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2023-10-09

新本格ファンの見た陰謀論傾倒作家現代ニッポン論壇事情数十年史

次の文章を眺めてみて欲しい。

『まず第一に、二十世紀に係れたミステリ作品と違って、狂気妄想を、いわゆる正気論理で枠囲いされるものではない。第二に、以前の小説作品と大きく違って、可能世界へと分岐する「相対的」な論理を、それが作品内で主題化されないほどに内在的なものとして組み込まれ浸透しているかである。』

インターネットぶつかりおじさんにカンパし、一度ブロックされて解除された後2023年10月の今に至ってもなお彼やその賛同者の多くをX(旧twitter)でフォローし続けている、推理小説作家評論家小森健太朗著作探偵小説論理学」269ページから引用した文章である

氏のSNSにおける華々しい戦歴説明割愛する。冒頭で引いた氏の文章を眺めることからはじめ、氏のSNS上における無数の陰謀論傾倒の人生、ひいては暇アノン化する文化人ネットユーザたちについてなんらかの理解を得ることができないか見てみたいのである

====

 

単刀直入に言って、日本語が怪しい。

『まず第一に、二十世紀に係れたミステリ作品と違って、狂気妄想を、いわゆる正気論理で枠囲いされるものではない。』

主語がないのは先に出ているかである。一つ前の文の「西尾維新作品」がこの文の主語である。そして、この第一に~第二に~というのは疑問に対する答えの列挙である

『それではなぜ、なぜことさら西尾維新作品様相論理親和性のあるものとしてとりあげられるべきなのか。』

冒頭の文の一つ前に置かれたこの文がその問いである。なぜ「それでは」なのかというと更に一つ前の文で↓のように認定しているかである

様相論理一般が、それらの作品により適合するのではなく、われわれの住む世界にある論理、どの作品にもある論理一般において様相論理は適合性を有している』

まり、著者はこの箇所で「西尾維新作品こそ様相論理が合う」と言いたいのである(なお、『様相論理は適合性を有している』だとか『様相論理親和性のある』とかい語句意味不明)。

 

それを踏まえた上でも文の後半は日本語おかしい。いやそもそも『それではなぜ、なぜことさら西尾維新作品様相論理親和性のあるものとしてとりあげられるべきなのか。』の「‥‥作品を~~とりあげられるべきなのか」という文も変なのだが。受動態ならば‥‥作品が~~とりあげられるべきなのかとすべきであろう。とはいえ文意理解できている(と信じたい)ので無視しよう。

さて引用の一文目は次のように書き直せそうである

・(西尾維新作品では)狂気妄想が、いわゆる正気論理で枠囲いされるものではない

・(西尾維新作品は)狂気妄想を、いわゆる正気論理で枠囲いされるものとしていない。

引用した文のある段落の一つ前の段落で、彼らの作品における狂気の取り扱い方について『現実正気論理が前提として背後にある。狂気や、いわば正気世界に枠囲いされる形で、際立たせられる』と説明されている。この書き方ならば前世紀に書かれたチェスタトン泡坂妻夫らのミステリ作品との違いを述べていることが明確である

なお別の案として、第二に~の述語に繋がっていると見ることもできる。が、そうして読むと能動態・受動態が変になるのである

・『二十世紀に書かれたミステリ作品と違って、狂気妄想を、いわゆる正気論理で枠囲いされるものではない』‥‥『ものとして組み込まれ浸透しているかである

 

この能動態・受動態が変というのが引用の二文目の問題でもある。

例によって主語だが『‥‥組み込まれ浸透している』の主語はなんだろうか?そもそも『組み込まれ』『浸透している』は同じ主語を持つのだろうか?候補は『西尾維新作品』と『可能世界へと分岐する「相対的」な論理』の二つである

西尾維新作品』は『組み込まれ』がおかしいのは‥を組み込むという能動態に直せば明らかである。『西尾維新作品』を目的語とした「西尾維新作品を組み込んでいる」には意味を見出すことは不可能である

西尾維新作品』は『浸透している』は、意味としてはありえる。だが使えるのは読者の認知度などを述べる文脈などであり、どこに浸透しているとかいった説明の無いこの文では意味を持たないであろう。

すると『西尾維新作品』は、『西尾維新作品では』という句であり、主語は『可能世界へと分岐する「相対的」な論理』と見るべきである。これならば受動能動態を変えても意味が通じるであろう。

・(西尾維新作品では)『可能世界へと分岐する「相対的」な論理』は‥‥組み込まれ浸透している

・(西尾維新作品には)『可能世界へと分岐する「相対的」な論理』が‥‥組み込まれ浸透している

いけそうであるしかしそう理解すると今度は九段の文の書き方があまりにも奇妙に見えると言わざるを得ないのである

『(西尾維新作品では)可能世界へと分岐する「相対的」な論理を、それが……組み込まれ浸透しているかである。』

「を、それが」と書いた理由はなにかあ在るのであろうか‥‥???「‥‥を」とするならば「それが」をそこに付けず「組み込み、そしてそれが浸透している」というようにすべきだし、受動態のまま「組み込まれ」を使いたいならば「を」をなくして「‥‥が~~組み込まれ浸透している」と書くべきであろう。なぜここまでねじくれた、好意的に見て文法違反スレスレで読みにくい書き方をしているのだろうか‥‥???著者も校正者もなにかおかしいと思わなかったのだろうか???

 

余談だが、様相論理において可能世界ごとに分岐(というか異なる)のは、命題への真偽値の割り当てであったり個体領域である。それらは一般的にいって「論理」と呼ばれるものではない。このあたりも意味不明なのである。ようはポストモダンにおける科学誤用濫用の仲間である。さておきこれまで氏の華々しい戦歴を目にしてきた者の意見として言うと、氏の癖として、彼がカンパしているインターネットぶつかりおじさんと同様に、勝手定義した「A」を、他の意味「A」と気軽につなげて論証をするというものがある。いわゆる「媒概念曖昧の虚偽」と言われたりするやつである。こうした論証上の誤りに無頓着な事も陰謀論にたやすくはまる一因と言えるのかもしれない。

 

海法紀光や、アレな発言非難する者がしばしば指摘していることであるが、氏は、理由をあげたり説明したりといったいわゆる論証をする際こういった文章を頻発する傾向がある。特に自身の立論が苦しくなってくると、文法崩壊していると感じられる弁明が増えるように見えるのである(quantumspin氏による批判とそれへの応答なども参照せよ)。主語や述語がみつけにくいのもよくあるパターンひとつである小説以外の活動に関しては、ずっとそういうやり方で通して来ているのかもしれない。

これは結論に対して必死理由を拵えているせいというのもあるのかもしれない。そのような、結論にあわせて理屈を拵えることをよしとする姿勢もまた陰謀論への傾倒を片側から支えているようにも思えるのである

 

などなどと、かつて新本格ムーブメント到来に歓喜したものとして心苦しい気持ちを抱いていたのであるが、最近大きなヒントを見つけることができた。

https://twitter.com/furukawa1917/status/1708364352540246446

https://megalodon.jp/2023-1009-1415-22/https://twitter.com:443/komorikentarou/status/1708094283780325790

『「人類進歩」といった虚構観念蔓延させ』

氏にとって人類進歩虚構観念であるらしい。勿論、氏のいう虚構観念は、非難されればすぐにその中身を適当に入れ換えられるブラックボックスであり、「生活費切り詰めてカンパ」と同じ程度の軽口でしかないのやもしれない。

だが、そういうことかと得心もしたのである

かつてポストモダン思想が華やかなりしころ、同じ世代にあって「進歩なんて幻想だ」と嘯いた者は多かったのではないだろうか。なにしろ特に思想政治について色を出さず、特に「後期クイーン問題」等の話題珍説披露したこともない有栖川有栖氏の作品においても、「ホイッグ史観」「進歩史観」といったかたちで冷めた態度が見られるのである

311以降かどうかは定かでないが、SNS上では、ミステリ業界の「知の欺瞞」が手ひどく叩かれる時期があった。氏も基礎的な誤解を指摘されてはよくわからない弁明を書き連ね、最終的に相手が呆れて去っていくということがしばしばあった。その後、左翼リベラル敵対的な気分をもつひとは自らを「科学的」と自認するようになり、小森もなんとなく菊池誠氏などをRTしたり科学的な雰囲気のある人々の輪に入ることで、これまたなんとなくのうちに過去の知の欺瞞有耶無耶になった。

しか上記発言から察せられるように、頭はポストモダンのままだったのである。この点を傍証する発言ひとつではない。

 

https://megalodon.jp/2023-1009-1430-28/https://twitter.com:443/komorikentarou/status/1566269069547819008?lang=jp

『紀藤さんは、カルト宗教弁別ができる超越的な裁定であると自認しておられるのでしょうか?』

これは、統一協会話題になった際、紀藤弁護士発言に対して、なされた引用RTである

カルトであるカルトでないか区別ができることが『超越的な裁定』だと言うのである。その理由もふるっている。

カルト宗教の線引きがわからないのではなく、できないと言っています。』

まさにあの堕落したポストモダン思想かぶれたあの世代の、あの辟易するような懐疑的態度を思い起こさせるものである!!!認識的な不確実性を理由として判断の正しさを否定する。現実的・実践的な正しさをすっ飛ばして「超越的」なものに基礎づけようとする(そして、その不可能からお好みの結論を導く)。‥‥ところで、なぜ「分からない」「できない」「不確実だ」という判断だけは正しいと信じられるのか自分にはまったく理解できないのだが‥‥‥笠井潔なら教えてくれるのであろうか‥‥???

 

結局の話、己の欲する結論のためにいい加減な理由づけを許容する態度、あらゆる価値・論証・実践合理性等を無効化した気になれる堕落したポストモダン思想メチャクチャナ言説をまともに文章を読み批判をすることのできない現代ニッポン論壇・批評コミュニティの無力さ、そうしたものが無数に積みあがって悲惨な令和の余.命事件へと通じる道が敷かれたのかもしれないと思うのである

思うにこれは一人の哀れな高齢男性だけの問題ではないのである

2023-07-25

逆に聞くが「おもしろミステリ」って何?

https://anond.hatelabo.jp/20230725215629

これ書いてる増田ミステリ全然読まないのね。で、知人から「まずは『十角館の殺人』とか『殺戮に至る病』読め」って言われて読んだのよ。

正直言うがこの2つ面白いか? キャラクター観が激古くて読むに堪えないって感想がかなりでかい

もちろん、大ネタトリックはそこそこ驚いたので悪くはなかった。でもそれにしたって描写がかなり厳しいと思っちゃったんだよ。

まあ本音を言えばタイトルアオリよ。自分がどうやら小説を読むときキャラクター描写ストーリー偏重しすぎるきらいがあるので、例にあげた2つのおもしろさがわからないのは当たり前というか、どちらもそういうのを狙ってる作品じゃないよね。だからおもしろく思えないのは単にnot for meってのはわかる。

でもなお思っちゃうのはさ、世間的になんであんなにこの2作品が褒められてるのかが逆にわかんなかったんだよ。

で、逆張りでもなんでもなく知りたいのよ。ミステリファン的に

この辺でアドバイスあったら教えてくれないか? 世間的に褒められてる作品理解できないの、多分自分のレセプターが歪んでる可能性があるのでラーニングしたいんすよ。でもミステリに関する知識マジでいからとっかかりがなくてすごく困ってる。

追記

めっちゃコメントきてるありがとう!めちゃくちゃたくさん反応もらって追いきれてないけどすげえ助かる!整理するんで少し待ってくれ!

追記2

いきなり訂正なんだけど俺めっちゃミステリ読んでたわ! みんなが挙げてくれてた作品だとこんな感じだわ!

でも上に挙げた奴あんまりミステリミステリって気持ちで読んでなかったわ!

最初書かなかった事情を書くとさ、こないだたまたま見かけたおすすめミステリ100冊みたいな文章の冒頭に「『十角館の殺人』読んでないならまず読め。こんな文章読んでる場合じゃないんよ」って書かれてたから『十角館の殺人』読んだらピンと来なくて困ってたんだよ。「ミステリとは一体なんなんだ……?」みたいな気持ちですよ。でも全然読んでた! ごめん! 俺が間違ってた!

これはみんなが色々教えてくれて少しわかったと思う。そもそも本格ミステリ」と「新本格ミステリ」というジャンルの間に「社会派ミステリ」ってのがあったんだな。その反動新本格が出てきた。なんか「『本格って単語がついてるミステリ』がわからないならミステリのことがわかってない」みたいな気持ちになってたけどそんなことなかったんだな……。

十角館の殺人とかも、描写がちょい厳しいなってのも時代的なこと考えたら理解はできる。こないだヤマシタトモコの古い作品読んだら「ホモ」って言葉連呼されまくってて「マジで?」ってなったの思い出した。10年程度で感覚全然かわるし30年あれば言わずもがななんだよな。

いやさ「本格ミステリ」とか言われてる作品がピンとこなかったらちょいビビっちゃったんですよ。だって「本格」がわかんないなら「ミステリ」って何? って感じじゃん? でもあんまり気にしなくてよさそうだな。いろいろなミステリがあっていい! そういうことか!

自分が好きなSFとかが「SFとは認めん!」みたいなこと言ってる作家多かった経験からすげえジャンルに対して身構えていたんだけど、当たり前だがいろいろな楽しみ方があるんだな……。ありがとう。そこマジでわかってなかった。ミステリファンは全員「本格ミステリわからんやつはミステリことなんもわかってない」くらいに白眼視されると思ってた(冗談じゃなく本気で思ってた)。これは俺の偏見だったわ。本当にすまん。

どうやら世間的には日常ミステリとかキャラが経ってる新本格とかたくさんあるっぽい。みんなが面白いって言ってくれた作品追っかけてみる。ありがとう!!!

