書評『嘘の国アメリカで真実を求めて』 ― 「911」という期日を誰がなぜ選んだのか
<記事原文>
Review: Seeking Truth in a Country of Lies
レイ・マクギニスRay McGinnis
グローバルリサーチ、2021年2月12日
<記事翻訳>寺島美紀子・隆吉
2021年3月29日

エド・カーティン『嘘の国で真実を求めて』は、エッセイ選集である。各エッセイは、著者カーティンの心をかきたてるもの、彼の心、そして明晰さへの道を明らかにしている。各章ごとに、彼は自国の状況と彼にとって最も重要なものについて情熱的に熟考している。説得力のある読み物である。

『嘘の国で真実を求めて』の冒頭で引用されている「暗い時間の中にいると、目はだんだん見え始める」は、セオドア・レトキの詩「暗い時間の中で」から来ている。
ここで詩人は、方向感覚の喪失と位置感覚の混乱というアイデンティティの状態を説明する。レトキは、これは明快さ、洞察力、知恵を達成するために不可欠であると主張する。暗い時間の中で、人は物事の断片化され破壊された状態を発見する。
この適切な引用で、エド・カーティンは、アメリカの物事の断片化され破壊された状態と、より明確に見始めるのに必要な市民の仕事に進むよう、彼の読者に警告し始める。
マサチューセッツ教養大学(Massachusetts College of Liberal Arts)の元教授であるカーティンが取り上げるテーマは、彼独自のものではない。しかし、それらのテーマは彼自身の明確に独自の特徴でマークされている。彼の斬新な貢献の一つの側面は、カーティンが政治分析の標準的な枠組みを超えていることである。

三つのテーマが、若い頃からカーティスの関心の中に浸透している。真実、死、自由である。彼は、詩人ケネス・レックスロスが1959年にジャーナリストのローレンス・リプトンに語ったインタビューからの、抜粋を引用している。
「すべての社会は、搾取階級の利益のために組織されており、もしこのことを知ったら、人は働かなくなり、社会は崩壊してしまうので、少なくとも都市革命以来、社会は詐欺システムによってイデオロギー的に支配されることが常に必要だった」
ケネス・レックスロスは、アメリカの詩人、翻家、批評家。サンフランシスコ・ルネサンスの中心人物と見なされ、ビート運動の基礎を築いた。彼は自分をビート詩人とは考えていなかったが、タイム誌で「ビートの父」と呼ばれた。彼はまた、中国文学を多読した。
レックスロスは、この詐欺システムを「社会的な嘘」と呼んだ。そして『嘘の国で真実を求めて』の中でカーティンは、詐欺の根源と、そのより最近の顕在化を説明する仕事を引き受けている。
また、欺瞞の時代における社会が抱える重荷にもかかわらず、美、芸術、愛、気まぐれなどが、優雅さの証として持続する品格であることも指摘している。
エッセイ「アメリカの『人形の家』の内側:嘘の巨大なタペストリー」で、カーティンは、1969年にジョン・F・ケネディ大統領暗殺に関わった人物の名前を挙げて裁判を起こしたニューオーリンズの地方検事、ジム・ギャリソンを引用している。

