美しい卵
- 2024/03/31 15:13
- Category: bologna生活・習慣
今の家に暮らすようになって初めての冬のことだから、9年ほど前のことになるだろうか。相棒が小さな包みを持ち帰った。クリスマスの贈り物に知人から貰ったとのことだった。石鹸だよ、と相棒が言った。知人は近所で手作り石鹸の店を営んでいるのだそう。四角い大振りのラベンダーの石鹸。使ってみたら手がすべすべになることも含めて大変気に入り、それ以来、私も相棒も固形石鹸愛用家になった。知人の店の常連客になったのは言うまでもなく、何年も通った。ここ数年店に行っていないのは、知人が石鹸に情熱を失ったように見えたからである。それはもしかすれば、愛する妻を亡くしたのと関係があるかもしれない。兎に角店に気に入りの石鹸が品切れのままなので、足が遠のいてしまったという訳だ。その代わりに蜂蜜屋に石鹸を注文するようになったが、そのブームも下火になり、現在ボローニャ旧市街で良いものを探している。手作りが良いが、量産品でも構わない。良品で良心的な価格。これが条件。旧市街の自然食品やエコロジー製品を置く店でその枠に嵌ったものを発見したので試しに購入してみた。小振りな半透明の石鹸は米を原料としているそうだ。匂いは良くも悪くもなく、石鹸なんてこんなものだろう、そんな風に思う程度の匂い。米と言う言葉に惹かれて購入したけれど、どうだろう、と思いながら手を洗ってみたところ、するする、すべすべ。予想を超える使い心地だった。量産品の米の石鹸。案外探してみたら良いものが沢山見つかるのかもしれない、そんな風に思う私は深い石鹸の世界に足を踏み込んでしまったのかもしれない。
今日は復活祭。子供の頃は中身を殻にした卵に色を付けて、模様を書き込んで、家の中に飾ったものだが、今はそんなことは流行らないのか、そんなことをしている人に出会うこともないし話も聞かない。私にしても、そうしたことはしなくなって、それよりも行く先々で出会う美しい卵を眺めるだけだ。鳩の形をしたコロンバと言う名の焼き菓子や大きな卵型のチョコレートを買い求めることもなく、今年は少々寂しい復活祭。でも、空が晴れている。雨が降ると囁かれていたのに。それが一番嬉しい復活祭。それだけで充分嬉しい復活祭。