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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

新書読み下手にもおもしろい……『新書七十五番勝負』

休日の午後、窓際で本を読んでいると、ぽかぽかあたたかくて、たびたび落ちそうになっていた空犬です。


さて。いつだったかの予告通り、今年は本の本、メディア周辺の本をちょっとがんばって紹介していくつもりですよ。で、まずはこれ。『本の雑誌』で、個人的にもっとも楽しみにしている連載の1つが本にまとまりました。


  • 渡邊十絲子『新書七十五番勝負』(本の雑誌社)



渡邊十絲子さんの連載、本誌でのタイトルは「馬の耳に新書」。以前にも書いたことがありますが、ぼくはふだんはあまり熱心な新書読みではありません。熱心でないどころか、ここ数年の新書戦争でレーベルが増えすぎてしまったせいで、新書売り場は見て回るのもうんざり、ほとんどスルー、みたいな感じ。買って読むのは、『モスラ』とか『超合金』とか『ロボット』とか、ピンポイントでこちらの興味に引っかかってくるものや、宇宙ものなどごくごく一部。




そんな状況だっただけに、たしかな選球眼で、質の高い新書を紹介してくれるこの連載は、なかなかありがたい存在なんですよね。実際、今回本にまとまったものを読んでいたら、ああ、これも買った、これも読んだな、と、この連載がきっかけで手にした新書がいくつもありました。



多少問題があるとすれば、渡邊十絲子さんの新書紹介術が達者すぎて、そのおもしろさが、肝心の新書のそれを上回ってる(可能性がある)と思われることがあることぐらいでしょうか。実際、ああおもしろそう、と思って買った新書が、そうでもなかったこともないわけではない(苦笑)。


でも、まあ、こういうことにも気づいたりするわけです。この新書本にかぎらず、書評や紹介文全般に言えることなのかもしれませんが、それは、その本がおもしろくなかったわけでも、また、その本を紹介した人に問題があるわけでもない、ということに。


本のおもしろさって一元的なものではないんですよね。当たり前だけど。その本自体が本来的に持っているおもしろさだけでなく、それを引き出せるかどうか、の問題があるのだろうと。その意味で、渡邊十絲子さんという書き手/読み手は、新書のおもしろさを引き出すのに長けているのだと思います。それは、本書の「まえがき」的な位置づけにあたると思われる一文、冒頭の「時をこえる本」を読めば明か。その意味では、ぼくのような新書の読みが下手な読者からすると、うらやましいような気もします。


連載時に読んでいるからとスルーしてしまう人もいるかもしれませんが、先の「時をこえる本」をはじめ、数本の新書論的な文章が書き下ろされているほか、書き下ろし新書評が十数本も収録されていますから、連載既読でもおもしろく読めること請け合い。新書読みはもちろん、ぼくのように、むしろ新書読みでない人にこそ、おすすめの1冊です。


ところで。別に苦言、というほどのことではないのですが、この本、カバーのそでにも裏にも、本体の奥付にも、どこにも著者略歴がないんですよ。あったほうがいいと思いますよ。『本の雑誌』も略歴を載せない雑誌ですしね。


こんなおもしろい文章を書く人はどういう人なのか、ほかにどんな本を書いているのか、というのは誰しも気になることですからね。ググればいいじゃん……たしかにそうなんだけど、でも、本の作り手が言っちゃいけないことだよね、それは。本業(というのも変ですが)は詩人であること、ぼくより少し年上の方であること、などは、「中公新書の森 200店のヴィリジアン」に収録されている奥泉光さんとの対談に添えられた略歴で知りました。ちなみに、この対談では写真も収録されていますので、お顔も拝見することができましたよ。





↑詩心のない空犬には詩集のお仕事のほうはよくわからないのですが、こんな本も出されているようで。ちょっとおもしろそう。bk1の同書のページには著者コメントが掲載されていて、著者略歴ではわからないお人柄が出ていていい感じ。



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