とりあえずみんなが言及してくれたレコメンド列挙した。

多いわ!!!

lady_joker 100文字では書けないのでこっちに書いた。推敲していないので、チビを迎えに行ってから直すかも https://anond.hatelabo.jp/20230726161801

fushigishiatsu 増田友達になりたい、という文章を書きました。https://twitter.com/3216/status/1684044848628916224

フレンド!!!

あと面白かったのがこの方のブコメ

bokmal 子供の頃親の本棚エラリー・クイーンを読んだらおもしろすぎて、小遣いで古本買い集めたけど、大人になってから読むと「おもしろいけどそこまでか…?」てなった。子供ゲームブックと小説区別しないしなー。

気のせいじゃなければエラリークイーン挙げたのこの方だけ?

2023-01-04

2021年に読んだ本

1月12冊)

前半では美術知的にとらえようとした。後半は生物学テーマ

2月10冊)

脳科学生物学が中心。小説ゼロ

3月12冊)

SFと平安文学

4月12冊)

平安文学マイブームが続き、続いて神林長平ヴォネガットを読み始める。

5月17冊)

英国貴族執事メイドテーマ。なぜか田中啓文も読みだす。疲れたので脱力系を。

6月10冊)

空想法律読本シリーズ経済学、それと奇妙な味短編集。

7月(16冊)

シオドア・スタージョン一角獣・多角獣」

奇妙な味シリーズがしばらく続く。たまに古いSFが読みたくなる。

8月(7冊)

ブラウン神父シリーズは途中で飽きる。「聊斎志異」を読みだす。

冊数が少ないのは、中島敦全集がぶ厚いからだ。ページ数では一冊で実質三冊ほど読んでいる勘定だ。

9月(9冊)

ひたすら中国古典を読む。物語としては読みやすいが、脚注について調べていると意外と時間がとられる。

中島敦全集手紙手帳メモ書きまで収録。

10月(10冊)

アーネスト・サトウを除いて中国文学が続く。明治維新が一日単位で記録されていると見落としていた事実が多いとわかるし、刻一刻と情勢が変わっていったのも感じられる。。

11月12冊)

歴史に関心が移る。アイヌ民族について知りたくなる。

12月(13冊)

アイヌ民族から琉球視点を移す。

漫画(19冊)

やっと森薫を読み始める。ハルタコミックス(旧fellows!)ばっかり。

美術展など

コロナで回数は少なめ。

映画

プーと大人になった僕

パディントン

「イェスタディ

JUNK HEAD」★★

「シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版」★★★

雑感

生物学脳科学歴史SF海外文学が多い傾向は昨年から変わっていない。

一方で、日本古典文学にも少し手を出した。

また、「聊斎志異」「西遊記」「三国志演義」と長めの中国古典に取り組めたのは良かった。

2022年に読んだ本

今更だけど2020年に読んだ本

2021-02-15

ミステリ好きなら読破しておきたい古典を読んでおきたい古典100冊を読むべきではない100の理由

https://anond.hatelabo.jp/20210215101500

エドガーエラン・ポオ「モルグ街の殺人

 ・しょうもない犯人しょうもない気付き、しょうもないミステリ元祖

ウィルキー・コリンズ「月長石」

 ・長さのわりにミステリを期待して読むと徒労に終わるドラマ観れば十分。

コナン・ドイルシャーロック・ホームズの冒険

 ・長編よりいくらかマシという程度。

モーリス・ルブラン「怪盗紳士ルパン

 ・南洋一郎訳のほうがおもしろい。

ロナルド・A・ノックス「陸橋殺人事件

 ・いわゆる「ノックスの十戒」を定めた著者だが、作品凡庸

フョードル・ドストエフスキー罪と罰

 ・ミステリか? 別にいいんだけど。主人公臭い自意識に長時間堪えられるのなら。手塚治虫漫画版で十分。

コンラッド「闇の奥」

 ・「闇の奥」そのものより、「闇の奥」をもとにした無数のコンテンツのほうがおもしろい。『地獄の黙示録』とか。

F.W.クロフツ「樽」

 ・『樽』はタルい。これミステリ界の常識アルよ。クロフツもっと薄くておもしろいのがいっぱいある。

S.S.ヴァン・ダイン僧正殺人事件

 ・ヴァン・ダインとか今更読むやつおる??

ガストン・ルルー黄色い部屋の謎」

 ・これもルールタビ―ユくんのキャラ小説なんだよな。意外にミステリしてる点は評価できなくもない。

エラリー・クイーン「Yの悲劇

 ・別のトラバの人も言ってたけど、悲劇四部作は通しで読めよ。おまえはスター・ウォーズをEP5から観るのか?

ジョン・ディクスン・カー火刑法廷

 ・オカルト〜〜〜〜〜〜wwwwww すいません、ふつうに好きです。

アガサ・クリスティそして誰もいなくなった

 ・クリスティならなんぼでもこれよりおもしろいのがある。まあ、ある種のパターン確立したという意味で必読ではある。

ドロシー・セイヤーズナインテイラーズ」

 ・別にナインテイラーズ」でもいいんだけど。

イーデン・フィルポッツ赤毛のレドメイン家」

 ・いいかげん昔の人が評価してたからって理由だけでレドメイン家をこういうリストに入れるのやめない?

G.K.チェスタトンブラウン神父童心

 ・妥当。これもシリーズを通しで読むべきではある。

フランシス・アイルズ殺意

 ・アイルズ入れるのは当然として、バークリーも入れないのは理解に苦しむ。

ウィリアム・アイリッシュ「幻の女」

 ・惰性でオールタイム・ベスト入ってる系の古典としては意外なほどエキサイティング。アイリッシュもっと評価されてもいい。

コリン・デクスターキドリントンから消えた娘」

 ・今読むとちょっとメカニカルすぎてキツいところがある。

セバスチャン・ジャプリゾシンデレラの罠」

 ・ハッタリのきかせ方は歴史に残るけど、わりに印象に残りにくいんだよな。

ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」

 ・これも型を確立したという点で必読ではある。

ウィリアム・L・デアンドリア「ホッグ連続殺人

 ・出たよホッグ。20年くらい前ならおもしろかったのかもしれんけどさ。

クリスチアナ・ブランド「招かれざる客たちのビュッフェ

 ・さすがにブランド否定する理由がない。

エリザベスフェラーズ「猿来たりなば」

 ・知名度の割に、ブクオフに行ったらかならず置いてあるだけの理由はあるものだ。

ロアルド・ダールあなたに似た人」

 ・出来不出来が激しい作家の一人。奇妙な味勉強したいんなら異色作家短編集読めば。

ダフネ・デュ・モーリアレベッカ

 ・そういえば映画版最近リメイクされてましたね。つまんなかったなあ。ヒッチコック版と原作はいいです。

レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」

 ・御三家のなかで一番キツい。春樹訳はさらにキツい。ロバート・アルトマンくらいの諧謔が加わって初めて鑑賞に堪えうる。

ダシール・ハメットマルタの鷹

 ・ハードボイルドの先鋭性をもっともよく表した作家ではある。本篇より諏訪部浩一の『「マルタの鷹講義』のほうがおもしろい。

ロス・マクドナルド「ウィチャリー家の女」

 ・ロスマクの一冊を選ぶとなると戦争が起きる。法月綸太郎みたいなものさ。ここでもな。

フレデリック・フォーサイスジャッカルの日

 ・めちゃめちゃエキサイティングなんだけど、分厚いし今手に入りにくいし……。

ジョン・ル・カレ寒いから帰ってきたスパイ

 ・ル・カレのなかでは読みやすい部類だし、正解だと思う。

パトリシア・ハイスミス見知らぬ乗客

 ・ハイスミス20歳をすぎてから

ドナルド・E・ウェストレイクホットロック

 ・なぜよりによって『ホットロック』?

ボアローナルスジャック悪魔のような女

 ・ボアナルほんとに読んだことある?俺はない。映画は傑作だった。

トルーマン・カポーティ冷血

 ・ルポルタージュミステリとしては先駆的だったのかもしれないが、今読むと長いしタルいし冗長カポーティの美点がほとんど失われてしまっている。

ジム・トンプスン「内なる殺人者」

 ・ポップでしょ。

ウンベルト・エーコ薔薇の名前

 ・たかだかミステリ読みごときエーコの真価が理解できるとはおもわない。

ローレンス・ブロック八百万の死にざま」

 ・タイトルで勝ってるよな。アル中文学系譜が産んだ名作。

ルース・レンデルロウフィールド館の惨劇

 ・一発ネタ長編まるまるひとつ持たせた奇跡のような書物とはいえレンデルもっと濃ゆいのがある。

ウィリアム・ゴールディング「蝿の王

 ・別にここに入れる必要はないのでは。

ジェイムズ・クラムリー「酔いどれの誇り」

 ・ネオハードボイルド作家たちは再評価されるべきだと思うが、中途半端に古くなってしまった感もあり、難しい。

ジェイムズ・エルロイブラック・ダリア

 ・反面エルロイは古びない。ただLA四部作は何も知らない人が「ブラック・ダリア」だけ読んでもわからん気がする。

ジャック・ヒギンズ「鷲は舞い降りた」

 ・冒険小説進化してるので、いつまでもヒギンズを引きずるのは不幸というか、グリーニーとか読ませたほうがいいのでは。俺は嫌いだが。

アリステア・マクリーン女王陛下のユリシーズ号

 ・マクリーンなんかよりイアン・フレミングのほうがよほどリストに入れる意味あるよ。

トマス・ハリス羊たちの沈黙

 ・作者がキモい

ドナルド・A・スタンウッド「エヴァライカー記憶

 ・このリストのなかでは比較的新しい作品で、オールタイム・ベスト的なリストでみかけるのは珍しい。個人的思い入れがあるのか? たしかに発売当時からそこそこ評判高かったけれど、薄い記憶を掘る限りそこまで評価する理由が見当たらない。気になる。

クレイグ・ライススイートホーム殺人事件

 ・ライスはたまに読むと心温まってよいが、それはスレた読者の愉しみなのであって、入門者が読んでも伝わりにくい。

アゴタ・クリストフ悪童日記

 ・たしかに仕掛けはミステリなしおもしろ小説なのだが、別にこのリストに入れる必要はない。なんでミステリの人は文学コンプレックスを抱くのだろう。

アイラ・レヴィン「死の接吻

 ・うーん。

リチャード・二ーリィ「心ひき裂かれて」

 ・オールタイムベストでも陰が薄い存在なので、入っていると嬉しい。まあでも数合わせだよね。

ケン・フォレット「針の眼」

 ・フォレットもそろそろ再評価されるべきだと思うのだが、ダン・ブラウンみたいなものと思われているのだろうか。

マイ・シューヴァル、ペール・ヴァール「笑う警官

 ・北欧系の元祖ではあるのだろうが、だったらよりエポックミレニアム入れたほうが誠実な気がする。

黒岩涙香巌窟王

 ・ごめん、モンクリの方しか読んだことない。

甲賀三郎ニッケル文鎮

 ・はあ。

江戸川乱歩「孤島の鬼」

 ・え?

大下宇陀児「石の下の記憶

 ・変格って今読むとふつうにつまんないの多いよね。

夢野久作ドグラ・マグラ

 ・そりゃ読んでも損はないとは思うが。

浜尾四郎「鉄鎖殺人事件

 ・当時としてはアベレージはある作家だろうが、そこで鉄鎖を選ぶ理由がよくわからない。

大阪圭吉「とむらい機関車

 ・うーん……いいんじゃないんですか。

小栗虫太郎黒死館殺人事件

 ・どう読むかによる。単純な出来でいったら虫太郎にはもっといいのがいくらでもある。すまん、いくらでも、はない。

木々高太郎新月

 ・すっかり忘却の彼方すぎて妥当かどうかさえわからん

横溝正史獄門島

 ・横正の作品をチョイス理由を添えずにポンと出されても困るんだよな。高校生も困ると思うよ。こんなんだけ読まされても。しょうがない。

坂口安吾不連続殺人事件

 ・本格ベタ安吾のなかでもなんでよりによって一二を争うほど不出来な作品を選ぶのか。嫌いなのか?

高木彬光人形はなぜ殺される」

 ・高木彬光でこれがあがってしまうのは、消去法の結果なのだと思う。

山田風太郎「妖異金瓶梅

 ・特にケチをつけようとは思わない。

海野十三「海底都市

 ・海野十三本領はヌケの良いバカバカしさだと思う。

大坪砂男涅槃雪」

 ・通っぽいセクレトだが、そこは素直に「天狗」にしとけ。コケまくったサンドマンが唯一正位置になってしまった作品なのだから

松本清張砂の器

 ・映画の印象は強いが、清張であえてピックアップするほどかといえばどうか。

鮎川哲也薔薇殺人事件

 ・変化球狙いすぎて外しとる。

有馬頼義「四万人の目撃者

 ・流れ的にはわからないでもない。

仁木悦子「猫は知っていた」

 ・と思ったらいきなり脳死みたいな。

高城高X橋付近

 ・今あえて読むほどのものではない。

水上勉飢餓海峡

 ・同上。長いだけ。

笹沢左保「暗い傾斜」

 ・同上。とはいえ笹沢左保はもうちょっとまれてもいい。

飛鳥高「細い赤い糸

 ・飛鳥高長編ってそんな良いイメージないのだが。賞とったってだけで入れてない?

