サテンドール(ⅩⅩⅨ)
桐生明治館
委員会を終えて昼食をとり、りょうもう特急の乗車時間まで一時間ばかりあったので「桐生明治館」を訪れた。自治体指定レベルだろうと高を括っていたら、国の重文だというので飛んで行った次第である。明治11年(1878)、群馬県衛生所兼医学校として前橋に建立された擬洋風建築である。昭和3年(1928)、現在地に移転されて相生村役場に改築された。華やかさでは我らが仁風閣に如かずと雖も、ともかく年代が古い。擬洋風木造建築としては最古級の作品の一つであろう。といいつつ細部のことはよく知りません。
1階の脇部屋に音楽室があり、スタンドピアノがどんと置いてあった。わたしが気になったのはむしろ蓄音機の方である。もうひとつ気になったのは2階の部屋に展示してあった篠原涼子の大きな鉛筆画。桐生市観光大使の篠原さんがモデルになって制作されたポスターは凄まじい人気で、この鉛筆画はポスターを模写したものである。わたしもポスター一枚欲しいな。
さて、木造擬洋風の重要文化財ですが、雰囲気がとてもよいので、こういうところで喫茶店をやればいいのに、と何気に提案したところ、あっさり「やってますよ」と答えられて驚いた。なにぶん我らが仁風閣でシンポジウムしたときには会場にお茶を持ち込むことさえできなかったんだから。お茶がこぼれたら絨毯を汚すってんです。暖房もまともに効かないし、二度と会場にするまい、と決意した記憶がある。
桐生明治館では、1階左翼の2室を喫茶店化している。奥に厨房、手前が喫茶室。重文だから改装はできない。建築内装はもちろん椅子やテーブルなどの家具も明治のものだろう。メニューはシンプルに徹している。飲み物は珈琲、紅茶、ジュース、梅こぶ茶がいずれも300円。軽食はアップルパイ、ケーキ、フリッターの3種類のみ(↓右)。
蓄音機の喫茶店
飲み物も軽食も外のお店の半額程度なので、なんでこんなに安いんですか、と店の方に訊ねたところ、要は市営の店なのであって、その方も準公務員だから利益をあげる必要がない。営利目的ではない、とのことですが、定期的にライブ演奏の会をやっていて、結構人気を博しているとのこと。ところで、ケーキなどの軽食は手作りではありません。なぜかといえば、重文建造物の内部で「火」が使えないから。ガスコンロなど厳禁ですが、IHは使ってもいい。IHやコヒーメーカーで作れる飲料や食べ物を提供しているというわけです。ちなみに、わたしはアップルパイ(リンゴとさつま芋のレーズン入り)をいただきました。とても美味しかった。
ここでも極め付きは蓄音機でして、帰り際に手回しでクラシックのLPをかけていただきました。触発されましたね。なにも、高額の音響機械ばかりにこだわる必要はない。たまには骨董の蓄音機で音楽を流せるような店にしたいものですね、バーニーは。
そうそう、喫茶室にも篠原涼子の鉛筆画が展示してありました。たしかに綺麗だわ。何度みても飽きない。というわけで、短いながらも楽しい時間を過ごせました。