冷たい空気を吸いに外に出よう
- 2019/11/30 18:16
- Category: bologna生活・習慣
ちょっと気を許すと体調を崩すのは何故だろう。冬のせいばかりとは言えまい。きっと生活習慣のせいか、栄養バランスが悪いのか。睡眠時間が足らないのかもしれない。それとも帰りのバスの乗り継ぎで体を冷やしてしまったか。何にしても気をつけねばならない。此れから一年の締めくくりに向かって、忙しさに輪が掛るであろうから。
数日前に体調を崩して寝込んだから、今日は昼までぐずぐず迷った。家に居ようか、外に出ようか。気持ちは外に向かっているが、一向におさまらぬ頭痛。そして全身の痛み。激しいものではなく、静かに辛抱強く続く痛みに私は少々うんざりしていた。薬を服用しても治らない。眠っても治らない。少々怖い気がしたが思い切って外に出たのは、外の冷たい空気を吸いながら歩いたら、少しは気がまぎれるだろうと思ったからだ。
テレビのニュースで言っていたが、今週末はBLACK FRIDAYで街の人達は浮足立っている。昨年のことは覚えていないが、今年は多くの店がそれに参加しているようだ。ショーウィンドウの張り紙を見ては人が中に吸い込まれて行く。確かにこの時期の割引は有難い以外の何でもない。例えば早めにクリスマスのプレゼントを用意する人も居るだろう。例えば冬物を新調したい人も居るだろう。私はと言えば実用的なものばかりを買い物を昨日のうちに済ませてしまったから、今日は買い物をするつもりはさらさらない。広場を歩いたり、路地を歩いてみたり、途中でバールに立ち寄って何か温かいものを頂くのが唯一の出費になる筈だった。だった、と言うのには理由がある。街の中心にある小さな百貨店的存在の店に立ち寄ったからだ。地上階には知人が働いている。知人とは、手っ取り早く言えば、私が信頼する美容師の妻。まあ、妻の方とも仲良くなって2年も経ってから、実はこのふたりが夫婦であることを知ったのだけど。兎に角、彼女は素敵な人で、私は時々彼女から長々と色んな話を聞かされるのだが、勿論客のあまり居ない平日の夕方などのことである。今日のような割引を歌う週末は忙しいに違いないから、ちょっと挨拶程度にと思ったのだ。行ってみたら案の定彼女は客と話をしていて、その後にも数人の客が待っているようだった。声も掛けられそうになく、ちょっと上階の家庭用品などを見て時間を潰そうと思って階段を上がった。家庭用品売り場は早くもクリスマスの雰囲気満載で、きらきらと美しく、見ているだけで楽しい気分になった。今年は光物の飾りが主流らしい。光る青。光る緑。客たちが飾られたオーナメントを手に取っては、これがいい、いや、あれがいいと迷っている様子を私は楽しく観察させてもらった。今日は家族連れが多い。小さな子供を連れた家族、犬を連れた夫婦、若しくは恋人たち。私は人の居ない方へ居ない方へと足を運び、辿り着いたのが紅茶や珈琲をいれる器具を置く一角だった。私の目を惹いたのは透明の耐熱ガラスで作られた紅茶のポット。ひとり若しくはふたり分の紅茶を入れる為の小さなポットでとても機能的に出来ていた。薄いガラスで、手にしてみると軽い。こんな繊細ならばすぐに割れてしまうだろうと思ったが、丁度通り掛かった店員が、そんなことは無い、とても良くできたもので、例えば食器洗浄機に入れても割れることもないと言う。お茶のポットを洗浄機に入れるつもりはないが、つまり見た目より丈夫だと言うことだ。値段を見ると手頃だった。先日購入したダージリンをこれでいれてみたらどうだろう。そう思って購入した。手頃な値段からさらに随分割引されて、とても良い買い物をしたと喜んで階下に行くと、先ほどまで忙しそうにしていた知人が遅い昼食時間なのか、姿を消していた。まあ、いいか。目的の彼女と話せず、思いがけず紅茶のポットを購入して店を出た。先ほどまで曇っていた空にかすかな光が。暗かった街に希望の光がさしたかのようで、道行く人達の表情も、気のせいだろうか、少し明るく見えた。
帰ってくるなりポットを洗った。ポットにダージリンの葉を入れて、沸かした湯を注ぐといい匂いが立ち上った。透明だから紅茶の色が見えるのも面白かった。そうしていれた紅茶に頂き物のジンジャージャムをひとすくい混ぜてみたら、まあ、何と美味しいこと。冷えた身体があっという間に温まって、身体が解れていくようだった。週末の午後は丁寧にいれたダージリンティー。この冬はこれで行こう。
あっという間に空が暗くなるのは冬の証拠。今夜は霧が出るだろうか。以前、丘の町ピアノーロに暮らしていた頃、家の周りが霧で見えなくなったものだが、今でもあの辺りはそんなだろうか。霧は嫌いじゃない。なのに眺めていると不安な気持ちに駆られる。霧とはそういう存在なのかもしれない。