ああ、雪が降っている。
- 2011/01/30 15:07
- Category: bologna生活・習慣
朝起きて日除け戸を開けると、雪が降っていた。大きな雪片がひたすら落ちてくるような降り方ではなく、粉のように細かい雪が気まぐれで落ちてくる、そんな言い方がぴったりの頼りない降り方。けれども夜中に降り始めたらしく路面には10cmほどの雪が積もっていて、家の中から眺めているだけで十分寒さが伝わってきた。確かに、そんな予報が出ていたのだ。でも最近の私は自分に都合の悪い知らせはサッと忘れることにしているので、朝起きで驚いたという訳だ。日曜日の朝ということもあり外は大変な静けさが漂っていた。平日だったらそうは行かなかっただろう。多分早朝から市の除雪車が何台も出動して、ガガガ、ギギギと騒音を立てて外を走り回っているに違いないのだから。まあ、その除雪車のおかげで私達は仕事や学校に出かけることが出来る訳なので、文句を言っている場合ではなく、むしろ感謝するべきなのだけど。ふと思い出した。昨日の午後、ボローニャ旧市街から帰ってくるのにいつものバスを待っていたら、いつまで経ってもバスが来ない。おかしいなあ、おかしいなあと幾人もの人が足をそわそわさせながらバスを待っていた。足をそわそわさせていたのは、幾らしっかりと暖かいブーツで足元を包んでいても、やはりバス停という場所は寒いもので、そんな風にそわそわしていないと足元は勿論、身体もすっかり冷えてしまうからなのだ。ああ、温かいチョコレートが欲しいなあ。と、そのうちのひとりが呟いたので急に私もそんな気分になったけど、しかし1分後に遅れていたバスが来るかもしれないと思うと、むやみにこの場を離れるわけには行かなかった。多分他の人達もそんな風に思ったに違いなく、誰一人この場を離れようとしなかった。10分経っても来なかった。20分経っても。そして後10分経てば次のバスが来る筈だった。寒い。寒くて腹も立たなかった。手袋に包んだ手も、ブーツの中の足もすっかり冷えて、そのうち私は子供の頃を思い出し始めた。子供の頃、私の家の横には公園があって、私と姉は近所の同じ年頃の子供達と毎日そこで遊んだ。夏はそこで花火を楽しみ、鬼ごっこやボール遊びを楽しんだ。ブランコもあったし鉄棒もあった。大きな木があって、夏になるとその木に上っては昆虫採集をした。冬。私が子供だった頃、大雪が降った。それで誰かの提案で、私達はかまくらという雪の家をこしらえた。大きなかまくら。そのくらいの大雪だったのだ。雪を掻き集めて子供達総出で作り上げたかまくらは少しばかり不恰好だったけど何処にも土の汚れが混じらない真っ白のかまくらで、良く出来たと大人達は一様に褒めてくれた。夜、と言っても7時くらいの時間だったが空がすっかり暗くなった夕食時に私達は家から食事を持ち寄って、かまくらの中で食事を楽しんだ。思いの他かまくらの中は温かくて、それから蝋燭の橙色の炎がゆらゆら揺れるのが奇麗で、どうしたのか、何時になったら帰ってくるのかと大人達が心配して様子を伺いに来るまで私達はかまくらの中でお喋りをしていた。楽しかったなあ。うん、あれは本当に楽しい夜だった。私が体験したあんな大雪はあれが初めて最後だ。雪が好きだと思ったのはあの子供時代だけ。成長するにつれて寒いのも雪も大の苦手になった。予定通り10分後に次のバスが来た。私達はすっかり冷えてしまい、いそいそとバスに乗り込んだが、誰一人バスの運転手に文句を言う者は居なかった。それどころか予定通りに来てくれて有難うと言いたいくらいだ。しかし寒かったなあ。あの寒さは雪の前触れだったのかもしれない。そんなことを思い出しながら窓の外を見ると、先程より雪足が速くなっていた。やれやれ。明日の朝は大変なことになりそうだ。出勤前の雪掻きに備えて今夜は早めに休むことにしよう。