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大雲院と鳥取東照宮(ⅩⅩⅠ)

20160601 随神門虹梁 拓本採取の様子 随神門端間飛貫


 5月晦日(火)、先週に引き続き、鳥取東照宮の建造物を対象に調査演習をおこなった。なお、演習に先立ち、会長・教授が県神社庁に挨拶に赴かれたが、閉館していた。


1.随神門の断面実測と絵様拓本採取(吉田・大石・石田)
 既報のとおり、随神門は三棟造の形式で、正面側のみ化粧垂木をあらわとし、背面側に天井を張る。ここにみえる垂木は化粧垂木であり、その上に隠れた野垂木はみえない。実測できないので、この部分はブランクとした。絵様は中央間と端間の飛貫、正面側の木鼻などから採取した。中央間の虹梁型飛貫の絵様は派手で年代を判定しにくかったが、端間の絵様(↑)はシンプルで、渦の形が手水屋および中門とほぼ同形であることが判明し、彫りの幅や渦の凹みなどは天保年間の様式とみてほぼ誤りないという結論に至った。


20160601 随神門木鼻 随神門木鼻


2.手水舎の平面実測と絵様拓本採取など(木村・吉田・大石・石田)
 手水鉢の側面に年号を含む銘文が刻まれていることを前回述べたが、常時湿っているため、通常用いる乾拓ではなく、湿拓による拓本採取に取り組んだ。研究室始まって以来の経験であり、会長による懇切丁寧な指導のもとに実施した。墨をつけた湿布で和紙を撫でるように色をやさしくつけていく手法である。乾拓でもそうであるが、湿拓も撫でる際の力加減が重要である。短時間で見事な拓本ができあがった。浮かびあがった銘文を以下のとおり。

  慶安三年四月十七日 荒尾但馬守成利
  天保三年九月十七日 荒尾内匠守成緒 修造

 少なくとも手水鉢に関しては、鳥取藩の家老、荒尾氏の寄進だと思われるが、手水屋・随神門のすべてを含む可能性があるだろう。「修造」とあるのはたんなる修理ではなく、再建(造替)の意と思われる。手水屋も表側は非常に派手につくっており、年代をつかみにくいが、内側は大人しく、妻側虹梁絵様の渦は随神門の渦と酷似している。ほぼ同時期の建立とみて誤りなかろう。


20160601 手水舎虹梁
↑手水舎虹梁  ↓手水鉢銘文
20160601 手水鉢拓本採取の様子 20160601 手水鉢年号拓本




20160601 中門拓本採取の様子



3.中門の断面実測(浅木)
 中門断面は、断面実測初挑戦となるわたしが担当した。過去の先輩が実測した断面図をみながら絵を描き進め、先生とともに採寸した。私は野小屋を意識せずスケッチしたため、屋根が化粧屋根裏になってしまったが、中門にも当然野小屋はあるとの指摘をうけ、修正した。おおぶりの六脚門で木柄の太い男梁の絵様は渦が大きく、下から見上げるとかなり凹んでみえたのだが、拓本をとると、随神門・手水屋の渦と酷似しており、中門も天保の建立とみてよかろう。ただし、野小屋・本瓦葺きの屋根は新しいものである。


20160601 中門木鼻 中門男梁


4.石橋の平面実測(浅木)
 中門左手前の石橋の平面を先生がスケッチされ、浅木とともに採寸していたところ、浅木が方位を間違えたため、平面を描き直し、側面のスケッチも途中までおこなったところで、この日の調査は終了した。


【感想】  4年生になって以降、野外での調査は写真撮影ばかりで、久々の実測であった。実測もありだと感じた。約1年ぶりの実測、初めての断面図と手さぐりに近い形で作業を進めていった。当然ながら、先輩方の野帳と比較すると至らない点が多々あるものの、教授や先輩方のご指導・助言によって今回はなんとか形にすることができた。絵様や銘文の拓本採取によって、曖昧模糊としていた建築年代に光明がみえてきた。私の描いた中門の断面図が将来な指定・登録の資料となるならばとても嬉しいことであり、補足調査などもおこなって完成度の高い図面に仕上げたい。(ゆめみし)


20160601 石橋
↑↓中門前の石橋 これも天保??
20160601 石橋側面


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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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