土屋隆夫天狗の面」

 ・今選ぶとなると難しい作家だが、針の誘いとかでいいのでは。

陳舜臣「玉嶺よふたたび」

 ・そもそもミステリうまい作家ではない。

竹本健治匣の中の失楽

 ・パッションだけで突っ走った奇跡であることは間違いないが、三大奇書にならべて語るほどかといわれれば疑問符がつく。竹本健治は”今”が面白い現役の作家だ。

中井英夫虚無への供物

 ・不可欠だとは思うが、真剣に読んでる人は少数派だろう。

赤江瀑オイディプスの刃」

 ・そうね。

都筑道夫三重露出

 ・またひねくれたもん入れてくるな。

森村誠一新幹線殺人事件

 ・ごめん、森村あんま興味ない。

天藤真大誘拐

 ・色んな意味稀有作品ではある。

西村寿行「滅びの笛」

 ・特に反対する理由もない。

清水一行動脈列島

 ・人間生きてて清水一行の話することある

戸川昌子大いなる幻影

 ・戸川昌子の話をすることはあるかもしれないな。

戸板康二グリーン車の子供」

 ・マスト

泡坂妻夫「亜愛一郎の狼狽

 ・鉄板

大岡昇平事件

 ・入れても良いとは思うが、そういえば結城昌治がおらんな。

田中光二黄金の罠」

 ・エッ? そこ?

栗本薫「絃の聖域」

 ・読んでない。そろそろ疲れてきた。

連城三紀彦「宵待草夜情」

 ・好みの問題であるとは思うが。

辻真先アリスの国の殺人

 ・アー。完全恋愛かいいんでは。

笠井潔サマーアポカリプス

 ・第一作だしリストになら入れてもいいと思う。

逢坂剛カディスの赤い星」

 ・もうちょっと高校生までに」という点を考慮しようよ。

船戸与一「猛き方舟」

 ・船戸与一今読むと意外にいいものもあるんだよね。

島田荘司占星術殺人事件

 ・このへんはね。

綾辻行人十角館の殺人

 ・入るよね。

京極夏彦姑獲鳥の夏

 ・急に九十年代っぽくなったけど、2000年代にもインスタントクラシック作品はたくさんあると思うよ。

皆川博子「死の泉」

 ・皆川博子ミステリ的に評価できるかといえば微妙なんだけど、ミステリ界以外で評価される土壌がさほどないようなので、不運な作家だと思う。偉大な人です。

ミステリ好きなら高校生までに読破しておきたい古典100

https://anond.hatelabo.jp/20210210225201

  1. エドガーエラン・ポオ「モルグ街の殺人
  2. ウィルキー・コリンズ「月長石」
  3. コナン・ドイルシャーロック・ホームズの冒険
  4. モーリス・ルブラン「怪盗紳士ルパン
  5. ロナルド・A・ノックス「陸橋殺人事件
  6. フョードル・ドストエフスキー罪と罰
  7. コンラッド「闇の奥」
  8. F.W.クロフツ「樽」
  9. S.S.ヴァン・ダイン僧正殺人事件
  10. ガストン・ルルー黄色い部屋の謎」
  11. エラリー・クイーン「Yの悲劇
  12. ジョン・ディクスン・カー火刑法廷
  13. アガサ・クリスティそして誰もいなくなった
  14. ドロシー・セイヤーズナインテイラーズ」
  15. イーデン・フィルポッツ赤毛のレドメイン家」
  16. G.K.チェスタトンブラウン神父童心
  17. フランシス・アイルズ殺意
  18. ウィリアム・アイリッシュ「幻の女」
  19. コリン・デクスターキドリントンから消えた娘」
  20. セバスチャン・ジャプリゾシンデレラの罠」
  21. ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」
  22. ウィリアム・L・デアンドリア「ホッグ連続殺人
  23. クリスチアナ・ブランド「招かれざる客たちのビュッフェ
  24. エリザベスフェラーズ「猿来たりなば」
  25. ロアルド・ダールあなたに似た人」
  26. ダフネ・デュ・モーリアレベッカ
  27. レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」
  28. ダシール・ハメットマルタの鷹
  29. ロス・マクドナルド「ウィチャリー家の女」
  30. フレデリック・フォーサイスジャッカルの日
  31. ジョン・ル・カレ寒いから帰ってきたスパイ
  32. パトリシア・ハイスミス見知らぬ乗客
  33. ドナルド・E・ウェストレイクホットロック
  34. ボアローナルスジャック悪魔のような女
  35. トルーマン・カポーティ冷血
  36. ジム・トンプスン「内なる殺人者」
  37. ウンベルト・エーコ薔薇の名前
  38. ローレンス・ブロック八百万の死にざま」
  39. ルース・レンデルロウフィールド館の惨劇
  40. ウィリアムゴールディング蝿の王
  41. ジェイムズ・クラムリー「酔いどれの誇り」
  42. ジェイムズ・エルロイブラック・ダリア
  43. ジャック・ヒギンズ「鷲は舞い降りた」
  44. アリステア・マクリーン女王陛下のユリシーズ号
  45. トマス・ハリス羊たちの沈黙
  46. ドナルド・A・スタンウッド「エヴァライカー記憶
  47. クレイグ・ライススイートホーム殺人事件
  48. アゴタ・クリストフ悪童日記
  49. アイラ・レヴィン「死の接吻
  50. リチャード・二ーリィ「心ひき裂かれて」
  51. ケン・フォレット「針の眼」
  52. マイ・シューヴァル、ペール・ヴァール「笑う警官
  53. 黒岩涙香巌窟王
  54. 甲賀三郎ニッケル文鎮
  55. 江戸川乱歩「孤島の鬼」
  56. 大下宇陀児「石の下の記憶
  57. 夢野久作ドグラ・マグラ
  58. 浜尾四郎「鉄鎖殺人事件
  59. 大阪圭吉「とむらい機関車
  60. 小栗虫太郎黒死館殺人事件
  61. 木々高太郎新月
  62. 横溝正史獄門島
  63. 坂口安吾不連続殺人事件
  64. 高木彬光人形はなぜ殺される」
  65. 山田風太郎「妖異金瓶梅
  66. 海野十三「海底都市
  67. 大坪砂男涅槃雪」
  68. 松本清張砂の器
  69. 鮎川哲也薔薇殺人事件
  70. 有馬頼義「四万人の目撃者
  71. 仁木悦子「猫は知っていた」
  72. 高城高X橋付近
  73. 水上勉飢餓海峡
  74. 笹沢左保「暗い傾斜」
  75. 飛鳥高「細い赤い糸
  76. 土屋隆夫天狗の面」
  77. 陳舜臣「玉嶺よふたたび」
  78. 竹本健治匣の中の失楽
  79. 中井英夫虚無への供物
  80. 赤江瀑オイディプスの刃」
  81. 都筑道夫三重露出
  82. 森村誠一新幹線殺人事件
  83. 天藤真大誘拐
  84. 西村寿行「滅びの笛」
  85. 清水一行動脈列島
  86. 戸川昌子大いなる幻影
  87. 戸板康二グリーン車の子供」
  88. 泡坂妻夫「亜愛一郎の狼狽
  89. 大岡昇平事件
  90. 田中光二黄金の罠」
  91. 栗本薫「絃の聖域」
  92. 連城三紀彦「宵待草夜情」
  93. 辻真先アリスの国の殺人
  94. 笠井潔サマーアポカリプス
  95. 逢坂剛カディスの赤い星」
  96. 船戸与一「猛き方舟」
  97. 島田荘司占星術殺人事件
  98. 綾辻行人十角館の殺人
  99. 京極夏彦姑獲鳥の夏
  100. 皆川博子「死の泉」

追記

ブコメで指摘を受けたので以下を修正

20と39、「シンデレラの罠」が重複している。確かに一人で何役もやる趣向の話ではあるが。

重複を削除して、ゴールディングの「蝿の王」を入れた。ご指摘感謝

22.の「ホッグ殺人事件」、正しくは「ホッグ連続殺人」だね。

修正した。ご指摘感謝

間違い探しみたいで申し訳ないが、35は「トルーマン・カポーティ」かな。ノンフィクションミステリに入れるのは、ちょっと抵抗がある。

修正した。ご指摘感謝

2021-02-12

必読書コピペマジレスのやつのパクリ海外文学

パクリ元→ https://anond.hatelabo.jp/20210212080317

だって楽しそうだったから...(自分文学的教育は受けてないし、誰かと読んだ本の感想を共有することなんてないので、元増田文学サークルとか友人とか出てくるのがうらやましい)

ネタバレありだけど、ちゃん確認せず書いてるので記憶違いがあるかも。あと、後半になると全然読んでなかったわ。

ホメロスオデュッセイア

オデュッセウストロイ戦争から帰る途中で船が難破して右往左往頑張るのを眺めるお話なのだけど、勇敢で直情的な普通おっさんなので苦労するところは苦労してて良い。あと、イリアスと比べても昔の神話らしく出てくる人物とか神様の類がガチ理不尽なので良い。話がズレるけど、イリアスにはディオメデスというやつが主人公然として出ずっぱりなのだけど、オデュッセイアの回想には全く出てこないし、アガメムノンとかアイアスとかと違って他の作者の物語にも出てこないのだけど、あいつなんなん?

旧約聖書創世記

途中で読むのをやめた記憶がある。

ソポクレスオイディプス王

エディプスコンプレックス父親に対向心を燃やし、母親に恋慕する、的なやつ)の語源だと聞いて読んだら、全然そういうノリの話じゃなくて「へぇ」ってなったやつ。オイディプス自身は預かり知らぬところで運命に弄ばれて、最後にはすべてを理解してしまって絶望する可哀想な話なのだけど、どうでもよいことで人を殺したことトリガーでもある(それも運命ではあるのだけど)ので、自業自得感もある。気楽に人を殺してはだめ、絶対シェイクスピア悲劇とかもだけど、「100%落ち度がない悲劇被害者」ってあんまり昔の物語には出てこないね

唐詩選』

タイトルすら知らないやつ、その1

ハイヤーム『ルバイヤート

いまいち印象に残ってないけど、なんかずっと酒を楽しんでて幸せそうだなって思ったような気がする。

ダンテ神曲

地獄編の半分くらいまで読んだ。作者(ダンテ)が古代詩人だか哲学者かに褒められて地獄めぐりを導いてもらうところから始まって、自分の嫌いなやつ(政敵とか批判者)が地獄で苦しんでるのを巡ってはひたすら口汚く罵って回るという、その性格の悪さというか根暗さに嫌気がさして読むのをやめた。原文だと詩的というか言語的な美しさとかあるらしいけど、こちとら娯楽としてしか本は読まないので日本語で読むからそんなん知らん、こいつは陰湿

ラブレーガルガンテュアとパンタグリュエルの物語

確か冒頭に「酒でも飲みつつゲラゲラ笑いながら聞くためのもんだから」みたいな説明が入るのだけど、そんな感じ。すごいでかい巨人の話だけど、家を椅子にしたと思ったら小便で洪水を起こして家を押し流したりするので、巨人としてのサイズも大概統一性がないんだったはず。なんか「人間の絆」だったかで、大真面目なキャララブレーを手放さなかった、みたいな描写があった気がするのだけど、ニュアンスがわかるようなわからんような...と思った記憶がある。

シェイクスピアハムレット

シェイクスピア作品は、意図はどうあれよく「様々な作品元祖とも言えるものなので、読むと後続の作品がより楽しめる」的に紹介されるのだけど、普通に単体で楽しめると思う。そもそも、別作品を読んでて「あ、これシェイクスピアで見たやつだ!」ってなったからって楽しいか?という感覚個人的にはある。ひとつ上にラブレー云々も別に良い要素だと思わなかったし。で、ハムレットシェイクスピア戯曲の中でも登場人物精神性の完成度が一番高いと思っていて、劇的さでは「オセロー」とか、キャラクターの鮮烈さでは「リチャード三世」とかには劣るかもしれないけど、舞台装置としてのキャラクターではなく、"異なる価値観教育etc...の元に自分で考えて行動する登場人物たちがつくる物語"としての面白さが本当に高いと思う。歴史的価値とかは忘れろ、楽しめ。

セルバンテスドン・キホーテ

パルケエスパーニャにいた。

スウィフトガリヴァー旅行記

巻末の解説すら読まないことが多いので、アイルランド云々の話をパクリ元で見て「そうだったんだー」ってなった。それぞれの国には短編小説くらいの分量しか滞在しないので、それぞれ短編SFとか的なノリで読んで面白かった記憶がある。自分自然科学系の研究者なので、科学なき探求(無為)をひたすらやってる国の印象が強い。なんかおまじない的なやつで作物の収穫量が増えるのでは?ってそれを試してるんだけど、当たり前に効果はまったくないし、それを評価するというプロセス存在しないので無限無為を繰り返してた。

スターントリストラム・シャンディ』

タイトルすら知らないやつ、その2。

サド悪徳の栄え

「目玉の話」は読んだけど、その結果として「悪徳の栄え」は読まなくて良いかな。ってなったやつ。

ゲーテファウスト

最強天才ファウスト博士悪魔契約して、「悪魔の力で楽しませてやる代わりに、人生楽しみきって満足したら魂もらうからな」って契約をする話なのだけど、すべての学問を修めた最強天才のはずのファウスト博士普通精神的に未熟なおっさんなので、酒飲んで暴れたり恋愛ごとやったり神話的な体験したりと色々していくなかでの言動がいちいち子供じみてるのが面白い。最後理想国家のために働く的なパートでいきなり聖人的になってたり、全体の流れが説教臭いのが多少鼻につくのだけど、ラストシーンの迫力は自分読書歴の中でトップクラスだと思う。ちなみにこの作品は「時よ止まれ、お前は美しい」って言葉元祖なのだけど、これってファウスト博士からの「この世界を楽しみ尽くして満足した。これ以上の瞬間などこれ以降はありえない(だからもう魂を持っていって良いよ)」という悪魔への宣言で、なんかラブロマンス的なシーンで使われてるの見ると、「ん?」てなるんよね。

スタンダールパルムの僧院

面白かったな」という感想を持った記憶はあるのに内容はまったく思い出せない。なんか年上美人若者恋愛する話だったと思う。多分登場人物が本気で生きてる感があって各シーンは面白いって読めたけど、全体の流れにはさほどの興味が持てなかったタイプの話だと思う。

ゴーゴリ外套

うだつの上がらない貧乏役人のおじさんが一念発起して外套を新しく買うのだけど、可哀想な目にあう。っていう胸糞の悪い類の話。どこかユーモラスなので面白がりつつも、「可哀想じゃんヒドイよ!」って思いながら読んだ。みじめな人間をみじめな人間視点で描ききるって案外すごいことだと思う。でもゴーゴリナンセンス小説ならもっとポップな「鼻」のほうが好きだし、大真面目な雰囲気ナンセンスをやっている感のある「死せる魂」も良い。死せる魂は未完だけど、なんだかんだ一つのエピソードちゃんと完結してるので、未完だからって敬遠しないで良いと思うよ。

ポー盗まれた手紙

タイトルとあらすじを知ってて、なので読んでいない。

エミリー・ブロンテ嵐が丘

主人公女性の半生記的なところがある物語なのだけど、主要登場人物であるキャサリン主人公)やヒースクリフ主観的感情があまり描写されない(まったくされない?)ので、なんかヒステリック意味不明言動キャサリンと内心が読み取れないヒースクリフが読者を置いてけぼりにしながらすごく力強くて迫力があって得体のしれない物語を作っていく話だったと思う。主観的情報がないからこそ感じられるキャラクターたちの感情の力強さってなんかあるよね。

メルヴィル白鯨

クジラに関する雑学(どう考えてもガセのものがある)がしょっちゅうはいってくるクジラ漁船物語体感で全体の3割)。エイハブ船長とクイークエグのキャラクターの良さを傍観者主人公視点で楽しむ感じだった気がする。ラストシーン映像的な迫力は「ファウスト」のラストシーンの迫力にも匹敵するものがあると思う。文章映像的迫力ってなんよ?って自分も思うけど、なんかそういうのはあるんだ。多分。

フローベールボヴァリー夫人

間違えなく読んでるし、面白かったと思った記憶もあるけど内容が思い出せないやつその2。多分、貴族恋愛ものってジャンルはいろんな作品があるので、自分の中でごっちゃになってるところがあるんだと思う。あらすじを読むとなんとなく思い出すのだけど...