ギャリソンは、JFKの暗殺がCIAとアレン・ダレスの仕業であることを示そうとした。しかし、ギャリソンは、CIAと関係のあるメディアのスポークスマンたちによって、いつも決まって狂人として扱われた。
アメリカ市民はプロパガンダが混入されたテレビニュースを受動的に消費しているだけだ、というのがギャリソンの結論だった。そのようなプロパガンダは、アメリカ人が「何が本当に起こっているのかを理解する」ことを妨げるために作られたものである……。ギャリソンは、アメリカ人は「人形の家に住んでいる」と警告した。
『人形の家』イプセンの戯曲。3幕。1879年作。弁護士の夫から人形のように愛されていただけであったノラ。じつは夫が無意識的にノラを人間扱いしていないことを知ったノラが、一個の人間として生きるために夫と子供を捨てて家を出る。女性解放の問題を提起した近代社会劇の代表作。
ジム・ギャリソンが1969年の裁判から学んだ厳しい教訓を基に、エド・カーティンは「アメリカが徐々に改造されて、できあがった人形の家の中では、私たちの基本的な仮定の多くは完全に幻想である」と観察している。
カーティンの著書は、JFK暗殺から約57年後の2020年11月22日に発売された。
カーティンは、次のように指摘している。
「オバマ大統領は2009年のホンジュラスでのクーデター(2005年の民主的な選挙で選ばれたマヌエル・ゼラヤ大統領を軍部が罷免しコスタリカに移送した事件)を支持したが、その結果、米国の訓練を受けた殺人者の手で非常に多くの死がもたらさられることになった」。
そして今度は、トランプ信奉者たちが、こう文句を言っているのだと。「こういった『非白人』のやつらすべてが、米国が作りだした地獄から逃れるために米国に逃げ込んできているのだ……」と。
2009年以降になって、「半球防衛研究センター」(Center for Hemispheric Defense Studies)の米軍幹部が、民主的に選出されたマヌエル・ゼラヤ大統領を追放するためにホンジュラス軍のメンバーを訓練したことが明らかになった。
Center for Hemispheric Defense Studies:元は「School of the Americas」と呼ばれていて、中南米から軍幹部を招き、民衆や活動家を拷問その他で鎮圧する技術を教えて母国に返す仕事をしていた。あまりに評判が悪くなり、名称を変更した。
2009年とその後の数年間、ホンジュラスは世界で最も高い殺人率を誇っていた。これはホンジュラス軍とつながっている我ら米国の死刑執行部隊によって引き起こされたのだ。
とはいえ、このクーデターは、オバマ大統領とトランプ大統領の両方にとってはほとんど重要ではなかった。ホンジュラスの人々が殺人という代償を払ってきているあいだにも、両国の借金と貧困は増えるばかりだったのだから。
カーティンが先に述べた殺人の数々は、彼の本が2020年後半に出版されたあとも、依然として続いている。ベネズエラの人々にとっては、共和党か民主党のいずれがアメリカ大統領であるかなど、ほとんど重要ではない。
ドナルド・トランプの下では、2020年5月にベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を誘拐しようとする失敗例があった。そして、ジョー・バイデンは大統領就任初日に、米国がベネズエラの野党指導者フアン・グアイドーをベネズエラ大統領としてを宣言する行政命令に署名した。
これは、マドゥロが2018年の圧倒的な人気を博した大統領投票で67%以上の票を獲得したことに反している。選挙結果で2番目の候補者は21%を獲得したアンリ・ファルコンであり、フアン・グアイドーは2018年には候補者ですらなかった。
ベネズエラが2020年の米国大統領選挙の結果に抗議し、ミット・ロムニー(2012年に出馬したが2020年には出馬しなかった)を大統領として認めた場合を想像してみるだけでよかろう。
バイデンが大統領になっても(トランプとのトーンの変化は多少あるが)多くのアメリカの外交政策は変わらない。
ジミー・カーター元大統領は、ウゴ・チャベスが再選された2012年のベネズエラの選挙について次のように述べている。「私たち(アトランタのカーターセンター財団)が監視してきた92の選挙のうち、ベネズエラの選挙プロセスは世界で最も優れていると言えるだろう」と。
しかし、この話はメディアのシナリオとは一致しない。だから、それはオーウェルの言う「記憶口(自分にとって不都合な、または嫌な情報を放り込んで消し去ってしまう、または、なかったことにしてしまう架空の穴)」に落ちていくのだ。
カーティンは指摘している。平均的なアメリカ人は、自分たちが住んでいる「人形の家」を建てたわけではないが、彼らはその建築に加担しているのだと。いわゆる安心感のために何十年もの捏造された現実を受け入れてきたのは、平均的なアメリカ人なのだ。幻想的な物語を受け入れることの結果として、人々は本当の意味で自由ではないということになる。もっともらしい嘘に対処するために、ニュースの消費者は間抜けなふりをするのだ。
そして、カーティンは、ほとんどのアメリカ人が「親切でありたい(ラテン語でnescireは、無知であること、知らないこと)、そして好かれたいと思っている」と指摘している。アメリカ人が嘘の人々になって、食べさせられた嘘を繰り返しつづけるので、社会の中で暗黙の欲望が生じる。そして、その嘘の繰り返しが暴力とスケープゴート(責任転嫁)を煽るのだ。
