fc2ブログ

マカオの切支丹-茨林囲への途(4)

茨林囲の心地よい散策(続完)◆

秋の収穫 冬の蓄え

 私は7月下旬から9月中旬にかけて青蔵(青海チベット)高原、河西回廊、内モンゴルの草原を旅し、ボランティアのキティの手助けを得て仕事を続けた。実際、彼女はヒアリングの仕事に加えて、コーディネイト役も務めることに早くから同意しており、チーム運営における重要な力であり、潤滑油となっていた。11人のインタビュアーのうち、9人は他に常勤の仕事があり、多忙を極めている。 調査、ヒアリング、そして特集記事の執筆を完了するために、私たちは皆、できる限り時間を捻出しようと努めた。今回は、逐語録を起こす人材を雇用したので負担は軽くはなったけれども、それでもインタビュアーは逐語録の正確さを校正しなければならず、全体的な作業量は依然としてとても多かった。さらに、私たちのグループはとても真面目で、ヒアリングの正確性をいつも点検している。私たちのチャットグループでは、よくこんな議論が交わされる:

 *「鶏の羽」の卸売で毎月いくら稼げるか知っている人はいますか? 良い鶏の羽の使い道は何?
 *「同聚文」と「同文聚」は同じこと?? 1960年代のビジネス年鑑をお持ちの方はいますか?
 *水道、電気、排水溝ができたのはいつ? 井戸が閉鎖されたのは何年?

 文献を探したり、逐語録を確認したり、異なるヒアリング対象者の証言や文献を互いに比較して裏付けをとったりしながら、長い時間をかけて議論することもよくある。真剣さは確かに実を結ぶが、同時に時間の犠牲も伴う。当初の出版目標は2022年前半に設定されていたため、執筆分担の淑怡と雨晴は原稿を急がなければならなかった。ゴビ砂漠から遠く離れた、世界で最も雄大な峠の烽火(のろし)台で、「チャットグループが狼煙と四気を上げ」*5、キティがその火を消そうとしているのを(スマホで)みた。

--
 雨晴:「みんな、提出状況を報告してくれ。まだ提出していない人は元気出して!」
 回答:「未提出の人が多くて安心した。」「本音を言いました。」
--
 雨晴:「今日は20日だ、約束を守ってくれよ!」
 回答:「私の約束に大した価値はないよ。」「25歳:タイピングをして音を出したくないんだ。」
     「責任ある市民として、防疫が第一さ。」
     「僕にはできない、失望させてしまったよ。」
     「執筆を監督してくれる猫がいれば...その枕元で気持ちよく眠れるのに。」
      ...それからみんなで猫の話をする。次に猫の話に関する1000件のメッセージを削除する。
 雨晴:「猫に話題を変えないで、記事を提出してね!」
     「キティの2つの記事は早く提出された。 彼女は我々のお手本だ。」
 キティ:「私はあなたを守るためにここにいるけれど、みんなが仕事したくなるようなことは言わないでね。」
 私:「嘉峪関にいるんだけど、烽火の匂いがする。妹をいじめないでよ!」
--

 そんな楽しくユーモラスな雰囲気のなか、物腰柔らかなインタビュアーたちはそれでも懸命に働き、2021年9月6日、ついに14人のヒアリング原稿が集まった。数日後、私も雁門関を越えて中原の洛陽を経由してマカオに戻り、秋の収穫を楽しんだ。このころには、以下3本の特集記事と執筆者も決まり、再び作業が始まった。

 ①茨林囲における哪吒(ナタ)神の子供たち
 ②女性史(Herstory): 茨林囲の女性たち、彼女たちの茨林囲
 ③茨林囲における生活哲学


茨林囲②脇野01 茨林囲②脇野02 茨林囲②脇野03


 秋晴れの日に再び茨林囲を訪れると、3月とはずいぶん変わっていた。ゴミとゴミ捨て場はすべて片付けられ、新しい花や鉢植えで美化されているところもある。老朽化した家屋を修繕している住民もいるし、開店に向けて改装中の飲食店もある。茨林囲は活気を取り戻し、荒廃した状態から徐々に脱しつつある。
 同時に、茨林囲住民問題団体は出版計画を調整し、2022年8月に延期した。そのため、私たちの仕事は少し遅れる可能性がある。
 11月27~28日の両日、茨林囲で3人の文化交流大使研修生による「文化交流大使パイロット・スキーム」が実施され、「茨林囲の人生哲学」についてのガイドツアーと「楽しい運動」が行われた。じつは、アンバサダーのうち2人は私たちのヒアリング調査隊の一員であり、私たちはこのプログラムにおいて彼らにいくつかの条件と援助を提供し、その結果の一部を私たちが出版した特集記事の一つで紹介した。彼らの企画は大成功を収め、茨林囲の美しさはより広く知られるようになった。
 秋から冬になり、2022年1月には3本の特集記事も完成した。私はその後の出版についてはよく知らないが、原稿をすでに提出していたので、自分の仕事は完了したものと思っていた!


