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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

本好きのためのニューヨークガイド

『ニューヨーク・タイムズ』は、アメリカを代表するクオリティペーパーの1つですが、書評欄の充実ぶりでも知られていますね。ぼくも昔から愛読しているのですが、書評欄にはアメリカの書店事情関連の記事が載ることもあります。同紙でニューヨークの書店に関する記事を目にするたびに、どんな書店なのか、どこにあるのかを調べたりしていたのですが、そんな折に出会ったのがこの本です。




書影 Booklover's guide to NY

版元の内容紹介によれば、このような内容です。《An illustrated guide to New York City tailored for the book-obsessed explorer showcasing the city's best bookshops; libraries; homes and haunts of world-famous writers; and scenes from literary classics with charming drawings by the famed New Yorker cover artist Pierre Le-Tan.》


本好きのためのニューヨークガイドという書名通りの内容で、上記の内容紹介にあるように、書店だけでなく図書館やブックカフェなど、さまざまなタイプのブックスポットや本に関わる人たちが、エリア別に紹介されています。


各ブックスポットの紹介はシンプル。施設名と住所が小見出しのように記されているだけ。一般的な書店ガイドによくある営業時間などの情報や公式サイトのURLなどはなし。巻末に索引はありますが、そういう詳細をまとめた書店リストなどもありません。きわめてシンプルな紹介のしかたになっています。


日本の書店ガイドは写真中心のものが多いのですが、本書は文章がメインです。紹介されている各ブックスポットの外観や内観写真は、あるにはあるのですが、数は少なめで、サイズも小さめ(しかも、写真は額縁や切手を模した枠に入れているため、よけいサイズがおさえられることに)。日本の書店ガイドや書店紹介記事では、お店の品ぞろえの感じを伝えるために棚のクローズアップ写真を混ぜるのはふつうに行われることですが、そういう写真はほぼまったくありません。


写真の代わりに、本書のあちこちを飾っているのは、雑誌『ニューヨーカー』の表紙を手がけたこともあるというイラストレーター、Pierre Le-Tan(著者のお父さん)によるやさしいタッチのイラスト。『本屋図鑑』のように、とりあげられているブックスポットの外観や棚を描いているわけではなく、どちらかというイメージカット的なもの。


ブックスポットの雰囲気や品ぞろえを写真を多く使ってしっかり見せるタイプの日本の書店ガイドになれた目には、本書の紹介のしかたは不満なものに映るかもしれません。でも、個人的にはこれはこれで楽しいなあ、と感じました。紙面がうるさくないし、写真で店内の様子や棚を全部見せられちゃうよりも想像をかきたてられるといいますか。こういうつくりに共感を覚えるのは、自分が、写真ではなくイラストで店内外を見せた『本屋図鑑』(夏葉社)の作り手だから、かもしれませんね。


上記、版元の紹介ページで本書の冒頭部分が読めますから、中身の感じを知りたい方はそちらをご覧になるといいでしょう。試みに、日本人にもよく知られている有名書店がどんなふうに紹介されているか、例を見て見ます。


ブルックリンにあるマクナリー・ジャクソン(McNally Jackson)は1ページ。「本屋のなかの本屋(a booksotore's bookstore)」と紹介されています。全体に写真が少ないのは前述の通りですが、使われている場合は外観写真が多いのですが、同店の紹介ページには書棚の写真が使われています。ただ、背や表紙で本のタイトルを確認できるようなアングルとサイズではないのが残念。


ニューヨークの本屋さんと言えば、こちらを思い浮かべる人も多いでしょう。ブロードウェイのストランド(Strand Book Store)。植草甚一さんが通ったお店でもありますね。2ページを使った紹介に加え、現在のオーナー、ナンシー・バスさんのインタビューが4ページにわたって収録されています。写真は現在の外観をとらえたものと、昔の白黒写真の2点。多くの人にとってニューヨークで本を手に入れるのに最高の場所であり、著者のいちばんのお気に入りでもあると、絶賛されています。


ブックオフも登場します。45番街にあるブックオフは、日本にいるような感じにさせてくれるからブックオフのロゴは大好き、と半ページほどの分量ながら好意的に紹介されています。ロゴの部分をクローズアップした写真が1点。


ニューヨークの本事情、書店事情に関心のある方、いつかニューヨークでブックスポット巡りをしたいと考えている方には、ぴったりの1冊でしょう。



英語圏の本に親しんできた者にとって、ロンドンとニューヨークは、書店巡りをしておきたい街ですよね。ロンドンは過去に行く機会があり、書店巡りもしているのですが、ニューヨークは残念ながら一度も訪問したことがありません。ニューヨークで書店巡り、いつかしてみたいものですが、感染の不安なしにのんびり海外旅行ができるようになるのって、どれくらい先になるんでしょうね。


それまでは本書で紙上空想旅行、紙上本屋巡りを楽しんでいることにします。


ちなみに、ロンドンにはこの本があります。



書影 Booklover's London

こちらの記事で紹介済みの本ですから、くわしくはそちらをどうぞ。こちらも「Book Lover's...」と似たようなタイトルですが、こちらは、日本の書店ガイド本の多くと同じ、写真で見せるタイプのガイドです。




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