こしたとして疑われている武漢の研究室

<記事原文 寺島先生推薦>

The Controversial Experiments and Wuhan Lab Suspected of Starting the Coronavirus Pandemic

筆者:フレッド・グテル、ナビード・ジャマリ トム・オコナー
(FRED GUTERL , NAVEED JAMALI AND TOM O'CONNOR )

出典:ニューズ・ウィーク誌

2020年4月27日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月23日



武漢ウイルス研究所 Covid-19コロナウイルス研究室
コロナパンデミックは、武漢細菌研究所内で、問題となった実験の結果である可能性があることを、米国の諜報機関は現在認めている。2017年2月23日、中国・武漢のP4実験室内にいる中国のウイルス学者、石正麗氏。JOHANNES EISEL/ AFP VIA GETTY IMAGES



 米国が中国を抜いてCovid-19の感染者数が最も多い国になった翌日、米国防情報局が新型コロナウイルスの起源に関する評価を更新し、感染症研究所から誤って放出された可能性を示していることが、ニューズウィーク誌の取材で明らかになった。

 3月27日(2020年)の日付で、2人の米政府関係者が裏付けしたこの報告書によると、米国防情報局(DIA)は、「感染勃発が、おそらく自然に発生したと判断」した1月の評価を修正し、昨年末に病原体が初めて観測された中国中部・武漢市の「実験室の安全ではない運営方法」によって「誤って」新型コロナウイルスが出現した可能性を含めるようにしたことを明らかにした。しかし、「中国:COVID-19感染源は明らかでない(China: Origins of COVID-19 Outbreak Remain Unknown)」と題されたこの機密報告書は、この病気が遺伝子操作されたもの、あるいは生物兵器として意図的に放出されたものではないと断定している。

 「SARS-CoV-2が意図的に放出されたこと、あるいは生物兵器として作られたことを示す信頼できる証拠はない」と報告書は述べている。「研究者や中国政府が、このような危険なウイルスを、特に中国国内で、既知の有効なワクチンも持たずに、意図的に放出することは非常に考えにくい」。この記事のためにニューズウィーク誌が取材したすべての科学者も、ウイルスが意図的に放出されたという考えをきっぱりと否定している。

 Covid-19は、世界中で300万人近くが感染し、当初は中国を襲った後、西側が最も大きな被害を受け、米国が最も深い被害を受けた国となっており、4月27日の時点で55,000人以上が亡くなっている。その起源については、科学的な議論だけでなく、国際社会での政治的な論争が続いている。

 DIA(米国防情報局)のこの文書は、学術文献を引用しながら、この病気が本当に最初にどのように出現したのかについて、「決定的な答えは決してわからないかもしれない」と述べている。DIA(米国防情報局)の広報担当者はニューズウィーク誌に、「DIA内部では一つの説に全面的に合意しているわけではない」 と語った。


不確かなウイルスの起源

 新型ウイルスの起源をたどるのは簡単ではない。武漢研究所の研究者たちは、2002年から2003年にかけて発生したSARSウイルスの痕跡を雲南省の人里離れたコウモリの洞窟まで突き止めるのに10年以上の歳月を要した。DIAの文書によれば、2月初旬、中国軍医科学院が「Covid-19の発生が自然発生か実験室の事故によるものかを科学的に判断することは不可能であると結論付けた」としていることは驚くには当たらない。

 中国政府が行った初期の評価では、Covid-19の原因となる新しいコロナウイルスであるSARS-CoV-2は、同市の華南海鮮市場からの自然発生の可能性が高いと指摘された。発生当初、地元当局はウイルスのヒトからヒトへの感染の可能性を軽視し、拡大する感染症について発言する医師を黙殺した。そのため、死亡者数やCovid-19の症例数が過小評価された可能性がある。また、米国が意図的に武漢にウイルスを放ったという疑わしい説も出回り始めた。

 中国外務省は4月23日、世界保健機関が武漢の研究所で流行が始まったという「証拠はない」としたことを記者団に語った。武漢ウイルス研究所の副所長で中国科学院武漢支部長の袁志明(ヤン・ツィミン)氏は、(ウイルスを)意図的に誤用し、作成したという推測を「悪意ある」もので、「あり得ない」と非難している。

 「米国のガルベストン国立研究所の所長は、私たちの研究所は欧米の各研究所と同様にきちんと管理されていると明言しています。武漢の研究所をウイルスの流出と関連付けるのは理解できますが、ウイルスが(武漢の)研究所から流出したと考えるのは、意図的に国民を惑わす悪意ある行動です」 と袁副所長は述べた。

 さらに、「彼らは、自分たちの非難を裏付ける証拠も論理も持っていません。彼らは完全に自分たちの憶測に基づいてそんな主張をしています」とも語った。

 しかし、DIA(米国防情報局)の報告書は、米国政府と中国の研究者が、「最初に確認された41人の症例の約33%は、市場に直接さらされていない」ことを発見したことを引用している。このことは、過去数年間の研究所の仕事について知られていることと合わせて、パンデミックは海鮮市場ではなく、研究所の手違いによって引き起こされたのではないかという合理的な疑いを抱かせるものだった。

 科学的、状況証拠に基づくと、以下のような推測になる。

 2002年、中国の広東省でSARSが発生し、警鐘が鳴らされることになった。その後数十年にわたり、米国、中国、その他の国々は、次の壊滅的なパンデミックを防ぐことを目的に、野生動物に生息する奇妙な新しい病原体を探し出して分類し、それが人間にとってどの程度の脅威となるかを解明する取り組みに資金を注ぎ込んだ。

 SARS-CoV-2コロナウイルスは、2019年の秋に、国際的な大都市である武漢の中心で出現した。中国当局は当初、このウイルス「SARS-CoV-2」は動物との直接接触によってのみ感染すると主張していた。しかし、武漢の初期患者の多くは野生動物市場とは無関係であり、ウイルスはすでに人から人へと広がっていたことになる。この事実が明らかになると、中国からの情報の信憑性が疑われたが、このウイルスは恐ろしいパンデミックに向かおうとしていた。

 当初、ウイルスの起源については、SARSと同様にコウモリで発生し、センザンコウなどの哺乳類に感染し、野生動物市場を通じて人々に流入するという説が有力であった。

 3月になっても、野生ウイルス説はSARS-CoV-2の起源を説明する最も有力な説であったが、周辺から少しボロが出てきた。武漢市街の動物市場にほど近い武漢ウイルス研究所には、野生のコウモリから採取したコロナウイルスの収集が世界最大規模でなされており、その中にはSARS-CoV-2と類似したウイルスが少なくとも1種類は含まれていた。さらに、武漢ウイルス研究所の科学者たちは、過去5年間、いわゆる「機能獲得」(GOF)研究に取り組んできた。この研究は、将来のパンデミックを予測する目的で、ウイルスの特定の性質を強化することを目的としている。機能獲得技術は、ウイルスを世界的な大流行を引き起こすことができるヒトの病原体に変えるために使用されてきた。

 これは、軍の地下壕にある極悪非道な秘密プログラムではない。武漢の研究所は、主にウイルス発見のために、プレディクト(PREDICT)という10年間で2億ドルかけた国際的事業の一部から資金を得ている。そのPREDICTは、米国国際開発庁(USAID)やその他の国々から資金提供を受けている。同様の研究は、米国国立衛生研究所(NIH)から一部資金援助を受けて、世界中の数十の研究所で実施されている。この研究の中には、致命的なウイルスを採取し、集団の中で素早く拡散する能力を強化するものもある。この研究は、このプログラムがパンデミックを引き起こす可能性があると何百人もの科学者が反対して、長年警告してきたが、その反対を押し切って行われていた。

 SARSの発生から数年、世界中の研究所で病原体の誤放出による事故が多発している。米国では、2014年に米国政府の研究所から炭疽菌が放出され、84人が被爆するなど、数百件の漏洩事故が発生した。2004年には北京の研究所からSARSウイルスが流出し、4人の感染者と1人の死者を出した。偶発的な放出は複雑ではなく、悪意も必要ない。研究所の職員が体調を崩して帰宅し、知らず知らずのうちに他の人にウイルスをばらまいてしまうだけなのだ。

 北京の米国大使館の職員が2018年1月19日の公電で警告したように、武漢研究所には偶発的な流出につながる可能性が考えられる粗雑な慣行の記録がある。ワシントンポストによると、「武漢ウイルス研究所(WIV)の科学者との交流の中で、彼らは、新しい研究室には、厳しく封鎖されているこの研究室を安全に運営するための適切な訓練を受けた技術者と調査員の深刻な不足があると指摘した」と外電は述べている。

 確かに、SARS-Cov-2が武漢の研究所から流出したという証拠はないし、このウイルスが巧妙に操作された産物であるという証拠もない。ほとんどの科学者は、入手可能な証拠に基づいて、自然起源が最も可能性の高い説明であると信じている。しかし、流出や操作の可能性を否定したわけでもない。「現段階では、COVID-19のパンデミックを引き起こしたウイルスの出所を正確に特定することはできない」と、世界保健機関(WHO)はニューズウィーク誌に声明を出している。「利用可能なすべての証拠は、このウイルスが天然の動物由来であり、操作された、あるいは作成されたウイルスではないことを示唆している」と。

 状況証拠からわかることは、研究所の研究計画と実践を調査の中心にすることには十分な根拠があるという事実だ。そして、自然の病原体の脅威から国民を守ろうとする科学者の努力が行き過ぎたものであったのかどうか、あらためて考えてみる価値があるのではないだろうか。



<関連記事>中国がCOVID-19の起源に関する研究を検閲している。削除されたウェブページが示唆すること。


動物経路

 10年前、最も話題になったウイルス性病原体は、コロナウイルスではなく、インフルエンザであった。特に、鳥類から発生し、感染者の多くを死亡させたH5N1型インフルエンザである。一時期、このウイルスが大きな話題となった。しかし、鳥インフルエンザに感染した人のほとんどが、鳥を扱うことから直接ウイルスに感染したことが明らかになった。伝染病を引き起こすには、ウイルスが効率よく殺せるだけでは不十分である。ウイルスが伝染病を引き起こすには、殺傷能力が高いだけでは不十分で、人から人へ簡単に感染することが必要である。

 この頃、オランダのエラスムス大学の科学者ロン・フーシエは、鳥インフルエンザ・ウイルスを恐ろしい伝染性ウイルスに変異するためにはどうしたらよいかと考えていた。この疑問は、ヒトへのパンデミックを予測するウイルス学者の使命にとって重要だった。もし、H5N1がヒトへの感染性を獲得するまであと1、2歩というところであれば、世界は危機に瀕していた。H5N1の感染型は、数千万人が死亡した1918年のインフルエンザのような破壊的なパンデミックに急速に発展しかねない。

 この疑問に答えるには、研究室でウイルスを細胞培養して繁殖させ、その変異を確認する必要がある。しかし、このような作業は実施するのが難しく、結論を出すのも難しい。では、最終的に感染するかどうかは、どうすればわかるのだろう?

 そこでフーシエが考え出したのが、「動物経路(animal passage)」と呼ばれる手法である。フェレット(白イタチ)を選んだのは、白イタチが人間のいい代用になるとして広く知られていたからで、白イタチの間を飛び移れるウイルスなら、人間にも飛び移れる可能性が高い。白イタチに鳥インフルエンザ・ウイルスを感染させ、発病するまで待ち、白イタチの体内で増殖したウイルスのサンプルを綿棒で採取する。ウイルスは体内で増殖するときに少しずつ変異するので、白イタチの体内から出てきたウイルスは、体内に入ってきたウイルスとは少し違っていた。1匹目の白イタチのウイルスを2匹目に感染させ、2匹目の白イタチの変異したウイルスを3匹目に感染させる......という具合に、フーシエは続けた。

 10匹の白イタチにウイルスを感染させたところ、隣のケージにいた白イタチが発病した。これは、このウイルスが白イタチに感染すること、つまり人間にも感染することを示すものであった。フーシエは、自分の研究室でパンデミック・ウイルスを作り出すことに成功したのである。




<関連記事>医師たちは、革新的な新技術でどのようにコロナウイルス患者を救っているのか



 2011年、フーシエが動物通過実験を雑誌『サイエンス』に発表したとき、オバマ政権のバイオセキュリティ担当者は、危険な病原体がフーシエの研究室から誤って漏れることを懸念し、研究の一時停止を推し進めた。フーシエは、エボラ出血熱や類似のウイルスを対象とするBSL-4(バイオ・セキュリティ・レベル:生物研究の安全性の高さを示す指標)ではなく、重症度が中程度のブドウ球菌などの病原体を対象とするBSL-2の研究室で研究を行っていた。BSL-4の実験室は、通常、空気循環システムやエアロック(気密式出入口)などを備えた独立した建物であり、入念な安全対策が施されている。これに対し、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、この研究の一時停止を宣言した。

 その後、科学者たちの間で、機能獲得研究のリスクと利点をめぐって激しい論争が繰り広げられた。フーシエの研究は、ハーバード大学の疫学者マーク・リプシッチが2015年の学術誌『Nature』に書いたように、「実験室の事故がパンデミックを引き起こし、数百万人が死亡するという比類ないリスクを伴う」ものだ。

 リプシッチと他の17人の科学者は、機能獲得研究に反対してケンブリッジ審議会を結成した。そしてこの審議会が、米国で天然痘、炭疽菌、鳥インフルエンザに関わる実験室事故が 「増加しており、平均して週に2回以上発生している」 と指摘する声明を発表したのである。

 「感染力の強い、危険なウイルスの新種を実験室で作ることは...実質的にリスクを高めることになる。このような環境での偶発的な感染は、制御が困難か、または制御不可能な大流行を引き起こす可能性がある。歴史的に見ても、新型インフルエンザがヒトに感染すると、2年以内に世界の人口の4分の1以上に感染している」とこの声明は述べていた。最終的に200人以上の科学者がこの立場を支持した。

 機能獲得(GOF)研究の推進派の態度も同様に熱烈であった。「遺伝子や突然変異と病原体の特定の生物学的特性との因果関係を証明するために、機能獲得(GOF)実験が必要だ。機能獲得(GOF)という過程は、感染症研究において絶対に必要なものだ」たなフーシエは『ネイチャー』誌に書いている。

 米国立衛生研究所(NIH)は結局、フーシエなどの推進派の側に立った。パンデミックが起きた時に役立つ抗ウイルス薬を作ることができるのだから、機能獲得研究は危険を伴っても挑戦するに値すると考えたのである。

 米国立衛生研究所(NIH)が一時中断を解除した2017年までには、数十件の例外が認められていた。2009年に開始されたPREDICT事業は、10年間で2億ドルを費やし、世界中にウイルス学者を派遣して新規ウイルスを探し、そのウイルスの機能獲得研究を一部サポートした。この事業は2019年に資金が底をついたが、その後延長された。

 現在のパンデミックが発生する頃には、動物経路実験は一般的になっていた。世界中に30以上あるBSL-4研究室の多くの科学者が、呼吸器系病原体の感染性を高めるために動物経路実験を行っていた。

 今回のパンデミックでは、この実験が役に立ったのだろうか? ジョージタウン大学の新興感染症の専門家であるコリン・カールソン氏は、『ランセット(Lancet)』誌の最近の記事で、PREDICTが資金提供した研究は、SARS-CoV-2ウイルスが発生したときにウイルス学者が迅速に分離・分類するのに役立ったと主張している。しかし、この研究は、「広範な影響力を持たせられるよう、もっとうまく配置することができたはずだ」ともしていた。このプログラムでは何百もの新しいウイルスが発見されたが、これらのウイルスがヒトに対してどれほど危険なのかを科学者たちが判断できるところまでには至っていない。可能なのは、「ヒトへの感染を観察すること」 だけである。

 ラトガース大学の感染症専門家であるリチャード・エブライトは、もっと露骨にこう言い放った。「PREDICT事業では、感染拡大の予防や対策に役立つような結果は全く出ていません。抗ウイルス薬の開発に役立つ情報を提供するものではありません。またワクチンの開発に役立つ情報を提供するものでもありません。」


武漢市街の動物市場にほど近い武漢ウイルス研究所には、野生のコウモリから採取したコロナウイルスの世界最大のコレクションがある。この施設は、人から人への感染リスクが高い危険なウイルスであるクラス4病原体(P4)の取り扱いを許可された、世界でも数少ない研究所のひとつである。ヘクター・レタマル/AFP ゲッティ イメージズによる


中国の役割

 武漢ウイルス研究所は、PREDICTの資金援助を受けた多くの研究所のひとつだ。何百種類ものコロナウイルスを収集し、「コウモリ女」と呼ばれるウイルス学者石正麗は、研究所の職員とともに、2002年にオリジナルのSARSウイルスが発生したと考えられているのと同じコウモリの洞窟を探検した。彼女の研究者たちは、人里離れた洞窟に入り、コウモリの肛門に綿棒を入れ、排泄物を採取した。研究所に戻ると、発見したウイルスを培養し、ゲノム配列を決定し、研究室で細胞や動物にどのように感染するかを調べようとしていた。

 研究所は2015年、コウモリ・コロナウイルスの機能獲得研究プログラムを開始した。これは、選択した菌株を採取し、そのウイルスが人から人へ感染する能力を高めることを目指したものである。機能獲得研究は、査察事業と密接に連携していた。科学者たちが、ヒトの細胞に感染する能力を持つ新しい部類のコウモリ・ウイルスを特定したため、そのウイルスがヒトに感染し、パンデミックの脅威となるためには、自然界でどのような変化が生じなければならないかという疑問が生じた。


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 2015年、武漢の研究所は、カット・アンド・ペースト(切り貼り)遺伝子工学を用いた機能獲得実験を行った。そこでは、科学者が自然のウイルスを採取し、そのRNAの配列に直接置換を加えて感染力を高める研究が行われていた。SARSウイルスの一部を切り取り、SARSに似たコウモリ・コロナウイルスの断片を挿入した結果、ヒトの細胞に感染できるウイルスが誕生したのである。このような方法で改変された天然ウイルスであれば、遺伝子解析において注意旗を立てることは容易だろう。古いビクトリア調の家に現代的な増築をするようなものだ。

 しかし、動物実験によって作られたウイルスは、発見するのが非常に難しい。これらのウイルスは直接操作されているわけではないからだ。ウイルスが動物から次の動物に移るとき、その進化の過程で野生で起こるのと同じようなことが起こる。したがって、野生のコロナウイルスが10匹の白イタチを通過しても、人工的に操作されたものであることを特定するのは難しいだろう。

 武漢研究所では、コロナウイルスの動物経路実験の記録は公表されていない。この研究所は2018年に最初のBSL-4研究室を手に入れたが、このBSL-4研究室を有することが、この種の作業の必須条件とされている(ただし、一部の作業は強化されたBSL-3の研究室でも進行している)。そして、研究者がBSL-4研究室で動物経路作業を始めていたものの、今回のパンデミックの前に公表するのに間に合わなかった可能性がある。当時、中国はその情報の公表を厳しくしていたからだ。その作業が秘密裏に行われた可能性もある。しかし、科学者の中には、その可能性は低いと考える人もいる。しかし、高価なBSL-4ラボが、動物経路型の研究をしていないとは考えにくいとする科学者もいる。というのも、当時はそのような研究は珍しいものではなかったからだ。


起源をたどる

 SARS-CoV-2がどこから来たのかを解明するために、スクリップス研究所のクリスティアン・アンダーセンらは遺伝子解析を行った。彼らは3月11日に、『ネイチャー』でその研究を公表し、広く引用された。この研究者たちは、ウイルスのある遺伝的特徴に注目し、「操作」の兆候を探ったのである。

 その一つの特徴は、ウイルスが人体のACE2受容体(肺やその他の臓器の細胞の分子的特徴)に効果的に付着するために使用するタンパク質のスパイク(トゲ)である。SARS-Cov-2のスパイクは、もとのSARSウイルスのスパイクと異なっていることから分かることは、「自然淘汰の産物である可能性が高い」、つまり、研究室で操作されたものではなく、自然にできたものであると結論付けている。

 しかし、この論文では、特に動物経路が否定される理由について、明確ではない。「理論的には、SARS-CoV-2が細胞培養に適応する過程で変異を獲得した可能性がある」と著者たちは書いている。そして、センザンコウのような哺乳類を宿主としてウイルスが変異したという説は、「より強力な...説明を提供する」ものだとしている。この説に実験室での動物との接触が含まれるかどうかについては、著者らは述べていない。アンダーセンはニューズウィーク誌のコメント要請に応えなかった。

 ラトガー大学のエブライト教授は、機能獲得研究に長年反対してきたが、アンダーセンの分析は、SARS-CoV-2の起源として動物経路を否定するものではないという。しかし、「その理由は不十分である」と彼は『ニューズウィーク』誌への電子メールで書いている。「彼らは『ウイルスがセンザンコウのような動物の宿主を経由して変異した』という可能性を支持しながら、同時に『動物経路』で変異した可能性を否定している。この2つの可能性は経路を除けば別個のものであるため、一方を支持し、他方を支持しないという論法は通用しない。」


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 カリフォルニア大学デービス校の進化生物学者であるジョナサン・アイゼンは、決定的な証拠ではないものの、このウイルスは研究室ではなく、自然界からもたらされたことを示唆しているという。「何か不自然なもの、つまり、遺伝子操作されたもの、操作されたものがあることを示唆するものはない」と、彼は言う。しかし、「この研究結果には、ウイルスが実験室で動物を経路として作り出された可能性を認める『若干の余地がある』。『経路』を立証するのは難しい。さらに実験室からの流出を調べるのは難しい」と彼は言う。「(武漢の研究者が)野外から何かを採取し、それを使って研究室で実験をしていて、ある人が感染し、そこから広がったとしても、野外で直接広まったのとそれを区別するのは本当に難しいでしょう。」

 武漢は、既知のウイルスの中で最もSARS-CoV-2に似ているとされるRATG13というウイルスを保有しており、この2つは遺伝物質の96パーセントを共有している。ノースカロライナ大学のウイルス学者で、2015年の機能獲得研究で石正麗と共同研究したラルフ・バリックは、「この4パーセントの差は、動物通過研究にとって手ごわい差だ」と言う。「あり得ないような問題にぶつかり続けている」と彼は言う。武漢では、おそらくRATG13よりもSARS-CoV-2に近いウイルスから始める必要があっただろうが、それはただの仮定の話だ。

 バリックは、「この問題を解決する唯一の方法は、透明性と開かれた科学研究であり、実際に調査することだ。中国がそれを許すとは思えない。このような状況で、どの国がどのような行動をとるかはわからない。米国は透明性を保つと思いたい」と言う。

 ジェニー・フィンク(Jenni Fink)によるこの記事への追記。

 2020年4月29日16時20分。誤解のないよう付け加えるが、この微妙な問題について、この記事に引用されているジョナサン・アイゼン(Jonathan Eisen)による記述は、本人からの要請により、「or manipulated (あるいは操作された)」という言葉を含むように変更された。現在は次のようになっている。「不自然なものがあったという兆候は見られない。つまり遺伝子に手が加えられた、あるいは変異されたという形跡のことだ。」

 2020年4月30日午後10時40分。訂正。PREDICT事業に関する記述箇所を変更し、同事業の資金のほとんどがウイルス発見活動に使われたことを明確にする。また、同事業の2回目の5年間の資金提供の延長は、既報の2018年ではなく、2019年に終了する予定であった。
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テロ攻撃を画策していた米国のネオナチ勢力がウクライナのファシスト集団と繋がっていることを報道機関は無視

<記事原文 寺島先生推薦>

Neo-Nazi brotherhood: How American friends of Ukrainian fascists plotted a terror attack in the US and the media ignored the story. In normal circumstances, the Atomwaffen’s plot in Baltimore should have been headline news

ネオナチの兄弟組織:ウクライナのファシスト集団と繋がる米国の組織が米国内でテロ攻撃を仕掛けようとしたが、報道機関はこの事件を無視。通常であれば、バルチモアでネオナチ集団のアトムヴァッフェンが計画していた陰謀は、新聞の見出しを飾るはずだった。

筆者:フェリックス・リブシッツ(Felix Livshitz)

出典:RT

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月22日


© Social network


 米国の極右過激派―ウクライナのアゾフ大隊とつながりがある―が、メリーランド州ボルチモア市で、テロ攻撃を陰謀したとして起訴された。しかし米国の報道機関は、この事件を報じる際に、この組織とアゾフ大隊とのつながりについては触れなかった。

 付言すれば、この未遂テロ攻撃はアゾフ大隊の隊員たちとその外国の友好組織とが、西側諸国に与える脅威のほんの始まりに過ぎないのかもしれない。


未遂計画

 2月上旬、米国司法省は、ネオナチ組織の構成員であるサラー・べス・クレンダニエルとブランドン・クリント・ラッセルの2名が、ボルチモア市内の複数の変電所の破壊を画策していたとして起訴されたと発表した。当局は両名の計画を、「人種差別に基づく憎悪思想に駆り立てられた」ものであるとした。有罪が確定すれば、最大20年の禁固刑が言い渡される。



関連記事:戦争の惨禍:ウクライナの紛争が欧州の別の国に広がりそうになる可能性の理由とは。


 2022年6月、あるいはもっと早い可能性もあるが、両名は変電所に対する一連の攻撃計画を準備し始めた。その手口は、気球とライフル銃を使うものであり、その目的は、変圧器を不足させることで、何千人もの住民の明かりと暖房を止めることにあった。この両名がこの工作の実行時期と目していたのは「電力が一番必要とされる時期」であり、エネルギー需要が最も高い時期だった。

 ラッセルは目星としていた標的の地図をクレンダニエルと共有し、変電所に対する小規模な攻撃でも、ボルチモア全体に「連鎖的停電」被害を与えられる計画の概要を説明した。それは複数の箇所を同時に攻撃することで、被害を最大限にするという作戦だった。クレンダニエルは、この計画により、「ボルチモア市を永久に完全破壊された状態にできる」と考えていたことが、暗号化されたメッセージアプリでのやり取りからわかっている。


刑務所へ逆戻り

 ラッセルはテロ組織アトムヴァッフェン・ディビジョンの創設者であり、国家社会主義抵抗戦線という国際的なネオナチのテロリスト集団網の一員としても知られている。2018年1月、ラッセルは未登録の破壊装置と爆発物を不当に所持していたため投獄された。FBIの爆弾技術者の主張によれば、ラッセルが所有していた原料があれば、航空機一機を完全に破壊できるとのことであり、検察側の主張では、ラッセルはその装置を使ったテロ攻撃を画策しており、その標的は、全米の市民や核施設やユダヤ教の礼拝堂だったという。


ボルチモア地域の複数の変電所の破壊を画策していたとして、連邦当局に逮捕されたサラー・ベス・グレンダニエル

 獄中でラッセルは支持者に向けた動画を公表したが、その動画は支持者の「不滅の忠誠心と勇気」に感謝し、自分が投獄されたことで、アトムヴァッヘンの使命が中断されることはないことを約束する内容だった。ラッセルはさらに、支持者に爆弾の製作方法も伝えていた。

 ラッセルは「この世界に臆病者たちが存在できる余地はない」と宣告し、アドルフ・ヒトラーの以下のことばを引用していた。「剣は抜かれた。もう後戻りはできない」と。



関連記事:スターリン没後70年:西側の喧伝によるこのソ連の独裁者の描き方は、当初悪者、その後英雄、そしてまた悪者に逆戻りした。


 ラッセルがこれらの発言をしたにも関わらず、そして米国内外のアトムヴァッヘンの支持者たちは、ラッセルが獄につながれている間に、ますます多くの重大な犯罪—複数の殺人行為もあった—を実行していた事実があったにも関わらず、ラッセルは刑期よりも早く出獄を許された。さらに、ラッセルが自身のネオナチ組織団の団員たちと連絡を取り合うことを禁じる措置は取られなかった。

 同様に注目すべきは、国内でのテロ画策行為が連邦政府により摘発され、その首謀者たちが或る組織の指導者をつとめていて、これらの首謀者たちが市民の安全に明らかに大きな脅威をもたらしているというのに、この事件については、大手報道機関も政治家たちも概して完全にダンマリを決めている点だ。これまでジョー・バイデン政権は、極右や人種差別的な動機のもとで動いている過激派が巻き起こす脅威について、激しく広報してきたにもかかわらず、である。さらに当局は、ソーシャル・メディア上での秘密の魔女狩り工作までしてきた。その対象は白人の保守派層だった。その白人の保守派層が、脅威となっている証拠―捏造された場合もある―を特定しようとしてきたのだ。


 では、グレンダニエルとラッセルの起訴に関して、このような沈黙が保たれている理由は何か? 普通に考えれば、今回の事件はホワイト・ハウスやリベラル派の専門家や記者たちにとって、格好のネタになったはずだ。その理由に対する答えは、アトムヴァッヘンが持つ国際的な繋がりにあるのかもしれない。実名をあげれば、ウクライナの悪名高く、荒々しいアゾフ大隊との繋がりだ。もうひとつは、それに伴い、西側が長年訓練を施し、資金を出してきた東欧諸国の極右勢力のことが明らかになることが避けられなくなるからだろう。


秘密とはいえ、公然の秘密

 米国陸軍士官学校のテロリスト対策センターが2020年に行った調査結果によると、ウクライナは長年、「白人至上主義者的な思想の持ち主や活動家や野心家たちのような人々の関心を引き寄せる」国であったという。

 2014年の米国内が主導したマイダンのクーデターに関わっていた国粋主義の団体がいくつも存在している状況が、「欧州や米国やそれ以外の地域の極右の人々や組織の気分を高揚させた」とその調査記録にはある。世界中のネオナチたちがウクライナに集結し始め、彼らの目には、ウクライナが新たなファシスト国家が形成されつつある国だと映っていた。 中でも関心を集めていたのが、アゾフ大隊であり、この記録によると、「人権侵害行為を行っていたことを示す文書があったにも拘わらず、当時のペトロ・ポリシェンコ大統領や保安隊からの支援を受けた」組織であると捉えられていたという。


ブランドン・クリント・ラッセル@Pinellas County Sheriff's Office via AP

 こんなことは、第二次世界大戦後の欧州で初めてだった。つまり、ネオナチの一派―「祝福され、公に組織され、政府高官と友好関係を結んでいる」―が、国家から歓迎され、資金も提供されているという状況のことだ。キエフに到着したネオナチたちの中の相当数は、アゾフ大隊に加入したり、同大隊の戦士たちから指導や訓練を受けたりした。

 これらのネオナチたちの中に、アトムヴァッヘンの代表者たちもいて、それ以来、この2つの組織の間の関係は強められ、正式なものになった。アトムヴァッヘンの欧州組織は、アゾフ大隊による訓練合宿に参加しており、米国を拠点としている団員たちも数名加わっていた。これらの米国内の団員たちは、その後暴虐な攻撃や記者たちに対する脅迫行為を画策していたとして投獄された。



関連記事:「欧州で最も急進的な右翼過激派のひとつ」:ウクライナによる今週のロシアのブリャンスク地方への攻撃の背後にいたネオナチは誰か?


 大手報道機関が、マイダン後、長年アゾフ大隊が持つファシスト的要素を認識し、あからさまに非難してきたにもかかわらず、これらの組織に対する取材は現在事実上なくなってしまっている。ロシアによる軍事作戦が昨年開始されてから、(アゾフ大隊はファシスト集団であるという)議論の余地のない真実は無視されるか、大きく歪曲されてきた。また、アゾフ大隊に対する政治的姿勢も同様に変化してきた。かつては米国政府からの支援を受けることは法律で禁じられていたこの大隊は、今では隊員たちが、英雄的な自由の戦士であるともてはやされ、ワシントンに招待され 、戦意を鼓舞するような発言をさせてもらっている。


ネオナチがさらなる問題を引き起こす兆しはあるのだろうか?

 報道機関がアトムヴァッヘンの創設者であるラッセルとアゾフ大隊との繋がりに対する関心が不足している状況については懸念されるが、この状況の分かりやすい説明は、バイデン政権とバイデン政権によるキエフ政権への支援を助けるためであると言えるだろう。つまり、もし国民に十分な情報を与えてしまえば、十分に反露だとは見られていないアメリカ国民を脅威に晒す過激派集団へのアメリカ国民の支持をずっと保つのは困難となるからだ。ただし、アゾフ大隊がネオナチに訓練を施していることに関しては、考慮すべき問題―報道機関が両者の繋がりを無視している状況と同じくらい重要となる可能性がある問題が他にもある。

 2022年7月、欧州刑事警察機構(ユーロポール)は、今回の戦争を原因として、「確立された密輸経路やオンライン・プラットフォーム上のやり取りを通じて欧州内で売買される銃器や弾薬が増加する」との見通しを示し、さらに「この戦争が終結した後でも、そのような売買が増加する危険が高くなる可能性がある」と警告していた。それ以来、キエフに送られた武器が、武器の闇市場に出回って、犯罪組織により使用されているという複数の記事がある。

 ウクライナに運ばれた大量の兵器(その多くは行方不明)は、アゾフ大隊に加入したり、アゾフ大隊との訓練を受けた過激派勢力とともに、米国や欧州諸国にとっての警告になっているはずだ。アトムヴァッヘンがボルチモアで画策したことは、ただの始まりにすぎないかもしれない。
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ロシアにいる米国シンパ(第5列)といかに闘うか。

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia: A New Purge of Fifth Columnists Approaches

ロシア:第5列の新たな粛清が始まる。

筆者:マシュー・エレット(Matthew Ehret)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年3月26日

<記事翻訳グループ>

2023年3月21日


 近年、多くの人が「ディープ・ステート(闇政府)」という言葉を、米国にのみ当てはまるものとして考えるようになった。確かに、アメリカの軍事、情報、官僚、企業、メディア、学術などあらゆるレベルで第5列が存在することは明らかだが、同じ構造がユーラシア大陸の国々でどのように姿を現しているかを明確に把握している西洋人はほとんどいない。

 本報告の主題に最も関連した一例としては、(ロシアにおける)西側寄りの広大な巣を挙げることができる。その巣の住民は、1990年代のショック療法の暗黒時代に、CIAの指示のもとに台頭した、ヴァイパー(無料通信アプリ利用)、オリガルヒ(新興財閥)、リベラル・テクノクラート(技術官僚)である。もちろん、1999年にエリツィンから引き継いだウラジーミル・プーチン大統領は、ペレストロイカ時代にロシアを略奪した悪徳機関の多くを一掃し、重要な機関の統制を取り戻し、ロシアの軍事、科学、情報の力を国家の手に取り戻した。

 2021年12月9日、市民社会・人権評議会でこの戦いについて語ったプーチンは、次のように述べた。

 「2000年代初頭、私は彼らをすべて一掃しましたが、1990年代半ばには、CIAの職員が顧問として、それどころかロシア連邦政府の正式な職員として働くことさえありました。後でわかったことですが…。私たちの核兵器複合施設にアメリカの専門家が座り、彼らは朝から晩まで、そこに出勤していました。彼らはテーブルにはアメリカの旗がありました。彼らの住処はアメリカであり、アメリカのために働いていたのです。彼らには私たちの生活に干渉するための立派な道具は必要ありませんでした。なにしろ、彼らはすでにすべてを支配していたのですから」。

 プーチンはさらに、CIAが主導する非対称戦争の新戦略について説明した。その手口は、自国ロシアに組み込まれた広大な「市民社会」機構の中で、外国のNGOや狂信的な代理人(ロシアの野党党首であったナワリヌイの例を見てほしい)を利用したものだった。

 「ロシアが自国の利益を主張し始め、主権、経済、軍隊の能力を高め始めると同時に、(CIAは)ロシア国内政界に影響を与える新しい手段が必要となったのです。その手段の中には、様々な組織を装ったかなり巧妙な手段も含まれていて、そこは海外から資金提供を受けていました。

 もちろん、これらの作戦は、かつて多くの弱小国家に火をつけることには成功してきたが、CIAが資金を提供するNED(全米民主主義基金)、あるいはオープン・ソサエティ財団が使うカラー革命的な手法は、ロシアでは非常に限られた成功に終わっていた。というのもロシアでは、より健全な指導者たちがこれらの作戦の多くの資金調達を断ち切り、2015年にはソロスの組織全体を「国家の安全に対する脅威」と宣言、非合法化していたからだ。ロシアはこの問題への着手に25年遅れてしまったが、ソロスを禁止したことで特別な国家連合に仲間入りすることになった。この組織は、中国の主導のもと行動を共にしていた連合であった。中国は機転を利かせて1989年にソロスを禁止しており、ソロスのオープン・ソサエティの活動を非合法化し、その工作員 (中国共産党総書記でソロスの工作員だった並外れた才能を持つ趙紫陽を含む) を逮捕していた。

 プーチンは、政権初期に重要な戦略的権益を民間の手から奪還した後、リベラルな技術者やオリガルヒに遵守させるための新たな最後通牒を設定した。それは、プーチンが定めたルールに従うか、さもなければその通牒を受け入れるというものだった。ある者は刑務所に入り、ある者は聖域を求めてロンドンに向かった(その多くは、「テムズ川のモスクワ」と呼ばれるようになった地域に、不正に得た利益で邸宅を購入した)。また、ルールに則って行動するために残った者もいた。ある者はこの新しい現実に適応しただろうが、他の勢力は第5列として行動し続け、IMFの影響を受けたロシアの中央銀行や地方の権力中枢の金融を操作するレバー(梃子)にしっかりと爪を立てたままであった。

 プーチンが今年(2022年)3月15日に発言したのは、これらの第5列に対してであった。

 「もちろん、彼ら(西側諸国)は、いわゆる第5列に賭けるでしょう。わが国の裏切り者に。私たちと共にここロシアでお金を稼ぎながら、お金を稼ぎながら、彼(か)の地に住んでいる人たちに。彼らの住んでいるところは、地理的な意味ですらなくて、彼らの自身の考えによって決まるのです。隷属的な意識によって...このような人々の多くにとっての住処は、本質的に、精神的にはここロシアではないのです。私たちの同胞ではありません。ロシアと共にある人々ではないのです。このように考えることは、彼らの考えでは、より高い社会集団、より高い人種に属していることの証なのです。このような人々は、もし自分がこの非常に高い階層に繋がる通路に並ぶことを許されるなら、自分の母親を売る用意すらできています。...彼らが全く理解していないのは、もし自分がこのいわゆる「高い階層」に必要とされているならば、自分は自分の民族に最大の損害を与えるために使われる消耗品でしかないことです。」

