沖縄の本屋さんの話題です。どちらも、ザ(The)をつけたくなるような、すてきな、そして、ぼくも大好きな街の本屋さんです。
まずは、金武町金武にある金武文化堂。同地で半世紀以上営業してきたお店ですが、建て替えのため、仮店舗での営業が続いていました。
建て替えの経緯を、沖縄の新聞がこんなふうに取り上げています。「町民に親しまれた「きんぶん」 築60年、老朽化で建て替えへ」(2018/6/3 沖縄タイムス+プラス)。
記事の一部を引きます。《金武小学校近くで50年以上営業を続け、町民から「きんぶん」の愛称で親しまれる本と文具の店「金武文化堂」(沖縄県金武町金武)が、老朽化で建て替えられる。店が入る建物は、琉球政府立法院議事堂や當山紀念館などを手掛けた沖縄を代表する建築家、故大城龍太郎さんが設計し、築60年を超えた。代表の新嶋正規さん(54)は「私が生まれる前からあり、私も住民も愛着の強い建物。建て替えは残念だが、子どもたちがもっと集まる店にしたい」と語った》。
改装前のお店の様子は、記事ではこんなふうに描写されています。《20年ほど前に経営を引き継いだ新嶋さんは、午前7時半から店を開ける。朝から鉛筆などを買う児童や待ち合わせでにぎわい、放課後は駄菓子を買い求める子どもたちの金銭感覚やマナーを学ぶ場になる》。
《新嶋さんは「10円、20円の駄菓子に利益はないが、子どもの居場所づくりには代えられない」と目を細める。インターネットの普及で全国的に書店経営は厳しく、幅広い客層を取り込もうとブックカフェなどを検討したこともある。その度に「子どもを大事にした父の思いと、地域での書店の役割」に照らし、昔ながらのスタイルを守ってきた》。
ブックンロールオキナワに参加するために沖縄を訪問した際に、お店におじゃましたことがあるんですが、子どもの姿こそ時間帯のせいでなかったものの、ほんと、まさにここに書かれている通りのお店だったので、もうびっくりするやら、うれしいやらで。そのときの様子は、こちらの記事にまとめてありますので、改装前のお店の様子に興味のある方はご覧ください。自分で書いた文章なのに、読み返していたら、当時の店内の様子や新嶋さんと楽しいやりとりが思い出され、大変に幸せな気分になりました。ほんとに、そういうお店なのです。
建て替えを決めた理由も同店らしいとしかいいようのないもの。《建て替えの決断は、ひび割れや雨漏りなど建物の劣化が進む中で、子どもたちが安心して利用できるかを熟考した結果だ》。
建て替えが決まってからは、旧店舗のそば(120メートルほど離れた場所)の仮店舗で営業していたそうです。本来は今年の1月ごろに完成予定だったのが、半年ほど延びて、今回の完成、となったわけです。新店舗ができるまでの様子は、同店のツイッター(@kinbun11k)でも写真入りでレポートされていますので、興味のある方はぜひそちらもチェックを。
新店舗は、のオープンは来週、7/22(月)。7/14付のツイートでは、こんなふうに報告されています。
《大変お待たせいたしました。これまで準備を進めて来ました新店舗、どうにか目処が立ち【7月22日(月曜日)】オープンいたします!! 新店舗のコンセプトは、『子どもが楽しい!』子どもが楽しいければ、大人も楽しい店を目指します。 これまで同様、どうぞよろしくお願いいたします》。
この《コンセプトは、『子どもが楽しい!』》がもう同店らしいというか、新嶋さんらしいというか、ほんと、最高ですよね。
近くならお祝いに駆けつけるところですが、沖縄の場合、さすがにそういうわけには行きませんので、遠く東京から、まずはお祝いのことばだけお送りしたいと思います。
新嶋さん、新店舗完成&開店、おめでとうございます! いつかお店に遊びにいきますから、また子どもたちの話、聞かせてくださいね。
もう1軒。こちらも、沖縄滞在時に訪問して、いたく感銘を受けたお店の1つです。市場のなかにある本屋さん、ブックスおおみねが、Webの記事で取り上げられています。こちら。
- 「飲み屋街で24時間営業の本屋さん 親子3人でシフトを回して約30年 支持される理由とは」(7/16 沖縄タイムス+プラス)
書き手は、沖縄タイムス社の與那覇里子さん。お店の様子がリアルに伝わってくる、読み応えのある記事です。あちこちを引きたくなりますが、ぜひ全文を読んでいただきたいので、あえて引用はせずにおきます。ちょっと長めの記事ですが、写真もたくさん使われていて、お店の中の様子もよくわかるものになっています。ぜひ最後まで目を通してみてください。ぼくの駄文ではぜんぜん伝えきれていなかったお店の魅力が、しっかりとレポートされていますので。
引用しない、としましたが、でも、1か所だけ、やっぱり引いておきますね。
《今年で開店37年目、「ブックスおおみね」は、本を通してたくさんの人と出会ってきた。この間、輝浩さんの目から見て、一番変わったのは「子ども」だという》。
《「昔、街の本屋さんは、子どもたちがお小遣いを持って、遊びながらコミックや文房具を買いに行くところでした。店の中で元気に「おにごっこ」をする子どもたちもいました。でも、今は店の外から、一人で入っていいのかなと様子をうかがって、戸惑う姿を見かけます。子どもだけで買い物に行ってはいけないと学校や親に言われているのかもしれません」》。
この記事の後で読むと、我ながら穴だらけではずかしいかぎりですが(苦笑)、一応、同店についてはこちらとこちらの記事でふれています。
同店について書かれた文章としては、こちらも、今回の紹介記事同様にとてもすばらしいものなので、ぜひ合わせてお読みいただければ。
- 「出版社として、客として、沖縄で思う「町の本屋さん」のこと(上)」(2015/3/11 沖縄タイムス+プラス)
書き手はボーダーインクの編集者、喜納えりかさん。
ところで。このブックスおおみねの記事では、コンビニの件や成人雑誌のこともふれられています。この記事を読んでから、以下のような記事を読むと、町の本屋への影響について、より深く考えさせられますね。
- 「セブンイレブンが沖縄初出店!糸満や国際通りに7月11日OPEN!」(7/11 沖縄Repeat)
- 「成人誌が街から消滅の危機、大手コンビニも扱い中止へ」(7/16 東京商工リサーチ)