人形の家には、アメリカ人(やニュースを無批判に消費する他国の多くの市民)が暮らしているが、その人形の家は、彼らが世界と交わした契約によって強化されている。それは、彼らの社会的地位、経済的地位、職業的地位を向上させるためであり、家族の調和を維持するためである。そのような心の平穏と満足感を得るためには、万が一、扱いが難しいと感じる真実に遭遇しても、人形の家からは遠く離れないようにする必要があるのだ。
カーティンは、中央情報局CIAが1967年4月1日のメモで「陰謀論」という用語を使い始めたことを指摘している。
これは、1963年11月22日に殺害されたJFK大統領の死は、「犯人だとして逮捕されたリー・ハーヴェイ・オズワルドとは別の人たちによる暗殺だ」とする説を否定するためのものだった。
さらにカーティンが指摘しているのは、「9・11」という用語が、2001年9月12日に、後にニューヨークタイムズ紙の編集長(2003年7月から2011年9月まで)となるビル・ケラーによって最初に使われた、という事実だ。アメリカで緊急電話番号をダイヤルすることと同義の用語を使うことで、この用語は「不安、憂鬱、パニック、混乱」という感情と融合した。
READ MORE: The United States of America’s Doll House: A Vast Tapestry of Lies and Illusions
次のことに注目するのは有意義だ。
2001年9月11日の同時多発テロ事件の時、
サウジアラビアの緊急電話番号は999だった。
イエメンの番号は191と194。
アラブ首長国連邦の緊急番号は112、998、999。
リビアの緊急番号は1515。
クウェートの番号は112。
イラクの番号は104、115、122。
シリアの緊急時の番号は110、112、113。
レバノンでは112、140、175、999。
エジプトの緊急時の番号は122、123、180。
ヨーロッパ大陸では2001年9月11日の緊急電話番号は112だった。
イランの緊急番号は110、112、115、125。
つまり不思議なことに、911は、米国、カナダ、南米、メキシコでのみ緊急時にダイヤルする番号だったのだ。
(ただしメキシコには065、066、068もある)
要するに、911は、アラブ人がペンタゴンと世界貿易センターを攻撃するために陰謀をめぐらしたのだと言われている国々の緊急番号ではない。
この事実をふまえると、次のような不思議な疑問がわいていくる。
将来ありうるシナリオとして(それが起こるかもしれないとしたら)ならず者のアメリカのテロリストたちがイランのテヘランの高層ビルに飛行機を突入させるかもしれない。しかしそうだとしても、そのようなテロリストたちは、その残虐行為の日を、イラン人が緊急時にダイヤルしたいくつかの電話番号の一つの日付の短縮形と結びつけるだろうか?つまり、その攻撃の日を1月10日、12日、15日などに設定するだろうか。
カーティンは「なぜ私はもう9・11のことを話さないのか」というエッセイの中でこう述べている。
「9月11日を9・11と呼ぶ」ことでビル・ケラーが確実にしたのは、「終わりなき国家的緊急事態は終わりなき対テロ戦争と深く結びつき、この終わりなき対テロ戦争こそ、ヒトラーのようなテロリストたちが再びグランドゼロやホロコーストを生み出す可能性のある核兵器で私たちを抹殺するのを防ぐこと、それが目的の戦争だ」というプロパガンダだったのだ。
この用語は、終わりなき社会の恐怖と不安を呼び起こすという、すべての正しいボタンを押す用語である。それは魔術のような用語であり、最高のプロパガンダである。
カーティンは、「9・11」という用語の繰り返しが高度なマインドコントロールに組み込まれているのではないかと疑っている。だから彼はその攻撃に関連してこの用語を使わず、代わりに、「2001年9月11日の攻撃」という言い回しを使う。
カーティンが勧めているのは、私たちがどのような語彙を使ってその攻撃に言及するにせよ、聞き手に混乱・絶望・パニックを潜在的に呼び起こすその公式の短縮表記が延々と何度も繰り返されることによる魅惑的な衝撃から、私たちを解き放つことができる語彙を私たちが見つけることだという。
ポストモダン社会が進化するにつれ、プロパガンダをつくりだす仕事はより複雑になっている。したがって、社会の複雑さゆえに、大衆は、自分たちの現実をわかりやすく理解するための既製の枠組みを求めるようになるのだ。
カーティンが明示しているのは、「人々は『真実』へと導いてもらうために神話・作り話を与えてほしがってはいるが、『いわゆる真実』とはプロパガンダによる全体的な神話・作り話の中であらかじめ考えられたものだ」ということだ。
ポストモダン:現代という時代を、近代が終わった「後」の時代として特徴づけようとする言葉。各人がそれぞれの趣味を生き、人々に共通する大きな価値観が消失してしまった現代的状況を指す。
それにもかかわらず、プロパガンダはまったくと言っていいほど効率的なので、ほとんどの人は自分の自由意志でそういう結論に達したと推論できるほどなのである。
ほとんどの人は、何が信頼できるかを判断するために、与えられたテーマの要点について適切な範囲の情報を提供されたにちがいないと思ってしまう。
しかし、同じニュースの消費者であっても、彼らが受け入れるように誘導されてきた物語のなかには、方針から外れた視点を省いた入念に選び抜いたニュースが含まれている、などとは、想像を絶すると考えるだろう。
確かに、知る価値がある反対意見の声は、夕方6時のニュースでは聴取できないのだろうか?

