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2013年度研究実績報告(Ⅲ)

平成24年度科学研究費基盤研究(C)

1.研究課題名
  チベット系仏教及び上座部仏教の洞穴僧院に関する比較研究
2.課題番号  25420677
3.研究年度  平成25~27年度 

4.成果概要 
 初年度(2013)は前期に「めざせ、ブータン!」という演習を組織し、学生とともにブータンの自然と文化の基礎を学び、その成果をもとに教員3名、学生10名でブータンを訪問した。調査期間は9月の10日間で、対象はゾンドラカ寺、タクツォガン寺、ダカルポ寺、チェリ寺、タンゴ寺、タクツァン僧院などパロ/ティンプー地区の山寺であり、とりわけ瞑想修行をおこなう洞穴僧院ドラフに注目した。内部の調査を許されない寺院が大半を占めるので、寺院全体の配置図測量に重心をおき、調査が許される場合、本堂ラカンやドラフの平面図・断面図を実測し、通訳を介して住職等からヒアリングした。
 聞き取りによれば、チベット仏教諸派がブータンに南下してきたのは11~14世紀のことであり、この当時は本堂がなく、崖上洞穴での瞑想修行に専心していた。14世紀になってチベット僧、パジェドルガンシンポが西ブータンでラマ教赤帽子派(ドゥルク・カギュル派)の布教を進め、17世紀に諸派を排してブータンの国教になり、サブドルン・ナワン・ナムキュルがチェリ・ゴンパ・ドレイの3寺に本堂を建立した。以後、各地の僧院に本堂が築かれるようになった。この伝承を確かめるため放射性炭素年代測定の部材サンプルを20点以上採取した。予算の関係上、まだ1点しか測定していないが、その年代は18世紀を示しており、伝承との不一致はみられない。
 2013年12月にはミャンマーのインレー湖周辺を1週間踏査した。おもな関心は湖畔に分布する洞窟僧院であり、マンダレーとカロで視察できた。ミャンマーの洞窟僧院は巨大なストゥーパを中心におき、周辺に夥しい寄進仏を配するもので、石窟寺院の分類に従う場合、「礼拝窟」の系統である。一方、ブータンの洞穴僧院は明らかに「僧房窟」であり、チベット系仏教の方が上座部仏教より古式を維持していると言える。


5.研究成果の公開状況
 初年度のブータン調査成果については「ドラフ巡礼-ブータンの洞穴僧院を往く」と題して研究室ブログに、2013年9月24日から10月20日まで15回連載した。一方、ミャンマーの調査は「シャン高原の青い海」と題して、2013年12月25日から4月15日までの間に6回に分けてブログに連載した。


6.ブータン調査成果に係わる講演会のお知らせ
 2014年度鳥取環境大学公開講座で昨年度のブータン調査に係わる講演をおこないます。詳細はチラシ完成後お知らせしますが、日時・会場等の概要は以下のとおりです。

   1)日時: 2014年8月9日(日)14:00~15:30
     会場: 鳥取県立図書館講堂
     演題: めざせ、ブータン! -洞穴僧院と瞑想修行-

   2)日時: 2014年8月23日(日)14:00~15:30
     会場: 鳥取環境大学西部サテライトキャンパス
     演題: めざせ、ブータン! -洞穴僧院と瞑想修行-

【講演要旨】 ブータンは敬けんな仏教国です。いま壮麗な僧院(寺院)が国中に建てられていますが、境内の中心にある本堂ラカンはさほど重要な役割を担っていません。修行の根本は崖上洞穴での瞑想にあったからです。その修行の場所をドラフと言います。17世紀以前の僧院に本堂はなく、ドラフでの修行に集中していました。いまも本堂から離れた崖上にドラフが散在し、僧たちは少なくとも3年間瞑想修行を続けます。2013年9月、13名の教員・学生がドラフに係わる現地調査をおこないました。その成果を初公開します。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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