河出文庫版『須賀敦子全集』の刊行が始まりましたね。
- 須賀敦子『須賀敦子全集 第1巻』(河出文庫)
鮮烈なデビュー作『ミラノ霧の風景』、そして『コルシア書店の仲間たち』、さらに単行本未収録の連作エッセイ『旅のあいまに』12篇、が収録されています。
この最後の「単行本未収録」というのがくせもの。須賀敦子さんの本は単行本か文庫でだいたい持っているのですが、こういうのがあるので、また買っちゃうんですよね、ダブり承知で。カバーの感じも落ち着いていていい感じだし。刊行予定を見ると、『遠い朝の本たち』本がらみの著作を集めた第4巻なんて、やっぱりほしくなります。
ところで、いつも思うのですが、今回のように、多くの人が文庫・単行本をすでにそれなりに持っていたりするであろう人気作家のこういう文庫全集が出た場合、ファンのみなさんはどうしてるんでしょうか。上製本の全集はコアなファン、マニアしか手を出さないでしょうから、別に気になりません。マニアなら、全編ダブりでも、やはり全集という完全なかたちでほしいと思うだろうからいいのですが、やっかいなのは、マニアでなくてもふつうに買えてしまう、というか買いたくなる、こうした文庫でまとまるタイプです。
ちくま文庫は、この手の作品集の宝庫(というか元凶?)で、これまでにも坂口安吾、夢野久作、泉鏡花、稲垣足穂、内田百間らの文庫全集、色川武大、井伏鱒二、田中小実昌らのエッセイ集成などで大いに悩まされたものです。うち、安吾、久作、色川はそろえましたが、ほかは手元の本とのダブり具合がくやしくて、買わずにいます。百鬼園先生なんて、ちくま文庫でそろえたほうがそろえやすいに決まっているのに、でも、中途半端に(しかし、それなりの冊数が)そろった旺文社文庫/福武文庫から乗り換えるもしのびない……。
というわけで、なんだかうれしいような、くやしいような、はらだたしいような、でも、やっぱり歓迎はしたい、そんなフクザツな気分……それが文庫版全集刊行を前にした本好きの本音なのでした。

↑かなりがんばって集めた旧表紙版の河出文庫、稲垣足穂たち。百鬼園先生文庫みたいに中途半端なのもくやしいですが、こんなふうにそろっちゃってる場合も、やはりそれなりにくやしいしい……。
◆今日のBGM◆
- Larry Carlton 『Sapphire Blue』