キャロル不思議の国のアリス

ディズニー映画って、ノートルダムの鐘とかを筆頭にとんでもなく改変されてるもんだけど、不思議の国のアリスについては、その「不思議の国」感は素敵に映像化されてると思う。一方で、原作の「ひねくれイギリス人が伝わるかどうかは無視してそのアイロニー子供にぶつけてる感」はなくなってるので、そういうひねくれたおっさんのノリのために読んでみても良いと思う。

ドストエフスキー悪霊

ドストエフスキーノイローゼ死語患者独白を描かせると人類史最強だと思っているのだけど、この作品でも割とそういうところがある。ノイローゼ感のヤバさだけなら地下室の手記とか白夜でも良い。でも個人的には「罪と罰」の主人公の単純なノイローゼ患者ではないせめぎあい感が一番好き。

チェーホフ桜の園

由緒ある一家が没落していくんだけど、正常化バイアスなのかなんなのかどこか他人事で、お母さんなんて特に事が進む毎に悲しんではいるんだけど、一切その精神性が変わらなくて(成長しなくて)、「多分この人死ぬまでこうなんだろうな...」感があってすごい。ラストにお年寄り使用人に対する家族全員に関するシーンがあるのだけど、それがすごい印象的で、チェーホフの他の作品戯曲を抑えてこれが良く代表作として出てくるのはこのシーンのせいだな、って個人的には思ってる。自分チェーホフ戯曲より小説のほうが好き。

チェスタトンブラウン神父童心

タイトルすら知らないやつ、その3。作者名も知らない。

プルースト失われた時を求めて

5冊だか6冊だかにのうちの一冊目だけ読んで続きを読んでなかった。忘れてたわ。

カフカ審判

読んだけどあんまり好きになれなかった記憶がある。カフカ基本的キャラクターに人間味がないのが面白いところなのだと思っているんだけど、「変身」とかの短編ならともかく、「城」とかこれくらいの分量になると、人間味のないお話自分には楽しめないのだな、と思った。

魯迅『阿Q正伝』

読んでないけど、なぜかあらすじは知ってる。

ジョイスユリシーズ

読んでない。「ダブリン市民」があまり楽しめなかったという記憶があって手を出していない。ダブリン市民はどんな話だったか覚えてない。

トーマス・マン魔の山

結核患者の療養施設であるところのサナトリウム生活するおっさんの話。ワナビー小説家だか学者だか(主人公ではない)のエピソードや、立派な紳士とその子供の印象的な挿話があったかと思うと主人公と別の患者哲学かなにかの論争がてんやわんやあったり、女性患者との恋愛未満関係の話があったりと色々な要素がある。ただ、どの部分でも人物精神性についてバリエーション豊かで不思議リアリティのあるキャラクターが独特な言動をするので楽しめた。でも、突然こっくりさんをはじめたときは「作者どうした?」って思ったよ。なんなら今でも思ってるよ。

ザミャーミン『われら』

タイトルすら知らないやつその4にして作者名も知らないやつその2。

ムージル特性のない男』

タイトルすら知らないやつその5にして作者名も知らないやつその3。自分1900年あたりを境に新しい作品に苦手意識があってあんまり読んでないんだなって実感する。

セリーヌ『夜の果ての旅』

このへんはすごい現代的なんだけど結構好き。現代的というのは勝手自分定義なのだけど、この辺の世代になるとやっぱり文章が少なからず技巧的になって、観念的な表現とか比喩とかが増えてくるので、「うるせぇ、自分感情もっとわかりやす説明しろ!」って要求をしたくなるのだった。でもこの話は割とそれでもなんだかんだ心理がわかるので楽しめた。

フォークナーアブサロム、アブサロム!

このお話はすごい好き。南北戦争前の南部黒人バリバリ奴隷として使われてる時代地域)のある町にトマス・サトペンというヤバげなおっさんがやってきて領地開拓し、南北戦争を挟みつつ色々する話なのだけど、時系列出来事を追っかけずに何人かの周囲の人達の回想などでだんだんとそのおっさん人生全体像を見せてくる構造になっていて、ただのヤバげなチンピラおっさんだったサトペンが、相応の過去と野望をもったクソチンピラになっていく(自分の中で)のがすごい迫力満点で面白かった。この作者の有名どころの読みにくさは、「響きと怒り」>「アブロサム、アブロサム!」>「八月の光」なので、この逆順に読むのがおすすめ短編から読むのも良いけど、「ウォッシュ」だけは「アブロサム、アブロサム!」のネタバレから後に回すのがおすすめ

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』

タイトルすら知らないやつその6にして作者名も知らないやつその4

サルトル嘔吐

そこまで好きにはなれなかった。説教臭さとも違うなんか面倒臭い思想みたいなものが全体に漂ってる感じで、個人的にはそれが鼻に付いたんだろうなぁって思う。

ジュネ『泥棒日記

読もうと思ってたけど読んでなかったのを思い出した。読もう。

ベケットゴドーを待ちながら

なんか意味がありそうで(少なくとも自分が考える限りは)何も意味がないという、意味ありげさで成り立っている戯曲。ただ、それぞれのシーンが映像としてかなり印象的なので、その力でのめり込みながら読んた。で、読んだあと思い返すんだけど、結局何がなんだったのかイマイチからないのだった。偉そうなご主人様とその奴隷のシーンとかあったけど、結局なんだったんだあいつら。

ロブ=グリエ嫉妬

タイトルすら知らないやつその7にして作者名も知らないやつその5

デュラス『モデラートカンタービレ

読んだはずだけどちょっと印象が薄い。同じ作者の「愛人」がそうだったと思うのだけど、登場人物の心情描写が変に淡々としていて、でも行動はどこか直情的で不思議だなぁと思いながら読んだ気がする。その不思議さを楽しむのかな。なんか村上春樹小説登場人物の行動を感情的にしたような感じ。

レム『ソラリスの陽のもとに』

タイトルすら知らないやつその8にして作者名も知らないやつその6。自然科学研究者なのにSF全然読まないのだった。でも、SFに興味のない研究者って外部の人が思うよりは多いと思うよ。そもそも本を読まない人をおいておいたとしても。

ガルシア=マルケス百年の孤独

ラテンアメリカ文学って魔術的リアリズムとかなんとかって、「なんかありそうにない魔術的なシーンだけど、不思議リアリティがある」みたいな評価がされてるらしいのだけど、それってヨーロッパ人感性日本人ヨーロッパ文学も大概魔術的なものとして受容してるところあるよなって思う。ただ、それはともかくとして、この作者の作品ではその言葉がしっくりくるとは思う。同じ作者の「族長の秋」とか短編の「エレンディラ」とかは割とお話全体のストーリー意味と(場合によっては)ある種の寓意を持っているのだけど、この作品だけは全体の流れとかはあまり意味ないんじゃないか個人的に思う(何度も読めばなにか見えるのかもだけど...)。それぞれのシーンをただただ楽しんでいたら、読む前に覚悟した長さの4分の1くらいの体感長さで読みきっていた。

ラシュディ『真夜中の子どもたち』

タイトルすら知らないやつその9にして作者名も知らないやつその7。なんかすごそうなあらすじだね。

残り全部

詩はたしなまいから知らない。ツエランはなんか親が読んでて好きだと言ってた気がする。ブレイクって多分宗教画を描く人でもあると思うんだけど、この人の絵はどっかで見てすごいなぁって思った気がする。

終わり

ちなみに、「哲学思想」のパートと「日本文学」のパートは両方合わせても5~6作品しか読んでなかった。多分後30年経ってもさほど増えないだろうなと思う。

必読書コピペマジレスしてみる・海外文学編(2)

(1)はこちら。anond:20210212080317

キャロル不思議の国のアリス

好き。ただし、当時の人にしかからないパロディジョークが多く、というかこの本を通じてしか残っていないのもあるので、純粋に笑えるかどうかはわからない。とはいえ、わからないなりにナンセンスさは楽しく(「ぽっぺん先生シリーズにも引き継がれている)、トーベ・ヤンソンなどいろいろな人の挿絵も楽しめるし、こじらせ文学少年文学少女とも仲良くなれるかもしれない。大学時代読書サークルは楽しかったなあ。

ドストエフスキー悪霊

ドストエフスキー小説基本的に頭がおかしい。ドストエフスキー自身ギャンブル依存症ユダヤ人嫌いのヤバいやつだし。

登場人物基本的自己主張が激しくて感情に溺れやすく、数段落数ページにまたがって独白する。プライド無駄に高くて空想癖がひどく、思い込みが激しくて人の話を聞いちゃおらず、愛されていないのに愛を語る。そしてそんな奴らが大好きだ。

ぜひとも増田ロシア文学沼に落としたいのだが、いかんせん「悪霊」を含む五大長編から挑戦するのはハードルがあまりにも高いので、「永遠の夫」か「賭博者」か「地下室の手記」か「白夜からおすすめロシア文学はいいぞ。

ところで、高校時代の友人曰く「ドストエフスキーにはまるのは自己愛自己嫌悪の衝突を必死プライドで支える人間、言い換えるとモテない」とのこと。ひどい。

チェーホフ桜の園

こっちはスマートなほうのロシア文学一家が没落して家や土地を売らないといけないのに、家の経済状態をわかっておらず(認めず)すぐに物乞い金貨を上げちゃう現実の見えていないお母さんのキャラが強烈。ギトギト描写するドストエフスキーに対し、勘所をびしりと抑えるチェーホフ

実家のお母さんと(特にお金関係で)うまくいっていない人におすすめ

チェスタトンブラウン神父童心

未読。怪作「木曜日だった男」は読んだんだが。ミステリはあまり読んでいないのでそのうち読む。

プルースト失われた時を求めて

誰もが冒頭のマドレーヌの香りから想起されるママンとの思い出についてしか語らず、たぶんみんなちゃんと読んでないかなのだが、実は無職マザコン自分の性の目覚め(野外オナニーを含む)やソープ通いや失恋の思い出について延々と語っている話で、何度語り手に向かって「働け!」と言いたくなったことか。

しかし、実のところ登場人物の九割がLGBTという当時としては非常に先進的な小説で、さらに当時炎上していたドレフュス事件という両陣営を真っ二つに分断した冤罪事件ネタにもしているので(今でいえばMeTooやBLMに相当する)、実は差別反差別についていろいろ語っている増田たちにすごく刺さる内容だと思う。俺差別してないし~、あいつは〇〇人だけどいいやつだよ~、的な態度もぐさりとやられている。最高でしかない。

ちなみに、金に苦労しないボンボンがうだうだ恋愛で悩む小説が好きになったのはこの本のせい。「アレクサンドリア四重奏」とかね。

カフカ審判

不条理ギャグすれすれで訳もわからずひどい目に合う小説。いきなりこの小説チャレンジするのはしんどいので、まずは「変身」か岩波文庫短編集を読んで、カフカのノリが気に入ったら読むといいんじゃないかな。

読んでいるとカフカがお父さんのことめちゃくちゃ苦手だったってのがびりびり伝わってきて気の毒(カフカは線の細い文学青年、父は叩き上げビジネスマン想像できるでしょ?)。お父さんとの関係がこじれている人におすすめ

魯迅『阿Q正伝』

最高のダメ人間小説精神勝利法なることばはどこかで聞いたことがあるんじゃないだろうか。作者は当時の中国人意識の低さを批判したつもりらしいが、万人に刺さる内容。

ちなみに自分ダメ人間、情けないやつ、どうしようもないやつが大好きなので「指輪物語」のゴクリ(ゴラム)だとか、「沈黙」のキチジローだとかが大好きです。

ジョイスユリシーズ

さえないおっさんが妻の浮気を知りながら一日中ダブリンの町をウロウロするだけの寝取られ小説で(途中で女の子スカートをのぞいて野外オナニーもする)、このリストの前に出てきた「オデュッセイア」のパロディでもある。

これだけだと何が面白いのかよくわからないのだが、実は当時の反英的な機運の高まっているアイルランド空気活写している。それだけではなく小説の様々な実験手法の見本市みたいになっており、和訳もすごい。たとえばある章では英文学の様々な文体歴史順に真似て英文学の発展をパロるのだけれど、和訳ではその章は祝詞に始まって漢文になり、漱石芥川文体を経て現代小説になるという離れ業で訳している。これがもっと無茶苦茶になると「フィネガンズウェイク」になるのだけれど、すでに言語の体をなしていないのでまだ読めてない。

上記説明ドン引きしないでください。「ダブリン市民」をお勧めします。

トーマス・マン魔の山

結核療養サナトリウム小説北杜夫ファンの間で有名な「ねーんげん的」の元ネタ。あらゆる知識を山のサナトリウムで吸収した主人公運命いかに! 「ノルウェイの森」で主人公京都山中精神病院にこの本を持っていくのは村上春樹なりのジョークか。

ただし、やっぱり長いので美少年萌えな「ヴェニスに死す」か陰キャの悲哀「トニオ・クレーゲル」にまずチャレンジするのがおすすめ

はまったら「ブッデンブローク家の人々」や「ファウストゥス博士」を読もう。

ザミャーミン『われら』

洗脳エンドのディストピア小説なんだけど、増田で「一九八四年」が古いと言われてしまうんだったらこれはどうなるんだろ。読むんだったら他の「すばらしい新世界」とか「ハーモニー」とかと読み比べて、ディストピア概念現実社会の変化に合わせてどんな風に発展してきたからを考えながら読むと面白いのかも。

ムージル特性のない男』

未読。長すぎる。

セリーヌ『夜の果ての旅』

未読。

フォークナーアブサロム、アブサロム!

