計画

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冬至から10日が経ち、陽が暮れるのが少し遅くなった。冬至の頃は16時38分、そして今日は16時43分。調べてみてがっかりした。たったの5分遅くなっただけだった。まあ、こんな風にして陽は長くなっていくものだ。Piano piano (ゆっくりゆっくり)とイタリア人はよく言うけれど、まさにそれ。急がずにゆっくり行けばいい。

今朝目を覚ましたら酷い頭痛がした。昨晩から少々不調ではあったけど、こんなに酷い頭痛になるなんて。しかしそれも相棒がバールから持ち帰った大好きなパステリーと淹れたてのカッフェラッテをたっぷり頂いたら、治ってしまったのだから大したことではなかったらしい。
今日も快晴。晴天の神様が絶好調らしい。この調子で行こう。起き抜けの頭痛のせいで遅くなったが、バスに乗って旧市街へ行った。今日は計画を実行するのだ。旧市街の真ん中でバスを降りると、路地を渡りながら北の方へと歩いた。最近足が遠のいていた界隈。以前はアペリティーヴォに来たり、その近くのトラットリアに手打ちのタリアテッレを堪能しに来たりしたものだけど、もう2年くらいご無沙汰。ご無沙汰した理由はない、単に足が向かなかっただけ。そんな界隈に敢えて来た。ひと月くらい前に思いついて情報収集をしたところ、此処がいいらしい。同僚も、そして美容院で働く男性も利用しているそうだから。私はピアスをしたいと思って此処に来た。しようと思った立派な理由がある。私の装いはシンプル。髪はショートでほぼ変化がない。それが好きなのだから問題はないのだけれど、何か輝くものが欲しくなった。輝くものというよりは、華のあるものと言ったほうが良いかもしれない。ショートヘアからちらりとイヤリングが見えたらいいなあ、と思って街の小さな宝石店に立ち寄ったのは11月の終わりのことだった。イヤリングが欲しい、クリップタイプの。そう言う私に店の人は頭を横に振った。注文を受けて作ることは勿論出来るけど、高価なイヤリングは落とした時に残念過ぎるから薦められないと店の人は言った。そういう客が多く居るらしい。だから店にはクリップタイプのイヤリングはなく、あの美しいのも、この素晴らしいのも、皆ピアスだった。そして店の人は言うのだ。ピアスの穴あけは怖いかもしれないけれど、一度開けたら色んなイヤリングが愉しめるから考えてみる価値ありと。そんな話をして店を後にしてから、私はずっと考えていたのだ。ピアスの穴、あけようかなあ。
33年前。アメリカに暮らして初めて迎えた大晦日の日、私は同居人と一緒にショッピングモールへ行った。彼女がピアスの穴をあけるから一緒に来ないかと誘ってくれたからだ。本当は彼女は怖かったのだ。だからひとりで行く勇気がなく、私についてきて貰いたかったのだ。私は興味本位でついていったというよりは、なあに、することがなかったのだ。店に行くと彼女は震えあがってしまったが、私はふと思いついてピアスの穴をあけてみようと思った。え、本当? 大丈夫? なんて彼女が心配する横で私は穴をあけた。痛かったけど怖かったけど、それを乗り越えたら何でも大丈夫になるような気がして。ピストルなようなものを使って、ものの30秒と掛からず、ピアス代も含めてたったの5ドルだった。それが私の初めてのピアス。但しその後が宜しくなかった。2年くらい頑張ったけど、炎症を繰り返して穴を塞いでしまった。それから33年経ってもう一度ピアスをするかどうか、ずっと考えていたけれど、駄目ならまた塞いでしまえばいいだけ、今年のうちにしてしまおう、と思って今朝店に行ったという訳である。刺青とピアスの店だ。店の存在はずっと前から知っていたが、まさか自分がこの店の扉を押すとは夢にも思っていなかった。年末だもの、空いているだろうなんて思っていたら先客が6人もいて暫く待った。まずは話を聞いてみようと思った。前に穴をあけたが炎症して塞いだことなどを含めて、色々聞いてみたところ、なかなか良さそうだった。全てのものが消毒されていることなども含めて気に入り、じゃあ、お願いしますとなった。何しろ店に来る人達は一様に若いから、じゃあ、お願いしますと話が運ぶと、ちょっと驚いたようだった。分かる分かる。私だってこの年齢になってピアスに再チャレンジするなんて思っていなかったもの。それで話の通り、すべてが消毒されていて、なかなか良い店だった。勿論痛かったけれど、店の人に痛い? なんて訊かれたら、うん、痛いなんて子供みたいで言えなかった。ふたつ開けてピアス代と消毒液までいただいて75ユーロ也。33年前の5ドルを考えるとびっくりするほど高いけど、何しろ33年前のこと。それにこれだけ消毒に気を使っている店のことだ、この値段が妥当というものだ。兎に角計画を実行した。それが大切。しかも年内に。今年は色んな事があってかなり参っていた私だが、これで全てゼロになった。もう後ろは振り向かない。今日の私、そして明日の私。

こんな晴天の日は星空が素晴らしい。今夜の星空は更に美しく、星が零れ落ちてきそう。次のクリスマスにこんな星のような小さなダイアモンドのピアスを贈って欲しいと相棒に言ったら、えっ、と返事に困っていたけれど。




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