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風に吹かれて-第7次ブータン調査(2)

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チメラカンの魔女

 8月27日(月)午後。プナカ到着後、チメラカンを訪れました。チメラカンは、中世チベットの高僧ドゥクパ・クンレーがチョルテンを建てたという由緒のある僧院です。今回のフィールドワークでは最も重要な対象の一つです。駐車場で車からおり、長く緩やかに上昇する参道を歩きます。この日は大阪からの飛行機の移動疲れが露骨に出ており、わずかな傾斜でさえきつく感じました。先生もへとへとです。山門近くに大きなマニ車があります。皆、ウタムさんにならい時計回りに車をまわしてチメラカン境内へと入りました。境内に入るなり、スピーカーで拡声された読経が爆音で聞こえてきます。とても不思議な雰囲気でした。


0727チメラカン01マニ車01 0727チメラカン03本堂01側面01


 チメラカンは2013年の第2次調査で訪問しており、白帯先輩を中心にインパルス測量実習がおこなわれました。境内の手前側に大きな菩提樹があり(↓右)、その奥に本堂、その脇に小さなブータン式チョルテン(↓左)があります。菩提樹はスリランカから持ち込まれたものです。釈迦が悟りを開いたブッダガヤの菩提樹は消滅しましたが、初期の苗をスリランカが入手し、スリランカが育てた菩提樹をインドに逆輸出したり、ブータンに寄贈したりしているようです。ドゥクパ・クンレーが金剛=ファルスにより調伏した谷筋の魔女の心臓部分の上に黒壁のチョルテンが建てられたと伝承されています。ブータンにおける色彩は、白が「善」、黒が「悪」と認識されており、悪霊の調伏と関わる仏教施設はすべて壁を黒く塗っています。


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アムチョキムの偶像

 本堂仏壇の中心には本尊たる釈迦像を中心に、グルリンポチェやシャブドゥンなど仏教側の偶像が多数配置されていますが、その一方で、仏壇前側の左右のコーナーには、魔女アンチョキムの像(右)とファルス(左)を祀っています。アムチョキムはボン教の女神でしたが、仏教側からみれば「魔女」であり、僧侶クンレーの金剛によって調伏され、谷の護法尊になりました。驚いたことに、貴婦人のような姿をしておりました。本堂内は写真が撮れないのでおみせできないのが残念です。さらに仏壇右側の棚にはチャナドルジを祀っています。チャナドルヂも元はボン教の「悪魔」でしたが、調伏され善なる神に変貌したものです。


0827チメラカン13
↑本堂略平面(禁転載) 


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プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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