 ユーラシア大陸を無視して、過去数十年にわたって国家の主権を蝕んできたアメリカやヨーロッパの第5列にのみ目を向ける近視眼的な習慣が、多くの良識ある人々に、ロシアや中国のような国家を「良い」「悪い」のレッテルが貼られた一枚岩として扱うことができると誤解させている。このような単純化された考え方は、不幸にも多くの誤った情報に影響されることになる。

 プーチンを取り巻く本物の愛国者と、欧米が主導するこの第5列との間で現在繰り広げられている戦いを無視すれば、致命的な判断ミスと現在の危機の誤診は避けられない。さらに悪いことに、主権国家に力を与えるために必要な、より広範な政策的解決策の重要な機会が失われ、この損失によって、出現しつつある全体主義的世界秩序と適切に戦う能力が破壊されることになるだろう。


チュバイスの船出

 「この最高のカーストへの通路に並ぶために自分の母親を売る」第5列の代表格の最も露骨な例のひとつが、アナトリー・チュバイスである。彼は最近、トルコにより安全な場所を求めてロシアを離れる(できれば永久に)ことを表明した。より安全な聖域に飛び込むにあたり、チュバイスは国連での「持続可能な開発目標達成のための国際機関との関係特別代表」の役割を放棄した。



 チュバイスは、現存する政治家の中で最も破壊的な役割を果たした。CIAが運営するエリツィン政権で「ソロスの若き改革者」として働いた。彼の側にはイエゴール・ガイダルや1990年代にロシアの略奪と崩壊を実行するために西側によって採用された他の西側の手先がいた。1992年から96年にかけて経済金融政策担当副首相を務めたチュバイスは、ハーバード大学のジェフリー・サックス、ローズ奨学生のストローブ・タルボットらの学者や、さらにはミハイル・ホドルコフシ、プラトン・レベデフ、ボリス・ベレゾフスキー(彼らの多くは1996年にチュバイスの「7人組」を結成した)などの(他者への共感が欠落している)社会病質者である新興財閥の仲間とともにロシア経済のすべての戦略部門の民営化を監督した。

 チュバイスとガイダルは、悪名高い「バウチャー制度*」の開拓者である。この制度は1991年に始まったブッシュ(父)のCIAがハンマー作戦と呼ぶ多段階の略奪作戦を支えた。ウィリアム・エングダールはこの民営化の密集期を厳密に記録したが、その報告によれば、1992年から1994年の間に15,000社以上が民営化されている。ベレゾフスキーのような新しい新興財閥は、飢えたロシア人から購入したこれらのバウチャーを使って、石油大手のシブネット社(30億ドル相当)をわずか1億ドルで買い、ホドルコフスキーはユーコス社(50億ドル相当)の株式の78%をわずか3億1千万ドルで購入した。ソロス自身は、この略奪時代にロシアに20億ドル以上を投下したと自画自賛している。
*1992年の国営企業民営化のスタート時にとられた手法。政府が国営企業を株式会社に改組するとともに、国民に一定金額のバウチャー(民営化小切手)を無料配布、国民はバウチャーと民営化企業の株式との交換ができることとした。ところが、実際にはバウチャーは株式には交換されず、売買もできたことから市場経済化による経済的混乱の中で多少とも現金収入を得ようとする多くの国民によって、大量のバウチャーがそのまま金融業者、企業幹部、投機的資産家などへ売却された。(複数のサイトから)
当時のチュバイス


 チュバイスはサンクトペテルブルクのペレストロイカ・クラブの初期創設者である。ガイダル(後の首相)、コーガン(後のサンクトペテルブルク銀行頭取)、クドリン(後の財務大臣)といった人物も一緒に創設に関わった。2009年にガイダルが亡くなると、チュバイスはガイダル・フォーラムの創設を主導した。それはダボスで開催される世界経済フォーラムの定年会の1週間前に開催され、シュワブ派の技術官僚(テクノクラート)とロシアにいる彼らの気の合った仲間との間のディープ・ステート(闇政府)の調整機関として機能した。

 2013年、プーチンはチュバイスとCIAにいる彼の交渉人(ハンドラー)についてこう述べた。
 「米国CIAの職員がアナトリー・チュバイスの相談役として活動していたことは、今では周知のことです。しかし、さらにおかしなことは、彼らが米国に戻った後、米国の法律に違反し、ロシア連邦の民営化の過程で違法に私腹を肥やしたとして訴追されたことです。」

 プーチンがチュバイスをCIAの情報提供者であると明確に認識していたにもかかわらず、この金融業者チュバイスは非常に強力な力により守られているという証拠が見られた。具体的には、彼はプーチン在任中に他の多くの人々のように粛清されるのを逃れただけでなく、2008年から2020年までは国営技術企業ルスナノ社の執行委員会の会長として大きな影響力を回復していた。この間、チュバイスはJPモルガン・チェースの諮問委員を務め、世界経済フォーラムの「グレート・リセット(一斉刷新)」の主要な構成要素であるグリーンな代替エネルギーによるロシアの脱炭素化計画の主導権を握っていた。

 12年間の在任中、チュバイスはルスナノ社を風車や太陽光発電の開発に資金を提供する手段として利用し、Hevek Solar(ロシア最大の太陽エネルギー企業)に4億ドルを提供、5億2000万ドルの風力エネルギー開発基金を創設した。

 2021年11月16日、ロシア財務大臣(同じ穴のムジナであるアレクセイ・ウリョカエフ)が逮捕された翌日、ルスナノ社の事務所が家宅捜索されたのだが、チュバイスの保護者は、会社にはもういられないだろうが、逮捕はされないし、新しい破壊的な試みに進むことになるだろう、と彼に保証した。チュバイスの次なる仕事とは何だったのか? その次なる仕事とは・・・

 2021年12月末までに彼は国連で持続可能な開発目標を調整するロシア大統領特使に任命されたことが発表されたのだ。この役職において、チュバイスは恥ずかしげもなく、ロシアの経済を国連の気候市場に適応させ、IMFと世界銀行の命令に完全に服従させることを求め、2022年1月8日に次のように述べていた。

 「ロシアの気候変動市場は、国際的な投資にとって非常に魅力的なものになると確信しています。そこで、ロシアの起業家が代替事業のために海外から資金を受けることを容易にする必要があります。そのためには、世界銀行、国際通貨基金、経済協力開発機構といった主要な国際機関と、この分野で創設されるロシア市場の基本ルールの調和を図ることが必要です」。

 チュバイスは、グレート・リセット行動計画(気候変動とコビド19という二重の危機をひとつにまとめたもの)にしたがって、「ロシアのエネルギーのグリーン化」の先頭に立っただけでなく、ロシアの中心部で外国資本の医薬品複合体の成長に資金提供するためにルスナノ社を利用した。最近、ロシアの巨大製薬会社でコビド19ワクチン製造社ナノレックが2020年と2021年にルスナノ社から数十億ルーブルを受け取り、タチアナ・ゴリコワとヴィクトル・フリステンコ(その息子が同社の主要株主)の夫婦コンビを豊かにしたという大きなスキャンダルも浮上した。

 ロシアの公務員や民間企業には、この他にも第5列と呼ばれる人たちがいるが、新たな粛清のにおいが漂っているのは確かである。


今、進行中の大転換

 「高位カースト」を代表する西側の強力な勢力は、ロシアとの関係を断ち、その関係喪失によって、裏切り者の心を持っているのにぐっすり眠っていた多くの人物は守られなくなってしまった。世界経済フォーラムは3月8日、ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行、アマゾン、ビザ、ペイパル、マスターカード、アップル、IBM、ユニリーバ、ペプシコ(まだある)といった多数の外国WEFパートナー企業とともに関係を断絶した。

 ロシア経済をよりしっかりと統制できるようにするために国家主義勢力を強化する動きが急速に進んでいる。これはセルゲイ・グラジエフ大統領顧問が主導する、金融と長期計画に対する国家統制を強化して「中国-EAEU代替金融/通貨システム」を構築しようとする新たな事業である。長年欧米の寡頭支配層の強い影響下にあった金融部門を支配することは極めて重要である。つまり、もしロシアが来るべき嵐を乗り切るだけでなく、それから抜け出すためには、プーチンが願望する「極東と北極の文明成長の枠組み(パラダイム)」に必要な大規模事業を建設する経済主権と力を持つことが必要なのだ。

 チュバイスは、今この瞬間を選んで船から逃げ出した一匹の大ネズミに過ぎないが、他にも必ずや続く者があるだろう。しかし彼らとは違い、この危機においてロシア愛国者として歩く道を選んだ人々の心の中では、新たに神を恐れる気持ちが目覚めているのかもしれない。世界がより多極化した新しい未来に向かいつつあるからだ。

 本論の最後はプーチン大統領の言葉で締めくくるのがふさわしいだろう。「ロシア国民は、真の愛国者とクズや裏切り者を見分け、それが誤って口に入ったら、虫のように吐き出すことができるようになるでしょう。私は、このような自然で必要な社会の自浄作用こそが、私たちの国、私たちの連帯感、団結力、あらゆる課題に対応する態勢を強化する唯一のものだと確信しています」。


マシュー・エレットは、Canadian Patriot Reviewの編集長であり、モスクワのアメリカン大学のシニアフェローである。「Untold History of Canadaブックシリーズ」や「Clash of the Two Americas」の著者である。2019年、彼はモントリオールを拠点とするライジングタイド財団を共同設立した 。
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日本では、コロナワクチンによる障害と死亡を隠蔽する大手製薬会社と腐敗した日本の保健当局に対する大きな反対が起きている。

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Japan Sees Major Push Back Against Big Pharma and Corrupt Japanese Health Officials Who Are Covering Up COVID-19 mRNA Vaccine Injuries and Deaths – Highest Excess Deaths Now Since WWII

第二次世界大戦以降、最も高い過剰死亡率を記録

筆者:ウィリアム・マキス博士(Dr. William Makis)

出典:Global Research

2023年3月15日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月19日


柳ヶ瀬裕文は日本の政治家。参議院議員である。



ビデオ映像:参議院予算委員会での柳ヶ瀬氏の発言より

「2021年と比較すると、死亡者数は14万人以上増加しています。2020年と比較すると、死亡者数は21万人増加...第二次世界大戦以降で最も多い数字です。」

「日本は、コロナワクチンを受けた後、気分が悪いと訴える人々であふれています。」

「驚くべきことに、(厚労省の発表によれば)ワクチン接種後に 2000 人以上が死亡しているにもかかわらず、これらの死亡者の 99% 以上は(ワクチンが原因だと)評価できないとされています。」

「私たちの計算によると、コロナワクチン接種後に報告された死亡率は、インフルエンザ ワクチン接種の 38 倍以上です。」


日本は初めて死亡がコロナワクチンに直接関連することを認める

 コロナワクチン接種後の 2000 人以上の死亡者のうち、2023 年 3 月 10 日、日本の厚生労働省の委員会は、42 歳の女性の死亡と COVID-19 ワクチンとの間の因果関係を初めて認めた(ここをクリック) 。

 この女性は、2022 年 11 月 5 日に集団予防接種センターでファイザーの予防接種 (2 価) を受けた。彼女は7分後に気分が悪くなり、約15分後に呼吸が止まった.

 女性は病院に運ばれたが、コロナワクチンの注射を受けてから 1 時間 40 分後に急性心不全で死亡した。死後のCTスキャンは、彼女が急性肺水腫を経験したことを示したと、報告書は述べている。

 「(CT)画像から得られたデータから、ワクチン以外に死亡を引き起こした可能性のある異常は見つからなかった。すべてのことを考慮して、ワクチン接種と死亡との間の直接的な因果関係を否定することはできない」と報告書は述べている。


コロナワクチン隠蔽問題で医師が日本政府を提訴

 「本日、日本政府を相手に訴訟を起こしました」と、2023年2月2日の記者会見で福島雅典教授が発表した。日本の厚労省がワクチンと死亡の因果関係を認めないため、福島教授と研究チームは、「あえて法的措置をとるしかなかった 」と言う。(ここをクリック)

 福島雅典博士は、感染症の専門家であり、京都大学名誉教授で、25年以上の腫瘍学の経験がある。福島氏は、ワクチンに関する説明の誤りを指摘し、昨年末には日本の厚労省を公式に批判した。

 「今日、日本政府が正確なデータを継続的に収集し、開示することは、根本的に重要な問題です。しかし、私は、厚労省が最近犯した詐欺スキャンダルを目の当たりにしました」と福島教授は述べた。


コロナワクチンの需要が激減 – 日本は ノバックスのコロナワクチンの 1 億 4,200 万回分の注文をキャンセル

「日本は、“予想よりも低い”需要の中で、ノバックスのコロナワクチン 1 億 4,000 万回分の注文をキャンセルします。」 (ここをクリック)

 国は当初、2021年に武田薬品から1億5000万回分のワクチンを購入することに同意した。武田薬品は同氏の光工場でノバックスのワクチンを製造してきた。しかし、厚生労働省は824万回分を購入しただけで、残りの1億4176万回分をキャンセルした。

 「Nuvaxovid(ノバックス社製Covidワクチン)に対する市場の需要は低く、日本の予防接種の現状とオミクロン株の流行を考えると、予想を下回っています」と、武田薬品の最高財務責任者のコスタ・サルコス氏が、先週の会社の第3四半期決算説明会のときに述べた。


日本におけるコロナワクチンの接種率

 日本での COVID-19 ワクチンの普及率は非常に高い。人口のほぼ 69% が少なくとも 3 回の接種を受けている。(ここをクリック)

ワクチン 1

 その使用比率は、ファイザーが約78%、モデナが約22%である(ここをクリック)。

ワクチン 2


私見

 日本は、3億8,200万回分のmRNAワクチンを投与して、国民の大半にmRNAワクチンの毒を実質的に盛ったことになる。その結果、現在、第二次世界大戦以来最高の超過死亡者数となっている。

 何千人もの日本人がコロナワクチンを接種した直後に死亡したが、日本の厚生労働省は、病理学者が死亡とワクチンとの因果関係を確定した今になっても、これらの死亡(原因)の隠蔽を続けている.

 しかし、勇敢な人々は大がかりな反対行動を起こしている。告発を主導しているのは、コロナワクチンの有害事象の隠蔽をめぐって日本政府を訴えている福島博士、そして隠蔽工作を行っている厚労省とお金を受け取っている政府の追従者たちを公然と非難しているのは、政治家の柳ヶ瀬裕文である。

 誰かが常に最初の行動を起こさなくてはならない。医者が最初の一歩を踏み出し、政治家も最初の一歩を踏み出した。これらの最初の一歩が踏み出されると、まやかしと欺瞞の土台の上に建てられた家がずっと立ち続けることはもうできないはずだ。


ウィリアム・マキス博士:放射線学、腫瘍学、免疫学の専門知識を持つカナダ人医師。総督勲章、トロント大学奨学生。100 以上の査読付き医学出版物の著者。
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ウクライナでは徴兵のやり方に対する反発が高まっている。

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine: The Growing Backlash against the Methods of Conscription

筆者:ペトロ・ラブレーニン(Petr Lavrenin)

出典: INTERNATIONALIST 360°

2023年3月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月19日



最近戦死した同僚兵士の墓に花を供えるウクライナ兵。ウクライナのハルキウでの国防記念日に。© AP Photo/Francisco Seco

 ウクライナの総動員の方法が醜聞にまみれているが、その背景にはウクライナ当局にとって新兵の徴兵がますます困難になっている状況がある。

 昨年度、軍への徴兵がロシアでもウクライナでも問題になっていた。ただ、両国でのその困難の規模は完全に違っていた。ロシアでは、徴兵は部分的で、徴兵に要した期間はほぼ1ヶ月強で済み、国民の30万人程度に関わるものであったことが公式発表でわかる。さらにその徴兵された人々の多くは従軍経験があった。いっぽうウクライナでは全く異なる様相を見せていた。

 キエフ当局の主張によれば、一般的な徴兵は1年以上かけて行われているという。この期間に軍に集められた人々の正確な数ははっきりとはわからないが、この徴兵方法にはいろいろと醜聞があった。

 徴兵を知らせるチラシを配布するときに、警察官が力づくで人々を不法に徴兵局に連れ込んだ事例が複数回あり、国民からの不満の声が上がっている。しかしウクライナ当局には徴兵を中断する意図は明らかにない。というのも、戦争の前線が非常に厳しい状況に置かれている箇所がいくつかあるからだ。

 ウクライナ軍 (AFU)は アルテーミウシク(バフムト)周辺の要塞の支配権を失いつつあり、大量の戦死者を出しているとガーディアン紙などの報道機関が報じている。一方でウクライナ側は、現在も兵の召集を続けており、適切な訓練も与えないままで人々を戦場に送り込んでいる。


徴兵方法の許容範囲

 ウクライナの国内法によれば、もし召喚状が渡される個人の情報が特定されているならば、軍役への召喚は路上においてのみ認められている。さらに軍の徴兵関係者が民間人を引き留めることも違法とされている。その理由は徴兵関係者が警察ではなく、徴集兵は犯罪者ではないからだ。しかし、現在ウクライナで行われている徴兵方法は、まさにそのようなやり方なのだ。

 徴兵年齢にある男性たちが捕らえられ、軍の徴兵係が必死に召喚状を配る動画、中には力ずくで召喚状を渡している場面もある動画がソーシャル・メディア上で常に出回っている。

 中でもオデッサはこの点で特に目立つ地域だ。例えば、軍徴兵係が救急車に乗って街中を移動している姿が目撃された。軍人として適齢期にある男性たちに出くわすと、救急車を止め、召喚状を手渡し、救急車に乗せていた。その模様がソーシャル・メディア上に上がったことで、当該地方の徴兵係は状況説明せざるを得なくなり、救急車をあてがわれたので徴兵の仕事に利用したと主張した。



 オデッサ在住の男性たちが路上で拘束され、むりやり徴兵局に連行されることも複数回あった。中には徴兵召喚状を渡されていないことまであった。

 これまでかなりの長期にわたり、ウクライナ軍の南部司令官は、軍の徴兵係が法律を無視した強制的な手段を取っていることを黙認してきた。しかし2月14日、軍の徴兵局の職員が力ずくで1人の男性を確保する動画が発表された。そこで軍は、醜聞の拡散を避けるために素早く対応し、国民に対して、この件に関係していた職員は「不適切な」振る舞いのため懲罰を受けることになり、さらにこの件の捜査が行われることになると明言した。

 オデッサでのこれらの出来事は、ウクライナ国内で行われている徴兵方法についてより大きな問題を浮き彫りにし、当局が取っているこの方法に疑念を投げかけている。力ずくであったり、詐欺のような手口であったりすることが普通になってきている。例えば、召喚状が公的機関の職員により配布されることも頻発しており、市内の住民たちが自宅の郵便受けの中で召喚状を見つけることもある。これらの行為も法律違反だ。しかし軍の徴兵係は、このようなやり方は正当であると考えている。

 そのような現状になっていることは理解できる。ウクライナ軍の国中の予備兵の数と徴兵局の数の不足は深刻で、ウクライナ軍は何としてでもその補填を成し遂げようとしている様子がうかがえるからだ。しかし、そのような徴兵方法に対する国民からの不満の声が高まっているため、徴兵すること自体が危機にあるだけではなく、ウクライナ当局に対する国民からの信頼も揺るぎ始めている。

 ボグダン・ポティトさん事件が特に世間からの注目を集めた。テルノポル在住の33歳のポティトさんは、1月の終わりにバス停で召喚状を手渡され、軍事訓練を全く受けずにアルチェモフスクの前線に送られ、そのほんの数日後に戦死した。


急展開

 この事件を受け、国民からの不満の声は高まり続け、政府当局や国防省がすぐに声明を出さざるを得なくなった。そして、評判の悪いオデッサの徴兵係たちは、自分たちの仕事の様子を動画に収めざるを得なくなった。 南部作戦司令部共同調整報道部のナタリア・グメニュク部長はこう明言しなければならなくなった。「徴兵係のグループにはどこにも[カメラが]装着されています。そのような取り組みをしています。これは強制的な措置ではありませんが、徴兵方法が不法なものになる可能性に懸念して、カメラを装備させることにしたのです」と。



 同時に、議員たちがウクライナ軍の徴兵担当の代表者たちを呼び出し、国民から懸念の声が上がっていた事象について調査するよう命じた。 特筆すべき点は、国会議員たちがこのような状況にやっと気づいたのは、国会議員の1人が街中で召喚状を手渡された事象が起きた後だったということだ。この事例を受けて、国会内の国家安全保障・防衛・情報委員会のヒョードル・ベレニスラフスキー委員は議会で、現在のいくつかの徴兵方法については、「遺憾である」と述べた

 同議員がこの発言後に約束したのは、まだ実行はされていないが、今後「徴兵局員ができることとできないことを明記したはっきりとした基準が作られるような提言」が行わるというものだった。アナ・マルヤー国防省副長官が自身のテレグラム・チャンネルにこんな投稿をしている。すなわち、国民からの不満の声を受けて、国防省も軍徴兵局の活動を改善する意図がある、と。

 現在「国民の僕(しもべ)」党のゲオロギー・マズラーシュ副党首は、或る法案を提案している。その法律は、従軍経験のない新兵に対して少なくとも3ヶ月間の訓練期間を保障するものだ。

 しかしこの法案の草案の成立がうまく進むかどうか、そしてもっと重要なことは、一般のウクライナ国民がこの法案をどう見るかは不明であり、この先何か良好な変化が起こるかどうかは不透明だ。


徴兵活動は激しさを増している

 政府の公式説明とは違い、ウクライナの徴兵活動は激しさを増しており、必要が生じれば、より多くの国民の動員が促進される可能性があるとウクライナ国防省の顧問ユリー・サック氏がブルームバーグ紙の取材に答えている。「我が国には十分な予備兵がいます。言うまでもないことですが、必要とあれば、もっと多くの動員を行う用意があります」と同氏は「ウクライナには戦争を継続する十分な兵士があるか?」という問いにえた。

 同時に、徴兵適齢にある男性たちが前線に行かずにすむことはほとんどない。ウクライナ国防省が最近明らかにした、徴兵から逃れられる正当な理由の一覧は以下の通りだ。それは、独力で移動できないような病気がある人、病気の親戚の介護をする人、刑事訴訟中の人、近しい親類が亡くなった人だ。自分が兵役を免れられることを証明したい人は、関連文書を提出しないといけない。軍の徴兵局に出頭しない人は、行政責任、そして(場合によっては)刑事責任が問われることすらある。



 徴兵を回避する別の法的手段は、徴兵の一次猶予措置を受けることだ。しかし、ここ数ヶ月、多くの起業家が不平を述べている内容は、この一次猶予措置には欠点があるという点だ。専門的な職業人が、兵役の延期を許可されることはますます困難になっている。一覧表に挙げられた全ての人が猶予措置を受けられるわけではなく、それ以外の労働者たちも召喚状を手渡される危険がある。起業家たちが恐れているのは、雇用者の個人情報を軍に提供させられることだ。さらに多くの組織は、「戦略的な」基準から外れているとされて、自社の職員たちの徴兵への猶予を受けることができなくなっている。

 春に十分な労働者を確保するために、農産業の起業家たちは、農業専門家たちの徴兵の猶予措置を受けようと既に動いている。健常者のほとんどが徴兵されてしまえば、農産業に従事する労働者は不足してしまう。そのため、起業家たちは不測の事態に備えようと、前もって準備しているのだ。特に、地方に住む多くの人々にとっては、予備的な猶予期間が切れつつある。この微妙な問題を巡っては官僚や当該職員の警戒心があるので、猶予リストが農業事業者の首脳部の手に渡るのは、何とか秋ごろまでに、ということになるのかもしれない。秋は穀物の収穫作業があるからだ。今のところ、春に、誰が種まきをするのかについてはわからないままだ。

 ウクライナの農民たちにとっては、この件は大きな闘いだ。ウクライナ農民および民間地主協会のビクトル・ゴンチャレンコ協会長によると、農民たちが懸念しているのは、だれがトラクターや複式刈り取り機を動かすのかという点だという。というのも、小規模農家は徴兵適齢期にある男性を多く雇用しているからだ。「これ以上徴兵の猶予措置は求めません。これまで前線に送られた運転手は一人だけです。召喚状に関する問題はありませんでした。我が社が問題を起こすようなことはしたくないのです」とガソリンスタンドの所有者であるドミトリー・リューシキンさんは語っていた。ガソリンスタンドというのは、燃料とエネルギー部門であるため、特権があり、必要な業務員の5割以上について、軍からの徴兵猶予措置を要求することができる。しかしこのガソリンスタンドの所有者は、徴兵猶予措置を要求しない方を選んでいる。

 ますます多くの業界が同じような方法を選び、公的な猶予措置者の一覧に記載されることを拒んでいる。チェルカースィ地方の或る企業の社長が、ウクライナのオンライン報道機関Stra.na社に、匿名を条件に以下のような話をしている。「隣接する業界でよく見られていることなのですが、従業員の半数が徴兵からの猶予措置を受け取り、残りの従業員が徴兵召喚状を受け取っています。それは、猶予の決定が知らされる前か、知らされた直後です。猶予措置が受けられなかった人たちは、即座に召喚状を受け取りました。そのため、私たちは口をつぐんで、猶予措置を求める一覧を出さないことにしたのです。」と。



 徴兵猶予に関わる問題については、ウクライナもロシアも徴兵に関してもっていた共通の課題だった。ロシアが部分的動員に着手した際、報道機関が繰り返し報じていた醜聞は、徴兵される対象ではない人々も徴兵されていた件についてだった。

 しかし間違いを正す努力も為されていた。例えば、セントペテルブルクの二人の息子の保護者であるシングルファザーが動員された話については、ロシアじゅうで広く話題になった。さらにロシア市民たちは、猶予の条件があったにも関わらず動員されることも多かった。しかしそのような事例の大多数については、当該地方の知事たちがそのような問題の解決に当たった結果、不法な動員は取り消された。


心理面での支援

 ウクライナは徴兵をひどく必要としているが、徴兵適齢期にある人々の熱意が減退していることは当局も承知している。グメニュク氏は、召喚状を受け取ってしまうと、すぐに前線に送られるという言説を「喧伝行為を行う情報源」が世界に対して拡散していると非難した。「これは完全に真実ではありません」と彼女は主張している。

 国民を安心させるために呼びかけられた同氏の言葉だけでは、ウクライナ国民の感情を鎮め、徴兵に対する反発が起こっている現状を抑えることは到底できないだろう。戦況の悪化や徴兵に関する醜聞の蔓延を背景として、ウクライナ社会は不安が高まっている。2月中旬、世界保健機関(WHO)の欧州事務局が出した推定値によれば、960万人のウクライナ国民が中程度あるいは重傷の精神異常に苦しむ可能性があるとしていた。

 この報告書は、WHOが世界を対象に調査した推定値によると、この10年間で戦闘地域に住んでいた人の22%が、軽い鬱や軽い不安状態から精神病まで、何らかの精神異常を発症したことを記している。さらに、ほぼ10人に1人(9%)が中程度あるいは重傷の精神異常に苦しんでいるという。

「これらの数値をウクライナ国民の人口に当てはめれば、既に960万人が精神障害を発症していることになります。うち390万人の症状は中程度か重い症状でしょう」とWHOは発表している。この情報をもとに、WHOは、戦時中および戦後のウクライナ国民に対する心理的支援活動計画の開発を支援した。

 これらの統計結果からは、戦争がウクライナ社会に及ぼしている被害がいかほどのものかや、戦闘行為が終結した後ウクライナ社会はどうなるかについて疑念が生じる。戦争が終われば、社会の団結は弱まり、その後の数ヶ月間、あるいは数年間、感情的なストレス状態が続くから、だ。

 2022年8月、保健省は、戦争後に精神障害に苦しむウクライナ国民の推定概数を発表した。当時のビクトル・リャーシコ保健相の予見では、1500万人の国民が影響を受けるだろうとのことだった。「私たちは既にこの戦争の結果生じる精神障害に苦しむ人々の総数を予見しています。それは1500万人強になるでしょう。この数は少なくとも心理的な支援が必要な人の数です」と同省は述べていた。



 軽い鬱症状については、他人に対する危険にはならず、患者自身の問題ですむが、さらに深刻な状況を生む精神障害も存在する。心的外傷後ストレス障害(PTSD)についていえば、国際機関の調べでは元従軍兵の5割から8割が発症しているとのことであるが、このPTSDは自傷行為や他人を傷つける行為の原因となる可能性がある。さらに、職場や人間関係における問題の原因となる可能性があり、攻撃的な態度を取ることもしばしばある。

 PTSDの事例が、武器の使い方を知っている兵たちの間で広がっていることやウクライナの「闇市場」で武器が広く出回っていることから考えれば、戦争とその後始末の問題が、社会にとって深刻な危険となっているといえる。そして、戦闘に参加した従軍兵の5割がPTSDを発症している事実から考えれば、この戦争が終わる頃には、少なくとも25万人のウクライナ国民がPTSDを発症している状況が考えられる。しかもこの数は過小に見積もられた数値であると十分考えられる。

 もちろんこの問題はロシアにとっても同じことだ。12月にウラジミール・プーチン大統領が指摘していたのは、ロシア国内の15%の人々に心理的な支援が必要であり、若年層においてはその数値は35%に上るということだった。3月、同大統領が政府に、国民、特に難民と従軍者たち対する心理的支援の提供を改善するよう指示を出している。

 未だに不明なのは、ウクライナ軍は近い将来どれくらいの人々を徴兵する計画を立てているかだ。しかしここ2ヶ月で、約3万人の兵士が訓練のために西欧に派遣されている。これらの人々のほとんどは、以前従軍経験のない人々で、西側の軍事装置の訓練を受ける必要がある。これら訓練を受ける人々に加えて、前線での戦死者を緊急に補填する兵たちや実際の戦闘地域外で補助作業をする人員も必要とされるので、徴兵数は劇的に多くなる可能性もある。

 今のところ、市民からの突き上げによってウクライナの総動員の方法に何らかの変化が起こる兆候はない。ここまで約100万人の男性が徴兵されてきたウクライナで、武器を取ることを望んでいない国民たちが、軍の徴兵係たちが行っている不法行為をソーシャル・メディア上で強調したり、当局を批判したりすること以外の動きは見せていない。しかし、より温暖な季節が始まるにつれ、双方の戦闘が急進化することは避けられず、そうなれば戦死者も増え、必要となる兵士の数も増えるだろう。ウクライナがやむを得ず徴兵対象者の枠を広げ、これまでは対象外だった健康に問題がある人々の徴兵や、職業上の理由や家族環境の困難さによる徴兵の猶予なども考慮されなくなるのは時間の問題だ。もちろん、同様のことが最終的にはロシアでも起こることはあり得るのだが。


筆者のペトロ・ラフレーニンは、オデッサ出身の政治記者。専門はウクライナと旧ソ連。
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ならず者超大国のテロ戦争。誰が得するのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

The War of Terror of a Rogue Superpower:Cui Bono?"

筆者:ペペ・エスコバー(Pepe Escobar)

出典:Strategic Culture

2023年2月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日

大手山下訳 137 画像


 グローバル・サウスから見れば、ハーシュ報告書が刷り込んだのは、血のように赤い巨大な文字で書かれた、テロ支援国家としての「ならず者大国」である。

 脳がある人なら誰でも、帝国がそれをやったことはわかっていた。さて、シーモア・ハーシュの爆弾報告書は、ノルド・ストリーム 1とノルド・ストリーム2がどのように攻撃されたかを詳述するだけでなく、毒をまき散らすシュトラウス流*の新自由主義保守派の3人組サリバン、ブリンケン、ヌーランドからテレプロンプター読みの大統領の名前を挙げることさえしている。
*レオ・シュトラウス。ドイツ出身で主にアメリカで活躍した哲学者。彼の思想は現代アメリカ政治、特にネオコンと呼ばれている人に影響を与え、ブッシュ政権の運営の拠り所のひとつと見る向きもある。(ウィキペディア)

 ハーシュ報告書の白眉は、最終的な責任を直接ホワイトハウスに向けていることだ。CIAは、その役割から言って、その責任を逃れられるように描かれている。この報告書全体を、生け贄(にえ)のでっち上げと読むこともできる。すぐにでも馬脚を現しそうな、いい加減な身代わりだ。研究施設の車庫にあった例の機密文書、虚空を延々と見つめる視線、理解不能なつぶやきの数々、そしてもちろん、ウクライナとその周辺で何年にもわたって回転木馬のように繰り返されてきたバイデン一家の腐敗についての説明に関しては、ハーシュは全く手をつけていない。

 ハーシュ報告書は、トルコとシリアで発生した大地震の直後に、偶然掲載された。それだけで、それ自体、調査報道としては地震なみだ。断層をまたぎ、無数の野外の亀裂を明らかにし、 瓦礫の中に埋もれ、喘(あえ)ぐような真実の塊を明らかにした。

 しかし、話はそれだけなのだろうか? ハーシュ報告書は、最初から最後まで、(その説得力を)持ちこたえるのだろうか。イエスでもあり、ノーでもある。まず、第一に、なぜ今なのか? これはリークであり、もともとハーシュの重要な情報源である闇政府の内部関係者の一人から得た情報である。この21世紀版「ディープ・スロート*」であるハーシュは、闇政府の毒性に驚愕しているかもしれないが、同時に、自分が何を言ってもたいしたことにはならないこともわかっている。
*ウォーターゲート事件の際、内部告発者となったマーク・ウェイトFBI副長官を指す言葉

 臆病なベルリンは、この計画の肝心な部分をずっと無視してきたため、キーキー声すら出せないだろう。結局、環境問題をことさらに騒ぎ立てる輩が有頂天になった。なぜなら、このテロ攻撃は、時代を中世に戻すかのような彼らの唱える脱工業化計画を、完璧に前進させるものになったからだ。それと並行したおまけとしては、他のすべてのヨーロッパの家臣たちに、主人の声に従わなければ、自分たちも同じような運命が待ち受けている事実を思い知らせたことが挙げられる。

 ハーシュ報告書は、ノルウェーをテロに重要な共犯者として仕立て上げている。驚くにはあたらない。(ノルウェー出身である)NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(オーウェルの「平和は戦争」を地で行く人物)は、たぶん半世紀にわたりCIAのスパイとなっている。オスロにはもちろん、この取引に参加するオスロなりの動機があった。それは、(ロシアからのエネルギーを失い)途方に暮れるヨーロッパの顧客に、自国の予備エネルギーを売り込んで、臨時収入を懐に入れることだ。

 彼の報告書でちょっと気になるのは、ノルウェーには、アメリカ海軍と違って、まだP-8ポセイドンの運用機がない、と書かれている点だ。当時でもはっきりしていた、アメリカのP-8はアメリカからボーンホルム島へ空中給油をしながら往復していたという事実があるからだ。

 ハーシュ(いやむしろ彼の重要な情報提供者と言うべきか)は、MI6*をこの話から完全に消し去っている。ロシアの情報機関であるSVR(ロシア対外情報庁)は、ポーランドと、当時のMI6にしっかり焦点を合わせていた。この主張の正しさを裏付ける事実は、ハーシュの報告書によれば、「バイデン」の背後にいる組織が計画、情報提供、そして後方支援を行っていたのに、最後の行為(この場合、ソノブイでC4爆薬を爆発させること)は家臣であるノルウェーによって行われたかもしれないとしている、という点だ。
*英国の諜報機関

 問題は、ソノブイ*がアメリカのP-8によって落とされた可能性があることだ。そして、ノルド・ストリーム2の 関連箇所うちの1つがなぜ無傷のままだったのかの説明は何もない。
*潜水艦を捜索するために航空機から海面に投下される器材

 ハーシュの仕事のやり方は伝説的である。私は1990年代半ばから米国、NATO諸国から、ユーラシア大陸全域を取材してきた。そういう外国特派員としての私の立場からすると、彼が匿名の情報源をどのように使い、どのように広範な接触リストにアクセスし―そしてそれを保護し―ているかは、簡単に理解できる。この仕事には記者と情報源、双方の信頼関係が必要となる。そういう意味で、彼の実績は、他の追随を許さない。

 しかし、もちろんひとつの可能性は残されている。もし彼が弄ばれているとしたら? これは、真の情報を隠すための思わせぶりな暴露話に過ぎないのだろうか? 結局のところ、彼の報告書の内容は、詳細な事実に基づく情報と尻切れトンボのような中途半端な情報の間で揺れ動き、その特徴は、関係者の動きを証明する膨大な文書と最新情報を持った多くの人々がふんだんに引用されているところにある。そのため、事実よりも大げさに伝えられている部分も存在している。この報告書において、CIAはことをなすことに対して常に躊躇いの姿勢を示している様子が描かれており、そこがこの記事の信憑性について疑念が生じる理由になっている。このような作戦における海底での作業に取りかかる理想の組織は、米国海軍ではなく、CIA特別活動部であることが周知の事実であるということを考えれば、特にそう思える。


ロシアはどうする?

