2018年7月29日、パルコブックセンター吉祥寺店の最終日。
閉店になる書店の最終日に駆けつけたりすることは、ふだんはあまりしないのですが、今回は我が街吉祥寺の書店ということで、顔を出さずにはいられませんでした。
台風で、前日の土曜日は大雨。日曜日は、前日の雨が嘘のような晴天でした。最終日が雨でなくて、良かったなあ。



↑商業施設内のお店の場合、いわゆる外観の写真が撮れません。こちらはパルコの外に出ているショップ案内。
閉店時間ぎりぎりだと、お店の人の迷惑になるかもと思い、時間に余裕をもって出かけたのですが、結局、閉店時間まで、2時間ほども店内にいることになりました。会社帰りに寄るときは、どうしても、自分が興味のあるジャンルの棚ばかりを見ることになりがちですが、この日は、お店の隅から隅まで、時間をかけてじっくりと見ることができました。
店内の様子ですが、さすがに商品は減っていますし、面陳もふだんよりも多めになってはいましたが、それでも、言われなければ最終日だとはわからないくらい、棚にはしっかりと本がそろっていました。早めに本を返品してしまったほうが、最終日や閉店後の片づけはずっとラクになるはずです。それでも、こうして商品を維持したのは、お店のみなさんが、最後まできちんと本を見せたい売りたい、そのように望んで努力したからでしょう。
児童書売り場。夜ですから、当然子どもや親子連れの姿はありません。棚の前にぽつんんと置かれた小さなテーブルとイスを眺めていたら、うちの本好きっ子も小さい頃ここでよく本を読んだなあ、などと思い出され、感傷的な気分にさせられました。この売り場が子どもでいっぱいになっていた、にぎやかなときのことを覚えているだけによけいに……。
パルコブックセンター吉祥寺店、あちらも見たい、こっちも見たいと、店内をうろうろしていたら、思いのほか時間がたっていたようで、気づいたら、閉店時間になっていました。店内にはお客さんがまだ何人も残っていて、レジに並んでいる人もたくさんいました。

店内の一画、フェアやイベントに使われていたスペースがこの日は仕切りで覆われていました。同店最後のイベント、江口寿史さんのトークイベント&サイン会が行われていたのです。早々に予約で満席になっていたようで、店内に、トークの声やお客さんの楽しそうな声が時折聞こえていました。イベントの様子は、吉祥寺経済新聞で写真入りでレポートされていますので、参加できなかった方はそちらをチェックするといいでしょう。「パルコブックセンター吉祥寺店」閉店 最終トークイベントに漫画家・江口寿史さん」(8/7 吉祥寺経済新聞)。

↑イベントの最後が江口さんなら、フェアの最後はこちら、かな。「「愛の縫い目はここ」詩人・最果タヒさんが選ぶ〈愛より朝が待ち遠しい日の、10冊〉選書フェア」。写真は店頭で配布されていた選書コメントのペーパー。すべてのコメントに書き下ろしの詩が掲載されています。
途中、地理的に離れていて通えていなかった時期もあるけれど、学生時代から出入りしていたお店です。本の買い物だけでなく、仕事の用事で通ったこともあります。独りで来たこともあれば、家族で来たことも。お店のみなさんとおしゃべりしたり、飲みに行ったりも、数え切れないほど。吉祥寺書店員の会「吉っ読」の合同フェアなど、自分が選書した本やPOPを店頭に並べてもらったこともあります。『ぼくのミステリ・クロニクル』のときは、長く店頭で平積みにしていただくなど、とてもよくしてもらったこともありました。
そのようなお店が、翌日にはもうないのかと思うと、なんだか妙な感じでした。この駄文を連ねているいまでも、まだ実感がわきません。

↑店内は撮影禁止だけれど、帰りのエスカレーターから店内の様子を、最後ということで、ぱちり。

↑遠くからでもすぐにそれとわかる、色味とロゴが特徴的な同店のブックカバー。

↑最後の買い物のレシート。ふだんは、レシートをとっておいたりはしませんが、この1枚は、最終日に買った本の1冊にはさんでとっておきたい気もします。
パルコブックセンター吉祥寺店は1980年にオープン。吉祥寺パルコのオープンのときから入っていたお店の1つです。その後、リブロに改称、数度の改装を経て、2013年に再びパルコブックセンターに改称して、リニューアルオープン。あと2年で40周年というタイミングでした。
まさか、吉祥寺からリブロ/パルコブックセンターがなくなってしまう日が(さらに言えば、渋谷と吉祥寺の両方からパルコブックセンターがなくなってしまう日が)、自分が現役の間に来るとは、思ってもみませんでした。
この空犬通信にも書きましたが、跡地には、映画館アップリンクが入ることが報じられています。200数十坪ほどのフロアは、映画館が入るには天井高が足りない感じに見えますが、ミニシアターが5スクリーンできるのだとか。オープンは2018年冬とのことです。
書店が減って映画館が増える……本好きと映画好きはけっこう重なっていると思いますが、プラスなんだかマイナスなんだか、複雑な気分にさせられますね。ただ、書店跡には、カルチャーにはまったく無縁の業種が入ることが多いことを思えば、むしろ幸せなことなのかもしれません。
パルコブックセンター吉祥寺店は、吉祥寺書店員の会「吉っ読」の参加店で、創立メンバーでした(創立時はリブロ)。これで、吉っ読創立店3店のうち、2店が閉店になってしまったことになります(創立時のお店は、BOOKSルーエ、弘栄堂書店、リブロ吉祥寺店)。
吉祥寺書店員の会「吉っ読」参加店合同で発行している「ブックトラック」というフリーペーパーがあります。2017年に刊行して以来しばらくごぶさたでしたが、パルコブックセンター吉祥寺店の特集号を発行すべく、現在、鋭意制作中です。完成しましたら、空犬通信や当方のツイッターでご報告します。
パルコブックセンター吉祥寺店の関係者のみなさん、長らく吉祥寺の本好きに、たくさんの本との出会いの場を提供してきてくださり、本当にありがとうございました。