足音

先週の連休の真ん中の日、青い空が私を外に誘い出してくれた。丘の町ピアノーロですら19度あるのだから、ボローニャはどんなに暖かいことだろう。そう期待してボローニャの街へ繰り出してみたが、実際はピアノーロと大差がなくてほんの少しがっかりだった。それにしても大変な賑わいであった。連休を楽しむイタリア人達だけでなく、沢山の外国人たちを見かけた。老若問わずの夫婦者や若者グループ、家族連れ。ああ、ボローニャにもこんなに沢山の人が来るようになったのだなと嬉しくもあり、そして秘密にしておきたかったような気もして、その微妙な心境に苦笑した。街の中心を背にして私はvia castiglione を歩き始めた。この道を真っ直ぐ歩いていくと友人の両親が営む小さな花屋がある。まだ昼休みで閉まっている時間だった。彼らを訪ねる気はなかったが、店の前まで歩いてみたくなったのだ。少し行くと左手に大きな教会の建物がある。ex-chiesa di Santa Lucia (旧サンタ・ルチーア教会)だ。現在は大学が所有しているそうであるが、私はこの旧教会の建物がとても好きでこの前に来ると必ず足を止めてその頂を見上げる。建物の前の石段にはいつも誰かしら座っていて新聞を読んでいたり本を読んでいたりする。今日は誰も居なかった。ああ、静かだな。そう思っている傍から4人の若者がやって来て、楽しそうに話し出した。アメリカ人の若者達であった。耳をそばだてて聞いていると彼らもたいそうこの建物が気に入ったことが分かった。喧しいが、まあ宜しい。好みの一致に私はとても寛大であった。そんな彼らを後にしてその先に続く天井のとても高いポルティコの下を歩き出した。昔は修道院だったこの建物も現在は大学の所有物だ。継続されなかったのは残念だけど、こうして別の所有者が建物を維持してくれるのは有難いことでもある。特にこのポルティコの美しさと言ったら。ここを歩くといつも気持ちが穏やかになる。誰一人居ない時は尚更だ。誰も居ないポルティコの下を歩くと、カツーン、カツーンと自分の足音が響き渡った。それはとても贅沢な瞬間であった。

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