血縁関係のない別の方が店主として店を引き継ぎ、屋号はそのままに新たなかたちでお店をオープンするというのは、書店の世界ではめずらしいケースといっていいかもしれません。
阿佐ヶ谷のネオ書房が、先日、8/10にオープンとなりましたので、のぞいてきました。店主をつとめるのは、特撮好きにはおなじみの評論家の切通理作さん。

お店の場所は以前と同じ。緑地が目を引く看板も以前のままですね。
数人入ればいっぱいの小さなお店です。店内は、左右の壁に書棚が並び、店内奥にレジ。中央には駄菓子類が並ぶテーブルが置かれています。
中央線沿線エリアにできた新しい古書店と聞くと、セレクト系のお店をイメージする人も多いかもしれませんが、品ぞろえは、いい意味で雑多な感じ。昔ながらの古本屋というのともちょっと違う、いい具合にカオスな雰囲気になっています。
映画、特撮関連が多いのは、この店主ならではでしょう。自著を含む特撮関連は面陳にしてフィーチャー。同人誌・ミニコミなどの扱いもあるようです。
マンガもあり。以前の貸本屋時代のネオ書房の本だという、昭和テイスト全開の古い少女漫画が並んでいる一角もあり、異彩を放っていました。小説などの文芸書はあまりないようでした。
本以外のものもたくさん並んでいますが、洒落た雑貨類ではありません。DVDやレコードも少し並んでいて、ソフビ、ガシャポンなど、おもちゃ類もありました。店内中央のテーブルの上には、10円20円で買える駄菓子類が並んでいるのもいい感じです。
値付けが間に合っていないそうで、店内の商品には値段のついていないものもあり、聞かれると、その場で店主が値段をつけていました。
ネオ書房は、昭和28年に貸本屋として開店。この10年ほどは古本屋としての営業を続けていたのが、今年、ついに閉店となってしまったとのことです。屋号・店主継承の経緯などについては、こちらの記事がくわしいので、興味のある方はどうぞ。 阿佐ヶ谷、ネオ書房 "新"店長・切通理作インタビュー(8/7 note)。
閉店になる個人店舗には、売上ではなく後継者の問題で継続が困難なケースがあるというのはよく聞く話です。こういうふうにお店・屋号が継続され、生まれ変わるのはすばらしいこと。お店を継いでほしい人とお店をやりたい人とのマッチングが、あちこちで生まれたらいいのになあと、今回の復活劇を見て思いました。何かいい方法ってないのかな。
ネオ書房、もとは貸本屋だったわけですが、この貸本屋という業態、すっかり見なくなりましたね。ひと昔前はあちこちで見かけたもので、阿佐ヶ谷にも複数の貸本屋がありましたし(もう1つはネギシ読書会でしたね)、三鷹にも2013年ごろまでありました(こちらはネオ書房でした)。
ぼくは学生時代に、つまり30数年前に阿佐ヶ谷に住んでいたことがあるのですが、ネオ書房は、当時、何度も利用したり前を通ったりしたなつかしいお店ですので、今回の復活劇、開店前から注目していました。とてもいいかたちでの再出発となったこと、そして、こういうかたちで復活したお店が多くの本好きの注目を集めているらしいことを、うれしく思います。
というわけで、阿佐ヶ谷のネオ書房。近隣の本好きはぜひ訪ねてみてください。以前のネオ書房のおもかげを残しつつ、ユニークな古本屋さんとして生まれ変わっていますよ。



駅からネオ書房への道の途中、阿佐ヶ谷北口アーケード内には、千章堂書店がありますし、少し先、同じ旧中杉通り沿いには古書コンコ堂もあります。ネオ書房の少し先にはレコード店オントエンリズムストアも、雰囲気のある外観の酒屋さんなんかもあります。猛暑日の散歩はつらいかもしれませんが、もう少し気候が落ち着いたら、散策にはもってこいの街ですので、どうぞ時間に余裕を持ってお出かけになり、近隣のブックスポットやお店を合わせて楽しまれるといいでしょう。

↑今回の訪問で買ってきた本はこちら。『特撮評議会読本EX 監督小中和哉の世界』『特撮評議会読本EX 監督田口清隆の世界』(早稲田大学特撮評議会)。

↑ネオ書房のしおり。