 ほぼ間違いなく、全世界がいま今考えているのは、ロシアがどう出るか、だ。

 現在の状況を示すチェス盤を見渡すと、クレムリンとロシア連邦安全保障会議の視野に入るのは、①メルケル首相が、ミンスク2は単なる策略だったと告白したこと、②ノルド・ストリームに対する帝国の攻撃(彼らはその概要は掴んでいるだろうが、ハーシュの情報源が提供した内部の詳細までは知らないかもしれない)、③イスラエルのベネット前首相が、英米が昨年のイスタンブールで進行中だったウクライナ和平プロセスをどのように破壊したかについての詳細、だ。

 だから、(露)外務省がアメリカとの核交渉の際に、見せかけの善意を提案されても、「正統性がない、その時期ではない、そしておこがましい」とはっきり言うのも無理はないだろう。

 同省は、意図的に、そしてやや不気味な感じで、重要な問題について非常に曖昧にした。重要な問題とは、アメリカの後ろ盾でキエフが仕掛けてきた「原子力施設を対象とした」攻撃のことだ。これらの攻撃は、「軍事技術および情報諜報」の側面を含んでいた可能性がある。

 グローバル・サウスから見れば、ハーシュ報告書が印象づけているのは、血のように赤い巨大な文字で、テロの国家支援者としての「ならず者大国」である。(この間の一連の動きは)バルト海海底における、国際法の、そしてさらには帝国の安っぽい模造品である「規則に基づく国際秩序」の儀式的埋葬だ。

 闇の政府のどの派閥が、ハーシュを利用してその意図を推し進めたかを完全に特定するには、しばらく時間がかかるだろう。もちろん、ハーシュにはそれがわかっている 。しかし、それだからといって、彼が爆弾記事発表に費やした研究(3ヶ月かけた労作)を止めるわけにはいかなかっただろう。米国の主流メディアは、彼の記事を抑え込みし、検閲し、貶(おとし)め、そして無視するためにあらゆることをするだろう。しかし、重要なのは、グローバル・サウス全体で、この報告書はすでに野火のように広がっていることだ。

 一方、ラブロフ外相は、メドベージェフ(ロシア連邦安全保障会議副議長)と同様に、米国がロシアに対して「完全なハイブリッド戦争状態になり」、両核保有国が今や直接対決の道を歩んでいることを糾弾して、冷静さを制御する電源プラグを完全に抜いてしまった。そして、ワシントンがロシアの「戦略的敗北」を目標に掲げ、二国間関係を火の玉にしている以上、もう「平常業務通り」はありえないのである。

 ロシアの「反応」は、ハーシュ報告書以前から、全く別の次元になっていた。広範囲にわたって脱ドル化が進み、EAEU*からBRICSさらにそれ以外の地域に広がっている。さらに貿易相手は完全に方向転換して、ユーラシアやグローバル・サウスなどの地域が対象となっている。ロシアは、さらなる安定のための確固たる条件を確立しつつあり、避けられないその時、つまりNATOに正面から対処する時を予見している。
*ユーラシア経済連合

 軍事的対応として、戦場でロシアが、戦略的にまるで曖昧なアメリカ/NATOの代理軍(ウクライナ)をさらに粉砕していることは、はっきりとした事実だ。もちろん、ノルド・ストリームのテロ攻撃事件の後始末の付け方は常に背後に潜んでいる。(ロシアは)反撃するだろう。しかし、その時間、方法、場所はロシアが選択する。
関連記事

ポーランド前外相、ロシアのガス・パイプラインの破壊を米国に感謝

<記事原文 寺島先生推薦>

Ex-Polish FM thanks US for destruction of Russian gas pipeline
Moscow has called the incidents a 'terrorist attack'

モスクワは一連の出来事を「テロリストの攻撃」と呼んだ。

出典:RT

2022年9月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日


© Twitter/screenshot

 米国、ロシア、そしてヨーロッパのほとんどの政府が、ノルド・ストリーム1、2を破損させた月曜日(9月26日)の爆発事故の背後に誰がいるのかについて判断を保留しているのに対し、ポーランドの元外相ラドスワフ・シコルスキはそのようなそんな躊躇いは一切持たなかった。

 シコルスキーは火曜日(9月27日)、バルト海の海域で発生した大規模なガス漏れの写真とともに、「ありがとう、アメリカ」とツイートした。デンマークのボーンホルム島沖で、2つのパイプラインが大きく損傷した。今ではそれを計画的な行為と呼ぶ者が多い。

 シコルスキーはその後、ポーランド語で、ノルド・ストリームが被害を受けたことで、ロシアがヨーロッパへのガス供給を継続したいのであれば、「ブラザーフッド・ガス・パイプラインとヤマル・ガス・パイプラインを支配する国々、つまりウクライナやポーランドと話し合う」必要がでてくる、とツイートし、それを「よくやった」と締めくくった。

 ノルド・ストリーム 1とノルド・ストリーム 2は、スウェーデンとデンマーク当局が後に一連の海底爆発があったと発表した後、月曜日(9月26日)にすべての圧力を失った。ノルド・ストリーム1は、ロシアが技術的な問題であると発表した後、容量を減らして運転され、ノルド・ストリーム2は、ドイツが(運転)認証を拒否したため、加圧は十分だったが運転に至らなかった。

 ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、シコルスキーのツイートが「テロ攻撃であるとの公式声明」に相当するのかどうかの判断に、迷っていた。一方、モスクワの国連副大使ドミトリー・ポリアンスキーは、シコルスキーが 「民間インフラを標的としたこのテロスタイルの背後に誰が立っているのかを明確にした!」と感謝した。



 ポーランドのマテウス・モラヴィエツキ首相は、シコルスキー元外相ほどは踏み込まず、ノルド・ストリーム事件を 「ウクライナ情勢の趨勢を激化させる次のステップに繋がる破壊工作」と表現することを選択した。



関連記事:ロシアのガス・パイプラインが前代未聞の規模の被害を受けた(技師からの報告)


 ただの欧州議会議員ではなく、シコルスキーは元イギリス国籍で、数多くの米国やNATOのシンクタンクでフェロー(特別研究員)を務め、ポーランドの元国防相(2005~2007年)、外相(2007~2014年)でもあった。2014年10月、ロシアのプーチン大統領がウクライナをワルシャワと分割したいと考えているという主張を捏造したことが発覚し、その発言の撤回に追い込まれた。

 シコルスキーは2022年1月にロシアを「連続強姦魔」と呼び、6月にはウクライナのエスプレッソTVで「NATOはキエフに核兵器を与える権利がある」と述べた。彼はアメリカの評論家アン・アップルバウムと結婚しており、彼女もまたロシアを露骨に敵視している。

 シコルスキーがノルド・ストリーム破壊工作について米国に感謝したのに対し、キエフはロシアを非難した。ウラジーミル・ゼレンスキー大統領の顧問ミハイル・ポドリアックは「ロシアが計画したテロ攻撃であり、EUに対する侵略行為」と呼び、最善の対応はウクライナ軍にドイツの戦車を送ることであると主張した。
関連記事

ロシアに対する新しい代理組織を打ち立てようと米国はジョージアでの騒乱に火付け

<記事原文 寺島先生推薦>

US Sparks Turmoil in Georgia to Open New Front Against Russia

筆者:ブライアン・バーレティック(Brian Berletic)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日




 これはただの偶然ではない。ワシントン当局がウクライナで対ロシア代理戦争を仕掛けているときに、ロシア周辺部に位置する問題が多く発生するいつものところで事件が起こっていることについてだ。コーカサス地方に位置するジョージア(グルジア)で、抗議運動が始まったのだ。その抗議の標的は現ジョージア政権であり、抗議の目的は透明性を維持しようとする法案の成立を阻止するためだった。その法案は、米国と欧州諸国からの干渉を明らかにし、そのような干渉に対応するためのものだったのだが、まさに今回の抗議活動はその干渉を表す一例となるものだった。

 BBCが出した記事「ジョージアの抗議運動:抗議者たちが議会に突入するのを警察が阻止」にはこうある:警察は放水砲と催涙ガスを使って、抗議活動の2日目にトビリシにあるジョージア国会議事堂前に集まっていた抗議者たちに攻撃を加えた。群衆たちは、問題の多いロシア型の法律の成立に怒っていた。この法律が通れば、活動資金のうち外国からの支援を2割以上受けている非政府組織や報道機関は、「外国の工作組織」と見なされることになるからだ。

 さらに記事は続く:ロシアにある同様の法律は、報道の自由を厳しく制限し、市民社会を抑圧するために使われてきた。「我が国の政府はロシアの影響下にあると考えています。それは我が国の将来にとってよくないことです」とこの抗議活動に参加している多くの学生の中の一人であるリジーさんは語っている。

 しかし、ひとつ明らかな事実がある。それは、BBCが西側支援によるジョージアでの反政府組織活動を指して「市民社会」という言葉を使ってきたのはソ連崩壊以後だという事実だ。西側の支援する反政府組織が「ロシアの影響」を非難しているのは、皮肉だ。というのも、そのような反政府組織自体、米国や欧州の影響を受けて生まれた組織なのだから。そしてこの抗議活動者たちが特に妨害しようとしているのは、米国や英国やEU当局からの不当な影響から自国を守ろうというジョージア政府の取り組みにあるというのも、皮肉な話だ。

 BBCはジョージア政府がこの法律を成立させようとしていることに対して疑問の声を発そうとしている。しかしこの法律の目的は、ジョージア国内の報道機関や政界における外国資本の流れを明らかにすることにある。

 BBCの記事にはこうある:ジョージアの政党与党「ジョージアの夢」のイラクリ・コバヒデ幹事長は、この法律の草案がロシアの抑圧的な法律と類似しているという批評に対して、それは誤解であるとした。「この法律の最終目的は、扇動を排除し、国民に対してNGOからの資金提供に透明性を持たせることにあります」と同氏は述べている。

 しかし、「透明性を求める国際協会(Transparency International)」のジョージアの事務局長をつとめるエカ・ギガウリ氏が我がBBCに語ったところによると、すでにジョージアにおいては、NGOは10の法律に縛られており、既に財務省はNGOの会計や資金などの情報を完全に掌握できているとのことだった。

 まず「透明性を求める国際協会」という名前がついているこの組織が、外国からの資金という、表に出すことが少し憚れるような事柄に対してさらなる透明性を要求するというこの法律に反対していることの奇妙さが議論されるべきことである。そこでこの「透明性を求める国際協会」自体にどんな資金が流れ込んでいるのかを見てみると、この協会には米国国務省、欧州委員会、英国外務省から資金が流れていることがわかる。この事実から明らかになるのは、この組織が西側の外交政策の目的を前進させるためのものであることだ。実際の透明性などはそれよりも後回しにされるのだ。

 BBCが自身の主張を強化するために、抗議活動者たちが戦っているのはEUに加盟するという彼らの「未来」のためであるという主張を引用しているが、BBCが描いているのは、米国が支援したウクライナを標的にした2014年の政権転覆工作の第2弾にすぎない。この2014年の政権転覆工作が、ロシアが介入した現在進行中の紛争の引き金となったのだ。しかしそれだけではなく、BBCの報道は米国が以前行ったジョージアに対する介入の第2弾につながるものだ。


歴史は繰り返す

 2003年に遡るのだが、米国はすでにジョージアでの政権転覆工作に資金を出していた。

 ロンドンのガーディアン紙は、2004年に以下のような記事を出している。「キエフでの紛争の裏に米国の影」。ガーディアン紙がこの記事で取り上げていたのは、米国がいわゆるオレンジ革命時にウクライナに介入していたことだけではなく、セルビア・ジョージア両国に干渉していたという事実だった。

 記事にはこうある:この作戦は、米国が用意したものだ。西側の色がつけられて、大量生産の考えのもと、よく考え抜かれた作戦だった。具体的には、4カ国を対象に4年間かけて行われたもので、不正選挙を工作し、気に入らない政権を転覆させようとする作戦だった。

 米国政府から資金を得て組織され、米国の助言家、世論調査員、外交官、米国2大政党、米国の非政府組織を利用したこの計画が始めに実行されたのは、2000年の欧州ベルグラードであり、スロボダン・ミロシェヴィッチを選挙で敗北させた。
 
 その際、ユーゴスラビアの米国大使だったリチャード・マイルズが大きな役目を果たした。そして昨年までジョージアの米国大使を務めていたマイルズが、ジョージアでも同じ手を使ったのだ。つまり、ミヘイル・サアカシュヴィリ(2003年のバラ革命後に大統領に就任)に、エドゥアルド・シェワルナゼ(2003年までの大統領*)を失脚させる手口を教えたのだ。
*1985年から1990年までソビエト連邦の外務大臣を務め、1995年から2003年までグルジア大統領を務めた。(ウィキペディア)

 2003年以降、米国はジョージアに武器を投入し、ジョージア軍に訓練を施してきた。2008年には、ジョージアはロシアを攻撃したが、この代理戦争は短期間で失敗に終わった。この攻撃のため、多くの点において、ロシア当局が2014年以降ウクライナに対して国家安全上の懸念を感じることに正当性をあたえることになった。

 西側各国政府や報道機関の多くが、2008年の紛争を「ロシアによる侵略行為」であると描こうとしているが、2009年、ロイター通信は、「ジョージアがロシアとの戦争を開始。その裏でEUが支援しているとの報道」という記事を出している:「調査団の見解では、この戦争の引き金を引いたのはジョージア側だとしている。ジョージアが、2008年8月7日から8日にかけての夜に、重砲で(南オセチアの)ツヒンヴァリ市を砲撃したのだ」とこの件の調査団長であるスイスの外交官ハイジ・タリアヴィーニ氏は述べている。

 さらに記事にはこうある:…わかったことは、ミヘイル・サアカシュヴィリ大統領政権下にある米国の同盟国ジョージアの関与が決定的であるという点だ。同大統領の政治的立場にさらなる悪影響をもたらすと思われる。

 このミヘイル・サアカシュヴィリこそが、ガーディアン紙が2004年に出した記事の中で、「米国政府により組織された」政治的な介入を受けたのちに権力の座についたと報じた人物なのだ。


再びジョージアでの代理戦争:米国はロシアに対抗するための新たな代理組織を求めている

 トビリシで抗議活動に参加している多くの人々の考えとはちがうだろうが、これらの抗議活動の目的は、実は米国当局が求めているロシアに対抗できる二つ目の代理組織をうちたてることにある。それにより、敗色の色が濃くなっているウクライナでの代理戦争の状況を改善しようというのだ。

 これはただの空想ではない。ジョージアを利用して、まさにこの目的を達成しようという計画が、2019年のランド研究所の論文にはっきりと書かれているのだ。その論文の題名は「ロシアを疲弊させる」だ。

 ロシアを疲労困憊させるための手段の例として、「ウクライナに殺人兵器を供給し」、「南コーカサス地方の緊張を利用する」ことが挙げられていた。

 この論文はこう詳述している:米国がジョージアやアゼルバイジャンにNATOとの関係を強めるよう進めれば、おそらくロシアは南オセチアやアルメニア、アブハジア、ロシア南部の軍の強化に力をいれるだろう。

 南オセチアやアルメニア、アブハジア、ロシア南部の戦力を強化すれば、ロシアがウクライナへの兵力を減らすことになる状況を米国当局は望んでいたのだ。

 さらにこの論文にはこうある:ジョージアは長らくNATO加盟を求めてきた。同国は北大西洋協力会議(NACC)に1992年に加盟したが、これは独立直後のことであり、さらに1994年にはNACCの平和のためのパートナーシップ組織にも加盟した。理論上は、NATOはジョージアの加盟に向けて動いていたのだが、2008年のロシア・ジョージア間の戦争により、加盟に向けた努力は永久に保留されることになった。しかしジョージアは、NATOに加盟するという野望を捨てておらず、地中海やコソボ、アフガニスタンなどでのNATOの軍事行動に参加してきた。欧州諸国が反対することで、ジョージアのNATO加盟が承認されないのであれば、米国がジョージアとの間の二国間協定をうちたてることも可能だ。

 もちろん、そうなるかどうかは、ジョージアが米国の従属政権により統治されていることが条件となる。さらに今回の抗議活動自体が、ロシアの国境付近を不安定化させ、結局はロシアに圧力をかける(ウクライナへの兵力を減らす)、という同じ目的を果たすことにもなる必要があるのだ。

 BBCが最近出した記事によれば、ジョージアでの抗議活動者たちは自分たちの利益のために戦っているとのことだが、ランド研究所の論文に書かれている内容は、米国がロシア対策としてジョージアを利用してきたやり口がどれだけ酷いかについてだった。

 その論文にはこうある:2008年8月、分離主義者たちとの和平交渉が決裂したのち、ジョージアは南オセチアと飛び地領アブハジアに軽い戦争を仕掛けた。この両地域は、ジョージア国内の親露の半独立地域だった。この戦争の結果は、ジョージアにとってはひどいものだった。すぐにロシアが介入して、結局この両地域を占領し、短期間ではあるがジョージア国内の他地域も占領した。ジョージアは2008年8月14日に停戦に合意したが、それはロシアが介入したわずか8日後のことだった。ただしロシア軍は南オセチアとアブハジアに駐留し続けており、両地域はそれ以後独立を宣言している。

 この論文がさらに警告していたのは、ジョージア当局がNATO加盟に固執すれば、「ロシアは再び介入してくるだろう」という点だった。

 米国の外交政策に国と国民と政府が取り込まれ、完全な自滅への道を歩んでいるウクライナと同様に、米国はロシアの辺境地域にある国々の国土に火を放ち、炎を燃え上がらせようとしている。そしてその目的は、「ロシアを疲弊させる」ことだ。このことは、米国の政策論文の題名にはっきりと書かれている。ジョージアもその中の一国なのだ。

 この点に加えて、米国が支援している抗議活動者たちが「ロシアの影響」について不満を表明しているのに、外国からの資金に透明性を持たせようとする法律に激しく反対しているという事実から再度わかることは、「西側的価値観」とされるものが、ただの煙幕にすぎず、その裏には米国とその同盟諸国が自国の外交政策の目的を前進させようという魂胆が見えるということだ。そのような魂胆は、国際法に反するものであり、国際法に則ったものではない。



– 米国が支援する反対勢力で組織されているジョージアでの抗議活動 (実際米国や英国の旗を振っている)の意図は、外国勢力に対する透明性を広げるという法案を妨害することだ。しかし、この法案の目的は外国からの干渉を減らすことにある。

– 米国は2003年に、ジョージア政府の政権転覆に成功していることを、ロンドンのガーディアン紙が報じている

– ジョージアがロシアを攻撃したのは、米国が2008年までにジョージアに武器をふんだんに供給して軍に訓練を施したのちであったと、EUの調査団は報告している。

–米国がジョージアの抗議活動を扇動している目的は、再度ロシアを「疲弊させる」ため であると、ランド研究所の2019年の論文「ロシアを疲弊させる」に詳述されている.

– 米国は他の国々にも圧力をかけ、外国の干渉から自国を保護しようとする法律の成立を妨害しようとしていることは、先日タイでもあった。


引用文献

BBC – 「ジョージアの抗議活動。警察が議会に入ろうとする抗議活動者を抑えている」 (2023): https://www.bbc.com/news/world-europe…

Transparency International – 「私たちの支援者」 https://www.transparency.org/en/the-o…

CNN – 「ジョージア政府が提案した「外国からの干渉」排除法案が、抗議者の怒りを買う」(2023): https://edition.cnn.com/2023/03/09/eu…

Guardian – 「キエフでの騒動に米国の影」(2004): https://www.theguardian.com/world/200…

Reuters – 「ジョージアがロシアとの戦争を開始。EUが支援しているとの報道」 (2009): https://www.reuters.com/article/us-ge…

RAND Corporation –「ロシアを疲弊させる」 (2019): https://www.rand.org/pubs/research_re…


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ウクライナの敗戦が見えてきた。

<記事原文 寺島先生推薦>

The Foreseeable End of Ukraine

筆者:カール・リヒター(Karl Richter)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月16日

軍人


カール・リヒター氏が断言するところによると、ウクライナの敗北は差し迫っているという。その理由は、現在進行中の戦闘において、ロシアが支配的に勝利を収めていること、西側からの軍事支援や経済支援が脆弱であること、ウクライナ国内で国粋主義がはびこっていることにあるという。そして同氏はその主張の裏付けとして、西側の数名の経済専門家の視点を引用し、西側諸国の政府が自国の対ウクライナ政策が完全な間違いであったことを認めざるを得なくなる日も近いと予見している。



 ウクライナを支援してきた国々が浮かぬ顔になってきた。実際、いま非常に興味深い状況になりつつある。
 この先数ヶ月で、西側の政治家たちがついてきた嘘の中核が爆発するだろう。そう。ウクライナ戦が終わりを迎えるのだ。
 そうなれば何十億ドルものカネがキエフの沼地に吸い込まれることもなくなるだろう。そして、確実に言えるのは、西側の戦車をいくら投入しても(万が一到着すれば、の話だが)、状況にさほどの変化は与えないだろう。
 ロシアが支配的立場に立っていて、 この戦争を思いのままに激化できる全ての手段を有している。
 いっぽう西側の立場は、経済的にも軍事的にも、追い詰められており、道義的な意味合いでは更に窮地に立たされている。


 その道に詳しい少なくとも4人の西側軍事専門家が、大手報道機関がここ数週間報じてきた内容と相容れない主張を行っていて、この先数週間が、ウクライナが生き残れるかどうかの決定的な時期になると見ている。
 その中の1人がオーストリアのマーカス・ライスナー大佐である。同大佐は、筋金入りの親ウクライナ派だ。
 最近出した見解のなかで、ライスナー大佐が指摘したのは、ロシアの資源力を考慮し、その力を認めるべきだという点だった。
 ライスナー大佐は「ウクライナは何ラウンドかは勝てるかもしれないが、KOを食らわせたことは今まで一度もない」と語っている。
 同大佐によれば、ロシア側には自由に使える砲弾が少なくとも1000万発残っていて、さらに340万発の新しい砲弾が毎年生産されているという。「だからロシアはまだまだ長く戦争を持ちこたえられる立場に立っていて」、キエフ政権側にとってはますます厳しい状況になっている、と彼は主張している。


 元准将でアンゲラ・メルケル前独首相の顧問だったエーリヒ・ヴァッド氏はもっとはっきりとした主張を行っている。
 ヴァット氏の目には、ロシアが「明らかに優位」であると映っていて、その点では米国のマーク・ミリー統合参謀本部議長(!)と同じ意見だ。
 ミリー統合参謀本部議長は、「ウクライナが軍事的に勝利を収めることは期待できない」としていた。
 さて、ヴァット氏は以下のことに驚愕していた。それは、「報道機関の同調圧力が非常に強く、このような状況はドイツ連邦軍共和国建国以来のことだ。これでは他論が出なくなってしまう」という点だった。
 ただし同大佐のこの主張については、「(そんなことに今さら気づくなんて)この誇り高き元将軍はこの10年間、どんな世界で暮らしてきたのだろうか?」と訝(いぶか)る声も上がっている。


 ウクライナの劣勢を主張している4人目の人物が、元国防総省顧問で元米軍大佐のダグラス・マクレガー氏だ。
 最近行われたいくつかのインタビュー(その中には米国の独立系オンライン情報機関リダクティッドによるインタビューもあった)において、マクレガー氏は、ウクライナ側の損失の大きさ(もともとの大隊の戦力の7割が失われたこともあった)について言及しただけではなく、ウクライナの国内諜報機関であるSBU(ウクライナ保安庁)に対する国民からの非難の声が蔓延していることについても触れ、これは終末が近いことを示していると語っていた。
 キエフ政権の指導者層がすぐに交渉に応じようとしないのであれば、ウクライナが失わずに済むのは、ドニエプル川西側の小さな州くらいになってしまうだろうとマクレガー氏は語っている。
 同氏はウクライナ国内で、今の軍事政権に対してクーデターの動きが起こる可能性を否定しなかった。 前線で酷い損失が出ている状況にあるからだ。
 もしクーデターが起こらなかったとすれば、モスクワ当局は、「この仕事」を自身の手で終結させ、ゼレンスキー政権を片付ようとせざるを得なくなるだろう。
 その後の新ウクライナ政権は、おそらく慎重な立場をとり、和平交渉に応じようとするだろう。ロシアにとって最も望ましい展開は、そうなることでロシアの開戦理由であったウクライナの「非ナチ化」も達成できることだろう。


 大手報道機関であるドイツの日刊紙ディ・ヴェルト(Die Welt)紙でさえ、先日(1月30日)の記事で認めていたのは、この先予見できる未来として、ロシアが軍事的にも政治的にもこの戦争の勝者となりうることだった。そしていっぽうのウクライナ側は目的を何一つ達成できないまま終わってしまうということだった。
 つまり、ウクライナは掲げた目標を何ひとつ達成することはないだろう。クリミアの奪還など論外だ。そしてロシアは、今後避けられない交渉による解決策として、ウクライナのNATO加盟は「近い将来排除する」を強く打ち出してくるだろう。この条件こそが、ほぼ1年前にモスクワ当局がこの戦争に踏み切った唯一の理由だったのだ。そして「結果的に、ずたずたにされたウクライナが残る」ということになる。
 西側各国政府が自国の対ウクライナ政策が完全な失策だったことを自国民に対して認める日が近いことを心待ちにしている向きもある。ウクライナが勝つことも、ロシアが「破壊される」こともないだろう。


 そのような見誤った目的を、アンナレーナ・ベアボック独外相が、独政府の政策の目的であると主張している。ウクライナが終わりを迎えることになれば、西側各国政府はキエフ当局に流し込んできた何十億もの大金を、どぶに捨てることになるだけではなく、ロシアとの関係が永久的に悪化したままになってしまうだろう。そうなれば、自国のエネルギー供給が破壊され、自国の軍備もなくなってしまう。
 こんな失策はこれまでに例を見ないもので、国民に対する明らかな反逆としてしかとってもらえないだろう。
 このような状況は何よりも欧州の人々に被害を与えるものだ。「通常時」においては、各国の責任者には説明責任があるとされてきた。この法則は今でも生きているはずだ。
 ドイツだけではないが、現在の各国指導者層はすべて跡形もなく別の勢力に取って代わられるしかないのだ。そうでもないと、たとえ中途半端な真摯な態度であったとしても、ロシアと交渉できる状態にもどすことはできないだろう。


 私たちが知っているようなウクライナは余命いくばくも無い。遅かれ早かれ、ウクライナは領土を大きく狭められた残りかす国家としてどうでもいい存在に落ちぶれてしまうだろう。
 ウクライナの悲劇は、自国が西側の道具にされるがままになったところにある。その西側の頂点にいるのがワシントン政権であり、ウクライナは自国のためではない目的のために、ほとんど自殺行為と言っていい振る舞いを見せてきた。
 米国政権の言う「ウクライナ国民が最後の一人になるまで」戦うという言い方が、さもありなんと言える状況になってきた。

 最後になるが、ウクライナは自国の国粋主義者の被害者になってしまったということだ。
 ソ連時代には、この国粋主義は一時的に現れる表面的な勢力に過ぎなかったが、1991年直後に、米国の諸機関により強く煽られた。それは当初から反ロシアの傾向があった。
 こんにち、ウクライナは国粋主義に蝕まれた疑似国家であり、現在の政体では持ちこたえられない状況に置かれている。
 歴史上同様の例を見いだそうとするならば、第二次世界大戦前のチェコスロバキアやポーランドの状況に似ていることが思い起こされるだろう。
 両国は、自国内の少数民族との共存を賢明な方法を使って解決することができず、その結果として、自国内の国粋主義と西側勢力による扇動を呼ぶことになってしまったのだ。現在のキエフ当局が自国の政策で苦しんでいる状況は、1938年のチェコスロバキアや1939年のポーランドと似た状況になっているのだ。


 ポーランドに関しては、歴史的に苦い皮肉を味わうことになるかも知れない。それはポーランドが、ウクライナ問題解決に際して、元の領地であるガリシア地区を取り戻すことになれば、の話だ。
 ただしそのような状況に対する備えはもう何ヶ月間も着々と進められている。そして十分興味深いことに、ポーランドは、そのことに対する同意を頭のいかれたキエフ当局と結んでいるのだ。その状況についてはそんなに苦労しなくても調べることができる。
 モスクワ当局がその裏でずっと関わってきた可能性は排除できない。この状況にほくそ笑んでいるのはクレムリンかもしれない。ポーランドとウクライナ両国の国粋主義者たちがこの先のことでぶつかり合っているのが見えるのだから。
 1943年と1944年に起こったヴォルィーニ大虐殺事件の際、ドイツの手引きの下で、ウクライナ側は30万人のポーランド農夫を虐殺した。その記憶をポーランド側は忘れていない。
 すぐにでもEUは、領内で新たなやっかいごとを抱え、何十億もの金をふいにすることになるかもしれない。ロシアにとってこんなおいしい状況はない。


カール・リヒター氏。1962年ミュンヘン生まれ。兵役を終えた後、歴史と民話とサンスクリット語と音楽理論をミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学で学ぶ。2014年から2019年まで、欧州議会議員の事務局長。2008年から2020年まで、ミュンヘン市議をつとめた。
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ファイザー社が変異種を自らの手で作り出そうとする研究を行っていることをファイザー社の幹部が暴露。プロジェクト・ベリタスが動画を発表

<記事原文 寺島先生推薦>

Project Veritas has broken Pfizer's Gain-of-Function Research Program Wide Open.
Pfizer's research is dangerous, immoral and must be shut down now.

プロジェクト・ベリタスはファイザー社の機能獲得研究計画の内容を広く公開
ファイザーの研究は危険であり、不道徳であり、今すぐ停止させなければならない。

筆者:ロバート・W.マローン(博士・理学修士)



2023年1月26日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月16日



 昨日、私はプロジェクト・ベリタスの動画の一部に出演するよう依頼を受けた。この動画が暴露した内容は、ファイザー社の一人の幹部が「指向性進化法*」という手法によりCOVID-19ウイルスの「変異種」をつくることで、新しいワクチンを広めようという計画についてだった。もちろん私はこの仕事を喜んでお受けした。上記の動画はその最終版だ。
* 望ましい機能を有するタンパク質を設計するための安定した手法

 COVID危機の背後にある深い邪悪に関する話については、私と妻のジルが世界中で訪問してきた多くの地域で普通に行われていた。

 イェイツの詩「再生(The Second Coming)」にある「新たな猛獣が生まれ出てベスレヘム(パレスチナの一地区)をいつくしむだろう(壺齋散人訳)」を地で行く行為が行われているのだ。哀れみの気持ちの欠如。目的のためにはどんなことでもする。自身の行為が人類を深い悲劇に陥れるということも考えず、喜びに満ちあふれた顔。人々のつながりや国家のあり方に与えた被害を見て笑っている。自身の言葉が内包している恐怖にも無頓着だ。言い回しからもそんな気持ちは十分伝わる。自分が特別な資格を有しているという深い信念にとりつかれている。頭が痛くなるほどの過剰な自意識が染み出ている。知性や内省の念が全く欠けていて、自分の魂が根本から腐っているという自意識もまったく存在していない。

 不滅の企業の高い地位にある使者からの声を聞け。この企業は、法廷からかつて市民たちが持つことを制限されていた権利を所有していると宣告されたことのある企業だ。さらには慢性的に人々の苦しみをあさり、蝕んできた企業だ。さらには不法行為を行ったとして法的に課せられてきた多額の罰金をものともせず、ただの事業手数料としか捉えていない企業だ。

 別世界から来たようなこの大使の顔を深く見つめ、彼らの世界とはどんなものなのかの話に耳を傾けてほしい。これが今私たちの到達点だ。この文化こそが、今私たちが受けとめている世界の人々にとっての悲劇だ。

 自らを悔い改める気持ちが全くうかがえない陳腐な表情をとくとご覧あれ。

 今日中に、この動画の追加版が発表されるようだ。

 この動画をご覧になった後、貴殿はどうなさるおつもりか?

 動画から重要な場面の抜粋

ファイザー社の研究・開発・戦略運営部の幹部であり、mRNA関連科学計画者のジョードン・トリシトン・ウォーカーはこう語っている。「私たちが研究してる内容の一つに、以下のようなものがあります。それは、”それ(COVID)を変異させるのはどうか?そうすれば前もって新しいワクチンの開発ができるのに”というものです。だから私たちはその研究にとりかからないといけないのです。しかしもしそんなことをするつもりであれば、危険も生じます。どんな危険かはわかるでしょう。製薬会社がクソウイルスの変異をさせているなんて、だれも思いたくないでしょうから。

・ ウォーカーの発言:「誰にも言わないでください。誰にも言わないって約束してください。それ[実験]の方法は、まずそのウイルスをサルたちに入れて、その後続けて互いに感染し合うような状況を作り、一連の標本をサルたちから入手するのです。」

・ ウォーカーの発言:「変異させたこのウイルス[COVID]が、普通にあちこちに行き渡ることが絶対ないようにしっかり管理しておかなければなりません。私は、武漢からこのウイルスが広まったのは、その管理ができなかったからだと正直思います。このウイルスが感染源なしで突然現れたなんて考えられません。そんな馬鹿なことはないでしょう。」

・ ウォーカーの発言:「私が聞いたところによれば、彼ら[ファイザー社の科学者たち]が、それ[COVIDの変異過程]を最適化しようとしているということです。しかしその動きはゆっくりと行われています。というのも、全ての人々が慎重になっているからです。明らかにこの研究を加速させようとは思っていないようです。そして私の考えでは、彼らは、この研究を調査研究だけのものに見せようとしているのです。その理由は、自分たちがウイルスの未来の変異を見抜いている ことを広く知られたくないと思っていることが明らかだからです。


動画全編の音声起こし

覆面記者:最終的にファイザー社はCOVIDの変異を考えているのですか?

ジョードン・ウォーカー: えっと、これは表向きにはしていないことなのです。はい。何としても人には言わないでください。誰にも言わないって約束してください。本当に誰にも言わないでくださいね。ウイルスが変異を続けている過程についてはご存じですよね。

覆面記者:はい。

ジョードン・ウォーカー: えっと、我が社が研究していることのひとつに、自分たちで変異を作っておくというものがあります。そうすれば、前もって新しいワクチンを作っておけるでしょ?だから、そうしなければならないのです。でもそうするのであれば、危険もあります。想像がつくでしょう。製薬会社が(音声不明箇所)ウイルスの変異をさせているなんて、だれも思いたくないでしょうから。変異させたこのウイルスが、普通にあちこちに行き渡ることが絶対ないようにしっかり管理しておかなければなりません。

覆面記者:とんでもない考えですね。

ジョードン・ウォーカー:ええ。正直、武漢でウイルスの拡散が始まったのは、管理ができなかったからだと思いますよ。ウイルスが感染源なしで突然現れたなんて考えられません。

ジェームズ・オキーフ(ベリタス・プロジェクト代表)のコメント:ファイザー社の研究・開発・戦略運営部の幹部であり、mRNA関連科学計画者のジョードン・トリシトン・ウォーカーの話を聞いてほしい。

覆面記者:私にはその研究が機能獲得研究のように聞こえます。

ジョードン・ウォーカー:わかりません。すこし違います。別物だと思いますよ。機能獲得研究では全くありません。

覆面記者:私には機能獲得研究のように思えますが。まあいいです。気にしないでください。

ジョードン・ウォーカー :違いますよ。指向性進化法は機能獲得研究とは全く違います。えっと、ウイルスに関しては機能獲得研究はやってはいけないことになっていますので。推奨はされていません。でも、選ばれた指向性変異のような研究を行い、効力が強まるかどうか確認をしようとすることは行われています。だからそのような研究が進行中なのです。ただこの研究がどのように行われているかはわかりません。もう流行はない方がいいなどとはいいません。私たちはイエス・キリストではないのですから。

ロバート・マローン博士:この男性には道徳的視座が全く存在しないように思える。

ジョン・ウォーカー:全ての政府機関に向けた回転ドアが存在します。正直、この回転ドアは業界にとっては都合のいいものです。

覆面記者:そうですね。

ジョードン・ウォーカー:ただし、ほかの米国民にとったらよくないことなのですが。

覆面記者:なぜほかの米国民にとってはよくないことなんですか?

ジョードン・ウォーカー:その理由は、我が社の薬品の承認をする立場にある規制をかける側の人々が、規制をかけるのをやめれば、その人々は我が社の利益になるような仕事をしようと思うようになるからです。我が社に厳しい規制をかけたりはしなくなるでしょう[音声不明箇所00:01:44]。仕事をもらえることになるでしょう。

ロバート・ウォーカー博士:彼が、世界の公共医療を危険にさらすような決定を行っているファイザー社内部の一般的な社員が持つ特性の代表だとすれば、この会社は芯から腐っている。

覆面記者:ファイザー社は今何に取り組んでいるのでしょうか?私の考えでは、ワクチン製作に全力をあげていると思うのですが?

ジョードン・ウォーカー:はい、私たちは実際に今日、そのことについての会議があったのです。たくさんのことについて話し合いました。

覆面記者:本当ですか?

ジョードン・ウォーカー:このことを話していいのかどうかはわかりません。

ジェームズ・オキーフ :我がプロジェクトの覆面記者がウォーカーに尋ねたのは、ファイザー社が自社のCOVIDワクチンがウイルスの諸変異種に対して効果が出ていない事実にどう対処しているかについてだった。しかしその問いに対するジョードン・ウォーカーの答えは、不安を煽る内容だった。以下、彼の話を聞いていただきたい。


ジョードン・ウォーカー:私たちが調べているのは、ウイルスが変異し続ける様子についてだということはご存じですよね?

覆面記者:はい。

ジョードン・ウォーカー:えっと、私たちが調べている内容の一つに、「それ(COVID)を変異させるのはどうか?そうすれば前もって新しいワクチンの開発ができるのに」というものがあります。だから私たちはその研究にとりかからないといけないのです。しかしもしそんなことをするつもりであれば、危険も生じます。どんな危険かはわかるでしょう。製薬会社が[音声不明箇所00:02:44]ウイルスの変異をさせているなんて、だれも思いたくないでしょうから。ですから、こんなことやってみたい?的なことを話しているだけです。この先我が社が研究するかもしれない内容の一つとしてです。例えば、もしかしたら我が社は新種のワクチンを開発できるかもしれないよ、みたいなことです。

覆面記者:わかりました。ということは、ファイザー社は最終的にCOVIDを変異させることを考えているということですね?

