シンプル
- 2010/10/28 22:52
- Category: bologna生活・習慣
寒い。急激に寒くなって今朝の気温は1度。ボローニャ郊外のピアノーロの丘は霜で真っ白だった。息を吐いてみたら白い煙となって空へと飛んでいった。こんな日は鹿を見れるに違いない。鹿はきりりと寒い日が好きらしく、昨年もそんな日によく姿を見かけたのだ。まずは小さな池の近くの斜面に2匹。池に水を飲みに行くところなのかもしれなかった。それから少し先へ行くと生い茂った背の低い木の下に7匹!ついている。こんなに沢山。寒いのは嫌いだが、鹿に会えるならばまあいいか。と、私は彼らを横目で見ながら丘をぐんぐん下っていった。早めに職場に着きそうだった。早いに越したことはないけれど20分もあるのだからと、職場の近くのバールへ行くことにした。久し振りだった。多分6月以来だった。この辺りには他にバールが存在しない。だからこの辺りで働く人が皆寄り集まって、朝のこの時間はいつも大混雑なのだ。ところがどうだろう、広い店内には数人の先客しかいなかった。どうやらこの不況で多くの会社が社員の自宅待機を実行しているらしかった。そういえばそんなことを幾度も耳にしていた。久し振りに顔を出した私に店主が大きな笑顔で迎えてくれた。Buongiorno! カップチーノを頼んだら店主の息子がミルクの泡の上に美しい葉っぱの絵を描いて出してくれた。掻き混ぜるのが惜しいわねえ。そういう私に隣に並んで立っていた会社員らしい人たちがくすくすと笑った。また描いてあげるから、温かいうちに召し上がれ。店主の息子に促されてやっと砂糖を入れて掻き混ぜた。今日のは特別美味しく感じた。1日の仕事を終えて家に帰るなり袋一杯の栗にひとつひとつナイフで傷をつける作業をした。この栗は姑が、最近あなた達の元気がないから、と昨日店先に栗をみつけて買ってくれたのだ。76歳の、体が不自由で人の助け無しでは生活できない姑がそんな風に私達を思う気持ちが嬉しくも、大人になっても心配をかける自分達が情けなくて、しかしやはり嬉しかった。一日働いて帰ってきてからのこの作業はあまり好きではないけれど、これをオーブンでこんがり焼いて熱々を目と鼻の先に暮らす姑と一緒に食べたら喜ぶのではないかと思ったのだ。幾つかの栗はオーブンの中で大爆発して、おかげでオーブン掃除という余計な仕事が出来てしまったが、焼きあがった栗を布に包んで抱えるようにして家へ行くと姑は大喜びした。そして栗をひとつひとつ剥いてあげると嬉しそうにどんどん食べた。取り留めのないシンプルな秋の一日。シンプルな日常生活。でも、良い一日だった。