カーティンは、リサ・ピーズが『見捨てておくには大きすぎる嘘:ロバート・F・ケネディ暗殺の本当の歴史』という彼女の本の中で書いていることと同じ意見である。
ピーズは書いている。「CIAが1960年代にアメリカを乗っ取った方法は、私たちの時代の物語であり、これを認識している人はあまりにも少ない。だが存在すら認められない問題を解決することはできない」
カーティンは、リサ・ピーズと同意見であるという自分の判断を裏付けるために、本のさまざまな章で数多くの例を挙げている。
その中には、「ダラスからのメッセージ、JFKと言葉にならないこと」という章がある。その章で彼は、『ジョン・F・ケネディはなぜ死んだのか。言葉にならないこととの闘い』の著者ジェームズ・W・ダグラスを、大統領暗殺の化けの皮を一枚一枚剥がしていく人物として要約している。ダグラスによれば、あれは、戦争屋から平和屋へと変わっていった大統領を、裏でCIAが支援して暗殺した事件だったというわけだ。

「『永遠の門で』我々は何のために働いていたか」と題された別の章では、カーティンは激しい出世競争について書いている。彼は、マンハッタンのゼネラルモーターズのオフィスで事務員として働いていた夏の仕事を思い出す。「餌」は給料だったので、彼の青春はその夏、退屈な仕事に閉じこもって過ごした。
カーティンの記述を読みながら、私は、ホテルの警備員の夜勤、プライベートゴルフクラブの清掃員、ブリティッシュ・コロンビア州森林省の自動車修理工場での仕事など、いくつかの仕事を思い浮かべた。修理工場では、政府のトラックの側面に林業車両の識別番号を貼る作業にひと夏を費やした。