ジョードン・ウォーカー:えっと、そんなことは人前で言うことではないです。だめです。会議で出てきただけの話ですよ。それだけです、こんなこともできるんじゃないかといったものです。考慮すべきことの一例としてあがってきただけのことですよ。これらのことについてはまだまだこの先議論されると思います。[音声不明箇所00:03:11] 正確に、ですよね?私たちが話し合っていたのは・・・こんなことは、いいことだとは思われませんよね。

ジェームズ・オキーフ:そうだ。ファイザー社はCOVIDウイルスを自社で変異させることについて社内で話し合っているようなのだ。その目的は、その変異種にぴったりとあうワクチンをしつらえて、売り出そうということだ。ウォーカーが詳細に話す、このような科学的実験がどう行われているかの話について聞いていただきたい。まずは、生きた動物を使うようだ。

ジョードン・ウォーカー:さて、このような変異をやる方法についてですが、我が社の考えでは、おっと、この話は誰にもしないでくださいね。何があってもです。誰にも言わないと約束してください。絶対に言わないでくださいね。この実験の方法ですが、まずはウイルスをサルたちに仕込むのです。 それからサル同士で感染し合うような状況を作ります。それから 一連のウイルス標本をサルから入手し、感染力のより強いサルたちを見つけるのです。それからそのサルたちをほかのサルの中に入れます。そういう風にして、常にウイルスを変異させ続けることのです。そういうやり方もあります。別のやり方は、 指向性進化法を使うことです。我が社ではあまり好まれないやり方ですが、これはウイルスの表面にあるさまざまなタンパク質が時間を追うごとにどう変化していくかを観察するやり方です。このやり方を使えば、変異の仕組みを理解し、ウイルスを求める方向に作為的に変異させる術も見いだせるようになります。ただし、変異させたこのウイルスが、普通にあちこちに行き渡ることが絶対ないようにしっかり管理しておかなければなりません。

覆面記者:とんでもない考えですね。

ジョードン・ウォーカー:ええ。正直、武漢でウイルスの拡散が始まったのは、その管理ができなかったからだと思いますよ。ウイルスが感染源なしで突然現れたなんて考えられません。

ジェームズ・オキーフ:COVIDウイルスの実験を生きたサルたちに行っていたって?少なくとも、倫理に反する行為だといえる。さらにウォーカーの言い方から考えれば、これらの実験は、現在進行中で、ただの仮説とは思えない。

覆面記者:では、いつファイザー社はこれらすべてのウイルスの変異に着手し始める予定なのでしょうか?

ジョードン・ウォーカー :それはわかりません。実験の進捗状況によりますね。この実験はまだ試案段階ですので。

覆面記者:私にはこの研究は機能獲得研究に思えますが。

ジョードン・ウォーカー:わかりません。少し違います。べつものだと思いますよ。完全に機能獲得研究ではありませんよ。

覆面記者:機能獲得研究に思えますけど、まあ、いいです。

ジョードン・ウォーカー :いえいえ。指向性進化法は全く違います。

覆面記者:指向性進化法ですって?

ジョードン・ウォーカー:ええ、指向性進化法です。

覆面記者:指向性進化法、なるほど、わかりました。いったいどんな方法なのですか?

ジョードン・ウォーカー:多分そうです。私もよく知りません。えっと、ウイルスに関しては、機能獲得研究は行ってはいけないことになっていますので。推奨されていません。でも、選ばれた指向性変異のような研究を行い、効力が強まるかどうか確認をしようとすることは行われています。だからそのような研究が進行中なのです。ただこの研究がどのように行われているかはわかりません。私たちはイエス・キリストではないのですから。

覆面記者:では、もっと詳しく教えてください。ウイルスを変異させる研究全体でいったいどんな開発が行われているのですか?

ジョードン・ウォーカー:えっと、まだ実験段階ですのであまりよくわかりませんが、私が聞いたところによると、彼らは力を入れてとりくんでいるようです。でもその進度はゆっくりです。というのも、全ての人々が慎重になっているからです。明らかに、この研究を加速させようとは思っていないようです。そして私の考えでは、彼らは、この研究を調査研究だけのものに見せようとしているのです。その理由は、自分たちがウイルスの未来の変異を見抜いていることを広く知られたくないと思っていることが明らかだからです。

覆面記者:そうですか。ではこれらのウイルス変異研究全体の命令は、あなたの上司であるサラーさんから出されたものなのですか?

ジョードン・ウォーカー:いやいや。この指令の出所は、ほかの部署にいる2名の科学者ですよ。

ジェームズ・オキーフ:その後の話し合いにおいて、我がベリタス・プロジェクトの覆面記者が質問したのは、このような機能獲得研究が既にファイザー社において実施されているかどうかについてだった。その答えは「否」だった。この研究が指向性進化法と呼ばれている限り、ファイザー社が機能獲得研究を行っているという責めを問うことはできないからだ。

覆面記者:ファイザー社にとって、この研究の最終目的は何ですか?

ジョードン・ウォーカー:彼らがやりたいことの一つにあるのは、突然現れるこれらのウイルスのすべての新しい菌株や変異種の発生過程についてある程度解明したいということがあるでしょう。自然界に突然発生する前にそのような菌株や変異種を捕まえることはできないのか、ということです。そうすれば、そのような新種のウイルスを予防できるようなワクチンを開発できるからです。

覆面記者:なるほど。

ジョードン・ウォーカー:だからこそ、彼らは研究室でそのような変異種を統制できないかを考えているのです。そうすれば「さあ、これが(この変異種に対する)新しい抗原決定基だ」と言えるからです。そうなれば、後でそのウイルスが広がったとしても、そのウイルスに対応できるワクチンをあらかじめ手にできるからです。

覆面記者:なんということでしょう。完璧ですね。こんな最善の事業戦略はほかにありませんね。自然に起こることを、自然に先駆けて手を打っておくという戦略ですね。

ジョードン・ウォーカー:その通りです。もしうまくいけば、の話ですが。

覆面記者:もしうまくいけば、というのは?

ジョードン・ウォーカー:というのも、変異種が突然現れて、準備ができていなくてそれで終わり、という場合もあるからです。デルタ株やオミクロン株の時がそうでした。そうならないと、誰がわかるというのですか?ただいずれにせよ、変異種は大きな資金源になるのです。おそらくCOVIDはしばらくのあいだ我が社にとって資金源であり続けるでしょう。今はそういう状況が続いています。私にとっては明らかにうれしいことなのですが。

覆面記者:えっと、ウイルスの研究とウイルスを変異させる研究全体が、究極の資金源になると私は思います。

ジョードン・ウォーカー:ええ。完璧ですね。

ジェームズ・オキーフ:ウイルスを作り出すことにより、それに対応するワクチンを売り出そうという考え方は不当であるとお考えになるかもしれない。でも、そうはならないのだ。ウォーカーが言っている通り、製薬業界には、「全ての政府機関用の回転ドア」が存在するからだ。

ジョードン・ウォーカー:「全ての政府機関用の回転ドア」があるのです。

覆面記者:なんと!

ジョードン・ウォーカー:ええ、でもそれはどの産業でもそうですよ。製薬業界でも、我が社の薬品を確認している全ての政府機関の役人のほとんどは製薬業界出身ですので。軍でも同じでしょ。軍や防衛関連のすべての政府機関は結局は防衛業界のために働いているのですから。

覆面記者:回転ドアについてどうお考えですか?

ジョードン・ウォーカー:正直、我が業界にとってはいいことです。

覆面記者:そうでしょうね。

ジョードン・ウォーカー :はい。でも米国のほかの全ての人にとってはいいことではありません。

覆面記者:なぜほかの全ての人とってはよくないのですか?

ジョードン・ウォーカー:その理由は、我が社の薬品の承認をする立場にある規制をかける側の人々が、規制をかけるのをやめれば、その人々は我が社の利益になるような仕事をしようと思うようになるからです。我が社に厳しい規制をかけたりはしなくなるでしょう[音声不明箇所00:01:44]。仕事をもらえることになるでしょう。

覆面記者:そうですね。

プロジェクト・ベリタス。ジェームズ・オキーフ:

私たちプロジェクト・ベリタスは、ロバート・マローン博士に連絡を取った。同博士は、医師で科学者であり作家でもある。そのマローン博士がジョードン・ウォーカーの発言についての考えを表明してくれた。

ロバート・マローン博士:機能獲得研究を行い、あるウイルスの一部を切り取って別のウイルスに貼り付けることで新しい機能を獲得させ、サルからサルに感染させる。これが連続継代とよばれる手法だ。武漢疫学研究所でもヒト化マウスの菌株を使ってこの手法が取り入れられていたようだ。私は、この研究にエコヘルス財団が資金を出していたと考えている。この連続継代が、指向性進化法の一例なのだ。

 この男性には自分がやっていることに対して道徳的視座が全くないようだ。思い上がりと傲慢さと未熟さしか感じられない。ファイザー社の内部にいる人々の性質がこのようなものであるとしたらどうだろう。ファイザー社というのは、世界中の公共医療を危険に晒すような重大な決定を行っているというのに。その会社の社員たちが、人類に与えるであろう被害にこんなにも無頓着であるとしたら、この会社は完全に腐りきっている。 それでもファイザー社は、国際法や国内法の追及から逃れられると思っているのだろうか?私に言わせれば、そんなことはありえない。

あなたがたプロジェク・べリタスの調査報道に出演していたこの男性が明言していたのは、ファイザー社は米国の、そしておそらく世界各国の政府の規制機関の取り込みに成功していると考えている事実だ。ファイザー社は規制当局の取り込みに成功し、そのことを誇りにさえ思っている。


プロジェクト・ベリタス:
ジェームズ・オキーフ:各国政府がわざと目をつぶり、ファイザー社が情報を隠蔽しようとするなか、この事は現在進行中の案件だ。勇気を持っていただきたい。この動画を拡散し、今後の動きから目を逸らさないでいただきたい。

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「武器を送るな、NATOから脱退せよ」 フランスでも各地で大規模な抗議集会

<記事原文 寺島先生推薦>

Anti-NATO protests hit France
Rallies against the US-led bloc and the supply of weapons to Ukraine have been held across the country

反NATOを求める抗議がフランスで起こる。
米国主導勢力とウクライナへの武器供給に反対する集会がフランス全土で開催された。

出典;RT

2023年2月26日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月14日 


© Twitter / Florian Philippot


 フランスのNATO加盟と、キエフへの継続的な支援に反対する大規模な複数の抗議行動が、日曜日(2月25日)に首都パリと国内の他の場所で行われた。

 2週連続で行われたデモは、パリでの集会に自ら参加したフロリアン・フィリポ氏率いる右派政党「レ・パトリオット」が主催したものだ。

 同政治家は、「平和のための全国行進」と名付けられた日曜日(2月25日)のイベントには、首都パリでの集会に、約1万人が集まった先週よりもさらに多くの参加者が集まったと述べた。フィリポ氏によると、小規模な反NATOデモは、フランス国内の他の約30カ所でも開催されたという。


 デモ隊は、「平和のために」 と書かれた大きな横断幕を持って、パリの街を行進した。デモ隊は、フランスが米国主導のNATOとEUの両方から脱退することを求め、ウクライナへの武器供与の停止を促した。デモ隊はまた、現職のエマニュエル・マクロン大統領を非難し、「マクロンは出て行け!」と唱えた。---- このスローガンは、マクロン大統領の任期中、さまざまな反政府デモ参加者がよく使っていたものである。

 デモ行進の後、デモ隊はフィリポ氏主催の集会を開き、フィリポ氏が支持者とともにNATOやEUの旗を汚す様子が撮影された。このイベントの映像は、同政治家本人がソーシャルメディアで投稿したものである。 


 この政治家は、昨年秋以降、フランスのNATOおよびEUへの加盟に反対する抗議活動を積極的に展開する一方、ウクライナへの武器供給に反対を主張している。2012年から2017年にかけて、フィリポ氏は昨年までマリーヌ・ルペンが率いるフランス最大の野党「国民集会」の副党首を務めていた。国民集会を去った後、41歳の政治家は自身の右派政党「レ・パトリオット」を設立した。

 フランスは、1年前に勃発したロシアとの紛争において、キエフを支持する最前線の国のひとつであった。マクロンは敵対行為の外交的解決を繰り返し求めているが、パリは装甲車や高性能の自走榴弾砲など、さまざまな兵器をウクライナに積極的に供給してきた。
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「武器を送るな、賃金を上げよ」 イタリアで平和を願う数千人の集会。

<記事原文 寺島先生推薦>

Thousands rally for peace in Italy

ジェノバとミラノの都市で、キエフへの武器供給の中止を要求するデモが行われた。

出典:RT

2023年2月26日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月14日


*Ruptly提供。Ruptly GmbH は、ドイツのベルリンに本拠を置く、ビデオ オン デマンドを専門とするロシアの国営ビデオ通信社。ロシアの国営テレビ ネットワーク RT の子会社。


 土曜日(2月25日)、イタリアのジェノバとミラノで、数千人が平和のためのデモに集まった。労働組合員や左翼活動家らは、ローマ当局がウクライナに武器を送ることは、国内法に違反しているなどと主張した。

 ジェノバでの集会には、国内だけでなく、スイスやフランスからも4000人近い参加者が集まったと地元メディアは報じている。

 イタリア共産党の支援を受けた港湾労働者自治労組(CALP)グループが主催したこの抗議行動は、「武器支援をやめ、賃金を上げよ」というスローガンのもとに行われた。

 CALPのリカルド・ルディーノは、「ウクライナの紛争は昨年」 ではなく、「2014年、ドンバスのロシア語を話す住民の虐殺から」始まったと述べたとメディアで報道されている。


 デモ隊はジェノバ港を行進し、ウクライナ向けの武器輸送のための施設の使用停止を要求した。

 CALPの広報担当者ホセ・ニヴォイは、イタリア政府が 「イタリアから戦争状態にある国への武器の輸入、輸出、輸送を禁止した」1990年の法律185に違反していると非難した。

 また、同グループの代表は、志を同じくする 「ヨーロッパの各都市の団体や活動家」とネットワークを構築してきたとのべた。

<関連記事> ドイツのウクライナ政策に数百人が抗議行動

 デモ行進は大きな事件もなく、アナーキストによる数台の車を汚したり破損したり、銀行の窓ガラスを割るなどの破損行為があっただけだった。

 土曜日(2月24日)にはミラノでも抗議デモが行われました。ビデオ通信社Ruptlyは、数百人がスローガンを唱え、ロシアやドネツク人民共和国の旗を振る様子を撮影した。


 イタリアでのデモは、ドイツの首都ベルリンでのデモと同時に起こった。ベルリンでは、著名な左翼党の政治家サハラ・ヴァーゲンクネヒトと作家のアリス・シュヴァルツァーの呼びかけに、数万人の人々が応えた。

 「平和のための蜂起」と名付けられたこの抗議行動は、ウクライナでの敵対行為を終わらせるための和平交渉を呼びかけた。また、参加者はドイツ政府に対し、キエフへの武器輸送を中止するよう要請した。

 ヴァーゲンクネヒトは支持者を前に、オラフ・ショルツ首相が「ロシアを破滅させようとしている」と批判し、土曜日(2月24日)の抗議行動をドイツにおける新しい平和運動の始まりと表現した。
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米国はノルド・ストリームを破壊したと公に認めている(ロシア外相)

<記事原文 寺島先生推薦>

US openly admits it blew up Nord Stream – Russian FM
The pipelines were sabotaged because Washington saw Russian-German cooperation as a threat, Sergey Lavrov has claimed

ノルド・ストリームが破壊されたのは、ワシントンが露・独協力を脅威と考えたからだと、セルゲイ・ラブロフ露外相は主張

出典:RT

2023年2月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月13日


バルト海のノルド・ストリーム2から噴出するガス© AFP / エアバスDS 2022


 米国高官が基本的に認めているのは、モスクワとベルリンを和解させないために行われたノルド・ストリーム破壊工作の背後に米国がいたことだ、とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は述べている。

 「米国は、我々(ロシア)が、過去20年、30年にわたり、ドイツに対して協力し過ぎている、と判断したのです。いや、ドイツがロシアに対して協力し過ぎていると言うべきでしょうか」と、ラブロフは日曜日(2月12日)外務省サイトに公表したインタビューで述べている。

 ロシアのエネルギー資源とドイツの技術に基づく「強力な同盟」は、「多くのアメリカ企業の独占的な地位を脅かし始めました」とラブロフは説明する。

 そこで、ワシントンはモスクワとベルリンのこの同盟を破壊することを決め、ロシアのガスをドイツを通じてヨーロッパに送るために建設されたパイプラインを攻撃することで「実際に」それを実行したと、彼は付け加えた。

 「アメリカ政府は、ノルド・ストリーム1と2で起きた爆破が自分たちの仕業であることを基本的に認めています。しかも、そのことを嬉しそうに話しています」と外相は述べた。



関連記事:米国高官がノルド・ストリーム2爆破事件を歓迎

 
 ラブロフは、1月下旬に上院の公聴会でヴィクトリア・ヌーランド米国務次官(政治担当)が行った告白を言及しているのだろう。「ノルド・ストリーム2が今や...海の底の金属の塊になっていることを知り、私は、そして政権も非常に喜んでいると思います」と、彼女はそのとき語った。

 「西側の政治家の卑劣さは周知のことです」とラブロフは続けた。そして、「ウクライナを“扇動”してロシアに敵対させる。そして今度はウクライナを手段にして西側全体がロシアに戦争を挑むという現在実行されている計画は、ドイツとロシアの関係改善を阻止することが大きな目的です」と遠回しに語った。

 ロシアのトップ外交官であるラブロフのコメントは、米国の代表的な調査ジャーナリストであるシーモア・ハーシュが、昨年ノルド・ストリーム・パイプラインの破壊工作の実行者はワシントンだ、とする爆弾的な報告書を発表した数日後に発表された。

 ハーシュに語った情報筋によると、2022年6月、NATOの演習を隠れ蓑にして米海軍のダイバーが、バルト海に敷設されているノルド・ストリームの複数個所に爆発物を仕掛けたという。9月下旬に爆破され、ヨーロッパの重要なエネルギーインフラが使用不能になった。

 米国家安全保障会議のアドリアン・ワトソン報道官は、ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストであるシーモア・ハーシュの記事を「全くの虚偽、完全なフィクション」と言って否定した。アメリカの高官たちの誰一人、このハーシュの告発についてコメントした者はいない。

関連記事:ノルド・ストリーム爆発事件に関する報告について中国が声明を発表

 数ヶ月前からロシア当局が指摘しているのは、ノルド・ストリームが破壊されたことで利益を得たのは米国だけであり、米国は爆破以来、欧州への高価な液化天然ガスの供給が大幅に増加したことだ。
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シーモア・ハーシュ、匿名情報を使ったとの声に反論、大手メディアの御用機関化を批判

<記事原文 寺島先生推薦>

Nord Stream blast story was ‘not hard to find’ – author
Media outlets like the NYT and WaPo “don’t seem to have anyone inside” among their sources, Seymour Hersh claims

ノルド・ストリーム破壊の真相を見つけるのは「難しくなかった」 (筆者)
ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙のようなメディアでは、彼らの情報源の中に 「内部の者は1人もいないようだ」 とシーモア・ハーシュは主張している。

出典:RT

2023年2月13日

<記事翻訳グループ>

2023年3月13日

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シーモア・ハーシュ© Bernard Weil / Toronto Star via Getty Images

 伝説的な調査ジャーナリストであるシーモア・ハーシュは土曜日(2月11日)、9月のノルド・ストリーム・パイプラインの破壊にCIAが関与していたとする最新の爆弾報告書について、その真相を見つけるのは難しくなかったと述べた。この問題については、大半のメディアが報じている以上のことがあることは明らかだ、とハーシュは語った。

 先週水曜日(2月8日)、Substack*に記事を掲載して以来、初めてのインタビューに応じたピューリッツァー賞受賞ジャーナリストであるシーモア・ハーシュは、Radio War Nerd から、まだ匿名のままである記事の情報源についてコメントするよう求められた。
*購読予約で読めるアメリカ発の情報配信オンラインサイト

 ハーシュは、誰に話を聞いたかについて詳細を明かすことを拒否し、情報源を保護し、記事が公開されたときに批判に耐えることが自分の仕事であると述べた。しかし、匿名の情報源を使ったことを批判するメディア関係者は、「もう少しメディアという仕事を理解した方がいいのです」とハーシュは指摘した。

 「問題は、メディアという仕事が安っぽいものにされてしまっていることです。ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙は、無名の情報源は、メディア関係者や報道官が横で何かを囁くものだと考えているからです。私にはわからないが、この2紙の情報源には内部の情報を知るものは誰も入っていないようです」とハーシュは言った。

 また彼は、モスクワとキエフの間で進行中の紛争について、主要報道機関が十分な報道をしていないことにも言及した。「私が知っている戦争は、あなた方が(新聞などを通して)読んでいる戦争ではありません」とハーシュは述べた。

関連記事: 米国、ノルド・ストリームを爆破したことを公然と認める(ロシア外相)

 「私には驚きなんです、同業のみなさん、なんで横並びになるのですか?」と彼は言葉を続けニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、CNN、そしてMSNなど多くの報道機関が、ホワイトハウスやバイデン政権の広報機関になってしまっていると嘆いた。

 ノルド・ストリーム爆破を暴露したことに関して、その話は「簡単に見つけられた」し、ある特定のNATO加盟国が絡んでいることは、バイデン大統領を含む米国の首脳が明確な脅威を発したことも含めてはっきりしている、とハーシュは主張する。彼らは2022年2月にモスクワがウクライナに軍隊を派遣することを選択した場合、ロシアとドイツの共同事業はいずれにしても」止められるだろうと警告していたのだ。

 ハーシュはまた、国際的なパイプライン業界全体が 「誰が何をしたのか」を知っているが、現実には「誰もそれについて考えようとしない」と指摘した。「しかし、私は考えてみた。話はこれで終わりです」と彼は締めくくった。

 ホワイトハウスをはじめ、CIAや国務省の関係者は、ハーシュの報告書が発表されて以来、いずれも猛烈に拒絶している。一方、モスクワは、この攻撃について公開の国際調査を要求している。「犯人を見つけ、罰することなしにこれを放置することは不可能である」と述べている。

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「ノルド・ストーム爆弾報告には、まだまだ続きがある」(シーモア・ハーシュ)

<記事原文 寺島先生推薦>

More Nord Stream ‘bombshells’ to come – Seymour Hersh

ノルド・ストリームについての「爆弾的ニュース」は、まだまだ続く(シーモア・ハーシュ)

出典:RT

2023年2月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月13日


バルト海でのノルド・ストリームパイプラインの破壊に伴い、漏れ出すガスを撮影したスウェーデン沿岸警備隊の写真(2022年9月27日) © AP / Coast Guard of Sweden

 ジャーナリストのシーモア・ハーシュは、米国とノルド・ストリーム・ガスパイプラインの破壊を結びつける決定的な情報をさらに明らかにすることを約束した。ジョー・バイデン大統領は、ドイツが安価なロシア産ガスの購入を再開するのを阻止するために、パイプラインの破壊を命じたと彼は主張する。

 ハーシュは水曜日(2月15日)に自身のSubstack*のページに投稿し、主要メディア(特にニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙)を非難し、パイプラインに関する記事を「一言も掲載」しようとせず、ロシアと中国が国際調査を求めるのも無視したと述べた。
*定期購入形式で使えるアメリカ発の情報配信オンラインサイト

 両紙は、ベトナムにおける米軍の戦争犯罪に関する彼の暴露記事を掲載したが、現在は「国家安全保障や戦争と平和の問題」に関心がないように見えると彼は言う。




関連記事:ノルド・ストリーム爆発の情報源を「見つけることは困難」ではなかった(シーモア・ハーシュ)


 バルト海底を通ってロシアとドイツを結ぶノルド・ストリーム1と2は、昨年9月に一連の海底爆発で被害を受けた。ピューリッツァー賞受賞のジャーナリストであるハーシュは先週、この攻撃の原因を米国に求め、バイデン政権とCIAがどのように作戦を計画したかを詳細に記した報告書を発表した。ホワイトハウスは、この疑惑を「全くの虚偽であり、完全なフィクション」であると断じた。 

 この記事は、アメリカがロシアとドイツとの和解を阻止し、より高価なアメリカの液化天然ガスに、ベルリンを依存させるために攻撃を行ったという、モスクワが繰り返し主張していることを裏付けるものであった。

 ドイツは、ロシア軍がウクライナに進駐する数日前にノルド・ストリーム2の認可を停止した。そして、EU制裁が発動されたため、夏の終わりからノルド・ストリーム1を通るガスは、必要な修理をさせずに、その流れを止めた。しかし、ハーシュは、ドイツのベルリーナー・ツァイトゥング(Berliner Zeitung)紙に、バイデン政権は、ベルリンがこれらの制裁を解除し、冬に気温が下がるにつれてガス輸送を再開することを恐れている、と語った。

 「米国大統領は、ドイツが凍結するほうが、ウクライナ支援をストップされるよりはまし、と思っている」と断言した。

 「この冬の安いガスの不足についてドイツ政府が考え直すのを防ぐためのジョー・バイデンの決断について、もっと知るべきことがあるかもしれない」とハーシュは水曜日(2月15日)に書いている。「乞うご期待。野球で言えば私たちはまだ一塁にいるに過ぎない...」と彼は言った。
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2003年の米イラク侵攻を止めようとした経過とそれが失敗した理由

<記事原文 寺島先生推薦>

How I tried to prevent the 2003 US invasion of Iraq, and why I failed

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)


スコット・リッター元米海兵隊情報将校。著書に『ペレストロイカの時代の軍縮。Arms Control and the End of the Soviet Union(ペレストロイカの時代の軍縮:軍備管理とソ連の終焉)」の著者である。ソ連ではINF条約を実施する査察官として、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍のスタッフとして、1991年から1998年までは国連兵器査察官として勤務した。
@RealScottRitter@ScottRitter


出典:RT

2023年1月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月12日


2003年3月18日、クウェートとイラクの国境付近での軍事攻撃に備えて、3-7歩兵に所属する米陸軍第11工兵が所定の位置に移動する。© Scott Nelson / Getty Images


 どんな真実も、大統領の嘘を燃料とする世界で最も強力な戦争マシンを止めることはできない。

 憲法に定められた厳粛な義務の締めとして、2003年1月28日、第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュは、合衆国議会の議場の壇上に立ち、アメリカ国民に語りかけた。

 「議長、チェイニー副大統領、連邦議会議員、著名な市民、そして同胞の皆さん、毎年、法律と慣習により、我々はここに集まり、一般教書を検討することになっています。今年は、」と大統領は口火を切った。「私たちはこの議場に、これから待ち受ける決定的な日々を深く意識しながら集っています」と、重々しく宣言した。ブッシュが語った「決定的な日々」とは、イラクの指導者サダム・フセインを権力から排除する目的で、国際法に違反してイラクに侵攻するという、ブッシュがすでに下した決断のことである。

 43代大統領ブッシュの父、41代大統領ブッシュ(ジョージ・H・W・ブッシュ)がサダム・フセインをアドルフ・ヒトラーと比較し、クウェート侵攻の罪に対してニュルンベルクのような裁きを要求して以来、政権交代は米国の対イラク政策の基本となってきたのである。「ヒトラーの再来だ」と父ブッシュはテキサス州ダラスで開かれた共和党の資金調達パーティーで観衆に語りかけた。「しかし、忘れてはなりません。ヒトラーの戦争が終結したら、ニュルンベルク裁判があったのです。」

 アメリカの政治家、特に自国を戦争に駆り立てようとする大統領は、このような発言を簡単に撤回することはできない。1991年2月、イラク軍をクウェートから追い出した後も、ブッシュはサダム・フセインが権力を握っている限り、休むわけにはいかなかったのである。中東のアドルフ・ヒトラーは退場しなければならなかった。



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 第41代大統領ブッシュ政権は、国連が支援するイラク制裁を実施し、イラクの経済を疲弊させ、内部からの政権交代を促進することを目的としていた。この制裁は、長距離ミサイルや化学・生物・核兵器計画などの大量破壊兵器の武装解除をイラクに義務付けるものであった。イラクが国連の兵器査察団から武装解除を認定されるまでは、制裁は継続されることになっていた。しかし、ブッシュ政権のベーカー国務長官が明言したように、サダム・フセインが政権から追放されない限り、この制裁は決して解除されることはない。ベーカーは1991年5月20日、「サダム・フセインが権力を握っている限り、制裁の緩和を見ることに興味はない」と述べた。

 制裁にもかかわらず、サダム・フセインは父ブッシュ政権より長生きした。ブッシュの後継者であるビル・クリントンは、イラクへの制裁政策を継続し、サダム・フセインを弱体化させるために、国連の武器査察と組み合わせた。1996年6月、クリントン政権は、国連の武器査察プロセスを隠れ蓑にして、サダムに対するクーデターを起こそうとした。この試みは失敗したが、政策は失敗ではなかった。1998年、クリントンはイラク解放法に署名し、イラクにおける政権交代を米国の公式政策とした。

 サダムはクリントン政権よりも長生きした。2001年、父ブッシュの息子、ジョージ・W・ブッシュが大統領に選出されたとき、サダムの運命は決まったのだ。クリントンはサダム・フセインを政権から追い出すことはできなかったが、イラクの武装解除を監督する国連の査察活動を停止させることに成功し、米国はイラクが武装解除の義務を果たしていないと主張し続け、経済制裁の継続を正当化することができるようになった。

 ここで問題は私個人に関わることになる。1991年から1998年まで、私はイラクで上級国連兵器査察官の1人として、イラクの武装解除を監督していた。1996年6月、CIAがサダムに対するクーデターを起こすために利用しようとしたのが私の査察団であり、私の査察団の活動にアメリカが干渉し続けたことが、1998年8月に私が国連を辞職するきっかけとなった。私が辞職した数ヵ月後、クリントン政権は国連兵器査察団をイラクから退去させ、空爆作戦「デザート・フォックス(砂漠のキツネ)」を開始した。



国連武器査察団の団長で元米海兵隊少佐のスコット・リッター(左から3番目)は、バグダッドの国連本部前で、チームのメンバーやイラク兵と歩く(1月13日)。© Karim Sahib / AFP


 私は2003年に出版した著書『フロンティア・ジャスティス』の中で、「デザート・フォックス作戦で爆撃された目標のほとんどは、兵器製造とは何の関係もない」と書いている。「72時間の作戦の間に97の「戦略的」目標が攻撃され、86はサダム・フセインの身の安全に関わるものだけで、宮殿、軍の兵舎、警備施設、情報学校、そして司令部などだった。これらの拠点は、例外なくUNSCOM(国連大量破壊兵器破棄特別委員会)の査察官(そのほとんどは私が指揮を執っていた)の査察を受けており、その活動はよく知られており、UNSCOMとは無関係であることが証明されていた。」

 私は最後に、「砂漠の狐作戦の目的は、これらの現場を知る者にとっては明らかだった。イラクの大量破壊兵器ではなく、サダム・フセインが標的だったのだ」と指摘した。この空爆の後、イラクは国連査察団を永久に追放した。

 もちろん、これはずっとアメリカの目標だった。新政権が誕生し、アメリカは、イラクの大量破壊兵器開発状況の不透明さを、アメリカ国民、そして世界に対する影響力として利用し、サダム・フセインを権力から完全に排除するためにイラクへの侵攻を正当化しようとしていた。2002年の秋には、我が国が戦争に向かう国であることは明らかだった。

 私はこれを個人的に受け止め、それを防ぐために行動を起こすことにした。私は議会に行き、上院情報委員会と外交委員会に、イラクに関する真っ当な公聴会を開かせようとした。しかし、彼らは拒否した。侵攻を阻止する唯一の方法は、査察官をイラクに戻し、イラクが戦争に値する脅威ではないことを証明することだった。しかし、イラク側はあまりにも多くの前提条件をつけてくるので、それが実現することはなかった。



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 そこで私は、私人として介入することにした。南アフリカでサダムの顧問で元外相のタリク・アジズに会い、イラクの国民議会で、私の言葉を編集したり吟味したりすることなく、公に話す必要があると告げた。それが、査察団を復帰させる唯一の方法だった。アジズは最初、私のことを「正気じゃない」と言った。しかし、2日間の話し合いの末、彼は同意した。

 私はイラク国民議会で演説した。それだけでも、人々は私の背信を非難した。私はイラク人を手加減せず、彼らが犯した罪の責任を追及したのに、だ。私は、イラクが侵略されようとしていることを警告し、査察団を戻すことが唯一の選択肢であると警告した。

 それが放送されたことで、イラク政府は私に対応せざるを得なくなった。私は、副大統領、外務大臣、石油大臣、そして大統領の科学顧問と会談した。そして5日後、サダム・フセインを説得し、前提条件なしに兵器査察団をイラクに戻すことができた。私はこれを私の人生のハイライトのひとつに数えている。

 しかし、残念なことにそうはならなかった。国連の査察団は戻ってきたが、その成果を否定しようとする米国によって、その活動はことごとく妨害されたのである。そして、2003年1月28日の運命の夜、大統領は、イラクと所在不明の大量破壊兵器がもたらす脅威を戦争の根拠として示すという使命を果たすために、一歩を踏み出した。

 これは目新しい議論ではなかった。実際、1998年12月にアメリカが国連兵器査察団をイラクから撤退させて以来、私はこの種の議論を否定しようとしてきた。2000年6月には、上院外交委員会の重要メンバーであるジョン・ケリー上院議員(マサチューセッツ州選出)の要請で、私は自分の主張を文章にまとめ、Arms Control Today誌に長文の記事を掲載し、それを全議員に配布した。2001年、私はドキュメンタリー映画『In Shifting Sands』を制作し、イラクの大量破壊兵器に関する真実、その武装解除の状況、そして米国の戦争根拠の不十分さを米国民に訴えようとした。

 それにもかかわらず、アメリカ大統領は、議会への報告という憲法上の義務を利用し、嘘の上に嘘を積み重ね、戦争賛成の意見を広めてしまったのである。

 ブッシュは次のように宣言した:「ほぼ3カ月前、国連安全保障理事会はサダム・フセインに武装解除の最後のチャンスを与えた(注:これは私がイラクに国連の武器査察官の無条件帰還を認めるよう説得した後)。フセインは、武装解除などはせず、国連と世界の意見をまったく軽んじていることを示した」。 ブッシュは、イラクが国連の兵器査察団に協力しなかったことを指摘し、「イラクは、禁止された兵器をどこに隠しているかを正確に示し、それらの兵器を世界の人々に見えるように並べ、指示通りに破壊することが求められていた。このようなことは何も起こっていない」と述べた。



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 イラクは大量破壊兵器は残っていないと宣言していたため、存在しない兵器をどこに隠しているのか、誰にも示すことができない状態だった。実際、国連の兵器査察団は、イラク政府と完全に協力し、イラクが約束を履行していないと主張する米国が提供した情報を否定していた。米国は、1991年5月にベーカーが「サダム・フセインが政権から退くまで制裁は解除しない」と宣言したことを原則に行動していたのだ。

 大統領はさらに、未確認の炭疽菌とボツリヌス毒素の生物学的製剤について、具体的な主張を展開した。また、化学兵器であるサリン、マスタード、VXについても同様の主張をしている。「国際原子力機関(IAEA)は1990年代、サダム・フセインが高度な核兵器開発計画を持ち、核兵器の設計図を持ち、爆弾用のウランを濃縮する5種類の方法に取り組んでいたことを確認した」と大統領は述べた。

 これはほんとうだ。私は、イラクの核兵器開発を追跡する中心的な役割を担っていた査察官の一人である。しかし、大統領はさらに16の単語からなる次の言葉を発し、それは恥ずべき言葉として後々まで語り継がれることになる:
 「英国政府が得た情報によると、サダム・フセインは最近、アフリカから大量のウランを調達した」。

 CIAのジョージ・テネット長官は、後に議会で「この16の言葉は、大統領のために書かれた文章に含まれるべきではなかった」と認めざるを得なくなった。テネットが後に述べたように、英国諜報機関の存在に関する主張は正しかったが、CIA自身はこの報告書を信頼していなかった。「これ(英国発の情報の存在)は、大統領演説に求められるべき確実性のレベルには達していなかった。CIAはこれを確実に削除すべきだった 」テネットは述べている。



2003年1月28日、ワシントンDCの連邦議会議事堂で、連邦議会合同会議で一般教書演説を行うジョージ・W・ブッシュ米大統領。© Tim Sloan / AFP


 事実として、ブッシュ大統領がイラクについて語ったことはすべて嘘であり、CIAは大統領がその嘘を広めるのを助けることに加担していた。この嘘の唯一の目的は、イラク、特にその指導者であるサダム・フセインが戦争に値する脅威であるという恐怖を議会とアメリカ国民に植え付けることだった。

 ブッシュは、「サダム・フセインは、大量破壊兵器を製造し、保持するために、毎年、あの手この手を使い、巨額の費用をかけ、大きな危険を冒してきました」と強調する。しかし、なぜなのか?ブッシュは自分の質問に答える形で、「大量破壊兵器の用途は、支配、威嚇、あるいは攻撃しか考えられません」と言った。

 核兵器や化学・生物兵器があれば、サダム・フセインは中東での征服の野望を再開し、同地域に致命的な大混乱をもたらすことができるでしょう。

 そして、この議会と米国民は、もう一つの脅威を認識しなければなりません。情報源からの証拠、秘密の通信、現在拘束されている人物の供述から、サダム・フセインがアルカイダのメンバーを含むテロリストを援助し保護していることが明らかになりました。密かに、指紋もなく、彼はテロリストに自分の隠し持つ兵器の一つを提供したり、彼らが自分たちの兵器を開発するのを手伝ったりすることができるでしょう。

 9月11日以前、世界の多くの人々はサダム・フセインを封じ込めることができると信じていました。しかし、化学物質、致死性のウイルス、そして影のテロネットワークは簡単に封じ込めることはできません。

 あの19人のハイジャック犯が、今度はサダム・フセインによって武装され、別の武器と別の計画を持っていると想像してください。1本の小瓶、1つの容器、1つの木箱がこの国に持ち込まれただけで、これまでにない恐怖の日がやってくるのです。

 そんな日が来ないように、私たちは全力を尽くします。」

 そして大統領は、イラクに関するプレゼンテーションの核心に触れた。「米国は、2月5日(2003年)に国連安全保障理事会を招集し、イラクが世界に反抗し続けている事実を検討するよう要請する予定です。パウエル国務長官は、イラクの違法な兵器開発計画、査察団からそれらの兵器を隠そうとする試み、テロ集団とのつながりに関する伝聞と情報を発表するでしょう。」

 大統領はカメラを正面から見据え、アメリカ国民に直接語りかけた。「私たちは協議します。しかし、誤解のないようにしてほしいのです。もしサダム・フセインが国民の安全、そして世界の平和のために完全武装解除しないのであれば、私たちは連合軍を率いて武装解除に向かうでしょう」。

 テレビ画面を見つめ直した。胃がむかついた。大統領の演説は嘘で構成されていた。すべてが嘘だ。

 私は、この嘘を覆すためにあらゆるエネルギーを費やしてきたが、無駄だった。私の国は、私には嘘だとわかっている言葉によって戦争に突入しようとしていたのである。
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国防総省とCIAがCovid-19の世界的流行の裏にいたのだろうか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Was the Pentagon and CIA Behind the COVID-19 Pandemic?

