しばらく前の記事で紹介した『Live In Japan 1984』に続く、アラン・ホールズワースのライヴ・アーカイヴ第2弾が発売になりました。

↑ジャケ写がぼけぼけなのは、ぼくの技量の問題ではなく、もともとこういうジャケなのです。放送映像からのキャプチャなのでしょう。中に使われている写真、といっても3枚しかありませんが、も同様です。
前回の紹介記事に、発売元のManifesto Recordsのサイトに《アラン・ホールズワースの長きにわたるキャリアのいろいろな時期のライヴ音源を、今後シリーズとしてリリースしていく予定で、今回の『Live In Japan 1984』は、シリーズ最初の1枚だ、という主旨のことが書いて》あると書きましたが、ほんとに新たな作品が続いたわけですね。うれしいなあ。
内容紹介によれば、《1998年6月にポーランドの首都ワルシャワにて開催された<Warsaw Summer Jazz Days>の2日目のヘッドライナーとして出演したアラン・ホールズワース・トリオのパフォーマンス》を収めたもの。第一弾の日本公演ライヴ同様、CDとDVDの2枚組です。
翌年リリースされることになる『ザ・シクスティーン・メン・オブ・テイン』のレコーディングが終了していたということで、ライヴバンドのメンバーは、同盤のレコーディングに参加したベースのデイヴ・カーペンターとドラムのゲイリー・ノヴァク。このライヴでは、全9曲中、同盤からの曲が5曲を占めています。音質もアラン自身のプレイもバンドのアンサンブルもよく、ファンにはうれしい内容のライヴとなっています。
収録曲の詳細は、オンラインストアを参考にするのがいいでしょう。たとえば、タワレコのこちらとディスクユニオンのこちら。
DVDは、「ブロードキャスト・フッテージ」と「ボーナス・フッテージ(bonus footage)」の2パートに分かれています。前者は、当時現地ポーランドのテレビで放送されたもので、後者はそれから漏れたもの。CDと同一音源のはずですが、映像は現地での放送の関係なのか、一部の曲が本編には収録されていなかったりするため、曲順がCDとは違っています。
放送映像のほうは、画質はそれほどいいとは言えないものの演奏を充分に楽しめるレベルのものになっていますが、「ボーナス・フッテージ」のほうは、画質がひと昔前の海賊版レベル。しかも、曲によっては一部だけなのがちょっと残念。
たとえば、次の新作の表題曲「ザ・シックスティーン・メン・オブ・テイン」。個人的に好きな曲なんですが、放送分には収録されていません。ボーナス・フッテージで観ると、モニターの返しでも悪かったのか、途中、音がよく聞こえないよ、みたいな仕草でアランがスタッフに合図を送っている場面が映っていました。アランにはめずらしく、テーマのところのコードワークをミスったりしているのは、音の問題もあったんでしょうか。
あと、ファンに人気の高い代表曲の一つ「プロト・コスモス」は、DVDの曲目リストには、放送映像のほうと、ボーナス・フッテージの両方にあがっていますが、実際の演奏が観られるのはボーナス・フッテージのほう。これが、演奏は最高なのに、映像が粗々。本編映像のクオリティで観たくなること必至で、これはちょっと残念ですね。
あと、ときどき客席の様子が映るんですが、ノリノリの客もいれば、あきらかに退屈している様子の客もいたり。というか、後者がけっこう多そうな感じに見える。そもそも会場も埋まっていないし(苦笑)。おいおい、きみたち、世界最高のギタリストの生演奏を観ているんだよ!と、彼らに伝えたくなりますよね(苦笑)。
使用ギターはヘッドレスタイプのビル・ディラップのカスタムギター。コードワークで聴ける深いディレイの効いたクリーントーンと、ソロパートのナチュラルディストーションの切り替えがスムーズでシームレスなのはいつも通りですが、今回はギターシンセも使っていて、なぜかギターシンセのパートだけちょっと音がオフ気味です。アンプは、マーシャルのキャビネットの上にヤマハのDGを載せたのを2セット。足元もチェックしたいところでしたが、残念ながら足元はほぼ映らず。
アランは、例によって、プレイ、とくにソロパートではずっと目をつぶっていて、指板をほとんど見ないんですが、途中、わざわざメガネをかけてプレイしているところがありました。機材を途中でいじっている様子が映っていましたから、セッティングをチェックしたり変えたりするためなんでしょうか。やはり、映像は音だけではわからないいろいろなことを伝えてくれるので、ファンにはありがたいですね。
というわけで。この『ライヴ・イン・ワルシャワ1998』、アラン・ホールズワースのファンは迷わず買い、でしょう。
今回のアルバムですが、ふつうの輸入盤のほかに、「輸入盤国内仕様」として「日本語帯、解説付き」が販売されています。ぼくはそちらを購入したのですが、この「解説付き」はやや注意が必要かも。10行程度の日本文がついているだけで、内容もオンラインストアの内容紹介程度のものです。
本体のジャケの内側にはプロデューサーのKrzysztof Narbut、出演時のバンドのドラマー、ゲイリー・ノヴァクがライナーを寄せているのですが、それらの翻訳があるわけでもなく、解説にも一切引用されていません。曲目一覧を日本語でほしい、という方はともかく、国内盤仕様である必要はとくにないかもしれませんので、両方が選べる場合は値段差などを考えて判断するのが良さそうです。