リラの花の匂いがする
- 2008/04/27 22:50
- Category: 好きなこと・好きなもの
何時の頃からかリラの花が好きになった。日本に居たらば見ることもなかったであろうリラの花を、ここではごく当たり前のように見ることが出来る。尤も私の家には庭がないので他所の庭の前を通る時に目にしたり、それとも公園を歩いている時にであるけれど。リラの花が好きだ。何がどう好きなのか言葉にするのは難しい。薔薇のようなエレガントさではないし、百合のような凛とした姿でもない。普通だけど微笑を誘う、心が温かくなる感じ。そうだ、そんな感じなのだ。リラの花の存在を知った頃、私はまだ見ぬその花を色々想像したものだ。初夏の陽射しがリラの花が咲く木の間からこぼれ、その下をゆっくり歩く・・・そんなことを想像したので初夏に咲く花だとばかり思い込んでいた。いや、初夏の花だと思い込んでいたからそんなことを想像したのかもしれなかった。どちらにしろ、リラの花は春先に咲く春の象徴的存在であることをボローニャに暮らして初めて知った。先週のこと、自分の庭に咲いていたと言うその花を幾つか折って持って来てくれた人がいた。花を貰うのはどんな時だって嬉しいが、それがリラであったなら尚更だ。花はいつか枯れてしまうもの。だけど一日だって長く見ていたいと思って毎日水を替えた。リラの花の匂いがが部屋の中に漂って、暫く息を潜めてひっそりし過ぎていた家に彩りと安堵を与えてくれた。切り花の宿命はいつか枯れて捨てられてしまうこと。だから嫌だと言う人もいるけれど、私は嫌ではないにしろ花を捨てる瞬間はやはり淋しい思いが募る。そして遂にすっかり花が枯れた。花を処分した、ごめんねと言いながら。