橙色の壁
- 2021/01/31 19:36
- Category: bologna生活・習慣
予報が当たり、今日は雨の日曜日。腰の痛みは昨夜から増す一方で、気分はブルー。再び動きがぎくしゃくして、痛みと共に不安が増すばかりである。この痛みが晴天とともに消えるならいいと思う。しかし困ったことになった。雨が降ると腰が痛むというのは。
ボローニャの旧市街に、Via San Vitale と言う通りがある。二本の塔から放射線状に走る通りのひとつで、塔から西の方にの延びている。其の通りは旧市街を取り囲む環状道路で終わり、そのさきからはVia Massarenti。但しこの名前は案外新しくて、1951年につけられた名前だそうだ。だから古い人達は今も昔の名前で呼んでいて、そういう名前を親から聞きながら育った子供まで、未だに古い名前で呼んでいる。頑なに昔の名で呼んでいるというよりは、そう呼ぶのに慣れているだけなのだろう。習慣と言うのはなかなか変えられないものだから。私Via San Vitale をほぼ毎日通る。バスでただ通過するだけの時もあれば、途中下車して歩くこともある。なかなか味わいのある通りで、あまり整備が行き届いていないポルティコの下を歩くのが好きなのだ。通りの丁度中程にChiesa dei Santi Vitale e Agricola in Arena と長い名前のついた教会があって、その前を歩くのが特に好きだ。教会の中には一度だけ足を踏み入れたこともある。中は大変古く、成程1640年代に建てられた教会ならではだと感心したものだ。華やかさや重々しさはなく、素朴でほっとするような雰囲気がある。あれは何時だったか、家族が病気でてんやわんやだった時、気持ちのやり場がなくなって、丁度通り掛かったこの教会の中に駆け込んだことがある。誰も居ない教会。一番後ろの椅子に座って目を閉じて心が落ち着くまでじっとしていたら、背後から誰かに声を掛けられた。気が済むかでそうしていなさい。そう言われて瞑っていた目から涙がぼろぼろ零れたものだ。暫くして立ち上がった時には誰も居ず、コインを置いて、蝋燭に灯をともして教会を後にした。あれは誰だったのか。もう10年以上前のことだ。あれ以来、中に入ることは無く、もっぱら前を歩くだけ。教会の橙色の壁も好きだが、特に壁に掲げられているポスターがいい。そう頻繁には変わらないが、新しいのに代わると足を止めて眺めずにはいられない。現在壁に貼られているのは、昨日、今日、明日、明日、明日…と終いの方の明日が崩壊している。此れはどういうことなのだろう。此れを作成した人にそんなメッセージなのかを訊ねてみたくなる。このポスターに足を止めて眺める人は多いけど、彼らはどんなふうに感じているのだろうか。中に入ったら案外教会の人が居て、教えてくれるのかもしれないと思いながら、もう少し自分で想像してみようと思っている。
それにしても長々と降る雨。夕方には止むと思っていたのに。雨で腰が痛むのもさることながら、最近は日没が17時以降と遅くなって、まだ薄明るい夕空を眺めるのが楽しみな私は、今日の雨が残念でならない。明日はどうだろう。空よ、明日は晴れにして頂戴。