文学サークルの友人に勧められて読んだんだけど、とんでもない小説だった。あらすじとしては、野望に取りつかれた南部人種差別主義者自分帝国を作るために理想女性結婚するが、その女性黒人の血が混じっていたために離婚して別の女性結婚することから始まる、二つの家系因縁なのだが、時系列しっちゃかめっちゃかなのでとにかくその男の妄念とその子孫の不幸ばかりがじりじりと迫ってくる。あまりにもすごかったのでフォークナーの他の作品は読めておらず、黒人差別を扱った小説も怖くて読めていない。

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』

未読。

サルトル嘔吐

読んだがよくわからなかった。うつ状態ときには時間の経過さえも苦痛で、それを救ってくれるのは音楽だけだ、的な話だったか。とにかく本を読み漁っていたころ、新潮文庫サルトル短篇集を意味も分からず読んでいたのを思い出す。わけもわからないままヌーベルヴァーグを観ていた頃だ。さっき出てきた高校時代の友人曰く「フランス映画のあらすじはセックスして車で逃げて殺されるだけだ」とのことだが、起承転結還元できない小説を楽しむようになったのはこの頃からだった。

ジュネ『泥棒日記

未読。

ベケットゴドーを待ちながら

短いのですぐ読める。ゴドーはいまだに再臨しないキリストアレゴリーだという説もあるが、実際のところはよくわからない。意味の分からない話だけど、僕らの人生結構意味不明だよね、みたいな感じか。

ロブ=グリエ嫉妬

未読。「消しゴム」は数年前に読んだが理解できなかった。

デュラス『モデラートカンタービレ

未読。「愛人」は読んだが記憶のかなた。まだ幼くて没落する富裕層とその爛れた愛を十分に楽しめなかった。

どうでもいいが自分が年上萌えに目覚めたのは「海辺のカフカ」のおねショタシーンです。

レム『ソラリスの陽のもとに』

レムの作品の中では一番好き。たとえ出てくる科学技術描写が古くなっても(SFだとこういうことはよくある)、理解できない対象として立ちふさがるソラリスという惑星描写は古びない。

SFは考えうるあらゆる可能性を検討し、人類の達成しうることや宇宙の中での意味について想像力の境界をどこまでも遠くまで広げていく文学だ。中には人類がろくでもない理由で滅亡してしまったり、人間など取るに足りないという悲観的なヴィジョンに至ってしまったりするものであるが、それでさえ美しい。なぜなら、想像力がヒトという種の肉体に縛られまいと羽ばたいた結果なのだから

最近SFをろくに読んでいないが、元気が出たらまた読みたいものだ。

ガルシアマルケス百年の孤独

初めて読んだラテンアメリカ文学。起こりえないことが起こり、名前がややこしいので誰が誰だかすぐに混同され、しかもそのすべてが意図的である。混乱してもとにかく読み進めてほしい。目の前で起きる不可解な出来事をまずは楽しもう。

慣れてきたら、これが不条理しか言いようのない南米歴史の縮図だとかそんなことを考えてみるのもいいかもしれない。この本のおかげでボルヘスに、バルガスリョサに、ドノソに出会うことができた。

一説によるとこの本が文庫化されるとき世界の終末が近づくという本の一つ(未確認情報)。新潮社がなぜか頑なにハードカバーしかさない。ちなみに「薔薇の名前」にもそうした風説がある。

ラシュディ『真夜中の子どもたち』

インド独立の瞬間に生まれ子供たちが全員テレパシーの使い手だった! こんな話があの岩波文庫に収録されるんだから世の中わからない。

主人公は裕福な家で育つが、じつはそれは出産時の取り違えによるものであり、誤って貧しいほうで育ってしまった子供復讐にやってくる。それも、真夜中の子どもたち全員を巻き込む恐ろしい方法で。

インドパキスタンの分裂、人口抑制政策、そういったインド歴史ちょっと頭の隅っこに入れておくと面白いが、昼ドラ的な入れ替わりの悲劇の要素のあるSFとして娯楽的に読める。権力を持った強い女性に対する嫌悪感がほんのりあるのが難点か。

ちなみに、「悪魔の詩」も読んだが、(亡くなった訳者には本当に申し訳ないが)こっちのほうが面白かった。あれは当時のイギリスポップカルチャーがわかっていないと理解が難しい。

ブレイクブレイク詩集

独自神話的なヴィジョンで有名らしいんだが、邦訳あったっけ?

ベルダーリンヘルダーリン詩集

未読。

ボードレール悪の華

卒業旅行パリに持って行った。たぶん時期的には最高だったと思う。とにかく血だとか死だとか堕落だとか退廃だとかそういうのに惹かれる人生の時期というのがあり、まさにそのときに読めたのは幸せだった。もっとも、所詮自分はそれらを安全から眺めていただけだったが。

ランボーランボー詩集

同じく卒業旅行パリに持って行った。残念ながらフランス語はわからないのだが、フランスサンドイッチは最高だった。当時はまだピュアだったのでキャバレーフレンチカンカンは見に行っていない。

エリオット荒地

未読。

マヤコフスキーマヤコフスキー詩集

未読。

ツェランツェラン詩集

未読。詩をあまり読んでいなくて申し訳ない。

バフチンドストエフスキー詩学

ドストエフスキー作品カーニバル的、つまり一斉にいろんな出来事が起きてしっちゃかめっちゃかになって、日常価値観が転倒する、みたいな内容。確かにドストエフスキー作品爆弾抱えた人間が一か所に集まってその爆弾が一斉に大爆発、的な内容が多い。

ただ、これ以上のことは覚えていない。実はあまり文芸批評は読まない。

ブランショ文学空間

未読。

以上

疲れたので続編をやるかは不明日本文学哲学思想海外文学ほど読んでないし。まとめてみて、遠ざかっていた文学に久しぶりに手を伸ばしたくなった。

皆様も良い読書ライフを。

2021-02-10

本好きなら高校生までに読破しておきたい古典100

哲学思想

プラトン饗宴

アリストテレス詩学

アウグスティヌス告白

レオナルド・ダ・ヴィンチレオナルド・ダ・ヴィンチの手記』

マキァベッリ『君主論

モア『ユートピア

デカルト方法序説

ホッブズリヴァイアサン

パスカルパンセ

スピノザエチカ

ルソー社会契約論』

カント純粋理性批判

ヘーゲル精神現象学

キルケゴール死に至る病

マルクス資本論

ニーチェ道徳の系譜

ウェーバープロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

ソシュール一般言語学講義

ヴァレリー精神危機

フロイト快感原則彼岸

シュミット政治神学

ブルトンシュルレアリスム宣言

ハイデッガー存在と時間

ガンジーガンジー自伝

ベンヤミン『複製技術時代における芸術作品

ポランニー『大転換 市場社会形成崩壊

アドルノホルクハイマー啓蒙の弁証法

アレント全体主義の起源

ウィトゲンシュタイン哲学探求』

レヴィ=ストロース野生の思考

マクルーハングーテンベルグ銀河系

フーコー言葉と物』

デリダ『グラマトロジーについて』

ドゥルーズガタリアンチオイディプス

ラカン精神分析の四つの基本概念

ウォーラーステイン近代世界システム

ケージジョン・ケージ

サイードオリエンタリズム

ベイトソン精神自然

アンダーソン『想像の共同体

本居宣長『玉勝間

上田秋成『胆大小心録』

内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』

岡倉天心東洋理想

西田幾多郎西田幾多郎哲学論集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』

九鬼周造『「いき」の構造

和辻哲郎風土

柳田國男『木綿以前の事』

時枝誠記国語学原論

宇野弘蔵経済学方法論』

海外文学

ホメロスオデュッセイア

旧約聖書創世記

ソポクレスオイディプス王』

唐詩選』

ハイヤーム『ルバイヤート

ダンテ神曲

ラブレーガルガンテュアとパンタグリュエルの物語

シェイクスピアハムレット

セルバンテスドン・キホーテ

スウィフトガリヴァー旅行記

スターントリストラム・シャンディ』

サド悪徳の栄え

ゲーテファウスト

スタンダールパルムの僧院

ゴーゴリ外套

ポー盗まれた手紙

エミリー・ブロンテ嵐が丘

メルヴィル白鯨

フローベールボヴァリー夫人

キャロル不思議の国のアリス

ドストエフスキー悪霊

チェーホフ桜の園

チェスタトンブラウン神父童心

プルースト失われた時を求めて

カフカ審判

魯迅『阿Q正伝』

ジョイスユリシーズ

トーマス・マン魔の山

ザミャーミン『われら』

ムージル特性のない男』

セリーヌ『夜の果ての旅』

フォークナーアブサロム、アブサロム!

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』平

サルトル嘔吐

ジュネ『泥棒日記

ベケットゴドーを待ちながら

ロブ=グリエ嫉妬

デュラス『モデラートカンタービレ

レム『ソラリスの陽のもとに』

ガルシア=マルケス百年の孤独

ラシュディ『真夜中の子どもたち』

ブレイクブレイク詩集

ベルダーリンヘルダーリン詩集

ボードレール悪の華

ランボーランボー詩集

エリオット荒地

マヤコフスキーマヤコフスキー詩集

ツェランツェラン詩集

バフチンドストエフスキー詩学

ブランショ文学空間

日本文学

二葉亭四迷浮雲

森鴎外舞姫

樋口一葉にごりえ

泉鏡花高野聖

国木田独歩武蔵野

夏目漱石我輩は猫である

島崎藤村破戒

田山花袋蒲団

徳田秋声あらくれ

有島武郎或る女

志賀直哉小僧の神様

内田百閒『冥途・旅順入城式』

宮澤賢治銀河鉄道の夜

江戸川乱歩押絵と旅する男

横光利一機械

谷崎潤一郎春琴抄

夢野久作ドグラ・マグラ

中野重治村の家

川端康成雪国

折口信夫死者の書

太宰治斜陽

大岡昇平『俘虜記』

埴谷雄高死霊

三島由紀夫仮面の告白

武田泰淳ひかりごけ

深沢七郎楢山節考

安部公房砂の女

野坂昭如エロ事師たち

島尾敏雄死の棘

大西巨人神聖喜劇

大江健三郎万延元年のフットボール

古井由吉円陣を組む女たち』

後藤明生挟み撃ち

円地文子食卓のない家』

中上健次枯木灘

斎藤茂吉『赤光』

萩原朔太郎『月に吠える』

田村隆一田村隆一詩集

吉岡実吉岡実詩集

坪内逍遥小説神髄

北村透谷人生に相渉るとは何の謂ぞ』

福沢諭吉福翁自伝

正岡子規歌よみに与ふる書

石川啄木時代閉塞の現状』

小林秀雄『様々なる意匠

保田與重郎日本の橋』

坂口安吾堕落論

花田清輝復興期の精神

吉本隆明転向論』

江藤淳成熟喪失

2020-10-29

正義が無いのが悪ではない。正義しか無いのが悪なのだ。」

G・K・チェスタトン狂人とは理性を失った人のことではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である。」

2016-07-15

完全増田オリジナル! クソザコナメクジが読むべきオススメミステリ200作!

