仕事の用事で、松江に行ってきました。
以前、とっても、20年くらい前でしょうか、仕事の用事で一度訪ねたことがあるのですが、そのときは、駅の近くの喫茶店で著者とお会いしただけ、という、行ったとも言えないような短時間滞在でした。当然、ブックスポットのチェックもなし、野鳥も地ビールもなしです。なので、今回の旅は、実質的には初めての訪問、ですね。
今回も仕事の用事ですから、日中の空き時間はほとんどなかったんですが、用事の間を縫うようにして、現地のブックスポットを訪ねてきましたので、ごくごく簡単に紹介します。
まずは、アルトスブックストア。町本会開催店で、『本屋会議』(夏葉社)にも登場するお店ということで、訪問を楽しみにしていたお店のひとつです。
JR松江駅から徒歩だと20分ほど、バス通り沿いの路面店です。1966年創業の西村書店が改称、リニューアルオープンとなったのが2005年のこと。「衣・食・住」をテーマにうたうセレクトショップとして生まれ変わっています。



↑前身も含めると半世紀以上の営業になる老舗ですが、モダンで明るい外観は、そのような歴史のある店とは思えない感じです。
店内は、想像していたよりも本は少なめで、かばんや靴など、革製品の扱いが目立ちます。実際、上の写真でも、かばんがウインドーからすぐのところに飾られていて、目を引くのがわかるでしょうか。
「衣・食・住」をテーマにうたうお店ということで、店内に並ぶ本はジャンルがかなり絞り込まれている感じです。衣・食・住関連のほか、絵本も大きく扱われていました。個人的な好みからすると、ちょっと本が少ないかなあ、という印象ですが、このようなスタイルのお店としては、むしろちょうどいい在庫バランスなのかもしれません。
お店の方にあいさつしたり、買い物したりしていきたかったのですが、店主が接客中で、しばらく手が空きそうになかったので、そのまま退散。大雨といっていい降りのなかを歩いてたどり着いたため、濡れた上着に濡れた荷物。そのような格好では店内に長居もしづらく、なんだか中途半端な訪問になってしまい、残念。
これではお店の紹介にも何もなっていませんので、同店について、くわしく知りたい方は、たとえば、こちらの記事をご覧になるといいかと。「【島根・松江】地方で本屋を営むのは大変? その答えをくれた本屋さん」(5/9 レアニッポン)。写真入りで店内の様子や同店の活動が丁寧に紹介されています。


↑ショップカード。

↑アルトスのすぐ近くにあった、いい感じの佇まいのお店。バーなのかな? 名前がよりによって「LAUGHING DOG」。靴下までずぶ濡れで、心の中で泣いていた犬族には皮肉としかいいようのない出会いでした(苦笑)。
続いて、TONOMACHI 63。



店名だけだと、何屋さんなんだかもよくわからない感じに見えるかもしれませんが、TONOMACHI=殿町は町名で63は番地。今井書店殿町店のリニューアル店なんだそうです。2017年のリニューアルで、書店+ギャラリー+カフェ+コミュニティスペースという感じといえばいいでしょうか、現在のかたちになったとのことです。

店内の書店スペースに並んでいるのは、ほぼすべてが郷土書および郷土関連本。これまでにも、沖縄や熊本では、郷土書に力を入れている書店をいくつも実際に目にしていますが、お店をほぼまるごとあてている例はめずらしいかも。
郷土書はもちろん、出身・在住など、島根・松江ゆかりの作家や、松江が舞台になった作品などもしっかり集められていました。
店内は壁際に書棚はありますが、全体にゆったりとしたディスプレイで、展示スペースのような雰囲気。ですので、店がまるごと郷土書といっても、在庫点数的にはそれほど多いわけではなさそうです。
店内中ほどにレジがあり、その後ろの広々としたスペースには、書店時代に使われていたのであろう書棚が見えました。元のお店が現在のスペースの倍ほどの売り場面積の、街の本屋さんとしては広めの店であったことがうかがえます。
旅先の郷土書コーナーでは、文学関係、出版・書店関係と共に必ずチェックすることにしている野鳥関連本。島根・松江の野鳥関連書籍を探してみると、棚に『しまねの野鳥』という本が見つかりました。山陰中央新報社からでている箱入り2巻本で、6000円ほどもする本です。さすがに、旅先でふらりと買うには値が張りますし、本格的に過ぎますので、これは見送り。もう少し簡単なものはないかなあとさがしましたが、残念ながら見つかりませんでした。
雲南市のコウノトリの様子を記録した『うんなんのコウノトリ』という写真集も並んでいましたが、こちらは自費出版物のようでした。


↑TONOMACHI 63のショップチラシ。裏には地図が。

↑同店の、というか今井書店のブックカバー。絵は島根県津和野出身の安野光雅さん。

↑松江といえば、ということで、同店では小泉八雲関連本を買ってきました。小泉凡『怪談四代記 八雲のいたずら』(講談社文庫)。

↑近くで見かけたいい感じのシャッター絵。描かれているのは小泉八雲・セツ夫妻ですね。
以上2店は新刊のお店。このほか、古書店にも寄ってきましたよ。TONOMACHI 63から歩いてすぐのところにある、ダルマ堂書店。

↑なんだか古書店らしからぬ外観です。
訪ねてみると、店内に人の姿が見えますが、入り口に鍵がかかっています。中にいた店主に話を聞いたところ、店に来るお客さんが減ってしまったので、ふだんはネット通販中心で、店売りはしていないとのことでした。
ただ、当方のように、店にやってきた客から要望があれば中を見てもらっているとのことで、この日も少しだけ中を見せていただきました。
建物の感じと店名のフォントを見ると、新古書店みたいに見えますが、中は、黒っぽい本がずらり、新古書店とはまったく趣の異なる、昔ながらの古本屋さんでした。
店内に並ぶのは文学、歴史を中心とする人文書、そして郷土書。とくに郷土書はかなりの量がありました。一般向けの単行本、文庫やコミックなどはいっさいなし。
徒歩で少しのところに穴道湖(しんじこ)という山陰有数の湖を抱える立地です。さぞや自然関係の郷土書も多かろうと期待していたのですが、郷土書全体の量からすると自然関係は意外にも少なめ。大急ぎでチェックしたため見落としもあるかもしれませんが、残念ながら、野鳥関連本には出会えず。
店内にいられた時間が短く、あまりじっくりとは見られなかったのですが、印象に残るお店でした。ただ、先に書いた通り、基本的には店売りなしのお店ですので、訪問される際はご注意を。
このほか、近くには、冬營舎という古書店があるようでしたが、雨がひどく、とても書店を求めて街歩きという感じではなかったため、泣く泣く断念。
以上はJR松江駅の北口側エリアのお店です。駅の南口側にはイオン松江ショッピングセンターがあり、ヴィレッジヴァンガード、未来屋書店、アニメイトイオンの3店が入っているようですが、今回は訪問時間がとれず。
松江は県庁所在地で、国際観光文化都市に指定されている観光の街ですが、そんな街の駅ビル内にも駅前にも本が買える場所がないというのは、ちょっとさびしい感じもしますね。
南口側には、駅から少し離れた場所ではありますが、DOOR BOOK STOREというお店もあるようです。こちらにくわしい紹介記事がありましたが、書棚の写真がほとんど写っていないため、どのような「書店」なのかがよくわかりません。お店のサイトや他の紹介記事などを見ると、セレクト系のお店のようですね。