筆者:ジェレミー・クズマロフ(Jeremy Kuzmarov)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年2月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月11日



 生物テロの専門家と内部告発者によると、CIAは非倫理的な機能獲得研究の支援に密かに協力しており、その結果COVID-19ウイルスが製造され、そのウイルスが武漢ウイルス研究所から漏洩したとのことだ。

 アンドリューG.ハフ博士は、イラク戦争に参戦体験のある退役軍人であり、ミネソタ大学で感染症の疫学者としてミネソタ大学で博士号を取得している。この博士が2014年9月に、エコヘルス財団の事業の活動に加わった。この財団は、米連邦政府から1億1800万ドルを超える補助金を得ていたNGOだ。この財団の使命は、感染症から人々を守ることだった。

 ハフ博士の新著『武漢についての真実:いかにして私が歴史上最大の嘘を暴いたか(New York: Skyhorse Press, 2022)』において、同博士が明らかにしたのは、エコヘルス財団の上司であるピーター・ダスザック博士がCIAと協働していた事実と、ダスザック博士が2012年の初旬に、COVID-19という病気を引き起こすSARS-CoV-2という名で知られている生物兵器の開発を監督していたという事実だった。

 このウイルスの開発は、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)と国立衛生研究所(NIH)が資金援助していた機能獲得調査を通して行われた。(1)

 ハフ博士によると、ダスザック博士と1984年から2022年12月に辞職するまで国立アレルギー・感染研究所所長をつとめていたアンソニー・ファウチ博士は、他の同僚たちともに「医療・軍事産業複合体に取り込まれたエセ科学マフィアのような振る舞いを見せていた」とのことだった。(2)

 これらの人々はCOVID-19の世界的流行を操作しただけではなく、彼らの主張を支持しない人々を、「非難すべき犯罪者的な陰謀論者」である、ともしていた。ハフ博士自身も、FBIによる監視の対象とされ、死の淵に追い込まれるような迫害も受けた。


恐ろしいウイルス-そしてそのウイルスに対抗するとされているワクチンを操作

 エコヘルス財団で働いていた際にハフ博士が最初に取り組んだ仕事は、NIHが提唱した「コウモリのコロナウイルスの出現の危険の理解」という論文を査読することだった。この論文の筆者はダスザック博士と武漢疫学研究所(WIV)の石正麗および他の科学者たちだった。

 この論文は「機能獲得調査の祖父」から支援を得ていた。その祖父とはノースキャロライナ州のギリング公共医療大学の疫学者であるラルフ・バリック博士だ。そしてこの大学はNIHが資金を出している団体のなかで上から3番目の資金提供先だった。(ハフ博士によると、「何十年もの間、ファウチは[この大学の]事実上のドンだった」という)。(3)

 この論文が提案していたのは、コロナウイルスのヒトへの感染を広めるコウモリと接触した可能性のある中国の地方部に住む人々を研究することだった。そして、このウイルスを作る目的が、コロナウイルスの感染をよりよい形で予測することであることだった点については隠蔽されていた。さらにこの論文の目的は、新たなコロナウイルスの菌株の開発であり、目指された実験は、コウモリのコロナウイルスが人間の細胞や研究室内の動物の細胞に感染する能力を強化するためのものだった。そしてそのために遺伝子操作の技術が利用された。(4)

 この研究は、機能獲得研究の定義に則ったものであり、その目的は、「意図的に感染病原体の発病性、感染性、有毒性、生存性、伝染力を強化すること」だった。ハフ博士はこの状況の定義をより端的にこう表現している。 すなわち、「感染病原体をより危険なものにすること」だと。(5)

 2014年10月17日、オバマ政権は、インフルエンザや中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する機能獲得研究の一時停止を宣告した。それは、米国疾病予防センター(CDC)で起こった事故を受けてのことだった。

 これに応じてファウチ博士は中国の武漢研究所に機能獲得研究を外部委託し、その武漢研究所に米国政府からの資金提供を続けることを認可した。機能獲得研究の一時停止措置は、2017年12月にトランプ政権により取りやめられ、ファウチ博士は国立アレルギー・感染研究所を通じて3700万ドルを武漢疫学研究所に送り、コウモリのコロナウイルスの研究を継続させた。

 コウモリ由来のウイルスを人間の細胞に感染させる研究により、ハフ博士が考えるようになったのは、自分の雇い主が不道徳な機能獲得研究だけではなく生物兵器の開発に関わっているという事実だった。そしてその最終結果が、「SARS-CoV-2ウイルス」の創造であり、このウイルスが、「COVID-19という名で知られる病気の原因となった」という事実だ。(6)

 ハフ博士によると、SARS-CoV-2という感染病原体と、COVID-19のmRNAワクチン(ハフ博士は、このワクチンは 遺伝子操作治療であると捉えている)は、同じ研究計画の下でともに開発されたという。(7)

 ハフ博士の記載によれば、エコヘルス財団は新たに創作されたSARS-CoV-2のウイルス株に対する試用的なワクチンや一般的な治療や具体的な治療の検査に関するバリック博士の研究を利用していた。この研究はCOVID-19が世間に知られるようになるよりずっと前に、どんな対策がヒト化マウスの病気を弱化させるのに効果的かを見極める研究だった(8)


エコヘルス財団からの反論

 「武漢に関する真実」が出版されるや、エコヘルス財団は声明を出し、「アンドリュー・ハフ氏は持論を展開しているだけで、事実に基づいたものではない」としていた。エコヘルス財団による武漢に関する事実は以下の通りだ。:

1) ハフ氏がエコヘルス財団に雇われていたのは2014年から2016年までの間だ。しかし、自身が武漢疫学研究所で働いていた、あるいは協働していたとハフ氏が主張していた時期は真実ではない。同氏が課されていたのは、まったく異なる研究であり、コンピューターをもとにした計算演習を用いて、出現した病気を見定める研究だった。

2) ハフ氏の主張によれば、エコヘルス財団は機能獲得研究に取り組み、SARS-CoV-2を創作したとあるが、これは真実ではない。

3) ハフ氏は、エコヘルス財団と武漢疫学研究所の間の協力体制について多くの推測や主張を行っている。同氏には武漢疫学研究所での勤務体験がないのだから、両団体間の提携に関する同氏のこのような根拠のない断言は信頼できないものだ。

4) ハフ氏の主張では、SARS-CoV-2 ウイルスは武漢疫学研究所からの漏洩で発生したとされていたが、それは同研究所でコウモリ由来のコロナウイルスの研究が行われていたからで、さらにこの研究は米国の諜報機関からの情報収集の努力も関係していたとしているが、これは真実ではない。

 エコヘルス財団のこの声明は、当時NIHの所長だったフランシス・コリンズ博士の発言にも触れていた。同博士は2021年12月にこう語っていた。「公表された遺伝子情報などの文書の分析からわかることは、NIHの資金提供のもと研究されていた自然発生したコウモリ由来のコロナウイルスは、SARS-CoV-2ウイルスとは遺伝子的にかなりちがっていて、このウイルスがCOVID-19の世界的流行を引き起こしたという可能性は考えられないことがわかる。この結論と相容れない主張は、間違いであると論証できる」と。

 エコヘルス財団からの声明はさらに以下のように続いている。「こんにちまでに示されている科学的な根拠からすれば、このウイルスが自然でのウイルスの変異の結果であると考えられ、コウモリから直接あるいは特定されていない動物を介して人間に感染したと考えられる。歴史的に見て、多くのウイルスは動物から発生して、流行や世界的流行をひきおこしている。例えば、インフルエンザ、エボラ熱、ジカ熱、西ナイル熱、SARSなどがそうだ。重要なことは、綿密な調査のあとで、米国の諜報機関の関係者たちが同意した事実は、このウイルスは生物兵器として開発されたものではないということであり、ほとんどの関係者たちは、SARS-CoV-2ウイルスが遺伝子操作されたものではないようであると考えている。」


より大きな勢力の息がかかっていた?

 この後者の声明における重要な点は、「ほとんどの」という用語を使っていたことだ。つまり、それ以外の可能性を考えていた人もいたことを示唆させるものだ。1ページにまとめられた要旨によると、バイデン政権によりCOVID-19の起源を調べるよう依頼された諜報機関が明らかにした内容によれば、 SARS-CoV-2 (COVID-19を引き起こすウイルス)が研究施設から発生した可能性を否定していない。

 中国の当局者が武漢海鮮市場内や野生にいた動物たちからとった標本からわかった重大な事実は、SARS-CoV-2ウイルスを抱えていた野生動物を一匹もみつけられなかったことだ。武漢は、今回の世界的流行を引き起こしたSARS関連のコロナウイルスを運搬する野生のコウモリがすむ一番近い生息地から1000マイル離れている。

 NIHから質問をうけた疫学者の小集団が2022年12月にNIHの上層部にSARS-CoV-2 ウイルスは研究施設で生じた可能性があり、さらにこのウイルスは「異常な特徴を有しており、米国の疫学者たちが、NIHの支援のもと何年もの間実験として使用してきたウイルスの特徴を示している」と述べていた。

 これらの異常な特徴としてあげられるものには、8種類のアミノ酸の配列が、ヒトの気道に並んでいる細胞内で見つかるものと同じである点があることを、コロンビア大学のジェフリー・サックスおよびネイル・ハリソン両教授が指摘しており、このウイルスが研究室で人間の手により遺伝子操作されたものであることを示唆している。

 怪しいことは、ハフ博士が発見したのは、あるものの手によりNIHの論文が書き換えられた後、2014年4月15日に提出された事実があったことだ。さらに同博士が目にしたのは、USAIDの職員や米国大使館職員や国務省の職員たちがこの研究に大きく干渉していた事実だ。(9)

 この研究の下請けを行っていた主要会社のメタバイオタ社の所有社の中に、ローズメント・セネカ社があるが、この会社は投機会社であり、ハンター・バイデンとCIAの投機会社であるインクテル(In-Q-Tel)社が、このローズメント・セネカ社の所有者のひとりとなっていた。このインクテル社は国家安全保障に関わる技術を作る会社に投資している企業だ。(10)

 ハフ博士の結論によると、エコヘルス財団は海外の研究施設や人員たちの情報を収集する事業に携わっており、一方ではコロナウイルスの開発に関わってきたとのことだった。ダスザック博士は、ハフ博士に、CIAが自分の所に手を伸ばし、CIAが「私たちが勤務している場所やともに研究に関わっている人々や私たちが収集している数値に」関心を示しているとさえ語っていた。(11)

 過去にCIAはメリーランド州のフォート・デトリックにある米軍の秘密施設で生物兵器としての恐ろしいウイルスの培養に携わっていたことがあり、その歴史が繰り返されていたようである。


世界的クーデターとしてのCOVID

 以下は、ミシェル・チョスフドスキーが、『世界規模のコロナ危機:人類に対する世界的クーデター:文明社会の破壊と経済不況の操作( (Montreal, Canada: Global Research Publishers, 2022)』という新著内で展開している論説である。

 オタワ大学の経済学者であるチョスフドスキーは、グローバル化についての研究センター(Center for Research on Globalization :CRG)所長をつとめており、このセンターはグローバル・リサーチというウエブサイトを展開しているが、このサイトは重要で斬新な記事を出し、COVID-19に関する公式説明に異を唱えている。

 チョスフドスキーによると、COVID-19の世界的流行は億万長者階級による事実上のクーデターであり、そのせいで世界規模での混乱状況が巻き起こされ、正常な判断力が阻害され、市民の自由が医学的に見て必要のないロックダウン措置により阻害され、社会的距離の確保やマスク着用やワクチンパスポートなどの措置がとられたという。

 チョスフドスキーは以下のように記載している。「このコロナウイルスが利用されて、強力な金融勢力や腐敗した政治家たちに言い訳と正当性を与えることになったのだ。そのおかげで、世界全体が大規模な失業や倒産、極貧、絶望に落とし込まれたのだ…各国の経済が完全な混乱状態に追い込まれ、戒厳令が宣告されることも生じ、愛と生命のすべてが禁じられたのだ。」

 チョスフドスキーによれば、この仕組まれた恐怖作戦から想起されることは、海外への不当な軍事介入の際に支配者層が弄する手口と非常に似通っているということだ。

 戦争反対者に対する対応と同様に、ロックダウン措置に反対する人々は、村八分扱いを受け、仕事を追われ、ソーシャルメディア上から排除され、精神病患者であると決めつけられた。

 フランスでは医師であり引退した大学教授であるジャン-ベルナルド・フォルティラン氏は、ワクチンに反対したために逮捕され、刑務所独房やユゼフにある精神病院に装置された。
また、メイン州では、メリル・ナス医師は40年間保持していた医師免許を虚偽の理由で剥奪されたことに対して異議申し立てを行って州の医療委員会での審理を許されたが、その前に心理検査を受けなくてはならなかった。(13)

 チョスフドスキーによると、しっかりと文書化された証拠から、mRNAワクチンはCOVID-19の流行を抑えることはないことがわかっているとのことだ。そのことは、2022年8月と9月に68カ国と米国内の2947郡を対象にしたCOVID-19に関するハーバード大学の論文が示している。その論文によると、ワクチン接種率が高い国や郡が、100万人あたりのCOVID-19の新規感染者数において最も高い数値を示しているという。(14)

 mRNAワクチンが致死率や罹患率を向上させていることを詳細に示すほかの研究も複数あり、その研究によれば10代の人々の間に見られる過剰死が最も高いことを示している。欧州の致死率追跡調査機関の報告によると、ワクチン接種開始後に14歳以下の子どもたちの死亡件数が驚くほど増加しているとのことだ。(調査会社である)EuroMOMOが示した数値によると、欧州の子どもの過剰死亡件数が2021年に554%急上昇しているが、これは欧州医薬品庁が子ども向けのファイザーのCOVID-19ワクチンを承認したあとのことだ。(15)

 もっと安価で効果的なCOVID-19の治療法はある。それはヒドロキシクロロキンを使った治療法だが、この薬品はファウチ博士が決して広く普及させないよう手を打っていた。

 2020年7月、マーカス・ゼルボス博士は、ヘンリーフォード医療病院の疫学部長で感染病の認定専門医であるが、同博士が行った研究によりわかったことは、ヒドロキシクロロキンを処方された入院後24時間以内のCOVID-19患者たちが死亡する危険度が半分に減じたという事実だった。(16)

 さらにナス博士はイベルメクチンの効用についても指摘している。これは特許が切れた薬品で、巨大製薬業界が利益を得られない薬品だ。ファウチ博士はこのイベルメクチンを「馬用の薬」と評していた。ただしこの薬を開発した2名の科学者である、ウイリアムC.・キャンプベル氏と大村智氏は2015年にノーベル医学賞を受賞している。受賞理由は、寄生性線虫が引き起こす感染症の治療薬を開発したことであった。(17)


恐怖を煽る作戦と嘘

 米国の科学者界が行った欺瞞が明らかになっている事実は、チョスフドスキーによると、ファイザー社が出した秘密の報告に詳しく書かれているのだが、ファイザー社は以前「不正売買」のかどで有罪になったことがある。また同社は2020年12月から2021年2月の間に、ワクチン接種により1200件以上の死亡件数があったという報告を受けていたとされている。さらに1万件以上の「副反応」の報告があり、その中には270名の妊婦における23件の流産と2000件以上の心機能障害が発生したとの報告もあった。

 チョスフドスキーによると、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査を使った欺瞞が各国政府により行われたことには、その検査により出されたまちがった数値を利用して、社会を抑圧するようなやり過ぎの政策をとることが正当化されるという視点を生み出そうという魂胆があったとのことだ。

 RT-PCR検査を使えば、偽陽性がたくさん生み出される。というのも、この検査では核酸の小さなかけらでさえ検出できるようになっているからだ。さらにこの核酸がCOVID-19のウイルス由来でない、あるいは別の特定のウイルス由来のものでも検出されてしまうことを、キャリー・マリス博士が指摘している。同博士はPCR検査の技術の発明者であり、この検査が信頼できないことについては同博士が2019年8月に亡くなってしまう前から指摘していた。

 疾病管理予防センター(CDC)の報告によると、COVID-19が死因とされた死亡者のうち94%は、併存疾患を持っていたか、本当の死因は別にあった人々であったという。そして、COVID-19だけが死因となっていた死亡例はたったの6%にすぎなかったという。

 チョスフドスキーによると、CDCが 出している「死亡届と死産に関する検死官と監察医のための指南書」に従っていれば、COVID-19による志望者数は、実際に当局が報告した総数から90.2%減じていただろうとのことだった。(18)

 2020年3月11日、世界保健機関(WHO)が公式に世界規模での流行を宣言した際、中国以外のCOVID-19の感染事例は4万4279件で、死者数は1440件だった。

 恐怖を煽るという手口には前例がある。それは、2009年から2010年にかけて行われた「豚インフル」を使った恐怖作戦だ。この作戦は、「今世紀最大の医療醜聞だ」と、当時欧州理事会の医療部長をつとめていたドイツのヴォルフガング・ヴォダルグ氏は述べていた。欧州では当時各国政府により何十億ものワクチンが注文されたが、無駄となり廃棄されていた。

 現在ヴォダルグ氏は、元ファイザー社の副社長マイケル・イードン氏と連携して、COVID-19ワクチンに反対する取り組みに参加している。両者は、このワクチン接種は、適切な検査を経ずに導入されたもので、犯罪的な怠慢行為であると見ている。(19)

 各国の政府を動かしていた主要勢力には、ロックフェラーやソロス、フォード、ゲイツ財団などの企業財団がいた。(20)

 これらの財団の目的は、a) 自分たちが投資している製薬業者に大きな利益をもたらすこと、 b) 世界政府やデジタルを利用した圧政のもとでの権威的な政治体制をより堅固にすること、 c) 世界経済フォーラム(WEF)が推奨しているグレート・リセットを前進させることであり、そしてそのグレート・リセットの目的は、世界経済を再構築し、一部の独占企業の利益のためにCOVID前に繁栄していた巨大経済分野を効果的に封鎖し、特定の昔からある諸企業を倒産に追い込むことだった。(21)


これは戦争であって、医療対策ではない—いつもの連中の腐敗と嘘

 かつて製薬業者の重役をつとめていたサーシャ・ラティポワ氏が暴露した内容によると、国防総省は当初からCOVID-19作戦を取り仕切っていて、怪しげな契約を結び、巨大製薬業界が責任を追求されないよう盾の役割を果たしていた。

 製薬業者はオバマ政権がこれまでの規制を変えることにより利益を得ていて、非倫理的な人体実験を実行し、適切な検査や規制を経ていないワクチンを導入させていた。ラティポワ氏は、このワクチンを生物兵器だと捉えており、「体内爆弾のような働きがあり、接種者の細胞を自壊させる原因となる」とも語っていた。

 ラティポワ氏の説明によると、米国国家安全保障会議はCOVID-19に関わる政策に責任があるという。この会議は国防と諜報活動を代表する組織であり、医療を司る組織ではない。米国保健福祉省は、情報を取り扱うだけで、政策を決定する機関にはなっておらず、ラティポワ氏の結論は、これまでの米国政府によるCOVID-19に対する対応は、戦時対応であって、医療的な対策ではなく、いわば意図的に国民を欺瞞してきたというものだった。



ラティポワ氏が入手した文書の一例 [情報源: substackcdn.com]

 この計画が早くも2012年に開始されていたことは、「世界的流行関連事業」ということばから裏付けられる。ラティポワ氏は、このことばを、連邦政府機関の10組織の長が関わった公民の提携関係を表すものとして使用していた。これらの指導者間での秘密会議が持たれ、世界的流行への対策や、この会議の討議内容や計画が極秘扱いで守られる方法について話し合われてきた。ラティポワ氏が疑問を呈したのは、医療事象とされている件に関する話し合いがなぜ人々の目に届かないようにされていたかについてだった。

 ラティポワ氏によると、製薬業界や「投資業界」は、国防総省や軍事諜報機関の指揮下に置かれているという。同紙はまた「ベンチャーファンド(証券投資法人)からの支援であるように見せかけて、実際の投資元はCIAである」と語っている。


政府が事前に知っていたと思われるさらなる推測

 米国国防総省は2019年11月に「COVID-19研究」という名目でラビリンス・グローバル・ヘルス社と契約を結んでいるが、その事実からも政府がこの新型コロナウイルスについて事前に知っていた疑惑が生じている。

 この契約は、「ウクライナにおける生物的脅威削減計画」という、より上位の計画の一部であり、このことから示唆されることは、米国政府が、2019年12月に中国の武漢で感染が広がる以前に、少なくともこのウイルスの存在に気づいていたという事実だ。あるいはアンドリュー・G.ハフ博士の指摘の通り、米国政府は研究室における機能獲得研究に手を貸していた可能性もある。

 そうでなければ、米国政府が、2020年2月にWHOが公式に「COVID-19」という名称を定める3ヶ月前から、この新型コロナウイルスの病気の名を知っていたとは考えられない。さらにこの事実から説明がつくであろうことは、なぜモデルナ社とファウチ配下のNIAIDが2019年12月上旬の時点で、コロナウイルスのmRNAワクチンの候補になるワクチンについて内密に同意していた理由についてだ。このワクチンはモデルナ社とファウチ配下のNIAIDが共同開発し、共同所有していたものだった。


巧みな喧伝努力

 生物兵器対策とワクチン工学の専門家であるロバート・W.マローン博士によると、ゲイツ財団はモデルナ社のmRNACOVID-19注射の通常実施権(発明の実施を独占するものではなく、単にその特許発明を実施することができる権利)を所有していて、そのワクチンが使用されれば利益を得ることになるゲイツ財団は3億1900万ドルを投じてCOVID-19に関する大手報道機関による公式見解を抑えていたという。

 米国保健福祉省と疾病管理予防センター(CDC)は10億ドル以上を投じて、報道機関の見解を抑制していた。(22)

 深夜番組に出演しているお笑い芸人でさえ、この喧伝作戦にかり出されてきた。ジミー・キンメルはABCの番組で、ワクチン未接種の人々がICU(集中治療室)の病床を利用しないように呼びかけていた。(23) 2021年、フェイスブックのある内部告発者が明らかにした内容によると、フェイスブックはワクチン関連の投稿に検閲をかけていたという。検閲の基準は秘密の「ワクチン(接種)躊躇」アルゴリズムである。このアルゴリズム(演算方法)を使って、その投稿内容(たとえそれが完全に正しい情報であったとしても)が、フェイスブック閲覧者に「ワクチン(接種)躊躇」を誘発する可能性があるかのかどうか、あるいはどの程度までそう可能性があるのかを決定していたという。(24)

 マローン博士の考えでは、英国の諜報機関が同博士のようにウィキペディアに記載されているCOVID-19に関する公式説明に疑問の声を発している医療専門家を誹謗中傷する取り組みに関わっていたという。さらに、「ファイブ・アイズ」スパイ同盟国(豪、加、NZ、英、米)がCOVID-19危機中に利用されて、この5カ国同士で相互に他国民に対する喧伝活動ができるよう仕向けられていたという。各国の諜報機関が自国民に喧伝工作をすることはできないこととされているからだ。(25)

 現在の巧みな喧伝努力や抑圧的な政治風潮は、第一次世界大戦時を彷彿とさせるものだ。当時ウィルソン政権は広報委員会 (CPI) という組織を立ち上げ、当時の欧州に米国が介入する世論を広めようとしていた。そして異論を唱える反戦論者たちは、監視され、悪者扱いされ、投獄された。(26)

 著書『我が国の政府が私についた嘘』において、マローン博士が強調していたのは、「キャンセル文化」が検閲を誘発しているという点だった。さらに、人種間の差別に対する高すぎる配慮や認知的不協和が蔓延し、人々が自分たちの固定観念とは食い違う観点を受け入れることに問題が生じたり、不都合な真実を口にしようとする人々を排除しようとする時代風潮もある。

 このような異論を唱える人々は、現代版魔女狩りにさらされ、科学的知識や医療知識が展開できなくなるよう脅され、罪深い支配者層が、勝手気ままに統治する自由を得、極悪非道な社会実験を行い、いま私たちが目撃しているように人間の生活を変えてしまったのだ。


お雇い科学

 マローン博士やミシェル・チョスフドスキー博士による分析を裏付けている「お雇い科学」という新しい文書が、(ニューヨークの)WBAIラジオの司会者であるゲリー・ナル氏により書かれている。この文書は、米国の科学界の腐敗ぶりを明らかにしている。

 ナル氏は、ハフ博士の見解と共鳴して、機能獲得研究を支援していたファウチ博士や同博士の同僚たちは、「母なる自然をもてあそんでいる」と主張している。それは具体的には、超強力なウイルスを作り出し、ファイザー社のような巨大製薬業社をワクチン開発者として英雄のように登場させ、自分たちに巨額の利益が入る手口のことを指している。

 ただしCOVID-19は、季節性インフルエンザとそんなに変わらない病気なので、病院関係者たちは数値を操作して、大規模な流行が発生しているという印象づけを行うことで、人々にワクチンの必要性を実感させていたのだ。末期腎疾患や心不全などの末期的症状を持つ死の淵に瀕している患者たちが、死因がCOVIDである人々の中に加えられ、死者数が水増しされていた。(27)

 それと時を一にしてCOVID-19患者たちが治療をされないまま家に帰される状況も生じていたが、その理由は、ワクチンへの信頼からだった。しかしそのワクチンは、報告されない副反応を生み出すものだった。例えば、心筋炎や血栓や不妊症や心臓麻痺が若い世代で発生している。

 ナル氏によると、ファウチ博士は1980年代のHIV-AIDS の世界的流行時の手法に則っていたという。当時ファウチ博士の手により恐怖作戦が展開されていて、それに伴いAZTのような未検査の薬品が導入されたのだ。その薬品のせいで何万もの健康な人々の命が奪われることになったのだ。

 支配的な説明に異論を唱えていた科学者たちは、ファウチ指揮下のNIHから資金援助されなくなり、「医療界の赤狩り」の出現により軽視された。この結果我々の社会が、企業界による独裁が闊歩する社会になり下がってしまったのだ。

 このような状況を乗り越える唯一の方法は、コロナによる圧政に抗う世界規模の運動を打ち立てることしかない。そして機能獲得研究を不法行為とし、科学の整合性を再構築し、社会主義に移行することで、真の民主主義を実現することだ。


引用文献:

1. アンドリュー・G.ハフ、『武漢についての真実:私が史上最大の嘘を明らかにした手法』(New York: Skyhorse Publishing, 2022)、190頁
2. ハフ、『武漢についての真実』、191頁
3. ハフ、『武漢についての真実』、137頁
4. ハフ、『武漢についての真実』、177頁; フレッド・グテル『ファウチ博士が危険なコロナウイルスの研究を行っていた問題の多い武漢研究所に米ドルを送り込んでいた』、Newsweek、2020年4月28日。ヒトに感染する前に、未知のウイルスを特定することや「ヒトへの感染がわかる前にウイルスを検出する」ために、石正麗が主張していたのは、「研究者たちが早期に警告を発することができる体制を見つけ出せればいいと考えている」ということだった。コロンビア大学のジェフリー・サックス教授とネイル・ハリソン教授はこう指摘している。「[武漢で]行われていた研究の本当の目的は不明のままである。具体的には、自然からの全配列のウイルス収集や、それらのウイルスの遺伝子配列の決定や操作が含まれる」と。 シャロン・ラーナー記者著「ジェフリー・サックスが提示したCOVID-19の研究施設由来説」インターセプト紙、2022年5月19日。
5. ハフ、『武漢についての真実』、94頁。 ラドガーズ大学の感染症の専門家であるリチャード・エブライト博士は、この件に関するニューズ・ウィーク誌で、他の多くの科学者とともに専門家として取り上げられていた。同博士が機能獲得研究に明確に反対している理由は、この研究が、研究室からの偶発的な漏洩により世界的流行を作り出してしまう危険を有しているからだとしていた。しかしファウチ博士は「これらのウイルスの分子におけるアキレス腱を見極めることができれば、科学者たちが新しい抗ウイルス薬剤標的を特定できる。この薬剤標的があれば、ウイルスに感染すれば危険な状態に置かれる人々への感染を防いだり、感染者たちによりよい治療を行うことができるだろう」という考えを示し、さらに「何十年もの体験からわかることは、生物医療研究から得られる情報を適切な科学者たちや医療当局者たちに広めることで、適切な治療法を生み出す重要な機会になるだろうし、最終的には公共医療を守ることにもなる」とも述べた。
6. ハフ、『武漢についての真実』、95頁、178頁、179頁; クリスチーナ・リン著『なぜ米国はコウモリのウイルス研究を武漢に外部委託したのか?』2020年4月22日 ↑
7. ハフ、『武漢についての真実』、178頁、185頁。 遺伝子治療という技術は、医師が誰かの遺伝子に手を加え、病気に対する治療の助けにする技術だ。
8. ハフ、『武漢についての真実』、182頁、185頁 ↑
9. ハフ、『武漢についての真実』、183頁. ハフ博士の考えでは、エコヘルス財団は非正規の金融取引に関わっていて、米国政府からの助成金、とくにタイムカードの不正に関わっていたとのことだ。同博士は、公的機関と民間寄付金の間における契約や物質的支援に関して二重受け取り不正が行われていたと見ている。 (例えばスコル財団、グーグル財団、ロックフェラー財団、ウェルカムトラスト財団などだ)。
10. ハフ、『武漢についての真実』、183頁
11. ハフ、『武漢についての真実』、142頁
12. ハフ、『武漢についての真実』、187頁
13. 後半の件に関しては、ロバート・マローン博士著『政府が私についた嘘』の70頁、「命を救う治療法を推進し、治療を行った、真実を求める兵士についての異常な物語」も参照。さらに『よりよい未来が到来しつつある』 (New York: Skyhorse, 2022)の第3章も参照のこと。ナス博士はCovertAction Information 紀要[CovertAction誌の前身]への論文寄稿者であり、その論文においてローデシア政府が内戦時に現ジンバブエ在住の黒人たちに対して生物兵器を使用したことを記していた。
14. マローン、『政府が私についた嘘』、116頁 ↑
15. ロバート・ケネディ.Jrが前書きを書いているエド・ダウド著『未知の原因:2021年と2022年に起こった突然死の流行』(New York: Skyhorse, 2023)も参照。この著書の指摘によると、2021年の第3四半期と第4四半期に、大規模なワクチン接種計画が行われたのだが、その際に労働年齢層(18歳–64歳)の志望者数が世界的流行前と比べて4割増しになっているという。そしてその主要な死因はCOVIDではないとのことだ。
16. ハフ、『武漢についての真実』、152頁。マローン、『政府が私についた嘘』の70頁、「命を救う治療法を推進し、治療を行った、真実を求める兵士についての異常な物語」も参照
17. マローン、『我が国が私についた嘘』、 117頁。この薬品は、1錠数ペンスで世界中の貧しい人々に行き渡ってきた。
18. マローン著『我が国の政府が私についた嘘』も参照。この著書でも同じような数値が示されていて、その中に記載された論文で明らかにされたことによれば、入院していた90歳以上のCOVID-19患者たちのなかでさえ、ほぼ9割が死なずにすんだという。COVIDが死因とされた死亡のほとんどは超高齢層のものだった。カナダでは、その総数は全体の7割ほどだった。イタリアではCOVIDが死因であった死の100%は、別の致死的な理由が併存しており、韓国ではCOVID-19が死因とされた一般市民の患者のうち99%もの人々が、医療的な治療を受けていなかった。米国の3300人の囚人について調べた研究によりわかったことは、COVID-19陽性と診断された人のうち96%は無症状だったことだ。ジョセフ・メルコラ博士とロニー。カミンズ博士共著の『COVID-19についての真実:グレート・リセット、ロックダウン、ワクチンパスポート、新たなる通常』(White River Junction Vermont: Chelsea Green Publishing, 2021)の56頁も参照。この著書には、ロバート・ケネディ.Jrが前書きを書いている。この著書で強調されているのは、COVIDが死因とされた死の多くは、実際の所は医療ミスが死因であるという点だ。COVID-19の大流行地域と目されていたニューヨークの一部でも同様のことが起こっていたという。
19. 当初イードン博士が懸念していたのは、COVID-19ワクチンが若い女性の受胎能力に影響を及ぼすのでは、という点だった。
20. ロックフェラー財団とフォード財団は、これまで長年にわたりCIAとの関係を維持してきている。
21. この計画は仕事がない人々に最低限の収入を保証するというものだ。ただしこの計画の目的には、人口削減もあると指摘する人々もいる。人口が過剰に増えすぎることへの懸念と、社会ダーウィニズム(適者生存)の考え方やゲイツなどが唱えている優生主義がもととなっている。
22. マローン、「我が国が私についた嘘」、42頁
23. マローン、「我が国が私についた嘘」、113頁
24. マローン、「我が国が私についた嘘」、170頁. フェイスブックは、「公共医療の専門家たちが人々にCOVID-19のワクチン接種を拒むよう助言している内容」については排除す方針を公に表明している。
25. マローン、「我が国が私についた嘘」、279頁
26. マローン、「我が国が私についた嘘」、53頁
27. 2020年、CDCのロバート・レッドフィールド所長は、米国の病院は入院率や総死亡件数を高くすることに力をいれていたようであることを認めた。 メルコラ、カミンズ著、「COVID-19についての真実」、57頁

 ジェレミー・クズマロフはCovertAction誌の編集長。米国の外交政策に関する4本の著書がある。著名は、『オバマによる終わらない戦争』 (Clarity Press, 2019)、 『ロシアが来る、再度』(ジョン・マルシアノ氏との共著)(Monthly Review Press, 2018)。連絡先は: [email protected].
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分離独立の問題を抱えている国は、ドンバスだけではなく、よく知られたコソボ、カタルーニャを含めて世界にはいくつもある。

<記事原文 寺島先生推薦>

Kosovo, Donbass and Catalonia are famous examples, but do you realize how many countries have problems with separatism?
More than 100 governments recognized Kosovo’s self-proclaimed independence 15 years ago, but most of them have their own issues of this kind

コソボ、ドンバス、カタルーニャは有名な例だが、分離独立の問題を抱えている国がどれだけあるかご存知か? 15年前にコソボの独立を承認したのは100カ国以上の政府だが、そのほとんどがこの種の問題を抱え込んでいる。

筆者:ゲオルギイ・ベレゾフスキー(Georgiy Berezovsky)
* ウラジカフカズ在住のジャーナリスト。ウラジカフカズは、ロシア連邦の北カフカス地方に位置する北オセチア共和国の首都。

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月10日


コソボ・アルバニア人の「自己決定」運動の支持者数百人が、プリシュティナ中心部で抗議デモを行いながら行進している。© Dimitar DILKOFF / AFP Japan


 2008年2月、アルバニア系分離主義者が多数を占めるコソボ議会は、同州のセルビアからの独立を宣言した。ベオグラード*はこれに反対したが、翌日にはアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、アルバニアがこの新しい「国家」を承認した。その年の暮れには、50カ国以上が続いた。
*セルビアの首都。かつてのユーゴスラビアの首都。

 現在、コソボの主権を承認している国連加盟国は、ほぼ100カ国。しかし、ベオグラードの外交努力により支持を撤回した国もあり、この数字は常に流動的である。それにもかかわらず、プリシュティナは117カ国が「独立」を支持していると主張し続ける。

 実際には、国連に属する国の半数以上がコソボの独立を承認していない。その中には、中国、インド、旧ソビエト諸国のほとんど、そしてEU加盟国であるギリシャ、スペイン、キプロス、ルーマニア、スロバキアが含まれている。




関連記事:カーテンの向こうにいる男。ジョージ・ソロスのプロパガンダ実行機関がいかにメディアを堕落させたかを暴露する新報告書


 ロシアはコソボの独立宣言に反対する主要な国のひとつであり、世界秩序に及ぼす影響について一貫して述べてきた。しかし、よくよく考えてみると、世界の大半の国家が、重大なものからごく小さなものまで、何らかの形で分離独立の問題に取り組んでいることがわかる。


バルカンのパッチワークキルト*
*布を接ぎ合わせて一枚の布にしたもの。

 コソボの地位問題は、バルカン半島で新たな国家的存在の出現をもたらした分離主義の最新の事例に過ぎない。この地域の崩壊は「バルカン化」と呼ばれているが、それは当然である。

 前世紀末、バルカン半島の大部分はユーゴスラビアという統一国家に編入された。現在では、その代わりに7つの独立国が存在するが、これで終わるとは決して言えない。

 セルビアが最初に直面したのはアルバニア人の分離主義だったが、モンテネグロ、ギリシャ、北マケドニアなど、この地域の他の国々にもアルバニア人の共同社会(コミュニティ)が存在する。特に北マケドニアでは、コソボに隣接する同国西部に、全人口の25%を占めるアルバニア人が住んでいるため、その脅威は深刻だ。


スコピエのダウンタウンで反政府デモが行われるなか、マケドニアとアルバニアの国旗を振る人々を見守る男性。© Dimitar DILKOFF / AFP Japan


 セルビアはコソボ問題に加え、セルビア人だけでなくハンガリー人も住む自治区であるヴォイヴォディナにも潜在的な問題を抱えている。

 コソボもまた、独自の内部課題を抱えている。コソボの北部には、セルビア人を中心とした飛び地があり、彼らは祖国から孤立することを好まない。同様に、ボスニア・ヘルツェゴビナでも分離主義の問題は避けられない。その一部であるスルプスカ共和国は、独立またはセルビアとの統一を志向し、将来について中央政府と矛盾する見解を示すことが増えてきた。



関連記事:欧米の外交は未熟で対話ができない(駐インド・ロシア大使)


 ボスニアのクロアチア人の飛び地や、クロアチア自体にもセルビア人の飛び地があり、深刻度は低いものの、同じ問題が見られることがある。


イベリア半島。2カ国では足りない

 もし、マドリードに半島の大部分を束ねる王様がいなかったら、「バルカン化」は「イベリ化」と呼ばれていたかもしれない。スペインでは、他のどの西ヨーロッパ諸国よりも多くの分離主義運動が行われている。

 カタルーニャの問題は、全世界がよく知っている。ちょうど5年前の2017年10月、そこの自治体は独立を問う住民投票を行い、投票者の9割以上がスペインからの分離を支持したにもかかわらず、失敗に終わった。マドリードはこの民意の表明を認めようとしなかった。その結果、カタルーニャ分離独立運動の指導者の何人かが逮捕され、他の指導者は国外に逃亡した。しかし、それでも地元住民の思いは消えない。

 カタルーニャの問題に加えて、バスクの分離主義もある。これはカタルーニャとは異なり、より過激な形態をとることが多い。ETA(エウスカディ・タ・アスカタスナ=バスクと自由)の過激な民族主義者は、40年以上にわたってスペインとスペイン王室からの独立を求めて戦い、800人を殺害した。2018年、同団体は自己解散を発表したが、だからといって問題がなくなったわけではない。この地域の最大政党のひとつであるバスク民族主義党は、いまだにマドリードからの独立という考えを支持している。


スペイン北部のバスク地方都市ドノスティア(サンセバスチャン)で、10月1日に実施予定のマドリードからの独立を問う住民投票とカタルーニャを支持するデモで、バスクとカタルーニャの旗を掲げるデモ隊。© Gari Garaialde / AFP


 スペインは、17の自治体(地域)に分かれている。分離主義まではいかないが、それぞれの自治体で、ある程度、地域自治の考え方が盛んである。地方選挙では、アラゴン、アンダルシア、カスティーリャ、アストゥリアス、カンタブリア、ガリシアなどの自治州で、独立と自治の強化を訴える候補者が定期的に大きな得票率を獲得している。

 イベリア半島のもう一つの国、ポルトガルでも、すべてが甘美で明るいわけではない...リスボンの権力から自由になろうとする地域が、大西洋の海を隔てて存在するからだ。大都市から離れているのは事実だが。マデイラ諸島やアゾレス諸島のことである。



関連記事:ハリウッドは1年前にロシアを見捨てたが、この国の興行収入は史上最高記録を打ち立てたばかりだ。なぜこのようなことが起こったのか?


