哲学
- 2025/01/02 19:03
- Category: bologna生活・習慣
新年2日目はもう普通の日。慣れているとはいえ、やはりしっくりこない。新年を迎えた初々しい気分はもう存在せず、多くの人がごく普通の生活に戻るのだ。もっとも冬の休暇中の人達はホリデーシーズン気分は多少ながら残っているけれど。
晴天は今日までと聞いてバスに乗って旧市街へ行った。特に用事もないけれど、こんな晴天の日は外を歩くのが愉しいと思って。それに私はバスの年間パスを持っている。此れをフルに活用しない手はないのである。きっと旧市街は空いているだろうと思っていた。何しろ向こうからやって来た旧市街に向かうバスが異様に空いていたから。こんなのは実に久し振り。夏の休暇を終えてからというもの。どのバスも混みあっていて辟易していたのである。そうして旧市街に入るなり、私はバスを降りた。ポルティコの下を歩こうと思ったのだ。いくつかの店は休暇中だったが、多くの店はいつも通り開いていて、4日に始まる冬のサルディに向けて準備に忙しそうだった。イタリアのサルディには一応ルールがある。定価を変えてはいけないこと。返品交換も受け付けること。定価を変えてはいけないというのはつまり、定価を高く設定して割り引くする店があるからだ。そういう店が昔は結構あった。但しいつも行く店の定価は知っている客が多く、そうしてはひと悶着あったものだ。それから割引だから返品交換は受け付けないなんて店が昔は結構あったけど、商品に不備、欠陥があるのに返品交換が出来ないのかと、これに関しても色んな問題があった。それで今はちゃんとルールが定められている。果たしてどれだけの店がそのルールに従うかは知らないけれど、少なくとも客にも文句を言う権利があり、あるべき場所に泣きつくことも出来るから安心だ。
と、通りかかった店の店員が割引価格を書いているのが目に入った。へええ、今日から割引を始めるの? この店はなかなか良いものを置いているセレクトショップ。冬の初めにショーウィンドウに飾られていた美しいカシミヤコートが忘れられなくて、店に入ってみることにした。訊けば割引対象外とのこと。あら残念なんて言いながら一応コートを見せて貰ったのは、割引をしてくれなくてもかなりのお買い得価格がついていたからだ。見た目は艶やかだし、襟のステッチが手縫いなのも宜しいが、手触りが違うようだし、それに重い。これカシミヤじゃないでしょうと言ってみたら、勿論カシミヤよ、だってほら、ロロ・ピアーナの高級生地を使っているのだからと、店の人が多少憤慨しながらコートの内側に縫い付けられたロロ・ピアーナのタグを見せてくれたけど、ほら、ヴァージンウールと書いてある。どうやら店の人はロロ・ピアーナだからカシミヤと短絡的に思い込んでいたらしい。私は見せてくれたことに丁重に礼を言って店を出た。だけど内心興ざめだった。あの店はなかなかいいと思っていたのに、商品知識はあまり無いようだから要注意と。だから買い物は慎重にしなければならぬ。そして消費者は知識を持っていなくては。そのうえで納得して得るならば多少予算オーバーでも価値がある。これが私の買い物哲学。
旧市街は思っていたより混んでいた。旅行者が多いようだ。特にグループの旅行者。ライセンスを持つボローニャの観光ガイドがマイクを持って説明しているのを耳を澄まして聞いてみたら、ドイツ語だったりフランス語だったりと、なかなかインターナショナル。きっと彼らはこの後、何処かで美味しいのを頂いて、其の後フィレンツェへと行くに違いない。ボローニャの街は小さな面白い事があると私は思っているけれど、大抵半日で切り上げて他の街へと流れていく。まあ、ボローニャとはそういう街だ。到底フィレンツェやヴェネツィアにはかなわない。それでいいと私は思う。私は静かなボローニャが好き。
今夜は星が見えない。あの分厚い雲の向こうに隠れている星。明日は雨が降るかもしれないという予報は、案外当たるのかもしれない。