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稲常の町並み(2)

稲常E01-1全景 稲常E01-1


稲常-民家の番付と撮影

 10月4日(水)。ゼミは先週から始まり、3年生は町並み調査の基礎を学ぶことになりました。2年の人間環境実習・演習Aで課題となる町並みや民家の調査にも極力参加するよう指示されました。フィールドは鳥取市河原町の稲常(いなつね)です。前期、「寅さんの風景」プロジェクトで墓地等のロケ地再現撮影をされたことで、先生はすっかりこの農村を気に入られたようで、夏休み直前には早くも1回めの予備調査をされています。3年生にも後期早々に住宅地図を貼り合わせてベースマップをつくるよう指示があったのですが、4日の天気は快晴だったので、他の作業をさしおいて、フィールドに向かうことになりました。


稲常の地図(圧縮)


 集落のほぼ中心に4本の道が集合する「辻」があります。ここからのびる4本の道を W(西)、E(東)、N(北)、S(南)と略記し、それぞれの道で辻に近い家屋から01、02、03・・・と番付していきます。西の道路ならば、W01、W02、W03・・・という具合に。そしてまず、ラベルに【稲常W01 20171004】と油性マジックで書き込み、そのラベルを撮影してから1棟ずつ撮影していきます。撮影はまず全景を写し、その後正面、さらにディティールを撮影します。これまでのフィールド、つまり若桜・用瀬・河原・立川などでは1棟につき3枚程度でしたが、稲常の民家はとても大きいので、1棟につき10枚程度の写真を撮影する必要がありました。


CIMG9557 ブログ1 CIMG9548 ブログ2
↑↓W01
CIMG9554 ブログ4 CIMG9568 ブログ3 CIMG9570 ブログ5


 以下の3グループに分かれて、北・南、東、西エリアの建物の番付と外観の写真撮影をしていきました。

  W(西): 森+吉冨
  E(東): 佐々木+水田+岡崎
  S(南)N(北): 佐藤+谷口+吉田

 3年生は今まで町並みの調査をしたことがなかったので、先輩方に一から教えていただきながら活動をしました。上の地図にみるように、稲常は山麓に貼り付くようにして成立した比較的小規模の集落ですが、面積の大きな豪農の屋敷が軒を連ねており、狭い旧道から全景などを撮影するのは難しい所もありましたが、順調 に作業を終えることができました。


稲常E21全景 稲常E21
↑E21 ↓(左)E01土蔵窓 (右)E21門 
稲常E01-1窓 稲常E21門


20171004 稲03 西尾家02


辻の民家

 これまで描いてきた上方往来の河原宿や用瀬宿は、参勤交代路の整備によって発展した近世の厭茶屋(休憩処)もしくは宿場ですが、稲常は中世にまで遡る拠点的な農村集落であり、羽柴秀吉の侵攻によって衰退したとも伝承されています。中世の武士もしくは豪農が拠点とする地として出発し、藩政期にあっても有力農民が大きな田畑を領有していたものと思われます。
 その代表格が辻の向かいに建つE01家です。辻で休憩してたころ、ご主人が長屋門の屋根上に駆け上がり、門前に立つヨノミ(榎)を剪定され始めたので、お話を聞くと、そのヨノミ(エノミともいう)は樹齢250年以上であり、民家オモヤもまた18世紀まで遡るというので、門の内側までみせていただきました。オモヤは現在、桟瓦葺きの平屋でモコシのような下屋をめぐらせていますが、先生は元茅葺きであろうと言われ、ご主人もそれに同意されました。


20171004 稲04-2 西尾家01


 内部の改装は比較的広範囲に及んでおり、とりわけ土間(トオリニワ)はすでに消滅していますが、奥の座敷飾(違棚・床・出文机)は見事なものです。先生によると、長押や床柱に面皮材や丸太材を多用しており、数寄屋の風情を強調していて、材の面取りの具合などは琴浦の河本家ハナレ(重文)や湯梨浜の尾崎家オモヤ(同)に似ているので、18世紀に遡る可能性はあるとのことです。ちなみに、平面はヒロマ型五間取りに復原されます。屋根裏にあがると、大きな梁の上に和小屋を組んでいます。先生によると、和小屋は瓦葺きにともなう小屋組なので比較的新しいものだが、その下の梁はずいぶん古そうにみえるとのことでした。
 現在、稲常集落は29戸からなり、うち3戸が空き家になっています。また、29戸中26戸が西尾姓を名乗っています。その中心的な位置と地位を占めるのがE01家です。E01を中心に上手(山側)の家をウエネ、小路に面して対面西側にある家をムカイネ、東側の下流方向に接する家をシモネ、そのまた向こうの家をシモノシモネなどと呼び分けています。歴史的な建築要素に加えて、民俗的な空間把握の方法まで知ることができ、大変勉強になりました。是非また調査に来ますと約束をして、記念写真まで撮らせていただきました!
 3年生にとってこの日は、とても有意義で楽しい1日となりました! (ゆずまる)


20171004 稲04-1
↑桐家紋屏風 ↓奥座敷の縁で記念撮影。庭も見事です。
20171004 稲01

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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