イギリス。バラバラになった王国

 スコットランドの分離主義は、ここ数年、ロンドンを悩ませている。前回の地方選挙で独立支持派が勝利した後、彼らはイギリスからの分離独立を問う2度目の住民投票を実施する意向を表明した。1回目は2014年に行われ、55%が離脱に反対し、45%が離脱を支持した。投票結果に自信を持ったロンドンは、その時はスコットランド人の意思に干渉しなかった。

 しかし、その2年後、英国はEU離脱を決議し、エジンバラは、スコットランド人が明らかにEU残留を望み、62%の圧倒的な反対票を投じたことから、新たな住民投票を要求した。スコットランド当局は2023年10月に新たな住民投票を実施することを望んでいたが、昨年11月、英国の最高裁判所は、独立に関する国民投票はロンドンの同意がなければ実施できないとの判断を下した。今回、トーリー(保守党)政権下の議会は、それを認めるつもりはない。エジンバラは諦めるつもりはなく、前スコットランド政府のトップであるニコラ・スタージョンは、「スコットランドの民主主義は否定されない」と約束した。

 先週、スタージョンはスコットランドの第一大臣としての辞任を発表したが、それでも後継者について、その人が「スコットランドを独立へと導いてくれる」と自信を見せた。


スコットランド・エディンバラで行われたAUOB(All Under One Banner)の行進のため、スコットランド独立派の支持者がホリールード公園から市街地を抜けてメドウズに向かう。© Ewan Bootman/NurPhoto via Getty Images


 北アイルランドとの関係も、ロンドンにとっては小さくない問題である。2022年春の地方選挙では、アイルランド共和国との統一とUKからの分離独立を主張するシン・フェイン党が第一党となった。ブレグジットの際にロンドンとEUの間で結ばれた「北アイルランド議定書」が、分離派の人気上昇に貢献したと思われる。この議定書では、(EU加盟国の)ダブリンとベルファストの間の単一の関税空間を維持することを求めているが、そのかわりブリテン島と北アイルランドの間に関税が課されることになるからだ。

 ロンドンの問題はこれにとどまらず、コーンウォール、メルキア(ウェストミッドランドとイーストミッドランド地域)、ノーサンバーランド、ヨークシャー、ジャージー、ウェールズでも程度の差こそあれ分離主義者の活動があり、さらにはイングランド自体の英国離脱の話もある。しかし、これらはスコットランドやアイルランドの問題に比べれば、陳腐なものに見える。



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西ヨーロッパ。国の中にさらに国がある国々

 西ヨーロッパの国々は、そのほとんどが模範的な単一国家であり、一般的にはそうであるように思われる。しかし、地域における帰属意識(アイデンティティ)が強く、自治の拡大が望まれ、分離主義的な傾向があるのも事実である。

 例えば、フランスでは、南部に7地域にも及ぶ広大な面積を占めるオクシタン族という問題がある。積極的なフランス語化政策も、この問題を決定的に解決するには十分ではなかった。この地域のすべての標識は、オクシタニア語でも記載されているのが常である。

 北西部に位置するブルターニュ地方もまた、強い地域性を持っている。その住民は独自のケルト語を持ち、自分たちをフランス人ではなく、ブルトン人と呼ぶことを好む。20世紀後半には、ブルトン革命軍の武装組織であるブルトン解放戦線が、祖国の独立を主張するスローガンを掲げながら、テロを起こしたこともある。コルシカ島では、今世紀に入っても、独立のために暴力的な手段をとることを辞さない過激派がいる。

 オクシタン党、ブルトン党、自由コルシカ党など、各分立派は、自治権の拡大から完全な独立まで、さまざまな政策を掲げている。コルシカ民族解放戦線(FLNC)は昨年夏、16件の放火を行い、非コルシカ人が所有する夏の住宅や建設会社、パトカーを爆破したと主張している。


フランス、バスティアでのコルシカ民族主義グループ「F.L.N.C」の記者会見。© LEGRAND/Gamma-Rapho via Getty Images


 EUの経済機関車であるドイツが、チェコやオーストリアと国境を接し、国土の約2割を占める豊かな地域、バイエルンで問題を起こしている。バイエルン人は、他のドイツ人とは大きく異なる。その方言は、公式には認められていないものの、実は別の言語と考えられている。地域の独自性は極めて強いものの、バイエルンは少なくとも公には分離主義を口にすることはほとんどない。しかし、紛争がないときでも、ベルリンはミュンヘンを注視している。



関連記事:東部戦線異状なし:ロシアと日本が第二次世界大戦に正式な終止符を打つのを阻止するために、米国はどのように動いたか?


 ドイツの主要政党の一つであるキリスト教民主同盟は、その代表が繰り返しドイツの首相に選ばれているが、バイエルン州では選挙に参加していない。バイエルン州のキリスト教社会同盟は、バイエルン州の分離主義者や急進的な民族主義者の政党を吸収し、純粋なバイエルン州のキリスト教社会同盟と同盟を結んでいる。

 イタリアでは、ロンバルディア州とヴェネト州の北部地域で独立の問題が議論されている。そして、これらの議論はローマにとってむしろ不愉快なものである。たとえば、ヴェネトの政治家たちは、ヴェネト語をイタリア語と並ぶ地域の公用語として認めさせることに成功した。2014年3月、この地域で行われたオンライン投票では、回答者の89%が主権を持つヴェネト連邦共和国の創設を支持した。しかし、まだ住民投票には進んでいない。これらの地域でより大きな独立を望むのは、主に経済的な要因からだが、南チロルでは、国家的な問題も一役買っている。第一次世界大戦後にイタリアの一部となったこの豊かなドイツ語圏の地域は、100年以上前からオーストリアとの統一を望んでいる。

 西ヨーロッパで最も崩壊の可能性が高いのは、間違いなくベルギーである。ベルギーは、全く異なる民族が住む2つの地域から構成されている。オランダ語を話すフラマン人が人口の約6割を占め、フランス語を話すワロン人が4割を占める。フラマン人は、失業率が2倍、1人当たりGDPが3分の1という南隣のワロン人が、自分たちを犠牲にして生活していると考えるのは当然である。30年前、フランドル(フラマン人が住む地域のこと)はこの状況に不満を抱き、統一ベルギーを連邦制に移行させることに貢献した。今、フランドルは自治権をさらに拡大しようと闘い、ワロン人はその努力をはねのけようとしている。

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ブリュッセル近郊のウェゼンベーク・オッペム市で、フラマン民族主義グループ「Voorpost(アウトポスト)」のメンバーが、フラマン民族の独自性を支持するデモの際に、フラマンの旗を振り回している。© Dominique Faget / AFP


まだまだ、ある...。

 分離主義の問題は、東欧、特にソビエト後の空間ではさらに深刻で、中央と地域の当局が合意に至らないために、しばしば戦争が勃発している。トランスニストリア、アブハジア、南オセチア、ナゴルノ・カラバフ、ウクライナ東部などである。



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 しかし、分離主義的な願望は、ヨーロッパに限ったことではない。アジア、アフリカ、そしてオセアニアでも見られる。特に植民地支配を経験した国々では、外圧によって国境線が引かれることが多く、地域の要因や部族や民族の伝統的な母国を無視した国境線が引かれてきた。

 今日、最も強力な非ヨーロッパ諸国も、この問題と無縁ではない。たとえば、中国が直面している分離主義の脅威は、世界中がよく知るところである。米国は最近、台湾、チベット、新疆ウイグル自治区、香港、マカオの独立を主張することが多くなっている。半世紀余り前、北京は内モンゴル自治区の分離独立と戦っていたが、人口動態の変化により、この問題はあまり意味を持たなくなった。

 とはいえ、外から見ると一枚岩のように見えるアメリカでさえ、11の小国に分けることは容易である。カリフォルニア州やテキサス州など、個々の州の独立を主張するアメリカ人の話は時々メディアに登場するし、カスケーディアやニューアフリカ共和国など、地域全体の独立を主張する興味を引く運動も存在する。

 いずれにせよ、世界中の分離独立運動を網羅したリストは、図書館の別室を占領してしまうだろう。

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© independent.co.jp


解決策はあるのだろうか?

 モスクワにあるバルダイ国際討論クラブ*の企画担当責任者ティモフェイ・ボルダチェフは、「世界的に見て、分離主義は、解離、新しい壁の建設、民族主義の台頭に対する反応である」と考えている。
*専門家の分析センターで、2004年にロシアの大ノヴゴロドで設立された。(ウィキペディア)

 「もし本当の全世界一体化(グローバリゼーション)があれば、分離主義は存在しない。国境は透明化され、人々はどこに住もうが構わなくなるからだ。」

 分離主義とは、名ばかりの国の国粋主義に対する闘争である。

 ドンバスや東ウクライナの住民は、なぜキエフの権力から抜け出したいと思うのか。その理由は、ウクライナの国粋主義である。南オセチアやアブハジアでグルジアとの決別を望む分離主義者が現れたのはなぜか? トビリシがこれらの地域にグルジアの国粋主義を押し付けようとしたからだ。それだけである。分離主義の背景には、常に大きな国の国粋主義がある」とこの専門家はRTに語っている。



関連記事:マイダンの狙撃事件は2014年のキエフ・クーデターにとって極めて重要だった ―なぜ西側諸国では虐殺に関する研究が検閲されているのか?


 モスクワ国立国際関係研究所欧州法学部の准教授であるニコライ・トポルニンは、少し違った見解を持っている。彼によれば、「分離主義的傾向とグローバルな統合過程との間に明確な関係はない」という。

 「それぞれのケースには、それぞれの歴史、特徴、ルーツがあります。しかし、多くの場合、分離主義の背景には、歴史的、文化的、宗教的、言語的、教育的、経済的な理由が複雑に絡み合っています」とトポルニンは指摘した。

 ある意味、グローバリゼイション(世界統一化)は分離主義を助長している。その結果のひとつが、グローカリゼーション(世界地域化)の出現であり、消滅すると思われていた地域差は、むしろ強まっている。「合併や統一が進む代わりに、分離主義的な傾向、地域差への関心の高まり、古い伝統への関心の高まり、方言の復活など、逆の傾向が生まれ、強くなっている」と彼は述べている。

 このような状況下で、分離主義に対抗するには、弾圧と譲歩の2つの方法しかない。各国はこの2つの方法を同時に採用し、分離主義を志向する活動家を迫害すると同時に、分離主義地域にさらなる自治権を与えることが多い。しかし、ティモフェイ・ボルダチェフによれば、より普遍的な処方箋があるという。

 「分離主義の問題に理論的な解決策はあるのだろうか? ある。それは帝国主義だ。分離主義に対する唯一の処方箋は帝国主義である。つまりロシア、中国、そしてある程度は米国のような、多国籍、多会派の大国のことである。」
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ベネット元イスラエル首相、ロシア・ウクライナ和平交渉の試みを米国に「妨害された」と発言

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Former Israeli PM Bennett says US ‘blocked’ his attempts at a Russia-Ukraine peace deal - The Grayzone

出典:The GRAYZONE

2023年2月6日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月10日



ベネット、米国と西側同盟国は「プーチンを叩き続ける」ことを決め、交渉はしないと発言

 これは、Antiwar.com「反戦.com」に掲載された記事である。

 イスラエルのナフタリ・ベネット元首相は、土曜日に自身のYouTubeチャンネルに投稿したインタビューで、戦争初期にロシアとウクライナを仲介して戦争を終結させようとした努力を、米国とその西側同盟国が「阻止した」と語った

 2022年3月5日、ベネットはロシアを訪れ、ウラジーミル・プーチン大統領と会談した。インタビューでは、当時のプーチンとウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領との仲介について詳述し、米国、フランス、ドイツ、英国との調整を行ったと述べた。

 ベネットは、彼の調停努力の中で、双方が大きな譲歩に合意したと述べた。ロシア側は、停戦の条件である「非ナチ化」を取り下げたという。ベネットは「非ナチ化」をゼレンスキーの排除と定義した。モスクワでプーチンと会談した際、プーチンはゼレンスキーの殺害は試みないことを保証した、とベネットは語っている。



 ベネットによれば、ロシアがもう一つ譲歩したのは、ウクライナの武装解除を求めないということである。ウクライナ側にとっては、ゼレンスキーがNATO加盟を目指すことを「放棄」したということになる。ベネットは、ウクライナのNATO加盟の動きがロシアの侵攻の「理由」だと指摘した。

 当時の報道では、ベネットのコメントを反映し、ロシアとウクライナが立場を軟化させているとされた。3月8日に「アクシオス」[米国のニュースウエッブサイト]は、複数のイスラエル政府関係者の言葉を引用し、プーチンの「提案はゼレンスキーにとって受け入れがたいものだが、彼らが予想したほど極端ではない」ということを報じた。このウエッブサイトは、この提案にはキエフの政権交代は含まれておらず、ウクライナが主権を維持することを認めていると述べている。

 ベネットは、西側諸国の指導者が自分の調停努力についてどう感じたかについて考察して、当時のボリス・ジョンソン英国首相は 「攻撃的な路線」をとり、エマニュエル・マクロン仏大統領とオラフ・ショルツ独首相は 「実利的」だったと述べた。ベネットは、バイデン大統領が 「両方の」立場を採ったと述べた。

 しかし最終的に、欧米のリーダーたちはベネットの努力に反対した。「このことを広義で言わせてもらう。西側諸国がプーチンを叩き続け、(交渉は)しないという決定は元々あったのだと思う」とベネットは述べた。

 西側諸国が調停努力を「妨害」したのかと問われたベネットは、「基本的には、そうだ。彼らは妨害した、そして私は彼らが間違っていると思った」と述べた。

 ベネットは、調停に踏み切った理由を、イスラエルがシリアで頻繁に空爆していることを引き合いに出し、戦争でどちらに付くかを決めないことがイスラエルの国益にかなうと述べた。ベネットは、ロシアはシリアにS-300防空ミサイルを保有しており、「彼らがボタンを押せば、イスラエルのパイロットは撃墜される」と述べた。

 ロシアとウクライナの交渉は、ベネットの努力だけでは終わらなかった。その後、3月にロシアとウクライナの当局者がトルコのイスタンブールで会談し、その後、実質的な話し合いが行われた。フォーリン・アフェアーズに語った米国の元高官の説明によると、双方は暫定的な取引の枠組みで合意したという。プーチンを含むロシア政府関係者は、イスタンブールでの協議後、[平和]協定が間近に迫っていたと公言している。

 しかし、欧米のさらなる圧力により、結局交渉は失敗に終わった。ボリス・ジョンソンは2022年4月にキエフを訪れ、ゼレンスキーにロシアと交渉しないよう促した。「ウクラインスカ・プラウダ」[ウクライナの一般向けのネットニュース]の報道によると、たとえウクライナがロシアと協定を結ぶ準備ができていたとしても、キエフの西側支援者はそうではないとボリス・ジョンソンは述べたという。

 4月下旬、トルコのメヴルト・カヴソグル外相は、ウクライナでの戦争を長引かせようとするNATO加盟国が一部存在すると述べた。「イスタンブールでの会談後、戦争がこれほど長く続くとは思わなかった...しかし、NATO外相会議の後、...NATO加盟国の中には、戦争を続けさせ、戦争を継続させ、ロシアを弱体化させたい人々がいるという印象があった。彼らはウクライナがどんな事態になろうとあまり気にしていない」とカヴソグルは語った。

 カヴソグルの発言から数日後、ロイド・オースティン[米国]国防長官は、ウクライナ支援における米国の目標の1つは、ロシアの "弱体化 "であることを認めた。
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コロンビア大学教授ジェフリー・サックス、米国のノルド・ストリーム破壊を非難した後、電波から外される

<記事原文 寺島先生推薦>

Columbia professor Jeffrey Sachs yanked off air after accusing US of sabotaging Nord Stream pipeline

筆者:アレックス・ブレア(Alex Blair)

出典:New York Post

2022年10月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月10日

 コロンビア大学の教授が、米国がバルト海のパイプライン「ノルド・ストリーム」の破壊工作をしたと非難すると、テレビの司会者は急いで彼の発言を打ち切ろうとした。

 ジェフリー・サックス教授はブルームバーグの取材に応じ、ここ数週間、世界的な「犯人捜し」ドラマの中心となっているパイプラインは、プーチンの軍隊ではなく米国が経済制裁以上のダメージをロシアに与える手段のための攻撃だ、という考えを披瀝した。

 「ノルド・ストリーム」パイプラインは、ロシアからドイツに天然ガスを直接供給するもので、ヨーロッパ全域に電気を供給するために不可欠なものだ。




世界的に有名な経済学者であるサックスの意見は、ロシア当局の主張のオウム返しだ、と批判された。(ブルームバーグ)


 しかし、爆発源は謎のまま。モスクワとワシントンは双方ともその責任を否定している。

 欧米のアナリストたちの大半は、今のところ、破壊工作の責任はロシアにあると指摘している。

 世界的に著名な経済学者であり、コロンビア大学持続可能な開発センター長であるサックスの意見は、ロシア当局の主張のオウム返しだと批判された。



  「世界の多くの人々が、この出来事を恐怖の目で見ています」とサックスは言った。

  「世界の多くの人々はこれをロシアとアメリカと背筋が凍るほど恐ろしい衝突と見ています。彼らは、私たちのメディアが伝えるような、これをロシアによるウクライナへのいわれのない攻撃だとは思っていません。」

 「世界の大半の人々は、私たちが説明するようには見ていないのです。世界の大半の人々は、率直に言って、今、ただ恐怖を感じているのです。」

 「(爆破は)米国の行動、おそらく米国とポーランドの行動であることは間違いないでしょう」と彼は述べた。

 ブルームバーグの司会者であるトム・キーンはすぐに口を挟み、サックスにその主張の根拠を示すように求めた。



ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の漏えいから発せられるガスの放出.Airbus DS 2022/AFP via Getty Ima


 「ジェフ、お話はそこまで。なぜ、あれがアメリカの行動だと感じるのですか? その証拠はあるのですか?」と司会者は言った。

 レーダーで米軍ヘリを検知したことと、ホワイトハウスがロシアの欧州エネルギー供給への締め付けに関する重要な声明を発表したこと、この2つが、今回の結論につながった、とサックスは述べた。

 「まず、通常(ポーランドの)グダニスクに駐留している米軍のヘリコプターが、この上空を旋回していたというレーダーの直接証拠があります」とサックスは言った。

 「いずれにせよノルド・ストリームを終わらせる」という(バイデン大統領の)脅しも今年に入ってからありました。

 「先週金曜日の記者会見で、国務長官(アントニー・ブリンケン)の『これもまた、とてつもないチャンスだ』という注目すべき発言もありました。




サックスが非難したのは、ドイツがロシアからの海底パイプラインに対する明らかな「破壊工作」を調査するため、デンマークおよびスウェーデンと合同調査部門を設立すると発表したときだ。(ブルームバーグ)


 「重要な意味を持つ国際インフラ(=ノルド・ストリーム)への海賊行為を心配するのであれば、ブリンケンの発言は奇妙な言い方だ」。



関連記事:ロシアの天然ガス輸送官ノルド・ストリームの崩壊が破壊活動であったという疑惑


 バイデンは、ロシアがウクライナに侵攻する数週間前の2月に、ロシアが国境を越えた場合、米国は天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2を終わらせる」だろう、と請け合った

 「もしロシアが侵攻してきたら、つまり戦車や軍隊がウクライナの国境を越えてきたら、ノルド・ストリーム2はなくなるのです。私たちはそれに終止符を打つでしょう」と、バイデンは、その時、述べている。

 サックスは、自分の考えが米国における「我々のシナリオに反する」ことを認め、そしてアメリカのメディアはこの問題を無視していると非難した。

 「今、私が言ったことは、我が国が考えているストーリーに反していることは承知しています。欧米ではこういうことを言うことは許されません。しかし、事実として、世界中の人々と話すと、それはアメリカがやったことだと彼らは思っているのです」と彼は言った。

 「関係するアメリカの新聞の記者ですら、「’もちろん’(米国がやった)」と言います。しかしアメリカのメディアではそんなことは表に出て来ません」。

 サックスが非難の声をあげたのは、ドイツが、ロシアからの海底パイプラインに対する明らかな「破壊工作」を調査するため、デンマーク、スウェーデンと共同で調査団を結成すると発表した時だ。

 ドイツのオラフ・ショルツ首相は、デンマーク首相、スウェーデン首相とのビデオ通話で、ドイツ政府はこの事件の「共同調査を支持する」と述べた。



バイデン大統領は、ロシアがウクライナに侵攻する数週間前の2月に、ロシアが国境を越えた場合、米国は天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」に「終止符を打つ」と請け合った。(ロイター通信)


 ナンシー・フェーザー(ドイツ)内相は、ビルト・アム・ゾンターク紙に対し、3カ国(ドイツ、デンマーク、スエーデン)のスタッフによる「EU法に基づく合同捜査チーム」が作業を行うことを、内相同士で合意したと語った。

 「すべての状況を勘案すると、ノルド・ストリームパイプラインに対する破壊行為はあった」というのが、彼女の発言だ。さらに、このチームには「海軍、警察、そして諜報機関」の専門家を集める予定だと付け加えた。

 当局は、ドイツのエネルギーインフラを守るために「警戒を強め」ているが、「ドイツ側に対する具体的な脅威の兆候はない---今のところ」と述べている。

 フェーザーは、日刊紙「スエード・ドイッチェ・ツァイトゥング」の取材に対し、爆破後、ドイツ警察は近隣諸国と協力して「利用できるすべての力」で北海とバルト海をパトロールしていると語った。

 スウェーデン当局はその後、破壊工作と思しき事件の調査を行っている間、ノルド・ストリーム・パイプラインの周辺を封鎖している。

 スウェーデン検察庁は声明で、「悪質な破壊工作」の捜査を進めるため、担当検察官が「犯罪現場調査を行うために、その地域を封鎖する」ことを決定したと発表した。

 「捜査は続いており、集中的な段階にある...世間の関心がかなり高いことは理解しているが、予備調査の初期段階であり、したがって、どの捜査手段をとっているのか、詳細についてはコメントできない。」
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「ドンバスの要衝都市バフムートは包囲された」(ワグネル軍事会社代表からの声明)

<記事原文 寺島先生推薦>

Key Donbass city surrounded – Wagner chief
Yevgeny Prigozhin has called on Ukrainian President Vladimir Zelensky to allow Kiev’s forces retreat from Artyomovsk

エフゲニー・プリゴジン氏は、ウクライナのヴォロデミール・ゼレンスキー大統領にウクライナ軍のアルチョモスクからの撤退を許可するよう要求した。

出典:RT

2023年3月3日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月9日


ワグネル民間軍事会社のエフゲニー・プリゴジン代表

 「ワグナー軍事民間会社は、事実上アルチョモスク(ウクライナではバフムートと呼ばれている)という戦略上重要な都市を完全に包囲している」と同軍事民間会社のエフゲニー・プリゴジン代表が金曜日(3月3日)に発表した。

 先日同市の郊外で撮られたと思われる動画内で、このワグネル社の代表はウクライナのヴォロデミール・ゼレンスキー大統領を名指しで言及し、ドンバス内にあるこの都市は包囲され、この都市と外につながっている道路が今はたった一つしか存在しないと、同大統領に告げた。

 「はさみの刃が固く閉じつつあるのです」とプリゴジン氏は声明を出した。同氏はさらに、ワグネル社はウクライナの正式軍と戦闘を続けていたが、いま戦っている相手は、老人や子どもたちにどんどんと変わっている状況についてもあきらかにした。「戦闘は続いていますが、バフムート市の命運はつきています。もってあと1~2日でしょう」とプリゴジン氏は述べた。

 同ワグネル代表がウクライナの大統領に促したのは、兵士たちにこの都市の防衛を放棄させることだった。その際、カメラは拿捕(だほ)されたと思われるウクライナ兵たちの姿を映し出していた。その中には長い灰色のあごひげをした男性と2名の若く見える男性がいた。

 さらにこの捕虜たちは、自分たちが母国の家族や愛する人々のもとに戻ることを許してもらうことと、この要求を無視しないことをゼレンスキー大統領に懇願していた。


関連記事: ゼレンスキーの大統領顧問が、要衝都市から撤退する可能性を示唆

 アルチョモスク市は、ロシアの軍事作戦において最も激しい戦闘が繰り広げられてきた地域のひとつで、ウクライナが引いている70キロに及ぶ防衛線の一部を占めている。なおこの防衛線は、2014年にキエフ当局がドンバスでの戦闘を開始した以来構築されたものだ。

 1ヶ月に及ぶ作戦において、ワグネル社の兵士たちが大多数を占めるロシア軍は、体系的な同市の占領に成功しており、北と南と東においてアルチョモスク市を包囲している。

 ゼレンスキーは戦略的に重要なこの都市が包囲された状況にはないとずっと主張してきたが、最近その見方を変えたようだ。キエフ側の軍がこの都市の防衛において厳しい損失を出したことを受けて、先日ゼレンスキーは、アルチョモスク市を持ちこたえさせるのは、そうすることに「合理性が存在し続ける」限りのことであると表明した。キエフ当局を支援している西側諸国も、ウクライナの指導者であるゼレンスキー大統領に、損失を出すことをやめ、この都市からの撤退を促している。
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米国は「国内分裂」に向かっている(共和党女性議員の発言)

<記事原文 寺島先生推薦>

US heading for ‘national divorce’ – congresswoman
Marjorie Taylor Greene says “real Americans” feel disconnected from Washington

マージョリー・テイラー・グリーン議員は、「本当の米国民」はワシントン当局から疎外されていると感じていると発言

出典:RT

2023年2月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月9日


2023年2月7日、ワシントンDCの米国議会議事堂でのバイデン大統領の一般教書演説中のマージョリー・テイラー・グリーン© Getty Images / Win McNamee/Getty Images

 論争の火付け役的役割を果たすことの多い共和党のマージョリー・テイラー・グリーン議員が先日の発言で強調していたのは、同議員は、米国内の赤の州(共和党支持州)と青の州(民主党支持州)の対立による「国内分裂」が進行中だと考えているという点だった。ただし、同議員は政界における分裂や、それに伴い生じるかもしれない内戦を望んでいないとも語っていた。

 ジョージア州選出の共和党員であるテイラー・グリーン議員は、「米国第一主義」と「MAGA(Make America Great Again米国を再び偉大な国に)」を表明しているドナルド・トランプの主要な同盟者であるが、その彼女が「(ジョージ)ワシントン誕生日」である2月20日、政治的な思想に基づいて米国は分裂すべきであると主張した。同議員が不満を呈したのは、「私たちの喉元に病的で吐き気のするようなウォーク(人種や性的差別などに対する高すぎる意識のこと)文化が突きつけられていて、民主党(原文ママ)が唱える国民に対する裏切りのような「米国を最後まで後回しにする」政策が幅をきかせているなか、我が国は終わってしまっている」という点だった。

 この発言に対する非難を受けて、テイラー・グリーン議員は、日曜日(2月26日)に出した声明を強調し、ワシントン当局と政界は「真の米国民や米国民の考えや米国民の感情からは完全に疎外していて、米国民は米国を嫌悪しています。私が正しければ」とツイートしていた。

 「好むと好まざるに関わらず、我が国は国内分裂に向かっています。でも私は内戦を望んではいません。そんなことは決して起こるべきではありません。」

 テイラー・グリーン議員の最近の発言が、ワシントン当局内の厳しい対立を激化させることになることは確実で、この対立は、2021年1月6日に生じた親トランプ派による暴動事件の余波がまだ残存していることを感じさせるものだ。


関連記事:ゼレンスキーは米軍に司令を出している-女性国会議員の発言

 同女性議員が指摘した赤の州と青の州の間の政治的な決裂は、世論調査の結果からも窺えるようだ。世論調査員であるジェレミー・ゾグビ氏が保守系の報道機関であるワシントン・イグザミナーに語ったところによると、青の州と赤の州の間の分裂を示唆する状況は、「全面的に」見られるとのことだ。

 政策検討会社であるジョン・ゾグビ戦略会社の代表社員である、ジェレミー氏の父であるジョン・ゾグビ氏も、以下のように語っている。「我が社が行った世論調査の結果、この状況と相容れない状況は存在しなかった」と。この状況とは、テイラー・グリーン議員から見た米国政界の地形図のことである。

 テイラー・グリーン議員によると、いわゆる「国内分裂」状態になれば、国防総省がすべきことは、「米国の国境線を守ること」となり、ロシアや中国との敵対関係に焦点を置いたり、「何よりもウクライナを守る」ことに関心をもつことなどは後回しにすべきだ、とのことだ。

 同国会議員は、米国内の左派と右派の間には「相容れないほどの差異」が生じており、内戦を招くのではなく、必要なことは「考え方や政治的な不一致が食い違うことを法的に同意することであり、我が国の法的な統一は保たれるべきだ」とした。

 しかし、テイラー・グリーン議員の主張に対する批判が、議会の両側から出されている。ロビン・パタスン大統領報道官は、同議員の分裂論は、「病的で分断的で不安をあおるものだ」とした。またミット・ロムニー元共和党大統領候補は、グリーン議員の主張は、「狂気の沙汰」だと語った。

 「我が国が分断することはありません」とロムニー元大統領候補は語った。「団結してこそ我が国は成り立っているのであって、分裂すれば我が国は崩壊します。」

 テイラー・グリーン議員は、常々ジョー・バイデン大統領政権を批判しており、今月(2月)上旬にも、バイデン大統領が年次一般教書演説を行った際に、バイデン大統領を激しく攻撃する発言を行い、見出しを飾っている。
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イーロン・マスク、2014年のウクライナ政権交代を「クーデター」と断じる

<記事原文 寺島先生推薦>

Elon Musk dubs 2014 Ukraine regime change a ‘coup’
The billionaire described Viktor Yanukovich’s election as ‘dodgy’ but said the coup was beyond question

億万長者(マスク)は、ヴィクトル・ヤヌコヴィチの選挙を「いかがわしい」と評したが、クーデターであることは疑いようがない、と述べた。

出典:RT

2023年2月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月8日




© AFP / Justin Sullivan

 TwitterのCEOであるイーロン・マスクは、2014年のウクライナの政権交代が「クーデター」であったことは「間違いない」と断言するツイートで、フォロワーを対極化させた。土曜日(2月25日)、この億万長者は、「選挙」(おそらくヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領を選出した2010年の投票を指していると思われる)は、「おそらくいかがわしい」ものだったが、その後のことは「本当にクーデターだった」とツイートした。

 このツイートは、ユーザー@KanekoaTheGreat*の投稿に対するもので、その投稿は、「なぜウクライナ危機は西欧の責任なのか」と題するシカゴ大学教授ジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)の一面の記事を紹介したものである。2014年に書かれたこの記事は、「プーチンを挑発したリベラル派の錯覚」という副題がついており、クリミアのロシアへの加盟は「ロシアの侵略」ではなく、「NATOの拡大」とウクライナ政治への西側の干渉が原因だと主張している。
※ジャーナリスト。一時Twitter上から追放されていたが、イーロン・マスクによりアカウントが復活した

 ミアシャイマーは、「プーチンにとって、ウクライナの民主的に選ばれた親ロシア派の大統領を違法に転覆させたこと(彼はこれを正しく『クーデター』と呼んだ)は、最後の一撃だった」と述べ、マスクも少なくとも部分的には同意しているようだ。



 2010年の選挙でヤヌコビッチが大統領に就任した際、欧州安全保障協力機構は民主主義の「印象的な見本」とみなしたが、2013年にEUとの経済協力協定を破棄したことで、欧米は「地域党」*の政治家であった同大統領に冷淡になった。
*地域党は、ウクライナの親ロ派の政党。ウクライナ東部のロシア系住民を主な支持基盤とし、親露的な外交政策を主張していた。

 その後、大規模な暴力デモが発生し、ヤヌコビッチは逃亡を余儀なくされた。この騒乱に米国が関与していたことは、当時、米国国務長官補佐官だったヴィクトリア・ヌーランドと駐ウクライナ米国大使ジェフリー・パイアットの間の流出した電話で確認され、ヤヌコーヴィチの打倒とアルセニー・ヤツェニク(ヤヌコーヴィチの失脚後に実際に一時首相になった)の就任を企んでいると思われた。

関連記事:マスク、ウクライナで「戦争を推進」する米政府高官を非難

 マスクはまた、カネコア(Kanekoa)が以前投稿した、All Inポッドキャストのホストであるデイビッド・サックス(David Sacks)が、米国がウクライナ紛争に「誘い込んでいる」と主張するビデオクリップを紹介する記事にも賛同の返信をしたことがある。このビデオでは、ヌーランドを、マスクがしばしは槍玉にあげているバイデン政権の元医療顧問アンソニー・ファウチと比較している。


 「ウイルスから私たちを守るはずだったファウチが、(ウイルスの)機能獲得研究のために資金を提供したのと同じように、外交の最高責任者としてロシアや東欧を重視する外交を展開するはずだったビクトリア・ヌーランドは、代わりに何をしたのか? この対立を煽ったのだ。どのように? 2014年のウクライナの反乱を我が国が支援することによってだ」とサックスはビデオの中で語っていたのだが、マスクはそれを「正しい評価」と表現した。
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この紛争では、どちら側にも軍事的勝利はありそうにない(米軍最高司令官)

<記事原文 寺島先生推薦>

No military winner likely in Ukraine conflict – top US general
Mark Milley talked to the FT after traveling to Brussels to coordinate NATO efforts on shoring up Kiev’s firepower.