カーティンは、ヴィンセント・ファン・ゴッホの生涯を描いた映画『永遠の門-ゴッホの見た未来』についても言及しているが、この映画は、働くこと、生きていることが何を意味するのか、新しい可能性を提示している。
ゴッホにとって「絵を描くという行為」こそが「天才の天啓」だったのである。貧しい画家にとって重要なのは絵画の完成ではなく、絵画に没頭することだったのである。それが人生の鍵だったのである。
このエッセイの中で、カーティンは読者に「生きるとは何か」を考え、「なぜ私たちは働くのか」と問いかけるよう呼びかけている。
彼は私たちに語る。「ヴィンセントにとっての答えは簡単だった。現実である。しかし、現実は私たちに与えられたものではなく、「簡単」とは程遠いものである。私たちにはそれを煙幕や決まり文句を突き抜ける行為が求められている」
カーティンが突き抜けねばならなかった煙幕の一つは、彼が海兵隊員として教えられたスローガン「我がライフルは我が命」だった。カーティンはこのスローガンを見抜いて、人間であるということは、命を愛し、平和の実現に尽力することを意味する、と認識したのである。
もう一つのエッセイ「ウィンストン・スミスの性的情熱」では、カーティンは、すべてのものが売買される社会の商品化について詳しく述べている。カーティンが「身体の商品化」について語るとき、彼は我々がその身体の一部であることを思い起こさせてくれる。「舌は鐘、その(言語の)意味を告げる鐘である」と。私たちのスピーチを助けるのは、最終的には舌なのであり、そうして「プロパガンダリストが否定しようとする真実を伝える」のだと。
ウィンストン・スミスは、ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』の主人公。
カーティンは著書の中で、偽りの風景の中で真実を探すのに役立つ道を指し示す提案をしている。その一つが詩である。彼は、チリ、アイルランド、ロシアの市民は自国の詩人を知っており、彼らの作品を「心の中で」引用することができると指摘している。
しかし、アメリカでは詩人や詩は無視されている。新しい世代は、フェイスブックやツイッター、インスタグラムをチェックするのに忙しすぎる。
しかし、カーティンは「詩は真実の探求である」と主張している。それは内側と外側を結婚させる。詩が提供できるものの最高のものは、社会が「価値の問題や真実と嘘という究極の関心事に取り組む」手助けをするということである。彼はこれら内側のものを「本来は無関係である外側の、映画と自撮りカメラの文化」と結びつけている。

真実と嘘に加えて、カーティンはアメリカの文化的過去の風景に点在する無数の奇妙さを指摘している。
60年代半ばのロックンロールバンドの多くは、既成概念に対する反文化・反戦の抗議運動の一部として見られていた。アレックス・コンスタンティンの『ロックに対する隠密戦争』といった本があるが、これはCIAとFBIによる秘密作戦を記録したものである。
この作戦は反体制的破壊分子をみなされたロックスターの信用を失墜させ、彼らの生活を破綻させる秘密工作だった。
たとえば、ジミ・ヘンドリックス、ジョン・レノンその他の人たちには、広範な情報ファイルが蓄積されていた。
コンスタンティンは、1976年4月26日の「チャーチ委員会」で証言された諜報活動覚書の、リークされたものから次のように引用している。
FBIは特定のレコーディング・アーティストたちについて、捜査官たちに手紙を書いた。
「彼らを卑劣で堕落したものとして見せろ。彼らの生活習慣や生活環境に注意を喚起し、可能な限り彼らの恥ずかし行為を探れ。女とセックスをさせ、結婚を破棄させろ。メンバーを大麻容疑で逮捕させろ……。彼らの堕落を示す記事を新聞に載せろ。麻薬やフリーセックスを使っておとり捜査をしろ。誤情報を使って混乱させ、混乱させろ……。標的となるグループを敵対関係に陥れ、死に至らしめろ」
しかし他方で、諜報機関の別の部門は、反体制的なレコーディング・アーティストを同時に育成していたのだろうか?
『嘘の国で真実を求めて』の中で、カーティンは、バッファロー・スプリングフィールドがビーチ・ボーイズと一緒に、1967年11月25日にニューヨーク州オレンジ郡のウェストポイントにあるアメリカ合州国陸軍士官学校でコンサートをおこなったことを指摘している。カーティンは、このコンサートは「『反体制派』のロック・グループにしては非常に奇妙な会場である」と指摘している。

