語り継がれる人
- 2024/12/29 18:41
- Category: bologna生活・習慣
今日も晴天。日曜日の晴天は有り難く、そして休暇中の晴天も恵み。此れほど晴天の冬の休暇はこれまでにあっただろうかと思うほど、連日晴天。嬉しいなあ、嬉しいなあと変な歌を歌いたくなるほど嬉しい。それにしても近所が妙に静かである。コルティーナ辺りにスキーを愉しみに行っているのかもしれない。昔からイタリアの豊かな人達は冬はコルティーナ、夏はサルデーニャ島というのがスタンダードで、それが今でも密かに続いているというのだから驚きだ。随分昔に私をコルティーナに連れて行ってくれた友人がロンドン暮らしをするようになってかれこれ20年以上経つけれど、冬になるとコルティーナに足を運ぶべく、イタリアに帰ってきたものだ。彼女の夫の両親がコルティーナに別荘を持っているからだったが、その家も両親が他界してからは手放してしまったらしい。管理費が高いのよ、とのことだ。確かにあの別荘を所有し続けるには、年間に莫大な費用が掛かるだろうと頷きながらも、他人の家とは言え、残念に思った。あんな言え、もう手に入らないだろう。今に備え付けられた広いテラスの前は、大自然だった。なだらかな山肌を駆けていく小鹿達。夏の眺めも素晴らしくて、宝石のような別荘と誰もが言ったものだった。其のコルティーナは今も冬の社交場として華やいでいる。スキーを愉しまない私には遠い存在と言ったらいい。
数日前、旧市街で催されている展示会を訪れた。”TUTTI DE SICA” と名付けられた展示会で、訳したら ”デ・シーカのすべて” と言ったったところだろうか。有名なイタリアの映画監督、ヴィットリオ・デ・シーカの写真展である。彼のことを知らないイタリア人などいないだろうと思うけど、案外若い人達は、誰なの、その人? なのかもしれない。兎に角改装した地下の展示場。地下が嫌いな私ではあるが、嫌がっている場合ではなかった。入場料は13ユーロ。13ユーロ払おうとしたら、チケット売り場の女性が小さく書かれた文字を指さした。此のどれかに当て嵌まれば3ユーロ割引になると言う。沢山書かれたあれこれの中に見つけた、自分が利用している銀行名。あ、これ。と言って銀行カードを見せたら、簡単に割引が適応された。自分が利用している銀行は何かと不便があって文句のひとつも言いたいと常々思っていたけれど、悪いことあり、良いことありである。
さて、デ・シーカ。映画監督の前は役者だったことを今回初めて知った。イタリア人なら兎も角、外国人の私は彼が出演している映画や芝居は見た事がなかったからである。なかなかの男前で、だから女性がいつも取り巻いていたらしい。そんなだから彼は女好きでと、彼について誰かと語りだしたら、話が尽きない。彼の作品とは知らずに見た映画が幾つもある。今頃になって、成程、素晴らしい映画監督だった、と思うのだ。展示物の中にあった娘への手紙。初めの結婚で得た娘への手紙だった。長い手紙で滑らかな美しい字体だったが、読むことが出来なかった。イタリア人に限らず欧米人の文字は解読不可能なものが多々あるけれど、彼の字もやはりそうだった。それで別紙に内容がタイプされてあって読んだのだけど、なかなか興味深いものだった。人の手紙を読むなんて、と思いながらも、この手紙はなかなか良いから他人に読ませるに値すると思った。
彼の佳作にひまわりがある。あの映画を観たのは19歳のとこだっただろうか。学校をさぼりたまたま通りかかった映画館に入った。ローマの休日とひまわりの二本立て。午前中で観客は数えるほどしかいなかった。ましてや私のような若い人は居なくて、券を買う窓口でじろりと見られたものだった。そんな風にしてみた映画。初めのローマの休日も良かったけれど、次のひまわりには頭をガツンと叩かれたような感じがあった。見たこともない世界を映画を通じて知った。戦争とかロシアの平原とかイタリアとか。今も忘れないのが、ソフィア・ローレンが演ずるジョヴァンナが笑ったかと思ったら怒り、そして大泣きするのを眺めながら、これがイタリア人なのだろうかと思った記憶。
映画監督デ・シーカは、良い感性を持っている、というのが私の印象。少なくともいい映画を作った。後々語り継がれるに値する映画監督。見に行けてよかったと思っている。
休暇中は紅茶ばかり飲んでいる。丁寧に淹れた紅茶に蜂蜜と熱い牛乳を垂らして頂くのは幸せ。自分にゆとりが無いとできないことで、紅茶を飲みながら思うのだ。あ、私、リラックスしている。
Via valdossola
最近は年齢のせいか私もコーヒーより紅茶が身体に合うようになってきたと感じています。最後は緑茶に戻るのでしょうか。
私の友人のイタリア人たちは、手書きの時は全て大文字の活字体(筆記体ではない)で書いていましたが、いまだにその理由がわかりません。日本語のくずし文字が一般には判読できないため楷書で書くのと同じ感覚なのでしょうか。
ところで、どの銘柄の紅茶がお好みですか?
風邪などひかれませんように。日本は今日は大晦日です。