http://anond.hatelabo.jp/20160715120436


貴様の好き嫌いから増田に伝わる独自の推理小説検索アルゴリズムによって、

完璧かつスウィートに貴様の趣味嗜好にそって完全オリジナルベストミステリリストを生成したぞ。

ありがたくよむべし。


【国内】

1 横溝正史 獄門島 1947

2 中井英夫 虚無への供物 1964

3 島田荘司 占星術殺人事件 1981

4 夢野久作 ドグラ・マグラ 1935

5 宮部みゆき 火車 1992

6 松本清張 点と線 1957

7 天藤真 大誘拐 1978

8 綾辻行人 十角館の殺人 1987

9 京極夏彦 魍魎の匣 1995

10 横溝正史 本陣殺人事件 1946

11 鮎川哲也 黒いトランク 1956

12 連城三紀彦 戻り川心中 1980

13 東野圭吾 容疑者Xの献身 2005 -

14 小栗虫太郎 黒死館殺人事件 1934

15 山口雅也 生ける屍の死 1989

16 泡坂妻夫 亜愛一郎の狼狽 1978

17 北村薫 空飛ぶ馬 1989

18 東野圭吾 白夜行 1999

19 坂口安吾 不連続殺人事件 1947

20 綾辻行人 時計館の殺人 1991

21 島田荘司 斜め屋敷の犯罪 1982

22 有栖川有栖 双頭の悪魔 1992

23 京極夏彦 姑獲鳥の夏 1994

24 江戸川乱歩 二銭銅貨 1923

25 松本清張 砂の器 1960

26 原尞 私が殺した少女 1989

27 江戸川乱歩 孤島の鬼 1929

28 高木彬光 人形はなぜ殺される 1955

29 髙村薫 レディ・ジョーカー 1997

30 山田風太郎 妖異金瓶梅 1954

31 水上勉 飢餓海峡 1962

32 高木彬光 刺青殺人事件 1948

33 鮎川哲也 りら荘事件 1968

34 泡坂妻夫 乱れからくり 1978

35 江戸川乱歩 陰獣 1928

36 歌野晶午 葉桜の季節に君を想うということ 2003

37 松本清張 ゼロの焦点 1959

38 泡坂妻夫 11枚のとらんぷ 1976

39 横溝正史 犬神家の一族 1950

40 竹本健治 匣の中の失楽 1978

41 宮部みゆき 模倣犯 1995

42 岡本綺堂 半七捕物帳 1917

43 桐野夏生 OUT 1997

44 皆川博子 死の泉 1997

45 大沢在昌 毒猿 新宿鮫II 1991

46 船戸与一 山猫の夏 1984

47 藤原伊織 テロリストパラソル 1995

48 山田風太郎 太陽黒点 1963

49 京極夏彦 絡新婦の理 1996

50 馳星周 不夜城 1996

51 島田荘司 奇想、天を動かす 1989

52 横山秀夫 第三の時効 2003

53 髙村薫 マークスの山 1993

54 横山秀夫 半落ち 2002

55 笠井潔 サマーアポカリプス 1981

56 島田荘司 異邦の騎士 1988

57 横溝正史 八つ墓村 1949

58 船戸与一 猛き箱舟 1987

59 小泉喜美子 弁護側の証人 1963

60 宮部みゆき 理由 1996

61 真保裕一 奪取 1994

62 三津田信三 首無の如き祟るもの 2007

63 麻耶雄嵩 夏と冬の奏鳴曲 1993

64 森博嗣 すべてがFになる 1996

65 大沢在昌 新宿鮫 1990

66 貴志祐介 黒い家 1997

67 山田風太郎 警視庁草紙 1975

68 泡坂妻夫 しあわせの書 1987

69 久生十蘭 魔都 1948

70 西澤保彦 七回死んだ男 1995

71 笠井潔 哲学者の密室 1992

72 舞城王太郎 煙か土か食い物 2001

73 伊坂幸太郎 アヒルと鴨のコインロッカー 2003

74 乾くるみ イニシエーション・ラブ 2004

75 横溝正史 悪魔の手毬唄 1957

76 麻耶雄嵩 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 1991

77 仁木悦子 猫は知っていた 1957

78 京極夏彦 鉄鼠の檻 1996

79 土屋隆夫 危険な童話 1961

80 我孫子武丸 殺戮にいたる病 1992

81 稲見一良 ダック・コール 1991

82 綾辻行人 霧越邸殺人事件 1990

83 中島らも ガダラの豚 1993

84 殊能将之 ハサミ男 1999

85 逢坂剛 カディスの赤い星 1986

86 連城三紀彦 夜よ鼠たちのために 1983

87 江戸川乱歩 パノラマ島奇談 1926

88 高木彬光 白昼の死角 1959

89 志水辰夫 背いて故郷 1985

90 山田風太郎 明治断頭台 1979

91 佐々木譲 ベルリン飛行指令 1988

92 赤江瀑 オイディプスの刃 1974

93 貫井徳郎 慟哭 1993

94 高野和明 ジェノサイド 2011

95 有栖川有栖 孤島パズル 1989

96 都筑道夫 なめくじに聞いてみろ 1968

97 逢坂剛 百舌の叫ぶ夜 1986

98 岡嶋二人 99%の誘拐 1988

99 宮部みゆき 龍は眠る 1991

100 鮎川哲也 黒い白鳥 1959

101 天童荒太 永遠の仔 1999

102 佐々木譲 エトロフ発緊急電 1989


【国外】

1 アガサ・クリスティ そして誰もいなくなった 1939

2 エラリー・クイーン Yの悲劇 1933

3 アーサー・コナン・ドイル シャーロック・ホームズの冒険 1892

4 ウィリアム・アイリッシュ 幻の女 1942

5 アガサ・クリスティ アクロイド殺し 1926

6 レイモンド・チャンドラー 長いお別れ / ロング・グッドバイ 1954

7 ウンベルト・エーコ 薔薇の名前 1980

8 G・K・チェスタトン ブラウン神父の童心 1910

9 トマス・ハリス 羊たちの沈黙 1988

10 ジョン・ディクスン・カー 火刑法廷 1937

11 アガサ・クリスティ オリエント急行の殺人 1934

12 スティーグ・ラーソンミレニアム〉三部作 2005

13 アイラ・レヴィン 死の接吻 1953

14 エラリー・クイーン Xの悲劇 1932

15 ロス・マクドナルド さむけ 1964

16 ジョン・ディクスン・カー 三つの棺 1935

17 フレデリック・フォーサイス ジャッカルの日 1971

18 S・S・ヴァン=ダイン 僧正殺人事件 1929

19 ジャック・ヒギンズ 鷲は舞い降りた 1975

20 アントニイ・バークリー 毒入りチョコレート事件 1929

21 ローレンス・ブロック 八百万の死にざま 1982

22 ジェフリー・ディーヴァー ボーン・コレクター 1998

23 エラリー・クイーン ギリシア棺の謎 1932

24 クリスチアナ・ブランド ジェゼベルの死 1949

25 ギャビン・ライアル 深夜プラス1 1965

26 ジェイムズ・P・ホーガン 星を継ぐもの 1977

27 ジェイムズ・エルロイ ホワイトジャズ 1992

28 ガストン・ルルー 黄色い部屋の謎 1907

29 スコット・トゥロー 推定無罪 1988

30 シューヴァル&ヴァールー 笑う警官 1968

31 アントニイ・バークリー 試行錯誤 1937

32 ルシアン・ネイハム シャドー81 1975

33 F・W・クロフツ 樽 1920

34 エドガー・アラン・ポー モルグ街の殺人 1841

35 ディック・フランシス 興奮 1965

36 ダシール・ハメット マルタの鷹 1930

37 ジョン・ディクスン・カー 皇帝のかぎ煙草入れ 1942

38 ダシール・ハメット 血の収穫 / 赤い収穫 1929

39 ジョセフィン・テイ 時の娘 1951

40 スチュアートウッズ英語版警察署長 1981

41 セバスチアン・ジャプリゾ シンデレラの罠 1962

42 エラリー・クイーン エジプト十字架の謎 1932

43 R・D・ウィングフィールド クリスマスのフロスト 1984

44 カーター・ディクスン ユダの窓 1938

45 ドロシー・L・セイヤーズ ナインテイラーズ 1934

46 ディック・フランシス 利腕 1979

47 アーサー・コナン・ドイル バスカヴィル家の犬 1902

48 イーデン・フィルポッツ 赤毛のレドメイン家 1922

49 アントニイ・バークリー ジャンピング・ジェニイ 1933

50 ジョン・スラデック 見えないグリーン 1977

51 ルース・レンデル ロウフィールド館の惨劇 1977

52 フェルディナント・フォン・シーラッハ 犯罪 2009

53 カトリーヌ・アルレー わらの女 1956

54 スティーヴン・ハンター 極大射程 1993

55 ジェイムズ・エルロイ ブラック・ダリア 1987

56 トム・ロブ・スミス チャイルド44 2008

57 ロス・マクドナルド ウィチャリー家の女 1961

58 キャロル・オコンネル クリスマスに少女は還る 1998

59 アントニイ・バークリー 第二の銃声 1930

60 ジェイムズ・エルロイ ビッグ・ノーウェア 1988

61 スティーヴン・キング ミザリー 1987

62 アガサ・クリスティ ABC殺人事件 1936

63 ウィリアム・L・デアンドリア(英語版) ホッグ連続殺人 1979

64 ロアルド・ダール あなたに似た人 1953

65 R・D・ウィングフィールド フロスト日和 1987

66 アイザック・アシモフ 黒後家蜘蛛の会 1980

67 ウィルキー・コリンズ 月長石 1868

68 ハリイ・ケメルマン英語版) 九マイルは遠すぎる 1947

69 ダン・ブラウン ダ・ヴィンチ・コード 2003

70 アリステア・マクリーン 女王陛下のユリシーズ号 1955

71 トレヴェニアン シブミ 1979

72 ロバート・ゴダード 千尋の闇 1986

73 ジェフリー・ディーヴァー ウォッチメイカー 2006

74 カズオ・イシグロ わたしを離さないで 2005

75 ロバート・R・マキャモン 少年時代 1991

76 シャーロットアームストロング英語版) 毒薬の小壜 1956

77 ドン・ウィンズロウ ストリートキッズ 1991

78 エラリー・クイーン 九尾の猫 1949

79 レイモンド・チャンドラー さらば愛しき女よ / さよなら、愛しい人 1940

80 コリン・デクスター キドリントンから消えた娘 1976

81 セオドア・ローザック フリッカー、あるいは映画の魔 1991

82 サラ・ウォーターズ 荊の城 2002

83 ジョージ・P・ペレケーノス 俺たちの日 1996

84 スコット・スミス シンプル・プラン 1993

85 トマス・ハリス レッド・ドラゴン 1981

86 G・K・チェスタトン 詩人と狂人たち 1929

87 ドン・ウィンズロウ 犬の力 2005

88 サラ・ウォーターズ 半身 1999

89 クレイグ・ライス スイートホーム殺人事件 1944

90 エラリー・クイーン 災厄の町 1942

91 デズモンド・バグリィ 高い砦 1965

92 モーリス・ルブラン 奇岩城 1909

93 ロバート・B・パーカー 初秋 1980

94 トマス・H・クック 緋色の記憶 1996

95 ジェフリー・アーチャー 百万ドルをとり返せ! 1976

96 アーサー・コナン・ドイル 緋色の研究 1887

97 ドナルド・E・ウェストレイク ホットロック 1970

98 リチャード・ニーリィ 心ひき裂かれて 1976

99 アガサ・クリスティ ナイルに死す 1937

100 アイザック・アシモフ 鋼鉄都市


――閉幕(カーテンフォール)。

2015-09-11

ミステリ愛好家殺人事件(友人の実話に基づく)

わからんな」

「わかりませんか」

わからん犯人が『なぜ被害者の部屋にある本棚の本をすべて抜き取ったあと、また戻したか』についてはさっきの君の説明で納得いった。しかし、それでは肝心の犯人わからんじゃないか。だれにでも出来る殺人だ。被疑者が絞れん」

「それがですね、実はこの本棚こそ犯人ピンポイントで指し示す、最大の証拠品なのですよ」

「どういうことだ」

「それを今から説明します。まずはこのプリントをご覧ください。これは被害者読書履歴リスト化したものです。読書メーターからとってきました」

「なかなか残酷なことをする……。なるほど、ミステリ好きという話は嘘じゃなかったみたいだな。翻訳ミステリの有名作がならんでおる。だが、これで何がわかると?」

「注目すべきはこの本です。江戸川乱歩編『世界短編傑作選3』」

シリーズの三巻だけ読むのが奇妙だと? それはキミ、素人の浅はかだよ。アンソロは続き物じゃない。別に順を追って読む理由などないぞ」

「いいえ、警部。『三巻目であること』それ自体重要なんです。これが『傑作選2』や『4』だけなら単なる被害者の気まぐれですんだでしょう。しかし、『3』だけ、となるとそうはいかない」

「何が言いたい?」

「もう一度、リストを点ではなく線で眺めてみてください。被害者が読んだ順に」

「『モルグ街の殺人事件』、『白衣の女』、『シャーロック・ホームズの冒険』、『ブラウン神父童心』……傑作揃いだな。何の変哲もないミステリ読者だが……」

「"新潮文庫"の『モルグ街』、"岩波文庫"の『白衣の女』、"創元推理文庫"の『シャーロック・ホームズであることが重要なんです。それにしても、この並び、どこかでご覧になったことがありませんか?」

「ふむ、言われてみればどこかで……『お楽しみの埋葬』、『ジェゼベルの死』、『兄の殺人者』……『切断』? ああ、ポーターのか…………あ!!!

