余裕
- 2007/01/31 13:30
- Category: bologna生活・習慣
年が明けて以来、急に仕事も私生活も忙しくなった。先週から今週に掛けての忙しさは尋常でなく、それでも乗り越える必要に迫られれば人間なんでも出来るのだ、と改めて知らされた数日間であった。多分、何年も前の私だったらこんな忙しくて刺激的な毎日を喜び好んだに違いない。そうだ、5年前の私はいつも刺激を求めていたではないか。でも、そんなことも過ぎてしまえば夢と同じで今は刺激よりも時間的余裕を絶対的に支持する私は、ここ数日の忙しさで体力的にも精神的にも相当参ってしまった。いつもなら疲れた疲れたと呟きながら即刻家に帰るであろう私が、昨日はまだ薄明るい空に誘われて金曜日でもないのに旧市街へ足を運んだ。目的などなかった、ただいつもと違うことをしたかっただけだ。うんざりするほどの交通渋滞に大いに嵌りながら私の乗る14番バスは旧市街に入ってゆく。いつもと同じ道、いつもと同じ風景。でも詰まらなく見える。何で旧市街に来てしまったのかな、思いながら2つの塔の近くでバスを降りた。目的もなくただぶらぶら歩いて、早くも春物が飾られた店のディスプレイを次々に見て歩いただけだ。いつものカフェに入ろうとしたら凄い混雑で一瞬のうちに入りたい気持ちが萎えた。気分がこんな時は小さなことすら思い通りにならないことが多い。来なければ良かったと思いながら急ぎ足でPiazza Maggioreを横切ったとき、あっ、なんて美しいんだろう、と足を止めてぐるりと周囲を見た。夜になろうとしている1月の広場はクリスマスの時期とはうって変わって人は数えるほどしかいなかった。中世に建てられた宮殿やお屋敷、市役所や教会には黄色い明かりが灯されて、そうでなくても魅力的なそれらを更に美しく見せていた。30分もそうして周囲を眺めていたように感じたが実際はたったの5分も経っていなかった。そして思った。美しいものを美しいと思えることは大切。そんな心の余裕を失ってはいけないよ、と私を取り囲む景色達が教えてくれているようだった。さっきまでモノクロにしか見えなかった街のそこここが急に色帯びた。店のショウウィンドウもエノテカのガラス窓も道行く人達の装いも。そんな当り前のことに今更ながら気が付いたのがちょっと恥ずかしくも嬉しくなって、今夜はお祝いをしようと通り掛かりの店でワインを買った。