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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

神保町の夢野書店と、野鳥のハンコ

根っからのインドア派なもので、おこもりだの巣ごもりだのはまったく苦ではなく、むしろ読書や音楽の時間がいつもよりとれていいかも、くらいな感じなんですが、ふだんから多めに発現気味の現実逃避欲がこのところのウイルス騒ぎや自粛ムードで妙に増大していたりするもので、巣ごもり中の読書も、なるべく現在(いま)と無関係なもの、非日常的なものを(って、ふだんもそういう傾向にあるのですが)と、そんなことになっています。


なものですから、週末は、子どものころに好きだった昭和なマンガを読み返したりしているのです。これがなんというか、実に楽しい。この前は手塚の諸作品(『W3』『どろろ』『バンパイア』『マグマ大使』『ブルンガ1世』他……そう、サンデーコミックスで読める作品が好きなんです)を、その前は『マカロニほうれん荘』を一気読み。我が家の本棚には藤子も石森も松本零士もありますが、これは楽しいなあ、と調子に乗ってそんなのばっかり読んでいたら、さすがに手持ちが尽きてきましたので、手放してしまったり、友だちから借りて読んだのでついぞ買う機会がなかったりした、昭和のなつかしマンガを、神保町の夢野書店と中野のまんだらけでまとめてゲット。


うち、夢野書店は、《古書漫画を専門とする懐かしく温かいショップ》をうたうお店で、神保町古書センター内にあります。古書漫画を専門をうたうだけあって、古いマンガの品ぞろえはさすがなんですが、アニメや特撮などにも強くて、店内には本だけでなく、ソフビやプラモなどおもちゃ類、カードなどの紙もの類、レコードにCDに、マンガ・アニメ・特撮ジャンルのミニコミにと、その手のものが好きな人たちが喜びそうな商品がぎっしりです。昭和のマンガ・アニメ・特撮などが好きなタイプなら、店内にいるだけで幸せになれるお店でしょう。ぼくは中野他のまんだらけが大好きなんですが、まんだらけの各店・各売り場をぎゅっと1つの店にまとめたような、そんな感じのお店なので、大変重宝しているのです。


夢野書店 お店のハンコ

品ぞろえがいいだけでなく、お店の人の感じもいいんですよね。梱包も丁寧だし、ほんと、言うことないです。


前置きがすごく長くなりましたが、今回は、その夢野書店で求めた古本漫画の話。


古本を買う際に気になるのが、本のコンディション。手にとって外や中を確かめて、納得のうえで買うのがいちばんで、毎回そうできればいいのですが、通販やオークションなど、現物を見ずに買う選択肢も増えましたから、ものが届くまではどきどき、手にしてみたらがっかり、なんてこともしばしば。古本好きあるあるでしょう。


書き込み、線引き、水濡れ、破れ、折れ、擦れ、汚れ、ヤケ……古本のコンディションででやっかいなものはいろいろありますが、「印あり」もなかなか面倒ですよね。古本の傷みのなかには、修復が可能なものもありますが、なにしろ「印あり」の印はまず消せませんから(ホワイトで塗りつぶしたり、紙を貼ったりしている例を目にしたことはありますが……)


この場合の「印」は蔵書印のほか、個人用のハンコや図書館除籍本などにある施設の所蔵印などもあります。蔵書印・所蔵印、個人のハンコ、いずれの場合でも、デザイン的にすぐれていたり、味のあるものだったりする場合はまあかわいいものですが、多くはやはり歓迎しづらいものですよね。


見返しや奥付に1か所だけ、くらいならまだいいのですが、なかには、なんでこんなところにハンコおすかね!と怒りに震えるほかないような、めちゃくちゃな捺し方がされている例もあります。これまでで、いちばんこわかった「印あり」本は、ある古いSF小説本。中を開くと、見返しに、扉に、扉裏に、目次に、本文の空き部分に……と、本のあちこちに、何十か所もハンコ(蔵書印)おされているというもの。ここではくわしくはふれませんが、古本業界には有名なハンコだらけ本の話などもあるので、興味のある方は調べてみるといいでしょう。


で、今回、夢野書店で買った本の話です。たくさん買った古本のなかに、印が複数捺されたものがありました。ビニールパックされていたため、店頭で中は確認できなかったのですが、値段表に「印あり」であることはちゃんと明記されていて、付箋で数も示されていましたいたから、納得のうえでの購入です。


帰って、包みをとき、中を見てみると、「印」は、こんなのでした。


古本で見つけたハンコ(野鳥)

↑野鳥柄で、しかも、これ、おそらくはツバメですよね。


このような蔵書印……としてつくられたものではないと思いますし、ランダムな捺し方や捺された場所から、蔵書印を意図して捺したものでもないと思いますが、よりによって野鳥好き、それも大のツバメ好きの手にこのような「印あり」本が渡ってくるとはなあ。ツバメだけに本の渡りか、などと、くだらないことを言いたくなるくらい、偶然にしては出来過ぎですよね。


本が人の手から人の手に流れていく、「古本」のおもしろさを、久しぶりに実感させてくれるような、そんな大変に印象的な買い物になりました。



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