マーク・ミリー米軍司令官は、キエフの戦力を強化するためのNATOとの調整でブリュッセルを訪れたが、その後にフィナンシャル・タイムズ紙に語った。

出典:RT

2023年2月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月5日

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昨年11月、ペンタゴンで記者会見を行うマーク・ミリー米統合参謀本部議長。© Getty Images / Alex Wong


 ウクライナ紛争は、交渉による和平交渉によってのみ終結することができると、マーク・ミリー米統合参謀本部議長は、木曜日(2月16日)に掲載されたフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで述べた。

 ミリー氏は「ロシアが軍事的手段で政治的目的を達成することは、ほとんど不可能である」「ロシアがウクライナを制圧することはありえない。それは起こり得ないことだ」とその見解の具体的な理由を示さずに述べた。また、「ウクライナが」モスクワ軍がすでに占領した領土の「隅から隅までを奪いかえすことは、今年の間には、非常に困難だ」とも付け加えた。

 アメリカ軍最高位の軍人は、今週初めにブリュッセルを訪れ、春の反攻作戦に向けたウクライナの戦力強化についてNATO同盟国との調整を行った後に、この意見を表明した。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は月曜日(2月6日)、キエフが西側同盟国の生産能力の「何倍もの」スピードで兵器を使い尽くしていると警告していた。


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関連記事:NATOはウクライナの弾薬消費量に警鐘を鳴らす


 ミリー氏は、弾薬の枯渇により、国防総省は武器在庫を見直し、支出を増やすことを検討しなければならなくなったと述べた。米国政府関係者は、数十年にわたり対テロ作戦や非従来型戦争に注力してきた供給量を再検討している。

 「この戦争の教訓の一つは、通常弾薬の消費率が非常に高いことであり、我々は、自分たちの在庫と計画が正しいかどうかを再検討している」とミリー氏はフィナンシャル・タイムズ紙に語った。「私たちは、真の必要量を見積もることができるよう、分析を試みています。弾薬は非常に高価なものだからです。」

 ペンタゴンの現在の年間予算は8,170億ドルで、世界の他の10大軍事支出国の合計を上回っている。ワシントンは、昨年2月にロシアの軍事作戦が始まって以来、ウクライナへの支援として、すでに1100億ドル以上を振り当てている。


関連記事:米国はウクライナの戦闘継続を望んでいる(ブリンケン米国務長官)


 フロリダ州のマット・ゲッツ下院議員やアリゾナ州のアンディ・ビッグス下院議員などの共和党議員は、ジョー・バイデン大統領の政権がウクライナ武装のために米国の武器備蓄を著しく枯渇させたと批判している。

 今週(2月第2週)初め、ミリー氏はブリュッセルで記者団に、ロシアはすでに負けたと語った。「彼らは、戦略的、作戦的、戦術的に負けており、戦場で莫大な代償を払っている」と述べた。


関連記事:米国はウクライナの戦闘継続を望んでいる(ブリンケン米国務長官)


 元米国防総省顧問のダグラス・マクレガー退役米陸軍大佐は、こうした主張がバイデン政権の信頼性を損ねていると指摘して、「ミリー将軍は、自分が左派と連携していること、またこの政権の一部であること、そして彼らが自分に言わせたいことは何でも言うつもりであることを明確にしている」と述べている。



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日本は、米国の「アジア基軸」に追従して自らの首を絞めるのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Is Japan Willing to Cut Its Own Throat in Sacrifice to the U.S. Pivot to Asia?

筆者:シンシア・チャン(Cynthia Chung)

出典:Strategic Culture

2023年2月3日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月4日

日本経済


日本経済に、ごく近い将来に待ち受けているものが何か、それを知るには、予言者や(占いの)水晶玉はいらない。日本は世界経済にとっての時限爆弾になっているのである。中国経済がこの先に終末を迎えるであろうという、いわゆる「専門家」による予言が10年近く続いており、この予言は経済分析というよりは希望的観測に近くなっている。

 この中国経済に関するメディアの轟音の中で聞こえないかもしれないが、日本経済には、そのごく近い将来に何が待ち受けているかを語るために預言者や(占いの)水晶玉は必要ない。つまり、日本が世界経済にとっての時限爆弾になっているということである。

 以下は日経アジア*の10月の報道だ。日本で「円安ドル高が進行し、1ドルが150円を超えるという32年ぶりの安値になったのは、日銀と米連邦準備制度理事会(FRB)の政策格差が拡大していることを受けてのことだ。・・・ 日銀は経済を支えるために金融超緩和策を続けているが、FRBはインフレに対処するために利上げを繰り返してきた。」
*日本経済新聞国際版。マルチデバイスメディア。

 「FRBのタカ派的な金融政策は、根強いインフレ予測に伴って、基準となる米国10年債の利回りを4%まで上昇させた。一方、日本銀行は10年もの国債利回りをゼロ近辺で維持し続けている。日本銀行は2日連続で国債買い入れオペを実施し、決められた範囲と目されている-0.25%から0.25%内に利回りを収めた。」

 「イールドギャップ(利回り差)が投資家に円ではなくドルでの投資を促し、日本の通貨に強い下落圧力を及ぼしている。」 (強調は筆者)

 これに対し、日本銀行(BOJ)は、「超低金利の金融政策」を維持することを決定し、黒田東彦総裁は、 「経済の下振れリスクを強調し、円安を容認する姿勢を示し」た。11月中旬には、インフレと円安が日本を襲い、日本経済が4半期ぶりに縮小したと報じられた。そして、「日本は極端な円高に苦しんだ歴史がある」と黒田は付け加え、たくましすぎる通貨よりも過度な円安の方が負担は軽いと述べた。

 11月中旬になると、日経アジアは 「日本銀行の超緩和政策でインフレ率が40年ぶりの高水準に迫っており」、10月の食品価格は前年比3.6%増と目標の2%を大きく上回ったと報じた。日銀の黒田総裁は、「日銀は金融緩和政策を持続させる意向だが、その目的は日本経済をしっかりと支え、それによって物価安定の目標である2%を持続的かつ安定的に達成することであり、その目的には賃上げも含まれている」と回答した。

 1月中旬までに日本は、2022年の年間貿易赤字が1550億米ドルとなり、過去最低を更新したと発表した。

グラフ


 これは日本経済にとって突然の結果ではなく、12年間かけてゆっくりと焦げ付いてきたものである。アレックス・クライナー(Alex Krainer)は次のように書いている。「その後12年間、これまで以上に大規模なQE(量的金融緩和政策)が数回行われたが、不均衡は悪化するばかりで、昨年2月には、日銀は「(ユーロを守るためには、)あらゆる措置を取る用意がある(all-that-it-takes)と語っていた元欧州中央銀行総裁のイタリアのマリオ・ドラギよろしく、日本国債を無制限に購入することを約束せざるを得なくなった。しかし同時に、日銀は国内の借入コストを膨らませないために10年もの国債の金利を0.25%に抑えた。 ... さて、暴走した政府債務をやりくりするために通貨を無限に生み出し、金利を市場レベル以下に抑えたら、確実に通貨は吹き飛ぶ。」

 この日本経済の展開と無関係ではないのが、この11月に東京で開催された「日米欧三極委員会」の50周年記念会議である。
三極委員会は、1973年のウォーターゲート事件と石油危機を契機に設立された。「民主主義の危機」に対処し、より「安定した」国際秩序と地域間の「協力」関係を形成するために、政治システムの再構築を呼びかけるという建前で結成されたのであった。

 アレックス・クライナーはこう書いている

 「委員会は1973年7月にデービッド・ロックフェラー、ズビグニュー・ブレジンスキー、アラン・グリーンスパン、ポール・ボルカーを含むアメリカやヨーロッパ、日本の、銀行家、公務員、学者のグループによって共同設立された。これは、今日の西側帝国の3ブロック構造を構成する国家間の緊密な協力を促進するために設立されたものである。その“緊密な協力”は、かつて繁栄していた大英帝国の手のものたちが策定した帝国の“3ブロック計画”のまさに基礎となるものであった。」

 その設立は、アメリカにおけるイギリスの手先である外交問題評議会(別名:イギリス王室の主要なシンクタンクである王立国際問題研究所を母体とする組織)によって組織されることになる。

 プロジェクト・デモクラシーは、1975年5月31日に京都で開催された三極委員会の会議「民主主義国家の統治能力に関する特別委員会」に端を発するものである。この事業は、三極委員会のズビグニュー・ブレジンスキー理事、ジェームス・シュレジンジャー(元CIA長官)、サミュエル・P・ハンティントンによって差配されていた。

 このプロジェクトは、「終わりの始まり」を告げるものであり、「社会の管理的な崩壊」を誘発するための「政策」、あるいはより適切な言い方をすればそのための「基本的な考え方(イデオロギイ)」を導入するものだった。

 しかし、この三極委員会の一部の参加者は、米国、西ヨーロッパ、日本による地域再編のための同盟(国際連盟のようなもの)の目的が、彼らが単純に考えていたものとは違うこと、つまり、競合する国々の経済の崩壊だけでなく、自分たちの国の経済(の崩壊)も含まれるということに気付き始めているようだ。

 つまり、競合する国々の経済だけでなく、自分たちの国の経済も含めて崩壊させるということ、そして最終的には、すべての人が新しい世界帝国のトップに跪き、従属することが期待されるのである。今回の三極委員会の出席者の一人は、「世界の重要な出来事はすべて三極委員会によって事前に決定されていると言う人もいる」と冗談を言い、ベテラン出席者の笑いを誘っていた。しかし、「我々は、誰がその決定過程に入っていて、その人たちが何を言っているかは分からない」とも語っていた。

 興味深いことに、日経アジア社から3名の記者が招待され、三極委員会50周年記念の会合に初めて報道陣の立ち入りが許可された。会議は、ラーム・エマヌエル駐日米国大使のスピーチから始まった。タイトルは、「民主主義 対 独裁主義: あなたは2022年を民主主義の成功の転換点として見ることになる」というものだった。

 興味深いことに、アジア諸国の代表者たちは、あまりよい印象をもたなかったようだ。

日経アジアは報じた「...報道関係者は、アジアと組織のその他の勢力の間に生じているかもしれない軋轢を強調するために招待されたのだ。『アジア、特に中国に対する米国の政策は、狭量で頑なな精神を持っていると感じている。私達はアメリカの人々にアジアには様々な見方があることを分かって欲しい」 と三極委員会の代表理事である池田祐久氏は述べた。池田氏は次期アジア太平洋グループ局長に指名され、来春に就任する予定である。

 ...アジア太平洋グループからは、今、新たな空気が生まれつつある。適切な舵取りをしなければ、米中対立は世界を危険な対立に導くかもしれない。」(強調は筆者)

 ラーム・エマヌエル駐日米国大使が、民主主義は 「ずさん」で 「厄介」だが、「民主的プロセスの制度や、米国・NATO・欧州諸国の政治的安定は保たれている」 と述べたことが引用された。

 しかし、エマヌエルの親米、親NATO、反中国という姿勢に異を唱える出席者も少なくなかった。「大使は何を言っているのだ」 と、日本の元官僚は非公式に語った。「中国を巻き込まなければならない。もしどちらかを選べと言われたら、東南アジアの国々は中国を選ぶだろう。重要なのは、無理に選ばせないことだ」と語った。

 日本の元財務官僚は、「今回の会議に中国の参加が全くないのを見ると、非常に恥ずかしいし、残念に思う」と述べた。フィリピンからのベテランの参加者も「アジア最大の国の参加なしにアジアを語る意味はない」と同意し、世界を2つの陣営に分けることに懸念を表明した。「2頭のゾウが戦えば、アリが踏みつぶされる。そして、私たちはそれを実感している。2頭のゾウが死ぬまで戦うと、私たちは皆死んでしまう。そして、問題は、何のために戦うのか?ということである。」(強調は筆者)

 韓国のある教授は、質疑応答の時間にエマヌエルに対し、米国の対中外交におけるゼロサム思考*について、アジアでは懸念があると述べた。「我々は、志を同じくしない国々を説得し、巻き込むために、何らかの実現可能な戦略を練らなければならない」 と。
*一方が利益を得たならば、もう一方は同じだけの損をし、全体としてはプラスマイナスゼロになることをいう。


 日経アジアはまた以下のように報じている。「ワシントンが提唱する自由主義的な国際秩序が、第二次世界大戦後に形成された本来の自由主義的な秩序といかに異なるかを指摘する参加者もいた。米国が主導した本来の秩序は、民主主義圏の多国間機関と自由貿易に基づく多面的で広範な国際システムを求めていた」と韓国の学者が述べている。「北朝鮮の核兵器に関する6者協議は、そのような本来の秩序の一例であり、米国、中国、ロシアがテーブルについたと、その学者は述べている。」(強調は筆者)

 日経アジアは、三極委員会のベテランである元フィリピン閣僚が、ポーランドでのミサイル爆発について、「この1週間で、我々は核紛争へと舵を切った」と述べたことを最後に紹介している。なおこのミサイル爆発は、当初ロシア製のミサイルだと考えられていたが、ウクライナの対空ミサイルがNATO加盟国領内に、「誤って」着弾したものである可能性の方が高いことが後にわかっている。「そしてその方向へと舵が切られたのは、我々年長者がゼロサムゲームのような馬鹿げたゲームに興じているからだ。自分たちの未来はこれでいいのか? 皆が崖に追いやられているのに、強硬な姿勢を取って、ゼロサムゲームのせいでこの星が消滅の危機にあることに気づいていない。こんな未来予想図を誰が望むというのか? 気候変動の話どころではないのだ」 とこのベテランの参加者は語っている。

 「民主主義の危機」に対する日本の 「ショック療法」

 三極委員会は非政府組織であり、そのメンバーには世界各地の選挙で選ばれた者、選ばれていない者が含まれ、皮肉にも最も非民主的な方法で選ばれたそんな人々が集まって、「民主主義の危機」に対処する方法を議論している。つまりこの委員会は、国民が誰を政治家に選んだかなど考慮しない、メンバーの「利益」を守るための組織である。

 1978年11月9日、三極委員会のメンバーであるポール・ボルカー(1979年から1987年まで連邦準備制度理事会議長)は、イギリスのウォーリック大学での講演で次のように断言することになる。「世界経済の統制された崩壊は、1980年代の正当な目的である」。これは、ミルトン・フリードマンの「ショック療法」を形づくった基本的考え方(イデオロギー)でもある。ジミー・カーター政権の頃には、政府の大部分が三極委員会のメンバーによって運営されていた。

 1975年、外交問題評議会(CFR)は「1980年代の事業」と題する世界政策の公開研究を開始した。そのテーマは、世界経済の「制御された崩壊」であり、その政策が世界のほとんどの人々にもたらす飢餓、社会的混乱、死を隠そうとしもなかった。

 その内容は、世界の金融・経済システムの全面的な見直しが必要であり、エネルギー、信用供与、食糧などの主要部門は、単一の世界政府の管理下に置かれるというものであった。この再編成の目的は、主権国家を廃することである(国際連盟モデルを使用)。

 このショック療法は、リチャード・ヴェルナーの著書を基にしたドキュメンタリー映画『円の王子たち(Princes of Yen)』で紹介されているように、過去40年間に日本経済に起こったことであり、まさに実証的なものである。ヴェルナーが示すように、日本経済は外国からの干渉を受ける前は世界でもトップクラスの経済実績を誇っていたにもかかわらず、大規模な構造改革を推進するために、80年代と90年代を通じて意図的に複数の経済危機を経験させられたのだ。

 ヴェルナーの言葉通り、危機を創造する最善の方法はバブルを作り出すことであり、そうすれば誰もそれを止めることはできない。

 この事がいかに重要であるかを理解するためには、40年以上にわたって日本経済に起こったことを簡単に振り返ってみる必要がある。

 「自由貿易」という祭壇の上で日本が神々に捧げたもの

 1980年代、日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国であり、米国を含む欧米向けの消費者向け技術製品の製造では指導者的存在であった。日本は自動化装置や製造工程への投資により、米国よりも早く、安く、品質も優れた製品を生産することができた。

 その一例が、メモリーチップ*のDRAM**市場における日米両国間の競争である。1985年、アメリカのコンピューター市場が不況に陥り、インテル社も10年来で最大の落ち込みを経験していた。1985年の不況は、需要の問題であり、競争の問題ではなかったにもかかわらず、アメリカのある方面から、日本は「略奪的」「不公正」な貿易慣行を行っていると批判されるようになった。
*データー保存のための集積回路
**「ディーラム」。 PCなどに使われる半導体の記憶装置


 そこで、自由市場主義を標榜するレーガン大統領は、1986年春、経済産業省との間で「日米半導体協定」を強行した。

 この協定の条件は、日本市場におけるアメリカの半導体シェアを5年後に20〜30%に引き上げること、すべての日本企業がアメリカ市場への「ダンピング(投げ売り)」をやめること、そしてアメリカ側は、これらすべてを実施するための別の監視機関を求めることであった。

 当然のことながら、日本企業はこの条件を拒否し、経済産業省も日本企業に、この条件を強制する術を持たなかった。

 レーガン大統領はこれに対し、1987年4月に3億ドル相当の日本製品に100%の関税を課した。日米半導体協定は、1985年のプラザ合意による円高と相まって、米国のメモリー・チップ市場に追い風となった。(米国が日本の半導体市場に干渉した経緯は、こちらを参照。)

 1985年、日本、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカの5カ国で締結された「プラザ合意」。この協定は、アメリカの輸出競争力を高めるために、日本円とドイツマルクに対して米ドルを切り下げたものである。いかにも「自由市場」である。(ドゴールとアデナウアーが欧州通貨体制を作ろうとしたが、英米に妨害された話はこちらを参照。)プラザ合意から2年間で、ドルは円に対して51%も価値を失った。日本は、自国の商品に関税をかけられ、アメリカ市場から締め出されるのを避けるために、プラザ合意に参加したのである。

グラフ 2つ目


 円高は、日本の製造業を不況に陥れた。これを受けて、日銀は金融緩和を行い、金利を引き下げた。この安い金利は、生産にむけた努力に使われるはずであった。しかし、そのお金は株式や不動産、資産運用に使われた。このとき、日本の不動産と株式の価格はピークに達した。

 1985年から1989年にかけて、日本の株式価格は240%、地価は245%上昇した。80年代の終わりには、東京の中心部にある皇居の周りの庭園の価値は、カリフォルニア州全体と同じくらいになった。

 日本はアメリカの26分の1の面積しかないのに、土地の価値はその4倍もあった。東京23区のうち、千代田区の時価総額はカナダ全土を上回った。

 資産や株価がどんどん上がり、伝統的な製造業も株式相場の誘惑に抗えなかった。そのため、金融部門や財務部門を充実させ、自らも投機に手を染めるようになった。日産自動車など多くの大手メーカーは、自動車を製造するよりも投機的な投資で多くの利益を得るようになった。

 ドキュメンタリー映画『円の王子たち(Princes of Yen)』はこう説明している。「日本経済の好景気は、生産性の高さと上昇に原因があると多くの人が信じていた。だが実際には、1980年代の日本の輝かしい業績は、経営手法とはほとんど関係がない。窓口指導*は、信用を制限し誘導するために使われたのではなく、巨大なバブルを生み出すために使われた。銀行に貸し出しを大幅に増やさせたのは日銀だったのだ。日銀は、銀行が融資枠を満たすためには、非生産的な融資を拡大するしかないことを知っていたのだ」。
* 日本銀行が取引先金融機関の貸出しを,景気動向などそのときどきの金融情勢に応じて適正な規模にとどめるため,貸出し増加の枠を指示し,それを守らせるように指導すること。(コトバンク)

 1986年から1989年にかけて、福井俊彦は日本銀行の総務局長を務め、後に第29代日銀総裁に就任するが、総務局長は、窓口指導枠を担当する部署である。

 福井は、 ある記者から 「借入金がどんどん拡大しているが、銀行融資の蛇口を閉めるつもりはないのか?」と聞かれたとき、記者の質問に対してこう答えた。「金融緩和の一貫した政策が続いているので、銀行融資の量的統制は自己矛盾を引き起こすことになる。従って、量的引き締めは考えていない。経済の構造調整がかなり長期にわたって行われている中で、国際的な不均衡に対処している。それを支えるのが金融政策であり、金融緩和をできるだけ長く続ける責任がある。したがって、銀行融資が拡大するのは当然である。」

 日本では、民間の土地資産総額は1969年の14.2兆円から、1989年には2000兆円まで増加した。

 ドキュメンタリー映画『円の王子(Princes of Yen)』が伝えている。「1989年、第26代日銀総裁に就任した最初の記者会見で、三重野康は『これまでの金融緩和政策が地価上昇問題を引き起こしたので、今後は不動産関連の融資を制限する」と発言した』。三重野は、貧富の差を拡大させた原因であるこの愚かな金融政策に歯止めをかけた英雄として、マスコミでもてはやされた。しかし、三重野はバブル期の(日銀の)副総裁であり、バブルを作り出した張本人でもあった。

 突然、土地や資産価格が上がらなくなる。1990年だけで株式市場は32%下落した。そして、1991年7月、窓口指導が廃止された。銀行は、99兆円のバブル融資の大半が不調に終わることを知り、恐怖のあまり、投機筋への融資を止めるだけでなく、それ以外の人への融資も制限した。500万人以上の日本人が職を失い、他に職が見つからなくなった。20歳から44歳までの男性の死因の第1位は自殺であった。

 1990年から2003年の間に、21万2千社が倒産した。同期間に株式市場は80%下落した。大都市の地価は最大で84%下落した。一方、日本銀行の三重野総裁は、『この不況のおかげで、誰もが経済改革の必要性を意識するようになった』 と述べた。」

 1992年から2002年にかけて、146兆円規模の景気対策が10回行われた。政府支出によって内需を拡大し、その後、外需も拡大するという考え方であった。10年間、政府はこの方法を実行し、政府債務を歴史的なレベルまで増加させた。

 リチャード・ヴェルナーは「政府は右手で支出して経済に資金を投入したが、資金調達は債券市場を通じて行われたため、左手で同じ資金を経済から取り出していた」と述べている。「購買力の総量は増えず、だから政府の支出は影響を与えることができなかった」 。

 2011年には、日本の政府債務はGDPの230%に達し、世界一となる。財務省は万策尽きた。(日銀の怠慢が明らかであるにもかかわらず)評論家は、財務省に責任があるとする見方や、不況の原因は日本の経済体制にあるとする声に耳を傾けるようになった。

 日本では、当局と日銀は、ほぼその20年後に欧米列強がそうしたように、納税者がそのツケを払うべきであると主張した。しかし、納税者は銀行問題の責任を負っていない。したがって、そうした政策はモラルハザード*を引き起こした(ここで言うモラルハザードの意味は、経済主体がその危険の費用を全て負担しないために、危険にさらされる恐れが増大する状況のことである)。
*「倫理観が危ういこと」。倫理観の欠如や道徳的な節度がないこと。

 ドキュメンタリー映画『円の王子(Princes of Yen)』によると、塩川正十郎財務相は日本銀行に、デフレを食い止める、あるいは少なくともデフレと闘う手助けをしてほしいと頼んだという。ところが、日本銀行は、大蔵大臣や総理大臣が、景気を刺激して長い不況を終わらせるためにもっとお金を作れという政府の要請を一貫して無視し続けた。時には、日銀は経済界に流通するお金の量を積極的に減らし、それが不況を悪化させたことさえあった。日銀の主張は、いつも同じ結論、つまり日本の経済構造に原因があるというものであった。 

 また、あらゆる年代層の日本の経済学者が米国に派遣され、米国式経済学の博士号やMBA(経営学修士)を取得したことも特筆すべき点である。新古典派経済学は、株主と中央銀行が支配する完全な自由市場という一種類の経済システムしか想定していないため、多くの日本の経済学者はすぐに米国の経済学者の主張を繰り返すようになった。

 1990年代後半になると、日本経済は崖っぷちに立たされた。この時期に日米交渉の「交渉人」を務めたアイラ・シャピロは、「生命保険・損害保険の大企業と大蔵官僚の凝り固まった利益を克服するためには、まずは規制緩和が必要だ」と 述べている

 シャピロの連邦主義協会の経歴ページには、「北米自由貿易協定(NAFTA)や、多国間ウルグアイ・ラウンドの交渉と立法承認において中心的役割を担った。ウルグアイ・ランドは、世界貿易機関(WTO)と現在の貿易ルールを作り出した」 と記されている

 この日米協議は、米国が決めた期限までに合意に達する必要があった。もし、期限を過ぎても合意が得られない場合、米国は貿易制裁を科すと脅していた。

 リチャード・ヴェルナーは、シャピロの要求が日本側にどのような結果をもたらすかを 明らかにした。不動産の証券化は推進されているが、有意義な証券化を行うためには規制緩和が必要であり、規制緩和を行うためには大蔵省の権限を縮小しなければならない。そのためには大蔵省の力を削ぐ必要があり、そうすると大蔵省の管轄下にあった日銀が力を持つことになる。

 1990年代半ば以降、政府は大蔵省の権力構造の大部分を解体し始めた。一方、日本銀行は、その影響力を大きく拡大した。日銀は大蔵省から切り離され、ほぼ独立した存在となった。

 三重野康は、1994年に日銀総裁を退任した直後から、各種団体や利益団体で講演を行うなど、活動を開始した。日銀法を改正してほしい、と陳情した。大蔵省が日銀を間違った政策に走らせたということを、さりげなく指摘するのである 。このような問題を将来起こさないためには、日銀に完全な法的独立性を持たせる必要がある。

 1998年、金融政策は新たに独立した日本銀行の手に委ねられた。

 2001年初頭、新しいタイプの政治家が政権を握った。小泉純一郎が日本の首相になったのである。その人気と政策から、彼はしばしばマーガレット・サッチャーやロナルド・レーガンと比較される。彼のメッセージは、「構造改革なくして景気回復なし」である。

 ドキュメンタリー映画『円の王子(Princes of Yen)』はこう言った。2001年、日本では毎日のようにテレビで「構造改革なくして経済成長なし」というメッセージが流されていた。日本は米国型の市場経済に移行しつつあり、それは経済の中心が銀行から株式市場に移りつつあることも意味していた。預金者の資金を銀行からリスクの高い株式市場へと誘導するため、改革派は銀行預金の保証を取りやめる一方、株式投資に対する税制優遇措置を講じた。

 米国型の株主資本主義が浸透するにつれ、失業率は大幅に上昇し、所得と貧富の格差が拡大し、自殺や暴力犯罪も増加した。そして2002年、日銀は銀行のバランスシート(総資産)を悪化させる努力を強化し、銀行に債務者の差し押さえをさせた。竹中平蔵(新金融担当大臣)は、債務者の差し押さえを増やす日銀の計画を支持した。東京の有名な経済学者、森永卓郎は、日銀に刺激されて作った竹中の提案は多くのこれまでの国内の受益者ではなく、不良資産の買い取りにおいて主に米国のハゲタカ・ファンドが利益を得ることになると力説している。 福井俊彦が破綻処理案への支持を表明したとき、福井はウォール街の投資会社ゴールドマン・サックスの顧問であり、世界最大のハゲタカ・ファンドの運用者の一人であった。

 リチャード・ヴェルナーはこう 発言している。「福井俊彦(第29代日銀総裁)、その師匠の三重野(第26代日銀総裁)、その師匠の前川春男(第24代日銀総裁)、お察しの通り、この本に書かれている「円の王子様」たちです。彼らは80年代から90年代にかけて、『金融政策の目的は何か? それは経済構造を変えることだ』と公言してきた。では、どうすればいいのか?それには危機が必要です。経済構造を変えるために危機を作ったのです」。

 日銀の窓口指導枠を担当する部署は、銀行局と呼ばれていた。1986年から1989年まで、そのトップにいたのが福井俊彦である。つまり、福井はバブルを直接的に作り出したのである。福井は日銀総裁になった時、「高度成長モデルを壊しながら、新しい時代に合ったモデルを作っていく」と言っていた

 リチャード・ヴェルナーはこう述べた。「彼らはあらゆる面で成功した。彼らの目標のリストを見ると、大蔵省を破壊し、解体し、独立した監督機関を持ち、日銀法を改正して日銀自体の独立性を確保し、製造業からサービス業への移行、開放、規制緩和、自由化、民営化など、経済の深い構造変化を実現する。」とある。

[第2部では、タイガー・エコノミーのアジア危機、アメリカの2008年の経済崩壊、欧州債務危機の原因は何か、また、今日の世界経済と地政学的状況を形成する安倍晋三の暗殺との関連性について議論します。
 著者の連絡先は、https://cynthiachung.substack.com.]。
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いかにしてアメリカは「ノルド・ストリーム・パイプライン」を破壊したか(セイモア・ハーシュ)

<記事原文 寺島先生推薦>

How America Took Out The Nord Stream Pipeline

The New York Times called it a “mystery,” but the United States executed a covert sea operation that was kept secret—until now

ニューヨーク・タイムズはこの事件は「謎である」と報じているが、米国は秘密の海中作戦を実行した。そしてその秘密は守られてきた。今に至るまで。

筆者:セイモア・ハーシュ(Seymour Hersh)

出典:サブスタック(Substack)

2023年2月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月3日




 米海軍の「潜水・救援センター」は、その名と同様、設置場所もあまり馴染みがないところにある。かつては田舎町だったフロリダ州パナマ市内の田舎道だった通りに位置している。今パナマ市は、フロリダ州の東南部のパンハンドル(各州の領域のなかで他州との境がフライパンの取っ手のように突出した地域)にあるアラバマ州との州境から70マイル南に位置する新しい保養地として脚光を浴びている。

 そしてこのセンターの本部の建物は、その所在地と同様ごく普通だ。その建物は、第二次世界大戦後に建てられたくすんだコンクリート製の建物で、一見シカゴの西側にある専門高校にようなたたずまいだ。コインランドリーとダンス教室が、今は片側2車線ある通りを挟んだ向かい側にある。

 このセンターでは何十年もの間、高い技術をもった深水にもぐる潜水士たちに訓練を施してきた。これらの潜水士たちは、世界中の米軍部隊での任務を果たしてきた人々であり、高い潜水技術を有し、善をなすことができる能力がある人々だ。たとえばC4爆弾を使用して、港や海岸からがれきや不発弾を除去するような行為だ。ただし悪事を働くことも可能だ。例えば、外国の石油採掘装置を爆破したり、海中発電所の吸入バルブを詰まらせたり、重要な運河の閘 (こう)門を破壊する行為などだ。パナマ市センターは、米国で2番目に大きなプールを所持していることを自慢しているが、もっとも優秀で、口が固く、潜水士の学校の卒業生である人々を採用するのにもっとも適した施設だった。そしてこのセンターから採用された人々が、昨年夏に成功裏にことを成し遂げたのだった。その任務とは、バルト海の海面下260フィート(約80メートル)で行われたあの作戦だった。

 昨年6月、海軍の潜水士たちは、「BALTOP22」演習という名で知られているNATOの夏季の軍事演習を隠れ蓑として工作活動を行ったのだ。その際彼らは、遠隔装置により発弾できる爆弾をしかけていたのだ。そしてその爆発は、3か月後に実行された。その爆発により、4本あるノルド・ストリームというパイプラインのうち3本が破壊されたことを、この工作の計画を直接知る情報筋が明らかにしている。

 4本のうちの2本は、2本合わせてノルド・ストリーム1という名で知られているが、このパイプラインは、ドイツと他の多くの西欧諸国に安価なロシアの天然ガスをもう10年以上供給してきたものである。のこり2本のパイプラインは、ノルド・ストリーム2という名で呼ばれていて、その当時は建築中で、稼働は始まっていなかった。当時は、ロシア軍が大規模な軍をウクライナ国境に送り込み、1945年以来欧州で最も血なまぐさい戦争が勃発しそうになっている状況下であり、ジョセフ・バイデン大統領には、これらのパイプラインは、ウラジミール・プーチンが、天然ガスを武器として用い、自身の政治的及び領土的野心を満たす手段であるかのように映っていた。

 コメントを求められたエイドリアン・ワトソン大統領報道官はメールでこう回答している。「(米国がパイプライン爆破を行ったという)こんな話は間違いで、架空の話です」と。CIAのタミー・ソース報道官も、同様にこう記している。「こんな主張は全くの間違いです。」

 バイデンがこれらのパイプラインを破壊することを決めたのは、9ヶ月以上に及ぶワシントンの国家安全保障会議内での行ったり来たりの議論を経てのことだった。その目的を達成する最善策が練られていたのだ。当時の議論のほとんどは、その任務をするかしないかではなく、どうすれば誰が実行したのかの手がかりを残すことなくやってのけるかについてだった。

 パナマ市にあるこの潜水士学校を出た、高い技術を有する卒業生たちにこの任務を委託することには、重要な官僚的理由があった。それは、この潜水士たちが皆、海軍に所属していて、米軍特殊作戦司令部所属ではなかったことだ。後者であれば、その秘密作戦は議会に報告し、上院と下院の高い地位にある人々(いわゆる八人衆)に予め知らせなければならない。バイデン政権は、2021年下旬から2022年初旬にかけて練られていたこの計画が漏洩しないよう、細心の注意を払っていた。

 バイデン大統領とその外交政策検討団であるジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官、トニー・ブリンケン国務長官、ビクトリア・ヌーランド国務次官(政治担当)は、この2本のパイプラインに対する敵意をずっと声にしていた。このパイプラインは、バルト海海中750マイル(約1200km)の長さがあり、エストニアとの国境付近にあるロシア北東部の2箇所の港にそれぞれ端を発し、デンマークのボーンホルム島を通って、ドイツ北部にまで連なっている。

 このロシアからの直接経路があることで、ウクライナを経由しなくて済み、ドイツ経済は恩恵を受け、ロシアの安価な天然ガスを豊富に入手することで自国の諸工場を運営し、各家庭の暖房を賄い、余剰分を西側諸国に売ることでドイツは大きな利益を得ている。であるので、この破壊工作に米国政府が関わった手がかりを残してしまうと、「ロシアとの対立を最小限に抑える」という米国がドイツと交わした約束に背くことになってしまう。機密を守ることが重要たる所以だ。

 完成当初から、ノルド・ストリーム1は、ワシントンや反ロシアの立場を取っている他のNATO諸国からは、西側による世界支配を脅かす存在であると捉えられてきた。ノルド・ストリームを支える持株会社は、ノルド・ストリームAG社であるが、この会社は、2005年にスイスでガスプロム社と提携関係を結んだ。このガスプロム社は、ロシア政府公認のロシアのガス貿易業社であり、株主たちに巨額の利益を齎(もたら)している会社だ。この会社を支配しているのは、プーチンの配下にあることで知られている新興財閥たちだ。ガスプロム社はこの会社の51%の株を所有しており、残りの41%は、欧州の4企業(フランスの1社、オランダの1社、ドイツの2社)と共有していて、安価な天然ガスをドイツや西欧諸国の分配業社へ販売する権利を持っている。ガスプロム社が得る利益はロシア政府と共有されていて、天然ガスや石油で得られる利益が、ロシアの年間予算の45%をも占める年も何年かあった。

 米国の政治的な恐怖は現実的となった。プーチンにとっては、切望していた付加的な収入源を得ることになり、ドイツやその他の西欧諸国もロシアが供給する低価格の天然ガスに依存するようなり、欧州諸国の米国への依存が消えてしまうと考えられていた。実際、まさにその通りになったのだ。ドイツ人の多くはノルド・ストリーム1を、ヴィリー・ブラント元西独首相が唱えていた「東方外交政策(Ostpolitik theory)」の努力の成果の一つだとみていた。様々な取り組みの中でも、この東方外交政策こそが、第二次大戦後、破壊されていたドイツや他の欧州諸国の復興を可能にさせた政策だったのだ。つまり、安価なロシアの天然ガスを使うことで、西欧市場や貿易経済を繁栄させるという構想だ。

 NATOやワシントンの視点からすれば、ノルド・ストリーム1は非常に危険なものであったが、2021年9月に建築が完成されたノルド・ストリーム2は、ドイツ当局が承認すれば、ドイツや西欧諸国に提供される天然ガスの量を二倍にすると考えられていた。さらにこの2つめのパイプラインができれば、ドイツの天然ガス消費量の5割以上を賄えるようになると考えられていた。ロシアとNATO間の緊張関係は、バイデン政権の侵略的な外交政策に裏打ちされて、悪化の一途をたどっていた。

 ノルド・ストリーム2を阻止しようという動きは、2021年1月にバイデンが大統領職に就いたすぐ後から燃えさかった。当時、テキサス州選出テッド・クルーズ議員が率いる共和党上院議員団が、ブリンケン国務長官に対する公聴会でロシアの安価な天然ガスについて繰り返し警告を発していた。そのときまでには、上院議員の一団がある法案の通過に成功した。その法案は、クルーズ議員がブリンケン国務長官に言った言葉を借りれば、「(パイプラインを)軌道内で阻止した」法案だった。このことについては、当時アンゲラ・メルケル首相下のドイツ政府から、二つ目のパイプラインを稼働させるべく政治的および経済的な強力な圧力がかかることが予想された。

 バイデンはドイツを抑えることができるだろうか? ブリンケンは、「できる」としたが、次期大統領のバイデンがこの件についてどう考えているかについての話し合いを持てていないとも語った。「バイデン次期大統領は、このことは良くないと捉えていることは認識しています。ノルド・ストリーム2のことです。」とブリンケンは語っていた。「私の認識では、バイデン次期大統領は使えるすべての手段を用いて、このパイプラインを利用することに前向きにならないよう、友好諸国を説き伏せる意図を持っておられるようです。」

 その数ヶ月後、二つ目のパイプラインが完成に近づく中、バイデンは急に目を開いた。その5月、驚くべき方向転換だったのだが、バイデン政権はノルド・ストリームAG社への制裁を解除し、国務省当局は、制裁と外交によりパイプラインを止めようとしてきたことが、「実現の望みが常にもてない取り組みであった」ことを認めた。報道によると、行政当局者たちは、密かにロシアからの侵略を受ける危険に直面していたウクライナのヴォロデミール・ゼレンスキー大統領に、米国によるこの動きを批判しないよう促していた。

 この動きに対してすぐに反応があった。クルーズ議員が率いている共和党員の一団が、バイデンが決めた外交政策担当者をすべて否認し、防衛費の年間予算案の通過を秋下旬まで遅延させたのだ。後日、ポリティコ誌は、バイデンによるロシアの二つ目のパイプラインに対するこの急展開は、「アフガニスタンからの米軍撤兵という混乱状態よりもさらにひどい決定であるといえる。この決定によりバイデン政権の政策運営は大きな損害を受けることになった」と報じた。

 11月中旬に、ドイツのエネルギー規制当局がノルド・ストリーム2の承認を保留にしたことにより、この危機は緩和されつつあったが、バイデン政権は危機を迎えていた。天然ガスの価格は数日のうちに8%急上昇した。それはドイツや欧州諸国がパイプラインからの供給が保留になることや、ロシアとウクライナ間の戦争が勃発することで、誰も望んでいない冷たい冬を迎えねばならなくなることを懸念してのことだった。ワシントンからは、オラフ・ショルツ独新首相がどんな立ち位置をとるのかが不明瞭だった。その数ヶ月前、アフガニスタンから米軍が引き上げた後、シュルツはフランスのエマニュエル・マクロン大統領の呼びかけに応じていた。マクロンは、プラハでの演説で、欧州諸国がもっと自発的な態度を取るように呼びかけていたのだ。それははっきりと、米国当局や、米国の気まぐれな動きに対する依存から距離を取るよう示唆する内容だった。

