会社帰りに吉祥寺へ。啓文堂書店吉祥寺店にNさんを訪ね、仕事の話をしばし、それから自然科学本の棚や通路で展開中の宇宙関連本フェアをのぞいて、百年へ。
好みの合う古本屋さんがむずかしいのは、好きな本が書棚のあちこちに見つかるのはいいんだけど、たいてい持ってるので買えないこと。「ああ、この本、持ってなかったら、買えるのになあ!」などと、まったくわけのわからぬことを心の中で叫びながら、棚の前で歯がみする四十男。困ったものです……。後藤明生の本がずらりと並ぶ棚なんて、彼の本をぜんぜん見つけられずにいた20年ぐらい前のぼくを連れてきて見せてやりたいですよ。
文庫棚に探偵小説(ミステリー、ではありません)の含有度が意外に高いのもポイント。教養文庫の橘外男傑作選全3巻を探している人、本通信をお読みの方のなかにいませんか? 「ロマンの饗宴」ですよ。今なら棚にありますから、探偵者でまだお持ちでない方は全速力で吉祥寺にどうぞ。ああ、持ってなかったら、ぼくが買うのになあ!
これは探偵じゃないけど、その流れで思い出しました。澁澤の『世界幻想名作集』の親本があったなあ。これ、河出文庫になってますが、親本ってあんまり見かけませんよね。『グラフィック版 世界の文学』(世界文化社)の別巻です。興味のある方はぜひお急ぎあれ。
古本屋と言えば、ちょっと残念な話も。お隣、三鷹の北口歩いて徒歩数分のところにある古本屋さん、ブックステーションが、8/1で閉店になるそうです。
新古書店みたいな名前ですが、品揃えはけっこう幅広くて、古い本もちゃんと置いてるお店でした。広くて天井の高い店内には硬軟とりまぜた本がぎっしりで、しかも遅くまでやってて、好きだったのになあ。ある時期になくなっちゃったけど、かつては、CDやレコードを、それもちょっとした中古盤屋さん並の量を置いてたりしたことも。残念。
思えば、ブックステーション、ぼくがこのあたりに住み始めたころは、いくつも店舗があったんですよ。いつのまにやら次々に閉店。なかでも、井の頭通り沿いにあった「和(なごみ)」はかなり大きな店舗だったので、近隣の古本ファンにはショックだったはず。三鷹のこの店が最後の砦だったのに……。
現在閉店セール中で、雑誌は半額、文庫・単行本は30%offでした。中央線沿線の古本者はぜひ最後の買い物に駆けつけてください。
↑こんなものたち他、数冊をまとめ買い。読んだことあるのとか、下手すると持ってるのとかの危険性大なセレクトですが、いいんです、青背をたくさん並べてくれていたことへのリスペクトってことで。重複本は書店員仲間の誰かにあげればいいしね。

↑このお店で買った本で、もっとも思い出深い1冊はこれ。残念ながら函欠けだけど、裸本でも十分にうれしい発見。しかも裸本にしても安過ぎる値付け。一時期けっこうな値段がついていた、アルフレッド・ベスターのサンリオ文庫を格安でゲットしたことも。こういう買い物の楽しみがある本屋さんだったのになあ……。