少し前の話になりますが、10月20日付の朝日新聞に、「根づくか「ちょい変」索引辞典 「引きやすく」知恵絞る」なる記事がありましたね。難読語をうまく引かせようという新しい工夫で編纂された以下2冊の辞書が紹介されていました。
- 玄冬書林編・篠崎晃一監修『ウソ読みで引ける難読語辞典』(小学館)
- 山田博・高田任康編 『漢ぺき君で引く現代漢字辞典』(サンルイ・ワードバンク)
『ウソ読み』は当てずっぽうの読みで引けるというもので、「ちょうかん」から「長閑(のどか)」が引けるなどの例が挙がっています。
『漢ぺき』はつくりやへんの構成要素の読みで引けるというユニークきわまりないもの。例に挙がっているのは、「嗣」を例にとると、へんの上部分の「口」、その下の「冊」、つくりの「司」の読みの頭文字をとって「くさし」でこの字が引けるらしい。うーん……。
難読語は難読というぐらいだから、「読み」で引くのが前提の辞典類では引けないことが多い。それならば、というのでいろいろ工夫したのがこの2冊。こうした工夫自体は歓迎すべきものだと思うけれど、成功しているかどうかはまた別の話。
前者はなるほどという感じで、読みのあやしかったもの、わからなかったものがいくつか引けて、ある意味実用的ではあるなあと感じましたが、記事でも指摘されているように、ウソ読みが印象に残ってしまうかもしれないという危惧も。後者はシステムが頭に入っていないと引くのに相当テクニックがいるという感じ。辞書を引くのにこの辞書特有のルールを理解しなくてはならず、少なくともぼくには使いこなせそうにはありませんでした。
ある書店員さんに聞いたら、年配の男性を中心に売れているとか。調べる=ググる、という世代でない方にはおもしろい辞書としていいかもしれません。
ところで、最近出た本を見ると、この2冊以外にもちょっと変わった辞書が出ていますね。
- ササキ マサタカ『ザ・カタカナ語ディクショナリー』(小学館)
- 永田守弘『官能小説用語表現辞典』(ちくま文庫)
カタカナ語辞典は各社から各種出ていますが、この『カタカナ』は収録語彙のセレクションと組み合わせがユニークで、イラストも楽しく、読み物としてもおもしろいです。『官能』のほうは、別にこれを使って官能小説を書こうとも読みこもうとも思いませんが、こういう辞書が存在すること、しかも文庫になってしまうあたり、まだまだ日本の出版界も捨てたものではないと同業者として妙な感心をしてしまいました。
これはそのものずばりの表現を集めたものですが、別に官能小説でなくても、特定の身体部位を取り出してそれを言葉で描写しようとすると、なんとなくエロティックな感じが伴うもの。過去の文学作品から身体部位の描写を集めた、中村明 『人物表現辞典』(筑摩書房)の、たとえば「項(うなじ)」なんて項目に並んだ文学的描写の数々を読んでいると、こちらにも同種のエロティシズムが漂っているのがわかる……ような気もします。あっ、これも筑摩書房だ。
◆今日のBGM◆
- Johnny Guitar Watson『Bow Wow』