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サテンドール(ⅩⅩⅤ)

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ウェザーリポート下見

 ズージャのインテリアとエクステリアはとても洗練されている。遠音の白とは対照的な黒を基調とする。客席は少ないようで、そうでもない。カウンターに数席、その後ろ側にテーブル。最初はこれだけかと思ったが、テーブルの脇にもうひとつ部屋があり、女性客が出入りしていた。たぶん20席ぐらいはあるのだろう。客層は常連客ばかり、といった印象。知的なジェントルマンが、わたしのあとから二人カウンター席について主人と話し始めた。

  「ウェザーリポートは調整が終わりましたか?」

といきなり主人が切り出した。松江で週末だけ復活することになった老舗ジャズ喫茶の話題である。常連の客は、

  「電源が22あって、うち15を使うんですが・・・」

と答えはじめ、あとは音響の専門的な話題に終始した。ウェザーリポートの現状については、ひょっとすると、一見さん(私)を会話に引き込もうとする呼び水だったのかもしれないが、とても話についてけないので、黙って聞いていた。機械は不得手な分野である。ギターもそうなんだ。演奏あるいは音楽そのものには頗る興味があるのに、ギター本体・音響とも無頓着の極みであり、さらに複雑なステレオセットとなれば、ちんぷんかんぷん。『タモリ倶楽部』のステレオ・マニア回は楽しくみるけれども、その内実はさっぱりわかっていない(そもそも財布がついてかない)。


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 ミュージシャンや音楽に詳しいだけではジャズ喫茶は開店できない。ズージャは遠音に比べるとはるかに器材が威圧的で音量も大きい。だから仲間ときてリラックスするというムードではなく、個人で音楽を聴きながら孤独な時間を過ごすというジャズ喫茶本来の匂いがぷんぷんしている。かりに退職後じぶんでやるとならば、ズージャは無理だ。遠音ならなんとかぎりぎり行けるかもしれない。
 チャイを飲み干して400円払い、店をでようとした。玄関側から全景を撮るべくレンズを向けると、前室壁付きの本棚に建築系の雑誌や専門書がずらっと並んでいるのに気がついた。そこで、いったんカウンター側に後ずさりし、「建築の関係者がいらっしゃるんですか」と問うと、主人は「わたしがそうなんです、インテリア関係なんですが」と答えられた。なるほど、道理で室内外のデザインが凝っているんだ。インテリアは現代的でしゃれているし、エクステリアは数寄屋の庭のような匂いがする。全体的に、バンコクのジム・トンプソン邸を彷彿とさせると言えば誉めすぎかな??


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 米子から松江にむかう。途中、ホテルに電話をいれるが、なかなかつながらない。安来を過ぎたあたりで折り返しの電話があり、「今夜のチェックインは少し遅くなるかもしれない」と告げ、予約をチェックしてもらったところ、名前がみつからないという。急ぎパソコンを開き確認すると、宿泊予定日が14日(日)になっていることが判明した。土曜日に宿泊して日曜日に帰宅する予定だったのだが、土曜日の宿泊先がないわけだ。どう考えても発症してしまっている。
 結構悩んだあげく、松江まで行って帰ることにした。出雲のサテンドールは諦めるが、松江のウェザーリポートだけは短時間ひやかして鳥取に戻ろうと決めたのである。ウェザーリポートは週末だけの復活営業であり、このタイミングを逃すのはまずいと思ったのだ。


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 ウェザーリポートは千鳥町のCOCO MATSUEビル1階にある。昼間はラ・ピエールというカフェなんだそうだ。店についたのは午後7時20分。テナント・ビルの通路に壁のむこうからバス・クラリネットの喚き声が響いてくる。ドルフィーだ。おそるおそるドアをあけると、女性がでてきて「8時からです。どこかで待っていてください」と仰る。
 待つことはできない。鳥取に帰るべきだ。冷静に考えると、2日後に迫った中央ロータリークラブ卓話や講義の準備をしたほうがいい。ただ、遠くからきたので写真は撮らせてください、とお願いした。室内を2枚撮影した。レストラン型の大きなジャズ喫茶で、豪華な椅子とテーブルが規則正しく並んでいる。いずれまたゆっくり来よう。ジャズ喫茶のある都市(まち)には文明がある。米子も松江もいい街だ。鳥取は米子・松江に及ばない。だから、また来よう。 【完】


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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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