67年春のトップ10ヒット曲「For What It's Worth(そんな価値があるのか)」は、ラジオのリスナーに考えるように呼びかけたのだ。それが「正確には明確」ではないが、何が「生じているのか」、「立ち止まって」何が「起きているのか」を「見ろ」と。
バッファロー・スプリングフィールドのメンバーは、「戦線が引かれている」最中の、士官学校での演奏をどう感じたのだろうか?
ウエストポイントの士官候補生たちが、「一線を外せば、男がやってきて、連れ去られてしまう」と警告する歌詞を聞くのは、なんと奇妙な事だろうか。

デイビッド・マクゴーワン著『キャニオンの中の奇妙なシーン』を引用して、カーティンは、「パパ」・ジョン・フィリップス(フォークグループ「ママス&パパス」のメンバー)がメリーランド州アナポリスの米海軍兵学校に通っていたこと、そして彼の父親が海兵隊の大尉だったことを指摘している。そのうえ、「ジョンの妻は国防総省で働き、父親はベトナムで諜報活動をしていた」


ドアーズのジム・モリソンは、フィリップスの隣人であり友人でもあるが、ベトナム戦争を加速させたトンキン湾事件でアメリカ海軍の艦艇司令官を務めたジョージ・モリソン米海軍提督の息子だった。

またフランク・ザッパの父親はたまたま化学兵器の専門家だった。
(フランク・ザッパは生涯を通じて、アメリカ政府・キリスト教右派・検閲・音楽産業などの批判をとおして、アメリカという国家の問題点をきびしく指摘し続けたミュージシャンである。)
カーティンは、デビッド・クロスビーやスティーブン・スティルスのような他のミュージシャンも軍人の家系出身であることを指摘している。そして、これらの若いミュージシャンの多くは、すべてローレルキャニオンに集中していた。

