しばらく前のことになりますが、家族旅行でロシアに行ってきました。訪ねたのはウラジオストクとハバロフスク。日本からもアクセスしやすく、観光地として人気のあるところですね。
旅先では必ず本屋を訪ねますので、もちろん今回も現地の本屋さんを見てきましたよ。というわけで、今回は、ロシアの本屋さんを紹介したいと思います。
まずは、ウラジオストクから。事前にウラジオストク+書店で調べてみると、ブラッド・クニーギ(ブラドクニギとしているものも)という本屋さんが、百貨店(ショッピングセンター)の1階にあるとあったのですが、目抜き通りにあったグム百貨店の店内とその周辺をいくら探しても見つかりません。
ガイドブック『地球の歩き方 シベリア&シベリア鉄道とサハリン 2017〜2018』(ダイヤモンド・ビッグ社)の地図には、ドーム・クニーギという本屋さんが載っていますが、こちらも、地図上のそれらしきエリアを歩いてみても見つからない。
結局、本屋さんは、グム百貨店の新館(?)のような商業施設内の三階にありました。店名はガイドブックにあったドーム・クニーギ。ブラッド・クニーギが移転したり改称したりしたものなのか、同じチェーンなのか、まったく別の店なのかは、よくわかりません……。



↑目印になるよう、建物の入り口の写真もあげておきます。外からだと、本屋さんがここに入っていることはまったくわかりませんね。


↑こちらが入り口の様子。入り口の右脇に大きなウインドーがありますが、あまり効果的に使われていないようにも見えます。少し寄った右の写真では、すのこを重ねたような、メインの島の様子がご覧いただけるでしょうか。
上の写真の入り口から左奥に店舗スペースが伸びる横長のお店で、けっこう広めです。ただ、店のスペースに比して、本はそんなに多くはない、というか少なめです。3分の1は、学用文具と知育玩具という感じでしょうか。
学生向けの品ぞろえに寄せているからなのか、それとも手書き文化が日本よりも残っているということなのか、文具のなかでもとくにノート類の扱いが多いのが目につきます。品ぞろえのバランスからするとちょっと多すぎるのではないか、というくらいに、カラフルなノートがたくさんそろっていたのが印象的でした。
で、肝心の本ですが、先に書いた通り、店のサイズの割に、在庫点数はさほど多いわけではありません。しかも、こちらの準備&知識不足で、何しろキリル文字がさっぱり読めないもので、ジャンルのバランスなどもよくわからず、品ぞろえを云々しようがないのでした。英語圏と違って、ジャンル案内さえ読み取れないものですから、面陳の少ない本棚だと、完全にお手上げです。
それでも、文学っぽい棚とか、実用っぽい棚、子ども向けっぽい棚くらいはなんとかわかるので、並んでいるものを苦労して端からチェックしていくと、文学のコーナーにはブラッドベリやコナン・ドイル、ロアルド・ダールなどが並んでいました。
ロシア語版のホームズ作品集やブラッドベリ(しかも、目に付いた作品がよりによって『華氏451度』!)は気になりましたが、まったく読めないものをおみやげ気分だけで買うのもどうかと思い、結局買いませんでした。
どうせ読めないものを買うなら、ロシアに縁のある作家・作品を、ということで探してみたら、ありましたよ。ナボコフが数冊見つかりました。これについては、購入本のところでふれたいと思います。
商業施設内の本屋さんということで、ふだんの客層を意識したものなのか、全体のバランスからするとYA・児童書ものが多めに見えました。ただ、多いといっても、日本のふつうの本屋さんの児童書コーナーに比べると種類も点数も少なくて、残念ながら、洋書店などでよくある「読めないけど、見ているだけで楽しい」という感じにはあまりなっていなかったのが、やや残念でした。
絵だけを楽しめそうな絵本があれば、何か買いたかったんですんが、そういうのもあまりなかったし、図鑑類も翻訳ものっぽいのが多くて、あまり惹かれるものはありませんでした。旅先では必ず探すことにしているその土地の野鳥ガイドも探してみましたが、見当たらず、というか、見つけられず。
海外の書店でも、コミックのコーナーには日本の作品がずらりなんてことがめずらしくない昨今、ロシアではどうかなあとコミックの棚を見てみたら、アメコミ(マーベル)の翻訳(アメリカンな絵柄にキリル文字がのっかっているだけでインパクトがあります)が多めにそろっているのが目立つくらいで、日本のものは『進撃の巨人』のみ。ロシアのものと思われるものもありませんでした。。
店内には、棚の配置や本の並べ方も、変にこったところはなく、棚も基本背差しで、面陳は少なめです。POPのたぐいはなくチラシ、ポスターなどもほぼなし。フリーペーパーも、お店独自のものがないというだけでなく、無料配布物自体がほぼありません。入り口すぐの島に「BEST」と書かれた平台があり、人気本・売れ筋を集めてあるようでしたが、それをのぞけば、フェアなどの展開もなし。

↑看板で隠れてしまいましたが、「BEST」の表示がありボックス状の什器を使って本が陳列されているのが見えます。レジのカウンターの上にはキーホルダーやバッジなどがたくさん並べられていました。
座り読み用のソファ(写真の右端のほうにわずかに写っています)が用意してありましたが、長く滞在したくなるような品ぞろえや雰囲気かというと、日本の書店に慣れた身には微妙かもしれません。別に、どこがダメとか悪いとか、そういうのはないのですが、いきのいい本屋さんに感じられるわくわく感には欠ける感じかなあ、というのが正直な印象です。
でも、だからといって行く価値がないわけではもちろんないので、本好きがウラジオストクを訪ねる機会があったら、ぜひ行ってみるといいと思いますよ。ぼくのような失敗をしないためにも、ロシア語が得意だという方はともかく、そうでない方は、キリル文字の読み方や、「本屋」「文学」「絵本」などのロシア語や、自分の好きな作家の綴りくらいは調べてからにするほうが良さそうですね。
ドーム・クニーギのそばに小さな図書館がありました。本屋さんを探して周辺をうろうろしているときに、たまたま見つけたものです。中に入ってみると、図書館というよりも図書室という感じの、一部屋しかない小さなもの。撮影OKとのことだったので、中を撮らせてもらいました。



↑野鳥好き兼本好きがこの案内に目を留めないわけがありません。カモメと本が合体したようなイラストが目を引く、図書館の入り口のポスター。


↑中はこのような感じ。天井までの高い本棚が壁面を覆っていますが、ご覧の通り、本はぎっしりではなく、かなり余裕のある並べ方で、量はそんなにはありません。部屋には椅子が並べられ、壁面の一つには大型モニタが備え付けになっており、講師席のようなスペースもありましたから、講演やイベントにも使われているのでしょう。

↑入り口付近には各種イベントなどの案内なのでしょうか、チラシが貼り出されています。


↑書影を小さくコピーして豆本のようにしたものがディスプレイされていました。豆本といっても中身はありませんから、ただの飾りのようですが、ちょっと目を引きますね。
司書の方が、知的な雰囲気をたたえた眼鏡女子で、きれいな英語を話す(今回の旅では英語が通じないのがふつうで、英語を話せる人には数えるほどしか会えませんでしたが、そのなかの1人で、しかも旅行中に出会った英語の話し手のなかで、いちばんきれいな英語を話す方でした)親切な方で、実は、ここで本屋の場所を教えてもらったのでした。この図書館に行き当たっていなかったら、中にいた方が英語を話せる方でなかったら、本屋も発見できていなかったかもしれません。
次回は、ハバロフスクの本屋さんです。