大阪書店回り、続きです。今回はツイッターで存在を知って以来ずっと気になっていた古書店、大吉堂の訪問記を。
お店のサイトには《YA(ヤングアダルト)やライトノベル、ジュブナイル、児童書、ファンタジー、ミステリ、SF、アニメノベライズなど今の10代に勧めたい本や、かつての10代が楽しんだ本など「10代の心(実年齢問わず)を刺激する本」を並べています》とうたわれています。
児童書専門店、絵本専門店は全国にありますが、YAに力を入れているとしているお店となると、めずらしいのではないでしょうか。どんな本がどんなふうに並んでいるのか、お店のサイトに並ぶ取扱ジャンルに関心のある身としては気になっていたのです。しかも、《店内で、無料で使える何もしなくていい場所「10代のヒミツキチ」をやっています》ともあります。ますます気になりますよね。
お店は、御堂筋線の昭和町駅から歩いて10分ほど。地図を片手に歩いていくと、どんどんふつうの住宅街になっていくので、大丈夫かなと、この辺りが初めてで土地勘のないものは心配になりますが、道自体は簡単です。


お店の外観はこんな感じ。住宅街に溶け込んでいます。まさに街の本屋さんですね。
店内に足を踏み入れると、なつかしい本がたくさん目に飛び込んできます。集英社コバルト文庫などの昔からあるティーン向けレーベルや、ライトノベルレーベルの作品がぎっしり。同店は、先述の通り、YAなどを売りにしているお店ですから当然といえば当然なんですが、ふつう、大型の新古書店は別として、この規模の古本屋さんで、これらのジャンルをこれだけそろえているお店はめったにありませんから、棚の見た目も新鮮な感じです。


店内の本は、棚の前後に並べ、後ろの本も見えるように段差をつけるなどの工夫がされるなど、見やすく並べられています。ただ、整理されすぎている感じはありませんから、あちこちの棚で発見の楽しみがあります。
文庫が多めに見えますが、単行本もしっかりそろっていて、ぼくが小学校のころに親しんだ、昭和の時代の子ども向け文学全集なども並んでいました。この品ぞろえだと、マンガが並んでいてもおかしくなさそうですが、マンガはありませんでした。
「10代のヒミツキチ」のスペースも見てきました。お店の奥に席が設けられています。秘密基地っぽい、ちょっと奥まったつくり。席料などはなく無料で、本の購入者限定などのしばりもなし。《何もしなくていい場所》なんだそうです。本屋の一角にこんなスペースがあって自由に使っていいだなんて、近所に住んでいたら、毎日通ってしまいそうだなあ。昔の駄菓子屋は、店前やゲーム機の周りに小学生がたむろしていたりしたものですが、それに近い感じかも、などと思いました。
取扱ジャンルが《10代の心(実年齢問わず)を刺激する本》というと、自分には関係がないと思ってしまう人もいるかもしれませんが、実際に棚に並んでいる本を見ると、特定の層にだけ向けられた感じはほぼなく、おそらく、どの世代の人が見ても、なつかしい、と感じる本や、これ知らなかった、なんて本がいくつも見つかるのではないかと思います。
立地的に、近隣の人以外は何かのついでにという感じではないかもしれませんが、本好きならば、わざわざ足を運んでみる価値の十分過ぎるほどにあるお店だと思います。後述の通り、天王寺にはすぐに出られますから、天王寺・あべの周辺の書店巡りコースに加えるといいと思いますよ。おすすめです。お店の品ぞろえや場所などの詳細はお店のサイトのほか、同店はツイッター(@toyritz)での情報発信にも熱心ですので、そちらもご覧になるといいでしょう。
帰りは違うルートで、と思い、阪堺電車の東天下茶屋駅まで歩いて天王寺へ出ることに。事前に調べていなかったので、まったくの偶然なんですが、駅までの途中に本屋さんがあるではないですか。びりぃBooks。インスタグラムによれば《中古・新刊絵本と雑貨、ギャラリーの空間です》とのことで、場所は安倍晴明神社のすぐそばです。



↑入り口。看板には絵本と雑貨の店とあります。写真、上中央の看板が目印です。
マンションの1室を使った店で、靴を脱いであがるスタイルです。
店内、入ってすぐのところには、マスキングテープやメモ帳、アクセサリーなどの雑貨類が並びます。本は、新刊と古書の絵本が中心で、一部読み物も並んでいます。
当方の個人的な好みからするとちょっと商品量が少ないかなという感じに見えましたが、すぐに天王寺に出られる町である(つまり、ジュンクや喜久屋書店に行ける)ことを考えれば、在庫点数で勝負する必要はないのでしょう。「探しているものがあれば教えてくださいね」と、気さくな感じの女性店主に声をかけられたので、たくさんの在庫から客に本を選ばせるのではなく、客とのこまかなやりとりでお客の求めるものを特定していくような、そんな丁寧なやりとりを基本としているお店なのだろうなあと、そんな印象を受けました。
在庫点数は少なめとはいえ、それなりに本は並んでいるわけですし、並んでいるのが当方も好きかつ得意な絵本なわけですから、ふつうなら棚をじっくり見たくなるところなんですが……しばらく前にツイッターでも話題になった、ある本屋さんでのトラブルの件が頭をよぎり、中年男性があまり長時間、女性店主のお店、それもマンションの一室を利用した決して広くはないお店の中にいるのはお店の人もあまり気持ちがよくないだろう、そんなことが気になり、でも、何も買わずに出るのも……などといろいろ迷ってしまって、ゆっくり見られなかったのでした……。気にしすぎ、なのかもしれませんが……。
同店を訪ねてみようという方は、お店の営業日が変則的なようですので、営業日・営業時間を確認してから訪ねるのが良さそうです。先のインスタのほか、ツイッター(@billy_books_)アカウントもあります。
びりぃBooksから東天下茶屋駅までは徒歩で数分です。駅前には昔ながらの町の本屋さん、今西書店がありました。新刊書店です。大吉堂も子どものためのスペースを提供しているお店でしたが、ここにも「自習室」の大きな案内が。

店先には、巣立ったばかりであろうツバメたちのかわいい姿がありました。本屋さんとツバメ、うれしい組み合わせです。




駅前には前田書店という古本屋の姿もありましたが、シャッターがおりていました。

阪堺電車に乗るのは初めてです。2018年に第6回「大阪ほんま本大賞」を受賞した山本巧次『阪堺電車177号の追憶』(ハヤカワ文庫)の阪堺電車ですね。


天王寺に出て、喜久屋書店阿倍野店へ。ここは何度来てもいいなあ。

広いのに、店内の棚配置がいいせいか、ストレスなく店内を巡回、散策できるんですよね。コミックと児童書が別棟になっていて、それぞれたっぷりとスペースがとられているのうれしいところ。
天王寺はほかにもいくつか新刊書店がありますが、今回は時間の関係で残念ながら他は寄れませんでした。