「彼らは徴兵年齢にあったが、彼らの誰も徴兵されなかった。音楽を演奏し、LSDをやり、フォーク・ロック・ムーブメントを生み出したからだ……」
「クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング」:4人グループだったが、後にニール・ヤングが抜けた。
「ローレルキャニオン」:ロサンゼルスのハリウッド・ヒルズ・ウェスト地区の山岳地帯。ハリウッド・ヒルズとは、セントラルLAの高級住宅街のこと。
これらのミュージシャンたちは、彼らに嫌がらせをしていた諜報工作員たちと同様に、諜報機関の活動の一部だったのだろうか?
あるいは、デイビッド・マクゴーワンが尋ねるように、「1960年代の若者文化全体は、現状に対する草の根の挑戦としてではなく、芽生えつつある反戦運動の信用を失墜させ周辺化させたり、管理されやすく道を外れやすい偽の反対派を作り出したりするための、皮肉な運動として作られたのではないだろうか?」
各章ごとに、エド・カーティンは私たちを人形の家のさまざまな部屋に連れて行き、点と点を結びつける手助けをしてくれる。彼の物語と考察は、「フェイクニュース」の時代に必読の書である。
『嘘の国で真実を求めて』の読者は、真実を求める旅で、あまり長距離でない道を歩むよう勧められるだろう。この道は、私たちの平静心を要求し、沈黙を歓迎するからだ。それは長距離を歩くのではなく、自分はいったい何ができるかを、めいめいが問いかけなければならない旅なのだ。私たちの恐ろしい腐敗した美しい世界が、より人間的で公正で平和的であることを望むように変化させる手助けをするために。
カーティンは、私たちに、この本を淡々と読み終えてほしいと思っていない。むしろ彼は、彼の本の各章が私たちを奮い立たせることを望んでいる。この恒久的な戦争と寡頭制の時代に、平和と正義を切望する世界で、抵抗する方法を見つけるために。
Ray McGinnis is author of Writing the Sacred. His forthcoming book is Unanswered Questions: What the September Eleventh Families Asked and the 9//11 Commission Ignored.
ジョン・F・ケネディはなぜ死んだのか 語り得ないものとの闘い
Tankobon Hardcover – December 12, 2014
ジェイムズ W ダグラス (著)、寺地五一 ・, 寺地正子 (翻訳)
オリバー・ストーン(映画『JFK』監督)
「なぜケネディの死が重要なのでしょうか?
ケネディの死は私たちの歴史のなかで重要な転機をもたらしています。彼を死に至らしめた者たちは一人の人間を標的にしただけではなく、一つのビジョン、平和のビジョンを標的にしたのです。
ケネディが米国のために、そして世界のために命を絶たれたことによる影響を測ることは不可能ですが、その影響はいまも続いています。米国と地球の未来は、ダグラス氏が“語り得ないもの"と呼ぶ闇の勢力によって大きく支配されています。これらの勢力の仮面をはがし、歴史についての真実と対峙することによってこそ初めて、私たちは民主主義が約束するものを取り戻し、ケネディの平和のビジョンを自分たちのものにすることができるのです。
でも、私の言葉をそのまま受け取らないでください。この類まれな本を読んで、あなた自身の結論を出してください」
オノ・ヨーコ
「夜を徹して読んで、涙が止まりませんでした。
一睡もしませんでした。いますぐ立ち上がって、世界を変える力を与えてくれる本だと思います」
ロバート・ケネディ・ジュニア
「すべてのアメリカ人にこの本を読んでもらいたい」
全米で話題をさらったJFK暗殺の深部に迫る決定版。
本書は1990年代に公開された最新の情報をもとにして、ケネディ暗殺の真相に迫っている。調査委員会で暗殺単独犯とされた元海兵隊員オズワルドは本当に実行犯だったのか? それとも彼はCIAの巧妙な偽装工作によって仕立て上げられた身代わりだったのか? 未遂に終わったシカゴでのケネディ暗殺計画とは? オズワルドが逮捕された直後にダラスから飛行機で脱出したオズワルドそっくりの男は誰だったのか? 著者が描く暗殺のドラマは極めてスリリングである。
しかし、本書が単なるケネディ暗殺の謎解きでないことは、以下の章立てをみればわかる。
第1章 冷戦戦士の転向
第2章 ケネディ、カストロ、CIA
第3章 JFKとベトナム
第4章 暗殺の標的に
第5章 サイゴンとシカゴ
第6章 ワシントンとダラス
南太平洋、ワシントン、サイゴン、ハバナ、ダラスと舞台を移し、本書は平和を追求しようとするジョン・F・ケネディと彼の平和政策を阻もうとする権力のすさまじい闘いを描いている。兄同様に暗殺されたロバート・ケネディの次男ロバート・ケネディ・ジュニアは、自らの命を犠牲にして平和を目指したケネディ大統領を描くこの本を高く評価して、すべてのアメリカ人に読んでもらいたいと語っている。
「1963年11月22日ダラスで起こったこと」の秘密の全貌を明らかにし、さらに秘密の起源を探ることは、現代アメリカの政治・社会を深層で突き動かしているものの正体を知ることになる――。
Edward Curtin's Posts:
*The Real Reason Robert F. Kennedy, Jr. Is Being Censored
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