茨林囲②脇野04 茨林囲②脇野05 茨林囲②脇野06
(画家の陳漪莉は 「茨林囲の人生哲学 」プロジェクトの一員であり、後にこの本の挿絵を依頼された)

《訳注(続)》
*5 うまく訳せないが、おそらく人気アニメのタイトルもしくはキャッチコピー、あるいは科白を引用し、自分たちのチャット交換を表現したものであろう。http://www.cczww.com/books/6186/?btwaf=73518437



茨林囲口述歴史15茨林囲01開店01 茨林囲の飲食店「聚一聚」開業


また春が来て夏は過ぎ秋涼に至る

 2022年3月、四川とチベットへの旅を始めたばかりの私に、林会長から「協会が編集者と校正者を手配し、出版に向けて動き始めた」との連絡があり、編集者の阮玉笑の仕事に協力するよう依頼された。このプロジェクトに取り組むことを承諾してから、ちょうど1年が経っている! とても光栄なことで、勉強だと思って引き受けた。そこで、四川とチベットの国道318号線、チベットのヤムドク湖の畔で、取材の順番を変えてみようと考えた。2~3の項目には重複がありすぎるからだ。林志園の桃花と雪山を見た後には、茨林囲の飲食店「聚一聚」はすでに開店していた。5月7日、私たちは現地で茨林囲住民団体の梁慶庭氏と出版段階の作業計画について話し合った。梁氏は最後の特集記事「茨林囲のより良い明日を創る」も持参し、序文とあとがきの執筆についても交渉した。
 
                                                                  
茨林囲口述歴史14甘粛01 茨林囲口述歴史14甘粛02 茨林囲口述歴史14甘粛04雪山
       

 私が5月から6月にかけて、火焔山に隣接する高昌国故城から雪深いパミール高原の山下にある石造りの街へと、玄奘三蔵の経典の足跡をたどりながら旅をしたとき、編集者たちは懸命に原稿を書き直し、レイアウトやデザインの作業に着手していた。 マカオに戻った直後の7月中旬、最初の校正刷りが出た。出版用の本の校正に携わるのは今回が初めてだが、決して簡単なことではない。根気よく処理し、徐々に完璧にしていかなければならない細部がたくさんある。幸いなことに、阮は経験豊富で良心的な編集者であり、この時点で出版目標はさらに12月上旬に延期され、「じっくりと良いものを作る」ことができるようになった。この時、私たちはイネスに本と茨林囲の地図のイラストを依頼した。イネスは「茨林囲の人生哲学」という記事で紹介した若い画家だ! だから、彼女のイラストは私たちの記事にとてもよく合っている。


茨林囲口述歴史15高昌01 茨林囲口述歴史15高昌02 茨林囲口述歴史15雪山01 高昌国故城と雪山
茨林囲口述歴史16校正01  茨林囲口述歴史16校正02 (校正と組版がとても大変!)


 盛夏の7~8月に作業を続け、二稿を送って再校をした後、9月上旬に内モンゴルのホイッスルベルに入り、草原とアルシャンの秋色をみて、エルグナル川対岸のロシアを眺め、ネルチンスク条約が中国初の不平等条約かどうかを少し考えてみた。月末にマカオに戻ると、カルメン、シンシア、チンイーの3人が編集作業を引き継ぎ、書籍は本文とメインのレイアウトがほぼ確定していた。それ以外のイラスト、カバーデザイン、印刷の細部については、私はただ彼らに学び、賞賛する役割しかなかったので、何の心配もなく、10月に桂林と西埔を歩きまわった。そして11月にマカオに戻り、会長に序文を書くよう「脅迫」することをいつも念押しする以外に、私たちに貢献できることはなかった。こうして、文化局長のトレイシーを中心とする編集チームの努力の下、三校、四校、見本刷りの校正作業を終え、熱心に表紙も何度か更新された。 本書が印刷されようとしている今、並行して出版セレモニーの準備が進められている。


茨林囲口述歴史17緑01 茨林囲口述歴史17緑02 茨林囲口述歴史17緑03建物01
茨林囲口述歴史17緑04梯田 茨林囲口述歴史17緑05相公山 茨林囲口述歴史17緑06霞浦

茨林囲口述歴史18最終01 茨林囲口述歴史18最終02
(表紙は3案とも初稿から美しかったが、結果はさらに素晴らしいものになった!)。


 『茨林囲口歴史』出版セレモニーの日、取材チームのメンバーや茨林囲の友人たちとの温かい再会を楽しみにしている。(趙雲至龍)


茨林囲口述歴史19完成01 茨林囲口述歴史19本文01


《連載情報》 マカオの切支丹-茨林囲への途
(1) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2819.html
(2) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2832.html
(3)http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2833.html
(4) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2834.html
(5) http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-2850.html

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
--
魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カレンダー
12 | 2025/01 | 02
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR