小鳥の声
- 2012/08/30 06:49
- Category: bologna生活・習慣
雨が一粒も降らぬうちに高気圧が戻ってきて快晴。あれほど期待をさせておきながら、全く罪なことである。でも良いのだ、一瞬でも冷たい風が吹いてほんの少し過ごしやすくなったから。いつもの生活に戻って3日目。社会復帰と言うにふさわしい。何しろ23日間丸まる楽しいことばかりを考えながら過ごしていたのだ。そんな後に8時間も座りっぱなしで仕事をするのは案外辛いものである。何しろ忙しいのでそんなことを考える暇もなかったけれど。仕事帰り、前を走る車の様子がおかしかった。妙にのんびりだ。イタリアらしからぬ運転。追い越すときに観察してみたら、助手席の少女が鳥篭を抱えていた。運転席にいるのはどうやら彼女の父親らしかった。鳥篭の中には2羽のインコ。1羽が美しい水色の、もう1羽が黄緑色の。運転席の父親は小鳥たちが怖がらないようにゆっくり走っているようだった。もしかしたらそれは少女が希望したのかもしれない。兎に角小鳥たちは振動に怯えたり大騒ぎすることなく、籠の中の止まり木に乗って、チチチ、チチチと会話するように囀るのだった。その小鳥の声を聞いて一瞬のうちに思い出した。リスボンの街を歩いていると何時もどこかのテラスや窓から小鳥の声が聞こえたものだ。インコやカナリアの声。何処から聞こえるのかと歩みを止めて声の主を探してみるが、姿がない。姿が無いけれど、また聞こえる。ああ、一体何度そんな風に歩みを止めて探したことか。しかし遂にただの一度も小鳥の姿は見れなかった。ボローニャの街を歩いていても小鳥の声は聞こえない。多分ボローニャでは小鳥を飼う人が少ないせいだ。自分の周囲を探してみても小鳥を飼っている人はひとりもいない。私は先ほど通り過ぎる時に見た少女の姿を思い出しながら、ううん、此処にいる、小鳥を飼う少女が此処にいる、と呟き、そうしたら妙に嬉しくなってきた。彼女は小鳥を大切に育ててくれるに違いない。