麦畑の頃
- 2009/06/29 23:36
- Category: bologna生活・習慣
今年のボローニャは驚くほど沢山雨が降った。いつまで経っても肌寒かったせいか、私が暮らすピアノーロの丘の麦畑は何時までたっても色付なかったが、気が付いたらいつの間にか辺り一帯が金色になっていた。風が吹くと金色の波のように見える。その様子を眺めていると色んなことが思い浮かんでは空に向って消えていく。昔見たフランス映画では、この波打つ金色の真ん中を恋仲の男女が駆け抜けていったものだ。とても自然な姿に見えた。勿論映画だから作られた一場面であるけれど。その様子が思春期の私の目に焼きついて何時か体験してみたいと思っていたが、遂に一度もそんな機会を得ることがなかった。その代わりに全てが美しく見えて全てが可能に思えた若い時代に、そんな気持ちになる恋をした。今思えばどうしてそんな気持ちになれたのか不思議でならないが、恋をするというのはそんなものなのだろう、と解する。純粋に人を好きになると言うのは素敵なことだ。それが恋愛感情であっても、単なる友情であっても、尊敬のようなものであっても、好きになるのは素敵だと思う。自分自身がが豊かになる秘密のエッセンスみたいなものだと思う。そんなことに気が付いたのは勿論大人になって物事を客観的に冷静に見ることが出来るようになってからだ。もっと若い時に気が付いていたら良かったのに。そうしたらもっと豊かな自分になっていたかもしれないのに。7月を前に美しく色付いた麦の刈取りが始まり、もうじきこの一帯から姿を消す。来年までこんな回想ともお別れだ。ピアノーロの丘から麦畑がすっかり姿を消したらば、本格的な夏が始まる。