2018人間環境実習・演習B中間発表会(5)
第2章「新仏教徒」の概要と口語訳
能海は中西牛郎の『宗教革命論』(博文堂・明治22年)を引用し、伝統的な旧仏教とこれから展開するであろう新仏教を対比しています。上図にみるように、旧仏教は①保守的、②貴族的、③物質的、④学問的、⑤個人的、⑥教理的、⑦妄想的であるのに対して、新仏教は①進歩的、②庶民的、③精神的、④信仰的、⑤社会的、⑥歴史的、⑦道理的と識別されます。ちなみに、能海原本では旧仏教⑥を新仏教⑦と同じ「道理的」と記しているのですが、それでは意味が分からないので、中西の『宗教革命論』を確認してみたところ、旧仏教⑥は「教理的」であることが分かりました。能海の校正ミスということでしょう。いずれにしても、旧仏教は限られた高位階層の人びとのための、保守的で学術的な側面が強いのに対し、新仏教は誰にでも開かれている、信仰的な側面が強いことが分かります。
次に実際に訳した文を2つ紹介します。一つ目は新仏教徒とキリスト教の関係についてです。実際に読んでみましょう。
【原文】漢文読み下し調の文語体
唯基督教徒に希望する所は基督教の本国たる欧米に於いて已に腐敗し、学者識者の排する
所となり、理学哲学のために失敗を取りたる今日の旧基督教若し回復の手段あらば、
新基督教となりて新仏教徒に対陣せよ。
【口語訳】
キリスト教徒にはただ以下のように(行動することを)願っています。その教えの本国で
ある欧米においてすでに腐敗して学識者の排するところとなり、科学哲学のために成功
を得ていない今日の旧キリスト教がもし回復する手段があるとすれば、それは新キリスト教
に生まれ変わることです。そうして(=新キリスト教を創造して)新仏教徒と対峙しなさい。
2つ目は世界宗教としての新仏教徒についてです。これも読んでみましょう。
【原文】漢文読み下し調の文語体
概して論ずれば、是儀式的仏教にして真正なる信仰あるものに至りては、甚だ稀なり。
仏教万歳を称うる所の大責任を有するものは、日本仏教徒を除きて、他に求むべからず。
【口語訳】
(数ある宗教の中で仏教を信仰する者が世界最多だとは言っても)大まかに論ずるならば、
これは名目的な仏教(者の数)であって、本当に正しく信仰している者はとても稀です。
(中略)仏教万歳を唱え、(新仏教の創立に)重大な責任をもつのは、日本の仏教徒を
おいて他に求めることはできません。