「お気づきになられたようですね」

「こ、これは……法月綸太郎の『ミステリー塾 海外編』のマストリードリストとまったくおなじ……!」

「いかにも。被害者は法月先生マストリードリストを律儀にも頭からなぞって読破していたのです。ほら、もっとリストをさかのぼってみて。妙に再読が多いでしょう。古典的名作ばかりなので最初はそれも然りと考えていましたが、種が明かされてみればなんてことない。

 『東西ベスト』、『ミステリハンドブック』、『海外マストリード100』……各所のマストリードオールタイム・ベスト本のリストを手当たり次第に読み漁っていただけなのです。それも、きちんと順番を守ってね。ベスト本のメンツは、特に上位や定番ともなると重複しがちです」

「そうか、やけにホームズポーチェスタトンばかり何度も読んでるわけだ。旧訳の『ブラウン神父童心』を短期間に繰り返し読むなんて、都筑道夫でなけりゃ修行僧くらいのもんだからな」

「もはやパラノイアの域に達していると言ってよいでしょう。ところで、おかしいとは思いませんか? こんな強迫症的な几帳面さを備えていた被害者なのに……この本棚統一性に欠けている」

「そうか……綺麗に整頓された部屋に、きっちりと収まった本棚だったか一見しただけでは気付きにくかったが……」

「同じ列にポケミスとハヤカワのトールサイズ講談社文芸文庫普通単行本をいっしょくたにぶちこむなんて、ぼくですら怖気をおぼえますよ」

「部屋に入ったとき違和感……背筋を伝った悪寒の正体はこれだったのか」

「まともな美意識をもつ読書家なら耐えられない蛮行だ。被害者性格を考えればなおさらです」

「となると犯人は、A.『被害者几帳面な整頓好きであることを知っていた』。B.『しかし、読書家の生態には疎い』人物――」

被害者の交友関係は属していた読書サークル関係に限られていました。本棚にむとんちゃくな読書はいくらでもいますが、被害者の生態を知ったうえであえてこういう現場を残しはしないでしょう……ただ一人を除いて」

「……恋人、か」

動機は容易に推察できます事件当夜に聞こえた罵り合い、あれはおそらく、本を捨てようとした恋人とそれを止めようとした被害者口論だったのでしょう」

「そうして揉み合ううちに……か。殺意はなかったんだろうな」

「ええ、事故です。恋人恋人で日頃から被害者アイドルオタ趣味揶揄されてストレスが溜まっていたのでしょう。自分世界に閉じ籠もって、本当の人間理解しようとしなかったカップル悲劇ですね」

やれやれ……本棚にはじまって本棚に終わる、か。嫌な事件だったな……なあ、思うんだが」

「もし、この部屋に本棚さえなかったら、ですか?」

「そうだ……紙の本……大量の書物を収納するための本棚……。なあ、なぜ人は積ん読を犯してしまうんだろうな? なぜ文字を、知識を物理的に重ねて誇ろうとするのだろうな。

 バベルの塔を知らぬわけでもあるまいに……」

「罪であるとわかっていても手をださずに入られない。それが人間の業です。アダムイヴを知らぬわけでもないでしょう?」

「そうだな……わかっている……わかっているが……くそっ! やりきれない……」

「ぼくも同じ気持です……もし彼らがアレさえ持っていればと思うと」

「アレ? なんのことだ?」

「フフフ、これのことですよ(バッ」

「あ、黒いシルエットを燦然と穿つ青白い光!!!それは、君、kindle voyage』じゃないか!」

「そうです! 『kindle voyage』は名機『paperwhite』の後継機かつ上位機種!!! この艶かしい小さなボディに数千冊を収納することが可能なんです!!!

 さらに300ppiの高解像度ディスプレイを搭載! 紙の本と遜色ないリーダビリティ!!」

「なんてこった! 被害者もそれを買っていれば本棚なんていらなかった……事件も起きずにすんだ」

「起こってしまったことはもう変えようがありません……。しかし、新たな悲劇を防ぐことはできるはずです」

「そうだな。本好きを名乗るものならみんな『kindle』を持つべきだ。わたしもさっそく、注文するよ」

「僕たちは前を向いて歩いていかねばいけません、それと、オススメwifi+3Gモデル。どこでもいつでもストアにアクセス&ダウンロードできて本体価格29180円と超お買い得です。充電アダプタは別売りなので注意してください!」

2008-07-08

猿ベージ

http://anond.hatelabo.jp/20080315152400]

これを全部読んでいない人間は「猿」です。

ちなみに猿に人権はありません。ネットで表現をする権利も自由もありません。よく覚えておくように。

プラトン『饗宴』岩波文庫

アリストテレス『詩学』岩波文庫

アウグスティヌス『告白』岩波文庫

レオナルド・ダ・ヴィンチレオナルド・ダ・ヴィンチの手記』岩波文庫

マキァベッリ『君主論中公文庫BIBLO, 岩波文庫

モア『ユートピア岩波文庫

デカルト方法序説岩波文庫

ホッブズリヴァイアサン岩波文庫

パスカル『パンセ』中公文庫

スピノザエチカ岩波文庫

ルソー『社会契約論』岩波文庫

カント純粋理性批判岩波文庫

ヘーゲル精神現象学平凡社ライブラリー, 作品社

キルケゴール死に至る病岩波文庫

マルクス資本論岩波文庫

ニーチェ『道徳の系譜』岩波文庫

ウェーバープロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神岩波文庫

ソシュール『一般言語学講義』岩波書店

ヴァレリー精神の危機』

フロイト『快感原則の彼岸』ちくま文庫

シュミット政治神学』未来社

ブルトンシュルレアリスム宣言』岩波文庫

ハイデッガー存在と時間ちくま文庫, 岩波文庫, 中公クラシック

ガンジーガンジー自伝中公文庫

ベンヤミン『複製技術時代における芸術作品』複製技術時代の芸術, 晶文社クラシック

ポランニー『大転換 市場社会の形成と崩壊』東洋経済新報社

アドルノホルクハイマー啓蒙弁証法岩波書店

アレント全体主義起源みすず書房

ウィトゲンシュタイン哲学探求』大修館書店

レヴィ=ストロース『野生の思考』みすず書房

マクルーハン『グーテンベルグの銀河系みすず書房

フーコー『言葉と物』新潮社

デリダ『グラマトロジーいについて』

ドゥルーズガタリアンチ・オイディプス』河出書房新社

ラカン精神分析の四つの基本概念』岩波書店

ウォーラーステイン『近代世界システム岩波書店

ケージジョン・ケージ青土社

サイードオリエンタリズム平凡社

ベイトソン精神と自然』新思策社

アンダーソン『想像共同体NTT出版

本居宣長『玉勝間』岩波文庫

上田秋成『胆大小心録』岩波文庫

内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』岩波文庫

岡倉天心『東洋の理想』講談社学術文庫

西田幾多郎西田幾多郎哲学論集?・?・?』岩波文庫

九鬼周造『「いき」の構造』岩波文庫

和辻哲郎『風土』岩波文庫

柳田國男『木綿以前の事』岩波文庫

時枝誠記国語学原論』

宇野弘蔵経済学方法論』

海外文学

ホメロスオデュッセイア岩波文庫

旧約聖書創世記岩波文庫

ソポクレスオイディプス王新潮文庫岩波文庫

『唐詩選』岩波文庫

ハイヤーム『ルバイヤート』岩波文庫

ダンテ神曲岩波文庫

ラブレー『ガルガンテュアとパンタグリュエルの物語』岩波文庫

シェイクスピアハムレット角川文庫新潮文庫岩波文庫ちくま文庫

セルバンテスドン・キホーテ岩波文庫

スウィフトガリヴァー旅行記』岩波文庫

スターントリストラム・シャンディ』岩波文庫

サド『悪徳の栄え河出文庫

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by 柄谷行人、他

追記

必読書150』柄谷行人浅田彰、他(太田出版

http://www.amazon.co.jp/%E5%BF%85%E8%AA%AD%E6%9B%B8150-%E6%9F%84%E8%B0%B7-%E8%A1%8C%E4%BA%BA/dp/4872336569

ネットにはほとんど「猿」しかいないんじゃないかと思うことも多いので、是非、脱「猿」してみて下さい。2chは「猿」の巣窟でもかまわないのですが、はてなが「猿」の巣窟であってはインフラリソースの損失だと思っています。実のありげな議論が起こっているなと思いきや、はてな「猿」が集団でやってきて議論を潰しているケースがほとんどなので。

2008-03-13

http://anond.hatelabo.jp/20080313030006

これを全部読んでいない人間は「猿」です。

ちなみに猿に人権はありません。ネットで表現をする権利も自由もありません。よく覚えておくように。

プラトン『饗宴』岩波文庫

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レオナルド・ダ・ヴィンチレオナルド・ダ・ヴィンチの手記』岩波文庫

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ニーチェ『道徳の系譜』岩波文庫

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ソシュール『一般言語学講義』岩波書店

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内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』岩波文庫

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西田幾多郎西田幾多郎哲学論集?・?・?』岩波文庫

九鬼周造『「いき」の構造』岩波文庫

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田村隆一田村隆一詩集』

吉岡実吉岡実詩集』

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小林秀雄『様々なる意匠』

保田與重郎日本の橋』

坂口安吾堕落論

花田清輝『復興期の精神』

吉本隆明転向論』

江藤淳『成熟と喪失』

by 柄谷行人、他

追記

必読書150』柄谷行人浅田彰、他(太田出版

http://www.amazon.co.jp/%E5%BF%85%E8%AA%AD%E6%9B%B8150-%E6%9F%84%E8%B0%B7-%E8%A1%8C%E4%BA%BA/dp/4872336569

ネットにはほとんど「猿」しかいないんじゃないかと思うことも多いので、是非、脱「猿」してみて下さい。2chは「猿」の巣窟でもかまわないのですが、はてなが「猿」の巣窟であってはインフラリソースの損失だと思っています。実のありげな議論が起こっているなと思いきや、はてな「猿」が集団でやってきて議論を潰しているケースがほとんどなので。

2008-01-26

教委主催講演会に行ったら、講師が「つくる会」だった件。

 

前書き

ほぼ記事タイトル通りの出来事があったので思わず匿名ダイアリー

(厳密には、八木氏はかつてはつくる会会長だったが、今はつくる会とは無関係

 

書くの初めてなので、読み難ければ申し訳ない。

 

先に書いておきますと、私は公立校勤務です。

で、私が勤務する地域では、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書を採択しています。

 

この教育講演会教職員一斉研修会)は、教委が主催したもので、基本的に地区内の全職員(学校事務職員も含む)が参加しました。

 

講師は八木秀次氏(日本教育再生機構理事長)。

 

恥ずかしながら、誰だか知らなかったんですが。

 

忍び寄る何か

開会前、もらったレジュメを読んでいると、最初に出てきたトピック

“「不当な支配」の主体の転換”

という内容。

 

教育基本法の、

教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである(旧第十条)」

という規定が、

教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない(改正第十六条)」

と改められたことによって、服してはならない「不当な支配」の主体が、

 

before:政府の圧力

after:日教組などの職員団体

 

と変化しており、政府首脳部からもそのような見解に立った発言が相次いでいる……という鋭い指摘。

 

私としては、

「なるほどそうか……。これは大変だな」

と思ったわけなのですが、その先を読んだら

「……なんか違う?」

 

なにしろ、いざ講演が始まったら、この

政府=正当な支配」

「職員組合=不当な支配」

という立場を全面的に賞賛する論調でして。

 

日教組に参加してる職員が1%切ってる本地区でそんなこと言われてもな……。

(うちの地元には、「教職協議会」という、日教組とは別の組織があり、これが97%の組織率を誇っています。

方針としては、行政との対話路線。

私もそっちに入っています。

まあ、日教組の勧誘姿勢もアレだし。

新採の時、勧誘パンフが送られてきて。

ガリ版刷りの楽しげなパンフレットだったんですが、封筒に

「教え子を戦場に送るな!」

って書いてある。

言いたいことはわかるがちょっと引いた。)

 

内容は、なんというか、ツッコミどころ満載だったんですが、まず特に違和感を感じた点。

 

滅びこそ我が喜び。死にゆく者こそ美しい。 byゾーマ(DQ3)

講演の中で、エルトゥルル号の遭難とか、有名な“美談”がいくつも紹介されるわけですが、その中に真岡郵便電信局事件の話も出てきました。

 

第二次大戦末期、樺太ソ連軍が攻め寄せてきた時、最後まで電話交換所に残った女性達が、青酸カリを飲んで自決した事件です。

事件名とか知らなくても、

「みなさん、これが最後です。さようなら……さようなら……」

とかいう台詞は聞いたことある人は多いのでは。

 

で、八木氏は、自決した9人の女性電話交換手のことを、

日本人公共心の高さ、責任に殉じる態度が現れたもの」

とか褒め称えるわけです。

 

……ところで、これは教育講演会なんですが。

このエピソードを教育にどう生かせと?

 

彼女たちの行動こそ、日本人の鑑、責任に殉じる素晴らしい態度である。

お前達も、もし同じような状況に置かれたら……」

 

置かれたら?

 

自分の子どもになんと教えて欲しいかは、人によるかも知れませんが。

 

私としては、子どもたちには

「なんとしても生き残れ。命を大事にしろ」

……って、教えるべきなんじゃないかと思ったり。

 

ちなみに、八木氏は全然触れなかったことですけど、その時当直だった女性交換手は、全部で12人いたんです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E5%B2%A1%E9%83%B5%E4%BE%BF%E9%9B%BB%E4%BF%A1%E5%B1%80%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 

で、死ななかった3人は、最初は押し入れとかに隠れててですね。

そのままソ連統治下で職員として再雇用され、日本にも無事に帰ってくるんですけど。

 

彼女ら3人は、「責任に殉じ」て死ななかった駄目な日本人なんでしょうかね?

