25度

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今日は気温が随分上がった。25度だそうだ。但し、家の中はヒンヤリしていて、テラスにでも出なければ此の春の気候の恩恵にあずかることは出来ない。其れにひとたび風が吹けば肌寒く、25度とはいえ、まだまだ油断がならなぬ。だから薄着をする人は多くない。この暖かさも今日だけで、明日には雨が降って気温は急降下。なかなか安定しないけれど、其れもこれも春の印と思えば納得できるというものだ。栃ノ木の花の蜜を集めに蜜蜂の群れがやって来た。居間の前にある栃ノ木は、この辺りでも大きい部類の属するだろう。何しろ日本で言う4階の建物ほどの高さなのだから。そんな大きな樹の花が満開なのだ。かなりの蜜を集められるに違いない。それにしても栃ノ木の花の蜜はどんな甘さなのだろうか。想像を膨らませながら過ごす日曜日の午後はなかなか愉しい。

親愛なる友人達、顧客達へ。そんな言葉で始まるメールが届いたのは土曜日の昼過ぎのことだ。以前足繁く通った、フランス屋の店主からのメールだ。フランス屋はとっくの昔に無くなり、今は別の色合いを持つ別の店になったというのに、私にとっては未だにフランス屋である。フランスのワインやチーズ、フォアグラを楽しむことが出来るから、フランス屋と呼んでも決して間違えではないだろう。2月末から2か月店を閉めていたが、ようやくイエローゾーンに辿り着いて店を再開できるようになった。もっとも店内での飲食は出来ないけれど、店の外に出されたテーブル席につくことが出来るだけでも嬉しいではないか。と思いながら、さて、あの店の外にテーブル席などあっただろうかと頭をひねり、車が通らぬ通りに面しているから許可を貰うのは安易なのだろうか、などとあれこれ想像する。本当を言えば、独りでふらりと立ち寄る時は立ち飲みワインが好きである。グラスを片手に店の中のものをあれこれ眺めるのが好きだし、店主や居合わせた知らない客と話をするのが好きだから。テーブル席に着く時は、友人と一緒の時がいい。よく独りでゆったり腰を下ろして食前酒を堪能している客がいるけれど、私には似合わない。うん、全然似合わないのだ。兎に角これで仕事帰りの寄り道の楽しみが増えた、と私は独り笑う。明るい仕事帰りの寄り道ワイン。こんな楽しいことって、ない。

冬の間中活躍した、黒いショートブーツ。手入れをしているつもりだったが、随分とくたびれてしまった。それで、今日はテラスで靴を磨いた。ピカピカになって気付いたのは、踵とつま先が痛んでいること。近日中に靴の修理屋さんに持ち込むことにしよう。そうして綺麗になった状態で次の冬まで休憩。代わりに軽快なモカシンを引っ張り出そう。素足でモカシンを楽しむのも、もう時間の問題だ。




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