 これら全ての状況の中で、ロシア軍はウクライナ国境付近に確実に、そして不気味に軍を配置しており、12月下旬には、10万以上の兵がベラルーシやクリミアから攻撃できる態勢が取られていた。ワシントンからの警戒はどんどん強められ、ブリンケンからは、兵の数は「すぐにでも倍増される」可能性があるとの見通しが出されていた。

 米国政府の関心は再びノルド・ストリームに集まった。欧州諸国が安価な天然ガスを供給するパイプラインへの依存を続ければ、ドイツなどの国々がウクライナに、ロシアを敗北させるために必要な資金や武器の提供に後ろ向きになるのでは、という危惧をワシントンは持っていた。

 まさにこの不安定な時期に、バイデン政権は、ジェイク・サリバンに省庁間の対策部隊を招集し、一つの計画を立てることを認可したのだ。

 すべての選択肢が話し合いのまな板に置かれていたが、浮上した計画はたった一つだった。


計画段階

 2021年12月、ロシアの戦車が初めてウクライナに潜入する2ヶ月前に、ジェイク・サリバンは新たに設置された対策委員会を招集した。この対策委員会には、統合参謀本部、CIA、国務省、財務省からの男女が参加していた。そしてこの委員会は、差し迫っていたプーチンによる侵略にどう対応するかについての提言を行うことが求められていた。

 この会議はこれ以降続けられた一連の極秘会議の最初の会議と目されており、ホワイトハウスに隣接している 旧行政府ビルの最上階の安全な一室で開かれた。なおこのビルには、大統領情報諮問委員会 (PFIAB)の本部も置かれている。いつものたわいのないやりとりの後で、最終的には非常に重要な問題にぶち当たった。それは「この対策委員会が大統領に対して出す提言は、取り返しがつくような行為(例えば制裁や現在取られている制裁を強化するなど)でいいのか、それとも、取り返しがつかないもの、つまり元に戻せないような動的な行為が求められているのか?」という点だった。

 この作戦の過程に直接関わっていた情報源によれば、出席者たちにとって明らかになったことは、サリバンがこの対策委員会に求めていたのは、2つのノルド・ストリームの破壊計画を思いつくことだったという事実と、サリバンが、大統領の意図を受けていたという事実だった。


主要人物たち。左からビクトリア・ヌーランド、アンソニー・ブリンケン、ジェイク・サリバン

 その後の数回の会議で出席者たちが話し合ったのは、攻撃する方法についての選択肢についてだった。海軍の提案は、新たに発注された潜水艦を使って、 パイプラインを直接破壊することだった。空軍の案では遠隔操作できる遅延ヒューズを用いた爆弾を投下することだった。 CIAの主張は、やり方はどうあれ、すべては隠密に進めるべきだというものだった。関わっていた全ての人々がことの重大さを認識していた。「これは児戯ではありません」とこの情報源は語っていた。この攻撃の発生源が米国であることが突き止められれば、「戦争行為と見なされます。」

 当時、CIAの長官はウイリアム・バーンズだった。この人物は元駐ロシア大使である穏健派で、オバマ政権下では国務副長官をつとめていた。バーンズはすぐにCIA関係委員会の参加を承認したのだが、その委員会の特別委員の中に、たまたま、パナマ市の海軍の深水潜水士たちがもつ能力に詳しい人がいた。その後の数週間かけて、CIAのこの関係委員会がとある秘密作戦の考察を開始し、深水潜水士たちを使ってパイプライン沿いで爆発を起こさせる計画を練ったのだ。

 このような作戦は以前にも行われていた。1971年、米国諜報機関が未だに明らかにされていない情報源から、ロシア海軍の2つの重要な部隊が、ロシアの極東にあるオホーツク海中に埋められた海中ケーブルを通じて情報のやりとりをしているという事実を知らされた。このケーブルは、当該地域の海軍の司令官とウラジオストックのロシア本土の本部とを結ぶものだった。

 CIAとNSA(国家安全保障局)の工作員たちから精選された一団が、ワシントン州内のある箇所に極秘裏に集められ、海軍の潜水士たち、改造潜水艦、深海救難艇を使ったある計画に取り組み、試行錯誤の末、そのロシアのケーブの居場所を特定することに成功した。潜水士たちは、優れた盗聴器をケーブルに取り付け、ロシア側の交信の傍受や、その交信の録音に成功したのだ。

 NSAは、ロシア海軍の高官たちが 、自国の通信連携を過信していて、仲間たちと暗号を使わずにやりとりしていた事実を突き止めた。録音装置とテープは、毎月交換され、この作戦は10年間悠々と続けられていたが、ロシア語が堪能だった44歳のNSAのロナルド・ペルトンという名の一般人技術者により遮断された。1985年、ペルトンはロシアからの亡命者に密告され、刑務所に入れられた。ペルトンは、米国によるこの作戦をあきらかにしたことに対して、ロシア側からたった5000ドルしか支払われなかった。さらに彼はロシアに運用データを提供したことで3万5千ドルを受け取っているが、そのデータについては全く公表されていない。

 アイビー・ベルズ(Ivy Bells)というコードネームで呼ばれていたこの作戦の成功は、革新的で同時に危険でもあったが、ロシア海軍の意図や計画に関する非常に貴重な情報を得ることにつながるものであった。

 しかし、各機関を跨ぐこの対策部隊は、CIAが熱意をもって提案していた深海攻撃作戦には当初懐疑的であった。答えのない問題が山積していたからだ。バルト海は、ロシア海軍が頻繁に巡回しており、潜水作戦の隠れ蓑に使えそうな油田掘削装置もなかった。潜水士たちは、エストニアで、この使命の訓練をしなければならないのだろうか? エストニアと言えば、国境を挟んで、ロシアでこのパイプラインに天然ガスが搬入される箇所の真向かいにあるのだ。「こんな馬鹿げた作戦があるか!」とCIAは非難された。

 この情報源によれば、「この作戦の考案過程においてCIAや国務省の関係職員たちの中には、こう語っていた者もいました。「そんなことをしてはダメだ。馬鹿げているし、もしバレてしまったら政治的には悪夢だ」と。

 しかし、2022年の初旬に、このCIAの担当団は、サリバン指揮下の各機関を跨いだ対策委員会に再度以下のような報告を行っていた。「パイプラインを吹き飛ばす方法はある」と。

 その次に起こったことは衝撃的だった。2月7日、それは避けることができないと思われていたロシアによるウクライナ侵攻まで3週間もない時期だったが、バイデンはホワイトハウスで、ドイツのオラフ・ショルツ首相と面会した。同首相は、躊躇いを見せていた時期もしばらくあったが、当時は既に米国と強固な関係を築いていた。面会後の記者会見において、バイデンは挑戦的な態度でこう言い放った。「ロシアが侵攻すれば、ノルド・ストリーム2はもはやなくなるだろう。我々かその終止符を打つつもりだ」と。

 その20日前、ヌーランド国務次官も、バイデンと本質的に同じ声明を国務省の記者会見で出していたが、そのことはほとんど報じられなかった。これはある質問に対して彼女が答えたものだった。「今日皆さんにはっきりと申し上げます。ロシアがウクライナに侵攻すれば、何としてでもノルド・ストリーム2の稼働は止められることになるでしょう。



 このパイプライン破壊工作に関わっていた人々のうちの数名は両者の発言に狼狽した。というのも、この攻撃については間接的な言い回しをすべきであると考えられていたからだ。

 「東京に原子爆弾を仕掛けておいて、我々はその爆弾を爆発させるつもりであると日本側に伝えるのと同じようなものでした」とその情報源は語っていた。「この計画は、ロシアによる侵攻の後で行われる選択肢とされていて、公的に広報されてはいませんでした。それなのにバイデンはそのことを分かっていなかったか、わかっていたのにわざと無視をしてこんな発言をしたのです。」

 バイデンやヌーランドの失言がもし本当に失言であったとしたならば、計画を立てていた人々をイライラさせたかも知れない。しかし、彼らの発言は好機ともなったのだ。この情報源によれば、CIAの高官の中には、パイプラインの爆破が、「もはや機密作戦ではなくなったと言える。というのも大統領が、その爆破方法を知っていると公言したのだから」と考える人々もいた。

 このノルド・ストリーム1および2の破壊計画は突然格下げになり、議会に通知する必要がある機密作戦から 米軍の支援のもとの極秘諜報作戦へと返還された。この情報源の説明によれば、法律上、「議会に報告する法的な必要性がなくなったのです。しなければいけないことは、ただ実行することのみになったのです。しかしこの作戦が秘密裏におこなわれるという条件は続いていました。ロシア側はバルト海において強力な監視体制を取っているからです。」

 CIAの対策部隊の部員たちにはホワイトハウスとの直接接触することがなかったため、大統領の発言が本心である、つまりこの作戦にゴーサインが出されたのかどうかを確かめようと躍起になっていた。この情報源はこう回顧していた。「ビル・バーンが戻ってきて、こう言ったのです。”さあ、やるぞ”、と。」


ノルウェー海軍は早急に適切な場所を見つけ出した。それは、デンマークのボーンホルム島から数マイル離れた浅瀬に位置していた。


実行段階

 ノルウェーは、この作戦の基地として完璧な場所だった。

 ここ数年間の東西危機の間に、米軍はノルウェー国内で基地を広げていた。ノルウェーは北太平洋沿いにロシアの西側と1400マイル国境を接しており、さらにロシアと北極圏を分け合っている。米国防総省は、地域との軋轢もある中で、高給の仕事や契約をノルウェー国内で作り出し、数億ドルを投資して、ノルウェー国内の米海軍と米陸軍の施設の改良と拡大に取り組んできた。最も重要なことは、その新しい仕事に遙か北の情報を入手する最新式の合成開口レーダーが含まれていた点だ。このレーダーは、ロシア国内の奥深いところまで侵入できるものだ。このレーダーの設置は、米国諜報機関が中国国内にある一連の長距離傍聴施設を喪失したのと同時期に行われた。

 何年もの間建築中であった米国の潜水艦基地があらたに改修され、より実用化されるとともに、ますます多くの米国の潜水艦がノルウェーの軍人たちとともに活動し、250マイル東にあるロシアのコラ半島にある核兵器の要塞の監視や調査ができるようになった。さらに米国は、ノルウェー北部にあるノルウェー空軍の一基地を拡大し、ノルウェー空軍にボーイング製P8ポセイドン偵察機団を提供し、ロシア側のすべての情報の長距離からの傍受行動を強化した。

 これらの米国の動きの反発として、昨年11月の議会において、ノルウェー政府はリベラル派や穏健派から怒りを買うことになった。それは政府が米国との間での補足防衛協力協定 (SDCA)を議会で通したことをうけてのことだった。新しい協定においては、特定のノルウェー北部の「合意地域」において、基地外で犯罪行為を犯した米軍兵士や、米軍基地の活動を妨害したと告発された、あるいは妨害したと見なされたノルウェー国民に対して米国の法律が適応されることが認められることになる。

 ノルウェーは、1949年のNATO発足当初からの加盟国の一つであった。当時は冷戦が始まって間もない時機だった。今NATOの事務総長はイェンス・ストルテンベルグであるが、反共産主義を自認している人物であり、ノルウェーの首相を8年間つとめたのち、2014年に米国の支援でNATOの最高職に上り詰めた。同事務総長は、プーチンやロシアに関するすべてのことに強硬姿勢をとっており、ベトナム戦争時は、米国の諜報機関と協力したこともある。それ以来米国から厚い信頼を得ているのだ。「米国の手にすっぽり合う手袋のような人物だ」とこの情報源は語っている。

 いっぽうワシントンでは、計画立案者たちは、自分たちがノルウェーに行く必要があることを認識していた。「連中はロシアを毛嫌いしていましたし、ノルウェー海軍には優秀な船乗りや潜水士がごろごろいました。彼らは何十年間もの経験があり、深海での石油や天然ガスの爆破を行うにはぴったりの適性を持っていました」とこの情報源は語っている。さらにこのノルウェー海軍の猛者たちは秘密を守るという点においても信頼できる人々だった。 (ノルウェー側にも別の関心があった。それは米国の手引きにより、ノルド・ストリームが破壊されれば、ノルウェーの天然ガスを欧州諸国に売れるという魂胆だった。)

 3月のある時点で、この対策委員会の数名の委員が空路ノルウェー入りし、ノルウェーの秘密情報機関や海軍の人々と面会した。最重要課題の一つは、バルト海のどの箇所が、爆弾を埋め込むのに最適な場所であるかという物であった。ノルド・ストリーム1と2は、それぞれ二つのパイプラインで構成されていて、その二つのパイプラインは、ほとんどの部分において1マイル以上離れていない。そして最終的には、ドイツの北西部にあるグライフスヴァルト港まで流れ込んでいる。

 ノルウェー海軍はすぐに適切な場所を見つけ出した。それは、デンマークのボーンホルム島から数マイル離れた沖の浅瀬だった。これらのパイプラインは、1マイル以上離れた状態で、たった260フィートの深さしかない海床沿いに伸びている。それならば潜水士たちが十分潜れる範囲内だ。これらの潜水士たちはノルウェーのアルタ級掃海艇出身で、酸素と窒素とヘリウムが排出される空気ボンベを着けて潜水し、加工されたC4爆弾を4本のパイプラインに付着させ、コンクリートの保護膜をかぶせる作業をやってのけるくらいのことはできる潜水士たちだった。この作業は、冗長で消耗性の高い危険な作業になるであろうが、ボーンホルム島にはもうひとつの利点があった。それは大きな海流が流れていないことだ。それがあると、潜水作業はより困難な作業になっただろう。




 少しの調査活動を行っただけで、米国側はクタクタになった。

 この時、パナマ市内にあるあまり有名ではない、米海軍の深水潜水団が再び脚光を浴びることになったのだ。パナマ市内にある潜水士学校の訓練士たちは先述のアイビー・ベル作戦に関わっていたのだ。しかしこの事実は、アナポリスの海軍兵学校の優秀な卒業生達には、消したい過去であると映っていた。というのも通常これらの卒業生たちが望んでいるのは、海軍特殊部隊(SEAL)や戦闘機の操縦士や潜水艦乗組員の任をえることだからだ。「地味な任務(black shoe)」、例えば水上艦の司令部員の一員というあまりみなが望まない任以外にも、少なくとも駆逐艦や巡洋艦や水陸両用艦での任務も常にあるのだから。そんな任務の中で一番格好よくないのが、潜水して爆弾を仕掛けるという任務なのだ。この任務についた潜水士たちがハリウッド映画の主題になることも、人気雑誌の表紙を飾ることもないだろうからだ。

 「深海を潜水する能力を有した潜水士たちの間の結束は固く、その潜水士たちの中で最も優秀な潜水士たちだけがこの工作に採用され、ワシントンにあるCIAからの召喚に応じるよう伝えられたのです」とこの情報源は語っていた。

 実行箇所と実行方法を確定したノルウェー側と米国側にはもう一つの懸念事項があった。それは、ボーンホルム島沖の海中下で尋常ではない行動が行われれば、スウェーデンやデンマークの海軍がそのことに気づき、各政権に報告する可能性があることだった。

 デンマークも、NATO発足当初からの加盟国であり、英国と特別なつながりがある諜報機関を有する国のひとつとして知られている。またスウェーデンは、NATO加盟に向けて手を挙げており、 水中下での音波センサーや磁気センサー体系において重要な技術を有しており、その技術を使ってロシアの潜水艦の追跡に成功したこともある。ロシアの潜水艦はスウェーデン領内にある離島諸島に出没することがあったが、スウェーデンのこの技術のために、水面に姿を現さざるを得なくなることもあった。

 ノルウェー側は米国側と歩調を合わせ、デンマークやスウェーデンの高官と接触し、 この地域で行われる可能性のあるこの潜水計画についてのあらましを伝えておくべきだと主張した。そうすれば、高い地位にある当局者が介入することで、海中で異常があった報告を指揮系統網から除外することが予想された。そんな報告が通ってしまえば、このパイプライ破壊計画が水の泡になってしまうからだ。「デンマークやスウェーデンの関係者たちに伝えられたことと、実際にこれらの関係者が把握していたことの間には、わざと食い違いがあるようにされていました」とこの情報源は私に語っている。(この件についてノルウェー大使館に問い合わせたが、反応はない。)

 ノルウェー側は、ほかの障害を解決する重要な役目を果たしていた。ロシア海軍は、海中の爆弾を検出し、爆発を起こさせることができる高い監視技術を有しているとして知られていた。そのため、ロシアの監視体制が、米国の爆破装置を自然現象と捉えられるような欺瞞を講じる必要があった。そのためには、海中の特定の塩分濃度に対応する必要があった。その細工はノルウェー側が行った。

 さらにノルウェー側は、この工作の実行時期はいつかという最重要課題の解決の鍵も握っていた。実は、この21年間、毎年6月に米国の第6艦隊が主催するNATOの大規模な演習がバルト海で行われていた。この第6艦隊の旗艦は、イタリアのローマの南にあるガエータに駐留しているのだが、この演習にはバルト海沿岸の多くの同盟諸国の戦艦も参加している。6月に行われた今回の演習は、バルト海作戦22(Baltic Operations 22)や、BALTOPS22という名称で知られている。ノルウェー側の提案は、爆弾を仕掛けるこの工作の理想的な隠れ蓑としてこの演習が使えるのでは、というものだった。

 いっぽう米国側は或る一つの重要なことを提供した。それは、第6艦隊の計画立案者たちを説得して、この演習に、パイプライン爆破工作に関わる調査と演習を加えることだった。 海軍が明らかにしている演習内容には、第6艦隊が海軍の「研究および戦争センター」と共同して行う演習が含まれていた。この海中での演習は、ボーンホルム島の海岸沖で行われるものとされていて、この演習には爆弾を埋め込むためのNATOの潜水士たちも関わっており、最新の水中技術を駆使して、パイプライを検出し破壊する一団と協働することになっていた。

 この演習は、効果的な演習になるとともに、巧妙な隠れ蓑にも使えるものだった。 そして、パナマ市で訓練していた潜水士たちがその任務を果たし、BALTOP22演習の最後に、48時間後に爆発する時限爆弾のついたC4爆弾が取り付けられることになっていた。つまり、米国側もノルウェー側のすべての関係者は、その最初の爆発が起こる前に既に現地から姿を消している状態になっていたのだ。

 実行日のカウントダウンが始まっていた。「時計がカチカチとなっていて、私たちはこの使命の完遂が近づいていることを実感していました」と同情報源は語っていた。

 そんな時、ワシントンが考え直したのだ。爆弾がBALTOP演習中に取り付けられる決定は変わっていなかったが、 ホワイトハウスが懸念したのは、爆発の二日前に演習が終わるという日程では、米国がこの工作に関わったことが明白な事実になってしまうことだった。

 代案として、ホワイトハウスは新しい要求を出した。それは、「現地の実行者たちが、命令が出された後でパイプラインを爆破する方法をおもいつくこと」だった。

 計画立案団の団員の中には、大統領のこの優柔不断な態度に憤慨し、立腹しているものもいた。パナマ市からきた潜水士たちは、既に何度も パイプラインにC4爆弾を仕掛ける演習を済ませていた。そしてその実行はBALTOP演習中に行う予定だった。そんな中で、ノルウェー側はバイデンの要求を満たすような方法を思いつくよう求められたのだ。つまり、バイデンが指定した時間にうまく爆破を実行できるような方法のことだ。

 使命を果たす際に、思いつきの、実行直前での変更が命じられる状況への対応にはCIAは慣れていた。しかし今回の場合、新たな懸念が生じ、この工作自体の必要性と正当性に対して疑念を呈する関係者もいた。

 大統領からのこの秘密の命令により、CIAはベトナム戦争時に追い込まれた窮地の記憶がよみがえった。当時のジョンソン大統領は、反ベトナム戦争の風潮が高まる 中で、CIAに規定違反の行為を行うような命令を下したのだ。その規定とは、米国内部でCIAが工作を行うことに関する規定だった。ジョンソン大統領が出した指令は、春までに反戦活動指導者たちが、ロシアの共産主義勢力の影響を受けていないかを探るというものだった。

 最終的にCIAはこの指令に従い、1970年代じゅうずっとCIAがこの指令の遂行に嬉々として取り組んでいたことが明らかになった。その後、ウォーターゲート事件を受けた新聞報道により、CIAが米国市民の身辺調査活動を行っていたこと、外国の指導者たちの暗殺に関わっていたこと、チリのサルバドール・アジェンデ下の社会主義政権の弱体化を密かに工作していたことが明らかにされた。

 これらの暴露により、1970年代中旬、アイダホ州選出のフランク・チャーチが議長であった上院の一連の公聴会にCIAが呼び出されるという劇的な状況が展開され、その場で当時CIAの長官であったリチャード・ヘルムズが明らかにした事実は、その行為が法律違反であったとしても、CIAは大統領が求めていることを実行する義務があるということだった。

 公にされていない非公開の証言において、ヘルムズは後悔の色を見せながら、こう語っていた。大統領から秘密の指令を受けた場合は、「 ほとんど無原罪懐胎*(Immaculate Conception)を受けたかのように、使命をはたすことができるのだ」と。さらに、「そのような無原罪懐胎を与えられることが正しいのか、間違っているのかは別にして、 (CIAは)政府の他のどの組織とも違う規則や勤務規則のもとで動いている」とも語っていた。実際上院での公聴会において、ヘルムズはCIAの長官として働いてきたのは、憲法のためではなく、大統領(Crown)のためだったと証言している。
* 聖母マリアが神からの保護により何の汚れも受けないままでイエスを懐胎したことを指す。

 ノルウェーで仕事をしていた米国の関係者たちは、同様の状況下で工作に取り組んでいて、責任感を持ってこの新たな問題の対応に当たり始めていた。つまり、どうやってバイデンの指令を受けて、遠隔操作によるC4爆弾を爆発させるかという問題についてだ。この工作は、ワシントンが考えているよりもずっと難しい仕事だった。ノルウェーの工作団には、大統領がいつ実行ボタンを押すのかを知る由などなかった。数週間後のことなのか? それとも半年以上、いや、もっと後になるのか?

 パイプラインに仕掛けられたC4爆弾の爆発は、航空機からソノブイ*が投下された直後に引き起こされることになっていた。しかしその工作の実行過程には、最新の信号加工技術が必要とされた。いつかどこかで、実行時間を遅延させる装置が、4本のパイプラインのどれかに据え付けられれば、事故的に爆発が引き起こされる可能性があった。その原因は、交通量の多いバルト海内では、複雑に絡み合う雑音が生じているからだ。例えば、付近や遠くを航海する船舶、水中下の採掘、地震の発生、波、あるいは海中生物などが発する雑音だ。このような雑音が爆発を誘発しないように、ソノブイがひとたび投下された際に、独特な低さを持つ周波数を持つ音波が、そのソノブイから発せられるようにしなければならない。そう、フルートやピアノが奏でるような周波数の音波だ。爆発を遅延させる装置がそのような音波を認識できるようにし、事前に決められていた実行時間を遅らせることで、爆発の誘発を遅らせようという作戦だ。 (バイデンが出した遅延命令のせいで起こったノルウェーの工作団が直面していた問題について、「ほかの信号では爆発を誘発しないくらいの強い信号が必要だ」と、MIT(マサチューセッツ工科大学)の科学・技術・国家安全保障政策の名誉博士であるセオドル・ポストル氏が私に教えてくれた。同氏は、米国防総省海上作戦部長の科学顧問もつとめている。さらに、「海中の爆発が起こるまでの時間が長くなればなるほど、危険度は高くなるだろう。というのも、海中には爆発を誘発するような信号が無作為に存在しているからだ」とも。)
* 水中聴音または反響定位のため、航空機から水中に投下して使用する小型のソナー(水中を伝播する音波を用いて、水中・水底の物体に関する情報を得るための装置

 2022年9月26日、ノルウェー海軍のP8偵察機が通常の運航であると装って、ソノブイを投下した。その信号が海中に広がり、まずノルド・ストリーム2、その後ノルド・ストリーム1に伝わった。その数時間後、高い爆破力を持つC4爆弾の爆発が誘発され、4本のパイプラインのうち3本が稼働できなくなった。数分後、閉ざされたパイプラインに残っていたメタンガスが海面上で広がっている様子が目撃され、なにか取り返しのつかないことが起こっていることが世界中に知れ渡ることになった。


結末

 パイプラインの爆破直後は、米国の報道機関はこの事件を未解決の謎であるという報じ方をしていた。考えられる犯人として、ロシアが何度も言及されていたが、それはホワイトハウスから意図的に漏洩された情報によるところが大きかった。しかし、ロシアがなんの得にもならないこんな自傷行為を行ったかの動機については、はっきりとされないままだった。数ヶ月後、ロシア当局がこのパイプラインの補修費用の見積もりを静かに公表した際、ニューヨーク・タイムズ紙はこのニュースを、この事件の「裏に誰がいるかについては様々な仮説が出されている」と報じていた。米国のどの主要新聞もバイデンやヌーランド国務次官が発していた警告について深く取材しようとはしなかった。

 自国にとって大きな儲け口となるこのパイプラインをロシアが自ら破壊した理由が明らかにされることは決してない中、大統領が行った行為であると考える方が合理的であると考えさせるような発言が、ブリンケン国務長官の口から発せられた。

 昨年9月の記者会見で、西欧諸国のエネルギー危機が悪化することについて問われたブリンケン国務長官は、今は良い状況にあると述べていた。

 「今は、ロシアへのエネルギー依存から脱せられる千載一遇の好機を迎えています。そうなれば、ウラジミール・プーチンが、エネルギーを武器として利用し、野望を前進させる手段を失わせることになるのです。今回の事件は非常に重要であり、この先何年も有効となる戦略を持ち出せる好機なのです。ただ現在、我が国がどんな手段を使っても取り組もうとしている課題は、今回の事件の発生に我が国の国民が誰一人関わっていなかった、さらには、世界の誰も関わっていなかったという事実を明らかにすることなのです。」

 もっと最近のことになるが、ビクトリア・ヌーランドは最新のパイプラインの活動が止められたこと満足感を示していた。上院外交委員会での公聴会での発言において、ヌーランドはテッド・クルーズ上院議員にこう語っていた。「貴殿と同じように、私も、行政府もそうだと思いますが、ノルド・ストリーム2の現状に満足しています。こういう言い方がお気に召すかと思いますが、いまノルド・ストリーム2は、海底に沈むただの鉄の塊になっているのです。」

 この情報源は、冬が近づく中で行われた、ガスプロム社所有の1500マイルの長さを持つパイプライン破壊工作の決定について、ブリンケンやヌーランドよりもずっと洗練された見方を示していた。彼は大統領について、こう語っていた。「そうですね・・・。あの人が2つのボールを持っていたことは認めないといけないですね。最終的に大統領は実行する方のボールを投げることを決めて、実行したんです。」

 ロシア側がこの工作に対応できなかった理由を聞かれたこの情報源は、冷たくこう言い放った。「多分ロシア側は、米国がしたのと同じことができる能力を欲していたのではないでしょうか」と。

 さらにこの情報源は言葉を続け、「よくできた巧妙な隠蔽作戦でした。この機密作戦の裏には、この分野の専門家たちが配置され、秘密の信号を使った工作に必要な装置が準備されていました」と述べた。

 「実行の決定に至るまでの過程が唯一の落ち度でした。」
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Berlin rally against arming Ukraine draws tens of thousands
An estimated 13,000 to 50,000 people attended the event calling for peace talks

和平交渉を求めるこの行事には、推定13,000~50,000人が参加した。

出典:RT 

2023年2月25日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月2日

ベルリン 1
2月25日の平和デモでスピーチをする左派党の政治家ザーラ・ヴァーゲンクネヒト*(右)と女性権利活動家で作家のアリス・シュヴァルツァー**(左)  Photo: Steffi Loos / Getty Images

*ザーラ・ヴァ―ゲンクネヒトは、1969年7月16日イエナ生まれ。政治家。左派党副党首。11月から左派党連邦議会議員副団長。デュッセルドルフ在住。(出典:ザーラ・ヴァーゲンクネヒト - ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト (newsdigest.de)
**アリス・シュヴァルツァー(1942年12月3日 生まれ)は、ドイツのジャーナリスト、著述家、フェミニスト、フェミニズム雑誌『エマ(ドイツ語版)』の創刊者・編集長。シモーヌ・ド・ボーヴォワールに出会い、フランスの女性解放運動 (MLF) に参加。(出典:ウイッキペディア)



 数万人のドイツ人が、土曜日(2月25日)、左翼党(左派党)の政治家ザーラ・ヴァ―ゲンクネヒトと作家アリス・シュヴァルツァーが主催する大規模な集会「平和のために立ち上がる」に風雨をものともせず参加しました。

 デモ隊はブランデンブルク門に集結し、ウクライナ紛争を終わらせるための和平協議を求め、ベルリンがキエフへの武器供給を停止するよう要求した。

 ヴァ―ゲンクネヒトは、ドイツ政府が「ロシアを破滅させようとしている」と非難し、平和協議を始めるためにモスクワに「申し出」をするよう指導者に求めた。この集会は、「市民の主導権の始まり」であり、「ドイツにおける新しい強力な平和運動の始まり」であると彼女は言った。



 この集会は、政治的領域を超えた抗議者たちを歓迎し、「誠実な心で」平和を望む者は誰でも歓迎すると宣言したが、メディアの注目を浴びようとするネオナチの挑発者たちは歓迎されなかった。



 主催者は参加者を5万人としたが、警察は1万3千人と控えめな数字を出した。

 ヴァ―ゲンクネヒトとシュヴァルツァーは今月初め、オラフ・ショルツ首相に「武器輸送の拡大を止める」よう求める「平和のためのマニフェスト」を発表した。それ以来、著名な知識人、政治家を含む50万人以上がこのマニフェストに署名している。



 シュルツ首相は、和平交渉を持てない理由は、ロシアが話し合いのテーブルにつかないからだと繰り返し主張している。この紛争が始まって以来、この紛争の平和的解決をモスクワが何度も試みてきたことには目がいかないようだ。


ベルリン 2

© Kevork Almassian on Twitter
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ハルマゲドン将軍をゲラシモフ将軍に交代させたロシア:戦いはもう終わった。

<記事原文 寺島先生推薦>

General Armageddon Makes Way

Russia’s decision to replace General Armageddon with the even more formidable General Valery Gerasimov, should be a cause of concern for Clown Prince Zelensky and his over-dressed wife.

ハルマゲドン将軍をさらに空恐ろしいヴァレリー・ゲラシモフ将軍に交代させるロシアの決断は、道化王子ゼレンスキーと着飾り過ぎた彼の妻にとっては心配の種となるだろう。

筆者:デクラン・ヘイエス(Declan Hayes)

出典:Strategic Culture

2023年1月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月1日

アルマゲドン


 ロシアは、ハルマゲドン将軍の後任に、現在ロシア参謀本部長を務めるさらに空恐ろしいヴァレリー・ゲラシモフ将軍を選んだが、道化王子ゼレンスキーとその着飾りすぎた妻にとっては、心配の種になるだろう。セルゲイ・スロヴィキン陸軍大将がいなくなったわけではない。とんでもない! ゲラシモフ将軍の副官として「ハルマゲドン将軍」セルゲイ・スロヴィキン陸軍大将が続投するのだから、ゼレンスキーと彼のペテン師内閣全体にとってはさらに悪いニュースとなる。

 ゼレンスキーは、私やロシアの言葉を鵜呑みにする必要はない。彼は、キエフの最高司令官であるヴァレリー・ザルジニーに聞いてみればいい。ザルジニーは、NATOべったりのタイム誌に、「ゲラシモフから学んだ」「ゲラシモフは最も賢い男であり、彼への期待は非常に大きかった」と語った記録が残っているのだから。

 しかし、これはウクライナの弟子がロシアの大師匠より優れているとか、パットン*が資金不足なのに戦線をどんどん拡大したロンメルの著作を読んでロンメル**に勝てると思った、とかいう問題ではない。これはザルジニーとその残党軍がロシアの流れを止めようとしているのだ。彼らは勝つことができない。不可能なのだ。
* アメリカの陸軍軍人。モットーは「大胆不敵であれ!(Be audacious!)」。(ウィキペディア)
** ドイツの軍人。第二次世界大戦のフランスや北アフリカでの戦闘指揮において驚異的な戦果を挙げた、傑出した指揮官として知られる。(同上)


 ワグネル軍団は、ゲラシモフ戦術に手袋のようにすっと適合し、ソレダールを占領し、それによって、バフムートの目前の解放とザルフニーのドネツク戦線全体の崩壊への道を開いたのだ。ハルマゲドン将軍の容赦ない作戦により、ウクライナの大部分は無力化され、窮地に追い込まれた。ゲラシモフ将軍は、オーケストラの指揮者のように、ロシアのバラバラな弦を束ねることを得意とし、特にロシア空軍の金管と打楽器セクションはハルマゲドン将軍の有能な手に委ねられていることを知っている。

 ゲラシモフ将軍が着任すると、ゼレンスキー帝国の残党は、彼らの最悪の悪夢でも想像されなかったような形で、ロシア当局の視線にすべて晒されることになる。彼の着任は、ロシア国防省がやんわりと言うように、「軍隊の様々な部門や支部の間でより緊密な調整が行われる」ことを意味する。ゼレンスキーは自分の船のハッチを閉じるのが一番だ。なぜなら、悪い知らせが彼の帝国の残党の行く手にもたらされ、彼はその嵐の目の真ん中にいるのだから。

 ゲラシモフ戦略は、私の理解では、ロシアが戦争に勝つために必要なハードパワーとソフトパワーをすべて投入する、一種の総力戦を意味するものである。ベトナム戦争を雛形とするならば、ロシアは、十分な民衆の支持を得られない傀儡政権を樹立するというアメリカの失敗を犯さないだろうし、またベトコンのテト攻勢の失敗も犯さないはずだ。その戦いでは、ベトナムに対する情報戦としては大勝利だったが、軍事的には大失敗した。彼らが冷戦型のガチンコ勝負でアメリカと戦ったためだ。この戦いはアメリカ軍が適切な訓練を受けて戦った唯一の戦争だった。

 英雄的なシリア・アラブ軍は、NATOの代理軍に対して、当初、後手に回っていたとき、同じような失敗を犯していた。イランとロシアが専門知識を提供する前は、訓練を受けていない戦争を戦っていた。ヒズボラの勇敢な戦士たちが、彼ら自身の豊富な専門知識を生かして、カラムーン丘陵を確保して初めて、シリア軍は前進することができたのである。そして、イランについては、さらにどれだけの悪魔的無人機をゲラシモフ将軍に与えるために隠し持っているか、神のみぞ知る、である。将軍は手直しされたゼレンスキー帝国に最後の締めを与えることになる。

  ゲラシモフはそのすべてから学んだだけでなく、ロシア当局の全面的、明確かつ積極的な支持を得ており、非常に有能な副官たちもいるのである。彼が任命されたということは、ロシアが、今、全力で、事態に対処していることを示している。ゲラシモフは、盾を持って意気揚々と勝利の帰還をするか、あるいは盾に乗り遺体となってロシアに戻ってくる、そのどちらかになる。しかし、ウクライナは今、全ロシアに喧嘩を売っているが、そのどちらのシナリオも、兵士たちの若い命を犠牲にしているウクライナのヴァレリー・ザルジニー将軍と、卑劣なギャングたちにとって、良い兆候とはならないだろう。

 ザルジニーの当面の仕事は、ゲラシモフを学習することはやめ、救えるものを救うことだ。第一に、ゼレンスキーとその酔狂な取り巻き連中は去らなければならない。第二に、ウクライナの西部地域をルーマニアとポーランドに割譲すること、第三に、ウクライナ軍を東部から避難させ、彼らの命を救うことである。

 そして最後に、ウクライナ人は自分たちで新しい図書館を作らなければならない。ゲラシモフの著作集がどうであれ、本当に本を燃やさなければならないのなら、ナチスの過去を美化し、来るべき輝かしい日々をうそぶくNATOの出版物をすべて処分すべきだ。同時に、ゼレンスキーと彼の仲間の詐欺師たちは、この12ヶ月間に兄弟、息子、夫たちをレミングみたいにたくさん死なせている。それも彼らの愛する者のために新しく掘った墓地の前で延々と祈り続けるために、だけだ。

 NATOべったりのメディア、The GuardianAl Jazeeraなどは、奇妙なことに、戦場での損失と挫折のためにスロヴィキンを交代させたと、この件に関して違う見方を示している。しかし、これはロシアの監督が勝利の組み合わせを得るために選手を入れ替えるような、無害なサッカーの試合とは訳が違う。これは、ゼレンスキーと彼のペテン師内閣にとって、非常に悪いニュースである。私やロシアの言葉を鵜呑みにする必要はない。彼は、キエフの最高司令官であるヴァレリー・ザルジニーに尋ねればよい。彼は、残された部下とともに、ゲラシモフが「最も賢い男」であるだけでなく、人員と物資の面で圧倒的な優位に立ち、NATOが進んで認めているように、同時に勝利する軍事戦略術も持っていることを知ることになるだろう。

 ゲラシモフが懸案とする地上作戦は、高度に機械化された60万の地上軍と、ハルマゲドン将軍の航空作戦、ワグネル軍団、チェチェン人、黒海に潜むロシア船団の支援により、この無用な戦争には一つの可能性しかないことが、ザルジニーには、クラウゼヴィッツならずとも、わかっているのだ。また、ヒトラーの野戦司令官ワルター・モデルのようになる必要もない。彼はB軍を解散させ、ミツバチの大群、副官テオドール・ピリング大佐、そして最後の一人まで戦えというアドルフ・ヒトラーの狂った叫びが無線で流れている中、何も持たず誰も相手にしてくれず、自分の頭を吹き飛ばしたのだ。

 戦争は終わったのだ。ザルジニーはそれを受け入れ、ゼレンスキー一味、仲間のギャングたち、外国の傭兵、ナチの執行者を一網打尽にし、自分の部下や家族のために、ゲラシモフ、ラブロフ、そしてプーチンにどんな条件であれ和平を求めるべきだ。それ以外の選択肢はない。
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