先日、シアターN渋谷で、『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』(監督:ロブ・ゾンビ)を観てきました。『ミーナの行進』を紹介したすぐ後に、こんな作品を取り上げたりすると、読者のみなさんがずずずーと音を立てて地平線の彼方に引きまくっていくのが目に見えそうですが、懺悔のつもり(?)で書くことにします。

↑ぜったいに道で会いたくない人たち
とはいえ、やはりこの作品の話は思いっきり人を選びそうなので、まずは館の話をさせてください。なんか順番が変だけど。でも、前半はふつうの映画好きの方も読んでくださいね。
さて、このシアターN渋谷、目指しているのは「本屋さんみたいな映画館」なんだそうです。サイトから、宣言的な一文をひいてみます。
《“シアターN渋谷”のコンセプトは、「本屋さんみたいな映画館」です。/本屋さんは、雑誌・コミック・文芸書・児童書・実用書から専門書まで 様々なジャンルの出版物を扱い、年代・性別を問わず、/最も幅広いお客様が来店する小売店の1つであると言われています。/“シアターN渋谷”も幅広い年齢層のお客様にご満足いただける作品を選んで上映し、たくさんの方に出会える空間を目指しています。》
なんだそうです。なんだか好感が持てますね。
同時期のレイトショーが、レゲエ映画の定番『ロッカーズ』だったりするあたり、セレクションのユニークさがうかがえます。まあ、あきらかに観る者を選びまくっている『ロッカーズ』と『デビルズ・リジェクト』が館の言う「幅広い年齢層のお客様にご満足いただける作品」なのかどうか、というつっこみはここではなしってことで……。
この館は、もとユーロスペースがあったところに、居抜き(映画館の場合もこの言葉でいいんだろうか)のようなかっこうでオープンしたもの。本日記にも何度か登場のシネマヴェーラらと並んで、渋谷のあたらしいミニシアターの動きとして、話題になったりしましたね。少し前の記事になりますが、朝日マリオンの記事に「映画館に新しい風」として、シネマヴェーラ、上野の一角座らと並んで紹介されています。
では、これ以降は作品の話です。だいじょうぶそうな方だけ、「続き」をお読みください。
ホラー好きには説明不要ですが、副題にある通り『マーダー・ライド・ショー』の続編で、前作に勝るとも劣らぬ凶悪極まりない作品です。『映画秘宝』でも、そのニューシネマっぽい作り、男泣き映画ぶりが絶賛されてましたが、まあそれはその筋の人が観れば、ということであって、ふつうの人にとっては不快でしかない描写が延々と続きますから、要注意です。コアなホラー者以外は、即刻タイトルを忘れてください。いや、間違って観ちゃったりしないよう、禁忌リスト入りさせる意味では覚えておくといいかもしれません。
以降、ラストシーンにふれてます。ご注意ください。
ニューシネマっぽい、と書きましたが、70年代のあの雰囲気が好きな方には、遅れてきたホラーテイストのニューシネマ(?)として楽しめる(はないか)かもしれません。ラストは、からくも保安官の復讐を逃れた3人の逃避行、そして行く手をはばむ警官たちのバリケード。スローモーションを使って、3人が蜂の巣になるところを、いやというほどじっくり見せてくれます。この場面に『俺たちに明日はない』を思い出す人は少なくないでしょう。しかも、流れる音楽が、レーナード・スキナードの「フリー・バード」。
ほかにも、セリフからファッションからBGMから、70年代後半のやさぐれアメリカが全開なので、そういう意味では、70年代テイストのアメリカ映画ファンであれば、ホラーが特に好きではなくても作品の雰囲気を楽しめるかもしれません。なんて、ちょっと無理にすすめてみたりして。
音楽は全編にわたって、いなたいのがふんだんに使われていて、いい雰囲気です。冒頭はいきなりブラインド・ウィリー・ジョンソンのむせび泣くようなスライドギター、クライマックスは先にも書いた「フリー・バード」(歌詞がわかるとなおいいです)、エンディングはテリー・リード。ほかにもオールドロック、サザンロック、カントリー、ブルースがじゃんじゃんかかります。監督の趣味がわかりますね。
さて、この秋冬はホラーファンは大忙し。この日もじゃんじゃん予告編が流れていましたが、同じ渋谷のシアター・イメージフォーラムでは、これまた凶悪凶暴きわまりない人体損壊オンパレードのスプラッター『ミートボールマシーン』(監督:山口雄大)がレイトショーで上映中。相当危険な中身のようです。さらには、その過激な内容ゆえに日本公開が危ぶまれていた、今年のホラーの目玉、『ホステル』(監督:イーライ・ロス)がとうとう日本上陸。10月28日からシアターN渋谷で公開です。ホラー者は渋谷へレッツゴーですが、苦手な人は毒気にあてられぬよう、緊急避難です。

↑チラシからすでにゴア……
◆今日のBGM◆
- スティーリー・ダン『ザ・ベスト・オブ・スティーリー・ダン』
サントラは先日紹介しちゃったので、今日はこれを。作中で、「リーリング・イン・ジ・イヤーズ」が使われています。