 

少なくとも、八木氏の言う

ソ連軍は、刑務所から出てきたゴロツキみたいなのを最前線の兵士として送り込むわけですよ。だから、女性は陵辱されたり恐ろしい目に遭わされるわけです」

……というのは、この場合は事実に即してないと思います。

 

……まあ、ソ連軍がひどかったのはわりとかなり事実だと思うんですけど。

 

また、沖縄集団自決の件について、八木氏は、

沖縄というのは、長らく琉球王国という日本とは違う国で、その後は島津の統治下になり、近代化されたのが他の地域よりも遅れた土地なんです。

だからこそ、日本人的であろう、という責任感が逆に強くなって、それでああいう事件が起きたのではないかと思います」

 

という、目の覚めるような主張を展開します。

 

なんで目が覚めるかというと、すごいアクロバットだから。論理の。

危険なのでよい子はまねしないでください。

 

もし沖縄県民があの場にいたらかなり血圧が上がったんじゃないか、と思うんですが、あれはたぶん、戦わずして論敵を脳溢血で葬ろうという高度な戦術なんだと思います。

危険なのでよい子はまねしないでください。

 

ていうか、「集団自決」と「責任感」がどうつながるのかそもそも良くわからんのですが。

なんか、とにかく死ね責任感がある、みたいな話で、日本文化の奥深さを感じました。

 

「命どぅ宝」のお婆さんは、やっぱり駄目な日本人なんじゃろうかね。

近代化が遅れた地域だからな。

 

あとまあ全般に言いたいことは山ほどあるんですが、重箱の隅つつきは後回しにします。

 

本当の戦いはこれからだ!(打ち切り

とにかく、こういう歴史観のリビジョン促すような講演会に、公務として参加させられるのが、本地区の実態なわけですね。

開会が14:00でしたから、どの学校も特別日課で対応したと思います。

本校でも、当日は授業を午前中で切り上げて参加したわけですよ。

 

もちろん、講演聞いてる間にも給料が出てます。勤務時間内ですから。

なんという教育予算の有効活用

 

内容に疑問を感じたのは何も私だけではなくて、翌日の職員室では批判大会

 

「○○中学校社会先生も、あれはひどいと言っていた」

「○○小の先生に聞いたら、あれは有名な右翼だと」

「終わった後、あの先生と偉い人達とで飲み会があったらしいから、八木先生は急いでいたわけじゃないらしい。なのに質疑応答の時間を設けなかったのは、意図的なものに違いない」

 

……ええーっとですね。

つまり、「つくる会」の教科書採用した地域の学校だからといって、教員が唯々諾々と「つくる会史観に染まるわけではない、ということですよ。

 

このことは、左右どちらの論者にも覚えておいて欲しい、と思います。

我々はロボットではない。

 

いや、染めることを目的にした講演会だったんでしょうけどね。

 

本地区では、教育長はじめ偉い人が「つくる会」の支持者です。

その一存で採択が決まったようなもので。

 

しかし、「つくる会教科書を採択した、というだけで、かなり外部からの批判にもさらされてるし、学校現場にも不満があるのが実態です。

なので、教育委員会の方針に疑問を持っている教員を「啓蒙」しよう、というのが、この講演会趣旨だったんだと思います。

 

しかし、今どき、中学生ならネットくらい使いますよ?

真岡郵便局には女性交換手が12人いた」

くらいのこと、10分もかけずにわかっちゃうわけですよ。

 

授業で、“公共心ある日本人”の美談を得々と語って聞かせたら、生徒から史実に基づいたツッコミが入る可能性くらい容易に予想されるじゃないですか?

そういう意味では、都合のいいことだけ書いた教科書というのは、発行する側は気分がいいかもしれないけど、現場人間にとっては迷惑そのものなわけですよ。

 

……ああ、そうか、授業で質問の時間を設けなきゃいいわけですね。

さすが日本教育再生機構理事長

率先垂範を地で行っておられる。

 

で、その他、「作る会」教科書を使ってると高校受験に対応できないとかいう現場の苦悩をよそに、首長とか教育長とか、講演会場の最前列に座っていてですね。

で、講演会が終わった時なんか、立ち上がって喝采してるわけです。

 

スタンディングオベーションかよ偉い人。

 

とりあえず絶望した。

現場がなんとかしないとならん。

 

重箱の隅つつき。

以下、こまごまとしたこと。

 

*紀元は2600年。

八木氏は、聴衆に「日本の建国はいつか?」と問うて、「それは西暦600から700年前後である」とします。

 

なぜなら、「日本」という国号が成立し、「公」の意識誕生したのがその時代だからだ、というのです。

ちなみに、ここで言う「公の意識」とは、天皇を中心とした中央集権体制の確立のことを指します。

天皇独裁者ではなく、「国家の公的統治を究極において体現すべき地位」だというのですね。

 

……飛鳥時代象徴天皇制だったのか。

 

八木氏は、「皇室ニッチ産業」だ、という、寛仁親王言葉引用します。

政府行政の足りないところを補う。それが、皇室の果たす役割なんです」

 

確かに、障害者スキーへの支援とか、結構なことですね。

 

「このような皇室の在り方は、古代からずっとそうだったわけです」

いや……そうなの?

 

革命史観

八木氏は、他の教科書にある

平安時代貴族は贅沢な生活をしていた一方、庶民は貧しく、奴婢は売買の対象だった」

……とかいう記述を「闘争的だ」と評します。

 

これらが、マルクス階級闘争史観子どもたちを導くものだ、というのです。

 

君の教科書もまっ赤っか! これはレッドベアーの陰謀だ! 愛國戦隊を呼べ!

 

……別に教科書記述は、富裕層の打倒とかを呼びかけるものじゃないし、そもそも平安朝だって、階級闘争によって打倒されたわけじゃないんですが。

なんでマルクス

明治維新を含めて、日本には「階級闘争」とか「市民革命」とかいうものはないんじゃないですかね。古い見解でしょうか?

 

明治維新は、公のために働くことを自己の使命と考えていた武士たちによって実現した改革だった」(「新しい歴史教科書」。レジュメの孫引き)

うわ新しい見解だ。色んな意味で。

 

そんなに昔から日本人の自覚とか公共の意識とかがあったなら、もう少し早く戦国時代が終わりそうなものですが。

武田信玄「こうして同じ日本人同士が争っていても仕方がないじゃないか!」

上杉謙信「そうだとも! 天皇陛下の元にはせ参じ、一つの国を作ろう!」

……みたいに。

 

八木氏によると、現在学校教育では、歴史教育で闘争的姿勢を学び、公民教育で具体的な闘争目標を与えられている、というのです。

 

その闘争目標とは、電通経団連の打倒……ではなく。

「公民教科書には、夫婦別姓など、まだ法的に定められてもいないトピックが取り上げられている」

とかいうのが「闘争目標の提示」だと。

 

……ずいぶんせこいマルクス主義ですね。

 

歴史に学べ。歴史は繰り返す。

仮に、八木氏の言うとおり、飛鳥時代平安時代がそんなに素晴らしい時代だったとしたら、逆に言って、日本社会は1400年の長きにわたって大して進歩していないことになるんですが、それでいいんでしょうか。

 

奴婢の話とかって、私は

「私たちの社会は、昔より良くなっているのです」

って趣旨の話だと理解していたんですが。

人類歴史進歩と改良の歴史なのです。私たちも、もっともっと素晴らしい世の中を作っていきましょう。明日が今日より良い日であるように」

的な。

 

八木氏に言わせるとこれも「闘争的」なのかも知れませんが。

 

私としては、貴族平民に大きな差があったとか、事実なんだから仕方ないんじゃないか、と思うんですがどうでしょう。

八木氏も、それが「事実ではない」とは言わなかったし)

 

都合の悪い歴史事実は教えない、という態度の方が、むしろ我が国を危機に追いやる気がします。

それこそ、遺伝学におけるソビエトルイセンコ学説みたいに、学問イデオロギーに従わせようとした挙げ句、研究開発で西側に後れを取るような。

 

まあ、「歴史科学ではない」が、「つくる会」の立場なんだそうですが。

 

でも、望ましい思想を注入するために、歴史事実の方を改変する、っていうのは、それこそ共産国十八番なんじゃ。

ソ連生まれのくせに白頭山で生まれたと称する誰かさんとか。

 

日本の伝統を尊重しよう。祖先精神を大切にしよう。

基本的に「公共の意識」だけで日本の歴史・文化を語ろう、というのは、無理だと思うんです。

「恥の意識」とか「武士道」とかと同様、一言で語りきれるほど、日本人精神というのは浅薄なものじゃないんじゃないでしょうか。

 

そもそも、「公共の意識」が飛鳥時代から日本にあった、という主張自体いかがなものか。

確かに「公」という漢字自体は大昔からありますが、古文に出てくる、「公家」とかいうときの「公」と、「public」の訳語としての「公」を同一視するのは誤りだと思うんですが。

八木氏は、「公共」の意識が近代になって成立した、というのは誤りで、日本人日本人としての自覚はずっと以前から存在した、と言うんですが、それは逆に言って、国民国家建設のために尽力した明治の人々を愚弄するものではないでしょうか。

 

ちなみに八木氏は、中教審が、縄文時代記述を重視するよう議論しているのに不満を表明しています。

縄文時代は公共の意識が発生していない」=「日本ではない」

から、というわけですが、これは循環論法ではないですかね。

 

日本あけぼの」って言えば、普通縄文時代を指しますし。

逆に、明治憲法現行憲法の発布、あるいは江戸幕府なり鎌倉幕府なりを「日本」の成立、と見なす立場だってあり得るわけで。

 

縄文人だって一生懸命に生きていたのだし、彼らが苦労して稲作技術を会得していったからこそ、現代の日本があるわけで。

縄文人は日本人じゃない」という言いぐさは、縄文人に失礼だと思いますが。

 

八木氏は、チェスタトンの「伝統とは選挙権時間的拡大」「死者には墓石投票してもらわねばならない」なんかを引用して、伝統の大切さ、先祖の意思を尊ぶべきことを訴えるわけですが、縄文人は先祖じゃないらしいです。

……天孫降臨

 

ちなみに、八木氏が引用した中には、相田みつをの「自分の番 いのちバトン」とかまで含まれるんですが、相田さんってそういう主義の人だったのか。

走者がバトン渡す前に死んだらリレーにならなくね?

 

ところで、八木氏は「死者の民主主義」(チェスタトン)がお気に入りのようですが、私はむしろ、「地球は子孫からの預かり物」(ケニアのことわざ)の方が好きです。

死んだ世代の意思よりも、次の世代の幸せの方が重要だ、と、私は信じます(これでも学校関係者のはしくれですから)。

 

……ケニアのことわざの割に「地球」とか、かなり超訳の気配ですが。

 

*美しい日本語を守ろう。

八木氏、「屋久島の灯台守り」という、これまた美談を紹介してくれたんですが。

 

「顔は土気色」を「どきいろ」ってあんた。

一瞬、弥生式か縄文式か悩んじゃったじゃないですか。

 

自分で持ち込んだ資料が正しく読めないって、早稲田大学法学部卒が泣くぞ。

 

日本の文化がどうとか言う前に、八木氏はまず日本語くらいちゃんと読めるようにすべきだと思います。

 

返信欄

なんかあれこれコメントをもらってるようなのでここへ部分的に返信。

 

教育委員会主催講演会とかに行って何かを得たことがあるの?

ありますよ。

まあ、教育関係者の講演、というのは、聞いてすぐに教室で使える内容が多い一方、似たような話も多い……というか、教育界の通念を上手にまとめただけの、刺激に乏しい講演も多い、とは思います。

……ちょっと今回は刺激的すぎましたが。

 

>その場でぶつけてくれたら面白かったのに。

まあ、チキンなので。

 

偉い人が「つくる会」支持者で、しかも同席してるわけですから。

そこでこれだけのことを言ってしまうと、後々どんな処遇を受けることか。

 

それはもう、陵辱されたり恐ろしい目に遭わされるわけです。(流言)

 

それに、ここに書いた内容は、これでも推敲した内容です。

これをとっさに思いつける程度には賢くありたいのですが。

 

っていうか、偉そうなことを書いておいて恥ずかしいのですが、「女性交換手が12人いた」ということもその時は知らず、家に帰って調べてわかった次第。

 

でも、何か質問はしてやろう、とは思っていて、講演の間中必死で考えていたのも事実

古代以来、皇室ニッチ産業としての役割を果たしてきた、とのお話でしたが、私、不勉強でそういったことを存じませんでした。

そこで、例えば平安時代朝廷が、そういった役割を果たしていた、という実例を2・3ご教示願えるとありがたいのですが……」

くらいのことを聞いてみよう、と思っていたのですが、本文で書いたとおり、質疑応答の時間がなかったので不発に終わりました。

 

>自分のはてなダイアリーで書いたら?

少しでも匿名性の高いところで、と思ったのです。

何か使い方として問題がありましたら申し訳ない。

(ていうか、そもそもこの内容自体トラックバックで返すべきなのかも知れませんが、匿名ダイアリーに慣れてないので、返信があちこちにばらけるのが落ち着かないのです。なんでコメント欄がないんだろう)

 

こんなにブックマークをもらうとは思ってなかったのでちょっと動揺しています。

偉い人にばれたらどうしよう。

 

>「教職協議会」つーのは要するに「全日http://www.ntfj.net/tanidantai/」系団体だよね。共産党系の。

右寄りではないかも知れませんが共産党系とも思ってなかったのですが。「美しい日本人」がどうとかこうとか。どうなんでしょうか。

会員でありながら組織背後関係とかは知らないのです、申し訳ないです。(でもたぶんみんなそう)

 

>教師という連中が本当に馬鹿ばっかりでイデオロギーの固まりだということが良くわかった。

ククク、その通り。だが、気付くのが遅すぎたようダな……(ロシア訛り)

今や日本教育は、我がレッドベアーの(不当な)支配下にあル!

あと10年もすれば、この国はコミンテルンの軍門に降るだろウ……!(遅すぎる)

 

馬鹿冗談はさておき。

大学になるまで歴史教えるのやめちゃえば?自分で判断して学ぶまで教師の馬鹿どもから余計なノイズを入れないで欲しい

難しいところですね。

 

おっしゃるとおり、批判精神の薄い子どもに、イデオロギー教育をするのは禁忌だと思います。

 

その一方で、基本的な歴史知識は、全国民が持っているべき教養だとも思うのです。

そして、大学専門教育の場であるべきで、そういうことに時間を費やすべきではないと考えます。

だから、結局は義務教育に基礎的な歴史教育を盛り込まざるを得ないのではないかと。

 

その内容としては、重要歴史事実を教えるにとどめ、それをどう解釈するか、という思想的側面は、個々人に任されるべきだと思います。

 

……もっとも、「歴史事実」というのは現実にはほとんど無限存在するわけで、その中から何を「重要」として採り上げるかに、思想的問題が絡んで来ざるを得ないのも事実ですが。

エルトゥールル号を採り上げて奴婢は省くのか、その逆をやるのか。

 

でも、できる限り中立であろうとする姿勢は必要だと思います。

 
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