春巻きに冷えた白ワイン
- 2023/06/30 22:32
- Category: bologna生活・習慣
6月最後の日。今日も涼しい朝を過ごし、午後には雨が降って6月らしからぬ涼しさ。勿論バスを途中下車して停留所三つ分くらい歩けば汗ばむけれど、少し前の夕方に比べたら断然快適。金曜日とあって、ポルティコの下に並べられたテラス席は客で埋まっていて、週末を迎えた喜びやみうじき始まる休暇の話に花が咲いて楽しそうだった。私はと言えば今夜の為に美味しいものを調達しようと思って旧市街にやって来たと言うのに、生憎店はまだ閉まっていて空振り。途方に暮れてバスの停留所に向かって歩いた。欲しかったのはベトナム風春巻き。生春巻きも好きだけど油で揚げたものがいい。これをふたり分、大目に購入したいと思っていた。理由は食前酒。春巻きをつまみに冷えた白ワインを頂いたら愉しいのではないかと思って。
ベトナム風春巻きには思い出がある。アメリカで生まれて初めて共同生活をした。その後には3人暮らしになるのだが、初めは私より少し若い日本人女性とのふたり暮らしだった。とても明るい人で、軽快で愉しい人。ある日彼女を通じてもっと若い日本人女性と知り合った。一度だけ話しただけだったけど、ある日彼女から相談事を持ちかけられて、その待ち合わせ場所がベトナム料理店だった。何故そんな場所だったかと言えば、私達はまだ昼食を済ませていなかったし、ベトナム料理は美味しくて飛び切り安上がりだったからだ。私達はまだ無収入で、手持ちの貯金を大切にしなければならぬ身だったから、美味しくて安いその店は私達の強い味方だったのだ。それで彼女の話を聞いた。いくら彼女より10歳ほど年上と言えど、簡単に助言することが出来ず困った。でも彼女はそれでも話してよかったと言った。私に話を聞いて貰いたかったと言って、少し照れていた。そんな話を聞きながら私は揚げたてのベトナム風春巻きにも夢中だった。美味しいね。うん、美味しい。一体幾つ注文しただろうか、大きな胃袋を持った若い私達はあれをぺろりと平らげたものだ。
それからもうひとつ。イタリアに暮らすようになってから幾度かアメリカのあの街を訪問した。一度は友人の家に泊まり、階下に住んでいるベトナム系カナダ人の女性に夕食を振舞って貰った。手作りの春巻きだった。それが大変美味しくて、作り方を教えて貰ったくせに、メモした紙を失くしてしまいそれっきり。彼女は才女でよい職に就いていた。忙しい筈なのにこんな風に食事もきちんと作るのには夕食に招かれた誰もが脱帽して、そんな彼女に沢山の拍手を送ったっけ。
ベトナム風春巻きが食べたかった。相棒もそんな計画があったことを知ったら、残念がるに違いないから、秘密にしておこう。さよなら、6月。あっという間だったね。